特許第6196820号(P6196820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196820
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】オイルクーラ
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   F28F3/08 311
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-129498(P2013-129498)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-4468(P2015-4468A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】株式会社マーレ フィルターシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】磯田 勝弘
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−045477(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0289724(US,A1)
【文献】 特開2008−144977(JP,A)
【文献】 米国特許第05927394(US,A)
【文献】 特開平02−089991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 9/02
F28F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアプレートが積層され、それぞれ隣り合うコアプレート間にオイル流路と冷却水流路とが交互に形成されたコア部と、該コア部の底部に接合され、その外周部に形成された複数の取付フランジ部を介して前記コア部を支持するベースプレートと、を備え、
前記各コアプレートの外周部に立ち上げ形成された外壁構成部の先端側を重合させることによって前記コア部の外壁が構成されると共に、該コア部の外壁が、前記各外壁構成部が重合してなる一般部と、前記コア部の底面を構成するコアプレートの外壁構成部のみによって構成される最下層部と、から構成されたオイルクーラであって、
前記ベースプレートは、前記各コアプレートよりもそれぞれ厚肉に形成された第1プレートと第2プレートとを重合することによって構成され、
前記複数の取付フランジ部は、反コア部側に配置される前記第1プレートにのみ設けられ、
前記第2プレートの前記各取付フランジ部に臨む一部が、前記最下層部に沿うように外側から切り起こされ、かつ該最下層部と重合して一体的に構成されたことを特徴とするオイルクーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の内燃機関や自動変速機等の潤滑油の冷却に用いられるオイルクーラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のオイルクーラとしては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、このオイルクーラは、内燃機関のオイルの冷却に用いるもので、薄肉に形成された複数のコアプレートが積層され、それぞれ隣り合うコアプレート間にオイル流路と冷却水流路とが交互に形成されたコア部と、該コア部の底部にろう付けにより接合され、外周部に形成された複数の取付フランジ部を介してコア部を内燃機関に取付支持するベースプレートと、を備え、各コアプレートの外周部に立ち上げ形成された外壁構成部の先端側が重合することでコア部の外壁が構成されると共に、該コア部の外壁が、各外壁構成部を重合してなる一般部と、コア部の最下層に配置されるコアプレートの外壁構成部のみによって構成される最下層部と、から構成されている。
【0004】
そして、前記ベースプレートは、それぞれ各コアプレートよりも厚肉に形成された2つのプレートを重合することによって構成されると共に、機関側からコア部側へオイルを導入する導入口と、コア部側から機関側へとオイルを排出する排出口と、がそれぞれ貫通形成され、これら導入口及び排出口をもって、当該オイルクーラ(コア部)と機関とのオイルの授受が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−183903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来のオイルクーラでは、導入口の開口縁にはポンプの加圧に基づく油圧が作用する一方、排出口の開口縁にはこれより下流側の流路抵抗に基づく背圧が作用することとなる。すると、これら両油圧はいずれもベースプレートのコア部と重合する部分を反機関側へ押し退けるように作用する結果、コア部とベースプレートとの接合部のうち各取付フランジ部に臨む領域には、コア部とベースプレートとを剥離する方向に剪断力が作用することとなる。
【0007】
ここで、前記従来のオイルクーラでは、前述のようにベースプレートは厚肉に形成される一方、各コアプレートは薄肉に形成されていることから、ベースプレートの剛性が十分でない場合には、前記最下層部に、当該ベースプレートの変形に伴って前記剪断力に基づく応力集中が発生してしまい、十分な耐久性が確保できないという問題があった。
【0008】
これに対し、前記ベースプレートの板厚をより大きく設定することによって前記両油圧に基づく当該ベースプレートの変形を抑制することが考えられるが、かかる構成とした場合には、ベースプレートの重量増大によるオイルクーラの重量化及びコスト増といった問題を招来してしまう。
【0009】
本発明は、かかる技術的課題に着目して案出されたものであって、最下層のコアプレートに対する応力集中の発生を抑制し得るオイルクーラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のコアプレートが積層され、それぞれ隣り合うコアプレート間にオイル流路と冷却水流路とが交互に形成されたコア部と、該コア部の底部に接合され、その外周部に形成された複数の取付フランジ部を介して前記コア部を支持するベースプレートと、を備え、前記各コアプレートの外周部に立ち上げ形成された外壁構成部の先端側を重合させることによって前記コア部の外壁が構成されると共に、該コア部の外壁が、前記各外壁構成部が重合してなる一般部と、前記コア部の底面を構成するコアプレートの外壁構成部のみによって構成される最下層部と、から構成されたオイルクーラであって、前記ベースプレートは、前記各コアプレートよりも厚肉に形成されると共に、前記各取付フランジ部に臨む一部が前記最下層部に沿うように切り起こされ、かつ該最下層部と重合して一体的に構成されたことを特徴としている。
【0011】
このように、ベースプレートの一部を切り起こして最下層部を補強することにより、給排される油圧に基づきベースプレートがコア部側へ押し退けられるような変形が生じてコア部とベースプレートの接合部に剪断力が作用しても、ベースプレートの厚肉化を伴うことなく当該剪断力に抗することが可能となる。
【0012】
ここで、本発明の好ましい一の態様としては、前記ベースプレートは、前記各コアプレートよりもそれぞれ厚肉に形成された第1プレートと第2プレートとを重合することによって構成され、前記複数の取付フランジ部は、反コア部側に配置される前記第1プレートにのみ設けられ、前記第2プレートの前記各取付フランジ部に臨む一部が、前記最下層部に沿うように外側から切り起こされていることが好ましい。
【0013】
このように、ベースプレートの一部を外側から切り起こして構成することで、当該切り起こし部の形成を容易に行うことができるため、良好な生産性を維持できるメリットがある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベースプレートの一部を切り起こして最下層部を補強することにより、当該ベースプレートの既存部分を有効利用した最下層部の補強が可能となる。このため、ベースプレートの厚肉化によるオイルクーラの重量化やコスト増といった不都合を招来することなく、前記給排油圧に基づく剪断力に対するオイルクーラの耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るオイルクーラの斜視図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4図1に示すベースプレート単体を現した図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
図5】ベースプレートに作用した油圧に基づく変形の状態を現した図2の要部拡大図である。
図6】本発明の比較例として示す従来のオイルクーラの図5に相当する図である。
図7】本発明の参考例に係るオイルクーラの斜視図である。
図8図7のC−C線断面図である。
図9図8の要部拡大図である。
図10図7に示すベースプレート単体を現した図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D線断面図である。
図11】ベースプレートに作用した油圧に基づく変形の状態を現した図7の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るオイルクーラの各実施形態について、図面に基づいて詳述する。なお、下記の実施形態では、本発明に係るオイルクーラを、自動車のエンジンに適用したもの示す。
〔第1実施形態〕
図1図5は本発明に係るオイルクーラの第1実施形態を示し、このオイルクーラ1は、図1図3に示すように、エンジン2側から導入されるオイル(いわゆるエンジンオイル)をエンジン2側から供給される冷却水(いわゆるクーラント)により冷却する水冷式のオイルクーラであって、複数のコアプレート11が積層され、この積層方向において隣り合うコアプレート11間にオイル流路12と冷却水流路13が交互に形成されたコア部10と、該コア部10の底部に接合され、オイルの給排に供すると共に外周部に形成された複数の取付フランジ部25を介してコア部10を支持するベースプレート20と、コア部10の頂部に接合され、冷却水の給排に供するトッププレート30と、から主として構成され、前記各取付フランジ部25に設けられるボルト挿通孔25aに挿通されたボルト3を介して、例えばエンジン2のシリンダブロックに締結されている。
【0019】
前記各コアプレート11は、それぞれ所定のアルミニウム合金材料からなるほぼ同一の板厚T0を有する単一かつ薄肉の板材をプレス成型してなるもので、外周部には、反ベースプレート20側へと斜めに立ち上がるように構成された外壁構成部14が屈曲形成され、該各外壁構成部14の先端側が隙間なく重合することによって、コア部10の外壁を構成している。ここで、これら各コアプレート11には、表面にろう(鑞)材の層が形成され、当該各コアプレート11及びベースプレート20が前述のように積層した状態でもって加熱炉に収容されて前記ろう材が融解することにより、前記各プレート11,20が相互にろう付け接合されている。
【0020】
前記コア部10の外壁は、少なくとも2つ以上の外壁構成部14が重合してなる一般部15と、コア部10の底面を構成するコアプレート11の外壁構成部14のみによって構成される最下層部16と、から構成されている。つまり、換言すれば、最下層部16のみが単一のコアプレート11の板厚T0でもって構成されることによって、当該最下層部16が、前記複数の外壁構成部14が重合してなる他の一般部15に対して局所的に薄く脆弱な構成となっている。
【0021】
また、前記コア部10の内部には、前記積層方向へと貫通することによって前記各オイル流路12を繋ぐ1対の縦方向通路であるオイル導入通路17a及びオイル排出通路17bが、当該コア部10においてほぼ対角線上に設けられている。そして、これらオイル導入通路17a及びオイル排出通路17bは、それぞれベースプレート20に形成される後述の導入口23及び排出口24と接続され、これら導入口23及び排出口24を介してエンジン2側と連通する。かかる構成から、エンジン2側から供給されるオイルは、前記導入口23を経てオイル導入通路17aへと導入され、該オイル導入通路17aから各オイル流路12に分散した後、該各オイル流路12からオイル排出通路17bに合流して、前記排出口24を通じてエンジン2側へと還流されることとなる。
【0022】
一方、前記コア部10における他方の対角線上にも、前記積層方向へと貫通することによって前記各冷却水流路13を繋ぐ1対の縦方向通路である冷却水導入通路18a及び冷却水排出通路18bが設けられている。そして、これら冷却水導入通路18a及び冷却水排出通路18bは、それぞれトッププレート30に形成される後述の導入管31及び排出管32と接続され、これら導入管31及び排出管32を介してエンジン2側と連通する。かかる構成から、エンジン2側から供給される冷却水は、前記導入管31を経て冷却水導入通路18aへと導入され、該冷却水導入通路18aから各冷却水流路13に分散した後、該各冷却水流路13から冷却水排出通路18bに合流して、前記排出管32を通じて図示外のラジエータ側へと還流されることとなる。
【0023】
前記ベースプレート20は、反コア部10側(エンジン2側)に配置され、前記各取付フランジ部25が設けられた第1プレート21と、該第1プレート21に対してコア部10側に配置され、該コア部10の底面に接合される第2プレート22と、を重合してなるもので、これら両プレート21,22が前記ろう付け接合されることによって構成されている。また、このベースプレート20には、コア部10のオイル導入通路17aに対応する位置に、エンジン2側からのオイル導入に供する導入口23が貫通形成されると共に、コア部10のオイル排出通路17bに対応する位置に、エンジン2側へのオイル排出に供する排出口24が貫通形成されている。
【0024】
前記第1プレート21は、前記各コアプレート11よりも十分に厚肉の板厚T1を有するアルミ金属板によって構成され、前記導入口23及び排出口24に対応する位置に、該導入口23及び排出口24の各一部を構成する第1導入口構成孔23a及び第1排出口構成孔24aがそれぞれ貫通形成されている。そして、かかる第1プレート21のエンジン2との対向面には、前記各構成孔23a,24aの孔縁に、それぞれシール部材4の保持に供する環状のシール保持溝26が凹設されている。前記各取付フランジ部25は、それぞれコア部10の各隅部に相当する位置に、外方へと向かって放射状に突出形成されると共に、各部におけるほぼ中央位置に、前記各ボルト3が挿通するボルト挿通孔25aが貫通形成されている。
【0025】
前記第2プレート22は、図1図4に示すように、前記第1プレート21と同様に前記各コアプレート11よりも十分厚肉で、かつ、第1プレート21よりも若干薄肉の板厚T2を有するアルミ金属板によって構成され、平面視の外形がコア部10の外形と相似するように形成されている。そして、この第2プレート22の前記導入口23及び排出口24に対応する位置にも、前記第1プレート21の各構成孔23a,24aと一緒に導入口23及び排出口24の各一部を構成する第2導入口構成孔23b及び第2排出口構成孔24bがそれぞれ貫通形成されている。また、この第2プレート22には、コア部10の各隅部に対応する位置に、これら各隅部における最下層部16と重合することによって当該各隅部の最下層部16を支持するサポート壁27が立設されている。
【0026】
前記各サポート壁27は、成形前状態の前記コア部10の各隅部に相当する位置に前記各取付フランジ部25の幅方向範囲において突出形成された壁構成部28を、その両側部に設けられた切欠部29を介して切り起こしてなるものであり、前記各隅部の最下層部16に沿った形状となるように構成されている。具体的には、当該各サポート壁27は、周方向において、前記各取付フランジ部25とほぼ完全に重合するように最下層部16の各隅部の外形に沿って湾曲形成されると共に(図1図4参照)、高さ方向において、最下層部16のみと完全に重合し、一般部15とは重合しないような構成となっている(図3参照)。このようにして構成された前記各サポート壁27は、いずれも、その内側面の全体が前記各隅部の最下層部16の外側面に前記ろう付け接合されることで、当該各隅部の最下層部16と一体的に構成されている。
【0027】
前記トッププレート30は、図1図2に示すように、前記各コアプレート11よりも厚肉のアルミ金属板によって形成され、前記ろう付け接合をもってコア部10の頂部に接合されている。そして、このトッププレート30には、コア部10の冷却水導入通路18aに対応する位置に、エンジン2側からの冷却水導入に供する円筒状の導入管31が接続されると共に、コア部10の冷却水排出通路18bに対応する位置に、エンジン2側への冷却水排出に供する円筒状の排出管32が接続されている。
【0028】
以下、本実施形態に係る前記オイルクーラ1の特徴的な作用効果について、図5図6に基づいて説明する。なお、図5はオイルクーラ1のオイル導入側の要部拡大図、図6はオイルクーラ1の比較例としての従来のオイルクーラXのオイル導入側の要部拡大図であって、両者の比較を容易にするべく共通部分には同一符号を付してある。また、各図中における矢印は、エンジン2側からのオイルの圧送に基づいて発生する油圧の分布を示している。
【0029】
前述のように、前記オイルクーラ1には図示外のオイルポンプをもってエンジン2側よりオイルが圧送され、ベースプレート20に形成された導入口23よりコア部10内へと導入されることとなる。このため、導入口23の開口縁近傍、具体的には第1導入口構成孔23aのエンジン2側の孔縁とシール保持溝26の外周縁との間の径方向領域S1には、各図中に矢印で示すポンプ吐出圧に応じた油圧P1が作用する。同様に、具体的な図示は省略するが、排出口24の開口縁近傍、すなわち第1排出口構成孔24aのエンジン2側の孔縁とシール保持溝26の外周縁との間の径方向領域S2にも、排出口24より下流側の流路抵抗に基づく背圧P2が作用する。このように、両油圧P1,P2がいずれもベースプレート20のコア部10と重合する部分を反エンジン2側へと押し退けるように作用する結果、前記各取付フランジ部25の基端側には、反エンジン2側(コア部10側)に凸となる湾曲状の変形(以下、「凸変形」と略称する。)が生ずることとなる。ここで、当該各取付フランジ部25に生ずる変形はほぼ同様のものであることから、以下では、導入口23近傍の取付フランジ部25を例に、オイルクーラ1の特徴的な作用効果を説明する。
【0030】
すなわち、前記各取付フランジ部25の基端側に前記凸変形が発生すると、当該各取付フランジ部25に臨む領域では、コア部10とベースプレート20との接合部Wについて、該両者10,20を剥離する方向に剪断力が作用することとなる。すると、従来のオイルクーラXにあっては、図6に示すように、ベースプレート20が2つのプレート(第1、第2プレート21,22)を重合してなる厚肉に構成されるのに対し、最下層部16が極薄肉のコアプレート11によって構成されているため、ベースプレート20の板厚を厚くするなど十分な剛性確保を行わない場合には、当該ベースプレート20の変形に伴って前記接合部Wに作用する剪断力が極薄肉の最下層部16に集中する、当該最下層部16への応力集中を招来してしまい、この応力集中の程度によっては当該最下層部16が破損するなど耐久性を低下させてしまうことになる。
【0031】
これに対し、前記オイルクーラ1では、図5に示すように、前記各取付フランジ部25に臨む最下層部16が第2プレート22の一部を切り起こしてなるサポート壁27と一体的に構成されている。このため、前記剪断力が作用する前記各取付フランジ部25と、最下層部16とサポート壁27の重合部と、がほぼ同等の厚さ幅を有することとなって、どちらか一方に前記凸変形に基づく応力が集中してしまうおそれがなく、当該応力は双方に対して比較的近い割合で分散されることとなる。その結果、前記従来のオイルクーラXのような応力集中の発生による耐久性の低下を抑制することができる。
【0032】
しかも、前記各サポート壁27にあっては、第2プレート22の一部を切り起こすことにより形成したもの、すなわち当該第2プレート22の既存の一部を利用することによって形成したものである。このため、前記最下層部16の補強にあたって、ベースプレート20の既存部分を有効利用でき、当該ベースプレート20の厚肉化(板厚の増大化)を伴わずに前記凸変形に基づく剪断力に抗することが可能となる。その結果、オイルクーラ1の重量増やコスト増といった弊害を招来してしまうおそれもない。
【0033】
加えて、前記各サポート壁27は、第2プレート22の各隅部に形成した壁構成部28を外側から切り起こすことによって構成したものである。このため、当該各サポート壁27を形成するにあたっても、外側から加工を施すことで、前記各壁構成部28を切り起こして湾曲状とする形態を容易に成形することが可能となる。その結果、オイルクーラ1の良好な生産性を維持できるメリットも得られる。
参考例
図7図11は本発明に係るオイルクーラの参考例を示したもので、前記第1実施形態におけるベースプレート20の構成を変更したものである。なお、本参考例においても、オイルクーラ1自体の基本的な構成については前記第1実施形態と同様であるため、該第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付すことによって、具体的な説明については省略する。
【0034】
すなわち、本参考例においては、図7図10に示すように、前記ベースプレート20が、前記各コアプレート11よりも十分厚肉の板厚T3を有する、前記第1プレート21と同様の単一のアルミ金属板によって構成されていて、前記コア部10の各隅部に対応する位置には前記各取付フランジ部25が突設されると共に、前記コア部10のオイル導入通路17a及びオイル排出通路17bに対応する位置には、前記導入口23及び排出口24がそれぞれ貫通形成されている。
【0035】
さらに、本参考例の場合には、前記ベースプレート20のコア部10の各隅部に対応する位置に、これら各隅部において最下層部16と重合することによって当該各隅部の最下層部16を支持するサポート壁27が立設されている。当該各サポート壁27は、成形前状態にてコア部10の各隅部と重合する所定範囲に構成される壁構成部28を内側から切り起こしてなるものであり、前記各隅部の最下層部16に沿った形状となるように構成されると共に、前記第1実施形態と同様、その内側面全体が最下層部16の外側面に前記ろう付け接合されることで、前記各隅部の最下層部16と一体的に構成されている。なお、当該各サポート壁27の具体的な形態については、前記第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0036】
以上のような構成から、本参考例においても、前記各取付フランジ部25について前記両油圧P1,P2に基づく凸変形を生ずることになるが(図11参照)、ベースプレート20に切り起こした前記各サポート壁27をもって前記第1実施形態とほぼ同様の作用効果が奏せられることとなる。また、特に、本参考例の場合は、当該各サポート壁27を、ベースプレート20の内側から切り起こして形成する構成としたことから、当該ベースプレート20を、前記第1実施形態のように重合構造とする必要がなく、単一の金属板でもって構成することが可能となる。このため、ベースプレート20の軽量化が図れ、これによって、オイルクーラ1の軽量化やコスト低減に供されるといったメリットが得られる。
【0037】
なお、本参考例では、前記ベースプレート20を単一材料(単層)のものにより構成した例に基づいて説明したが、当該参考例に係るベースプレート20、すなわち前記各サポート壁27を内側から切り起こして構成するものについては、必ずしも単一材料(単層)による構成に限定されるものではない。換言すれば、例えば前記各取付フランジ部25の十分な剛性を確保したい場合など、当該ベースプレート20を、従来(図6参照)のような2層構造(第1プレート21と第2プレート22の重合構造)とする構成を維持したまま前記各取付フランジ部25を内側から切り起こすかたちで形成して構成することも可能であり、かかる構成によっても、前記接合部Wにおける応力集中の回避といった本発明の特異な作用効果が奏せられることは言うまでもない。
【0038】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、オイルクーラ1の細部の構成、例えばコア部10の段数や当該コア部10内における油通路の取り回し、前記各取付フランジ部25の形状や数量など、本発明の構成とは直接関係しない細部の構成は勿論、前記各サポート壁27など本発明の構成と直接関係する部分であっても、その形状や寸法など本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適用対象たる内燃機関の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0039】
具体的には、例えば前記各実施形態では、前記各サポート壁27の高さ寸法を最下層部16の高さ寸法と一致させた構成を例示しているが、本発明の趣旨からして、当該各サポート壁27は、少なくとも最下層部16にのみ重合する構成となっていればよい。よって、当該各サポート壁27にあっては、さらに延長して一般部15と重合させるような構成とすることも可能であって、製品の仕様や加工性との関係等に応じて任意に設定・変更できる。
【0040】
また、前記各サポート壁27は、前述したようなコア部10の各隅部に相当する位置のみならず、前記各取付フランジ部25に臨む位置であれば、具体的な形成箇所は問わない。換言すれば、前記各取付フランジ部25がコア部10の側辺部に設けられる仕様であれば、前記各サポート壁27も当該各取付フランジ部25に応じた位置に形成することが可能であり、これによって、前記各実施形態と同様の作用効果が奏せられる。
【符号の説明】
【0041】
1…オイルクーラ
2…エンジン
10…コア部
11…コアプレート
12…オイル流路
13…冷却水流路
14…外壁構成部
15…一般部
16…最下層部
20…ベースプレート
21…第1プレート
22…第2プレート
25…取付フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11