【実施例】
【0060】
[粗粉砕]
粗粉砕の効果を検証するため、粒のままの米と、粗粉砕した米の各加熱方法による比較を、生米100gに対して、浸漬米130g、その後の加水160g、粗粉砕米の場合は浸漬米をローラークリアランス1.58mmのアーモンドクラッシャー(ラインテ ビーマー 3本ローラーBL6)で粗粉砕した。
【0061】
[製パン法]
本実施例におけるパンの配合は、加熱処理した米145.00g、小麦粉100.00g、食塩2.00g、ショートニング15.00g、砂糖14.00g、イースト3.00g、改良剤0.30gである。
【0062】
[実施例1:パン製造に適した粗粉砕加熱米加工条件の検討]
実施例1として、澱粉質含有食品であるパンに配合し製造した場合、より少ない水分で米の粒が残らない粗粉砕加熱米の最適の条件を検討し、次の工程でその製パン性を検討した。
【0063】
米粒のままの粉砕していない浸漬米と水をバットに入れ、庫内温度100℃の蒸し庫で25分加熱した場合は、柔らかめのご飯となり均一に蒸気加熱できるが、製パン後に硬い粒が残った。一方、粗粉砕米を炊飯した場合、水の対流が悪いため米がパンの中で粒として残った。また、鍋に粗粉砕米と水を加え攪拌しながらガス火で加熱する場合、および、粗粉砕米と水を鍋に入れ、撹拌しながら湯せんで加熱する場合は、いずれも加熱中に団子状に固くまとまり吸水が不均一となり硬い粒が残るため、製パン後も米の硬い粒が残った。さらに、粗粉砕米と水をバットに入れ庫内温度100℃の蒸し庫で25分加熱する場合は、対流が悪いため上面は水が多く下部は水が少なく粒が残り、製パン後も米の硬い粒が残る。しかし、粗粉砕米をバットに入れ庫内温度100℃の蒸し庫で10分加熱した後水を加え撹拌し庫内温度100℃の蒸し庫で15分加熱する場合は、加水時に米が吸水し全体に水を吸収した米を二次蒸しすることで均一に加熱され、水分の不均一の問題が起こらず、パンにしたときに粒残りしないことがわかった。(下記表1)。
【表1】
【0064】
[実施例2:加水量の検討]
2度蒸し法で加える水の量について粗粉砕米をバットに入れ庫内温度100℃の蒸し庫で10分加熱した後、水を加え撹拌し庫内温度100℃の蒸し庫で15分加熱する条件で検討した。水が多いほど均一に炊飯でき粒が崩れやすくパン中に粒残りしにくいが、その後の製パン時の加水量を減らす必要があるため、結果として米配合率が少なくなる。そのため、「粗粉砕米→蒸し→加水→蒸し」工程の加水量のみ変え、どこまで水を減らして蒸気加熱できるかを検討した。これにより、米の重量の1.2倍以上が好ましく、1.0倍では製パン後に米の硬い粒が残ることが明らかとなった(下記表2)。
【表2】
【0065】
[実施例3:粗粉砕粒度の検討]
製パンに適した粗粉砕について、ローラークリアランスを変えて米を粗粉砕しそれぞれの粗粉砕米をバットに入れ庫内温度100℃の蒸し庫で10分加熱した後、水を加え撹拌し庫内温度100℃の蒸し庫で15分加熱した粗粉砕加熱米を上記表2の生米の1.2倍の含水量で検討した。ローラークリアランスが0.20mm以下の粒度が小さい粗粉砕米の場合は、表面積が大きいため加水時の吸水が早く、表面の水をかけた部分がすぐに吸水し、下部に吸水していない部分ができてしまう。一方、ローラークリアランス0.50mm、1.00mmおよび1.58mmの粒度が大きい粗粉砕米の場合は均一に水を吸収しており、水量が少ない条件でもより均質な加水状態となる(下記表3)。
【表3】
【0066】
[実施例4:粉砕米粒度分布と加熱条件の関係]
ローラーで米を粗粉砕すると、ローラークリアランスの設定値以下の大きさの粉砕米が混在するため、所定の異なるサイズのメッシュのふるいを通して粒度で分級し、各クリアランスにおける粒度割合分布を調べた(表4)。
【表4】
【0067】
ローラークリアランスが2.00mmの場合は、粒度1.70mm以上が59.34%、1.40mm以上1.70mm未満が19.96%、0.84mm以上1.40mm未満が10.81%、0.25mm以上0.84mm未満が9.89%、0.25mm未満が0%であった。ローラークリアランスが1.80mmの場合は、粒度1.70mm以上が59.28%、1.40mm以上1.70mm未満が14.40%、0.84mm以上1.40mm未満が11.08%、0.25mm以上0.84mm未満が15.24%、0.25mm未満が0%であった。ローラークリアランスが0.10mmの場合は、粒度1.70mm以上が25.44%、1.40mm以上1.70mm未満が13.02%、0.84mm以上1.40mm未満が24.85%、0.25mm以上0.84mm未満が31.95%、0.25mm未満が4.74%であった。ローラークリアランスが0.05mmの場合は、粒度1.70mm以上が0%、1.40mm以上1.70mm未満が11.73%、0.84mm以上1.40mm未満が36.87%、0.25mm以上0.84mm未満が45.81%、0.25mm未満が5.59%であった。アーモンドクラッシャーの場合は、粒度1.70mm以上が58.03%、1.40mm以上1.70mm未満が23.28%、0.84mm以上1.40mm未満が13.12%、0.25mm以上0.84mm未満が5.57%、0.25mm未満が0%であった。ここで、1.70mmのふるいに通らなかったものは、米を2から3分割した程度の大きさであった。また、いずれの条件下でも粉砕していない米そのものは残っていなかった。
【0068】
0.25mmよりも大きく、
精米粒を少なくとも1/2以上に粉砕したものより小さい粒度の粗粉砕米は、ローラークリアランスが2.00mmの場合、1.80mmの場合は100%、0.10mmの場合は、95.26%、0.05mmの場合は94.41%であり、アーモンドクラッシャーの場合も、100%であった。以上のように、それぞれのローラークリアランスで粗粉砕米の粒度に幅があるが、本発明においては、すべての粗粉砕米を使用することが可能であり、後述するように加熱条件によって調整することも可能である。
【0069】
分級した粗粉砕米を使用して、それぞれに合った加熱条件を検討した。分級0.25mm以下の粗粉砕米と、分級1.70mm以上の粗粉砕米について、生米238g、洗米・浸漬後300g、添加水247g(対生米添加水1.30倍)、一次蒸し15分加水温度55.0℃に二次蒸し15分として、一次蒸しの庫内温度を70℃・二次蒸しの庫内温度を90℃にしたものと、一次蒸し・二次蒸しの庫内温度共100℃にしたもので実験をした。特に最適とされる粗粉砕の条件より小さいものと、大きいものの加工条件を比較することにより、粗粉砕した
精米粒全体の加熱条件を検証することを目的として実験を行った。分級0.25mm以下で一次蒸しの庫内温度を70℃・二次蒸しの庫内温度を90℃のものと、分級1.70mm以上で一次蒸し・二次蒸しの庫内温度共100℃にしたものについては、水分が十分にいきわたり均一に糊化できる状態となった。この実験により、粗粉砕粒が細かいものは表面積が大きいため、加熱温度を下げないと水要求度が高まり加水次第吸水されてしまうため水が行きわたらず、ムラになることがわかった。粗粉砕粒が粗いものについては、加熱温度が低いと粒の芯まで加温されず粒残りにつながる。粗粉砕米は上記表4のような粒度のばらつきを有するが、その上限、下限の粒度であっても加熱条件を検討し、それに合わせた加熱条件を見出すことにより、澱粉質含有食品への配合が可能になることが明らかになった(下記表5)。
【表5】
【0070】
[実施例5:粗粉砕加熱米を配合したパンの製造]
実施例5として、粗粉砕加熱米を配合したパンを次の工程で製造した。
<米前処理>洗米→浸漬→粗粉砕
↓
<米加熱工程>粗粉砕米→一次蒸し→加水→二次蒸し
↓
<パン工程>ミキシング→フロア→分割→丸目→ベンチ→モルダー→成形→ホイロ→オーブン→冷却
【0071】
[製パン法]
ストレート法および中種法で製造した。
【0072】
各実施例におけるパンの製造においてミキシングは、米の澱粉により生地がべたついてくる前の最適な状態で止めることとした。米の澱粉により、ミキシングが長いほどベタついてくるため、ベタつく前に止めた方が扱いやすいと確認された。
【0073】
本実施例におけるストレート法によるパンの配合は、粗粉砕加熱米697.67g、小麦粉500.00g、食塩10.00g、ショートニング50.00g、砂糖50.00g、イースト15.00g、改良剤2.50gである。また、中種法においては、粗粉砕加熱米697.67g、小麦粉350.00g、イースト10.00gで中種をつくり、その後、小麦粉150.00g、食塩10.00g、ショートニング50.00g、砂糖50.00g、イースト5.00g、改良剤2.50gを配合した。
【0074】
本実施例のストレート法によるパンの製造方法は、まずショートニング以外の材料をすべて混合してミキシングを低速2分中速2分、ショートニングを加えて低速30秒高速30秒後さらに低速1分中速2分、室温30分放置後、成形はシーター(3×3×3、G5mm、70×60mm)、2次発酵は38℃湿度85%60分、焼成は200℃15分とした。また、中種法によるパンの製造方法は、まず中種の材料をすべて混合してミキシングを低速2分中速2分、発酵は27℃湿度70%60分、冷蔵して中種を作り、その後、本捏は中種とショートニング以外のその他の材料を混合してミキシングを低速2分中速2分、ショートニングを加えて低速1分中速1分、室温30分放置後、成形はシーター(3×3×3、G5mm、70×60mm)、2次発酵は38℃湿度85%で60分、焼成は200℃14分とした。
【0075】
中種法では、多少粒のある粗粉砕加熱米でも、発酵中に水和するため崩れやすくなることが確認された。
【0076】
[食感・風味]
ストレート法では、もっちりとした食感で、米の甘みがあり、米らしさがよく出ていた。中種法ではもっちり感もあるが、パンに近いふんわりとした食感があり、米の甘みを感じ、発酵風味も感じた。
【0077】
実施例5により、米の配合率の高いかつ配合した米の粒を感じさせない加工上最適な米の粗粉砕具合で加工し、米入りパンの提供を実現できる。
【0078】
[実施例6:粗粉砕加熱米を配合したパン粉の製造]
実施例6として、粗粉砕加熱米を配合したパン粉を次の工程で製造した。
<米前処理>洗米→浸漬→粗粉砕
↓
<米加熱工程>粗粉砕米→一次蒸し→加水→二次蒸し
↓
<パン工程>ミキシング→フロア→分割→丸目→ベンチ→モルダー→成形→ホイロ→オーブン→冷却
↓
<パン粉工程>米配合パン→粉砕
【0079】
[米パン粉用粗粉砕米]
本実施例の米パン粉用粗粉砕米は、使用米は北海道産ななつぼし、洗米条件は3.00kg/バッチ、0.15MPa 1分、浸漬条件は1時間、粉砕はアーモンドローラーのクリアランス1.58mmで製造した。
【0080】
原料米50.50kgを水に浸漬後63.96kgとなったため、本実施例の原料米に対する粗粉砕前の浸漬時の吸水率は、1.27倍である。
【0081】
[加水量]
粗粉砕米9.50kg(生米7.50kg相当)をバット5枚に分けて、一次蒸し工程を庫内温度100℃、10分行い、蒸し直後温度96℃、重量10.25kgとなった。その後、加水7.75kg(対米水量1.3倍、米温度平均80℃、水温度平均46℃)を行い、攪拌後(米温度平均63℃)、二次蒸し工程を庫内温度100℃で10分、行った。二次蒸し工程直後の品温90℃、重量18.08kgであり、吸水率241%となった。その後真空冷却を行い、芯温25℃まで冷却した。最終的な重量16.59kg歩留り221%となった。
【0082】
[製パン工程]
本実施例におけるストレート法によるパンの配合は、粗粉砕加熱米16.59kg(生米7.50kg)、小麦粉25.00kg、食塩0.25kg、ショートニング0.70kg、砂糖0.56kg、生イースト0.75kg、改良剤0.03kg、アナト―色素0.13kg、調整水8.00kgである。
【0083】
本実施例のストレート法によるパンの製造方法は、まずショートニング以外の材料をすべて混合してミキシングを超低速1分低速3分、ショートニングを加えて低速2分高速1分、1次発酵は30℃湿度82%25分、分割機から丸目機にかけ、ベンチタイム室温15分、モルダーの後成形・型入れ、2次発酵は37℃湿度75%50分、焼成は上164℃、下215℃50分とした。
【0084】
[コロッケ製造時の米入りパン粉の評価]
上記方法で製造した米入りパンを冷凍・解凍後に10mmメッシュで粉砕して、コロッケ製造用のパン粉を製造した。
【0085】
コロッケ製造時のパン粉水分量変化については、前記パン粉5gを110℃60分加熱し、加熱前後の重量変化を赤外線水分計で2回測定した。
【0086】
コロッケ製造時のパン粉吸油量については前記パン粉30gを170℃の油で2分揚げ、10分油切り後、重量変化を赤外線水分計で3回測定した。
【0087】
コロッケ用バッターは、粉(KNB320)100gと水235gとサラダ油35gを、24.5℃、2435cpで混ぜ合わせた。
【0088】
コロッケ1個につき、バッター13g、パン粉15gを使用し、定法によりコロッケを作成した。
【0089】
[吸油量]
本実施例の米パン粉の実際の吸油量は、パン粉100gに対して、49.4gであった。普通のパン粉の実際の吸油量は、パン粉100gに対して、68.1gであるため、米パン粉の吸油量はパン粉100gあたり約20g、27.5%少ないことが明らかとなった(下記表6)。
【表6】
【0090】
[評価]
通常のパン粉用の小麦粉で製造したパン粉は、硬い食感であったのに対し、粗粉砕することによって米を加えたパン粉は、固すぎず、良好の食感を得られた。また、上記のように、低吸油のパン粉が製造でき、油っぽさが従来のパン粉用の小麦粉を使ったものより、感じられなかった。
【0091】
実施例6より、米の配合率の高い、かつ配合した米の粒を感じさせない加工上最適な米の粗粉砕具合で加工した粗粉砕加熱米を配合した、最善のパン製造方法および現有のパン粉ラインにより米入りパン粉の提供を実現できる。
【0092】
[実施例7:粗粉砕加熱米を配合した麺の製造]
実施例7として、米の配合率を高めた食味の良い、しかも製麺機で製造可能な麺の製造を検証した。
【0093】
麺を製造する場合は、パンとは違い、粉砕加熱米をその他の麺の材料と混合し生地とした後、麺に成形する前に発酵等の工程が無く、粗粉砕加熱米の粒が残りやすいため、製麺時のミキシング後の生地にした段階で米の粒が無い状態になるように加工しなければならない。そのため、通常より粒度が小さいローラークリアランス0.20mmから0.50mmのものが適している。
【0094】
粗粉砕のローラークリアランスは、0.20mmとし、生米238g、洗米・浸漬後300g、添加食塩水216g(対生米添加食塩水1.2倍、うち塩0.1倍)、一次蒸し庫内温度75℃、15分、とし、二次蒸し庫内温度90℃、15分とした。対生米加水量は、1.1倍となった。二次蒸し後の重量は521gとなった。
【0095】
その粗粉砕加熱米521gに、小麦粉238g(加水率54.5%、米比率50%)、ミキシングは低速2分中速2分その後高速3分低速7分(−80kPa)、圧延常法、切り出し#9 2.80mm、ボイル6分とし、茹で歩留り145、対粉歩留225.3となった。これにより、良好な食感のうどん用の麺を製造することができた。蒸気加熱に必ず水が必要となるため、製麺ミキシング時に水を加えないとしても、米比率50%が現時点では最適量であることが明らかとなった。
【0096】
実施例7により米の配合率の高いかつ配合した米の粒を感じさせない加工上最適な米の粗粉砕具合で加工した粗粉砕加熱米を配合した、最善の麺製造方法により米入り麺の提供を実現できる。
【0097】
次に米以外の穀類について説明する。
[実施例8:米以外の穀物から製造した粗粉砕加熱物を配合した麺の製造]
実施例8として、米以外の穀物のうち、あわ、ハトムギを使用して麺の製造の検証をした。本発明において、米に変えて製造できる穀物について制限はない。
【0098】
各穀物は洗わず、水に浸漬して60分後、製麺用麺帯機を使用して粗粉砕した。あわ、ハトムギは非常にベタつくため、小麦粉を追加してミキシングした。糊化開始温度が米より低いため米と同じ条件ではベタつくので加水量を減らす必要があったため、粒感が少し残った。
【0099】
粗粉砕加熱雑穀を配合した麺は、粗粉砕加熱米のもっちりとした食感と異なり、全体的にねっちりと歯に張り付く独特の食感を持つことが明らかとなった。
【0100】
実施例8により、加水と加熱温度を調整することによって、あわやハトムギなどの他の穀類においても同様の加熱方法をとることが可能であることが示唆された。