(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196849
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25D 7/00 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
F25D7/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-184534(P2013-184534)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-52409(P2015-52409A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】西山 将人
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−148242(JP,A)
【文献】
特開平03−279680(JP,A)
【文献】
特開2013−146197(JP,A)
【文献】
特開2012−102956(JP,A)
【文献】
特開平10−160312(JP,A)
【文献】
米国特許第05277031(US,A)
【文献】
特開2009−036440(JP,A)
【文献】
特開昭63−075463(JP,A)
【文献】
特開2003−065885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する処理槽、処理槽と真空配管によって接続しており処理槽内の気体を吸引する真空発生装置を持ち、処理槽内を真空化することで処理槽内に設けた被冷却物の冷却を行う真空冷却装置において、前記処理槽内の圧力を検出する槽内圧力検出装置を設け、真空冷却装置では、真空冷却後に行う復圧工程時における処理槽内の圧力上昇速度を計測しておき、圧力上昇速度が以前よりも早くなったことが確認された場合に真空漏れ発生の判定を行うものであって、復圧工程時に行う処理槽内圧力上昇速度の計測は、大気圧よりも低く設定した計測終了圧力値に達するまでの時間に基づいて行うものであることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空冷却装置において、復圧工程時に行う処理槽内圧力上昇速度の計測は、真空冷却終了時の処理槽内圧力よりも高く設定した計測開始圧力値に達した時点から時間の計測を開始し、大気圧よりも低く設定した計測終了圧力値に達するまでの時間を圧力上昇時間として記録しておき、以前に測定した圧力上昇時間との比較を行うことによって真空漏れ発生の判定を行うものであることを特徴とする真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被冷却物を収容した処理槽内を真空化し、被冷却物から水分を蒸発させることによって発生する気化熱を利用して被冷却物から熱を奪い、冷却するようにしている真空冷却装置に関するものである。さらに詳しくは、真空冷却装置において、真空漏れの発生を検出することができるようにしている真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
処理槽内に加熱調理した食品などの被冷却物を収容しておき、処理槽内を真空化することで被冷却物を冷却する真空冷却装置がある。被冷却物を収容している処理槽内を減圧し、処理槽内での沸点を被冷却物の温度まで低下させると、被冷却物中の水分が蒸発し、その際に被冷却物から気化熱を奪う。この場合、被冷却物の中心部分からも熱を奪うことができ、気化熱による冷却効果は大きなものであるため、被冷却物を短時間で冷却することができる。真空冷却装置に使用する真空発生装置としては、水又は蒸気によるエジェクタや水封式又はドライ式の真空ポンプを使用している。真空発生装置にて処理槽内の気体を吸引する場合、被冷却物からは水分が多く蒸発するため、処理槽内の気体とともに被冷却物から発生した蒸気も吸引することになる。しかし、水は液体から気体に変わると体積が大幅に増大するため、蒸気をそのまま真空発生装置に吸引させたのでは、真空発生装置で排出しなければならない気体量が多くなる。そしてその場合には、処理槽内の減圧に要する時間が長くなるため、冷却工程時間が長くなってしまうという問題があった。
【0003】
そのため、特開2012−102956号公報に記載があるように、処理槽内の気体を真空発生装置へ送る真空配管の途中に、真空発生装置が吸引している気体を冷却する熱交換器を設けることを行っている。真空配管の途中で熱交換器によって気体の冷却を行うと、気体の体積が縮小する。特に蒸気を冷却することで液体に戻すと体積は大幅に小さくなる。真空発生装置が吸引しなければならない気体の体積を小さくすることで、吸引の効率を高めることができる。蒸気の冷却によって発生した凝縮水は、熱交換器の下方に設置しているドレンタンクにためるようにしている。真空冷却の運転中は、処理槽と通じている部分では負圧になっており、この場合にはドレンを排出する排水弁を開いても、ドレンを排出することはできない。そのため、ドレンは真空冷却運転終了までためておき、真空冷却運転を終了して処理槽内を大気圧に戻した後に排出を行っている。
【0004】
真空冷却装置は、処理槽内及び処理槽に接続している真空配管内を真空に保つことで、被冷却物を短時間で冷却するものであるため、処理槽や真空配管は気密に保たれていることが必要である。もしも真空部において気密に漏れがあり、真空部に外気が入り込むことになると、減圧速度が低下することになる。
【0005】
真空冷却装置は、雑菌の繁殖する温度帯を短時間で通過させ、食品の温度を雑菌の繁殖が抑制される温度帯までより早く冷却するというものであるため、真空漏れによって減圧速度が低下し、冷却に要する時間は長くなるということは、真空冷却装置の特徴が失われることになる。そのために真空漏れが発生している場合には、そのことを検出できるようにしておくことが望まれていた。しかし、真空漏れによる外気進入量が少なければ、真空冷却に要する時間が長くなるが、冷却は行える。そして真空冷却装置で冷却を行う場合、減圧時には被冷却物から水分の蒸発があり、その蒸発量は被冷却物の状態によって変化するため、減圧速度や冷却時間は被冷却物の状態によって異なることになる。また、設定した冷却温度により冷却終了時の処理槽内圧力は異なる。そのため、減圧時間が長くなってもそれが真空漏れによるものか、被冷却物の状態によるものかを判断することは難しく、真空冷却に要する時間を監視していても真空漏れの検出を行うことはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−102956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、真空冷却装置において、真空漏れの検出を行うことのできる真空冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、被冷却物を収容する処理槽、処理槽と真空配管によって接続しており処理槽内の気体を吸引する真空発生装置を持ち、処理槽内を真空化することで処理槽内に設けた被冷却物の冷却を行う真空冷却装置において、前記処理槽内の圧力を検出する槽内圧力検出装置を設け、真空冷却装置では、真空冷却後に行う復圧工程時における処理槽内の圧力上昇速度を計測しておき、圧力上昇速度が以前よりも早くなったことが確認された場合に真空漏れ発生の判定を行うものであって、復圧工程時に行う処理槽内圧力上昇速度の計測は、大気圧よりも低く設定した計測終了圧力値に達するまでの時間に基づいて行うものであることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記の真空冷却装置において、復圧工程時に行う処理槽内圧力上昇速度の計測は、真空冷却終了時の処理槽内圧力よりも高く設定した計測開始圧力値に達した時点から時間の計測を開始し、大気圧よりも低く設定した計測終了圧力値に達するまでの時間を圧力上昇時間として記録しておき、以前に測定した圧力上昇時間との比較を行うことによって真空漏れ発生の判定を行うものであることを特徴とする。
【0010】
本発明では、真空冷却を終了した後の処理槽内を大気圧に戻す際、真空度が所定の範囲分を変化するのに要する時間を計測しておくことによって、真空漏れを検出している。冷却を終了すると、真空解除弁を開くことで処理槽内への外気導入を行い、処理槽内を大気圧まで戻しているが、この時の圧力上昇速度は被冷却物の状態によって異なるということはない。真空漏れが発生していなければ、圧力上昇速度は真空解除弁を通る外気の量によって定まり、真空度が所定の範囲分を変化する時間は毎回ほぼ一定となる。この時に真空漏れが発生していた場合には、漏れ部分からも外気が入るため、外気の流入量は増加する。すると、同じ圧力幅分であっても圧力上昇に要する時間は短くなる。所定範囲分の圧力上昇に要する時間を記録しておき、その時間を比較することで真空漏れの有無を判定する。所定範囲分の圧力上昇時間が以前のものより明らかに短くなっている場合、真空漏れが発生していると判断することができる。
【0011】
復圧工程時に行う処理槽内圧力上昇速度の計測は、真空冷却終了時の処理槽内圧力よりも高く設定した計測開始圧力値に達した時点から時間の計測を開始するようにしておくことで、真空冷却終了時の槽内圧力が変動していても計測開始の圧力値を一定にすることができる。また、槽内圧力が大気圧に近づくと圧力上昇速度は低下し、真空漏れによる外気進入の影響が相対的に小さくなる。計測終了圧力値は大気圧より低い圧力値に設定することで、真空漏れによる影響が大きく現れるため、真空漏れの判定精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明を実施することで、真空漏れが発生した場合に真空漏れの発生を検出することができる。そのため、真空漏れ発生した場合にはその対処を行うことで、真空冷却に要する時間が長くなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を実施している真空冷却装置のフロー図
【
図2】真空冷却運転時における真空漏れ発生時と正常時での圧力変化状況例を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明を実施している真空冷却装置のフロー図、
図2は真空冷却運転時における真空漏れ発生時と正常時での圧力変化状況例を示したグラフである。真空冷却装置は、処理槽2、真空発生装置1、熱交換器4、冷水ユニット3、ドレンタンク6などからなっている。真空冷却装置は、処理槽2の内部を真空化することによって、処理槽2に収容した被冷却物(高温の食品)から水分を蒸発させ、その際に発生する気化熱の作用によって冷却を行う。
【0015】
処理槽2と真空発生装置1の間は、真空配管9によって接続しておき、真空発生装置1を作動することによって処理槽2内の気体を排出する。このとき、処理槽2内の気体に加えて、被冷却物から発生した蒸気も真空発生装置1で吸引するようにしていると、真空発生装置1が排出しなければならない気体の体積が大きくなる。特に処理槽2内においては、減圧が進むと収容している被冷却物から水分が蒸発し、水分は蒸気になると体積が大幅に大きくなるため、この蒸気まで吸引していると、減圧の効率が悪くなってしまう。そのため真空配管9には熱交換器4を設けておき、真空発生装置1が吸引している気体や気体中の蒸気を冷却するようにしている。熱交換器4で気体の冷却を行うと、真空発生装置1で排出しなければならない気体の体積が小さくなるため、真空発生装置1での減圧効率が向上する。
【0016】
熱交換器4は冷水ユニット3と接続しておき、冷水ユニット3で発生させた冷水を内部のタンクにためるようにしている。熱交換器4では、冷水をためているタンクを貫通するようにした複数の伝熱管を設置し、伝熱管内に処理槽2から吸引してきた気体を分散して流すことによって、吸引気体の冷却を行う。熱交換器4の下方には、熱交換器4で発生した凝縮水(ドレン)をためておくドレンタンク6を設ける。熱交換器4で発生したドレンは、熱交換器4の下部に設けているドレン集合室で集合した後に、その下方に設けているドレンタンク6へ流れ落ちる。
【0017】
ドレンタンク6の底部には、ドレンを排出するための排水管と、排水管途中に設置している排水弁を設けておき、排水弁を開くことでドレンを排出する。なお、真空冷却装置の運転によってドレンタンク6内が負圧になっている場合には、排水弁を開いてもドレンタンク6からのドレン排出は行えない。そのため、ドレンタンク6からのドレン排出は、真空冷却運転が終了し、処理槽2内を大気圧まで戻した後に行う。
【0018】
処理槽2にはエアフィルター5と真空解除弁8を持っている外気導入配管を設けている。真空冷却装置では、真空冷却時に処理槽2を高真空状態とするが、処理槽2内の被冷却物を出し入れするためには処理槽2内を大気圧に戻す必要がある。真空冷却が終われば外気導入配管を通して外気を導入し、処理槽内の圧力を大気圧まで戻す。被冷却物の処理槽内からの取り出しは、処理槽内を大気圧に戻した後に行うことになる。
【0019】
真空冷却装置での運転は、被冷却物を処理槽2内に収容し、処理槽2を密閉した状態で開始する。真空発生装置1の作動を行うと、真空発生装置1が真空配管9を通して処理槽2内の気体を吸引する。処理槽2内の圧力が大気圧に近い状態の場合、真空発生装置1で気体の吸引を行うと、処理槽2内の圧力は急激に低下していく。また、冷水ユニット3では冷水を製造して熱交換器4へ供給しておき、真空配管9を通して吸引している気体は、熱交換器4で冷却する。蒸気を冷却することによって凝縮水にすると、体積は大幅に縮小する。気体の体積が小さくなると、真空発生装置1で排出しなければならない気体量が少なくなるため、より早く処理槽2内の圧力を低下することができ、冷却に要する時間を短縮することができる。
【0020】
処理槽2内の圧力が低下し、圧力が処理槽内に収納している被殺菌物の飽和圧力よりも低くなると、被冷却物内部の水分が蒸発する。水分が蒸発する際には気化熱を奪っていくため、被冷却物では温度が低下する。真空冷却の終期には、処理槽2内での真空度は高くなっており、圧力の低下は緩やかになっている。真空発生装置1による減圧は、被冷却物の温度が目標温度になるまで行う。
図2では、正常時の場合は時刻Aで目標温度に到達しており、真空漏れ発生時の場合は時刻Dで目標温度に到達している。
【0021】
被冷却物が目標温度に到達すると、真空発生装置1の運転を停止し、次に処理槽2内を大気圧に戻す復圧工程を行う。復圧工程では、真空解除弁8を開き、外気導入配管を通して処理槽2内へ外気を導入する。外気導入配管にはエアフィルター5を設けており、エアフィルター5を通した外気を導入するようにしている。
【0022】
復圧工程時、真空冷却終了時点の圧力値と大気圧との間に設定している所定の圧力値幅分の変化に要する時間を計測するようにしておく。槽内圧力検出装置7にて処理槽内の圧力値を検出しておき、真空冷却終了時の槽内圧力よりは高い値に設定している計測開始圧力値に達した時点から時間の計測を開始し、大気圧よりは低い値であって、計測開始圧力値よりは高い値に設定している計測終了圧力値に達するまでの時間を計測する。計測した時間は真空漏れ判定用の時間として記録しておき、計測値を前回分の記録値と比較することで、真空漏れの有無を判定する。
【0023】
この真空冷却装置で真空冷却運転を行った場合の圧力変化状況例を、
図2に基づいて説明する。
図2においては、正常時の処理槽内圧力値を実線、真空漏れ発生時の処理槽内圧力値を一点鎖線で表している。真空漏れ発生時の処理槽内圧力を記している一点鎖線のグラフでは、減圧段階でも真空部に外気が入り込むため、圧力値は正常時より遅れて低下している。
【0024】
図2での正常時の圧力曲線においては、真空漏れを判定するための計測開始圧力値には時刻Bで到達しており、計測終了圧力値には時刻Cで到達している。時刻Bから時刻Cまでの時間が真空漏れ判定のための圧力上昇時間であり、この圧力上昇時間(時間T1)を記録しておく。
図2での真空漏れ発生時の圧力曲線においては、計測開始圧力値には時刻Eで到達しており、計測終了圧力値には時刻Fで到達している。ここでは時刻Eから時刻Fまでの時間が真空漏れ判定のための圧力上昇時間(時間T2)となる。
【0025】
復圧工程での圧力上昇速度は、被冷却物の状態や冷却温度には関係なく、処理槽内へ入ってくる外気の量によって定まる。正常時の場合に処理槽に入る外気量は、外気導入配管を通して送られるもののみであり、外気導入配管を通過する外気量は毎回ほぼ一定となるため、所定の圧力範囲分を上昇する圧力上昇時間もほぼ一定となる。真空漏れが発生していた場合は、外気導入配管を通じて入る外気量に加えて、漏れ発生部から入る外気量が加わるため、処理槽2での圧力上昇速度が速くなる。そのため、真空漏れ発生時の圧力上昇時間である時間T2は、正常時の圧力上昇時間である時間T1よりも短くなっている。真空漏れの判断は、前回の圧力上昇時間(時間T1)と今回の圧力上昇時間(時間T2)を比較し、前回値に比べて判定値分以上短くなっていた場合には、真空漏れ発生との判定を行う。
【0026】
真空冷却装置では、真空漏れが発生しているとの判定を行った場合には、真空漏れ発生の報知を行う。真空漏れが発生していても被冷却物を設定した冷却温度まで冷却することができるのであれば、真空冷却装置の使用を継続することができるが、その場合でも真空冷却に要する時間は真空漏れが発生していない時より長くなる。真空漏れ発生の報知が行われ、真空漏れが発生していることを管理者が知ることができれば、真空漏れをふさぐ対応をとることことにより、真空冷却での冷却速度を回復することができる。
【0027】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 真空発生装置
2 処理槽
3 冷水ユニット
4 熱交換器
5 エアフィルター
6 ドレンタンク
7 槽内圧力検出装置
8 真空解除弁
9 真空配管