特許第6196851号(P6196851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196851
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】湿気硬化型ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20170904BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20170904BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20170904BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20170904BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   C09J175/04
   C09J175/06
   C09J175/08
   C09J11/04
   C09J11/06
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-185639(P2013-185639)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-52063(P2015-52063A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸雄
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−525429(JP,A)
【文献】 特表2005−504867(JP,A)
【文献】 特表平10−500729(JP,A)
【文献】 特表平08−503513(JP,A)
【文献】 特開平02−279783(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00979835(EP,A1)
【文献】 国際公開第2012/041719(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C08G 18/00− 18/87
C08G 71/00− 71/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてなり且つイソシアネート基を有する反応物100重量部、平均粒子径が20nm〜20μmである無機充填剤20重量部以上、及びモノイソシアネート化合物0.1重量部以上を含有することを特徴とする湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項2】
ポリオール化合物が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリアルキレンポリオールよりなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項3】
無機充填剤が、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムよりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項4】
モノイソシアネート化合物がp−トルエンスルホニルイソシアネートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機充填剤の添加による熱安定性の低下が高く低減されている湿気硬化型ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化型ホットメルト接着剤は、シックハウス症候群の原因とされる揮発性有機化合物(VOC)を含んでおらず、作業衛生や環境汚染に対する対策となることから、接着剤やシーリング剤などの様々な用途に用いられている。
【0003】
このような湿気硬化型ホットメルト接着剤としては、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とする湿気硬化型ホットメルト接着剤が知られている(例えば、特許文献1など)。ウレタンプレポリマーが有しているイソシアネート基の一部と大気や基材中に含まれている水分とが反応してアミンとなり、生成したアミンが他のイソシアネート基と反応して架橋構造を形成することにより、ホットメルト型接着剤が硬化する。また、湿気硬化型ホットメルト接着剤には、接着強度などを調整するために、炭酸カルシウムやタルクなどの無機充填剤が添加される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−262113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
湿気硬化型ホットメルト接着剤の接着強度を高く向上させるためには、多量の無機充填剤を湿気硬化型ホットメルト接着剤に添加する必要がある。しかしながら、多量の無機充填剤を含んでいる湿気硬化型ホットメルト接着剤は、加熱安定性が低く、塗工温度で数時間保持するとゲル化が生じて流動性が低下して塗工が困難となる問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、多量の無機充填剤の添加による熱安定性の低下が高く低減されている湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてなり且つイソシアネート基を有する反応物100重量部、無機充填剤20重量部以上、及びモノイソシアネート化合物0.1重量部以上を含有することを特徴とする。
【0008】
[ウレタンプレポリマー]
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマーを反応物として含有している。このウレタンプレポリマーはイソシアネート基を有している。ウレタンプレポリマーは、一分子中にイソシアネート基を有しているが、分子鎖両末端にイソシアネート基を有していることが好ましい。
【0009】
(ポリオール化合物)
ポリオール化合物としては、一分子中にヒドロキシル基を2個以上有する化合物であれば特に制限されないが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリアルキレンポリオールなどが好ましく挙げられる。これらのポリオール化合物によれば、湿気硬化型ホットメルト接着剤の粘度や接着強度を容易に調整することができる。なお、ポリオール化合物は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0010】
ポリオール化合物は一分子中にヒドロキシル基を、好ましくは2〜3個、より好ましくは2個有している。このようなポリオール化合物を用いることにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤の熱安定性を向上させることができる。
【0011】
ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸とポリオールとの反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ドデカン二酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、及びドデカメチレンジカルボン酸等のジカルボン酸などが挙げられる。また、ポリオールとしては、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及びシクロヘキサンジオールなどが挙げられる。多価カルボン酸及びポリオールは、それぞれ単独で用いられてもよく、二種以上を併用することもできる。ポリエステルポリオールの水酸基価は、2〜160mgKOH/gが好ましい。
【0012】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、これらのランダム共重合体やブロック共重合体、及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールA骨格のヒドロキシ基などの活性水素部分にアルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド等)を付加反応させて得られるポリエーテルポリオールなどが挙げられる。ビスフェノールA骨格の両末端のそれぞれに、一種又は二種以上のアルキレンオキサイドが、モノマー単位にて1〜10モル修飾されていることが好ましい。
【0013】
ポリアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、及び水素化ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0014】
ポリオール化合物としては、上述したポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリアルキレンポリオールの他に、必要に応じて、他のポリオール化合物を併用してもよい。他のポリオール化合物としては、ポリヘキサメチレンカーボネートポリオール、ポリシクロヘキサンジメチレンカーボネートポリオールなどのポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0015】
ポリオール化合物の軟化点は、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。ポリオール化合物の軟化点を上記範囲内とすることにより、ポリイソシアネート化合物との反応温度を低くすることができる。
【0016】
なお、本発明においてポリオール化合物の軟化点とは、JIS K6863に規定される環球法に準拠して測定された値とする。
【0017】
ポリオール化合物の数平均分子量は、300〜80,000が好ましく、500〜60,000がより好ましい。ポリオール化合物の数平均分子量を300以上とすることにより、ポリイソシアネート化合物との反応時に発泡による気泡の発生を低減することができる。また、ポリオール化合物の数平均分子量を80,000以下とすることにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤の優れた塗工性を確保することができる。
【0018】
なお、本発明において、ポリオール化合物の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定された値とする。GPCによる測定において、測定装置としては、例えば、送液装置がLC−9A、屈折率検出計がRID−6A、カラムオーブンがCTO−6A、データ解析装置がC−R4Aからなるシステム(いずれも島津製作所社製)を使用することができる。GPCカラムとしては、例えば、GPC−805(排除限界400万)3本、GPC−804(排除限界40万)1本(以上すべて島津製作所社製)をこの順に接続して使用することができる。また、測定条件は、試料注入量25μl(リットル)で、溶出液テトラヒドロフラン(THF)、送液量1.0ml/分、カラム温度45℃とする。
【0019】
ポリイソシアネート化合物としては、一分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限されず、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソオシアネート、2,6−トリレンジイソオシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。なかでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びカルボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0020】
ウレタンプレポリマーを合成する際には、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基(−NCO)の合計と、ポリオール化合物が有するヒドロキシル基(−OH)の合計とのモル比([NCO]/[OH])を、1.5〜5.0とするのが好ましい。モル比([NCO]/[OH])が1.5未満では、得られるウレタンプレポリマーの粘度が高くなり過ぎ、湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗工性や作業性を低下させる虞れがある。また、モル比([NCO]/[OH])が5.0を超えると、得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤がポリオール化合物と反応しなかったポリイソシアネート化合物を多く含み、湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化させる際に湿気硬化型ホットメルト接着剤が発泡する虞れがある。
【0021】
ウレタンプレポリマーの数平均分子量は、300〜80,000が好ましく、500〜60,000がより好ましく、1,000〜60,000が特に好ましい。ウレタンプレポリマーの数平均分子量が上記範囲内であれば、塗工性及び接着性に優れている湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することができる。なお、本発明において、ウレタンプレポリマーの数平均分子量の測定は、上述したポリオール化合物の数平均分子量の測定方法と同様にして行うことができる。
【0022】
[無機充填剤]
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、無機充填剤を20重量部以上含んでいる。
【0023】
無機充填剤としては、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪素、含水珪素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバルーン、ガラスバルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが好ましく挙げられる。無機充填剤は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0024】
なかでも、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、ベントナイト、シラスバルーン、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムがより好ましく、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムが特に好ましい。
【0025】
無機充填剤の平均粒子径は、20nm〜20μmが好ましく、30nm〜15μmがより好ましい。無機充填剤の平均粒子径を上記範囲内とすることによって、無機充填剤の沈降を抑制し、塗工性に優れた湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することができる。
【0026】
湿気硬化型ホットメルト接着剤中における無機充填剤の含有量は、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、20重量部以上に限定される。無機充填剤の含有量が20重量部未満であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の接着強度を充分に向上できない虞れがある。湿気硬化型ホットメルト接着剤の優れた熱安定性や塗工性を確保するためには、湿気硬化型ホットメルト接着剤中における無機充填剤の含有量は、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、20〜200重量部がより好ましく、20〜150重量部が特に好ましい。
【0027】
[モノイソシアネート化合物]
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、モノイソシアネート化合物を含んでいる。モノイソシアネート化合物によれば、無機充填剤を多量に含んでいても、熱安定性の低下が高く抑制されている湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することができる。
【0028】
モノイソシアネート化合物は、一分子中にイソシアネート基を一個有している。モノイソシアネート化合物としては、オクタデシルイソシアネート、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、及びp−トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。なかでも、p−トルエンスルホニルイソシアネートが好ましい。
【0029】
湿気硬化型ホットメルト接着剤中におけるモノイソシアネート化合物の含有量は、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、0.1重量部以上に限定される。モノイソシアネート化合物の含有量を0.1重量部以上とすることによって、多量の無機充填剤の添加による湿気硬化型ホットメルト接着剤の熱安定性の低下を高く抑制することができる。また、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の優れた耐熱性を確保するために、湿気硬化型ホットメルト接着剤中におけるモノイソシアネート化合物の含有量は、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜3重量部がより好ましい。
【0030】
[他の添加剤]
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、上述した成分の他にも、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤としては、粘着付与樹脂、可塑剤、熱可塑性樹脂、硬化触媒、熱安定剤、有機系充填剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、香料、顔料、染料、及び加水分解性シリル基を有するポリマーなどが挙げられる。
【0031】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、及び芳香族石油樹脂などが挙げられる。
【0032】
可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪酸−塩基酸エステル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル、トリメリット酸エステル、塩素化パラフィン、アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油、プロセスオイル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルのエポキシ可塑剤、ビニル系モノマーを重合して得られるビニル系重合体、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステルなどが挙げられる。
【0033】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系高分子、メタクリル系高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン誘導体、ポリイソブテン、ポリオレフィン類、ポリアルキレンオキシド類、ポリウレタン類、ポリアミド類、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ニトロブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水添ニトロブタジエンゴム(水添NBR)、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(水添SBS)、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(水添SIS)、及び水添スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(水添SEBS)などを挙げることができる。
【0034】
硬化触媒は、湿気硬化型ホットメルト接着剤の湿気硬化性を向上させるために用いられる。触媒としては、アミン系硬化触媒や錫系硬化触媒などが用いられる。アミン系硬化触媒としては、モルホリン系化合物が好ましく、具体的には、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、ビス(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテル、ビス(2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノ)エチル)−(2−(4−モルホリノ)エチル)アミン、ビス(2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノ)エチル)−(2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(4−モルホリノ)プロピル)アミン、トリス(2−(4−モルホリノ)ブチル)アミン、トリス(2−(2、6−ジメチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(2、6−ジエチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(2−エチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、及びトリス(2−(2−エチル−4−モルホリノ)エチルアミンなどが挙げられる。錫系硬化触媒としては、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、及びジオクタン酸第1錫などが挙げられる。
【0035】
熱安定剤は、有機燐系化合物が好ましく、具体的には、トリクレシルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)フォスフェート、トリブトキシエチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)フォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、トリフェニルホスファイト、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィンオキサイド、芳香族リン酸縮合エステルが挙げられる。なかでも、常温で固体の有機燐系化合物が好ましく、トリフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィンオキサイド、及び芳香族リン酸縮合エステルがより好ましい。有機リン系化合物によれば、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化速度を低下させることなく、湿気硬化型ホットメルト接着剤の熱安定性を向上させることができる。
【0036】
有機充填剤の例としては、カーボンブラック、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、並びにPVC及びPMMAなど樹脂からなる粒子などが挙げられる。
【0037】
酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
【0038】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が好適に用いられる。その中でもアミン部分が3級アミンであるヒンダードアミン系光安定剤がより好ましい。具体的には、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、及びビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどが挙げられる。
【0039】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0040】
加水分解性シリル基を有するポリマーは、一分子中に少なくとも1個の架橋可能な加水分解性シリル基を有する。加水分解性シリル基は、加水分解性基が珪素原子に結合した基である。この加水分解性基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、及びアルケニルオキシド基などが挙げられる。
【0041】
加水分解性シリル基としては、反応後に有害な副生成物を生成しないので、アルコキシ基が珪素原子に結合したアルコキシシリル基が好ましい。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、及びベンジルオキシ基などを挙げることができる。なかでも、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
【0042】
アルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基等のジアルコキシシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基等のモノアルコキシシリル基を挙げることができる。加水分解性シリル基を有するポリマーは、これらのアルコキシシリル基を単独または2種以上有していてもよい。
【0043】
加水分解性シリル基を有するポリマーの主鎖としては、ポリアルキレンオキサイド、ポリエーテルポリオール、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ポリオレフィン、及びポリエステルが好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドなどが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、これらのランダム共重合体やブロック共重合体、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系重合体を構成するモノマーとしては、アルキル基の炭素数が好ましくは1〜12、より好ましくは2〜8であるアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸との双方を意味する。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレンなどの単独重合体や共重合体が挙げられ、具体的には、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒法ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−α−オレフィン共重合体(エチレン−プロピレン共重合体など)などが挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエステルポリオールが好ましく挙げられる。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールと、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸とを縮合させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0044】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法としては、特に制限されず、例えば、(1)ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させることにより予め合成したウレタンプレポリマーと、無機充填剤及びモノイソシアネート化合物と混合する方法、(2)ポリオール化合物と無機充填剤とを混合することにより混合物(a)を得、この混合物(a)とポリイソシアネート化合物とを混合して、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを形成し、これによりウレタンプレポリマーと無機充填剤とを含有する混合物(b)を得、この混合物(b)とモノイソシアネート化合物とを混合する方法などが挙げられる。
【0045】
上記(2)の方法では、先ず、ポリオール化合物と無機充填剤とを混合することにより得られた混合物(a)を得る。混合物(a)は、70mmHg以下の減圧下で、80〜120℃に加熱しながら脱水することが好ましい。
【0046】
上記(2)の方法では、次に、混合物(a)と、ポリイソシアネート化合物とを混合し、混合物(a)に含まれているポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを形成する。ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応は、混合物(a)とポリイソシアネート化合物とを混合した後、これらを70〜120℃で1〜3時間加熱しながら行うことが好ましい。
【0047】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、大気中などに含まれている水分によって、硬化して優れた接着性を呈する。このような湿気硬化型ホットメルト接着剤は、例えば、フローリング、木質ドアの框や鏡板、窓枠、敷居、手すり、幅木、回り縁や、キッチン、及びクローゼットなど、外装材、内装材及び家具など各種用途に用いることができる。
【0048】
例えば、木質ドアなどの木質の外装材や内装材の製造方法としては、湿気硬化型ホットメルト接着剤を70〜160℃に加熱溶融して木質基材上に塗工した後、木質基材上に湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して木質シートを重ね合わせて積層体を得、この積層体を養生させることにより湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化させる方法が用いられる。これにより、木質基材に木質シートが湿気硬化型ホットメルト接着剤により接着一体化されてなる外装材や内装材を製造することができる。
【0049】
木質基材としては、天然木材、合板、ミディアムデンシティファイバーボード(MDF)、パーティクルボードなどが挙げられる。木質基材には、木質シートに代えて、化粧シートが接着一体化されてもよい。化粧シートとしては、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、及びポリプロピレンなどの合成樹脂を含む合成樹脂シート、紙、金属箔などが挙げられる。化粧シートは、その表面に色や模様を付すことにより装飾性が高められていてもよい。
【0050】
加熱溶融させた湿気硬化型ホットメルト接着剤を木質基材に塗工する方法としては、ロールコーター、スプレーコーター、Tダイコーター、及びナイフコーターなどが挙げられる。
【0051】
また、積層体の養生を行う前に、積層体にロールプレス、フラットプレス、ベルトプレスなどを行うことにより、木質基材と木質シートとを圧着させることが好ましい。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、上述した通り、多量の無機充填剤の添加による熱安定性の低下が高く低減されている湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
【0054】
まず、下記する実施例及び比較例で使用したポリオール化合物(1)〜(5)、ポリイソシアネート化合物、無機系充填材(1)〜(4)、及びモノイソシアネート化合物(1)〜(3)の詳細について、以下に記載する。
【0055】
[ポリオール化合物]
・ポリオール化合物(1)
1,6−ヘキサンジオールとデカメチレンジカルボン酸とを縮合重合させてなる結晶性の直鎖脂肪族ポリエステルポリオール、数平均分子量3500、豊国製油社製 商品名「エタナコール3010」
・ポリオール化合物(2)
1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とを縮合重合させてなる結晶性の直鎖脂肪族ポリエステルポリオール、数平均分子量4500、豊国製油社製 商品名「HS 2H−451A」
・ポリオール化合物(3)
ポリエステルポリオール、数平均分子量3500、エボニックデグサ社製 商品名「ダイナコール7210」
・ポリオール化合物(4)
ポリプロピレングリコール、数平均分子量3000、旭硝子社製 商品名「エクセノール3020」
・ポリオール化合物(5)
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、数平均分子量800、ADEKA社製 商品名「BPX55」
【0056】
[ポリイソシアネート化合物]
・4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(三菱化学社製 商品名「アイソネート125M」)
【0057】
[無機系充填材]
・無機系充填材(1)
重質炭酸カルシウム、平均粒子径4.3μm、白石工業社製、商品名「ホワイトンP−30」
・無機系充填材(2)
水酸化マグネシウム、平均粒子径3.5μm、神島化学社製、商品名「#200」
・無機系充填材(3)
水酸化アルミニウム、平均粒子径8μm、住友化学社製、商品名「C−308」
・無機系充填材(4)
二酸化チタン、平均粒子径0.25μm、石原産業社製、商品名「CR90」
【0058】
[モノイソシアネート化合物]
・モノイソシアネート化合物(1)
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製、商品名「KBE−9007」
・モノイソシアネート化合物(2)
3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、商品名「Y−5187」
・モノイソシアネート化合物(3)
p−トルエンスルホニルイソシアネート、OMG社製 商品名「アディティブTI」
【0059】
[実施例1〜13及び比較例1〜2]
ポリオール化合物(1)〜(5)、及び無機系充填材(1)〜(4)を、それぞれ表1に示した配合量で、ミキサーに投入し、120℃に加熱溶融させて溶融状態の混合物(a)を得た。次に、ミキサー内を1mmHg以下まで減圧することにより溶融状態の混合物(a)を脱水し、ミキサー内を窒素ガスでパージした後に混合物(a)の温度を80℃まで冷却させた。
【0060】
次に、ミキサー内の混合物(a)に、ポリイソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを表1に示した配合量で投入した後、これらを窒素ガス雰囲気下で3時間撹拌することにより、ポリオール化合物(1)〜(5)及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを全て反応させて、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー100重量部を合成し、これによりウレタンプレポリマーと無機系充填材(1)〜(4)とを含む混合物(b)を得た。なお、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基(NCO)の合計と、ポリオール化合物(1)〜(5)が有するヒドロキシル基(OH)の合計とのモル比([NCO]/[OH])は、表1に示す通りであった。
【0061】
そして、混合物(b)に、モノイソシアネート化合物(1)〜(3)を表1に示した配合量で投入し、窒素ガス雰囲気下で1時間撹拌することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を得た。なお、実施例及び比較例において得られた各湿気硬化型ホットメルト接着剤は、常温(20±15℃)下で固体であった。
【0062】
[評価]
実施例及び比較例で作製した湿気硬化型ホットメルト接着剤の加熱安定性及びせん断接着強度を、下記の要領に従って、評価した。
【0063】
(加熱安定性:初期粘度)
湿気硬化型ホットメルト接着剤を金属缶へ充填し、金属缶内を窒素ガスでパージした。次に、金属缶を温度20℃、相対湿度50%の雰囲気下で24時間に亘って静置した後、120℃に設定したオーブン内で1時間に亘って加熱し、その後、金属缶中に充填されていた湿気硬化型ホットメルト接着剤の粘度(mPa・s)を、JAI−7の方法に準拠し、BM型粘度計を用いて測定した。これにより得られた粘度を、表1に、「初期粘度」の欄に示した。
【0064】
(加熱安定性:加熱劣化後粘度)
湿気硬化型ホットメルト接着剤を金属缶へ充填し、金属缶内を窒素ガスでパージした。次に、金属缶を温度20℃、相対湿度50%の雰囲気下で24時間に亘って静置した後、120℃に設定したオーブン内で24時間に亘って加熱し、その後、金属缶中に充填されていた湿気硬化型ホットメルト接着剤の粘度(mPa・s)を、JAI−7の方法に準拠し、BM型粘度計を用いて測定した。これにより得られた粘度を、表1に、「加熱劣化後粘度」の欄に示した。なお、比較例2の湿気硬化型ホットメルト接着剤では、加熱後にゲル化していたため、粘度の測定を行うことができなかった。
【0065】
(せん断接着強度)
木質基材(MDF:Medium Density Fiberboard)を2枚用意した。湿気硬化型ホットメルト接着剤を、120℃に加熱したロールコーターを用いて一方の木質基材の一面に、150g/cm2の塗工量で塗工した。次に、他方の木質基材を、一方の木質基材の一面上に湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して重ね合わせた後、これらを0.5MPaの圧力で10秒間に亘ってプレスすることにより試験体を得た。プレスから20分後に、試験体のせん断接着強度(N/mm2)を引っ張り速度5mm/分で測定した。
【0066】
【表1】