特許第6196852号(P6196852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196852
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】湿気硬化型ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20170904BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   C09J175/06
   C09J175/08
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-186690(P2013-186690)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-52090(P2015-52090A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸雄
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−144850(JP,A)
【文献】 特開2011−084686(JP,A)
【文献】 特開2013−151676(JP,A)
【文献】 特開2013−082919(JP,A)
【文献】 特開2011−116817(JP,A)
【文献】 特開2008−248152(JP,A)
【文献】 特開2009−242557(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/153907(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が8〜12である直鎖ポリカルボン酸及び炭素数が2〜6である直鎖ポリオールを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール(A)15〜35重量%、
軟化点が40℃以下である非結晶性ポリエステルポリオール(B)10〜35重量%、
軟化点が60℃以上である非結晶性ポリエステルポリオール(C)10〜30重量%、及び
数平均分子量が3000以下であるポリエーテルポリオール(D)5〜30重量%を含んでいるポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを反応させてなり、且つ末端にイソシアネート基を有しているウレタンプレポリマーを含有していることを特徴とする湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項2】
基材と化粧シートとを接着一体化させるために用いられることを特徴とする請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固化速度が早いと共に、優れた初期接着強度を発現することが可能な湿気硬化型ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家具、外装材及び内装材などの基材表面に、着色などの化粧が施された化粧シートを接着剤を用いて接着することにより、意匠性を付与することが行われている。
【0003】
基材と化粧シートとの接着に用いられる接着剤としては、有機溶剤を含む接着剤や、湿気硬化型ホットメルト接着剤が知られている。なかでも、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、シックハウス症候群の原因とされる揮発性有機化合物(VOC)を含んでおらず、作業衛生や環境汚染に対する対策となることから多く用いられている。
【0004】
湿気硬化型ホットメルト接着剤としては、例えば、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分として含んでいるホットメルト型接着剤が用いられている(例えば、特許文献1)。このような湿気硬化型ホットメルト接着剤は、加熱溶融させた状態で基材に塗工された後、冷却固化することにより、初期接着強度を発現する。その後、湿気硬化型ホットメルト接着剤が塗工された基材を一定時間放置することによって、イソシアネート基と大気や基材中に含まれている湿気とが反応してウレタンプレポリマーが架橋構造を形成し、これにより湿気硬化型ホットメルト接着剤が硬化して接着強度がさらに向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−262113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、優れた初期接着強度を発現できるものの、塗工後に冷却固化する際の固化速度が遅い。意匠性や機能性の観点から、曲面部、凹凸部、角部や溝部などの複雑な形状を有する基材が多く用いられている。このような基材の形状に合わせて化粧シートを折り曲げたり撓ませたりしながら、基材に湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いて化粧シートを接着させる場合、塗工された湿気硬化型ホットメルト接着剤が冷却固化して初期接着強度を発現するまでに時間がかかり、そのため、基材に湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して化粧シートを貼り合わせた後、初期接着強度を発現する前に、折り曲げたり撓ませたりされた化粧シートが、その復元力によって剥離する問題が生じる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、固化速度が早いと共に、優れた初期接着強度を発現することができ、複雑な形状を有する基材に、この基材の形状に沿って化粧シートなどの被接着物を湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して貼り合わせた後、湿気硬化型ホットメルト接着剤が初期接着強度を発現するまでの間に、基材から被接着物が剥離することを低減することが可能な湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、
炭素数が8〜12である直鎖ポリカルボン酸及び炭素数が2〜6である直鎖ポリオールを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール(A)15〜45重量%、
軟化点が40℃以下である非結晶性ポリエステルポリオール(B)5〜40重量%、
軟化点が60℃以上である非結晶性ポリエステルポリオール(C)5〜30重量%、及び
数平均分子量が3000以下であるポリエーテルポリオール(D)5〜45重量%を含んでいるポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを反応させてなり、且つ末端にイソシアネート基を有しているウレタンプレポリマーを含有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、初期接着強度に優れているだけでなく、固化速度が早い。したがって、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、塗工後に速やかに冷却固化して、優れた初期接着強度を早期に発揮することができる。したがって、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤によれば、これを介して、複雑な形状を有する基材に、この基材の形状に沿って化粧シートなどの被接着物を貼り合わせた後、湿気硬化型ホットメルト接着剤が冷却固化することにより初期接着強度を発現するまでの間に、基材から被接着物が剥離することを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてなり、且つ末端にイソシアネート基を有しているウレタンプレポリマーを含有している。
【0011】
[ポリオール化合物]
本発明に用いられるポリオール化合物としては、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物が用いられる。ポリオール化合物は、結晶性ポリエステルポリオール(A)、軟化点が40℃以下である非結晶性ポリエステルポリオール(B)、軟化点が60℃以上である非結晶性ポリエステルポリオール(C)、及びポリエーテルポリオール(D)を含んでいる。
【0012】
(結晶性ポリエステルポリオール(A))
結晶性ポリエステルポリオール(A)は、炭素数が8〜12である直鎖ポリカルボン酸及び炭素数が2〜6である直鎖ポリオールを縮合重合させることにより得られるものである。
【0013】
炭素数が8〜12である直鎖ポリカルボン酸としては、炭素数が8〜12である直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。具体的には、セバシン酸(炭素数10)、及びデカメチレンジカルボン酸(炭素数12)などが挙げられる。
【0014】
直鎖ポリカルボン酸の炭素数は、偶数であることが好ましい。炭素数が偶数である直鎖ポリカルボン酸によれば、より高い結晶性を有し、これにより貼り合わせ後、初期接着強度を発現するまでの間に複雑な形状を有する基材に対して被接着物を剥離することなく貼り合わせることが可能な湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することができる。
【0015】
炭素数が2〜6である直鎖ポリオールとしては、炭素数が2〜6である直鎖アルキレングリコールが好ましく挙げられる。具体的には、エチレングリコール(炭素数2)、ブタンジオール(炭素数4)、及びヘキサンジオール(炭素数6)が挙げられる。
【0016】
炭素数が2〜6である直鎖ポリオールの炭素数は、偶数であることが好ましい。炭素数が偶数である炭素数が2〜6である直鎖ポリオールは、より高い結晶性を有し、これにより貼り合わせ後、初期接着強度を発現するまでの間に複雑な形状を有する基材に対して被接着物を剥離することなく貼り合わせることが可能な湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することができる。
【0017】
なお、本発明において、結晶性ポリエステルポリオールとは、JIS K7121に規定される示差走査熱量測定(DSC)の測定において、10℃/分の昇温速度で測定した融解曲線の吸熱量が3cal/g以上であるポリエステルポリオールを意味する。また、非結晶性ポリエステルポリオールとは、JIS K7121に規定される示差走査熱量測定(DSC)の測定において、10℃/分の昇温速度で測定した融解曲線の吸熱量が3cal/g未満であるポリエステルポリオールを意味する。
【0018】
結晶性ポリエステルポリオール(A)の水酸基価は、5〜200が好ましく、10〜150がより好ましく、20〜40が特に好ましい。水酸基価が低過ぎる結晶性ポリエステルポリオール(A)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗工性を低下させる虞れがある。また、水酸基価が高過ぎる結晶性ポリエステルポリオール(A)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度を十分に向上させることができない虞れがある。
【0019】
なお、本発明において、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールの水酸基価は、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール1g中に含まれている水酸基をアセチル化するために要する水酸化カリウムの量(g)を意味する。具体的には、無水酢酸によりポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール中の水酸基をアセチル化した後、使われなかった無水酢酸を水酸化カリウムで滴定することにより測定できる。
【0020】
結晶性ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量は、1000〜20000が好ましく、1000〜10000がより好ましく、1000〜5000が特に好ましい。数平均分子量が小さ過ぎる結晶性ポリエステルポリオール(A)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度を十分に向上させることができない虞れがある。また、数平均分子量が大き過ぎる結晶性ポリエステルポリオール(A)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗工性を低下させる虞れがある。
【0021】
なお、本発明において、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することができる。例えば、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールを1.0重量%の濃度となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させることにより試料溶液を調製し、この試料溶液を用いて下記測定装置及び測定条件によるGPC法により、標準ポリスチレンを基準として、屈折率検出計を用いて行うことができる。
【0022】
測定装置としては、例えば、送液装置がLC−9A、屈折率検出計がRID−6A、カラムオーブンがCTO−6A、データ解析装置がC−R4Aからなるシステム(いずれも島津製作所社製)を使用することができる。GPCカラムとしては、例えば、GPC−805(排除限界400万)3本、GPC−804(排除限界40万)1本(以上すべて島津製作所社製)をこの順に接続して使用することができる。また、測定条件は、試料注入量25μl(リットル)で、溶出液テトラヒドロフラン(THF)、送液量1.0ml/分、カラム温度45℃とする。
【0023】
ポリオール化合物中における結晶性ポリエステルポリオール(A)の含有量は、15〜45重量%に限定されるが、15〜35重量%が好ましく、20〜30重量%がより好ましい。結晶性ポリエステルポリオール(A)の含有量が上記範囲内である湿気硬化型ホットメルト接着剤は、初期接着強度に優れると共に、湿気硬化後に接着強度がさらに向上する。なお、複数種の結晶性ポリエステルポリオール(A)を用いる場合、結晶性ポリエステルポリオール(A)の含有量とは、複数種の結晶性ポリエステルポリオール(A)の総含有量とする。
【0024】
(非結晶性ポリエステルポリオール(B))
非結晶性ポリエステルポリオール(B)の軟化点は、40℃以下に限定される。軟化点が上記範囲内である非結晶性ポリエステルポリオール(B)によれば、湿気硬化後の接着強度がより向上された湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することができる。
【0025】
なお、本発明において、非結晶性ポリエステルポリオールの軟化点は、JIS K6863に規定されている環球法に準拠して測定した値とする。
【0026】
非結晶性ポリエステルポリオール(B)としては、ポリカルボン酸とポリオールとを縮合重合させてなるものが好ましく挙げられる。ポリカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、及びドデカメチレンジカルボン酸などが挙げられる。また、ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0027】
非結晶性ポリエステルポリオール(B)の水酸基価は、10〜150が好ましく、10〜100がより好ましく、20〜40が特に好ましい。水酸基価が低過ぎる非結晶性ポリエステルポリオール(B)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗工性を低下させる虞れがある。また、水酸基価が高過ぎる非結晶性ポリエステルポリオール(B)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の接着強度を低下させる虞れがある。
【0028】
非結晶性ポリエステルポリオール(B)の数平均分子量は、1000〜10000が好ましく、1000〜5000がより好ましい。数平均分子量が小さ過ぎる非結晶性ポリエステルポリオール(B)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度を十分に向上させることができない虞れがある。また、数平均分子量が大き過ぎる非結晶性ポリエステルポリオール(B)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗工性を低下させる虞れがある。
【0029】
ポリオール化合物中における非結晶性ポリエステルポリオール(B)の含有量は、5〜40重量%に限定されるが、10〜35重量%が好ましく、20〜35重量%がより好ましい。非結晶性ポリエステルポリオール(B)の含有量が上記範囲内である湿気硬化型ホットメルト接着剤は、初期接着強度に優れると共に、湿気硬化後に接着強度がさらに向上する。なお、複数種の非結晶性ポリエステルポリオール(B)を用いる場合、非結晶性ポリエステルポリオール(B)の含有量とは、複数種の非結晶性ポリエステルポリオール(B)の総含有量とする。
【0030】
(非結晶性ポリエステルポリオール(C))
非結晶性ポリエステルポリオール(C)の軟化点は、60℃以上に限定されるが、70〜110℃が好ましい。軟化点が上記範囲内である非結晶性ポリエステルポリオール(C)によれば、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度を向上させることができる。
【0031】
非結晶性ポリエステルポリオール(C)としては、ポリカルボン酸とポリオールとを縮合重合させてなるものが好ましく挙げられる。ポリカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、及びドデカメチレンジカルボン酸などが挙げられる。また、ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0032】
非結晶性ポリエステルポリオール(C)の数平均分子量は、1000〜10000が好ましく、1000〜5000がより好ましい。数平均分子量が小さ過ぎる非結晶性ポリエステルポリオール(C)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度を十分に向上させることができない虞れがある。また、数平均分子量が大き過ぎる非結晶性ポリエステルポリオール(C)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗工性を低下させる虞れがある。
【0033】
非結晶性ポリエステルポリオール(C)の水酸基価は、10〜150が好ましく、10〜100がより好ましく、30〜60が特に好ましい。水酸基価が低過ぎる非結晶性ポリエステルポリオール(C)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗工性を低下させる虞れがある。また、水酸基価が高過ぎる非結晶性ポリエステルポリオール(C)では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の接着強度を低下させる虞れがある。
【0034】
ポリオール化合物中における非結晶性ポリエステルポリオール(C)の含有量は、5〜30重量%に限定されるが、10〜30重量%が好ましく、15〜30重量%がより好ましい。非結晶性ポリエステルポリオール(C)の含有量が上記範囲内である湿気硬化型ホットメルト接着剤は、初期接着強度に優れる。なお、複数種の非結晶性ポリエステルポリオール(C)を用いる場合、非結晶性ポリエステルポリオール(C)の含有量とは、複数種の非結晶性ポリエステルポリオール(C)の総含有量とする。
【0035】
(ポリエーテルポリオール(D))
ポリエーテルポリオール(D)の数平均分子量は、3000以下に限定されるが、100〜3000が好ましく、500〜3000がより好ましく、1000〜3000が特に好ましい。数平均分子量が上記範囲内であるポリエーテルポリオール(D)によれば、初期接着強度に優れていると共に、湿気硬化後の接着強度にも優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することができる。
【0036】
ポリエーテルポリオール(D)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールにおいて、ポリオキシエチレン単位とポリオキシプロピレン単位との配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、例えば、ビスフェノールAの活性水素にアルキレンオキサイドを付加反応させることにより得られる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、及びイソブチレンオキサイドなどが挙げられる。ビスフェノールAに二種以上のアルキレンオキサイドが付加している場合、各アルキレンオキサイド単位の配列はランダムでもブロックでもよい。
【0037】
なかでも、ポリエーテルポリオール(D)としては、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。また、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の中でも、ビスフェノールAにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドが付加してなる付加物がより好ましい。
【0038】
ポリオール化合物中におけるポリエーテルポリオール(D)の含有量は、5〜45重量%に限定されるが、5〜30重量%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。ポリエーテルポリオール(D)の含有量が上記範囲内である湿気硬化型ホットメルト接着剤は、初期接着強度に優れると共に、湿気硬化後の接着強度にも優れる。なお、複数種のポリエーテルポリオール(D)を用いる場合、ポリエーテルポリオール(D)の含有量とは、複数種のポリエーテルポリオール(D)の総含有量とする。
【0039】
ポリオール化合物としては、上述した結晶性ポリエステルポリオール(A)、非結晶性ポリエステルポリオール(B)、非結晶性ポリエステルポリオール(C)、及びポリエーテルポリオール(D)以外にも、本発明の目的を阻害しない範囲で、他のポリオールを含んでいてもよい。他のポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトン、ポリアルキレンポリオール、及びポリカーボネートなどが挙げられる。
【0040】
[ポリイソシアネート化合物]
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマーを含有している。ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を一分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物である。
【0041】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4−MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、カルボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI、2,4体、2,6体、もしくはこれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。これらは一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0042】
なかでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びカルボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0043】
[ウレタンプレポリマー]
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤に含まれるウレタンプレポリマーは、上述した各成分、すなわち、結晶性ポリエステルポリオール(A)、非結晶性ポリエステルポリオール(B)、非結晶性ポリエステルポリオール(C)、及びポリエーテルポリオール(D)を含むポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる。
【0044】
ウレタンプレポリマーを合成する際には、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基(NCO)の合計と、ポリオール化合物が有するヒドロキシル基(OH)の合計とのモル比([NCO]/[OH])を、1.5〜3とするのが好ましい。モル比([NCO]/[OH])が1.5未満では、得られるウレタンプレポリマーの粘度が高くなり過ぎ、湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗工性や作業性を低下させる虞れがある。また、モル比([NCO]/[OH])が3を超えると、得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤がポリオール化合物と反応しなかったポリイソシアネート化合物を多く含み、湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化させる際に湿気硬化型ホットメルト接着剤が発泡する虞れがある。
【0045】
ウレタンプレポリマーの合成方法としては、例えば、ポリオール化合物を80〜120℃に加熱して溶融状態とし、減圧下などで脱水した後、この溶融状態のポリオール化合物に窒素雰囲気下でポリイソシアネート化合物を添加し、ポリオール化合物とポリイソシアネートとを反応させる方法が好ましく用いられる。
【0046】
[他の添加剤]
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、上述したウレタンプレポリマー以外にも、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤としては、粘着付与樹脂、オイル、可塑剤、熱可塑性樹脂、硬化触媒、安定剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、加水分解性シリル基を有するポリマー、着色剤、難燃剤、香料、顔料、及び染料などが挙げられる。
【0047】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、及び芳香族石油樹脂などが挙げられる。粘着付与樹脂の環球軟化点は、90〜150℃が好ましい。
【0048】
オイルとしては、プロセスオイル、エクステンダーオイル、ソフナー、ナフテン系オイル、パラフィン系オイルなどが挙げられる、
【0049】
可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪酸−塩基酸エステル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル、トリメリット酸エステル、塩素化パラフィン、アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油、プロセスオイル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルのエポキシ可塑剤、ビニル系モノマーを重合して得られるビニル系重合体、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステルなどが挙げられる。
【0050】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系高分子、メタクリル系高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン誘導体、ポリイソブテン、ポリオレフィン類、ポリアルキレンオキシド類、ポリウレタン類、ポリアミド類、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ニトロブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水添ニトロブタジエンゴム(水添NBR)、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(水添SBS)、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(水添SIS)、及び水添スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(水添SEBS)などを挙げることができる。
【0051】
硬化触媒は、湿気硬化型ホットメルト接着剤の湿気反応性を向上させるために用いられる。触媒としては、アミン系硬化触媒や錫系硬化触媒などが用いられる。アミン系硬化触媒としては、モルホリン系化合物が好ましく、具体的には、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、ビス(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテル、ビス(2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノ)エチル)−(2−(4−モルホリノ)エチル)アミン、ビス(2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノ)エチル)−(2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(4−モルホリノ)プロピル)アミン、トリス(2−(4−モルホリノ)ブチル)アミン、トリス(2−(2、6−ジメチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(2、6−ジエチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(2−エチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、及びトリス(2−(2−エチル−4−モルホリノ)エチルアミンなどが挙げられる。錫系硬化触媒としては、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、及びジオクタン酸第1錫などが挙げられる。
【0052】
安定剤は、有機燐系化合物が好ましく、具体的にはトリクレシルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)フォスフェート、トリブトキシエチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)フォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、トリフェニルホスファイト、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィンオキサイド、芳香族リン酸縮合エステルが挙げられる。なかでも、常温で固体の有機燐系化合物が好ましく、トリフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィンオキサイド、及び芳香族リン酸縮合エステルがより好ましい。有機リン系化合物によれば、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化速度を低下させることなく、湿気硬化型ホットメルト接着剤の熱安定性を向上させることができる。
【0053】
充填剤の例としては、例えば、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪素、含水珪素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、並びにPVC及びPMMAなど樹脂からなる粒子などが挙げられる。
【0054】
酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
【0055】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が好適に用いられる。その中でもアミン部分が3級アミンであるヒンダードアミン系光安定剤がより好ましい。具体的には、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、及びビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどが挙げられる。
【0056】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0057】
加水分解性シリル基を有するポリマーは、一分子中に少なくとも1個の架橋可能な加水分解性シリル基を有する。加水分解性シリル基は、加水分解性基が珪素原子に結合した基である。この加水分解性基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、及びアルケニルオキシド基などが挙げられる。
【0058】
加水分解性シリル基としては、反応後に有害な副生成物を生成しないので、アルコキシ基が珪素原子に結合したアルコキシシリル基が好ましい。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、及びベンジルオキシ基などを挙げることができる。なかでも、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
【0059】
アルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基等のジアルコキシシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基等のモノアルコキシシリル基を挙げることができる。加水分解性シリル基を有するポリマーは、これらのアルコキシシリル基を単独または2種以上有していてもよい。
【0060】
加水分解性シリル基を有するポリマーの主鎖としては、ポリアルキレンオキサイド、ポリエーテルポリオール、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ポリオレフィン、及びポリエステルが好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドなどが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、これらのランダム共重合体やブロック共重合体、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系重合体を構成するモノマーとしては、アルキル基の炭素数が好ましくは1〜12、より好ましくは2〜8であるアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸との双方を意味する。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレンなどの単独重合体や共重合体が挙げられ、具体的には、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒法ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−α−オレフィン共重合体(エチレン−プロピレン共重合体など)などが挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエステルポリオールが好ましく挙げられる。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールと、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸とを縮合させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0061】
[化粧材]
上述した本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、化粧材に好適に用いられる。化粧材において、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、基材と化粧シートとを接着一体化させるために用いることが好ましい。
【0062】
化粧材の構成としては、特に制限されず、従来公知の化粧材の構成が挙げられる。例えば、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤によって基材と化粧シートとが接着一体化されてなる化粧材が挙げられる。
【0063】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、固化速度に優れていると共に、固化後に優れた初期接着強度を発現することができる。そのため、湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して基材と化粧シートとを貼り合わせた直後、湿気硬化型ホットメルト接着剤が迅速に冷却固化して基材と化粧シートとを十分な接着強度で接着することができる。したがって、曲面部、凹凸部、角部や溝部などの複雑な形状を有する基材であっても、基材の形状に沿って化粧シートを剥離させることなく基材に貼り合わせることができる。さらに、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、湿気硬化後に接着強度がさらに向上し、基材と化粧シートとを強固に接着一体化させることができる。したがって、化粧材が高温環境下に置かれても、湿気硬化型ホットメルト接着剤が優れた耐熱接着性を発揮して、基材と化粧シートとが剥離することなく強固に接着一体化されている状態を維持することができる。
【0064】
化粧材の製造方法としては、例えば、湿気硬化型ホットメルト接着剤を70〜160℃に加熱することで溶融させた後、基材又は化粧シートのうちの一方の上に塗布し、塗布した湿気硬化型ホットメルト接着剤に基材又は化粧シートのうちの他方を貼り合わせて積層体を得、この積層体を養生させることにより湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化させ、これにより接着剤層を形成すると共に、接着剤層によって基材と化粧シートとが接着一体化された化粧材を得る方法が挙げられる。
【0065】
加熱溶融させた湿気硬化型ホットメルト接着剤を基材又は化粧シートに塗布する方法としては、ロールコーター、スプレーコーター、Tダイコーター、及びナイフコーターなどが挙げられる。
【0066】
また、積層体の養生を行う前に、積層体にロールプレス、フラットプレス、ベルトプレスなどを行うことにより、基材、湿気硬化型ホットメルト接着剤、及び化粧シートを圧着させることが好ましい。
【0067】
化粧材に用いられる基材としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、及びメラミン樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂板;天然木材、合板、中密度繊維基材(ミディアムデンシティファイバーボード(MDF))、パーティクルボード、硬質ファイバーボード、半硬質ファイバーボード、及び集成材等の木材;無機ボード;並びにアルミニウム、鉄、及びステンレス等の金属からなる金属板などが挙げられる。基材の接着剤層と接着一体化する面には、必要に応じて、プラズマ処理、アクリル系樹脂やメラミンアクリル系樹脂などの電着塗装処理、及びアルマイト処理などのプライマー処理が行われていてもよい。また、基材には、溝部の他、R部や逆R部などの曲面部が形成されていてもよい。
【0068】
化粧シートとしては、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、及びポリプロピレンなどの合成樹脂を含む合成樹脂シート、紙、突板、金属箔などが挙げられる。化粧シートは、その表面に色や模様を付すことにより装飾性が高められていてもよい。
【0069】
本発明の化粧材は、例えば、フローリング、木質ドアの框や鏡板、窓枠、敷居、手すり、幅木、回り縁や、キッチン、及びクローゼットなどの外装材、内装材及び家具として好ましく用いられる。
【実施例】
【0070】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0071】
まず、下記する実施例及び比較例において使用した結晶性ポリエステルポリオール(A1)〜(A4)、非結晶性ポリエステルポリオール(B1)〜(B3)、非結晶性ポリエステルポリオール(C1)〜(C2)、ポリエーテルポリオール(D1)〜(D6)、及びポリイソシアネートのそれぞれについて、以下に詳細な説明を以下に記載する。
【0072】
[結晶性ポリエステルポリオール(A)]
・結晶性ポリエステルポリオール(A1)
デカメチレンジカルボン酸(炭素数12)とヘキサンジオール(炭素数6)とを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール、水酸基価31、数平均分子量3500、エボニックデグサ社製 商品名「ダイナコール7380」
・結晶性ポリエステルポリオール(A2)
セバシン酸(炭素数10)とヘキサンジオール(炭素数6)とを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール、水酸基価32、数平均分子量3500、豊国製油社製 商品名「HS 2H-350S」
・結晶性ポリエステルポリオール(A3)
デカメチレンジカルボン酸(炭素数12)とエチレングリコール(炭素数2)とを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール、水酸基価31、数平均分子量3500
・結晶性ポリエステルポリオール(A4)
アジピン酸(炭素数6)とヘキサンジオール(炭素数6)とを縮合重合させてなる結晶性ポリエステルポリオール、水酸基価25、数平均分子量4500、豊国製油社製 商品名「HS 2H-451A」
【0073】
[非結晶性ポリエステルポリオール(B)]
・非結晶性ポリエステルポリオール(B1)
イソフタル酸、アジピン酸及びセバシン酸と、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールとを縮合重合させてなる非結晶性ポリエステルポリオール、軟化点30℃以下、ガラス転移温度−15℃、水酸基価35、数平均分子量3000、豊国製油社製 商品名「HS 2F-305S」
・非結晶性ポリエステルポリオール(B2)
非結晶性ポリエステルポリオール、軟化点30℃以下、ガラス転移温度−15℃、水酸基価28、数平均分子量3500、エボニックデグサ社製 商品名「ダイナコール7210」
・非結晶性ポリエステルポリオール(B3)
非結晶性ポリエステルポリオール、軟化点30℃以下、ガラス転移温度−31℃、水酸基価32、数平均分子量3500、豊国製油社製 商品名「ポリオール2000」
【0074】
[非結晶性ポリエステルポリオール(C)]
・非結晶性ポリエステルポリオール(C1)
非結晶性ポリエステルポリオール、軟化点77℃、水酸基価52、数平均分子量2500、荒川化学社製 商品名「HM-204」
・非結晶性ポリエステルポリオール(C2)
非結晶性ポリエステルポリオール、軟化点81℃、水酸基価32、数平均分子量3000、豊国製油社製 商品名「ポリオール1000」
【0075】
[ポリエーテルポリオール(D)]
・ポリエーテルポリオール(D1)
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、数平均分子量800、ADEKA社製 商品名「BPX55」
・ポリエーテルポリオール(D2)
ポリプロピレングリコール、数平均分子量700、水酸基価160、旭硝子社製 商品名「エクセノール720」
・ポリエーテルポリオール(D3)
ポリプロピレングリコール、数平均分子量1000、水酸基価112、旭硝子社製 商品名「エクセノール1020」
・ポリエーテルポリオール(D4)
ポリプロピレングリコール、数平均分子量3000、水酸基価35、旭硝子社製 商品名「エクセノール3020」
・ポリエーテルポリオール(D5)
ポリプロピレングリコール系ポリオール、数平均分子量5000、水酸基価28、旭硝子社製 商品名「プレミノール5001」
・ポリエーテルポリオール(D6)
ポリプロピレングリコール系ポリオール、数平均分子量10000、水酸基価11、旭硝子社製 商品名「プレミノール4001」
【0076】
[ポリイソシアネート]
・4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0077】
(実施例1〜7及び比較例1〜4)
ポリオール化合物として、結晶性ポリエステルポリオール(A1)〜(A4)、非結晶性ポリエステルポリオール(B1)〜(B3)、非結晶性ポリエステルポリオール(C1)〜(C2)、ポリエーテルポリオール(D1)〜(D6)を、それぞれ表1に示した配合量で、撹拌羽を有する1リットル四つ口フラスコ内に投入し、120℃に加熱溶融させて溶融状態の混合物を得、1mmHg以下まで減圧することにより混合物を脱水させ、フラスコ内を窒素ガスでパージした後に混合物の温度を80℃まで冷却させた。次に、フラスコ内に、ポリイソシアネート化合物として、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、表1に示した配合量で投入し、窒素ガス雰囲気下で3時間撹拌した。これにより、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とが反応してなり、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型ホットメルト接着剤を得た。
【0078】
なお、表1において、ポリオール化合物の全重量に対する、結晶性ポリエステルポリオール(A1)〜(A4)、非結晶性ポリエステルポリオール(B1)〜(B3)、非結晶性ポリエステルポリオール(C1)〜(C2)、及びポリエーテルポリオール(D1)〜(D6)の各重量割合(重量%)を、「ポリオール化合物[重量%]」の欄に記載した。
【0079】
(評価)
湿気硬化型ホットメルト接着剤について、接着性を下記手順にて評価した。結果を表1に示す。
【0080】
(初期接着強度)
湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃に加熱して溶融させた後、溶融状態の湿気硬化型ホットメルト接着剤を、オレフィンシート(厚み180μm)の一面に塗工厚み40μmで塗工した。その後、表面温度を35℃に調整した中密度繊維基材(ミディアムデンシティファイバーボード(MDF))に、オレフィンシートを塗工した湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して重ね合わせた後、ゴムロールによりオレフィンシートと中密度繊維基材とを圧着させることにより、試験片を得た。
【0081】
次に、試験片を、温度23℃、相対湿度55%環境下に1時間に亘って放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を冷却固化させた。その後、中密度繊維基材からオレフィンシートを、剥離角度180度、剥離速度250mm/分で剥離し、この時の最大の剥離強度を「初期剥離強度(N/25mm)」として測定した。
【0082】
(湿気硬化後接着強度)
初期接着強度の測定における上記手順と同様にして、試験片を作製した。次に、試験片を、温度23℃、相対湿度55%環境下に1時間に亘って放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を冷却固化させた。その後、試験片を温度23℃、相対湿度55%環境下に1週間に亘って放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を湿気硬化させた。そして、中密度繊維基材からオレフィンシートを、剥離角度180度、剥離速度250mm/分で剥離し、この時の最大の剥離強度を「常態剥離強度(N/25mm)」として測定した。
【0083】
(耐熱クリープ性)
初期接着強度の測定における上記手順と同様にして、試験片(幅1cm)を作製した。次に、試験片を、温度23℃、相対湿度55%環境下に1時間に亘って放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を冷却固化させた。その後、試験片を温度23℃、相対湿度55%環境下に1週間に亘って放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を湿気硬化させた。60℃の温度環境下において、オレフィンシートが下面となるようにして試験片を水平に設置した後、オレフィンシートの長さ方向における一方の端部に、2kgの錘を垂直方向に吊り下げた。この状態のまま1時間経過後、中密度繊維基材からオレフィンシートが剥がれた最長の長さ(mm)を測定した。
【0084】
(折り曲げ試験)
湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃に加熱して溶融させた後、溶融状態の湿気硬化型ホットメルト接着剤を、平面長方形状のオレフィンシート(厚み180μm、幅1cm)の一面に塗工厚み40μmで塗工した。一方、四角柱状の中密度繊維基材(ミディアムデンシティファイバーボード(MDF))の表面温度を35℃に調整した。次に、オレフィンシート(厚み180μm)の幅方向における一端縁から中央までにわたる一半部を四角柱状の中密度繊維基材の一面に湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して貼り合わせた。その後、オレフィンシートの一半部をゴムロールによって四角柱状の中密度繊維基材の一面に圧着させた。次いで、オレフィンシートの幅方向における他端縁から中央までにわたる他半部を、四角柱状の中密度繊維基材の一面の四方端縁における一つの稜角に沿ってオレフィンシートの一半部に対して直角に折り曲げながら、この他半部を、四角柱状の中密度繊維基材の一面に直角に隣接する他面に湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して貼り合わせた。その後、オレフィンシートの他半部をゴムロールによって四角柱状の中密度繊維基材の他面に圧着させ、これにより積層体を得た。積層体を温度23℃、相対湿度55%環境下に1時間に亘って放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を冷却固化させ、この時、中密度繊維基材からオレフィンシートが剥離するか否かについて観察した。表1において、「○」「×」はそれぞれ下記の通りである。
○:オレフィンシートが剥離しなかった。
×:オレフィンシートが剥離した。
【0085】
【表1】