(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定部と前記可動部との間の静電容量を検出し、その検出結果に基づいて前記固定部と前記可動部との間に駆動電圧を印加する制御部を更に備える、請求項1記載の光学モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0020】
図1及び
図2に示されるように、光学モジュール1Aは、半導体基板2を備えている。半導体基板2上には、入射ミラー3、ファブリペロ干渉フィルタF、出射ミラー6、静電アクチュエータ10、第1ばね部20及び第2ばね部30が設けられている。ファブリペロ干渉フィルタFは、空隙Sを介して対向するように配置された固定ミラー4及び可動ミラー(光学部品)5を有している。静電アクチュエータ10の駆動は、制御部70によって制御される。
【0021】
光学モジュール1Aは、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板を出発原料として作製されたMEMSデバイスである。光学モジュール1Aにおいては、絶縁層8を介して半導体基板2上に設けられた半導体層9がエッチングされたことで、半導体基板2上の各構成が形成されている。第1実施形態では、半導体基板2は、シリコン(Si)からなり、矩形板状に形成されている。また、絶縁層8は、酸化シリコン(SiO
2)からなり、半導体層9は、シリコン(Si)からなる。
【0022】
入射ミラー3は、半導体層9の一部分によって構成されており、絶縁層8を介して半導体基板2の表面2aに固定されている。入射ミラー3は、半導体基板2の表面2aに対して45°傾斜した鏡面3aを有している。鏡面3aは、半導体基板2の表面2aに対して垂直な方向から入射した被測定光Lをファブリペロ干渉フィルタF側に反射する。
【0023】
出射ミラー6は、半導体層9の一部分によって構成されており、絶縁層8を介して半導体基板2の表面2aに固定されている。出射ミラー6は、静電アクチュエータ10の駆動方向Aにおいて、ファブリペロ干渉フィルタFを介して入射ミラー3と対向するように、配置されている。出射ミラー6は、半導体基板2の表面2aに対して45°傾斜した鏡面6aを有している。鏡面6aは、ファブリペロ干渉フィルタFを透過した被測定光Lを半導体基板2の表面2aに対して垂直な方向に反射する。
【0024】
ファブリペロ干渉フィルタFの固定ミラー4は、半導体層9の一部分によって構成されており、その直下の絶縁層8が除去されたことによって、半導体基板2の表面2aに対して浮いた状態となっている。固定ミラー4の両端部は、両持ち梁のような状態で、支柱4a,4bに固定されている。支柱4a,4bは、半導体層9の一部分によって構成されており、絶縁層8を介して半導体基板2の表面2aに固定されている。
【0025】
ファブリペロ干渉フィルタFの可動ミラー5は、半導体層9の一部分によって構成されており、その直下の絶縁層8が除去されたことによって、半導体基板2の表面2aに対して浮いた状態となっている。可動ミラー5の両端部5a,5bは、第1ばね部20と第2ばね部30との接続部13に支持部14,15を介して接続されており、静電アクチュエータ10の駆動方向Aに移動可能な状態となっている。
【0026】
固定ミラー4及び可動ミラー5の対向方向Dは、静電アクチュエータ10の駆動方向Aに対して傾斜している。固定ミラー4及び可動ミラー5は、入射ミラー3側から入射した被測定光Lのうち、固定ミラー4と可動ミラー5との間の距離に応じた波長を有する光を透過させ、当該光を駆動方向Aに沿って出射ミラー6側に出射する。なお、第1実施形態では、固定ミラー4が入射ミラー3側に配置され、可動ミラー5が出射ミラー6側に配置されているが、固定ミラー4及び可動ミラー5の配置は、逆であってもよい。
【0027】
固定ミラー4及び可動ミラー5は、2層のシリコン層によって構成されている。これは、シリコンの屈折率が3.5であり、空気の屈折率が1であって、それらの屈折率差が大きいため、2層のシリコン層であっても、十分に反射率の高いブラッグミラーを実現することができるからである。なお、固定ミラー4及び可動ミラー5は、シリコン層と空気層とが交互に複数層ずつ積層されたものであってもよい。そのような場合であっても、静電アクチュエータ10、第1ばね部20及び第2ばね部30等と同一のフォトマスク及び同一のエッチング工程によって、固定ミラー4及び可動ミラー5を精度良く且つ簡単に形成することができる。
【0028】
静電アクチュエータ10は、半導体層9の一部によって構成されている。静電アクチュエータ10は、固定部11及び可動部12を有している。固定部11は、絶縁層8を介して半導体基板2の表面2aに固定されている。可動部12は、その直下の絶縁層8が除去されたことによって、半導体基板2の表面2aに対して浮いた状態となっており、固定部11との間に発生する静電力によって、固定部11に対して駆動方向Aに移動させられる。
【0029】
固定部11は、半導体基板2の外縁に沿って矩形枠状に形成された半導体層9のうち、ファブリペロ干渉フィルタFに対して出射ミラー6側に位置する部分である。固定部11は、半導体基板2の表面2aに平行且つ駆動方向Aに垂直な方向に延在している。駆動方向Aにおいて可動部12と対向する固定部11の側面には、半導体基板2の表面2aに平行且つ駆動方向Aに垂直な方向に配列された複数の櫛歯を有する櫛歯部11aが形成されている。櫛歯部11aは、その直下の絶縁層8が除去されたことによって、半導体基板2の表面2aに対して浮いた状態となっている。
【0030】
可動部12は、固定部11と出射ミラー6との間に位置している。可動部12は、半導体基板2の表面2aに平行且つ駆動方向Aに垂直な方向に延在している。駆動方向Aにおいて固定部11と対向する可動部12の側面には、半導体基板2の表面2aに平行且つ駆動方向Aに垂直な方向に配列された複数の櫛歯を有する櫛歯部12aが形成されている。固定部11及び可動部12は、櫛歯部11aの各櫛歯と櫛歯部12aの各櫛歯とが互い違いに配置されるように構成されている。
【0031】
第1ばね部20は、静電アクチュエータ10の可動部12に接続されている。第1ばね部20は、半導体層9の一部によって構成されており、その直下の絶縁層8が除去されたことによって、半導体基板2の表面2aに対して浮いた状態となっている。第1ばね部20は、並列に設けられた一対の第1ばね21,22を含んでいる。各第1ばね21,22は、ジグザグ状に形成されており、駆動方向Aに沿って伸縮可能となっている。各第1ばね21,22の一端は、可動部12の両端部のそれぞれに接続されており、各第1ばね21,22の他端は、第2ばね部30に接続されている。これにより、第1ばね部20は、可動部12が固定された一端20a(すなわち、各第1ばね21,22の一端)、及び第2ばね部
30との接続部13となる他端20b(すなわち、各第1ばね21,22の他端)を有することになる。以上のように構成された第1ばね部20は、第1ばね定数K1を有している。第1ばね定数K1は、一対の第1ばね21,22のばね定数を合成したものである。
【0032】
第2ばね部30は、第1ばね部20と半導体基板2との間に接続されている。第2ばね部30は、半導体層9の一部によって構成されており、その直下の絶縁層8が除去されたことによって、半導体基板2の表面2aに対して浮いた状態となっている。第2ばね部30は、並列に設けられた一対の第2ばね31,32を含んでいる。各第2ばね31,32は、ジグザグ状に形成されており、駆動方向Aに沿って伸縮可能となっている。各第2ばね31,32の一端は、第1ばね部20の各第1ばね21,22の他端に接続されており、各第2ばね31,32の他端は、絶縁層8を介して半導体基板2の表面2aに固定されている。これにより、第2ばね部30は、第1ばね部20との接続部13となる一端30a(すなわち、各第2ばね31,32の一端)、及び半導体基板2に固定された他端30b(すなわち、各第2ばね31,32の他端)を有することになる。以上のように構成された第2ばね部30は、第1ばね部20の第1ばね定数K1よりも大きい第2ばね定数K2を有している。第2ばね定数K2は、一対の第2ばね31,32のばね定数を合成したものである。
【0033】
第1ばね部20及び第2ばね部30は、一体のばねとして、静電アクチュエータ10の静電力とバランスする。第1ばね部20と第2ばね部30との接続部13間には、支持部14が接続されており、支持部14には、駆動方向Aに沿ってファブリペロ干渉フィルタF側に延在する一対の支持部15が接続されている。支持部14,15は、半導体層9の一部によって構成されており、その直下の絶縁層8が除去されたことによって、半導体基板2の表面2aに対して浮いた状態となっている。各支持部15の先端部には、可動ミラー5の両端部5a,5bのそれぞれが接続されている。可動部12、第1ばね部20、第2ばね部30、支持部14,15及び可動ミラー5は、半導体基板2に一体的に形成されており、第2ばね部30の他端30bを固定端とした片持ち梁のような状態で、半導体基板2上に支持されている。
【0034】
第1ばね定数K1及び第2ばね定数K2の大きさは、第1ばね部20及び第2ばね部30を構成する半導体層9の幅、長さ、厚さ及びばねの数等によって調整することが可能である。これらは、フォトマスク設計のみで決定することができるため、精度良く且つ簡単にばね定数を調整することができる。梁によるばねのばね定数は、梁の幅の3乗に比例するため、幅を10倍とするだけで、ばね定数が1000倍異なるばねを作り出すことができる。例えば、第1ばね部20の各第1ばね21,22を構成する梁の幅を5μmとし、第2ばね部30の各第2ばね31,32を構成する梁の幅を40μmとすると、第
2ばね定数K
2は、第
1ばね定数K
1の約1000倍≒2×(40/5)
3となる。また、梁によるばねのばね定数は、梁の長さの3乗分の1に比例して変化する。例えば、第2ばね部30の長さが第1ばね部20の長さの2/3である場合、第2ばね定数K2は、第1ばね定数K1
の約3.3倍≒(3/2)
3となる。
【0035】
なお、第1ばね部20は、一対の第1ばね21,22を含んでいる場合に限定されず、1つのばねから構成されていてもよいし、3つ以上のばねから構成されていてもよい。同様に、第2ばね部30は、一対の第2ばね31,32を含んでいる場合に限定されず、1つのばねから構成されていてもよいし、3つ以上のばねから構成されていてもよい。また、第1ばね部20及び第2ばね部30は、互いに異なる材料によって形成されていてもよい。
【0036】
制御部70は、端子16,17にそれぞれ配線18,19を介して電気的に接続されている。端子16は、固定部11に電気的に接続されている。端子17は、トレンチ17aを介して固定部11と電気的に絶縁されており、半導体基板2、第2ばね部30及び第1ばね部20等を介して、可動部12に電気的に接続されている。制御部70は、静電アクチュエータ10を駆動させるために、固定部11と可動部12との間の静電容量を検出し、その検出結果に基づいて固定部11と可動部12との間に駆動電圧を印加する。なお、第1実施形態では、可動部12、第1ばね部20、第2ばね部30及び可動ミラー5が半導体層9によって一体的に形成されているため、これら全体が同電位となる。
【0037】
制御部70について、
図3を参照しつつ、より詳細に説明する。制御部70は、固定部11と可動部12との間に駆動電圧を印加する可変電源71と、固定部11と可動部12との間の静電容量を検出するための検出用信号を出力する交流電源72と、を備えている。交流電源72は、カップリングコンデンサ73を介して可動部12と電気的に接続されている。制御部70は、可変電源71及び交流電源72によって、固定部11と可動部12との間に、検出用信号を載せた駆動電圧を印加する。このとき、固定部11は、GNDレベルとされている。
【0038】
制御部70は、静電容量検出部74を更に備えている。静電容量検出部74は、固定部11に接続された抵抗成分75を流れる電流を、アンプ76を介して検出し、検出した電流から電荷の変動を計測する。静電容量検出部74は、更に、交流電源72が出力する検出用信号を検出し、位相差及び振幅比測定によって静電容量の検出を行う。ここで、検出用信号の周波数は、静電アクチュエータ10の共振周波数よりも十分に高く設定されている。そのため、静電アクチュエータ10は、検出用信号には応答せず、静電容量の検出が可能となる。静電容量は、固定部11及び可動部12の面積(電極としての面積)が一定であるため、固定部11と可動部12との間の距離の関数となる。したがって、制御部70は、固定部11と可動部12との間の静電容量を検出することによって、固定部11と可動部12との間の距離、すなわち、固定部11に対する可動部12の移動距離を検出することができる。
【0039】
以上のように構成された光学モジュール1Aにおいては、制御部70によって、静電アクチュエータ10の固定部11と可動部12との間に駆動電圧が印加されると、固定部11と可動部12との間に当該駆動電圧に応じた静電力が発生する。これによって、可動部12は、駆動方向Aに沿って固定部11に引き付けられる。可動部12は、第1ばね部20及び支持部14,15を介して可動ミラー5に接続されているため、可動ミラー5は、可動部12の移動に連動して、半導体基板2に対して平行に(すなわち、半導体基板2の表面2aに平行な方向に)駆動させられ、可動ミラー5と固定ミラー4との間の距離が調整される。ここで、可動ミラー5は、第1ばね定数K1よりも大きい第2ばね定数K2を有する第2ばね部30にも、支持部14,15を介して接続されているため、可動部12ほどには移動しない。このように、光学モジュール1Aにおいては、可動部12の移動距離に対して、可動ミラー5の移動距離が縮小される。
【0040】
そして、ファブリペロ干渉フィルタFを透過する光の波長は、可動ミラー5と固定ミラー4との間の距離に依存するため、静電アクチュエータ10に印加する駆動電圧を調整することで、透過する光の波長を適宜選択することができる。つまり、外部から被測定光Lが入射されると、可動ミラー5と固定ミラー4との間の距離に応じた波長を有する光が選択され、外部に出射される。このとき、可動ミラー5と固定ミラー4との間の距離の調整は、制御部70によって静電アクチュエータ10の静電容量を計測し、可動部12の移動距離をモニターしながら行うことができる。可動部12の移動距離は、可動ミラー5の移動距離を所定の倍率に拡大したものとなるため、可動ミラー5の位置の制御精度が安定する。
【0041】
可動ミラー5の移動距離が拡大される原理について、
図4を参照しつつ説明する。光学モジュール1Aにおいては、第1ばね部20の第1ばね定数K1及び第2ばね部
30の第2ばね定数K2が、K1<K2となるように設定されている。駆動電圧に応じて静電アクチュエータ10で発生する静電力をfとすると、第1ばね部20及び第2ばね部30に働く力もfとなる。よって、第1ばね部20の伸びx1及び第2ばね部30の伸びx2は、それぞれ次式(1),(2)で示され、可動部12の移動距離xは、2つのばねの伸びの合計として、次式(3)で示される。
x1=f/K1・・・(1)
x2=f/K2・・・(2)
x=x1+x2=f(1/K1+
1/K2)・・・(3)
【0042】
ここで、x2は、第1ばね部20と第2ばね部30との接続部13の移動距離に相当し、可動ミラー5の移動距離と等しくなる。すなわち、可動部12は、可動ミラー5の移動距離に加えて、第1ばね部20の伸びも加えた分だけ移動することとなる。例えば、第2ばね定数K2を、第1ばね定数K1の1000倍になるように設定すると、可動ミラー5の移動距離が1nmの場合、可動部12の移動距離は1μm(正確には、1.001μm)に拡大される。
【0043】
このように、静電アクチュエータ10の静電力と第1ばね部20及び第2ばね部30による付勢力とがバランスする状態においては、可動ミラー5の移動距離及び誤差は、可動部12の移動距離及び誤差のK1/(K1+K2)≒K1/K2(K2>>K1の場合)倍となるので、静電アクチュエータ10による可動ミラー5の位置の制御精度が安定する。また、可動ミラー5の移動距離を検出する際も、拡大された可動部12の移動距離を検出すればよいので、検出精度が向上する。
【0044】
次に、光学モジュール1Aの製造方法の一例について説明する。まず、
図5の(a)に示されるように、出発原料として、半導体基板2の表面2a上に絶縁層8を介して半導体層9が形成された基板を用意する。例えば、2枚のシリコン基板でBOX層と呼ばれる酸化膜を挟んだSOI基板を用いることができる。続いて、半導体層9上に酸化膜(SiO
2膜)61を成膜する。酸化膜61は、アルカリエッチング用のマスクとして機能する。更に、窒化膜(SiN膜)62及びレジスト63をこの順に成膜し、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)用のパターニングを行う。
【0045】
続いて、
図5の(b)に示されるように、DRIEプロセスを行い、半導体層9の一部を除去して、静電アクチュエータ10、入射ミラー3及び出射ミラー6等に必要な垂直壁を形成する。続いて、
図6の(a)に示されるように、レジスト63を取り除き、その後に、熱酸化を行うことで、DRIEプロセスで形成された垂直壁の側壁に酸化膜64を形成する。酸化膜64は、アルカリエッチング用のマスクとして機能する。このとき、窒化膜62のシリコンは酸化されない。続いて、
図6の(b)に示されるように、窒化膜62を熱燐酸で除去し、半導体層9の一部を露出させる。
【0046】
続いて、
図7に示されるように、アルカリ液に浸し、半導体層9の露出した部分をエッチングして、入射ミラー3及び出射ミラー6の45°面を形成する。なお、45°面の逆側開口は、90°面となるよう結晶方位を選んでおけば、45°面に相対する面には、45°面でなく90°面が形成されるようになるため、結果として、シリコンはエッチングにより除去されてしまう。最後に、酸化膜61、酸化膜64及び絶縁層8をフッ酸で除去する。このようにして、
図1に示される光学モジュール1Aがバルクマイクロマシン技術で製造される。なお、入射ミラー3及び出射ミラー6の45°面は、他の構成要素と同じマスク工程で形成することができないが、45°面を有する入射ミラー3及び出射ミラー6のサイズを被測定光Lのビーム径に対して十分に大きくしておけば、位置精度はそれほど高い必要がなくなるため、問題はない。
【0047】
以上説明したように、光学モジュール1Aでは、半導体基板2と、半導体基板2に固定された固定部11、及び、固定部11との間に発生する静電力によって、固定部11に対して移動させられる可動部12を有する静電アクチュエータ10と、可動部12に接続され第1ばね定数K1を有する第1ばね部20と、第1ばね部20と半導体基板2との間に接続され、第1ばね定数K1よりも大きい第2ばね定数K2を有する第2ばね部30と、第1ばね部20と第2ばね部30との接続部13に接続された可動ミラー5と、を備える。
【0048】
これによれば、静電力によって移動させられる静電アクチュエータ10の可動部12の移動距離に対して、可動ミラー5の移動距離は、K1/(K1+K2)≒K1/K2(K2>>K1の場合)倍となる。このように、可動部12の移動距離に比べて、可動ミラー5の移動距離は小さくなる。したがって、所定の倍率に拡大された可動部12の移動距離の制御を通じて、可動ミラー5の移動距離の制御をすることによって、移動距離が微小な場合でも、可動ミラー5の制御精度が安定する。
【0049】
一般に、ファブリペロ干渉フィルタにおけるミラー間の空隙Sの幅Wと透過波長λとの関係は、mを任意の整数とすると、式(4)で表される。
λ=2W/m・・・(4)
【0050】
上記式(4)によれば、透過波長λの波長分解能は、幅Wの制御精度で決定される。任意の整数mを大きく設定することによって、幅Wは、対象とする透過波長λのm倍に設定でき、幅Wの制御精度を向上させることができる。例えば、mを10に設定すると、1μmの透過波長λに対して、幅Wを10μmに設定することができる。ここで、波長分解能とは、波長可変フィルタにおける透過波長λの設定が、どれくらいの波長単位で行うことができるかを示すものである。例えば、波長分解能が1nmであれば、1nm単位で透過波長λの設定を行うことができる。
【0051】
一方、ファブリペロ干渉フィルタでは、選択波長の高次の波長も透過特性を持ち、選択波長と高次の透過波長との間隔Δλは、式(5)で示される。
Δλ=λ/(m+1)・・・(5)
【0052】
上記式(5)によれば、任意の整数mを大きく設定することによって、隣り合う高次の透過波長との間隔Δλが、1/(m+1)倍に縮小される。例えば、mを10に設定すると、隣り合う高次の透過波長との間隔Δλは90nmとなり、隣り合う高次の透過波長は1.09μmとなる。つまり、1.09μmの波長を有する光も透過されてしまうこととなる。波長可変フィルタとしては、ある波長範囲において選択波長の光のみを透過することが望ましく、高次の透過波長がその波長範囲の十分外となるよう設計する必要がある。そのためには、mをなるべく小さくする必要があり、mを1に設定するのが理想的である。しかし、そうなると、空隙Sの幅Wは、必要な波長分解能の半分の分解能で制御しなければならない。例えば、1nmの波長分解能が必要な場合には、幅Wは0.5nmの精度で制御しなければならない。このような制御は、MEMS技術が用いられた静電アクチュエータであっても、容易ではなく、従来は校正曲線を作成する等して、駆動電圧の不安定さ、周囲温度の影響等を除く必要があった。
【0053】
これに対して、光学モジュール1Aでは、上述したように可動ミラー5の移動距離の制御は、このように拡大された静電アクチュエータ10の可動部12の移動距離の制御を通じて行うことができる。例えば、可動ミラー5の移動距離の制御を0.5nmの精度で行わなければならないときでも、第2ばね定数K2を、第1ばね定数K1に対し、1000倍になるように設定すると、可動部12の移動距離は500nm(正確には、500.5nm)に拡大されるため、制御が容易となり、制御精度を安定して向上させることができる。
【0054】
従来、シリンダ等の空気圧式操作器の駆動軸の位置を検出するために、駆動軸を計測板に固定し、その計測板をばね定数の異なる2つのばねの接続部に接続することで駆動軸の大きな移動距離を小さな移動距離に変換して計測する技術が知られていた(例えば、実公平2−40481号公報)。しかし、MEMS技術が用いられた光学モジュールにおいて、ばねによって光学部品の微小変動を精度よく検出する技術は知られていなかった。
【0055】
また、光学モジュール1Aでは、固定部11と可動部12との間の静電容量を検出し、その検出結果に基づいて固定部11と可動部12との間に駆動電圧を印加する制御部70を更に備え
ている。これによれば、静電アクチュエータ10の可動部12の位置を、静電容量によって検出することができるため、駆動電圧の不安定さ、周囲温度等が可動ミラー5の変位に及ぼす影響を好適に除去することができる。
【0056】
MEMSの特徴である高速性を活かそうとすると、共振モードで動作させることとなるが、この場合には、もはや空隙Sを駆動電圧によって直接的に制御することはできなくなる。また、共振モードでの振幅幅は、周囲の気体(気圧)の特性の影響を受け、使用するたびにフィルタ特性が変化してしまうため、従来は気密封止したパッケージ内で温度一定で使用する等の対策が欠かせなかった。そこで、従来も駆動電圧によらず、静電アクチュエータの可動部の位置を、静電容量によって検出することが行われていた。しかし、例えば、電極部面積が500μm
2、幅W(電極間距離)が1μm、m=1である場合に、可動部の位置について0.5nmの精度を得ようとすると、1fFを測定しなければならない。このような微小な静電容量の測定には時間がかかり、共振動作時にリアルタイムにモニターすることは困難である。
【0057】
これに対して、光学モジュール1Aでは、可動ミラー5の移動距離が微小な場合でも、静電アクチュエータの可動部12の移動距離が所定の倍率で拡大されるので、これに伴い静電容量の変化も拡大され、静電容量の測定が容易となる。
【0058】
また、光学モジュール1Aでは、ファブリペロ干渉フィルタFの可動ミラー5の位置の制御精度を安定して向上させることによって、ファブリペロ干渉フィルタFの波長分解能を高めることができる。
【0059】
また、光学モジュール1Aでは、可動部12、第1ばね部20、第2ばね部30及び可動ミラー5は、半導体基板2に一体的に形成されている。例えば、ピエゾアクチュエータは、固体材料の圧電効果を利用し、ナノメーターオーダーの制御を精度よく行うことができるが、これを用いて波長可変フィルタとするためには、複数の部材を組み上げる必要がある。これに対して光学モジュール1Aは、半導体基板2上に設けた半導体層9の一枚板からMEMS技術を用いて可動部12、第1ばね部20、第2ばね部30及び可動ミラー5をモノリシックに形成することができる。これによって、製造工程を単純化し、製造コストを低減することができる。
【0060】
また、光学モジュール1Aでは、第1ばね部20は、並列に設けられた2つの第1ばね21,22を含み、第2ばね部30は、並列に設けられた2つの第2ばね31,32を有するため、例えば、いずれかのばねが損傷した場合でも、可動部12及び可動ミラー5の支持が安定し易い。
【0061】
また、光学モジュール1Aでは、可動ミラー5は、半導体基板2に対して平行に駆動させられる。また、第1ばね部20及び第2ばね部30は半導体基板2に対して平行に伸縮する。これによれば、半導体基板2のサイズを適宜拡大することによって第1ばね部20及び第2ばね部30に接続される可動部12の可動範囲を容易に拡大することができる。したがって、可動部12の移動距離を大きくし易く、可動ミラー5の動作をより安定的に且つ高精度に行うことができる。更に、表面マイクロマシン技術を用いた製造方法を好適に適用することができる。
【0062】
また、光学モジュール1Aでは、第1ばね部20は、可動部12が固定された一端20a、及び第2ばね部30との接続部13となる他端20bを有し、第2ばね部30は、第1ばね部20との接続部13となる
一端30a、及び半導体基板2に固定された他端30bを有している。これによれば
、第1ばね部20全体の伸びを可動部12の移動距離とすることができるため、可動部12の移動距離を大きくし易くなる。したがって、可動ミラー5の動作をより安定的に且つ高精度に行うことができる。
【0063】
図8及び
図9に示されるように、光学モジュール1Bは、半導体基板2を備えている。半導体基板2上には、酸化膜81、第1積層体40、中間層82及び第2積層体50がこの順序で積層されており、ファブリペロ干渉フィルタFがMEMSデバイスとして構成されている。第2実施形態では、半導体基板2は、シリコン(Si)からなり、矩形板状に形成されている。また、酸化膜81は、酸化シリコン(SiO
2)からなり、中間層82は、例えば、酸化シリコン(SiO
2)からなる。
【0064】
第1積層体40と第2積層体50との間には、半導体基板2の外縁に沿って矩形枠状に形成された中間層82によって、空隙Sが形成されている。ファブリペロ干渉フィルタFは、その中央部に画定された光透過領域83において、半導体基板2の反対側から入射した被測定光Lのうち、第1積層体40と第2積層体50との間の距離に応じた波長を有する光を透過させ、当該光を半導体基板2側に出射する。なお、中間層82の厚さは、例えば200nm〜10μmである。中間層82の光学的な厚さは、第1積層体40と第2積層体50との間の距離に相当するので、中心透過波長(すなわち、ファブリペロ干渉フィルタFが透過させる波長の可変範囲の中央である波長)の1/2の整数倍であることが好ましい。
【0065】
第1積層体40は、複数のポリシリコン層41と複数の窒化シリコン層42とが一層ずつ交互に積層されることで構成されている。第2実施形態では、ポリシリコン層41a、窒化シリコン層42a、ポリシリコン層41b、窒化シリコン層42b及びポリシリコン層41cが、酸化膜81上にこの順序で積層されている。第1積層体40のうち光透過領域83に対応する部分は、固定ミラー4として機能する。第2実施形態の固定ミラー4は、3層のポリシリコン層41及び2層の窒化シリコン層42が交互に積層されたブラッグミラーとなっている。ポリシリコン層41は、アモルファスシリコンがアニールによって多結晶化されたものである。各層41,42の厚さは、50nm〜2μmである。第2実施形態では、各ポリシリコン層41の厚さは130nmであり、各窒化シリコン層42の厚さは200nmである。なお、固定ミラー4を構成する各ポリシリコン層41及び各窒化シリコン層42それぞれの光学的な厚さは、中心透過波長の1/4の整数倍であることが好ましい。
【0066】
第1積層体40を構成するポリシリコン層41cのうち光透過領域83を取り囲む外縁部は、静電アクチュエータ10の固定部11として機能する。固定部11は、その内縁に沿って環状に延在するトレンチ43によって、光透過領域83を含む内側の領域と電気的に絶縁されている。なお、トレンチ43の一部には、中間層82が残されている。
【0067】
第2積層体50は、第1積層体40と同様に、複数のポリシリコン層51と複数の窒化シリコン層52とが一層ずつ交互に積層されることで構成されている。第2実施形態では、ポリシリコン層51a、窒化シリコン層52a、ポリシリコン層51b、窒化シリコン層52b及びポリシリコン層51cが、中間層82上にこの順序で積層されている。第2積層体50は、部分的にエッチングで除去されることによって、エッチングされずに残された部分が所定の形状をなしている。第2積層体50のうち、光透過領域83に対応する部分は、空隙Sを介して固定ミラー4と対向する可動ミラー(光学部品)5として機能する。第2実施形態の可動ミラー5は、3層のポリシリコン層51及び2層の窒化シリコン層52が交互に積層されたブラッグミラーとなっている。ポリシリコン層51は、アモルファスシリコンがアニールによって多結晶化されたものである。各層51,52の厚さは、50nm〜2μmである。第2実施形態では、ポリシリコン層51の厚さは130nmであり、窒化シリコン層52の厚さは200nmである。なお、可動ミラー5を構成するポリシリコン層51及び窒化シリコン層52それぞれの光学的な厚さは、中心透過波長の1/4の整数倍であることが好ましい。
【0068】
固定ミラー4及び可動ミラー5を構成するブラッグミラーの多層膜は、対象波長に対して透明で且つ屈折率が異なれば、必ずしもポリシリコン層と窒化シリコン層との組み合わせでなくてもよい。ただし、空隙S側に接する層(第2実施形態では、ポリシリコン層41c及びポリシリコン層51a)は、電極を兼ねるため、導電率の高い膜にする必要がある。また、屈折率差が小さいと、反射率を高くするために必要な層数が増えるため、なるべく屈折率差の大きい層の組み合わせを選ぶのがよい。
【0069】
第2積層体50のうち光透過領域83の外側の部分は、第1ばね部20、第2ばね部30及び静電アクチュエータ10の可動部12としてそれぞれ機能する部分を更に含んでいる。第2積層体50には、なお、第2積層体50の表面50aから空隙Sに至る複数の貫通孔50bが均一に分布されている。貫通孔50bは、可動ミラー5の機能に実質的に影響を与えない程度に形成されている。貫通孔50bの直径は、100nm〜5μmであり、貫通孔50bの開口面積は、可動ミラー5の面積の0.01〜10%を占めている。
【0070】
第1ばね部20は、第2積層体50の一部によって構成されており、半導体基板2に垂直な方向に変位可能となっている。第1ばね部20は、可動ミラー5を中心として放射線状に並列に設けられた4つの第1ばね21〜24を含んでいる。第1ばね部20は、第2積層体50のうち枠状の中間層82上に設けられた外縁部50cに固定された4つの一端20a(すなわち、各第1ばね21〜24の一端)を有している。また、第1ばね部20は、第2ばね部30との接続部13となる4つの他端20b(すなわち、各第1ばね21〜24の他端)を有している。更に、第1ばね部20は、可動部12に接続された4つの中間部20c(すなわち、各第1ばね21〜24の中間部)を有している。第1ばね部20は、第1ばね定数K1を有している。ここで、第1ばね定数K1とは、第1ばね部20の中間部20cにおける半導体基板2に垂直な方向への変位のし易さを示すものである。また、第1ばね定数K1は、4つの第1ばね21〜24のばね定数を合成したものである。
【0071】
第2ばね部30は、第2積層体50の一部によって構成されており、半導体基板2に垂直な方向に変位可能となっている。第2ばね部30は、可動ミラー5を中心として放射線状に並列に設けられた4つの第2ばね31〜34を含んでいる。第2ばね31〜34は、可動ミラー5の周囲において、第1ばね21〜24と交互に設けられている。第2ばね部30は、第1ばね部20との接続部13となる4つの一端30a(すなわち、各第2ばね31〜34の一端)を有している。また、第2ばね部30は、トレンチ43に残された中間層82等を介して半導体基板2に固定された4つの他端30b(すなわち、各第2ばね31〜34の他端)を有している。第2ばね部30は、第1ばね定数K1よりも大きい第2ばね定数K2を有している。ここで、第2ばね定数K2とは、第2ばね部30の一端30aにおける半導体基板2に垂直な方向への変位のし易さを示すものである。また、第2ばね定数K2は、4つの第2ばね31〜34のばね定数を合成したものである。なお、第2実施形態では、理論上、第1ばね21〜24と第2ばね31〜34との4つの接続部13は、それぞれ可動ミラー5の中心で重なっている。
【0072】
第2積層体50のうち、可動ミラー5及び第2ばね部30を取り囲む円環部50dに対応する部分を構成するポリシリコン層51aは、可動部12として機能する。可動部12は、その内縁に沿ってポリシリコン層51aに設けられたトレンチ53によって、光透過領域83を含む内側の領域と電気的に絶縁されている。なお、第2実施形態では、トレンチ53は、ポリシリコン層51aのうち、トレンチ43に対向方向Dで対向する部分の全てに設けられているが、少なくとも第1ばね部20の部分に設けられれば、光透過領域83を含む内側の領域と可動部12との電気的絶縁を図ることができる。トレンチ53には、窒化シリコン層52aが埋め込まれている。円環部50d、及び円環部50dに含まれる可動部12は、第1ばね部20の中間部20cに接続され、支持されている。
【0073】
光学モジュール1Bは、制御部70を更に備えている。制御部70は、端子16,17にそれぞれ配線18,19を介して電気的に接続されている。端子16は、トレンチ16aを介して可動部12(すなわち、第2積層体50のポリシリコン層51a)と電気的に絶縁されており、固定部11(すなわち、第1積層体40のポリシリコン層41c)に電気的に接続されている。端子17は、可動部12(すなわち、第2積層体50のポリシリコン層51a)に電気的に接続されている。制御部70は、上述した第1実施形態と同様に、静電アクチュエータ10を駆動させるために、固定部11と可動部12との間の静電容量を検出し、その検出結果に基づいて固定部11と可動部12との間に駆動電圧を印加する。
【0074】
以上のように構成された光学モジュール1Bにおいては、
図10の(a)に示される状態において、制御部70によって、静電アクチュエータ10の固定部11と可動部12との間に駆動電圧が印加されると、固定部11と可動部12との間に当該駆動電圧に応じた静電力が発生する。これによって、
図10の(b)に示されるように、可動部12は、駆動方向A(半導体基板2の表面2aに垂直な方向)に沿って固定部11に引き付けられる。なお、第2実施形態では、駆動方向Aは、固定ミラー4と可動ミラー5とが対向する対向方向Dと一致している。可動部12は、第1ばね部20を介して可動ミラー5に接続されているため、可動ミラー5は、可動部12の移動に連動して、半導体基板2に対して垂直に(すなわち、半導体基板2の表面2aに垂直な方向に)駆動させられ、可動ミラー5と固定ミラー4との間の距離が調整される。ここで、可動ミラー5は、第1ばね定数K1よりも大きい第2ばね定数K2を有する第2ばね部30にも接続されているため、可動部12ほどには移動しない。このように、光学モジュール1Bにおいては、可動部12の移動距離に対して、可動ミラー5の移動距離が縮小される。
【0075】
そして、ファブリペロ干渉フィルタFを透過する光の波長は、可動ミラー5と固定ミラー4との間の距離に依存するため、静電アクチュエータ10に印加する駆動電圧を調整することで、透過する光の波長を適宜選択することができる。つまり、外部から被測定光Lが入射されると、可動ミラー5と固定ミラー4との間の距離に応じた波長を有する光が選択され、外部に出射される。このとき、可動ミラー5と固定ミラー4との間の距離の調整は、制御部70によって静電アクチュエータ10の静電容量を計測し、可動部12の移動距離をモニターしながら行うことができる。可動部12の移動距離は、可動ミラー5の移動距離を所定の倍率に拡大したものとなるため、可動ミラー5の位置の制御精度が安定する。
【0076】
次に、光学モジュール1Bの製造方法の一例について説明する。まず、
図11の(a)に示されるように、半導体基板2上に酸化膜81及び第1積層体40をこの順に形成する。続いて、
図11の(b)に示されるように、第1積層体40のポリシリコン層41cをパターニングし、トレンチ43を形成する。続いて、
図12の(a)に示されるように、中間層82となる酸化膜を犠牲層として形成する。続いて、
図12の(b)に示されるように、第2積層体50のポリシリコン層51aを形成する。続いて、ポリシリコン層51aをパターニングし、トレンチ53を形成する。続いて、
図13の(a)に示されるように、第2積層体50の残りの層を形成する。続いて、
図13の(b)に示されるように、第2積層体50を部分的にドライエッチングで除去し、可動ミラー5、第1ばね部20、第2ばね部30及び静電アクチュエータ10の可動部12といった各部を形成すると共に、貫通孔50bを形成する。更に、端子16,17に対応する固定部11及び可動部12用のコンタクトホールを形成し、電極メタルの成膜を行う。続いて、フッ酸ガスによって、貫通孔50bを介して気相エッチングし、中間層82を部分的に除去し、空隙Sを形成する。このようにして、
図8に示される光学モジュール1Bが表面マイクロマシン技術で製造される。なお、第2ばね部30の
他端30b及び外縁部50cとする部分には、貫通孔50bを形成しないことによって、中間層82を残すような調整を行うことができる。
【0077】
第2実施形態では、第1ばね定数K1及び第2ばね定数K2の大きさを調整するために、第1ばね部20及び第2ばね部30の長さを調整したが、例えば、端子16,17を形成する際に、電極メタルを第2ばね部30に蒸着することで、第1ばね定数K1及び第2ばね定数K2の大きさを調整してもよい。また、第1ばね部20のポリシリコン層51をエッチングして窒化シリコン層52のみにする等、第1ばね部20及び第2ばね部30の層の材質及び構成を変えることで、第1ばね定数K1及び第2ばね定数K2の大きさを調整することも可能である。
【0078】
以上説明したように光学モジュール1Bでは、可動ミラー5は、半導体基板2に対して垂直に駆動させられる。これによれば、例えば、可動ミラー5が光学モジュール1Bの外部に露出しているため、可動ミラー5に被測定光Lを入射させ易くなる。更に、表面マイクロマシン技術を用いた製造方法を好適に適用することができる。
【0079】
また、光学モジュール1Bでは、第1ばね部20は、半導体基板2に固定された一端20a、及び第2ばね部30との接続部13となる他端20bを有し、第2ばね部30は、接続部13となる一端30a、及び半導体基板2に固定された他端30bを有し、可動部12は、第1ばね部20の中間部20cに接続されている。これによれば、第1ばね部20の一端が半導体基板2に固定されているので、第1ばね部20が損傷し難くなる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、可動部の位置の検出は、固定部と可動部との間の静電容量の検出によらず、レーザー干渉計等による変位測定によって行なってもよい。これによれば、静電容量の検出が不要となる。また、例えば、光学部品はファブリペロ干渉フィルタ以外の干渉フィルタを構成するミラー等の部材であってもよい。これによれば、当該部材を安定的且つ高精度に動作させることによって、当該干渉フィルタの波長分解能を高めることができる。また、例えば、第2実施形態において、第1ばね部20の一端20aは、半導体基板2に固定されていなくてもよく、一端20aが可動部12に接続することで、可動部12を支持していてもよい。これによれば、第1ばね部20全体の伸びを可動部12の移動距離とすることができ、可動部12の移動距離を拡大し易くなる。