(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
オゾンは、強力な酸化作用があり、作用後には無害な酸素等に分解する。そのため、オゾンは、半導体製造や食品製造、水処理等の分野で、洗浄や殺菌、脱臭等の処理に多用されている。
【0003】
このようなオゾンを発生するオゾン発生装置の多くには、無声放電方式が採用されている。
【0004】
無声放電方式のオゾン発生装置では、誘電体を介して対向する一対の電極間に空隙(放電ギャップ)が設けられている。一対の電極間に高電圧を印加すると、放電ギャップで無声放電が発生する。放電ギャップに酸素を含む原料ガスを流すことで、原料ガスがオゾン化し、オゾンが発生する。
【0005】
このような無声放電方式を採用したオゾン発生装置に、チューブ型のオゾン発生装置がある。チューブ型のオゾン発生装置では、オゾンを発生するユニットを構成する誘電体に、管形状をした放電管が使用されている。チューブ型のオゾン発生装置の場合、複数の放電管を平行に密集させて配置できるため、大型化し易い利点がある。
【0006】
チューブ型のオゾン発生装置における給電子の構造については、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0007】
特許文献1では、高圧電源と電気的に接続される棒状の給電子が誘電体管の内部に配置されており、その給電子が、誘電体管の内面にメタライズされている電極とステンレス鋼ウール材を介して電気的に接続されている。
【0008】
特許文献2では、外周面に複数のスリットが形成された提灯型形状をした給電子が用いられており、その給電子が、誘電体管の内面にメタライズされている電極に弾性接触することにより、電源と電極とを電気的に接続している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
誘電体管はガラスなどで形成されているが、材料や成形精度の影響により、内面は真円となっていない場合が多く、内径もある程度ばらつきがある。ミクロなレベルで見れば、誘電体管の内表面も平滑ではなく凹凸が存在する。
【0011】
そのため、ウール材を用いたり提灯型形状にしたりして、給電子と電極との接触を確保しているが、ウール材や提灯型は形状が複雑であるため、製作が面倒という問題がある。
【0012】
そこで、本発明の主な目的は、簡単に作ることができるオゾン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るチューブ型のオゾン発生装置に備えられるオゾン発生ユニットは、筒状の外側電極管と、放電ギャップを隔てて前記外側電極管の内側に配置される放電管と、を有している。前記放電管は、少なくとも一方の端部に開口を有する筒状の誘電体管と、前記開口からはみ出た露出端部を有する状態で前記誘電体管の内周面に密接して設けられる電極膜と、外部電源に接続されて前記電極膜に給電する給電子と、を有している。
【0014】
そして、前記給電子は、前記電極膜の内側に設置される内側クリップと、前記電極膜の外側に設置される外側クリップと、を有し、前記内側クリップと前記外側クリップとにより、前記露出端部が挟み込まれている。
【0015】
このオゾン発生装置によれば、誘電体管の内周面に、電極膜を密接させているため、電極膜の誘電体管長手方向の長さを調整すれば、簡単に露出端部を設けることができる。そして、電極膜の露出端部が内側クリップと外側クリップとによって挟み込まれた状態となっているので、電極膜と給電子とを直接的かつ均一に接触させることができ、電極膜に安定して給電することができる。
【0016】
更には、前記外側クリップは、一度に複数の前記電極膜の端部を挟み込めるように、複数のクリップ部を有し、複数の露出端部が、それぞれ、各露出端部の内側に配置された内側クリップと、前記クリップ部により挟み込まれているとよい。
【0017】
そうすれば、1つの外側クリップを、複数の電極膜の端部を一度に挟み込むことに使用できる。従って、電極膜の露出端部を挟み込むための作業工数を低減することができる。加えて、本数の多い放電管どうしを容易に接続することができ、接触抵抗も低減することができる。
【0018】
更には、前記オゾン発生ユニットを複数備え、前記内側クリップの少なくとも一部は、前記外部電源と電気的に接続される接続端子が直接設けられた接続端子付き内側クリップであるとよい。
【0019】
そうすれば、簡単な構成で、部材点数の削減や接触抵抗の低減等が図れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のオゾン発生装置によれば、各放電管への給電が安定して行えるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0023】
<第1実施形態>
(オゾン発生装置の構成)
図1に、本実施形態のチューブ型のオゾン発生装置1を示す。オゾン発生装置1には、装置本体2や、装置本体2と協働する制御機器や操作盤等からなる付帯設備3などが備えられている。
【0024】
装置本体2は、耐腐食性に優れたステンレス製の耐圧容器であり、その内部でオゾンが生成される。装置本体2は、円筒状の胴部11と、胴部11の両端を塞ぐ2つの蓋部12とを有している。装置本体2は、横置きされた状態で一対の脚部13,13によって支持されている。蓋部12の一方は、胴部11にヒンジを介して取り付けられており、開閉可能な扉とされている。
【0025】
装置本体2には、原料ガス配管14やオゾン配管15、冷却配管16などが接続されている。具体的には、原料ガス配管14は、図外の原料ガス供給源に接続されており、酸素や空気等の原料ガスが原料ガス配管14を通じて装置本体2に供給される。オゾン配管15は、図外のオゾンの供給先に接続されており、装置本体2で生成されたオゾンがオゾン配管15を通じてその供給先に送られる。
【0026】
冷却配管16は、入水用及び出水用の2つの冷却配管16a,16bがあり、それぞれ図外の熱交換器等に接続されている。装置本体2には、これら冷却配管16a,16bを通じて冷却水が循環供給される。
【0027】
図2に示すように、装置本体2の内部は、ステンレス製の2枚の区画板17,17によって原料ガス室18、冷却室19及びオゾン室20に区画されている。原料ガス室18は、装置本体2の一方の端部に配置されており、原料ガス配管14と連通している。オゾン室20は、装置本体2の他方の端部に配置されており、オゾン配管15と連通している。
【0028】
冷却室19は、原料ガス室18とオゾン室20の間に位置し、装置本体2の大部分を占めている。冷却室19は、オゾン室20側の下隅部分で入水用の冷却配管16aと連通し、原料ガス室18側の上隅部分で出水用の冷却配管16bと連通している。冷却室19の内部には、複数の規制板21が所定の間隔で設置されている。これら規制板21により、冷却室19の内部は上下互い違いに区画され、冷却水が蛇行して流れるように設計されている。
【0029】
装置本体2の内部には、複数のオゾン発生ユニット30が、冷却室19を横切り、胴部11の長手方向に沿って平行に延びるように設置されている。
【0030】
図3に示すように、各オゾン発生ユニット30は、密集した状態で配置されている。詳しくは、隣り合って位置するオゾン発生ユニット30の間のピッチが同じ長さとなるように、三角配置されている。これらオゾン発生ユニット30の各々において、原料ガスからオゾンが生成される。
【0031】
図3の拡大図及び
図4に、オゾン発生ユニット30の詳細を示す。オゾン発生ユニット30は、外側電極管31と放電管32とで構成されている。
【0032】
外側電極管31は、円筒状のステンレス管からなり、その各端部は、各区画板17に隙間無く接合されている。外側電極管31は、区画板17を介して電気的に接地されており、低電圧側の電極を構成している。外側電極管31の周囲は冷却水によって満たされており、各オゾン発生ユニット30は冷却水によって冷却される。外側電極管31の内側に、同心円状に放電管32が配置されている。
【0033】
(放電管の構成)
放電管32は、誘電体管33や電極膜34、給電子40などで構成されている。
【0034】
誘電体管33は、一方の端部に開口33aを有する細長い棒状部材であり、例えばガラスなどで円筒状に形成されている。誘電体管33の一般的な寸法としては、全長は長くて2m、外径は10mm〜30mm程度、肉厚は1mm〜3mm程度である。
【0035】
誘電体管33の外周面は、僅かな隙間(放電ギャップ36)を隔てて外側電極管31の内周面と対向している。外側電極管31と放電管32の電極膜34との間に高電圧が印加されると、放電ギャップ36で無声放電が発生する。
【0036】
誘電体管33の塞がれた端部は、オゾン室20に位置し、開口33aが有る誘電体管33の端部は、原料ガス室18に位置している。無声放電が発生している放電ギャップ36に、原料ガス室18から原料ガスが流入することによってオゾンが発生する。発生したオゾンは、オゾン室20に流出し、オゾン配管15を通じて供給先に送り出される。
【0037】
電極膜34は、ステンレスのバネ鋼板等、高い弾性を有するとともに電気伝導率に優れた薄膜状の金属導体を用いて円筒状に形成されている。
【0038】
詳しくは、電極膜34は、金属導体が細長く筒状に丸められた状態で開口33aから誘電体管33に奥まで挿入された後、それ自体の弾性力で誘電体管33の内部で金属導体が径方向外側に拡がることによって、誘電体管33の内周面に密接している。
【0039】
従って、このオゾン発生装置1の場合、電極が誘電体管内面にメタライズされたものとは異なり、電極膜34を誘電体管33から取り外すことができるので、電極膜34だけを交換することができる。
【0040】
さらに、電極膜34は、その一部(露出端部34aともいう)が開口33aからはみ出た状態で誘電体管33に設置される。
【0041】
給電子40は、外部電源37の高電圧側に接続されて電極膜34に給電するものであり、
図5にも示すように、内側クリップ41や外側クリップ42などで構成されている。
【0042】
内側クリップ41及び外側クリップ42は、いずれも金属プレス加工、マルチフォーミング、加工冶具などにより形成され、弾性及び電気伝導性に優れている。
【0043】
外側クリップ42は、軸方向に一部が分断された円筒状の部材であり、C字状断面を有している。外側クリップ42の内径は、外力が作用しない無負荷の状態では、誘電体管33の内径よりも小さく形成されている。ここで、露出端部34aの軸方向の長さL2は、0より大きい即ち開口33aから露出していれば問題ないが、外側クリップ42の軸方向の長さL1よりも大きい(L2≧L1)ことが好ましく、L2≧2L1であることがさらに好ましい。
【0044】
内側クリップ41も、外側クリップ42と同様に、C字状断面を有する円筒状の部材である。内側クリップ41の外径は、無負荷の状態では、誘電体管33の内径よりも大きく形成されている。内側クリップ41の軸方向の長さL3は、少なくとも内側クリップ41の軸方向の長さL1よりも大きく形成されている。
【0045】
外側クリップ42は、外力を加えて拡径し、内側クリップ41が挿入されている露出端部34aの外側に嵌め合わされる。そうして外力を取り去ると外側クリップ42が縮まるため、露出端部34aに外側から圧接した状態で外側クリップ42が電極膜34の外側に設置される。
【0046】
内側クリップ41は、外力を加えて縮径し、先端が誘電体管33の内部に位置するまで電極膜34の内側に挿入される。そうして、外力を取り去ると内側クリップ41が拡がるため、電極膜34に内側から圧接した状態で内側クリップ41が電極膜34の内側に設置される。
【0047】
その結果、露出端部34aは、内側クリップ41と外側クリップ42とによって挟み込まれ、内外から圧接された状態となっている。
【0048】
このように、誘電体管33の開口33aからはみ出た電極膜34の露出端部34aが、内側クリップ41と外側クリップ42とで挟み込まれることによって給電子40と直接的かつ均一に接触している。そのため、電極膜34に安定して給電することができる。
【0049】
(給電子間の接続)
図6に簡略化して示すように、各放電管32の給電子40は、互いに電気的に接続される。なお、
図6では、各給電子40が直列に接続、つまり、1つの給電子40が隣接する1つ又は2つの給電子40と接続されているが、給電子40間の接続パターンは、仕様に応じて適宜設定される。
【0050】
また、互いに接続された一群の給電子40の複数カ所に、リード線44と電気的に接続された接続端子43が設けられている。リード線44は図外にて外部電源37と電気的に接続されている。これら接続端子43及びリード線44を介して外部電源37から一群の給電子4に給電が行われる。
【0051】
これら一群の給電子40の接続は、隣接する給電子40の間の隙間が小さいうえに、給電子40の数が多い場合には、工数が非常に多く、負担の大きな作業となる。
【0052】
そこで、本実施形態のオゾン発生装置1では、これら給電子40の接続が容易にできるように、内側クリップ41及び外側クリップ42の形状が工夫されている。
【0053】
(給電子の具体的構成)
まず、
図4に示すように、誘電体管33の開口33aから突き出す内側クリップ41の長さL4が、外側クリップ42の軸方向の長さL1の2倍以上となるように、内側クリップ41が設置されている。2倍以上とするのは、内側クリップ41に外側クリップ42を少なくとも2つ以上重ねられるようにするためである。
【0054】
図7に示すように、外側クリップ42は、一度に2つの露出端部34aを挟み込めるように、2つ連結して一体に形成されている(外側クリップ対42Pともいう)。連なる2つの外側クリップ42,42の間には、屈曲した屈曲部45が設けられている。2つの外側クリップ42,42の間の寸法は、隣り合って位置する給電子40の間のピッチに合わせて設定されている。屈曲部45が弾性変形するため、多少ピッチがずれても対応できるようになっている。
【0055】
リード線44を接続するために、内側クリップ41の一部は、
図8に示すように、内側クリップ41に直接接続端子43が設けられた接続端子付き内側クリップ52となっている。
【0056】
内側クリップ41の一部を接続端子付き内側クリップ52とすることで、所望する箇所に所望する数だけ、接続端子43を簡単に設けることができる。
【0057】
図9に、これら外側クリップ対42Pを用いて互いに接続されている給電子40を示す。外側クリップ対42Pは、互いに隣接する2つの露出端部34a,34aの部分に嵌め込まれ、それにより、2つの給電子40,40が電気的に接続された給電子対が形成される。更に、この給電子対に隣接する2つの露出端部34a,34aの部分に、別の外側クリップ対42Pが嵌め込まれ、更に給電子対が形成される。
【0058】
そうして、形成された2つの給電子対のうち、互いに隣接している2つの給電子40,40に対し、外側クリップ対42Pを誘電体管33の長手方向に重ねるようにして、これら2つの内側クリップ41,41の部分を挟み込む。このように、各給電子40の露出端部34a及び内側クリップ41の部分に対して、外側クリップ対42Pを互い違いに嵌め込むことにより、多数の給電子40の接続を簡単に行うことができる。
【0059】
<第2実施形態>
図10〜
図12に、第2実施形態のオゾン発生装置を示す。本実施形態のオゾン発生装置や放電管の基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、同じ機能の構成には同じ符号を用いてその説明は省略する。
【0060】
本実施形態のオゾン発生装置1では、外側クリップ42単独で用いられ、給電子40に、別途、
図10や
図11に示すような、架設クリップ50や接続端子付き架設クリップ51が備えられている。
【0061】
架設クリップ50は、互いに対向して延びる一対の差込脚部50aと、これら差込脚部50aの一端に架け渡される架設部50bとを有している。架設部50bの中間部には、弾性変形可能な屈曲部50cが形成されている。差込脚部50a,50a間の寸法は、隣り合って位置する給電子40の間のピッチに合わせて設定されている。詳しくは、差込脚部50a,50a間の大きさは、隣り合って位置する給電子40の間のピッチよりも僅かに小さく形成されている。
【0062】
各差込脚部50aは、誘電体管33に設置された内側クリップ41の内周面及びオゾン発生ユニット30の形状に合わせて、断面劣弧状に形成されている。
【0063】
外力を加えて差込脚部50a,50a間を拡げ、各差込脚部50aを互いに隣接する2つの内側クリップ41,41に差し込むことにより、架設クリップ50は、これら2つの内側クリップ41,41に架設される。そうすることにより、各差込脚部50aが各内側クリップ41の内面に圧着し、両内側クリップ41,41は互いに電気的に接続される。屈曲部50cが弾性変形するため、内側クリップ41,41間に多少のピッチのずれがあっても問題にならない。
【0064】
図11は、接続端子付き架設クリップ51である。接続端子付き架設クリップ51では、架設部50bにリード線44の接続が可能な接続端子43が一体に設けられている。
【0065】
図12に、これら架設クリップ50及び接続端子付き架設クリップ51を用いて互いに接続されている給電子40を示す。架設クリップ50及び接続端子付き架橋クリップ51による接続は、互いに隣接する2つの内側クリップ41,41に、誘電体管33の開口33aが臨む方向から架設クリップ50及び接続端子付き架橋クリップ51を差し込むだけでよいため、作業性に優れる。
【0066】
架設クリップ50の一部を、接続端子付き架設クリップ51とするだけで、接続端子43も簡単に設けることができる。
【0067】
なお、本発明にかかるオゾン発生装置は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0068】
図13の(a)に示すように、外側クリップ42は、3個以上連結していてもよい。また、
図13の(b)に示すように、架橋クリップ50も2個以上連結していてもよい。連結数が多いと、作業性や電気抵抗の面で利点がある。特に、これらを10個や20個等、多数連なった形態としてもよい。そうすれば、外側クリップ42等が1個必要であれば1個切り取って使用できるし、2個必要であれば2個切り取って使用できる。必要に応じて必要な分だけ分断して使用できるため、汎用性に優れる。
【0069】
第2実施形態のオゾン発生装置において、接続端子付き架設クリップ51に代えて、第1実施形態のように一部の内側クリップ41を
図8に示す接続端子付き内側クリップ52としてもよい。