(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに直列接続され、その両端に入力電圧が印加される第一及び第二の主スイッチング素子と、入力巻線及び出力巻線を有するトランスと、第一又は第二の主スイッチング素子がオンした時、前記入力巻線の一端をバイアスすることにより、前記入力巻線に前記入力電圧のほぼ半分の電圧を発生させる入力側コンデンサと、前記出力巻線に発生する電圧を整流平滑して出力電圧を生成する出力整流平滑回路と、前記第一の主スイッチング素子をオンオフさせる第一駆動パルスと前記第二の主スイッチング素子をオンオフさせる第二駆動パルスとを生成し、前記第一及び第二駆動パルスによって前記第一及び第二の主スイッチング素子のオン時間を調節し、前記出力電圧を目標値に近づける制御を行う制御回路とで構成されたハーフブリッジ型の電源回路を有し、
前記第一駆動パルスは、ハイレベルとローレベルを繰り返す周期が一定であり、ハイレベルとローレベルのどちらか一方の期間に前記第一の主スイッチング素子をオンさせることができ、前記第二駆動パルスは、ハイレベルとローレベルを繰り返す周期が前記第一駆動パルスと同じであり、ハイレベルとローレベルのどちらか一方の期間に前記第二の主スイッチング素子をオンさせることができ、
前記制御回路が、前記第一駆動パルスが前記第一の主スイッチング素子をオンさせる側のレベルになる時比率である第一のオン時比率と、前記第二駆動パルスが前記第二の主スイッチング素子をオンさせる側のレベルになる時比率である第二のオン時比率とを変化させることによって、前記第一及び第二の主スイッチング素子のオン時間を変化させるスイッチング電源装置において、
前記制御回路は、前記出力電圧と前記目標値との差を増幅し、前記出力電圧を前記目標値に近づける方向に増減する制御信号を出力する出力電圧監視部と、前記制御信号を受け、所定の変調条件に基づいて変調を行って前記第一及び第二のオン時比率を決定し、これを信号化した駆動パルス時比率信号を出力するパルス幅変調部と、前記駆動パルス時比率信号に対応した前記第一及び第二駆動パルスを生成し、前記第一及び第二の主スイッチング素子に向けて出力する駆動パルス生成部と、前記出力整流平滑回路から負荷に供給される出力電流が所定の上限値を超えたことを検出すると、前記出力電流の増加を抑制するため、前記出力電圧を前記目標値より低下させる方向に増減する保護信号を出力する出力電流監視部とで構成され、
前記パルス幅変調部には、ゼロよりも大きい値である所定の最小時比率が設定され、前記パルス幅変調部は、前記制御信号が前記出力電圧を低下させる方向に変化すると、その変化に応じて前記第一及び第二のオン時比率を徐々に小さくし、前記第一及び第二のオン時比率が前記最小時比率まで小さくなった後、さらに前記制御信号が前記出力電圧を低下させる方向に変化すると、前記第一駆動パルスの周期の2倍以上の時間である最小時比率保持時間が経過するまでの間、前記第一及び第二のオン時比率を前記最小時比率に保持し、前記最小時比率保持時間が経過した後、前記第一及び第二のオン時比率を速やかに前記最小時比率からゼロに切り替える動作を行い、
さらに前記パルス幅変調部は、前記保護信号を受けると、前記制御信号を無視し、前記保護信号を前記制御信号とみなして同様の変調を行って前記第一及び第二駆動パルスの時比率を決定し、前記第一及び第二のオン時比率が前記最小時比率まで小さくなった後、さらに前記保護信号が前記出力電圧を低下させる方向に変化すると、前記最小時比率保持時間を前記第一駆動パルスの周期以下の短い時間に切り替えて、前記第一及び第二のオン時比率を速やかに前記最小時比率からゼロに切り替える動作を行うことを特徴とするスイッチング電源装置。
互いに直列接続され、その両端に入力電圧が印加される第一及び第二の主スイッチング素子と、入力巻線及び出力巻線を有するトランスと、第一又は第二の主スイッチング素子がオンした時、前記入力巻線の一端をバイアスすることにより、前記入力巻線に前記入力電圧のほぼ半分の電圧を発生させる入力側コンデンサと、前記出力巻線に発生する電圧を整流平滑して出力電圧を生成する出力整流平滑回路と、前記第一の主スイッチング素子をオンオフさせる第一駆動パルスと前記第二の主スイッチング素子をオンオフさせる第二駆動パルスとを生成し、前記第一及び第二駆動パルスによって前記第一及び第二の主スイッチング素子のオン時間を調節し、前記出力電圧を目標値に近づける制御を行う制御回路とで構成されたハーフブリッジ型の電源回路を有し、
前記第一駆動パルスは、ハイレベルとローレベルを繰り返す周期が一定であり、ハイレベルとローレベルのどちらか一方の期間に前記第一の主スイッチング素子をオンさせることができ、前記第二駆動パルスは、ハイレベルとローレベルを繰り返す周期が前記第一駆動パルスと同じであり、ハイレベルとローレベルのどちらか一方の期間に前記第二の主スイッチング素子をオンさせることができ、
前記制御回路が、前記第一駆動パルスが前記第一の主スイッチング素子をオンさせる側のレベルになる時比率である第一のオン時比率と、前記第二駆動パルスが前記第二の主スイッチング素子をオンさせる側のレベルになる時比率である第二のオン時比率とを変化させることによって、前記第一及び第二の主スイッチング素子のオン時間を変化させるスイッチング電源装置において、
前記制御回路は、前記出力電圧と前記目標値との差を増幅し、前記出力電圧を前記目標値に近づける方向に増減する制御信号を出力する出力電圧監視部と、前記制御信号を受け、所定の変調条件に基づいて変調を行って前記第一及び第二のオン時比率を決定し、これを信号化した駆動パルス時比率信号を出力するパルス幅変調部と、前記駆動パルス時比率信号に対応した前記第一及び第二駆動パルスを生成し、前記第一及び第二の主スイッチング素子に向けて出力する駆動パルス生成部と、前記出力整流平滑回路から負荷に供給される出力電流が所定の上限値を超えたことを検出すると、前記出力電流の増加を抑制するため、前記出力電圧を前記目標値より低下させる方向に増減する保護信号を出力する出力電流監視部とで構成され、
前記パルス幅変調部は、前記第一駆動パルスの特定の1周期における前記第一のオン時比率を決定すると、この期間における第二のオン時比率も同じ値にする動作を行うものであり、
前記パルス幅変調部には、ゼロよりも大きい値である所定の最小時比率が設定され、前記パルス幅変調部は、前記制御信号が前記出力電圧を低下させる方向に変化すると、その変化に応じて前記第一のオン時比率を徐々に小さくし、前記第一のオン時比率が前記最小時比率まで小さくなった後、さらに前記制御信号が前記出力電圧を低下させる方向に変化すると、前記第一のオン時比率を前記最小時比率からゼロに切り替える動作を行い、
さらに前記パルス幅変調部は、前記保護信号を受けると、前記制御信号を無視し、前記保護信号を前記制御信号とみなして同様の変調を行って前記第一駆動パルスの時比率を決定し、前記第一のオン時比率が前記最小時比率まで小さくなった後、さらに前記保護信号が前記出力電圧を低下させる方向に変化すると、前記第一のオン時比率を前記最小時比率からゼロに切り替える動作を行うことを特徴とするスイッチング電源装置。
前記制御回路の一部又は全部がデジタルプロセッサ内に設けられ、前記第一駆動パルスの周期、第二駆動パルスの周期、及び前記最小時比率が、前記デジタルプロセッサが有する共通のクロック周期を基準に設定されている請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、スイッチング電源装置の
一形態について、
図1〜
図9に基づいて説明する。
このスイッチング電源装置10は、一定のスイッチング周期で動作するハーフブリッジ型の電源装置であり、
図1に示すように、互いに直列接続され、その両端に入力電圧Viが印加される第一及び第二の主スイッチング素子12,14を備えている。ローサイド側の第一の主スイッチング素子12は、NチャネルのMOS型FETであり、ゲート・ソース間に入力される第一駆動パルスVg1によって駆動され、第一駆動パルスVg1がハイレベルの期間にオンし、ローレベルの期間にオフする。ハイサイド側の第二の主スイッチング素子14も、同一のMOS型FETであり、ゲート・ソース間に入力される第二駆動パルスVg2によって駆動され、第二駆動パルスVg2がハイレベルの期間にオンし、ローレベルの期間にオフする。
【0018】
第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2は、繰り返しの周期Tが互いに等しい。以下、繰り返しの1周期Tの中で、第一駆動パルスVg1がハイレベル(第一の主スイッチング素子12をオンさせる側のレベル)になる時比率を第一のオン時比率Don1とし、第二駆動パルスVg2がハイレベル(第二の主スイッチング素子14をオンさせる側のレベル)になる時比率を第二のオン時比率Don2と称する。
【0019】
第一及び第二の主スイッチング素子12,14の両端には、第一及び第二の入力側コンデンサ16,18の直列回路が接続されている。ローサイド側の入力側コンデンサ16とハイサイド側の第二の入力側コンデンサ18は同一の部品であり、互いに接続された中点に、入力電圧Viのほぼ半分の電圧が発生する。
【0020】
トランス20は、入力巻線20aと出力巻線20bとを有し、入力巻線20aが、第一及び第二の主スイッチング素子12,14の中点と第一及び第二の入力側コンデンサ16,18の中点との間に接続されている。入力巻線20aの一端は、第一及び第二の入力側コンデンサ16,18によりバイアスされるので、第一又は第二の主スイッチング素子12,14がオンした時、入力巻線20aの両端に、入力電圧Viのほぼ半分の電圧が印加される。
【0021】
トランス20の出力巻線20bには、出力巻線20bに発生する電圧を整流平滑して出力電圧Voを生成する出力整流平滑回路22が接続されている。出力整流平滑回路22は、例えば、ダイオードを用いたセンタタップ整流型の整流回路と、LCフィルタで成る平滑回路とで構成されている。
【0022】
さらに、第一及び第二の主スイッチング素子12,14のスイッチング動作を制御する制御回路24が設けられている。制御回路24は、第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2を生成し、第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2によって第一及び第二の主スイッチング素子12,14の導通時間Ton1,Ton2を調節し、出力電圧Voを目標値Vrに近づける制御を行う回路である。制御回路24は、出力電圧監視部26、パルス幅変調部28、及び駆動パルス生成部30で構成されている。
【0023】
出力電圧監視部26は、出力電圧Voと目標値Vrとの差を増幅し、出力電圧Voを目標値Vrに近づける方向に増減する制御信号Vsを出力するブロックである。制御信号Vsは、ここでは直流の電圧信号である。出力電圧Voの検出方法は、出力整流平滑回路22の出力端の電圧を観測してもよいし、出力電圧Voと略比例する他の電圧を観測してもよい。出力電圧監視部26の場合、
図2(a)のグラフに示すように、出力電圧Voが目標値Vrより高くなると、その差に応じて制御信号Vsを低くする特性を有している。その結果、後述するパルス幅変調部28と駆動パルス生成部30の働きによって主スイッチング素子12,14のオン時間が短くなり、出力電圧Voを低下させることができる。反対に、出力電圧Voが目標値Vrより低くなると、その差に応じて制御信号Vsを高くし、後述するパルス幅変調部28と駆動パルス生成部30の働きによって主スイッチング素子12,14のオン時間が長くなり、出力電圧Voを上昇させることができる。
【0024】
図2(a)に示す出力電圧監視部26の特性は、例えば
図2(b)に示す出力電圧監視部26(1)によって実現することができる。この回路は、入力された出力電圧Voと直流電圧Vrとの差を反転増幅回路32で増幅し、反転増幅回路32の出力電流を信号絶縁用のフォトカプラ34の発光側ダイオード34aに流し込み、プルアップ抵抗36を介して直流電圧Vcc1に接続されている受光側トランジスタ34bのコレクタから制御信号Vsを出力する構成になっている。
【0025】
パルス幅変調部28は、制御信号Vsを受け、所定の変調条件に基づいて変調を行って第一及び第二のオン時比率Don1,Don2を決定し、これを信号化した駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(Don2)を出力するブロックである。駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(Don2)は、ここではパルス電圧である。
【0026】
パルス幅変調部28には、ゼロよりも大きい値である所定の最小時比率Dminが設定され、
図3に示す変調条件に基づいて変調を行う。すなわち、制御信号Vsが出力電圧Voを低下させる方向に変化すると(制御信号Vsが低下すると)、その変化に応じて第一及び第二のオン時比率Don1,Don2を徐々に小さくし、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2が最小時比率Dminまで小さくなった後、さらに制御信号Vsが出力電圧Voを低下させる方向に変化すると(さらに制御信号Vsが低下すると)、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2を最小時比率Dminからゼロに切り替える。ここで、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2が最小時比率Dminになるときの制御信号Vsの値をVk1、オン時比率Don1,Don2が最小時比率Dminからゼロに切り替わる制御信号Vsの値をVk2とする。
【0027】
駆動パルス時比率信号Vd(Don1)は、
図3(b)に示すように、1つ周期Tのスタート時点から第一のオン時比率Don1の期間が開始し、この期間はローレベル、これ以外の期間はハイレベルとなる。駆動パルス時比率信号Vd(Don2)は、1つ周期Tの中間点から第二のオン時比率Don2の期間が開始し、この期間はローレベル、これ以外の期間はハイレベルとなる。つまり、この駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(Don2)には、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2の情報の他に、スイッチング周期の情報、主スイッチング素子12,14がそれぞれオンに転じる位相差の情報、等が含まれている。
【0028】
さらに、パルス幅変調部28には、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2を最小時比率Dminからゼロに切り替える動作のスピードを規定する最小時比率保持時間Thが設定されている。すなわち、パルス幅変調部28は、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2が最小時比率Dminまで小さくなった後、さらに制御信号Vsが出力電圧Voを低下させる方向に変化すると、最小時比率保持時間Thが経過するまでの間、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2を最小時比率Dminに保持し、最小時比率保持時間Thが経過した後、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2を速やかに最小時比率Dminからゼロに切り替える動作を行う。最小時比率保持時間Thは、第一駆動パルスVg1の周期Tの2倍以上の時間に設定される(例えば、5〜10倍程度が好ましい)。
【0029】
出力電圧監視部26が
図2のように構成されている場合、上述したパルス幅変調部28の機能は、
図4に示すパルス幅変調部28(1)のように、最大時比率設定用パルス発生器38、最小時比率設定用パルス発生器40、三角波発生回路42、比較器44、最小時比率保持時間設定回路46、及び駆動パルス時比率信号生成回路48を組み合わせることによって実現することができる。この中で、最大時比率設定用パルス発生器38と最小時比率設定用パルス発生器40は、同一のデジタルプロセッサ内に設けられている。
【0030】
最大時比率設定用パルス発生器38は、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2の上限値Dmaxを規定する最大時比率信号V1max,V2maxを生成する。最大時比率信号V1maxはパルス電圧であり、
図7に示すように、1つ周期Tのスタート時点から上限値Dmaxの期間が開始し、その上限値Dmaxの期間がローレベル、これ以外の期間はハイレベルとなる。最大時比率信号V2maxは、1つ周期Tの中間点から上限値Dmaxの期間が開始し、その上限値Dmaxの期間がローレベル、これ以外の期間はハイレベルとなる。
【0031】
最大時比率設定用パルス発生器38は、デジタルプロセッサ固有のクロック信号Vckをカウントし、分周することによって最大時比率信号V1max,V2maxを生成する。共通のクロック周期(クロック信号Vckの周期)を基準にしているので、最大時比率信号V1max,V2maxの周期Tと上限値Dmaxを非常に高い精度で設定することができる。
【0032】
最小時比率設定用パルス発生器40は、最小時比率Dminを規定する最小時比率信号Vminを生成する。最小時比率信号Vminはパルス電圧であり、
図7に示すように、1つ周期Tのスタート時点と中間点から最小時比率Dminの期間が開始し、最小時比率Dminの期間はローレベルとなり、これ以外の期間はハイレベルとなる。つまり、1つの周期Tの中に、最小時比率Dminの期間を2回発生させ、前者が第一駆動パルスVg1の最小時比率を規定し、後者が第二駆動パルスVg2の最小時比率を規定する。
【0033】
最小時比率設定用パルス発生器40も、上記のクロック信号Vckをカウントし、分周することによって最小時比率信号Vminを生成する。共通のクロック周期(クロック信号Vckの周期)を基準にしているので、最小時比率信号Vminの周期Tと最小時比率Dminを非常に高い精度で設定することができる。
【0034】
三角波発生回路42は、パルス幅変調用の三角波電圧Voscを生成する回路であり、
図4に示すように、タイマコンデンサ50、直流電圧Vcc2からタイマコンデンサ50を充電する充電抵抗52、タイマコンデンサ50を放電するためのダイオード54及びナンド・ゲート56(以下、NAND56と称する。)で構成され、NAND56には、最大時比率信号V1max,V2maxが入力される。
【0035】
三角波発生回路42の動作を説明すると、
図7に示すように、1つの周期Tのスタート時点で、NAND56の出力がハイレベルに転じてタイマコンデンサ50の放電を解除し、タイマコンデンサ54が充電抵抗52を通じて充電され、三角波電圧Voscが右肩上がりに上昇する。そして、最大時比率Dmaxの期間が終了して最大時比率信号V1maxがローレベルになると、NAND56の出力がローレベルになり、タイマコンデンサ50が瞬時に放電され、三角波電圧Voscがダイオード54の順方向電圧まで低下する。三角波電圧Voscが低下した時の電圧は、
図3(a)における電圧Vk2に相当し、直列に接続するダイオード54の数で調節することができる。その後、周期Tの中間点で、NAND56の出力がハイレベルに転じてタイマコンデンサ50の放電を解除し、タイマコンデンサ54が充電抵抗52を通じて充電され、三角波電圧Voscが右肩上がりに上昇する。そして、最大時比率Dmaxの期間が終了して最大時比率信号V2maxがハイレベルになると、NAND56の出力がローレベルになり、タイマコンデンサ50が瞬時に放電され、三角波電圧Voscがダイオード54の順方向電圧まで低下する。以上の動作を繰り返すことにより、タイマコンデンサ50に、三角波電圧Voscを発生させることができる。つまり、1つの周期Tの中に、三角波状の電圧を2回発生させる。
【0036】
比較器44は、非反転入力端子に三角波電圧Voscが入力され、反転入力端子に制御信号Vsが入力され、パルス電圧V44を出力する。したがって、
図7に示すように、パルス電圧V44は、Vs>Voscの期間にローレベルとなり、Vs<Voscの期間にハイレベルとなる。
【0037】
最小時比率保持時間設定回路46は、最小時比率保持時間Thを設定するための電圧Vhを生成する回路であり、タイマコンデンサ58、直流電圧Vcc1からタイマコンデンサ58を充電する充電抵抗60、タイマコンデンサ58を放電するPNP型のトランジスタ62で構成され、トランジスタ62は、エミッタがタイマコンデンサ58に接続され、コレクタがグランドに接続され、ベースが比較器44の出力に接続されている。
【0038】
最小時比率保持時間設定回路46の動作を説明すると、
図9に示すように、比較器44が出力するパルス電圧V44がローレベルの期間は、トランジスタ62がオンしてタイマコンデンサ58を短絡し、電圧Vhがほぼゼロに保持される。パルス電圧V44がハイレベルになると、トランジスタ62がオフしてタイマコンデンサ58の短絡が解除され、タイマコンデンサ58が充電抵抗60を通じて充電され、電圧Vhが右肩上がりに上昇する。例えば、パルス電圧V44のハイレベルが複数の周期Tに亘って継続すると、トランジスタ62がオンしないので電圧Vhが上昇し続け、やがて直流電圧Vcc1に達して一定になる。電圧Vhが上昇する傾きは、タイマコンデンサ58及び充電抵抗60の時定数により調整することができ、この傾きを緩やかにすれば、最小保持率保持時間Thを長くすることができる。電圧Vhと最小時比率保持時間Thとの関係については、スイッチング電源装置10の動作を説明する中で述べる。
【0039】
駆動パルス時比率信号生成回路48は、3つのオア・ゲート64,66,68(以下、OR64、OR66,OR68と称する。)とアンド・ゲート70(以下、AND70と称する。)で構成され、OR64は、最小時比率信号Vminと電圧Vhが入力され、パルス電圧V64を出力する。AND70は、パルス電圧V44と電圧V64が入力され、パルス電圧V70を出力する。OR66は、最大時比率信号V1maxとパルス電圧V70が入力され、駆動パルス時比率信号Vd(don1)を出力する。OR68は、最大時比率信号V2maxとパルス電圧V70が入力され、駆動パルス時比率信号Vd(don2)を出力する。
【0040】
駆動パルス時比率信号生成回路48の動作は、
図7〜
図9のように表される。OR64の出力であるパルス電圧V64は、入力された電圧Vhと最小時比率信号Vminが共にローレベルの時にローレベルになる。電圧Vhは緩やかな傾きで上昇する波形なので、OR64は、電圧Vhがハイレベルかローレベルかを判断する時、入力閾値Vthよりも低いときはローレベルであると判断し、入力閾値Vthより高くなるとハイレベルであると判断する。
【0041】
OR66,OR68が出力する駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(Don2)については、先に
図3(a),(b)を用いて説明した通りであり、第一及び第二の時比率Don1,Don2が、比較器44に入力される制御信号Vsに応じて変化する。詳しくは、スイッチング電源装置10の動作を説明する中で述べる。
【0042】
図1に示す駆動パルス生成部30は、駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(Don1)に対応した第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2を生成し、第一及び第二の主スイッチング素子12,14に向けて出力するブロックである。具体的には、
図5に示すように、駆動パルス時比率信号Vd(Don1)を受け、ハイレベルとローレベルのロジックが逆転した第一駆動パルスVg1を生成すると共に、駆動パルス時比率信号Vd(Don2)を受け、ハイレベルとローレベルのロジックが逆転した第二駆動パルスVg2を生成する。また、第二駆動パルスVg2は、ハイサイド側の第二の主スイッチング素子14を駆動するため、第一駆動パルスVg1とグランド電位が切り離されて出力される。
【0043】
次に、スイッチング電源装置10の動作について、
図6に基づいて説明する。スイッチング電源装置10は、出力整流平滑回路22の出力電流Ioがα%以上(例えば、20%以上)の範囲では、いわゆる電流連続モードで動作するので、出力電流Ioの変化に対して、第一及び第二の主スイッチング素子12,14の導通時間Ton1,Ton2を変化させずに、出力電圧Voを目標値Vrに保持することができる。したがって、
図6(a)に示すように、出力電圧監視部26が出力する制御電圧Vsが所定の高い電圧値Vk0に保持され、パルス幅変調部28が決定する第一及び第二のオン時比率Don1,Don2も、電圧値Vk0に対応した大きい値に保持される。
【0044】
動作点P1(α%<Io<100%)におけるパルス幅変調部28(1)の各部の動作波形は、
図7のように表される。この中で、パルス幅変調部28の出力信号となる駆動パルス時比率信号Vd(Don1)について見ると、1つの周期Tは、最大時比率信号V1maxがローレベルに転じるタイミングで開始し、このスタート時点から第一のオン時比率Don1の期間が始まる。そして、オン時比率Don1の期間が終了するのは、制御信号Vs(=Vk0)と三角波電圧Voscの大小関係が逆転してパルス電圧V44がハイレベルに転じるタイミングとなる。また、パルス幅変調部28の他の出力信号である駆動パルス時比率信号Vd(Don2)について見ると、1つの周期Tは、最大時比率信号V1maxがローレベルに転じるタイミングで開始し、第二のオン時比率Don2の期間は、最大時比率信号V2maxがローレベルに転じるタイミングから始まる。そして、オン時比率Don2の期間が終了するのは、制御信号Vs(=Vk0)と三角波電圧Voscの大小関係が逆転してパルス電圧V44がハイレベルに転じるタイミングとなる。最小時比率保持時間設定回路46が出力する電圧Vhは、OR64の入力閾値Vthを超えずにローレベルを継続している。1つの周期Tの前半(中間点の前の期間)と後半(中間点の後の期間)を比べると、制御信号Vsが前後半を通じて一定の高い電圧値Vk0に保持されているので、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2は互いに等しい。
【0045】
このように、出力電流Ioがα%以上の範囲では、第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2のオン時比率Don1,Don2は、互いに等しく、且つ大きい値になる。したがって、第一及び第二の主スイッチング素子12,14の僅かな特性の違い(例えば、オン閾値電圧のばらつき)によって導通時間Ton1,Ton2に若干の差が発生した場合でも、その影響は非常に小さく、
図6(c)に示すように、入力側コンデンサ16,18の電圧V16,V18がほぼ等しくなるので、トランス20の偏励磁は非常に小さい。
【0046】
出力電流Ioが小さくなってα%以下になると、いわゆる電流不連続モードで動作するので、出力電流Ioの変化に対して、第一及び第二の主スイッチング素子12,14の導通時間Ton1,Ton2を短くすることによって、出力電圧Voを目標値Vrに保持することができる。したがって、
図6(a)に示すように、制御電圧Vsが電圧値Vk1に向かって徐々に低下し、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2も最小時比率Dminに向かって小さくなる。
【0047】
動作点P2(β%<Io<α%、β%は例えば5%)におけるパルス幅変調部28(1)の各部の動作波形は、
図8のように表される。駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(Don2)のハイレベルとローレベルが切り替わる動作、電圧Vhがローレベルを継続する動作は、動作点P1と同じである。動作点P2では、動作点P1よりも制御電圧Vsが低くなっているので、制御信号Vsと三角波電圧Voscの大小関係が逆転するタイミングが変化し、パルス電圧V44がハイレベルに転じるタイミングが早くなって、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2が短くなっている。
【0048】
このように、出力電流Ioがβ%〜α%の範囲では、第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2のオン時比率Don1,Don2は、動作点P1より小さい値になる。しかし、オン時比率Don1,Don2>Dminの範囲では、第一及び第二の主スイッチング素子12,14の導通時間Ton1,Ton2に若干の差が発生した場合でも、その影響は小さく、
図6(c)に示すように、入力側コンデンサ16,18の電圧V16,V18がほぼ等しくなるので、トランス20の偏励磁は小さい。
【0049】
出力電流Ioが小さくなってβ%未満になると、出力電圧Voを目標値Vrに保持するため、オン時比率Don1,Don2=Dminで動作する期間とオン時比率Don1,Don2=ゼロで動作する期間を交互に繰り返すバースト動作を行う。
図3(a)に示すパルス幅変調部28の変調条件から分かるように、オン時比率Don1,Don2は、ゼロより大きく最小時比率Dminより小さい値にはなり得ないところ、オン時比率Don1,Don2=Dminで動作する状態が長く継続すると、出力電圧Voが目標値Vrより高くなってしまい、反対にオン時比率Don1,Don2=ゼロで動作する状態が長く継続すると出力電圧Voがダウンしてしまう。そこで、出力電流Io<β%の範囲では、制御回路24は、バースト動作を行うことによって、出力電圧Voを目標値Vrに近づける制御を行う。
【0050】
動作点P3(0%<Io<β%)におけるパルス幅変調部28(1)の各部の動作波形は、
図9のように表される。動作点P2から動作点P3に移行した最初の周期T(1)は、制御電圧Vsが低下して「Vk2<Vs<Vk1」となり、
図3(a)に示すように、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2が最小時比率Dminとなる。
【0051】
周期T(1)の動作状態が続くと出力電圧Voが目標値Vrよりも高くなるので、次の周期T(2)になると、制御電圧Vsがさらに低下して「Vs<Vk2」となる。「Vs<Vk2」になると、
図3(a)の変調条件によれば、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2がゼロに切り替わることになるが、パルス幅変調部28に最小時比率保持時間Thが設けられているため、「Vs<Vk2」になってから時間Thが経過するまでの間、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2=Dminの動作状態が保持される。
【0052】
図9に示すように、周期T(2)は、比較器44が出力するパルス電圧V44がハイレベルに保持される。したがって、最小時比率保持時間設定回路46のトランジスタ62のオフが継続して電圧Vhが上昇し続け、周期T(k)の後半になって、電圧VhがOR64の入力閾値Vthに達する。電圧VhがOR64の入力閾値Vthに達するまでの周期T(2)〜T(k)の間は、OR64の働きにより、駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(don2)がローレベルになる期間が発生し、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2=Dminとなる。この動作状態が続くと出力電圧Voが目標値Vrよりも高くなるので、制御電圧Vsは「Vs<Vk2」に保持される。
【0053】
最小時比率保持時間Thが経過した周期T(k+1)以降は、OR64の働きにより、駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(don2)がハイレベルに保持され、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2=ゼロの動作状態になり、出力電圧Voが目標値Vrに向かって徐々に低下する。この動作状態は、出力電圧Voが目標値Vrより低くなるまで継続される。
【0054】
その後、周期T(k+n)の途中で出力電圧Voが目標値Vrより低くなり、制御信号Vsが上昇し、次の周期は先の周期T(1)と同様の動作状態に戻る。その後、出力電圧Voが目標値Vrより高くなると、再度、周期T(2)〜T(k+n)の動作状態に戻る。以上の動作が繰り返され、出力電圧Voが目標値Vrに保持される。
【0055】
このように、出力電流Ioがβ%未満の範囲では、第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2のオン時比率Don1,Don2は、ゼロ又は最小時比率Dmin以上の値になる。つまり、「0%<Don1,Don2<Dmin」という小さい値にはなり得ない。したがって、第一及び第二の主スイッチング素子12,14の導通時間Ton1,Ton2に若干の差が発生した場合でも、その影響は小さく、
図6(c)に示すように、入力側コンデンサ16,18の電圧V16,V18がほぼ等しくなるので、トランス20の偏励磁が小さく抑えられる。
【0056】
次に、最小時比率保持時間Thの設定方法について説明する。
図9に表した動作点P3における動作波形は、制御電圧Vsが電圧値Vk2よりも低くなる(三角波電圧Voscと交差しなくなる)のが周期T(1)の後半であり、このタイミングで最小時比率保持時間Thが開始して、周期T(k)の後半に終了しており、その結果、周期T(2)〜T(k)の間に発生する「第一のオン時比率Don1の期間の合計」と「第二のオン時比率Don2の期間の合計」とが等しくなっている。
【0057】
しかし、制御電圧Vsの変動速度は、出力電圧監視部26の応答速度の設定により異なってくるので、制御電圧Vsの動きが
図9のようにならないケースも考えられる。例えば、出力電圧監視部26の応答速度がもう少し速ければ、制御電圧Vsが電圧値Vk2よりも低くなるのが周期T(1)の前半になる可能性がある。すると、最小時比率保持時間Thが周期T(1)の前半に開始し、周期T(k)の前半に終了するので、周期T(k)の後半に第二のオン時比率Don2の期間が発生しなくなり、その結果、周期T(2)〜T(k)の間に発生する「第一のオン時比率Don1の期間の合計」と「第二のオン時比率Don2の期間の合計」に差ΔTonが発生し、トランス20が偏励磁する新たな原因となる。このトランス20の偏励磁は、最小時比率保持時間Thに対する時間差ΔTonの比率であるΔTon/Thが大きいほど顕著になり、トランス20が飽和するおそれが生じる。
【0058】
しかし、本実施形態のパルス幅変調部28のように、最小時比率保持時間Thを周期Tの2倍以上の時間に設定することにより、比率ΔTon/Thを十分小さく抑えることができるので、トランス20の飽和を容易に回避することができる。ただし、最小時比率保持時間Thをあまり長くすると、バースト動作の周期が長くなって出力電圧Voのリップルが大きくなる可能性があるので、最小時比率保持時間Thは、周期Tの5〜10倍程度に設定するのが好ましい。
【0059】
以上説明したように、スイッチング電源装置10によれば、パルス幅変調部28に、最小時比率Dminを有する独特の変調条件が設定されているので、第一及び第二の主スイッチング素子の特性の違いにより導通時間Ton1,Ton2に差が生じても、トランス28が偏励磁して飽和するのを防止することができる。さらに、パルス幅変調部28に、所定の最小時比率保持時間Thが設定されているので、出力電流Ioが小さくなってバースト動作を行うとき、「第一のオン時比率Don1の期間の合計」と「第二のオン時比率Don2の期間の合計」に差ΔTonが生じても、トランス28が偏励磁して飽和するのを防止することができる。
【0060】
また、上記のパルス幅変調部28の機能は、例えば
図4に示すような回路を用いて高精度に実現することができ、さらにパルス幅変調部28を含む制御回路24全体をシンプルな構成にすることができる。
【0061】
次に、本発明のスイッチング電源装置の
第一の実施形態について、
図10〜
図16に基づいて説明する。ここで、
上記スイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のスイッチング電源装置72は、過電流保護機能を備えた電源装置であり、
図10に示すように、スイッチング電源装置10の制御回路24の中に出力電流監視部74が新設され、上記のパルス幅変調部28を改変したパルス幅変調部76が設けられている。
【0062】
出力電流監視部74は、出力整流平滑回路22から負荷Loに供給される出力電流Ioが所定の上限値γ%を超えて過電流状態になったことを検出すると、出力電流Ioの増加を抑制するため、出力電圧Voを目標値Vrより低下させる方向に増減する保護信号Vocを出力するブロックである。保護信号Vocは、制御信号Vsと同様に、直流の電圧信号である。出力電流Ioの検出方法は、出力整流平滑回路22の出力端の電流を観測してもよいし、出力電流Ioと略比例する他の電流を観測してもよい。出力電流監視部74の場合、
図11のグラフに示すように、出力電流Ioが上限値γ%より高くなると、その超過分に応じて保護信号Vocを低くする。その結果、後述するパルス幅変調部76と駆動パルス生成部30の働きによって主スイッチング素子12,14のオン時間が短くなり、出力電流Ioの増加を抑制すると共に、出力電圧Voをダウンさせることができる。出力電流Ioが上限値γ%以下のときは、保護信号Vocを出力しない。
【0063】
図11に示す出力電流監視部74の特性は、例えば
図12に示す出力電流監視部74(1)の構成により実現することができる。出力電流監視部74(1)は、トランス20の入力巻線20aに流れるスイッチング電流の平均値を観測することによって出力電流Ioを検出する。つまり、入力巻線20aと直列にカレントトランス78を挿入し、その出力電流を整流器80でブリッジ整流し、電流検出抵抗82で電圧に変換し、ローパスフィルタである平滑回路84で平均化することによって、平滑回路84の出力端に、出力電流Ioの平均値に略比例した電流信号V84を生成する。
【0064】
電流信号V84は、NPN型の第一トランジスタ86のエミッタに入力される。第一トランジスタ86のコレクタは、直列接続された2つの抵抗88,90を介して直流電圧Vcc3に接続され、ベースが抵抗88,90の中点に接続されている。第一トランジスタ86の出力端であるコレクタには、NPN型の第二トランジスタ92のベースが接続されている。第二トランジスタ92は、コレクタが抵抗94を介して直流電圧Vcc1にプルアップされ、エミッタがグランドに接続され、ベース・エミッタ間にノイズ除去用のコンデンサ95が接続されている。第二トランジスタ92の出力端であるコレクタには、PNP型の第三トランジスタ96のベースが接続されている。第三トランジスタ96は、エミッタが抵抗36(出力電圧監視部26に内蔵されている抵抗)を介して直流電圧Vcc1にプルアップされ、コレクタがグランドに接続されている。第三トランジスタ96の出力端であるエミッタは、後述するパルス幅変調部76の比較器44の反転入力端子に向けて、保護信号Vocを出力する。また、第二トランジスタ92の出力であるコレクタには、NチャネルのMOS型FETである第四トランジスタ98のゲートが接続されている。第四トランジスタ98は、ドレインが後述する充電抵抗部100(パルス幅変調部76に内蔵されているブロック)を介して直流電圧Vcc1にプルアップされ、ソースがグランドに接続されている。第四トランジスタ98の出力端であるドレインは、充電抵抗部100に向けて切替信号Vjを出力する。つまり、切替信号Vjは、保護信号Vocが出力されていないときにローレベル、出力されているときにハイレベルとなる。
【0065】
出力電流Ioがγ%以下の範囲では、電流信号V84が低いので、第一トランジスタ86のコレクタ電圧も低く、第二トランジスタ92が非導通となる。したがって、第三トランジスタ96は非導通となって保護信号Vocを出力せず、比較器44の反転入力端子の電圧は、制御信号Vsによって定まる。また、第四トランジスタ98はオンして切替信号Vjを出力する(ローレベル)。
【0066】
出力電流Ioが増加してγ%を超えると、電流信号V84が所定の値を超え、第一トランジスタ86のコレクタ電圧も高くなって第二トランジスタ92にコレクタ電流が流れ始める。したがって、第三トランジスタ96にエミッタ電流が流れ始めて保護信号Vocが出力され、その結果、制御信号Vsが出力されなくなり、比較器44の反転入力端子の電圧が保護信号Vocによって決定される。また、第四トランジスタ98はオフに転じて切替信号Vjを出力しなくなる。
【0067】
さらに出力電流Ioが増加すると、第二トランジスタ92のコレクタ電流が増加し、第三トランジスタ96のエミッタ電流が増加して、
図11に示すように、保護信号Vocが徐々に低下する。また、第四トランジスタ98はオフ状態に保持される。
【0068】
パルス幅変調部76は、上記のパルス幅変調部28と同様に、
図3(a)に示す変調条件が設定されている。一方、保護信号Vocを受けたときは、制御信号Vsを無視し、保護信号Vocを制御信号Vsとみなして同様の変調を行って第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2の時比率を決定する。また、保護信号Vocを受けると、上記の最小時比率保持時間Thが第一駆動パルスVg1の周期T以下の短い時間に切り替わる。
【0069】
出力電流監視部74が
図12のように構成されている場合、このパルス幅変調部76の機能は、
図13に示すパルス幅変調部76(1)の構成により実現することができる。
図4のパルス幅変調部28(1)と異なるのは、最小時比率保持時間設定回路46の充電抵抗60に代えて、充電抵抗部100が設けられている点である。充電抵抗部100は、抵抗100a,100b及びダイオード100cで構成され、トランジスタ62のエミッタに抵抗100aの一端とダイオード100cのカソードが接続され、ダイオード100cのアノードに抵抗100bの一端が接続され、抵抗100aの他端及び抵抗100bの他端が直流電圧Vcc1に接続されている。抵抗100bの抵抗値は、抵抗
100aの抵抗値と同等以下の小さい値に設定されている。
【0070】
抵抗100bとダイオード100cのアノードの中点には、出力電流監視部74の第四トランジスタ98のドレインが接続され、この接続点に切替信号Vjが入力される。出力電流Ioがγ%以下の範囲では、切替信号Vjがローレベルなので、ダイオード100cが非導通となり、充電抵抗部100全体の抵抗値は、抵抗100a単体の大きい値となる。出力電流Ioがγ%を超える範囲では、切替信号Vj(ローレベル)が出力されているので、ダイオード100cが導通し、充電抵抗部100全体の抵抗値は、抵抗100a及び抵抗100bを並列にした小さい値となる。したがって、切替信号Vjがローレベルのとき(保護信号Vocが出力されないとき)は、
図9で説明したように、最小時比率保持時間Thが周期Tの2倍以上の時間に設定され、切替信号Vjがハイレベルのとき(保護信号Vocが出力されたとき)は、最小時比率保持時間Thが周期T以下の短い時間に設定される。
【0071】
次に、スイッチング電源装置72の動作について、
図14に基づいて説明する。出力電流Ioがγ%以下(例えば、120%以下)の範囲は、保護信号Vocが出力されないので、上記のスイッチング電源装置10の動作と同様である(
図6〜
図9)。
【0072】
出力電流Ioがγ%を超えると、出力電流監視部74から保護信号Vocが出力され、出力電流Ioの増加と共に保護信号Vocが電圧値Vk0からVk1に向かって低下すると共に、最小時比率保持時間Thが周期T以下の短い時間に切り替わる。そして、パルス幅変調部76は、保護信号Vocを制御信号Vsとみなして動作し、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2が最小時比率Dminに向かって小さくなり、第一及び第二の主スイッチング素子12,14の導通時間Ton1,Ton2が短くなって出力電圧Voが低下する。
【0073】
動作点P11(γ%<Io<ω%、ω%は例えば130%)におけるパルス幅変調部76(1)の各部の動作波形は、
図15のように表される。
図15では制御信号Vsに代えて保護信号Vocの波形を記載してあるが、駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(Don2)のハイレベルとローレベルが切り替わる動作は、
図8に示す動作点P2とほぼ同じである。ただし、最小時比率保持時間Thが短い時間に切り替わっているので、電圧Vhが上昇し始めてからごく短時間でOR64の入力閾値Vthを超えてハイレベルになっている。
【0074】
このように、出力電流Ioがγ%〜ω%の範囲になると、動作点P2と同様に、第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2のオン時比率Don1,Don2が動作点P1よりも小さい値になる。
【0075】
さらに出力電流Ioが大きくなってω%を超えると、出力電流Ioの平均値を所定の値に保持するため、オン時比率Don1,Don2=Dminで動作する期間とオン時比率Don1,Don2=ゼロで動作する期間を交互に繰り返すバースト動作を行う。
図3(a)に示すパルス幅変調部28の変調条件から分かるように、オン時比率Don1,Don2は、ゼロより大きく最小時比率Dminより小さい値にはなり得ないところ、オン時比率Don1,Don2=Dminで動作する状態が長く継続すると、出力電流Ioの瞬時値が所定の値より大きくなってしまい、反対にオン時比率Don1,Don2=ゼロで動作する状態が長く継続すると出力電流Ioが所定の値よりも小さくなってしまう。そこで、出力電流Io>ω%の範囲では、制御回路24は、バースト動作を行うことによって、出力電流Ioの平均値を所定の値に保持する制御を行う。
【0076】
動作点P12(Io>ω%)におけるパルス幅変調部76(1)の各部の動作波形は、
図16のように表される。動作点P11から動作点P12に移行した直後の周期T(1),T(2)は、保護信号Vocが低下して「Vk2<Voc<Vk1」となり、
図3(a)に示すように、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2が最小時比率Dminとなる。
【0077】
周期T(1),T(2)の動作状態が続くと出力電流Ioの平均値が所定の値よりも大きくなるので、周期T(2)の後半に、保護信号Vocがさらに低下して「Voc<Vk2」となる。「Voc<Vk2」になると、
図3(a)の変調条件の通り、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2が速やかにゼロに切り替わる。最小時比率保持時間Thがごく短い時間に切り替わっているからである。
【0078】
次の周期T(3),T(4)は、OR64の働きにより、駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(don2)がハイレベルに保持され、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2=ゼロの状態になる。この動作状態は、出力電流Ioの平均値が所定の値より小さくなるまで継続される。
【0079】
その後、周期T(4)の後半に出力電流Ioの平均値が所定の値より低くなり、保護信号Vocが上昇し、次の周期は先の周期T(1),T(2)と同様の動作状態に戻る。その後、出力電流Ioの平均値が所定の値より大きくなると、再度、周期T(3),T(4)の動作状態に戻る。以上の動作が繰り返され、出力電流Ioが所定の値に保持される。
【0080】
このように、出力電流Ioがω%以上の範囲になると、第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2のオン時比率はDon1,Don2が、速やかにゼロと最小時比率Dmin以上の値に交互に切り替わり、出力電流Ioの平均値を所定の値に保持する。
【0081】
なお、最小時比率保持時間Thが短くなっているので、出力電流監視回路の応答速度によっては、周期T(1),T(2)の間に発生する「第一のオン時比率Don1の期間の合計」と「第二のオン時比率Don2の期間の合計」に差ΔTonが発生するケースが考えられる。しかし、出力電流Ioが大きいときは、第一のオン時比率Don1,Don2が小さくなっても入力側コンデンサ16,18の電圧V16,V18のバランスが崩れにくいという性質があるので、トランス20の偏励磁が顕著になって飽和する心配はない。
【0082】
スイッチング電源装置72によれば、上記スイッチング電源装置10と同様の作用効果を得ることができ、さらに、スイッチング電源装置72の出力端が誤って短絡される事故が発生した時に、過電流保護動作が素早く行われるという効果が得られる。つまり、誤って出力端が短絡される事故が発生して過電流状態になると、最小時比率保持時間Thが短い時間(第一駆動パルスVg1の周期T以下)に切り替わるため、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2を速やかにゼロにできるようになり、過渡的に出力電流Ioが急増するのを抑制することができる。
【0083】
次に、本発明のスイッチング電源装置の
第二の実施形態について、
図17〜
図19に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置72と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のスイッチング電源装置102は、スイッチング電源装置72の構成の一部を変更したものであり、出力電流監視部74が出力電流監視部104に置き換えられ、パルス幅変調部76がパルス幅変調部106に置き換えられ、駆動パルス生成部30が駆動パルス生成部108に置き換えられている。以下、構成が異なる部分について説明する。
【0084】
出力電流監視部104は、出力電流監視部74と同様の機能を有し、例えば
図12に示す出力電流監視部74(1)の構成により実現することができる。ただし、出力電流監視部104は、切替信号Vjを出力する必要がないので、第四トランジスタ98を省略できる。以下、出力電流監視部74(1)から第四トランジスタ98を省略した構成を出力電流監視部104(1)と称する。
【0085】
パルス幅変調部106は、出力電圧監視部26が出力する制御信号Vsを受けると、
図18(a)に示す変調条件に基づいて変調を行う。そして、特定の周期Tの第一のオン時比率をDonに決定すると、この期間の第二のオン時比率も同じDonに決定し、このオン時比率Donを信号化した駆動パルス時比率信号Vd(Don)を出力する。一方、出力電流監視部104から保護信号Vocを受けたときは、制御信号Vsを無視し、保護信号Vocを制御信号Vsとみなして同様の変調を行って第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2のオン時比率Donを決定する。駆動パルス時比率信号Vd(Don)は、
図18(b)に示すように、1つ周期Tのスタート時点からオン時比率Donの期間が開始し、この期間がローレベル、これ以外の期間はハイレベルとなる。
【0086】
また、上記のパルス幅変調部76の場合は、最小時比率保持時間Th(第一駆動パルスVg1の周期Tの2倍以上の時間)が設定されているが、パルス幅変調部106には設定されていない。したがって、オン時比率Donが最小時比率Dminからゼロへの切り替わる動作は、常に速やかに行われる。
【0087】
駆動パルス生成部108は、駆動パルス時比率信号Vd(Don)に対応した第一及び第二駆動パルスVg1,Vg2を生成し、第一及び第二の主スイッチング素子12,14に向けて出力するブロックである。具体的には、
図19に示すように、駆動パルス時比率信号Vd(Don)を受け、ハイレベルとローレベルのロジックが逆転した第一駆動パルスVg1を生成すると共に、第一駆動パルスVg1から180°位相が遅れた第二駆動パルスVg2を生成する。また、第二駆動パルスVg2は、ハイサイド側の第二の主スイッチング素子14を駆動するため、第一駆動パルスVg1とグランド電位が切り離されて出力される。
【0088】
スイッチング電源装置102の動作は、上記のスイッチング電源装置72の動作と比較すると、出力電流Io<β%の範囲の動作が異なってくる。スイッチング電源装置102の場合は、最小時比率保持時間Th(第一駆動パルスVg1の周期Tの2倍以上の時間)が設定されていない。したがって、出力電流Io<β%の範囲で動作したときに、第一及び第二の主スイッチング素子12,14がスイッチング動作を行う複数の周期Tにおいて、「第一のオン時比率Don1の期間の合計」と「第二のオン時比率Don2の期間の合計」に差ΔTonが発生するか否かが問題になる。
【0089】
この点、パルス幅変調部106は、特定の周期Tの第一のオン時比率をDonに決定すると、この期間の第二のオン時比率も同じDonに決定するので、差ΔTonが発生することはない。したがって、差ΔTonが原因でトランス28が偏励磁する現象が確実に防止される。
【0090】
以上説明したように、スイッチング電源装置102によれば、上記のスイッチング電源装置72と同様の作用効果を、新規な構成の制御回路24により得ることができる。
【0091】
次に、スイッチング電源装置の
他の形態について、
図20〜
図23に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
このスイッチング電源装置110は、スイッチング電源装置10の構成の一部を変更したものであり、出力電圧監視部26が出力電圧監視部112に置き換えられ、パルス幅変調部28がパルス幅変調部114に置き換えられている。以下、構成が異なる部分について説明する。
【0092】
出力電圧監視部112は、出力電圧監視部26と同様に、出力電圧Voと目標値Vrとの差を増幅し、出力電圧Voを目標値Vrに近づける方向に増減する制御信号Vsを出力するブロックであり、制御信号Vsは、直流の電圧信号である。出力電圧監視部112の場合、
図21(a)のグラフに示すように、出力電圧Voが目標値Vrより高くなると、その差に応じて制御信号Vsを高くする。その結果、後述するパルス幅変調部114と駆動パルス生成部30の働きによって主スイッチング素子12,14のオン時間が短くなり、出力電圧Voを低下させることができる。反対に、出力電圧Voが目標値Vrより低くなると、その差に応じて制御信号Vsを低くし、後述するパルス幅変調部114と駆動パルス生成部30の働きによって主スイッチング素子12,14のオン時間が長くなり、出力電圧Voを上昇させることができる。
【0093】
図21(a)に示す出力電圧監視部112の特性は、例えば
図21(b)に示す出力電圧監視部112(1)によって実現することができる。この回路は、出力電圧監視部26(1)の反転増幅回路32を非反転増幅回路116に置き換えたものであり、その他の構成は同様である。
【0094】
パルス幅変調部114は、パルス幅変調部28と同様に、出力電圧監視部112が出力する制御信号Vsを受け、所定の変調条件に基づいて変調を行って第一及び第二のオン時比率Don1,Don2を決定し、これを信号化した駆動パルス時比率信号Vd(Don1),Vd(Don2)を出力するブロックである。
【0095】
パルス幅変調部114には、ゼロよりも大きい値である所定の最小時比率Dminが設定され、
図22に示す変調条件に基づいて変調を行う。すなわち、制御信号Vsが出力電圧Voを低下させる方向に変化すると(制御信号Vsが上昇すると)、その変化に応じて第一及び第二のオン時比率Don1,Don2を徐々に小さくし、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2が最小時比率Dminまで小さくなった後、さらに制御信号Vsが出力電圧Voを低下させる方向に変化すると(さらに制御信号Vsが上昇すると)、第一及び第二のオン時比率Don1,Don2を最小時比率Dminからゼロに切り替える。ここで、オン時比率Donが最小時比率Dminになるときの制御信号Vsの値をVk1、オン時比率Donが最小時比率Dminからゼロに切り替わる制御信号Vsの値をVk2とする。
【0096】
また、パルス幅変調部114には、パルス幅変調部28と同様に、最小時比率保持時間Th(第一駆動パルスVg1の周期Tの2倍以上の時間)が設定されている。
【0097】
スイッチング電源装置110は、上記のスイッチング電源装置10と比較すると、出力電圧Voの変化に対する制御信号Vsの増減の方向が反対であるが、動作はほぼ同じであり、同様の作用効果を得ることができる。
【0098】
なお、本発明のスイッチング電源装置は、上記実施形態に限定されるもの
ではない。
【0099】
図3(a)に示すパルス幅変調部28の変調条件、
図18(a)に示すパルス幅変調部106の変調条件、
図22(a)に示すパルス幅変調部114の変調条件は、オン時比率Don(Don1,Don2)が最小時比率Dminまで低下する制御信号Vsの値がVk1で、オン時比率Don(Don1,Don2)がゼロに切り替わる制御信号Vsの値がVk2であり、Vk1とVk2に電圧差が設けられているが、Vk2をVk1に近い値又は同じ値にしてもよく、同様の作用効果を得ることができる。
【0100】
上記実施形態では、2つの主スイッチング素子と2つの入力側コンデンサについて、ローサイド側を「第一」、ハイサイド側を「第二」としているが、ハイサイド側を「第一」、ローサイド側を「第二」としても同様である。また、上記実施形態は、いずれも
図24(a)に示す電源回路を備えているが、
図24(b)に示す電源回路にも適用することができ、同様の作用効果を得ることができる。また、制御回路内部の具体的な回路構成として、出力電圧監視部26(1),112(1)、パルス幅変調部28(1),76(1)、出力電流監視部74(1)などの好適な例を示したが、これ以外の回路に変更してもよく、例えば、各部の一部又は全部をデジタルプロセッサ内に構成し、デジタル演算処理によって各機能を実現するようにしてもよい。また、制御信号、保護信号、駆動パルス時比率信号は、信号の形態は限定されず、電圧信号(直流・パルス)、電流信号(直流・パルス)、デジタル信号等のどれを選択してもよい。