【文献】
Journal of Biological Chemistry,2004年,Vol.279, No.46,p.48270-48281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)1種以上の糖が非還元糖若しくは糖アルコールを含み、及び/又は(b)2種以上の糖を使用し糖の1種がスクロースであり、及び/又は(c)2種以上の糖を使用し糖の1種がスクロースであり、スクロースと他の1又は複数の糖の濃度の比が1:1〜20:1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(a)非還元糖若しくは糖アルコールを含み、及び/又は(b)スクロース若しくはマンニトールである1種の糖又はスクロースとラフィノースである2種の糖を含む、請求項11に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概要
本発明は、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び1種又は2種以上の糖によるポリペプチドの保存に関する。ポリペプチドは、水溶液中で式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び1種以上の糖と接触させ、次いで、ポリペプチドが存在する得られた溶液を乾燥させて、ポリペプチドを取り込んだ組成物を形成する。
【0017】
したがってポリペプチドは、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び1種以上の糖の水溶液と混合することができる(「保存混合物」)。次いで、生成溶液を乾燥させて、ポリペプチドを取り込んだ組成物を形成する。乾燥組成物はケーク又は粉末の形をとってよい。必要な場合、ケークは粉末状に粉砕することができる。
【0018】
本発明は、乾燥ステップ中、ポリペプチドの構造及び機能を保つのを可能にする。したがって、乾燥後のポリペプチド活性を維持することができる。式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルの存在は、ポリペプチド活性の保存を単独で可能にする。ポリペプチド活性の保存のさらなる改善点は、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルと組合せた、1種以上の糖の使用により得ることができる。
【0019】
保存されたポリペプチドは、貯蔵寿命の延長を可能にする改善された熱耐性、貯蔵及び輸送しやすさ、並びにコールドチェーン物流に関する必要性がないことを示す。したがって本発明は、凍結防止剤(凍結損傷に対する防御)、分散防止剤(フリーズドライ中の防御)及び/又はサーモプロテクタント(4℃より高い又は低い温度に対する防御)として防御をもたらすことができる。
【0020】
さらに、乾燥ステップの前にポリペプチドを水溶液中に保存する。これによって、ポリペプチド活性の過度の消失なしに、乾燥ステップを実施することができるような時間まで、調製後水溶液を貯蔵することができる。
【0021】
ポリペプチド
生理的活性があるポリペプチドなどの任意のポリペプチドが、本発明における使用に適している。例えばポリペプチドは、6〜14アミノ酸などの15アミノ酸未満の小ペプチド(例えば、オキシトシン、シクロスポリン)、15〜50アミノ酸のより大きなペプチド(例えば、カルシトニン、成長ホルモン放出ホルモン1〜29(GHRH))、50〜250アミノ酸長の小タンパク質(例えば、インスリン、ヒト成長ホルモン)、250アミノ酸長を超えるより大きなタンパク質、又は2本以上のポリペプチド鎖の複合体を含むマルチサブユニットタンパク質であってよい。
【0022】
典型的にはポリペプチドは、ホルモン、増殖因子、ペプチド若しくはサイトカイン、抗体若しくはその抗原若しくはリガンド結合断片、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ若しくはリガーゼ、又はワクチン免疫原である。
【0023】
ポリペプチドは、ペプチドホルモン、増殖因子若しくはサイトカインであってよい。ポリペプチドは、抗原結合ポリペプチド、受容体阻害剤、リガンド模倣体又は受容体遮断薬であってよい。典型的には、ポリペプチドは実質的に純粋な形である。したがって、ポリペプチドは単離ポリペプチドであってよい。例えば、組換え生成後にポリペプチドを単離することができる。
【0024】
例えばポリペプチドは、成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)、ヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL)、ゴナドトロフィン(例えば、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、プロ-オピオメラノコルチン(POMC)ファミリーのメンバー、バソプレシン及びオキシトシン、ナトリウム排泄増加ホルモン、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン及び胃腸ホルモンから選択されるホルモンであってよい。
【0025】
ポリペプチドは、タキキニンペプチド(例えば、サブスタンスP、カッシニン、ニューロキニンA、エレドイシン、ニューロキニンB)、血管作動性腸管ペプチド(例えば、VIP(血管作動性腸管ペプチド;PHM27)、PACAP(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド)、ペプチドPHI27(ペプチドヒスチジンイソロイシン27)、GHRH1〜24(成長ホルモン放出ホルモン1〜24)、グルカゴン、セクレチン)、膵臓ポリペプチド関連ペプチド(例えば、NPY、PYY(ペプチドYY)、APP(鳥類膵臓ポリペプチド)、PPY(膵臓ポリペプチド)、オピオイドペプチド(例えば、プロオピオメラノコルチン(POMC)ペプチド、エンケファリンペンタペプチド、プロジノルフィンペプチド、カルシトニンペプチド(例えば、カルシトニン、アミリン、AGG01)又は別のペプチド(例えば、B型ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP))であってよい。
【0026】
ポリペプチドは、上皮増殖因子(EGF)ファミリー、血小板由来増殖因子ファミリー(PDGF)、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF)、形質転換増殖因子-βファミリー(TGFs-β)、形質転換増殖因子-α(TGF-α)、エリスロポイエチン(Epo)、インスリン様増殖因子-I(IGF-I)、インスリン様増殖因子-II(IGF-II)のメンバーから選択される増殖因子であってよい。典型的には増殖因子は、形質転換増殖因子β(TGF-β)、神経増殖因子(NGF)、ニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、エリスロポイエチン(EPO)、トロンボポイエチン(TPO)、ミオスタチン(GDF-8)、増殖分化因子-9(GDF9)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF若しくはFGF-1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF若しくはFGF-2)、上皮増殖因子(EGF)又は肝細胞増殖因子(HGF)である。
【0027】
ポリペプチドは、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、腫瘍壊死因子-β(TNF-β)、インターフェロン-γ(INF-γ)及びコロニー刺激因子(CSF)から選択されるサイトカインであってよい。典型的にはサイトカインは、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である。
【0028】
ポリペプチドは、因子VIII、因子V、フォンウィルブランド因子又は凝固因子IIIなどの血液凝固因子であってよい。
【0029】
典型的にはポリペプチドは、(a)ルシフェラーゼ、ルシフェラーゼ様活性を示すルシフェラーゼのアナログ、又はアピラーゼ、及び/又は(b)因子VIIaではない。
【0030】
抗体
本発明において使用するための抗体は、完全抗体、又はその抗原若しくはリガンド結合断片のいずれかであってよい。
【0031】
完全抗体
一実施形態では、抗体は免疫グロブリン(Ig)モノマー、ジマー、テトラマー、ペンタマー、又は他のオリゴマーである。各々の抗体モノマーは4本のポリペプチド鎖を含むことができる(例えば、従来の抗体は2本の同一重鎖と2本の同一軽鎖からなる)。或いは、各々の抗体モノマーは2本のポリペプチド鎖からなる(例えば、1つの重鎖抗体が2本の同一重鎖からなる)。
【0032】
抗体は任意のクラス若しくはアイソタイプの抗体(例えばIgG、IgM、IgA、IgD若しくはIgE)又は任意のサブクラスの抗体(例えばIgGサブクラスのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又はIgAサブクラスのIgA1若しくはIgA2)であってよい。典型的には、抗体はIgG1、IgG2又はIgG4抗体などのIgGである。通常、抗体はIgG1又はIgG2抗体である。
【0033】
典型的には、抗体又は抗原結合断片は哺乳動物起源である。したがって抗体は、霊長類、ヒト、げっ歯類(例えば、マウス若しくはラット)、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウマ科又はラクダ科抗体又は抗体断片であってよい。抗体又は抗体断片はサメ又はニワトリ起源であってよい。
【0034】
抗体はモノクローナル又はポリクローナル抗体であってよい。モノクローナル抗体は、抗原上の一抗原決定基を対象とする実質的に相同な抗体の集団から得られる。ポリクローナル抗体の集団は、異なるエピトープを対象とする抗体の混合物を含む。
【0035】
抗原又はリガンド結合断片
抗原結合断片は、抗原又はリガンド結合能力を保持する抗体、例えばFab、F(Ab')
2、Fv、ジスルフィド結合Fv、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディ、直鎖状抗体、ドメイン抗体又は多重特異性抗体の任意の断片であってよい。このような断片は1種以上の抗原又はリガンド結合部位を含む。一実施形態では、抗原又はリガンド結合断片は、4個のフレームワーク領域(例えばFR1、FR2、FR3及びFR4)並びに3個の相補性決定領域(例えばCDR1、CDR2及びCDR3)を含む。抗原又はリガンドと結合する断片の能力を検出するのに適した方法、例えばイムノアッセイ及びファージディスプレイは当技術分野でよく知られている。
【0036】
抗体又は結合断片は、単一特異性、二重特異性又は多重特異性抗体であってよい。多重特異性抗体は、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種以上の異なるエピトープ、抗原又はリガンドに対する結合特異性を有する。二重特異性抗体は、2種の異なるエピトープ、抗原又はリガンドと結合することができる。例えば二重特異性抗体は、各V
H/V
L対が1種の抗原又はエピトープと結合する、二対のV
HとV
Lを含むことができる。例えば2個の免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現、望ましい結合特異性を有する抗体可変ドメインと免疫グロブリン定常ドメイン配列の融合、又は抗体断片の化学結合を含めた、二重特異性抗体を調製するための方法は当技術分野で知られている。
【0037】
二重特異性抗体「ダイアボディ」は、同一ポリペプチド鎖中で軽鎖可変ドメインと結合した重鎖可変ドメインを含む(V
H-V
L)。短すぎて同一鎖中の二ドメイン間で対形成することができず、したがってドメインが別鎖の相補ドメインと対形成して、2種の抗原又はリガンド結合部位を有する二量体分子を生成するリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を使用して、ダイアボディを作製することができる。
【0038】
適切なscFv抗体断片は抗体のV
H及びV
Lドメインを含むことができ、これらのドメインは一ポリペプチド鎖中に存在する。一般に、FvポリペプチドはV
HドメインとV
Lドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これによってscFvは抗原結合に望ましい構造を形成することができる。
【0039】
本発明の方法において使用するためのドメイン抗体は、本質的に軽鎖可変ドメイン(例えばV
L)から、又は重鎖可変ドメイン(例えばV
H)からなり得る。重鎖可変ドメインは従来の4鎖抗体に、又は重鎖抗体に由来し得る(例えば、ラクダ科V
HH)。
【0040】
修飾
完全抗体又はその断片はリンカーなどの他の成分と結合させることが可能であり、これらを使用して2個以上の断片又は抗体を1個に接合することができる。このようなリンカーは化学的リンカーであってよく、又は断片又は完全抗体との融合タンパク質の形で存在することができる。したがってリンカーを使用して、同じ又は異なる結合特異性を有する完全抗体又は断片を1個に接合することができる。
【0041】
さらなる実施形態では、抗体又は抗原若しくはリガンド結合断片を、毒素、治療剤(例えば、化学療法剤)、放射性同位体、リポソーム又はプロドラッグ活性化酵素などの、さらなる成分に連結させる。さらなる成分の型は、抗体又は抗原結合断片の最終用途に依存する。
【0042】
抗体又は抗原若しくはリガンド結合断片は、1種以上の小分子毒素(例えば、カリケアマイシン、メイタンシン、トリコセン及びCC1065)又は酵素活性毒素若しくはその断片(例えば、ジフテリア毒素、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来のエクソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、アレウリテスフォルディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、クルシン、クロチン、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン又はトリコテセン)に連結させることが可能である。
【0043】
抗体又は抗原結合断片との連結に適した放射性同位体には、Tc
99、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212及びP
32があるが、これらだけには限られない。
【0044】
抗体又は抗原若しくはリガンド結合断片は、例えば、プロドラッグを活性抗癌剤に転換する又は転換することができる、プロドラッグ活性化酵素に連結させることが可能である。例えば、アルカリホスファターゼを使用してホスフェート含有プロドラッグを遊離薬剤に転換することができ、アリルスファターゼを使用してサルフェート含有プロドラッグを遊離薬剤に転換することができ、シトシンデアミナーゼを使用して非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転換することができ、セラチアプロテアーゼなどのプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシンは、ペプチド含有プロドラッグを遊離薬剤に転換するのに有用である。酵素は、抗癌遺伝子療法中幾つかのプロドラッグの代謝において有用であると確認されている、ニトロレダクターゼであってよい。或いは、酵素活性を有する抗体又は抗原若しくはリガンド結合断片を使用して、プロドラッグを遊離活性薬剤に転換することができる。
【0045】
適切な化学療法剤は、チオテパ及びシクロホスファミドなどのアルキル化剤、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート、ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ及びウレドーパなどのアジリジン、クロラムブシル、クロルナファジン、イソスファミド、メルファランなどのナイトロジェンマスタード、カルムスチン及びフォテムスチンなどのニトロソウレア、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬、デノプテリン及びプテロプテリンなどの葉酸アナログ、フルダラビン及びチアミプリンなどのプリンアナログ、アンシタビン、アザシタビン、カルモファー及びドキシフルリジンなどのピリミジンアナログ、パクリタキセル及びドキセタキセルなどの毒素、並びに前述のいずれかの薬学的に許容される塩、酸若しくは誘導体だけには限られないが、これらを含むことができる。
【0046】
別の実施形態では、抗体又は抗体断片をペグ化することができる。したがって、1個以上のポリエチレングリコール分子を、抗体分子又は抗体断片分子と共有結合させることが可能である。1個〜3個のポリエチレングリコール分子を、各々の抗体分子又は抗体断片分子と共有結合させることが可能である。抗体又は抗体断片の免疫原性を低減するため、及び/又は抗体又は抗体断片の循環半減期を増大するために、このようなペグ化が主に使用される。
【0047】
キメラ、ヒト化又はヒト抗体
一実施形態では、抗体又は抗原若しくはリガンド結合断片は、異なる天然抗体由来の配列を含むキメラ抗体又はその断片である。例えば、キメラ抗体又は抗体断片は、特定種若しくは抗体クラスの抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である重鎖及び/又は軽鎖であって、一方で鎖の残り部分が別種若しくは抗体クラスの抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である、重鎖及び/又は軽鎖の一部分を含むことができる。典型的には、キメラ抗体又は抗体断片は、マウスとヒト抗体成分のキメラを含む。
【0048】
ヒト化型の非ヒト抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。適切なヒト化抗体又は抗体断片は、例えば、レシピエント抗体又は抗原若しくはリガンド結合断片の超可変領域由来(例えば、CDR由来の)残基が、望ましい特異性、アフィニティー及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ若しくは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基に置換された、免疫グロブリンを含むことができる。幾つかの場合、ヒト免疫グロブリンの数個のフレームワーク領域残基は、対応する非ヒト残基に置換することができる。
【0049】
ヒト化の代替として、ヒト抗体又は抗原結合断片を作製することができる。例えば、免疫処置により内在性免疫グロブリンを生成せずにヒト抗体の完全レパートリーを生成し得る、トランスジェニック動物(例えばマウス)を生成することができる。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異マウスにおける抗体重鎖接合領域(J
H)遺伝子の同系欠失は、内在性抗体産生の完全な阻害をもたらす可能性がある。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子をこのような生殖系列突然変異マウスに移して、抗原攻撃によるヒト抗体の産生をもたらすことができる。ファージディスプレイ技法を使用して、ヒト抗体又は抗原結合断片をin vitroで作製することもできる。
【0050】
標的
任意の標的抗原と結合可能である、抗体又は抗原若しくはリガンド結合断片は、本発明の方法において使用するのに適している。抗体又は抗体断片は、自己免疫障害(例えば、I型糖尿病、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病及び重症筋無力症)と関連した抗原又はリガンド、癌若しくは炎症状態と関連した抗原又はリガンド、骨粗しょう症と関連した抗原、アルツハイマー病と関連した抗原、又は細菌若しくはウイルス抗原と結合することができる。
【0051】
特に、抗体又は抗原若しくはリガンド結合断片が結合することができる標的は、CD抗原、増殖因子、増殖因子受容体、アポトーシス受容体などの細胞表面受容体、プロテインキナーゼ又は発癌性タンパク質であってよい。抗体又は抗原結合断片、例えばキメラ、ヒト化又はヒトIgG1、IgG2若しくはIgG4モノクローナル抗体又は抗体断片は、したがって腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、糖タンパク質IIb/IIIa、CD33、CD52、CD20、CD11a、CD3、RSVFタンパク質、HER2/neu(erbB2)受容体、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、抗TRAILR2(抗腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド受容体2)、補体系タンパク質C5、α4インテグリン又はIgEと結合することができる。
【0052】
より具体的には、抗癌剤モノクローナル抗体の文脈では、抗体又は抗原結合断片は、上皮細胞接着分子(EpCAM)、ムシン-1(MUC1/Can-Ag)、EGFR、CD20、癌胎児性抗原(CEA)、HER2、CD22、CD33、Lewis Y及び前立腺特異的膜抗原(PMSA)と結合することができる抗体又は抗体断片であってよい。再度、抗体は典型的にはキメラ、ヒト化又はヒトIgG1、IgG2若しくはIgG4モノクローナル抗体である。
【0053】
適切なモノクローナル抗体には、インフリキシマブ(キメラ抗体、抗TNFα)、アダリムマブ(ヒト抗体、抗TNFα)、バシリキシマブ(キメラ抗体、抗IL-2)、アブシキシマブ(キメラ抗体、抗GpIIb/IIIa)、ダクリツマブ(ヒト抗体、抗IL-2)、ゲムツズマブ(ヒト抗体、抗CD33)、アレムツズマブ(ヒト抗体、抗CD52)、エドレコロマブ(ネズミIg2a、抗EpCAM)、リツキシマブ(キメラ抗体、抗CD20)、パリビズマブ(ヒト化抗体、RSV標的)、トラツズマブ(ヒト化抗体、抗HER2/neu(erbB2)受容体)、ベバシズマブ(ヒト化抗体、抗VEGF)、セツキシマブ(キメラ抗体、抗EGFR)、エクリズマブ(ヒト化抗体、抗補体系タンパク質C5)、エファリズマブ(ヒト化抗体、抗CD11a)、イブリツモマブ(ネズミ抗体、抗CD20)、ムロモナブ-CD3(ネズミ抗体、抗T細胞CD3受容体)、ナタリズマブ(ヒト化抗体、抗α4インテグリン)、ニモツズマブ(ヒト化IgG1、抗EGF受容体)、オマリズマブ(ヒト化抗体、抗IgE)、パニツムマブ(ヒト抗体、抗EGFR)、ラニビズマブ(ヒト化抗体、抗VEGF)、ラニビズマブ(ヒト化抗体、抗VEGF)及びI-131トシツモマブ(ヒト化抗体、抗CD20)があるが、これらだけには限られない。
【0054】
抗体の調製
例えば、適切なモノクローナル抗体は、(例えばKohler et al Nature256:495(1975)により最初に記載されたような)ハイブリドーマ法によって、組換えDNA法によって、及び/又は単離後にファージ若しくは他の抗体ライブラリーから得ることができる。
【0055】
ハイブリドーマ技法は、望ましい免疫原で宿主動物(例えばマウス、ラット又はサル)を免疫処置して、免疫原と特異的に結合する抗体を産生するか又は産生することができる、リンパ球を誘導することを含む。或いは、リンパ球はin vitroで免疫処置することができる。次いでリンパ球を、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使用しミエローマ細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する。
【0056】
モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技法の代替として、抗体又は抗体断片を抗体ファージライブラリーから単離することもできる。特に、ファージディスプレイを使用して、本発明の方法中で使用するための抗原又はリガンド結合断片を同定することができる。抗原-抗体又はリガンド-抗体結合相互作用のハイスループットスクリーニングにファージディスプレイを使用することによって、ファージコートタンパク質上に提示された抗体断片をファージディスプレイライブラリーから単離することができる。固形担体上に標的抗原又はリガンドを固定することによって、抗原又はリガンドと結合可能な抗体を提示するファージが担体上に留まり、一方他は洗浄によって除去することができる。次いで結合状態のファージを、例えば選択又はパンニングの反復サイクル後に、溶出及び単離することができる。最終選択において溶出したファージを使用して、ファージミドを回収することができる適切な細菌宿主を感染させ、関連DNA配列を切除し、配列決定して関連抗原又はリガンド結合断片を同定することができる。
【0057】
所望の抗体を含有するポリクローナル抗血清を、当技術分野でよく知られている技法を使用して動物から単離する。時折複数回の注射後、動物にこの抗原(免疫原)を注射することによって、対象の抗原に対する抗体を作製するため、ヒツジ、ウサギ又はヤギなどの動物を例えば使用することができる。抗血清の回収後、免疫吸着精製又は当技術分野で知られている他の技法を使用して、抗体を精製することができる。
【0058】
本発明の方法中で使用する抗体又は抗原若しくはリガンド結合断片は、天然に存在するヌクレオチド配列又は合成配列から、組換えによって生成することができる。例えばこのような配列は、適切な天然に存在する鋳型(例えば、細胞から単離したDNA若しくはRNA)、ライブラリー(例えば、発現ライブラリー)から単離したヌクレオチド配列、(知られている任意の適切な技法、例えばミスマッチPCRを使用して)天然に存在するヌクレオチド配列に突然変異を導入することにより調製したヌクレオチド配列、重複プライマーを使用したPCRにより調製したヌクレオチド配列、又はDNA合成の技法を使用して調製したヌクレオチド配列からPCRによって単離することができる。(例えば、合成、ランダム又は天然に存在する免疫グロブリン配列から始める)アフィニティー成熟、CDR移植、ベニアリング、異なる免疫グロブリン配列由来の断片の組合せなどの技法、及び免疫グロブリン配列を遺伝子操作する他の技法も使用することができる。
【0059】
当技術分野でよく知られている技法に従い、本発明中で使用するための抗体又は抗原結合断片の産生において、このような対象のヌクレオチド配列をin vitro又はin vivoで使用することができる。
【0060】
モノクローナル抗体又は抗体断片の組換え産生のため、それをコードする核酸を単離し、さらなるクローニング又は発現用に複製可能ベクターに挿入する。以下のシグナル配列、複製起点、1種以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列の1種以上だけには限られないが、これらを一般に含むベクター成分。ベクターにおけるDNAのクローニング又は発現に適した宿主細胞は、大腸菌(E.coli)などの原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞、CHO細胞などの哺乳動物細胞である。グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物に由来する。宿主細胞は抗体産生用の発現又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅用に適切に改変した従来型栄養培地中で培養する。
【0061】
組換え技法を使用すると、抗体を細胞内で産生することができ、又は培地に直接分泌することができる。抗体が細胞内で産生される場合、第一ステップとして、宿主細胞又は溶解細胞いずれかの粒子状残骸を、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去する。抗体が培地に直接分泌される場合、一般に発現系由来の上清を、市販のタンパク質濃縮フィルターを使用して最初に濃縮する。細胞から調製した抗体組成物は、例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができる。
【0062】
次いで、精製した抗体を単離し、場合によっては抗原若しくはリガンド結合断片に生成し、及び/又は誘導体化することができる。
【0063】
酵素
任意のタンパク質酵素が、本発明において使用するのに適している。このような酵素は活性部位を含み、基質と結合することができる。酵素は、1本のポリペプチド鎖からなるモノマーであってよい。或いは酵素は、多数のポリペプチド鎖からなるジマー、テトラマー又はオリゴマーであってよい。ジマー、テトラマー又はオリゴマーは、それぞれホモ-又はヘテロ-ジマー、テトラマー又はオリゴマーであってよい。例えば酵素は、完全な生物活性又は酵素機能を得る前に、凝集体(例えば、ジマー、テトラマー又はオリゴマー)を形成する必要があり得る。酵素はアロステリック酵素、アポ酵素又はホロ酵素であってよい。
【0064】
酵素は別成分(例えば、リガンド、抗体、炭水化物、エフェクター分子、又はタンパク質融合パートナー)と結合する、及び/又は1種以上の補因子(例えば、補酵素又は配合群)と結合する可能性がある。
【0065】
酵素が結合する成分は、レクチン、アビジン、代謝産物、ホルモン、ヌクレオチド配列、ステロイド、糖タンパク質、糖脂質、又はこれらの成分の任意の誘導体を含むことができる。
【0066】
補因子には、無機化合物(例えば、鉄、マンガン、コバルト、銅、亜鉛、セレン、モリブデンなどの金属イオン)又は有機化合物(例えば、フラビン又はヘム)がある。適切な補酵素は、NAD又はNADP
+により保持される水酸化鉄(H
-)を保持し得るリボフラビン、チアミン、葉酸、補酵素Aにより保持されるアセチル基、葉酸により保持されるホルミル、メチニル又はメチル基、及びS-アデノシルメチオニンにより保持されるメチル基を含む。
【0067】
別の実施形態では、特に酵素が患者に投与される治療用酵素である場合、酵素はペグ化状態であってよい。したがって、1個以上のポリエチレングリコール分子を酵素分子と共有結合させることが可能である。1個〜3個のポリエチレングリコール分子を、各々の酵素分子と共有結合させることが可能である。酵素の免疫原性を低減するため、及び/又は酵素の循環半減期を増大するために、このようなペグ化が主に使用される。
【0068】
適切な酵素は、International Union of Biochemistry and Molecular Biology Enzymeの分類システムの下に分類される、オキシドレダクターゼ(EC1)、トランスフェラーゼ(EC2)、ヒドロラーゼ(EC3)、リアーゼ(EC4)、イソメラーゼ(EC5)又はリガーゼ(EC6)を含めたEC番号の任意の酵素を含む。典型的な酵素は、工業的に使用される任意の酵素である。
【0069】
任意の基質型に特異的な酵素が、本発明において使用するのに適している。適切な酵素の例には、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、セリンプロテイナーゼ、エンドペプチダーゼ(例えば、システインエンドペプチダーゼ)、カスパーゼ、キマーゼ、キモトリプシン、エンドペプチダーゼ、グランザイム、パパイン、膵臓エラスターゼ、オリジン、プラスミン、レニン、サブチリシン、トロンビン、トリプシン、トリプターゼ、ウロキナーゼ、アミラーゼ(例えばα-アミラーゼ)、キシラナーゼ、リパーゼ、トランスグルタミナーゼ、細胞壁分解酵素、グルカナーゼ(例えばβ-グルカナーゼ)、グルコアミラーゼ、凝固酵素、牛乳タンパク質加水分解酵素、細胞壁分解酵素、血液凝固酵素、ヘマチン、リソザイム、繊維分解酵素、フィターゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ポリメラーゼ、プロテアーゼ、マンナーゼ又はグルコアミラーゼがある。
【0070】
したがって、本発明により保存する酵素は、疾患若しくは他の医学的状態を治療するため使用される治療用酵素、グルコース若しくはフルクトースなどのバルク産物の製造産業において、食品加工及び食品分析において、洗濯及び自動食器洗浄器用洗剤において、織物、パルプ、紙及び動物飼料産業において、合成若しくはファインケミカルにおける触媒として、臨床診断などの診断用途において、バイオセンサー若しくは遺伝子操作において使用される酵素であってよい。
【0071】
本発明を適用することができる治療用酵素には以下のものがある:
DNAase、例えば嚢胞性線維症を有する子供の肺粘液においてDNAを切断するPulmozyme又はDornaseなどの組換えDNAaseI、
胃リパーゼ、膵臓外分泌リパーゼ機能不全と関連した脂質吸収不良の治療用の組換え哺乳動物胃リパーゼであるMeripaseなど、
マンノース末端グルコセレブロシダーゼ、ゴーシェ病、酵素グルコセレブロシダーゼの欠損により引き起こされる遺伝性障害の治療用の組換えマンノース末端グルコセレブロシダーゼであるCerezymeなど、
関連グリコーゲン貯蔵疾患、ファブリー病の治療に使用されるα-ガラクトシダーゼ、
アデノシンデアミナーゼ(ADA)、ADA障害、重症合併型免疫不全症を治療するため使用されるPegademaseなど、
フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、フェニルケトン尿症の治療のために使用されるペグ化組換えフェニルアラニンアンモニアリアーゼKuvanなど、
組織プラスミノゲンアクチベータ、血中フィブリン溶解における血液凝固を治療するため使用されるウロキナーゼ及びストレプトキナーゼ、
尿酸オキシダーゼ、遺伝子改変酵母により生成され、白血病若しくはリンパ腫がある患者における高尿酸血症の治療若しくは予防において使用される組換え尿酸オキシダーゼであるElitek(ラスブリカーゼ)など、
小児急性リンパ芽球性白血病の治療において使用されるL-アスパラギナーゼ、
血友病がある患者によって使用される第VIIa因子、
血友病Bの治療で使用される第IX因子、及び
スーパーオキシドジスムターゼ、家族性筋萎縮性側索硬化症の治療に使用されるウシスーパーオキシドジスムターゼOrgoteinなど。
【0072】
ベーキングなどの食品用途で使用するための酵素には、アミラーゼ、キシラナーゼ、オキシドレダクターゼ、リパーゼ、プロテアーゼ及びトランスグルタミナーゼがある。フルーツジュース生成及び果物処理において使用するための酵素には、細胞壁分解酵素がある。醸造において使用するための酵素には、マッシング中の細菌α-アミラーゼ、β-グルカナーゼ及びグルコアミラーゼ、発酵中の真菌α-アミラーゼ、並びに発酵後のシステインエンドペプチダーゼがある。乳製品用途で使用するための酵素には、凝固酵素、リパーゼ、リソザイム、牛乳タンパク質加水分解酵素、トランスグルタミナーゼ、及びβ-ガラクトシダーゼがある。洗浄剤組成物において使用するための酵素には、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ及びマンナーゼがある。動物飼料において使用するための酵素には、繊維分解酵素、フィターゼ、プロテアーゼ及びアミラーゼがある。パルプ及び紙処理において使用するための酵素には、セルラーゼ及びヘミセルラーゼがある。
【0073】
或いは酵素は、研究及び開発用途において使用する酵素であってよい。例えばルシフェラーゼは、細胞培養、個別細胞及び完全体生物における遺伝子発現のリアルタイムイメージングに使用することができる。さらにルシフェラーゼは、例えば分子学的試験においてレポータータンパク質として使用し、ルシフェラーゼでトランスフェクトした細胞中での特異的プロモーターからの転写の活性を試験することができる。薬剤設計において、例えば研究室内での酵素阻害剤の試験において、酵素を使用することもできる。さらに、バイオセンサー(例えば、グルコースオキシダーゼを使用した血中グルコース測定用バイオセンサー)において酵素を使用することができる。
【0074】
ルシフェラーゼ酵素は、ホタル、甲虫又はレイルロードウォーム(railroad worm)のルシフェラーゼ、又はその誘導体であってよい。特にルシフェラーゼは、北アメリカ産ホタル(フォリヌスピラリス(Phorinus pyralis)、ルシオラクルシアタ(Luciola cruciata)(日本産ホタル)、ルシオララテラリス(Luciola lateralis)(日本産ホタル)、ルシオラミンゲリカ(Luciola mingelica)(ロシア産ホタル)、ベネケアハネギ(Beneckea hanegi)(海洋細菌ルシフェラーゼ)、ピロフォルスプラギオフタラムス(Pyrophorus plagiophthalamus)(コメツキムシ)、ピロセリアミヤコ(Pyrocelia miyako)(ホタル)、ラゴフタラムスオーバイ(Ragophthalamus ohbai)(レイルロードウォーム)、ピレアリヌステルミチルミナンス(Pyrearinus termitilluminans)(コメツキムシ)、フィリキソトリキスヒルタス(Phrixothrix hirtus)(レイルロードウォーム)、フィリキソトリキスビビアーニ(Phrixothrix vivianii)、ホタリアパルブラ(Hotaria parvula)及びホツリスペンシルバニカ(Photuris pensilvanica)、並びにそれらの突然変異体由来であってよい。
【0075】
典型的には、α-ガラクトシダーゼ又はβ-ガラクトシダーゼは細菌(大腸菌など)、哺乳動物(ヒト、マウス、ラットなど)又は他の真核生物由来である。
【0076】
酵素は、天然に存在する酵素又は合成酵素であってよい。このような酵素は、宿主動物、植物又は微生物由来であってよい。
【0077】
酵素の生成において使用する微生物株は天然株、又は連続培養及び選択、若しくは組換えDNA技法を使用した突然変異誘発及び選択により天然株から誘導する突然変異株であってよい。例えば微生物は真菌、例えばサーモミセスアクレモニウム(Thermomyces acermonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、ケカビ(Mucor)、ニューロスポラ(Neurospora)及びトリコデルマ(Trichoderma)であってよい。サッカロミセスセレビシアエ(Saccharomyces cereviseae)又はピキアパストリス(Pishia pastoris)などの酵母を、本発明の方法中で使用するための酵素の生成において使用することもできる。
【0078】
合成酵素は、合理的設計、指向性進化法及びDNAシャッフリングなどの、当技術分野でよく知られているタンパク質-遺伝子操作技法を使用して誘導することができる。
【0079】
宿主生物は所望の酵素をコードするヌクレオチド配列で形質転換し、酵素の生成を助長し細胞及び/又は培養培地からの酵素の回収を容易にする条件下で培養することができる。
【0080】
ワクチン免疫原
本発明において使用するのに適したワクチン免疫原は、ワクチンの任意の免疫原成分を含む。ワクチン免疫原は、特定疾患又は医学状態に対するワクチンとして使用すると、個体中で免疫応答を誘導し得る抗原を含む。ワクチン免疫原はワクチン調製物の製剤化前に単独で提供することができ、又はそれはワクチン調製物の一部として提供することができる。ワクチン免疫原はサブユニットワクチン、ワクチン若しくはトキソイドとして有用なコンジュゲートであってよい。ワクチン免疫原は、タンパク質、細菌特異的タンパク質、ムコタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、リポタンパク質、多糖、ペプチドグリカン、核タンパク質又は融合タンパク質であってよい。
【0081】
ワクチン免疫原は、微生物(細菌、ウイルス、真菌など)、原生動物、腫瘍、悪性細胞、植物、動物、ヒト、又はアレルゲン由来であってよい。ワクチン免疫原は、ウイルス粒子でないことが好ましい。したがってワクチン免疫原は、完全ウイルス又はビリオン、ウイルス様粒子(VLP)又はウイルスヌクレオカプシドでないことが好ましい。このようなウイルス粒子の保存はWO2008/114021中に記載されている。
【0082】
ワクチン免疫原は、例えば組換えDNA技法を使用して誘導されるように合成であってよい。免疫原は、病原体関連抗原、腫瘍関連抗原、アレルギー関連抗原、神経障害関連抗原、心臓血管病、慢性関節リウマチ関連抗原などの疾患関連抗原であってよい。
【0083】
特に、ワクチン免疫原が由来する病原体は、ヒトパピローマウイルス(HPV)、HIV、HSV2/HSV1、インフルエンザウイルス(A、B及びC型)、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、RSVウイルス、リノウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルス、エンテロウイルス、アストロウイルス、麻疹ウイルス、おたふく風邪ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、ヒトT細胞リンパ腫I型ウイルス(HTLV-I)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、サルモネラ、ナイセリア、ボレリア、クラミジア、百日咳菌(Bordetella pertussis)などのボルデテラ、プラスモジウム、コキソプラズマ(Coxoplasma)、ニューモコッカス、メニンゴコッカス、クリプトコッカス、ストレプトコッカス、ビブリオコレラ、エルシニア、及び特にペスト菌(Yersinia pestis)、スタフィロコッカス、ヘモフィルス、ジフテリア、破傷風菌、百日咳菌、エシェリキア、カンジダ、アスペルギルス、体内寄生性アメーバ属(Entamoeba)、ジアルジア及びトリパノソーマを含むことができる。ワクチンをさらに使用して、口てい病(血清型O、A、C、SAT-1、SAT-2、SAT-3及びAsia-1を含む)、コロナウイルス、ブルータング、猫白血病ウイルス、鳥類インフルエンザ、ヘンドラウイルス及びニーパウイルス、ペスチウイルス、犬パルボウイルス、及び牛ウイルス下痢ウイルスなどの多数の獣医学的疾患に対する適切な免疫応答をもたらすことができる。
【0084】
腫瘍関連抗原には、例えばメラノーマ関連抗原、乳癌関連抗原、結腸直腸癌関連抗原又は前立腺癌関連抗原がある。
【0085】
アレルゲン関連抗原には、ワクチンを投与する個体中のアレルギー反応を抑制するためのワクチンにおける使用に適した任意のアレルゲン抗原(例えば、花粉、ダストマイト、昆虫、食物アレルゲン、埃、毒素、寄生虫由来の抗原)がある。
【0086】
サブユニットワクチン免疫原
適切なサブユニットワクチン免疫原は、微生物(例えばウイルス若しくは細菌)由来の、タンパク質、リポタンパク質又は糖タンパク質の任意の免疫原サブユニットを含む。或いは、サブユニットワクチン免疫原は、腫瘍関連タンパク質などの疾患関連抗原に由来してよい。サブユニットワクチン免疫原は、天然に存在する分子又は合成タンパク質サブユニットであってよい。ワクチン免疫原は、完全長ウイルス若しくは細菌タンパク質、糖タンパク質若しくはリポタンパク質、又は完全長ウイルス若しくは細菌タンパク質、糖タンパク質若しくはリポタンパク質の断片であってよい。
【0087】
サブユニットワクチン免疫原として適したウイルスタンパク質は、構造又は非構造ウイルスタンパク質に由来してよい。適切なウイルスサブユニット免疫原は、ウイルスの他部分の不在下でさえ、対象の免疫系を刺激することができる。適切なウイルスサブユニットワクチン免疫原は、カプシドタンパク質、表面糖タンパク質、エンベロープタンパク質、ヘキソンタンパク質、ファイバータンパク質、コートタンパク質、又はこのようなタンパク質若しくは糖タンパク質の免疫原断片若しくは誘導体を含む。
【0088】
例えば、ウイルスサブユニットワクチン免疫原は、インフルエンザA、B又はCウイルスの表面タンパク質からなってよい。特にワクチン免疫原は、ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質、M1、M2、NS1、NS2(NEP)、PA、PB1、PB1-F2及び/又はPB2タンパク質、又は任意のこれらのタンパク質の免疫原誘導体若しくは断片であってよい。免疫原はHA1、HA2、HA3、HA4、HA5、HA6、HA7、HA8、HA9、HA10、HA11、HA12、HA13、HA14、HA15及び/又はHA16、これらの任意の免疫原断片若しくは誘導体、及びHAタンパク質、断片若しくは誘導体の任意の組合せであってよい。ノイラミニダーゼはノイラミニダーゼ1(N1)又はノイラミニダーゼ2(N2)であってよい。
【0089】
ウイルスサブユニットワクチン免疫原は、B型肝炎ウイルスのウイルスエンベロープタンパク質、又はその断片若しくは誘導体であってよい。例えばサブユニットワクチン免疫原は、B型肝炎表面抗原(HbsAg)又はその免疫原断片若しくは誘導体であってよい。
【0090】
典型的には、細菌サブユニットワクチン免疫原は、細菌細胞壁タンパク質(例えば、フラジェリン、外膜タンパク質、外表面タンパク質)、多糖抗原(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)由来)、毒素、又はこのようなタンパク質、多糖若しくは毒素の免疫原断片若しくは誘導体である。
【0091】
天然に存在するタンパク質の誘導体は、1個以上のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失があるタンパク質を含む。部位特異的突然変異誘発などの当技術分野で知られている技法を使用して、このようなアミノ酸修飾を作製することができる。
【0092】
サブユニットワクチン免疫原は、例えば細菌若しくはウイルスタンパク質、又はその免疫原断片若しくは誘導体と結合した、融合タンパク質パートナーを含む融合タンパク質であってよい。適切な融合タンパク質パートナーは、融合タンパク質の発現後、マルチマー型へのウイルス融合タンパク質の構築を妨げることができる。例えば融合タンパク質パートナーは、ウイルスタンパク質が融合タンパク質パートナーの不在下で組換えにより発現される場合自然に形成され得る、ウイルス様構造の形成を妨げることができる。適切な融合パートナーは、融合タンパク質の精製を容易にすること、又は融合タンパク質産物の組換え発現を増加することもできる。融合タンパク質は、マルトース結合タンパク質、金属イオンと結合することができるポリ-ヒスチジンセグメント、抗体が結合する抗原、S-タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、チオレドキシン、β-ガラクトシダーゼ、エピトープタグ、緑色蛍光タンパク質、ストレプトアビジン又はジヒドロ葉酸レダクターゼであってよい。
【0093】
サブユニットワクチン免疫原は、例えば単離ペプチド、タンパク質、リポタンパク質、又は糖タンパク質を調製するための、当技術分野で知られている技法を使用して調製することができる。例えば、対象の組換えタンパク質をコードする遺伝子を病原体から同定及び単離し、大腸菌又はタンパク質の大量生産に適した幾つか他の宿主において発現させることが可能である。次いで対象のタンパク質を単離し、(例えば、アフィニティークロマトグラフィーを使用した精製により)宿主細胞から精製する。
【0094】
ウイルスサブユニット免疫原の場合、ウイルス粒子の単離後にウイルス粒子から、又は適切な宿主細胞での組換えDNAクローニング及びウイルスサブユニットタンパク質の発現によって、サブユニットを精製することができる。ウイルス粒子を調製するのに適した宿主細胞は、ウイルスを感染させることが可能であり、所望のウイルス抗原の生成が可能でなければならない。このような宿主細胞は、微生物、培養動物細胞、トランスジェニック植物又は昆虫の幼虫を含むことができる。対象の幾つかのタンパク質は、宿主細胞から可溶性タンパク質として分泌され得る。ウイルスエンベロープ又は表面タンパク質の場合、このようなタンパク質は、洗浄剤で可溶化しウイルスエンベロープからそれらを抽出し、相分離して洗浄剤を除去することを必要とし得る。
【0095】
サブユニットワクチン免疫原は同じ調製物中で組合せて、1、2、3種又はそれより多くの他のサブユニットワクチン免疫原と一緒に保存することができる。
【0096】
トキソイド
本発明はトキソイドに適用可能である。トキソイドは、例えば病原体、動物又は植物由来であり、免疫原性であるが(例えば、遺伝子突然変異、化学処理により、又は別成分との結合により)不活性化され標的対象に対する毒性が除去された毒素である。例えば毒素は、タンパク質、リポタンパク質、多糖、リポ多糖又は糖タンパク質であってよい。したがってトキソイドは、トキソイド化されたエンドトキシン又はエクソトキシンであってよい。
【0097】
トキソイドは、破傷風毒素、ジフテリア毒素、百日咳毒素、ボツリヌス毒素、クロストリジウムディフィシル(C.difficile)毒素、コレラ毒素、志賀毒素、炭疽菌毒素、細菌細胞溶解素又はニューモリシン、及びこれらの断片又は誘導体などの細菌毒素由来のトキソイドであってよい。したがってトキソイドは、破傷風毒素、ジフテリア毒素、又は百日咳毒素であってよい。トキソイドが由来し得る他の毒素には、動物又は植物から、例えばクロタリスアトロクス(Crotalis atrox)から単離した毒素がある。典型的には、トキソイドはボツリヌス毒素又は炭疽菌毒素に由来する。例えば、ボツリヌス毒素は血清型A、B、C、D、E、F又はGのボツリヌス菌(Clostridium botulinum)に由来し得る。ボツリヌス毒素由来のワクチン免疫原は同じ調製物中で組合せて、ボツリヌス毒素由来の1種以上の他のワクチン免疫原と一緒に保存することができる(例えば、例えばA、B及びEなどの、ボツリヌス血清型A、B、C、D、E、F又はG由来の免疫原の組合せ)。
【0098】
炭疽菌毒素は、炭疽菌(Bacillus anthracis)の株に由来し得る。トキソイドは、1種以上の炭疽菌毒素の成分、又はこのような成分の誘導体、防御抗原(PA)、浮腫因子(EF)及び致死因子(LF)などからなり得る。典型的には、炭疽菌毒素由来のトキソイドは防御抗原(PA)からなる。
【0099】
トキソイドワクチンとして使用するため、例えば融合タンパク質として、トキソイドを別成分と結合させることが可能である。コンジュゲートトキソイドにおける適切な成分は、トキソイドの精製を助長する(例えば、ヒスチジンタグ)又は標的対象に対する毒性を低減する物質を含む。或いは、それが結合する抗原の免疫原性を増大させることにより、トキソイドはアジュバントとして作用することができる。例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のB多糖はジフテリアトキソイドと組合せることができる。
【0100】
ワクチン免疫原は同じ調製物中で組合せて、1、2、3種又はそれより多くの他のワクチン免疫原と一緒に保存することができる。例えば、ジフテリアトキソイドは破傷風トキソイド及び百日咳ワクチン(DPT)と保存することができる。ジフテリアトキソイドは破傷風トキソイド(DT)のみと保存することができ、又はジフテリアトキソイドは、ジフテリアトキソイド、百日咳トキソイド及び無細胞百日咳ワクチン(DTaP)と一緒に保存することができる。
【0101】
トキソイドを調製するための技法は、当業者にはよく知られている。毒素遺伝子はクローニングし、適切な宿主細胞中で発現させることが可能である。次いで毒素産物を精製し、例えばホルマリン又はグルタルアルデヒドを使用して、トキソイドに化学的に転換することができる。或いは、例えば1個以上のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換により、毒性が低減したか又は毒性がない毒素を遺伝子がコードするように、毒素遺伝子を遺伝子操作することができる。次いで、修飾された毒素を適切な宿主細胞中で発現させ、単離することができる。毒素遺伝子又はその断片とさらなる成分(例えば、多糖若しくはポリペプチド)の結合によって、毒素遺伝子の毒性を不活性化することもできる。
【0102】
コンジュゲートワクチン免疫原
コンジュゲートワクチン免疫原は、結合する抗原の免疫原性を刺激する、担体成分(例えば、ペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、糖タンパク質、ムコタンパク質、又はこれらの任意の免疫刺激性誘導体若しくは断片)と抗原(例えば、多糖若しくは他のハプテン)のコンジュゲートであってよい。例えば、コンジュゲートワクチン免疫原は、対象の免疫原(例えば、多糖)と結合した、組換えタンパク質、組換えリポタンパク質又は組換え糖タンパク質であってよい。
【0103】
コンジュゲートワクチン免疫原は、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌(株A、B、C、X、Y及びW135)又は肺炎球菌株に対するワクチンにおいて使用することができる。例えばワクチンは、例えば七価肺炎球菌CRM197コンジュゲートワクチン(PCV7)、MCV-4又はb型インフルエンザ菌(Hib)ワクチンであってよい。
【0104】
コンジュゲートワクチン免疫原は同じ調製物中で組合せて、1、2、3種又はそれより多くの他のコンジュゲートワクチン免疫原と一緒に保存することができる。
【0105】
コンジュゲート多糖-タンパク質コンジュゲートを調製するための方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、リンカー(例えば、B-プロピオンアミド、ニトロフェニル-エチルアミン、ハロゲン化ハロアルキル、グリコシド結合)を介して結合を行うことができる。
【0106】
式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル
式(I)及び(II)の化合物は生理的に許容される塩若しくはエステルとして存在し得る。
【0107】
塩は典型的には生理的に許容される酸で形成される塩であり、したがって、塩酸若しくは硫酸などの無機酸、又はクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、マンデリン酸、フマル酸又はメタンスルホン酸などの有機酸で形成される塩を含む。塩酸塩が好ましい。
【0108】
エステルは典型的にはC
1〜6アルキルエステル、好ましくはC
1〜4アルキルエステルである。したがってエステルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル又はtert-ブチルエステルであってよい。エチルエステルが好ましい。
【0109】
本明細書で使用するC
1〜6アルキル基は、C
1〜4アルキル基であることが好ましい。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチルから選択される。メチルとエチルが特に好ましい。
【0110】
誤解を避けるため、式(I)と式(II)の化合物の定義は、カルボキシレートアニオンにプロトンが加わり-COOHをもたらし、アンモニウム又はスルホニウムカチオンが薬学的に許容されるアニオンと結合した化合物も含む。さらに、誤解を避けるため、前に定義した化合物は任意の互変体又は鏡像異性体型で使用することができる。
【0111】
式(I)の化合物
典型的には、R
1は水素又はC
1〜6アルキルを表し、R
4は水素を表す。
【0112】
典型的には、R
1は水素又はC
1〜4アルキル、好ましくは水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル又はtert-ブチル、より好ましくは水素、メチル又はエチルを表す。
【0113】
典型的には、R
2は水素又はC
1〜6アルキル、好ましくは水素又はC
1〜4アルキル、より好ましくはアルキル水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル又はtert-ブチル、より好ましくは水素、メチル又はエチルを表す。
【0114】
典型的には、R
3はC
1〜4アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル又はtert-ブチル、より好ましくはメチル又はエチルを表す。
【0115】
好ましくは、R
1は水素又はC
1〜4アルキルを表し、R
2は水素又はC
1〜4アルキルを表し、R
3はC
1〜4アルキルを表し、R
4は水素を表す。
【0116】
したがって好ましくは、式(I)の化合物は、式(IA)のグリシン誘導体又はその生理的に許容される塩若しくはエステルである。
【化3】
【0117】
好ましい実施形態では、R
1はHを表し、R
2はHを表し、R
3はC
1〜6アルキルを表す。言い換えると、この実施形態では式(I)の化合物は、N-C
1〜6アルキル-グリシン又はその生理的に許容される塩若しくはエステルである。アルキル基は、典型的にはC
1〜4アルキル基である。好ましいアルキル基は、好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチルから選択される。メチルとエチルがより好ましい。サルコシンとも呼ばれるN-メチルグリシンが特に好ましい。
【0118】
別の好ましい実施形態では、R
1はHを表し、R
2はC
1〜6アルキルを表し、R
3はC
1〜6アルキルを表す。言い換えると、この実施形態では式(I)の化合物は、N,N-ジ(C
1〜6アルキル)-グリシン又はその生理的に許容される塩若しくはエステルである。各々のアルキル基は、典型的にはC
1〜4アルキル基である。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチルから選択される。メチルとエチルがより好ましい。ジメチルグリシン(DMG)及び/又は2-(ジメチルアミノ)-酢酸とも呼ばれるN,N-ジメチルグリシンが特に好ましい。
【0119】
別の好ましい実施形態では、R
1はC
1〜6アルキルを表し、R
2はC
1〜6アルキルを表し、R
3はC
1〜6アルキルを表す。言い換えると、この実施形態では式(I)の化合物は、N,N-ジ(C
1〜6アルキル)-グリシン又はその生理的に許容される塩若しくはエステルである。各々のアルキル基は、典型的にはC
1〜4アルキル基である。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチルから選択される。メチルとエチルがより好ましい。トリメチルグリシン(TMG)とも呼ばれるN,N,N-トリメチルグリシンが特に好ましい。
【0120】
或いは式(I)の化合物は、式(IB)のプロリン誘導体又はその生理的に許容される塩若しくはエステルであることが好ましい。
【化4】
【0121】
式(IB)の化合物は、S-プロリン誘導体であることが好ましい。R
2とR
3の両方がメチルを表すことが好ましく、この化合物はプロリンベタインとして知られている。S-プロリンベタイン又はその生理的に許容される塩若しくはエステルが特に好ましい。
【化5】
【0122】
式(IA)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルが特に好ましい。
【0123】
式(I)のさらなる他の好ましい化合物はコカピドプロピルベタイン(CAPB)である。
【0124】
式(II)の化合物
典型的にはR
aとR
bが独立にC
1〜4アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル又はtert-ブチル、より好ましくはメチル若しくはエチルを表す。
【0125】
典型的にはカルボキシレートとR
cのアミン置換基が、R
cアルキル成分の同じ炭素原子に結合する。典型的にはR
cはC
2〜4又はC
2〜3アルキル成分である。
【0126】
典型的にはXは-S(O)
2-を表す。即ち式(II)の化合物は、式(IIA)のスルホン化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルであることが好ましい。
【化6】
【0127】
好ましいスルホン化合物は、ジメチルスルホン(DMSO
2)としても知られるメチルスルホニルメタン(MSM)である。
【0128】
或いは、典型的にはXは-S
+(R
c)-を表す。或いは、即ち式(II)の化合物は、式(IIB)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルであることが好ましい。
【化7】
【0129】
式(IIB)の好ましい化合物は、S-メチル-L-メチオニン(SMM)又はその生理的に許容される塩若しくはエステルである。
【0130】
糖
本発明中で使用するのに適した糖には、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース及びマルトースなどの還元糖、及び好ましくはスクロースとラフィノース、より好ましくはスクロースなどの非還元糖がある。糖は単糖、二糖、三糖、又は他のオリゴ糖であってよい。用語「糖」は糖アルコールを含む。したがって一実施形態では、非還元糖又は糖アルコールの使用が好ましい。
【0131】
ガラクトース及びマンノースなどの単糖、スクロース、ラクトース及びマルトースなどの二糖、ラフィノースなどの三糖、並びにスタチオーゼ(stachyose)などの四糖が想定される。トレハロース、ウンベリフェロース、ベルバスコース、イソマルトース、セロビオース、マルツロース、ツラノース、メレジトース及びメリビオースも、本発明中で使用するのに適している。適切な糖アルコールはマンニトールである。マンニトールを使用すると、フリーズドライで外見が改善されたケークを得ることができる。
【0132】
糖の存在が作用して、安定性が改善する可能性がある。糖の付加は、凍結乾燥ケークの改変及び迅速な再構成のための溶解性の改善などの、他の利点をもたらす可能性もある。一般にフリーズドライを使用するとき、1種以上の糖が存在する。1種の糖を使用するとき、その糖は好ましくはスクロース又はマンニトール、より好ましくはマンニトールである。
【0133】
保存混合物中に2種以上の糖を使用するとき、ウイルス活性の保存は特に有効である。2、3又は4種の糖を使用することができる。水溶液は、スクロースとラフィノースの溶液であることが好ましい。したがって2種以上の糖を使用するとき、糖は好ましくはスクロース、より好ましくはスクロースとラフィノースを含む。スクロースは、グルコースとフルクトースの二糖である。ラフィノースは、ガラクトース、フルクトース及びグルコースで構成される三糖である。
【0134】
保存手順
本発明中で、ポリペプチド、1種以上の糖、及び式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルを含む水溶液を乾燥する。任意の適切な水溶液を使用することができる。溶液は緩衝処理することができる。溶液はHEPES、リン酸緩衝、トリス緩衝又は純水溶液であってよい。溶液は、1種以上の共溶媒を場合によっては含むことができる。共溶媒の一例はt-ブチルアルコールである。
【0135】
溶液は2〜約12のpHを有することができ、緩衝処理することができる。溶液はHEPESバッファー、リン酸緩衝、トリス緩衝、クエン酸ナトリウムバッファー、ビシンバッファー(即ち、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシンバッファー)又はMOPSバッファー(即ち、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸バッファー)で緩衝処理することができる。溶液はNaClを含有する、又は含有しない可能性がある。したがって溶液は、生理食塩水クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝溶液であってよい。
【0136】
乾燥する水溶液は、(a)アルミニウム塩アジュバント、及び/又は(b)ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)などの非イオン性界面活性剤、及び/又は(c)エチレン-ジアミン、カダベリン、プトレシン、スペルミジン若しくはスペルミンを含まないことが好ましい。
【0137】
一般に、ポリペプチドの調製物を保存混合物、即ち式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び1種又は2種以上の糖の水溶液と混合する。保存混合物はそれ自体を緩衝処理することができる。それはHEPES、リン酸緩衝、トリス緩衝又は純水溶液であってよい。
【0138】
したがって、典型的には本発明中では、単独の賦形剤として(i)ポリペプチド及び(ii)1種以上の糖、及び式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルを含む緩衝水溶液を乾燥させる。
【0139】
典型的には本発明中では、単独の溶質として(i)ポリペプチド及び(ii)1種以上の糖、及び式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルを含む緩衝水溶液を乾燥させる。
【0140】
或いは水溶液は、ポリペプチド、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び1種以上の糖から典型的になる、又はこれらから本質的になる可能性がある。
【0141】
2種以上の糖が乾燥用の水溶液中に存在する場合の糖濃度、又は全体糖濃度は、典型的には飽和状態まで、少なくとも0.01Mである。一般に、2種以上の糖が存在する場合の糖濃度、又は全体糖濃度は、飽和状態、例えば室温での飽和状態まで、少なくとも0.05M、少なくとも0.1M、少なくとも0.2M若しくは少なくとも0.5M、又は最大3M、2.5M、2M、1.5M若しくは1Mである。したがって、2種以上の糖が存在する場合の糖濃度、又は全体糖濃度は、例えば0.1M〜3M若しくは0.2M〜2M若しくは0.3M〜1Mの範囲であり得る。
【0142】
2種以上の糖が存在するとき、それらの糖の1種はスクロースであることが好ましい。スクロースは、飽和状態、例えば室温での飽和状態まで、0.05M、0.1M、0.25M若しくは0.5Mから、又は3M、2.5M若しくは2Mまでの濃度で存在し得る。0.1M〜1M、例えば0.1〜0.3M若しくは0.3〜0.7M若しくは0.7M若しくは1Mのスクロース濃度が特に好ましい。
【0143】
スクロースのモル濃度と他の糖(複数可)のモル濃度の比は、典型的には1:1〜20:1、例えば5:1〜15:1などである。2種の糖の存在する、特にスクロースとラフィノースが存在する場合、スクロースのモル濃度の比は、典型的には1:1〜20:1、例えば5:1〜15:1など、好ましくは約10:1である。
【0144】
1種の糖が存在するとき、糖はマンニトールであることが好ましい。マンニトールは、飽和状態、例えば室温での飽和状態まで、0.05M、0.1M、0.25M若しくは0.5Mから、又は3M、2.5M、2M、1.5M若しくは1Mまでの濃度で存在し得る。マンニトール濃度は、好ましくは0.1M〜1M、より好ましくは0.3M〜0.7M、例えば0.4M〜0.6Mである。
【0145】
典型的には、存在する場合、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルの濃度は、0.001M〜2.5M、好ましくは0.01M〜2M、より好ましくは0.01〜1.5Mである。例えば濃度範囲は、0.1M〜1M、好ましくは0.3M〜0.7Mであってよい。
【0146】
典型的には、存在する場合、式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルの濃度は、0.001M〜2.5M、好ましくは0.01M〜2M、より好ましくは0.01〜1.5Mである。例えば濃度範囲は、0.1M〜1M、好ましくは0.3M〜0.7Mであってよい。
【0147】
式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルと、式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルが存在するとき、それらの化合物は相乗効果をもたらす量で存在し得る。典型的には、(a)式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルの濃度は、0.001M〜2.5M、好ましくは0.01M〜2M、より好ましくは0.01〜1.5Mであり、(b)式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルの濃度は、0.001M〜2.5M、好ましくは0.01M〜2M、より好ましくは0.01〜1.5Mである。例えば、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルの濃度は、0.1M〜1M、好ましくは0.3M〜0.7Mであってよく、式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルの濃度は、0.1M〜1M、好ましくは0.3M〜0.7Mであってよい。
【0148】
式(I)の化合物の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルが溶液中に存在するとき、場合によっては1種以上の、好ましくは1種の、さらなる式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルが存在し得る。式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル各々の濃度は、前述の通りであることが好ましい。典型的には、2種のこのような化合物が存在するとき、化合物はDMG又はその生理的に許容される塩若しくはエステルと、TMG又はその生理的に許容される塩若しくはエステルである。
【0149】
式(II)の化合物の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルが溶液中に存在するとき、場合によっては1種以上の、好ましくは1種の、さらなる式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルが存在し得る。式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル各々の濃度は、前述の通りであることが好ましい。
【0150】
好ましくは、マンニトールである1種の糖が存在するとき、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、例えばDMGを使用する。
【0151】
好ましくは、スクロースとラフィノースである2種の糖が存在するとき、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル(DMGなど)と式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル(MSMなど)を使用する。
【0152】
本発明中で使用するのに特に好ましい水溶液は、ポリペプチド以外に、以下の成分を含む。
【0153】
・ 0.3〜0.7Mの糖アルコール、好ましくはマンニトール、例えば0.4〜0.6M又は約0.5M、及び0.1M〜1.5Mの式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩、好ましくはDMG又はTMG、例えば0.3M〜1M又は約0.7M又は約0.8M、
・ 0.01〜0.5Mのスクロース、例えば0.05〜0.15M又は約0.1M; 0.001〜0.05Mのラフィノース、例えば0.005〜0.015M又は約0.01M; 0.05M〜1.5Mの式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩、好ましくはDMG、例えば0.1M〜1.2M、又は約1M;及び0.05M〜1.5Mの式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩、好ましくはMSM、例えば0.1M〜1.2M、又は約0.1M、約0.3M、約0.7M又は約1M、
・ 0.1〜1.0Mのスクロース、例えば約0.15M又は約0.45M、0.1〜0.5Mのラフィノース、例えば約0.2M又は約0.25M、及び0.05M〜1.5Mの式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩、好ましくはDMG、例えば0.1M〜1.3M、又は約0.6M又は約1.3M、
・ 1.0〜1.8Mのスクロース、例えば1.1〜1.6M又は約1.1M又は1.2M又は1.4M、0.01〜0.5Mのラフィノース、例えば0.05〜0.3M又は約0.15M、及び0.1〜0.5Mの式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩、好ましくはTMG、例えば0.2〜0.4M又は約0.1M、又は
・ 0.3〜0.7Mの糖アルコール、好ましくはマンニトール、例えば0.4〜0.6M又は約0.5M、0.1M〜1.5Mの式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩、好ましくはDMG、例えば0.3M〜1M又は約0.6M、及び0.1M〜1.5Mの第二の式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩、好ましくはTMG、例えば0.3M〜1M又は約0.5M。
【0154】
利用する式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルの個々の濃度は、保存するポリペプチド粒子の型、使用する個々の化合物、1種又は2種以上の糖が存在するかどうか、及び糖(複数可)の同一性、並びに乾燥手順及び条件を含めた幾つかの要因に依存する。同様に、糖の選択及び濃度も、保存するポリペプチド粒子、選択する賦形剤、並びに乾燥手順及び条件に依存する。したがって、具体的な式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、これらの化合物の濃度、並びに糖(複数可)及びそれらの濃度を通常の実験により選択して、最高の安定性を得ることができる。
【0155】
典型的には、フリーズドライ、真空乾燥、流動床乾燥又は噴霧乾燥によって乾燥を実施する。フリーズドライが好ましい。物質中の水を減少させバイアル中に物質を密封することにより、物質を容易に貯蔵、出荷し、後にその原型に戻すことができる。乾燥条件は、通常の実験により適切に最適化することができる。
【0156】
乾燥によって、ポリペプチドを取り込んだ組成物が形成される。ポリペプチドを取り込んだマトリックスが生成する。組成物は典型的には非晶質固体である。固体マトリックス、一般に非晶質固体マトリックスが、したがって一般に形成される。「非晶質」によって無構造状態、及び観察可能な分子の通常若しくは反復編成がないこと(即ち、非結晶)を意味する。
【0157】
1種以上の糖は、乾燥組成物において非晶質マトリックスをもたらす。式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルは、糖マトリックスにおいて分散する。したがって、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルは、糖マトリックス内に取り込まれる。ポリペプチドも、糖マトリックス内に取り込まれる。したがって、例えばフリーズドライにより乾燥手順を実施して、ポリペプチドが取り込まれた非晶質ケークを形成することができる。
【0158】
糖を含む水溶液を乾燥させると、糖は非晶質構造をとらずに、乾燥ステップ中に結晶化する可能性がある。例えばマンニトールは、3個の無水物結晶形(α-、β-、及びδ-マンニトール)、半水和物及び非晶質マンニトール形を形成し得る。マンニトールはフリーズドライ中に不安定なメタ-ガラスを形成することが多く、これは結晶形に逆戻りする。したがって例えば、本発明の賦形剤の不在下でマンニトールの水溶液を乾燥させるとき、マンニトールは一般に、安定した非晶質構造ではなく結晶又はメタ-安定ガラスとなる。アニーリングステップの使用により、結晶マンニトールの形成を助長することができる。乾燥用溶液中の、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルの存在は、糖が非晶質構造をとるように、結晶糖構造の形成を妨げることができる。例えば、マンニトールとDMGを含む本発明の溶液を乾燥させるとき、DMGはマンニトールが結晶化するのを典型的に妨げる。
【0159】
乾燥ステップは一般に、水溶液を調製した後可能な限り早く、又は少し後に実施される。或いは、水溶液は典型的には乾燥ステップの前に貯蔵する。水溶液中のポリペプチドは、貯蔵中、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び場合によっては1種以上の糖により保存される。
【0160】
水溶液、又はバルク中間溶液は一般に、最大5年間、例えば最大4年間、3年間、2年間又は1年間貯蔵する。溶液は、最大6カ月、より好ましくは最大3カ月若しくは最大2カ月、例えば1日〜1カ月若しくは1日〜1週間貯蔵することが好ましい。乾燥前に、溶液は典型的には冷蔵庫又はフリーザー中に貯蔵する。冷蔵庫の温度は典型的には2〜8℃、好ましくは4〜6℃、又は例えば約4℃である。フリーザーの温度は典型的には-10〜-80℃、好ましくは-10〜-30℃、例えば約-20℃である。
【0161】
溶液は典型的には、密封容器、好ましくは密封不活性プラスチック容器、バッグ又はボトルなどに貯蔵する。容器は典型的には滅菌状態である。バルク中間溶液の体積は、典型的には0.1〜100リットル、好ましくは0.5〜100リットル、例えば0.5〜50リットル、1〜20リットル又は5〜10リットルである。容器は典型的には、0.1〜100リットル、好ましくは0.5〜100リットル、例えば0.5〜50リットル、1〜20リットル又は5〜10リットルの体積を有する。
【0162】
貯蔵したバルク中間溶液をフリーズドライする場合、典型的には乾燥ステップ前に、それをフリーズドライ用トレイに注ぐ。
【0163】
溶液の安定した貯蔵によって、製造プロセスの柔軟性が増す。したがって、溶液を容易に貯蔵、出荷、及び後に乾燥することができる。
【0164】
フリーズドライ
フリーズドライは、腐敗しやすい物質を保存するため、又は物質を輸送により好都合にするために、典型的に使用される脱水プロセスである。フリーズドライは、固体タンパク質及びワクチン製剤を製造するのに重要なステップとなる。しかしながら、生体物質は、手順中凍結ストレスと乾燥ストレスの両方に曝され、これによってタンパク質がアンフォールディング又は変性状態になり得る。さらに、凍結生体物質からの水蒸気放散速度は非常に遅く、したがってこのプロセスは時間を消費するものである。本発明の保存技法は、フリーズドライ手順の脱水及び/又は熱ストレスに対して生体物質を保護することができる。
【0165】
この技法に対する三つの主な段階、即ち凍結、一次乾燥及び二次乾燥が存在する。凍結は典型的には、フリーズドライマシンを使用して実施する。このステップでは、単結晶産物の場合その共融点(Teu)、又は非晶質産物の場合ガラス転移温度(Tg')未満、即ち、物質の固体相と液体相が同時に存在し得る最低温度未満に、生体物質を冷却することが重要である。これにより、後の一次乾燥段階で、溶解ではなく昇華が起こることが確実になる。
【0166】
一次乾燥中、水の昇華を可能にするほど十分な熱を供給しながら、適切なレベルの真空圧の施用により圧力を制御する。物質中の少なくとも50%、典型的には60〜70%の水がこの段階で昇華する。過剰な熱は生体物質の構造を劣化又は改変し得るので、一次乾燥は遅くてよい。冷却コンデンサーチャンバー及び/又はコンデンサープレートは、その上で水蒸気が再凝固によって捕捉される表面をもたらす。
【0167】
第二乾燥プロセスでは、熱をさらに施すことにより水和作用の水を除去する。典型的には、圧力をさらに低下させ、さらなる乾燥を助長する。フリーズドライプロセスの終了後、密封前に窒素などの不活性ガスで真空を中断することができ、又は真空下で物質を密封することができる。
【0168】
真空乾燥
特定の実施形態では、約1300Paでの真空脱水を使用して乾燥を実施する。しかしながら、真空脱水は本発明には必要ではなく、他の実施形態では、ポリペプチドと接触させた保存混合物をスピン処理(即ち、回転脱水)し、又は(以下でさらに記載するように)フリーズドライする。有利なことに、本発明の方法は、ポリペプチドを含有する保存混合物を真空に曝すステップをさらに含む。20,000Pa以下、好ましくは10,000Pa以下の圧力で真空を施すことが好都合である。少なくとも10時間、好ましくは16時間以上の間、真空を施すことが有利である。当業者に知られているように、真空施用の時間はサンプルのサイズ、使用する機器及び他のパラメータに依存する。
【0169】
噴霧乾燥又は噴霧フリーズドライ
別の実施形態では、本発明の保存混合物と混合したポリペプチドを噴霧乾燥又は噴霧フリーズドライすることによって、乾燥を実施する。これらの技法は当業者にはよく知られており、ガス、例えば空気、無酸素ガス若しくは窒素、又は噴霧フリーズドライの場合、液体窒素を介して供給液体を乾燥する方法を含む。供給液体は、液滴のスプレーまで霧状にする。次いで液滴は、乾燥チャンバー内でのガスとの接触により、又は液体窒素を用いて乾燥させる。
【0170】
流動床乾燥
さらなる実施形態では、本発明の保存混合物と混合したポリペプチドを流動床乾燥することによって、乾燥を実施する。この技法は当業者にはよく知られており、制御速度条件下で生成層にガス(例えば空気)を通して流動状態を作製することを、典型的には含む。この技法は、粒子状製品材料の乾燥、冷却、凝集、顆粒化及びコーティングの段階を含むことができる。流動ガスにより、及び/又は流動層に浸した他の加熱表面(例えば、パネル若しくはチューブ)により、熱を供給することができる。冷却ガス及び/又は流動層に浸した冷却表面を使用して、冷却を実施することができる。凝集及び顆粒化のステップは当業者にはよく知られており、得られる製品の性質に応じて様々な方法で実施することができる。粉末、顆粒若しくは錠剤などの粒子状製品のコーティングは、制御条件下で流動粒子に液体を噴霧することにより実施することができる。
【0171】
乾燥組成物
低い残留水分率を有する組成物を得ることができる。冷蔵温度を超える温度、例えば4℃〜56℃以上の範囲内、又は冷蔵温度より低い温度、例えば0〜-70℃以下の範囲で長期保存をもたらす、一定レベルの残留水分率が得られる。したがって乾燥組成物は、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下又は1重量%以下の残留水分率を有し得る。残留水分率は、0.5%以上、1%以上であることが好ましい。典型的には乾燥組成物は、0.5〜10重量%、及び好ましくは1〜5重量%の残留水分率を有する。
【0172】
組成物は乾燥粉末型で得ることができる。例えばフリーズドライから生じたケークは、粉末型に粉砕することができる。したがって、本発明による固体組成物は遊離流動粒子の型をとることができる。典型的には固体組成物は、密封バイアル、アンプル又はシリンジ中に粉末として提供する。吸入用の場合、粉末は乾燥粉末吸入器に提供することができる。或いは、固体マトリックスをパッチとして提供することができる。粉末は錠剤型に圧縮することができる。
【0173】
組成物は、ポリペプチド、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び場合によっては1種以上の糖から典型的になる、又はこれらから本質的になる可能性がある。
【0174】
固形担体上での乾燥
しかしながら、本発明の方法のさらなる実施形態では、ポリペプチドを含む混合物を固形担体上で乾燥させる。固形担体は、ビーズ、試験管、マトリックス、プラスチック担体、マイクロタイター皿、マイクロチップ(例えば、シリコン、シリコン-ガラス又はゴールドチップ)又は膜を含むことができる。別の実施形態では、本発明の方法により保存したポリペプチド粒子をその上で乾燥又は結合させる、固形担体を提供する。
【0175】
賦形剤
本発明では、ポリペプチドの保存用の賦形剤も提供する。賦形剤は、(a)場合によっては、スクロース、ラフィノース、スタチオース、トレハロースなどの1種以上の糖、又は糖アルコール若しくはこれらの任意の組合せ、及び(b)式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステルを含む。1種以上の糖が存在することが好ましい。賦形剤はこれらの成分からなる、又は本質的になることが好ましい。
【0176】
「賦形剤」によって、本発明のポリペプチド用の担体として使用する不活性物質を意味する。典型的には、ポリペプチドは賦形剤と溶解又は混合し、賦形剤はポリペプチドの保存剤として作用し、及び/又は幾つかの状況では身体への投与及び吸収を手助けする。本発明の保存混合物と同様に、賦形剤も当技術分野でよく知られている抗酸化剤、潤滑剤及び結合剤などの他の保存剤を、これらの成分が本発明の保存混合物の有効性を著しく低下させない限り含むことができる。
【0177】
低い残留水分率を有する組成物を得ることができる。冷蔵温度を超える温度、例えば4℃〜56℃以上の範囲内、又は冷蔵温度より低い温度、例えば0〜-70℃以下の範囲で長期保存をもたらす、一定レベルの残留水分率が得られる。したがって乾燥組成物は、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下又は1重量%以下の残留水分率を有し得る。残留水分率は、0.5%以上、1%以上であることが好ましい。典型的には乾燥組成物は、0.5〜10重量%、及び好ましくは1〜5重量%の残留水分率を有する。
【0178】
組成物は乾燥粉末型で得ることができる。例えばフリーズドライから生じたケークは、粉末型に粉砕することができる。したがって、本発明による固体組成物は遊離流動粒子の型をとることができる。典型的には固体組成物は、密封バイアル、アンプル又はシリンジ中に粉末として提供する。吸入用の場合、粉末は乾燥粉末吸入器に提供することができる。或いは、固体マトリックスをパッチとして提供することができる。粉末は錠剤型に圧縮することができる。
【0179】
組成物は、ポリペプチド、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び場合によっては1種以上の糖から典型的になる、又はこれらから本質的になる可能性がある。
【0180】
組成物
本発明の組成物は典型的には固体である。組成物は典型的には乾燥、好ましくはフリーズドライさせる。
【0181】
このようにして、低い残留水分率を有する組成物を得ることができる。冷蔵温度を超える温度、例えば4℃〜56℃以上の範囲内、又は冷蔵温度より低い温度、例えば0〜-70℃以下の範囲で長期保存をもたらす、一定レベルの残留水分率が得られる。したがって乾燥組成物は、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下又は1重量%以下の残留水分率を有し得る。残留水分率は、0.5%以上、1%以上であることが好ましい。
【0182】
典型的には、組成物は乾燥粉末型で得る。組成物は、例えばフリーズドライから生じるケークの型であることが好ましい。乾燥粉末が形成する、及び/又はケークは典型的には粉末型に粉砕される。したがって本発明による組成物は、遊離流動粒子の型をとることが好ましい。典型的には、組成物は実質的に非晶質、又は非晶質である。
【0183】
典型的には、示差走査熱量測定(DSC)により組成物を分析すると、結晶溶解による吸熱は観察されない。したがってDSCにより組成物を分析すると、組成物には如何なる結晶溶解による吸熱もないことが好ましく、典型的には溶解による吸熱には、50〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度範囲で、1J/g以上の溶解吸熱エンタルピーがある。DSC分析は以下の実施例8中に記載するように実施する。結晶溶解による吸熱がない具体的な温度は、組成物中に存在する成分に依存する。例えば、組成物がマンニトールを含むとき、マンニトールの吸熱溶解は典型的には166℃で観察されるはずなので、150〜180℃の範囲では結晶溶解による吸熱がないことが好ましい。
【0184】
典型的には、示差走査熱量測定(DSC)により組成物を分析すると、再結晶化による発熱は観察されない。したがってDSCにより組成物を分析すると、組成物には如何なる再結晶化による発熱もないことが好ましく、典型的には再結晶化による発熱には、50〜150℃の温度範囲で、1J/g以上の溶解吸熱エンタルピーがある。DSC分析は以下の実施例8中に記載するように実施する。再結晶化による発熱がない具体的な温度は、組成物中に存在する成分に依存する。例えば、組成物がマンニトールを含むとき、50〜120℃の範囲では再結晶化による発熱がないことが好ましい。
【0185】
本発明の組成物は固体、フリーズドライケークであることが好ましく、それは遊離流動粒子の型をとることがより好ましい。
【0186】
例えば、本発明の組成物は以下の組成物であってよい。
【0187】
・ 式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び1種以上の糖を含み、好ましくは糖により形成されたマトリックス内にポリペプチドを取り込み、示差走査熱量測定(DSC)により分析すると、結晶溶解による吸熱が観察されず、好ましくは再結晶化による発熱が観察されない固体組成物、
・ 式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び1種以上の糖を含み、好ましくは糖により形成されたマトリックス内にポリペプチドを取り込み、示差走査熱量測定(DSC)により分析すると、結晶溶解による吸熱が観察されず、好ましくは再結晶化による発熱が観察されないフリーズドライ組成物、
・ 式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び1種以上の糖を含み、好ましくは糖により形成されたマトリックス内にポリペプチドを取り込み、示差走査熱量測定(DSC)により分析すると、結晶溶解による吸熱が観察されず、好ましくは再結晶化による発熱が観察されない固体フリーズドライケーク。
【0188】
典型的には固体組成物は、密封バイアル、アンプル又はシリンジ中に粉末として提供する。吸入用の場合、粉末は乾燥粉末吸入器に提供することができる。或いは、固体マトリックスをパッチとして提供することができる。粉末は錠剤型に圧縮することができる。
【0189】
組成物は、ポリペプチド、式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び1種以上の糖から典型的になる、又はこれらから本質的になる可能性がある。
【0190】
ポリペプチド保存の測定
ホルモン、増殖因子、ペプチド又はサイトカインなどのポリペプチドに関する保存は、脱水、凍結、0℃未満、-5℃未満、-10℃未満、-15℃未満、-20℃未満、-25℃未満の温度、フリーズドライ、室温、-10℃超、-5℃超、0℃超、5℃超、10℃超、15℃超、20℃超、25℃超又は30℃超の温度の条件に曝された下での、物理的若しくは化学的分解、凝集及び/又は生物活性の消失に対するポリペプチドの耐性、細胞成長、細胞増殖若しくは細胞分化を刺激する能力、細胞シグナル伝達経路を刺激する、ホルモン受容体と結合する、又は抗体結合に関するエピトープを保存する能力などを指す。ポリペプチドの保存は、幾つかの異なる方法で測定することができる。例えば、ポリペプチドの物理的安定性は、例えば濁度若しくは色及び/又は清澄性の目視により決定する、UV光散乱又はサイズ排除クロマトグラフィーにより測定する、凝集、沈殿及び/又は変性を検出する手段を使用して測定することができる。
【0191】
ポリペプチドの生物活性の保存の評価は、評価する生物活性の型に依存する。例えば、細胞増殖を刺激する増殖因子の能力は、当技術分野でよく知られている幾つかの異なる技法を使用して評価することができる(S期中の細胞をモニタリングする細胞培養アッセイ、又は細胞増殖中の変化指標としての塩基アナログ(例えば、ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込みなど)。細胞増殖、又は細胞分化の様々な態様は、免疫蛍光法、免疫沈降法、免疫組織化学法などの技法を使用してモニタリングすることができる。
【0192】
エピトープの保存及び抗体-ポリペプチド複合体の形成の評価は、イムノアッセイ、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定することができる。
【0193】
本発明の保存ポリペプチドの使用
非晶質型の保存ポリペプチドによって長期の間ポリペプチドを貯蔵することができ、ポリペプチドの貯蔵寿命が最大になる。ポリペプチドの効能及び有効性は保たれる。本発明により保存したポリペプチドを施す個々の使用は、ポリペプチドの性質に依存する。しかしながら典型的には、ポリペプチドを使用する前に、ポリペプチドを取り込んだ乾燥非晶質固体マトリックスから、ポリペプチドの水溶液を元に戻す。
【0194】
ホルモン、増殖因子、ペプチド又はサイトカインなどの治療用ポリペプチドの場合、ポリペプチドの水溶液は、例えば保存ポリペプチドを含む乾燥粉末に注射用滅菌水又はリン酸緩衝生理食塩水を加えることにより、元の状態に戻すことができる。次いでポリペプチドの溶液は、標準的な技法に従い患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、肺経路を含めた任意の適切な形式による投与であってよく、又はさらに、カテーテルを用いた直接注入により適切に投与することができる。投与の用量及び頻度は、患者の年齢、性別及び状態、他の薬剤の同時投与、店頭での指示、及び臨床医により考慮される他のパラメータに依存する。
【0195】
一般に、本発明により保存される治療用ポリペプチドは、薬理的に適切な担体と一緒に精製型で利用する。典型的にはこれらの担体は、任意の生理食塩水及び/又は緩衝培地を含めた、水溶液又はアルコール/水溶液、エマルジョン又は縣濁液を含む。非経口賦形薬には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、及び乳酸加リンゲル液がある。縣濁液中にポリペプチド複合体を維持するのに必要な場合の、適切な生理的に許容されるアジュバントは、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、ゼラチン及びアルギン酸塩などの増粘剤から選択することができる。静脈内賦形薬には、リンゲルデキストロースをベースとする補充剤などの、流体及び栄養補充剤並びに電解質補充剤がある。防腐剤及び他の添加剤、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスなども存在してよい。
【0196】
本発明により保存される他のポリペプチドは、前述のように診断剤として使用することができる。
【0197】
抗体又は抗原結合断片の保存の測定
抗体又は抗原結合断片に関する保存は、脱水、凍結、0℃未満、-5℃未満、-10℃未満、-15℃未満、-20℃未満、-25℃未満の温度、フリーズドライ、室温、-10℃超、-5℃超、0℃超、5℃超、10℃超、15℃超、20℃超、25℃超又は30℃超の温度の条件に曝された下での、物理的若しくは化学的分解、及び/又はタンパク質凝集若しくは分解などの生物活性の消失、抗原結合能力の消失、標的を中和する、免疫応答を刺激する、エフェクター細胞を刺激する若しくは補体経路を活性化する能力の消失に対する抗体又は抗原結合断片の耐性を指す。
【0198】
抗体又は抗原結合断片の保存は、幾つかの異なる方法で測定することができる。
【0199】
抗体の物理的安定性は、例えば濁度及び/又は清澄性の目視により決定する、光散乱又はサイズ排除クロマトグラフィーにより測定する、凝集、沈殿及び/又は変性を検出する手段を使用して測定することができる。
【0200】
抗体又は抗原結合断片の化学的安定性は、化学的改変型の抗体又は断片を検出及び定量化することにより評価することができる。例えば、抗体又は断片の大きさの変化は、サイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE及び/又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化法/飛行時間型質量分析法(MALDI/TOFMS)を使用して評価することができる。電荷改変を含めた他の型の化学的改変は、当技術分野で知られている技法を使用して、例えばイオン交換クロマトグラフィー又は等電点電気泳動によって評価することができる。
【0201】
抗体又は抗原結合断片の生物活性の保存は、例えば、抗原と結合する、免疫応答をもたらす、標的(例えば病原体)を中和する、エフェクター機能(例えば、オプソニン化、ファゴサイトーシス、脱顆粒、サイトカイン若しくはサイトトキシンの放出)を刺激する、又は補体経路を活性化する、抗体又は抗原結合断片の能力を測定することにより評価することもできる。このような生物機能を測定するのに適した技法は、当技術分野でよく知られている。例えば動物モデルを使用して、抗体又は抗原結合断片の生物機能を試験することができる。イムノアッセイなどの抗原結合アッセイを使用して、例えば抗原結合能力を検出することができる。
【0202】
抗体がサンプル中の抗原と結合するかどうかの決定は、二タンパク質成分の間の結合を検出するための、当技術分野で知られている任意の方法により実施することができる。分光光度変化などの、結合が起こると変化する抗体又は抗原のいずれかの特徴の測定により、結合を決定することができる。抗原と結合する保存抗体又は抗原結合断片の能力は、参照抗体(例えば、保存抗体又は抗原結合断片と同じ特異性を有し、本明細書に記載する方法に従い保存していない抗体)と比較することができる。
【0203】
一般に、抗体-抗原結合を検出するための方法は水溶液中で実施する。特定の実施形態では、抗体又は抗原は固形担体上に固定する。典型的には、このような担体は、マイクロタイタープレートのウエルの表面などの、その中で方法を実施する容器の表面である。他の実施形態では、担体はシート(例えば、ニトロセルロース若しくはナイロンシート)又はビーズ(例えば、セファロース若しくはラテックス)であってよい。
【0204】
好ましい実施形態では、保存抗体サンプルを(前に論じた担体などの)固形担体上に固定する。担体と抗原を接触させると、抗体が結合して抗原と複合体形成し得る。場合によっては、次いで、固形担体の表面を洗浄して、抗体と結合しなかった任意の抗原を除去する。次いで、(抗体との結合を介して)固形担体と結合した抗原の存在を決定することができ、抗体が抗原と結合したことを示す。例えばこれは、(それと結合した抗原を有し得るか又は有し得ない)固形担体と特異的に抗原と結合する作用物質を接触させることにより行うことができる。
【0205】
典型的には、作用物質は特異的に抗原と結合することができる二次抗体であり、一方抗原は、抗原とさらに結合する一次固定サンプル抗体と結合する。二次抗体は、検出可能な標識により直接的又は間接的のいずれかで標識することができる。二次抗体のFc領域に特異的であり検出可能な標識を有する三次抗体との接触により、二次抗体を間接的に標識することができる。
【0206】
検出可能な標識の例には、(例えば、ホースラディッシュの)ペルオキシダーゼ、ホスファターゼなどの酵素、放射性元素、金(又は他のコロイド金属)又は蛍光標識がある。酵素標識は、化学発光又はクロモゲンベースの系を使用して検出することができる。
【0207】
別の実施形態では、作用物質を固形担体上に固定し、次いで保存抗体を固定抗原と接触させる。抗原-抗体複合体は、抗原又は固定抗体と結合可能な二次抗体を使用して測定することができる。
【0208】
(非結合抗体若しくは抗原を除去するためのステップを必要とする)ヘテロジェナスイムノアッセイ又は(このステップを必要としない)ホモジェナスイムノアッセイを使用して、抗原と結合する保存抗体又は抗原結合断片の能力を測定することができる。ホモジェナスアッセイでは、ヘテロジェナスアッセイとは対照的に、抗原と候補抗体の結合相互作用は、追加的流体操作を必要とせずに、アッセイの全成分を加えた後に分析することができる。例には蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)及びアルファスクリーンがある。競合的又は非競合的ヘテロジェナスイムノアッセイを使用することができる。例えば競合的イムノアッセイでは、試験サンプル中の非標識保存抗体は、抗原結合能力が知られている標識抗体(対照サンプル、例えば脱水、熱処理、フリーズドライ及び/又は貯蔵前にサンプリングした抗体)と競合する、その能力によって測定することができる。両抗体が競合して、限られた量の抗原と結合する。抗原と結合する非標識抗体の能力は、測定する標識の量と反比例関係にある。サンプル中の抗体が、参照抗体と抗原の間の結合を阻害することができる場合、したがってこれは、このような抗体が抗原と結合可能であることを示す。
【0209】
本発明の保存抗体の抗原結合能力を測定するのに適した個々のアッセイには、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの酵素結合イムノアッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)などのホモジェナス結合アッセイ、蛍光極性イムノアッセイ(FPIA)、マイクロ粒子酵素イムノアッセイ(MEIA)、化学発光磁気イムノアッセイ(CMIA)、アルファスクリーン表面プラズモン共鳴(SPR)、及び抗体-抗原相互作用をアッセイするための、当業者に知られている他のタンパク質若しくは細胞アッセイがある。
【0210】
一実施形態では、ELISAアッセイを使用して、本発明により保存した抗体又は抗原結合断片(又は参照抗体、例えば本発明の方法により保存した抗体)でその表面をコーティングした固形担体(例えば、マイクロタイタープレート)と抗原を接触させる。場合によっては、次いでプレートをバッファーで洗浄して、非特異的に結合した抗体を除去する。抗原と結合することができる二次抗体をプレートに施し、場合によっては次いでもう一回洗浄する。二次抗体は、検出可能な標識と直接的又は間接的に結合させることが可能である。例えば二次抗体は、適切な基質を与えると比色定量産物を生成する酵素、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼと結合させることが可能である。
【0211】
別の実施形態では、固形担体を抗原でコーティングし、保存抗体又は抗原結合断片は固定抗原と接触させる。保存抗体としての抗原に特異的な抗体を使用して、抗原-抗体複合体を検出することができる。
【0212】
さらなる実施形態では、保存抗体と標的の結合相互作用は表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して解析する。SPR又は生体分子間相互作用解析(BIA)は、如何なる相互作用物質も標識せずに、生体特異的相互作用をリアルタイムで検出する。(結合事象を示す)BIAチップの結合表面における質量の変化によって、表面付近の光の屈折率が変わる(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学的現象)。屈折率の変化により検出可能なシグナルが生じ、それらは生体分子間のリアルタイム反応の指標として測定される。
【0213】
SPRからの情報を使用して、標的と生体分子の結合に関するK
on及びK
offを含めた、平衡解離定数(D
D)、及びキネティックパラメータの正確且つ定量的指標を得ることができる。
【0214】
典型的には、37℃で7日間の本発明による保存及び生成産物のインキュベーション後に、抗体-抗原複合体を形成する抗体の能力は、このようなインキュベーションの前、又は実際は本発明による保存及びこのようなインキュベーション、このような複合体を形成する抗体の能力の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%である。
【0215】
保存抗体又はその抗原結合断片の使用
保存抗体又はその抗原結合断片は、in vivo治療及び予防用途、in vitro及びin vivo診断用途、並びにin vitroアッセイ及び試薬用途で使用することができる。
【0216】
診断用途では、血液、尿、唾液、痰、胃液などの体液、他の血液成分、尿又は唾液、又は体組織を、保存抗体又は抗原結合断片と結合する抗原の存在と量に関してアッセイすることができる。イムノアッセイなどの当技術分野で知られている幾つかの通常法(例えばRIA、ELISA)により、アッセイを実施することができる。
【0217】
例えば、体液のサンプルを、抗原結合抗体を検出するための抗体及びマーカーシステムを含有するアッセイ混合物に加えることができる。試験サンプルを使用して得た結果と、対照サンプルを使用して得た結果を比較することによって、特定の疾患又は状態に特異的な抗原の存在を決定することができる。特定の疾患又は状態と関連がある抗原を定性的又は定量的に決定するような方法を、その疾患又は状態の診断において使用することができる。
【0218】
標準的な免疫組織化学手順により、ウエスタン分析及びin situタンパク質検出などの他の技法を診断用途で使用することができ、この場合保存抗体又は抗原結合断片を、使用する個々の技法に適切に標識することができる。樹脂などのクロマトグラフィー担体と複合体形成するとき、保存抗体又は抗原結合断片をアフィニティークロマトグラフィー手順で使用することもできる。
【0219】
診断用途は、病院、医院及びクリニック、企業研究所、血液バンク及び家庭におけるヒト臨床試験を含む。非ヒト診断用途は、食品試験、水試験、環境試験、バイオディフェンス、獣医学的試験及びバイオセンサーを含む。
【0220】
保存抗体又は抗原結合断片は、薬剤開発、基礎研究及び学術研究などの研究用途で使用することもできる。最も一般的には、細胞内及び細胞外タンパク質を同定し位置特定するための研究用途で抗体が使用される。本明細書に記載する保存抗体又は抗原結合断片は、フローサイトメトリー、免疫沈降法、ウエスタンブロット、免疫組織化学法、免疫蛍光法、ELISA又はELISPOTなどの、一般的な実験技法で使用することができる。
【0221】
診断、治療又は研究用途で使用するための保存抗体又は抗原結合断片は、固形担体上で貯蔵することができる。例えば診断用途では、体液などの患者サンプル(血液、尿、唾液、痰、胃液など)は、固形担体(例えば、マイクロタイタープレート、シート又はビーズ)上で患者サンプルと本発明の保存混合物を含む混合物を乾燥させることによって、本明細書に記載する方法に従い保存することができる。次いで、保存した患者サンプル(例えば血清)は、例えばELISAなどのイムノアッセイを使用して、サンプル中の抗体の存在に関して試験することができる。
【0222】
或いは、対象の抗体又は抗原結合断片を、固形担体上で本発明の抗体又は抗原結合断片と保存混合物を含む混合物を乾燥させることによって、本明細書に記載する方法に従い保存することができる。患者サンプルは、その上に対象の抗体又は抗原結合断片が結合する固形担体と、患者サンプルを接触させることにより、特定の抗原の存在に関して試験することができる。抗原-抗体複合体の形成によって測定可能なシグナルが誘導され得る。形成された抗原-抗体複合体の存在及び/又は量を使用して、疾患、感染若しくは医学的状態の存在を示し、又は予後判定を与えることができる。
【0223】
治療用途に関して、本明細書に記載する保存抗体又は抗原結合断片は、典型的には炎症状態、アレルギー過敏症、癌、細菌若しくはウイルス感染、及び/又は自己免疫障害(例えば、I型糖尿病、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病及び重症筋無力症だけには限られないが、これらを含む)を予防、抑制又は治療する際に用途が見出される。
【0224】
抗体自体が治療剤である可能性があり、又は特定細胞型、組織若しくは位置に対する治療剤若しくは他の成分を標的化することができる。一実施形態では、本発明の保存抗体又は抗原結合断片を、様々な疾患又は状態を治療するために、放射性同位体、毒素、薬剤(例えば、化学療法剤)、酵素プロドラッグ又はリポソームと結合させる。
【0225】
酵素保存の測定
酵素に関する保存は、脱水、凍結、0℃未満、-5℃未満、-10℃未満、-15℃未満、-20℃未満、-25℃未満の温度、フリーズドライ、室温、-10℃超、-5℃超、0℃超、5℃超、10℃超、15℃超、20℃超、25℃超又は30℃超の温度の条件に曝された下での、物理的分解及び/又はタンパク質分解、触媒活性の低下、基質との結合能力の消失、産物生成、酵素効率又は反応速度の低下(例えば、k
cat/K
mの低下)などの、生物活性の消失に対する酵素の耐性を指す。酵素の保存は、幾つかの異なる方法で測定することができる。例えば、酵素の物理的安定性は、例えば濁度若しくは色及び/又は清澄性の目視により決定する、UV光散乱又はサイズ排除クロマトグラフィーにより測定する、凝集、沈殿及び/又は変性を検出する手段を使用して測定することができる。
【0226】
酵素の触媒活性の保存を、酵素アッセイを使用して評価し、経時的な基質の消費又は産物の生成を測定することができる。保存酵素の触媒活性は、本発明により保存されていない同じ特異性を有する参照酵素と比較することができる。
【0227】
このようなアッセイにおいて、放射性同位体の取り込み、酵素反応の基質、産物若しくは補因子、又はこのような基質、産物若しくは補因子と結合した物質の蛍光又は化学発光の変化を使用して、酵素の触媒活性をモニタリングすることができる。
【0228】
例えば、連続酵素アッセイ(例えば、分光アッセイ、蛍光アッセイ、熱量測定アッセイ、化学発光アッセイ若しくは光散乱アッセイ)又は不連続酵素アッセイ(例えば、放射分析若しくはクロマトグラフィーアッセイ)を使用することができる。連続アッセイと対照的に、不連続アッセイは、特定間隔での酵素反応のサンプリング、及びこれらサンプルにおける産物生成又は基質消費の量の測定を含む。
【0229】
例えば分光アッセイは、産物と反応物の間の吸光度の変化の測定を含む。このようなアッセイは反応速度を連続的に測定することができ、吸光度の変化をもたらす酵素反応に適している。分光アッセイの型は、モニタリングする個々の酵素/基質反応に依存する。例えば、補酵素NADH及びNADPHはその還元型ではUV光を吸収するが、その酸化型では吸収しない。したがって、基質としてNADHを使用するオキシドレダクターゼは、それが補酵素を消費するとき、UV吸収の低下をたどることによりしたがってアッセイすることができる。
【0230】
放射分析アッセイは、酵素反応中に経時的に生じた産物の量を測定するための、放射能の取り込み又は放出を含む(サンプルの除去及び計数を必要とする)。これらのアッセイ中で使用するのに適した放射性同位体の例には、
14C、
32P、
35C及び
125Iがある。基質が産物に転換されるとき、質量分析などの技法を使用して安定同位体の取り込み又は放出をモニタリングすることができる。
【0231】
クロマトグラフィーアッセイは、クロマトグラフィーにより反応混合物をその成分に分離することによって、生成物の形成を測定する。適切な技法には、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)及び薄層クロマトグラフィーがある。
【0232】
蛍光アッセイは、生成物と基質の蛍光の差を使用して酵素反応を測定する。例えば、還元型は蛍光性であり酸化型は非蛍光性であり得る。このような酸化反応では、反応は蛍光の低下をたどる可能性がある。還元反応は、蛍光の増大によってモニタリングすることができる。酵素触媒反応中に蛍光色素を放出する合成基質を使用することもできる。
【0233】
化学発光アッセイは、発光を含む酵素反応に使用することができる。このような発光を使用して生成物の形成を検出することができる。例えば、酵素ルシフェラーゼを含む酵素反応は、その基質ルシフェリンからの光の生成を含む。光度計又は改変型光学顕微鏡などの光感受性装置により、発光を検出することができる。
【0234】
本発明の保存酵素の使用
非晶質型の保存酵素によって長期の間酵素を貯蔵することができ、酵素の貯蔵寿命が最大になる。酵素の効能及び有効性は保たれる。本発明により保存した酵素を施す個々の使用は、酵素の性質に依存する。しかしながら典型的には、酵素を使用する前に、酵素を取り込んだ乾燥非晶質固体マトリックスから、酵素の水溶液を元に戻す。
【0235】
治療用酵素の場合、酵素の水溶液は、例えば保存酵素を含む乾燥粉末に注射用滅菌水又はリン酸緩衝生理食塩水を加えることにより、元の状態に戻すことができる。次いで酵素の溶液は、標準的な技法に従い患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、肺経路を含めた任意の適切な形式による投与であってよく、又はさらに、カテーテルを用いた直接注入により適切に投与することができる。投与の用量及び頻度は、患者の年齢、性別及び状態、他の薬剤の同時投与、店頭での指示、及び臨床医により考慮される他のパラメータに依存する。
【0236】
一般に、本発明により保存される治療用酵素は、薬理的に適切な担体と一緒に精製型で利用する。典型的にはこれらの担体は、任意の生理食塩水及び/又は緩衝培地を含めた、水溶液又はアルコール/水溶液、エマルジョン又は縣濁液を含む。非経口賦形薬には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、及び乳酸加リンゲル液がある。縣濁液中にポリペプチド複合体を維持するのに必要な場合の、適切な生理的に許容されるアジュバントは、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、ゼラチン及びアルギン酸塩などの増粘剤から選択することができる。静脈内賦形薬には、リンゲルデキストロースをベースとする補充剤などの、流体及び栄養補充剤並びに電解質補充剤がある。防腐剤及び他の添加剤、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスなども存在してよい。
【0237】
本発明により保存される他の酵素は、バイオセンサー、グルコース若しくはフルクトースなどのバルク産物の製造産業において、食品加工及び食品分析において、洗濯及び自動食器洗浄器用洗剤において、織物、パルプ、紙及び動物飼料産業において、合成若しくはファインケミカルにおける触媒として、臨床診断において、又は遺伝子操作などの診断用途において、前述のように診断剤として使用することができる。
【0238】
ワクチン免疫原の保存の測定
ワクチン免疫原に関する保存は、脱水、凍結、0℃未満、-5℃未満、-10℃未満、-15℃未満、-20℃未満、-25℃未満の温度、フリーズドライ、室温、-10℃超、-5℃超、0℃超、5℃超、10℃超、15℃超、20℃超、25℃超又は30℃超の温度の条件に曝された下での、物理的若しくは化学的分解、及び/又はタンパク質分解などの生物活性の消失、細胞性若しくは体液性免疫応答を刺激する能力の消失、又は抗体産生を刺激する若しくは抗体と結合する能力の消失に対するワクチン免疫原の耐性を指す。
【0239】
ワクチン免疫原の保存は、幾つかの異なる方法で測定することができる。例えば、免疫原特異的抗体と結合するワクチン免疫原の能力を測定することによって、抗原性を評価することができる。これは当技術分野で知られている様々なイムノアッセイで試験することができ、これによりワクチン免疫原に対する抗体を検出することができる。典型的には、抗体に関するイムノアッセイは、保存ワクチン免疫原(又は、本発明の方法に従い保存されていないワクチン免疫原の参照サンプル)のサンプルなどの試験サンプルの選択及び調製、次いで、抗原-抗体複合体を形成することができる条件下での、問題の免疫原に特異的な抗血清とのインキュベーションを含む。
【0240】
さらに、インフルエンザヘマグルチニン及びノイラミニダーゼに対する抗体を、ヘマグルチニン阻害及びノイラミニダーゼ阻害試験、赤血球を使用する凝集アッセイにおいて、又は一元放射免疫拡散アッセイ(SRD)を使用して通常通りアッセイすることができる。SRDは、担体アガロースゲルマトリックスにおける、抗原とその相同抗体の間の目に見える反応混合物の形成に基づく。ウイルス免疫原をゲルに取り込ませ、固定免疫原を介して施用地点から相同抗体を迅速に拡散させる。結果として生じる抗原-抗体複合体により、測定可能な光彩領域が生成する。
【0241】
保存したワクチン免疫原の使用
本発明の保存したワクチン免疫原は、ワクチンとして使用する。例えば、保存サブユニットワクチン免疫原、コンジュゲートワクチン免疫原又はトキソイド免疫原は、それぞれサブユニット、コンジュゲート又はトキソイドワクチンとしての使用に適している。ウイルス感染、ウイルス、動物又は昆虫誘導毒性、癌及びアレルギーを非制限的に含めたウイルス感染の後遺症だけには限られないが、これらを含めた幾つかの状態の治療又は予防のため、本発明の保存したワクチン免疫原をワクチンとして使用することができる。このような抗原は、宿主の免疫応答を刺激して体液性及び/又は細胞性抗原特異的応答をもたらす、1種以上のエピトープを含有する。
【0242】
本発明の保存したワクチン免疫原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)、HIV、HSV2/HSV1、インフルエンザウイルス(A、B及びC型)、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、RSVウイルス、リノウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルス、エンテロウイルス、アストロウイルス、麻疹ウイルス、おたふく風邪ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、ヒトT細胞リンパ腫I型ウイルス(HTLV-I)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、ポックスウイルス、及びワクシニアウイルスなどのウイルスによる感染の予防又は治療において、ワクチンとして使用することができる。さらにワクチンを使用して、口てい病(血清型O、A、C、SAT-1、SAT-2、SAT-3及びAsia-1を含む)、コロナウイルス、ブルータング、猫白血病ウイルス、鳥類インフルエンザ、ヘンドラウイルス及びニーパウイルス、ペスチウイルス、犬パルボウイルス、及び牛ウイルス下痢ウイルスなどの、多数の獣医学的疾患に対する適切な免疫応答をもたらすことができる。或いはワクチンを使用して、(例えば、ヘビ毒又は他の動物毒素により誘導される)動物又は昆虫誘導毒性に対する適切な免疫応答をもたらすことができる。一実施形態では、ワクチンは多価ワクチンである。
【0243】
本発明のワクチン組成物は、1種以上の糖及びPEIを含有する保存混合物と混合したワクチン免疫原を含む。ワクチン組成物は、適切なバッファー、及び抗生物質、アジュバントなどの添加剤、又は免疫系の特定細胞に対するワクチン免疫原の提示を促進する他の分子をさらに含むことができる。
【0244】
当技術分野でよく知られている様々なアジュバントを使用して、ワクチンの効能を高める、及び/又は体液性及び細胞性免疫応答を調節することができる。適切なアジュバントには、水中油型エマルジョン含有アジュバント又は油中水型アジュバント、鉱油など、アルミニウム系アジュバント、スクワレン/リン酸系アジュバント、完全/不完全フロイントアジュバント、サイトカイン、免疫刺激性複合体(ISCOM)、及び免疫刺激物質として働きワクチンの有効性を高める任意の他の物質があるが、これらだけには限られない。アルミニウム系アジュバントには、リン酸アルミニウム及び水酸化アルミニウムがある。ISCOMはコレステロール、脂質及び/又はサポニンを含むことができる。ISCOMは広範囲の全身免疫応答を誘導することができる。
【0245】
本発明のワクチン組成物は、適切な保存をもたらし調製物の貯蔵寿命を最大にするため、フリーズドライ(凍結乾燥)型であってよい。これは長期間のワクチンのストックパイリングを可能にし、免疫原性、効能及び有効性の維持を手助けする。本発明の保存混合物は、フリーズドライ/凍結乾燥プロトコール中に出くわす脱水及び熱ストレスに対してウイルス物質を保存するのに特に適している。したがって保存混合物は、採取直後及びサンプルをフリーズドライ手順に施す前に、ワクチン免疫原に加えるのに適している。
【0246】
本発明に従い調製したワクチンの保存を測定するため、当業者によく知られている技法を使用して、ワクチンの効能を測定することができる。例えば、細胞性又は体液性免疫応答の生成は、ワクチンに対する抗体又は免疫細胞応答の生成をモニタリングすることにより、適切な動物モデルにおいて試験することができる。本発明の方法に従い調製したワクチンサンプルが免疫応答を誘導する能力は、同じ保存技法を施していないワクチンと比較することができる。
【0247】
投与
本発明に従い保存したポリペプチドは、幾つかの場合乾燥若しくはフリーズドライ製品を元の状態にした後、様々な既知の経路及び技法を使用して対象のin vivoに投与することができる。例えば、ポリペプチドは注射溶液、縣濁液又はエマルジョンとして与えることができ、従来型ニードル及びシリンジを使用した非経口、皮下、経口、表皮、真皮内、筋肉内、動脈内、腹腔内、静脈内注射により、又は液体ジェット注射システムを使用して投与することができる。ポリペプチドは皮膚若しくは粘膜組織、例えば鼻腔、気管内、腸、舌下、直腸若しくは膣などに局所投与することができ、又は呼吸器若しくは肺投与に適した微細噴霧物質として与えることができる。
【0248】
一実施形態では、本発明の方法は、液体注射として投与するのに適した製剤に、混合物を処理するステップをさらに含む。方法は、摂取又は肺経路により投与するのに適した製剤に、混合物を処理するステップをさらに含むことが好ましい。
【0249】
保存した製品は、投薬製剤と適合性があり予防上及び/又は治療上有効である量で、対象に投与する。本発明の保存した製品の投与は、「予防」又は「治療」目的のいずれかであってよい。本明細書で使用する用語「予防」又は「治療」は、以下の、感染又は再感染の予防、症状の低下又は排除、及び病原体の減少又は完全な排除のいずれかを含む。治療は(感染前に)予防的又は(感染後に)治療的に実施することができる。
【0250】
式(I)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び/又は式(II)の化合物又はその生理的に許容される塩若しくはエステル、及び場合によっては1種以上の糖は、例えば患者に投与する前に液体型(水溶液)に転換すると、ポリペプチドを含む乾燥又はフリーズドライ製品、好ましくは本発明の製品の再懸濁剤として典型的に作用する。
【実施例】
【0251】
以下の実施例は本発明を例示する。
【0252】
材料及び機器
特に指定のない限り、以下の材料、機器及び技法を利用した。
【0253】
[実施例1]
様々な濃度の賦形剤の存在下で二価F(ab')
2を加熱刺激し、異なる地点でアッセイした。ELISAアッセイを使用して残留F(ab')
2活性を評価した。これは、加熱刺激中続いた損傷度の測定値として使用した。
【0254】
方法
賦形剤を用いた固体設定での二価F(ab')
2の調製及び加熱刺激
PBS中の二価F(ab')
2を-80℃での貯蔵から取り出し、放置して室温で解凍した。固体設定での以下に記載する賦形剤の防御性を決定するため、6.67μg/mlの抗体濃度で300μlの各製剤をガラス製フリーズドライバイアルに等分した。各製剤の詳細は表1中に述べる。
【表1】
【0255】
各製剤の10バイアルを作製して、二連で5つの時間地点を評価した。
【0256】
次いでサンプルは、以下の表2中に示す乾燥サイクルを使用し、レシピ6でVirTis Advantageフリーズドライヤーを使用して凍結乾燥させた。真空圧を最初に200ミリトールで施す前に、サンプルを-40℃で45分凍結させた。貯蔵温度と真空圧はプロセスを通じて調節した。
【0257】
一次乾燥期中、貯蔵温度は当初-40℃まで低下させた。二次乾燥期は、乾燥が終了するまで最大30℃に温度を上昇させる一連の保持ステップを含んでいた。プローブで貯蔵温度とコンデンサー温度を記録した。
【表2】
【0258】
凍結乾燥後、バイアルを撮影し生成したケークの質を記録し、次いで+40℃インキュベータ中に置き加熱刺激を開始した。
【0259】
二価F(ab')
2活性のアッセイ
二価F(ab')
2の活性をELISAによりアッセイした。PBS中に0.5μg/mlに希釈した抗原(ラットIgG2b-kappa)を、+4℃の制御条件で、96ウエルELISAプレートの横行A〜G、及び横行H中の2つの別のウエルに、100μl/ウエルでコーティングした。これらの対照を使用して後にデータを標準化した。プレートを+4℃で18時間インキュベートし、次いで0.05%のTween20を含有するPBS(洗浄バッファー)で三回洗浄した。ペーパータオル上へのブロッティングにより、プレートを乾燥させた。このブロッティング法は各洗浄ステップで使用した。5%のスキムミルクパウダー及び0.05%のTween20を含有するPBSを用いて、プレートを1.5時間ブロッキングした。サンプルを加える前に、プレートを洗浄バッファーで三回洗浄した。
【0260】
加熱刺激でのインキュベーション後、F(ab')
2製剤をインキュベータから取り出し、1mlの洗浄バッファー中で元の状態に戻し、これによってELISAに必要な抗体濃度(2μg/ml)を得た。各々の希釈サンプルは二連でプレートに加え、プレートで2倍希釈した(最終濃度、2μg/ml〜0.0625μg/mlの範囲)。二価F(ab')
2がない条件も含めてバックグラウンドシグナルを測定した。陽性対照条件は2μg/mlでアッセイした。プレートは室温で1.5時間インキュベートし、その後プレートは洗浄バッファーで五回洗浄した。
【0261】
ヤギ抗ヒトHRP結合抗体を洗浄バッファー中に1:5000希釈し、二価F(ab')
2を含有する全てのウエルに100μlを加えた。プレートは室温で1.5時間インキュベートし、次いで洗浄バッファーで五回洗浄した。100μlのTMB安定化クロモゲンを各ウエルに加え、室温で10分間反応させ、その後100μlの200mM硫酸を加え反応を停止させた。プレートはSynergy HTマイクロプレートリーダーを使用して450nmで読み取った。
【0262】
統計解析
平均及び標準誤差をそれぞれ二連で得て、指定F(ab')
2濃度での棒グラフとしてデータポイントをプロットした。
【0263】
結果は、二価F(ab')
2陽性対照(賦形剤と混合せず又は加熱刺激していないストックアリコートから得たサンプル)に標準化した。プレートの2陽性対照ウエルの平均で結果を割った(各プレートは別々の陽性対照を有していた)。
【0264】
スチューデントのt-検定を9カ月の時間地点で実施して、凍結乾燥し賦形剤と貯蔵したサンプルと、凍結乾燥しPBSのみと貯蔵したサンプルの間の有意性を決定した。9カ月におけるPBSのみのサンプルに対する製剤のT-検定に関するP値は表3中に述べる(n=4、スチューデントの両側t-検定)。
【表3】
【0265】
結果
液体設定における24時間+56℃での加熱処理後の二価F(ab')
2断片の活性。
【0266】
予備試験において、(AbD Serotecにより供給された濃度0.73mg/mlの)ストックF(ab')
2を+56℃で貯蔵して、高温における初期安定性を評価した。抗体は非常に熱不安定であることが分かり、56℃で24時間後にほとんど活性が残っておらず、この抗体を安定化させる賦形剤の能力を試験するのに良い開始地点となった。結果は
図1中に示し、この場合TCは加熱刺激を示し(データ標準化せず)、エラーバーは標準偏差である、n=2。
【0267】
固体設定における賦形剤あり及びなしでの+40℃での加熱処理後の二価F(ab')
2断片の活性。
【0268】
二価F(ab')
2を様々な濃度の賦形剤の存在下において加熱刺激し、異なる時間地点(1、2、3、6及び9カ月)でアッセイした。+40℃で1カ月の貯蔵後、1MのDMGグループは、他の全てのグループより高い活性を有していた。+40℃で2カ月の貯蔵後、活性は全てのグループで低下した。大部分のダメージは、加熱刺激の第1カ月と第2カ月の間に生じる可能性がある。[Hi]DMG/マンニトールを含有するサンプルは、9カ月の貯蔵後大部分の抗体活性及び0.20の光学濃度(OD)を保持していた。全ての他のDMG含有サンプルは約0.15のODを有しており、一方マンニトールのみ及びPBS対照は約0.10であった(
図2参照)。
【0269】
結論
二価F(ab')
2が非常に熱不安定であることは
図1において見ることができる。二価F(ab')
2を(賦形剤あり又はなしで)凍結乾燥すると、加熱刺激の間有意に長く抗体活性が保存される。全てのサンプルがある程度抗体活性を保持しているが、DMGとマンニトールを組合せて含有するサンプルは、これらを含有しないサンプルより抗体活性を保持している。1MのDMGとマンニトールを含有するサンプルは、0.7M又は0.3Mを含有するサンプルよりわずかに良く二価F(ab')
2を保護する(
図2)。
【0270】
前の表3における統計解析は、第9カ月で[HiDMG]及び[LoDMG]で凍結保存したサンプルとPBSのみで凍結保存したサンプルにおいて保持された抗原性の間の差は、統計学的に有意であることを示す。
【0271】
[実施例2]
HRP結合マウス抗淋菌IgGモノクローナル抗体(mAb)を、第2カ月で様々な濃度の賦形剤の存在下及び不在下において+40℃で加熱刺激した。ELISAアッセイを使用して残留HRP結合mAb結合活性を評価した。これは、持続した損傷度/得られた防御の測定値として使用した。即ち抗体結合活性が大きくなると、得られる防御は大きくなる。
【0272】
方法
賦形剤を用いた固体設定での、マウス抗淋菌IgGHRP結合モノクローナル抗体の調製及び加熱刺激
固体設定での以下に記載する賦形剤の防御性を決定するため、167μg/mlの抗体濃度で300μlの各製剤をガラス製フリーズドライバイアルに等分し、以下に記載するようにVirtis凍結乾燥機でプログラム1を使用して凍結乾燥させた。各製剤の詳細は表4中に述べる。各製剤を作製して、二連において+40℃で2カ月残留結合活性を評価した。
【表4】
【0273】
次いでサンプルは、以下の表5中に示す乾燥サイクルを使用し、VirTis Advantageフリーズドライヤーを使用して凍結乾燥させた。真空圧を最初に100ミリトールで施す前に、サンプルを-40℃で120分凍結させた。貯蔵温度と真空圧はプロセスを通じて調節した。
【0274】
一次乾燥期中、貯蔵温度は当初-45℃まで低下させた。二次乾燥期は、乾燥が終了するまで最大30℃に温度を上昇させる一連の保持ステップを含んでいた。プローブで貯蔵温度とコンデンサー温度を記録した。
【表5】
【0275】
凍結乾燥後、バイアルを+40℃インキュベータ中に置き加熱刺激を開始した。
【0276】
HRP結合マウス抗淋菌IgGの活性のアッセイ
HRP結合マウス抗淋菌IgGの活性をELISAによりアッセイした。抗原(淋菌)は-80℃から取り出し、室温で解凍した。それをPBS中に1.5μg/mlに希釈し、横行A〜G中のELISAプレートウエル、及び陽性対照として働いた横行H中の2ウエルを100μlでコーティングした。プレートを+4℃で18時間インキュベートし、次いで0.05%のTween20を含有するPBS(洗浄バッファー)で三回洗浄した。ペーパータオル上へのブロッティングにより、プレートを乾燥させた。このブロッティング法は各洗浄ステップで使用した。5%のスキムミルクパウダー及び0.05%のTween20を含有するPBS(ブロッキングバッファー)を用いて、振とうしながら+37℃で、プレートを1.5時間ブロッキングした。サンプルを加える前に、プレートを洗浄バッファーで三回洗浄した。
【0277】
加熱刺激でのインキュベーション後、mAb製剤をインキュベータから取り出し、300μlのPBS中で元の状態に戻し、次いでブロッキングバッファー中に2μg/mlに希釈し、これによってELISAに必要な抗体濃度(2μg/ml)を得た。各々の希釈サンプルは二連でプレートに加え、プレートで2倍希釈した(最終濃度、2μg/ml〜0.0625μg/mlの範囲)。各ウエル中の最終体積は100μlであった。
【0278】
mAbがない条件(ブロッキングバッファーのみ)も含めてバックグラウンドシグナルを測定した。プレートは振とうしながら+37℃で1.5時間インキュベートし、その後プレートは洗浄バッファーで三回洗浄した。100μlのTMB安定化クロモゲンを各ウエルに加え、室温で20分間反応させ、その後100μlの200mM硫酸を加え反応を停止させた。プレートはSynergy HTマイクロプレートリーダーを使用して450nmで読み取った。
【0279】
統計解析
平均及び標準誤差をそれぞれ二連で得て、指定mAb濃度での線グラフ又は棒グラフとしてデータポイントをプロットした。
【0280】
結果は、陽性対照(賦形剤又は加熱刺激を加えていないストックアリコートから得たサンプル)に標準化した。プレートの2陽性対照ウエルの平均で各々の結果を割った(各プレートは別々の陽性対照を有していた)。
【0281】
結果
凍結乾燥及び液体設定における7日間+56℃での加熱処理後の、マウス抗淋菌IgGの活性。
【0282】
非結合マウス抗淋菌IgGを使用する予備試験を実施して、高温における抗体の初期安定性を決定した。mAbは基本製剤(PBSのみ、30μg/mlの抗体濃度)で凍結乾燥させ+56℃で貯蔵した。同一、ただし非凍結乾燥状態の対照も+56℃に置いた。結果は
図3中に示す(データ標準化せず、エラーバーは標準偏差である、n=2)。抗体は非常に熱不安定であることが分かり、液体設定では+56℃で7日後に活性はほとんど残っておらず、凍結乾燥設定では活性の約三分の一が消失した。これは、この抗体を安定化させる賦形剤の能力を試験するのに良い開始地点となった。
【0283】
固体設定における賦形剤あり及びなしでの+40℃での加熱処理後の、HRP結合マウス抗淋菌IgGの活性。
【0284】
HRP結合mAbを、様々な組合せ及び濃度の賦形剤の存在下において加熱刺激し、+40℃で2カ月後にアッセイした。
図4は2カ月の時間地点でのデータを示す(エラーバーは標準誤差である、n=2)。
【0285】
2カ月の最終時間地点で、DMGとマンニトールを含有するサンプルは、PBSのみを含有するサンプル及びマンニトールのみを含有するサンプルより、高い抗体結合活性を維持していた。PBSのみを含有するサンプル及びマンニトールのみを含有するサンプルは、最も良いDMGとマンニトールの組合せの約25%を維持していた。
【0286】
結論
加熱刺激後、HRP結合マウス抗淋菌IgGの結合活性を保存するためマンニトールを加えるとき、DMGには利点がある。
【0287】
[実施例3]
様々な濃度の賦形剤の存在下で二価F(ab')
2を加熱刺激し、異なる地点でアッセイした。ELISAアッセイを使用して残留F(ab')
2活性を評価した。これは、持続した損傷度の測定値として使用した。
【0288】
方法
賦形剤を用いた固体設定での二価F(ab')
2の調製及び加熱刺激
固体設定での以下に記載する賦形剤の防御性を決定するため、6.7μg/mlの抗体濃度で300μlの各製剤をガラス製フリーズドライバイアルに等分し、実施例2中に記載したようにVirtis凍結乾燥機でプログラム1を使用して凍結乾燥させた。各製剤の詳細は表6中に述べる。
【表6】
【0289】
各製剤を作製して、二連において+40℃で6カ月残留結合活性を評価した。
【0290】
凍結乾燥後、バイアルを撮影し生成したケークの質を記録し、次いで+40℃インキュベータ中に置き加熱刺激を開始した。温度はKelsiusシステムを使用して絶えずモニタリングした。
【0291】
二価F(ab')
2活性のアッセイ
二価F(ab')
2の活性をELISAによりアッセイした。抗原(ラットIgG2b-kappa)はPBS中に0.5μg/mlに希釈し、ELISAプレートウエルは100μl/でコーティングした。1:400000希釈の正常マウス血清の2対照ウエルも含めた。これらは一貫した結果を与えることが分かり、これらを使用してデータを標準化した。プレートを+4℃で18時間インキュベートし、次いで0.05%のTween20を含有するPBS(洗浄バッファー)で三回洗浄した。ペーパータオル上へのブロッティングにより、プレートを乾燥させた。このブロッティング法は各洗浄ステップで使用した。5%のスキムミルクパウダー及び0.05%のTween20を含有するPBS(ブロッキングバッファー)を用いて、プレートを1.5時間ブロッキングした。サンプルを加える前に、プレートを洗浄バッファーで三回洗浄した。
【0292】
加熱刺激でのインキュベーション後、F(ab')
2製剤をインキュベータから取り出し、1mlの洗浄バッファー中で元の状態に戻し、これによってELISAに必要な抗体濃度(2μg/ml)を得た。各々の希釈サンプルは二連でプレートに加え、プレートで2倍希釈した(最終濃度、2μg/ml〜0.0625μg/mlの範囲)。各ウエル中の最終体積は100μlであった。mAbがない条件(洗浄バッファーのみ)も含めてバックグラウンドシグナルを測定した。プレートは1.5時間室温でインキュベートし、その後プレートは洗浄バッファーで五回洗浄した。
【0293】
ヤギ抗ヒトHRP結合抗体を洗浄バッファー中に1:5000希釈し、全てのウエルに100μlを加えた(ウサギ抗マウスHRP結合体は1:1000希釈し、100μlをマウス血清対照ウエルに加えた)。プレートは室温で1.5時間インキュベートし、次いで洗浄バッファーで五回洗浄した。100μlのTMB安定化クロモゲンを各ウエルに加え、室温で20分間反応させ、その後100μlの200mM硫酸を加え反応を停止させた。プレートはSynergy HTマイクロプレートリーダーを使用して450nmで読み取った。
【0294】
統計解析
平均及び標準誤差をそれぞれ二連で得て、指定F(ab')
2濃度での棒グラフとしてデータポイントをプロットした。結果は正常マウス血清対照に標準化した。プレートの2陽性対照ウエルの平均で各々の結果を割った(各プレートは別々の陽性対照を有していた)。
【0295】
結果
液体設定における24時間+56℃での加熱処理後の二価F(ab')
2断片の活性。
【0296】
実施例1中で説明し
図1中に示すように、二価F(ab')
2断片は非常に熱不安定であり、56℃で24時間後にほとんど活性が残っておらず、この抗体を安定化させる賦形剤の能力を試験するのに良い開始地点となった。
【0297】
固体設定における賦形剤あり及びなしでの+40℃での加熱処理後の二価F(ab')
2断片の活性。
【0298】
F(ab')
2を、様々な組合せ及び濃度の賦形剤の存在下において+40℃で加熱刺激し、6カ月後にアッセイした。
図5は+40℃で6カ月後のデータを示し、---はPBSのみを示し、S--は糖単独を示す。
【0299】
結論
二価F(ab')
2断片が非常に熱不安定であることは
図1において見ることができる。凍結乾燥は、基本製剤でさえ+40℃において最大6カ月、抗体結合活性を保つのを手助けする。低い糖濃度を加えるとこの防御は高まり、それはMSM又はDMGを加えると次いでさらに高まる。DMGとMSMを一緒に加えると、低糖でのDMG又はMSM単独のそれより高い防御効果をもたらし、これは相乗効果を示す。
【0300】
[実施例4]
方法
賦形剤の様々な混合物あり及びなしの、HRP結合マウス抗淋菌IgGモノクローナル抗体(mAb)を含有する溶液を調製しアッセイした(「凍結乾燥前」)。次いでこれらの溶液を凍結乾燥させ、生成した固体ケークの幾つかは直後に元の体積に再懸濁しアッセイした(「凍結乾燥後」)。これらのサンプルを使用して、新規な賦形剤混合物の凍結乾燥防御能力を解明した。
【0301】
残りの固体ケークは、アッセイするまで二カ月間40℃で加熱刺激を加えた。これらのサンプルを使用して、新規な賦形剤混合物の熱防御能力を解明した。
【0302】
HPLC-SECを使用して、未処理及び製剤化液体(凍結乾燥前)対照と比較した、凍結乾燥±加熱刺激サンプルにおけるバルクタンパク質の量及び流体力学的サイズ分布をアッセイした。このようにして、HPLC-SECを使用して、凍結乾燥自体及び加熱刺激に応じた、mAbのバルクタンパク質含量に対する変化を追跡した。
【0303】
賦形剤を用いた固体設定でのHRP結合マウス抗淋菌IgGモノクローナル抗体の調製及び加熱刺激
全ての条件は、167μg/mlの抗体濃度を含有する300μlアリコートとして凍結乾燥した。4種の賦形剤混合条件の組成物と賦形剤を含まない対照を、表7中に示す。各々が各時間-温度地点で二連凍結乾燥バイアルを供給するほど十分量、及び凍結乾燥前液体対照がアッセイ可能であるほど十分過剰な量を含有するように、これら5つの条件に対応するマスター混合物を調製した。
【表7】
【0304】
実施例1中に記載したように、レシピ6でVirTis Advantageフリーズドライヤーを使用してバイアルを凍結乾燥させた。凍結乾燥後、凍結乾燥直後のアッセイ用のサンプル以外、サンプルは次いで+40℃インキュベーションチャンバー中に貯蔵した。
【0305】
HRP結合マウス抗淋菌IgG活性のHPLC-SECアッセイ
流体力学的サイズ分布と強度を、HPLC-SECを使用して214nmで追跡した。使用したバッファーは、濃縮硫酸を使用して室温で6.8の最終pHに調節した、0.1M硫酸ナトリウムと0.1Mリン酸ナトリウムであった。バッファーは使用前に0.45フィルターに通した。HPLCで自動的に脱気を行った。流量は0.75mLであった。サンプル注入体積は25μLであった。HPLCはサンプルオートローダーを備えており、サンプルチャンバーは4℃に保った。カラム周囲のカラムジャケットは25℃に保った。各サンプルの吸収プロファイルは注入後24分間追跡した。サンプルは両洗浄ステップで区切ったブロックで注入し、その中でサンプルを含まないバッファー、及び系の一貫した操作を確実にするため働く標準を系に施した。
【0306】
リピート(凍結乾燥前)又は別バイアルからのレプリカ(凍結乾燥後及び加熱刺激後)のいずれかとして、二連でサンプルを注入した。
【0307】
プロファイルプロセシング
プロファイルに存在する多くの重複種の複雑性と不明瞭性のため、統合によるピークの定量化は行わなかった。その代わりに、プロファイルを「フィンガープリント」として処理した定量評価を実施した。非対照サンプルのプロファイルで起こった対照(液体、凍結乾燥前)プロファイルに対する変化を記した。明快にするため、各条件の一つの代表的なトレースを提示用に選択した。
【0308】
結果
標準曲線の構築及び処理
代表的な標準体を、この試験における品質保証指標として使用した。五種を標準混合物に含め、それらは表8中に列挙する。
【表8】
【0309】
後者の二つは示した標準曲線を構築するために使用し、それは対象のピークサイズを推定するため後に使用した。
【0310】
凍結乾燥防御能力:凍結乾燥前及び凍結乾燥後の状態
以下に記載するピーク領域保持中、ピーク複合の最高地点に重点を置く。(前に論じた標準曲線を使用すると)この地点は8分で始まり1.07MDaの推定サイズと関係がある。HRPは、mAb上の特定表面露出残基と成分を共有結合させる化学的プロセスにより翻訳後に結合した。初期ピークの大きなサイズは、多数の接着部位が利用されたことを示唆する。
【0311】
図6は、全てのピーク領域は、全てのサンプルに関して凍結乾燥後より凍結乾燥前に大きかったことを示す。凍結乾燥後、ピーク領域保持の最大の低下はPBS条件でのみで起こり、全ての他の条件がほぼ等しいピーク領域保持を示し、マンニトールのみの条件は3個のDMG含有条件より若干遅れた。
【0312】
マンニトールのみ及び[0.3MのDMGとマンニトール]サンプルにおいて凍結乾燥後、新たなピークが観察可能である。(前に論じた標準曲線を使用すると)このピークは12.4分の保持時間を有しており、77kDaの推定サイズと関係がある。
【0313】
これらの結果を一緒に考えると、両ピーク領域保持の最適性及びプロファイルの適合性は、[0.7MのDMGとマンニトール]又は[1.0MのDMGとマンニトール]のいずれかを含有するサンプルで生じたことを示す。
【0314】
熱防御能力:2カ月の加熱刺激条件
図7は、40℃で2カ月後、最大ピーク領域の低下がPBS及びマンニトールのみの条件で観察され、それらはいずれもベースラインレベルに近いピーク領域を示したことを示す。マンニトール以外にいずれもDMGを含有する3個の残りのサンプルは、
図6中に示した凍結乾燥前(液体)陽性対照条件の一般的プロファイルを全てが維持する。これら3個のDMG含有サンプルの中で、最大ピーク領域保持は[0.7MのDMGとマンニトール]を含有する条件で生じた。他の2つの条件は、ほぼ等しいピーク領域保持を示した。
【0315】
これらの結果は、加熱刺激後、マンニトールのみではmAbのプロファイルを維持するのに不十分であること(PBSも同様)、及びDMGの添加はmAbのプロファイルを維持することができたことを示す。さらにDMGの不在は、メインピークのバルク質量(約1.07MDaの推定重量と関連がある7.85分においてピークで始まる質量)の実質的不在と関係があり、一方DMGの添加は最大ピーク領域保持と関係があった。
【0316】
(0.55Mマンニトールと同時に)試験したDMGの最適量は0.7Mであったが、0.3Mと1.0Mの両方もプロファイルを維持することができる。
【0317】
結論
本明細書で示し論じるデータは、マンニトール及びDMGとマンニトールは、凍結乾燥プロセス中mAbのクロマトグラフィープロファイルの一般的特徴を維持することができたが、一方PBSのみではできなかったことを示す。追加的加熱刺激後、DMGを含有するサンプルにおいてより良いピーク領域保持を観察した。プロファイルの完全性は、マンニトール単独条件又は低濃度DMG条件ではなく、最高2濃度のDMGを含有する条件で維持された。
【0318】
40℃で2カ月のストレス処理後、DMGの存在はピーク領域保持に対して有意なプラスの影響があり、プロファイルの適合性を維持するのに必要であった。マンニトール単独条件とPBS条件の両方が十分の一のピーク領域保持であり、プロファイルの適合性を維持しなかった。
【0319】
全体的な結論は、凍結乾燥防御と熱防御の両方に関する最適条件は中程度DMG(0.7M)及び0.55Mマンニトールであったことであった。
【0320】
[実施例5]
方法
様々な濃度の賦形剤の存在下で一価断片抗原結合(Fab)を加熱刺激し、異なる地点でアッセイした。ELISAアッセイを使用して残留Fab活性を評価した。これは、持続した損傷度の測定値として使用した。
【0321】
賦形剤を用いた固体設定での一価断片Fabの調製及び加熱刺激
固体設定でのセクション4.1中に記載した賦形剤の防御性を決定するため、6.7μg/mlの抗体濃度で300μlの各製剤をガラス製フリーズドライバイアルに等分し、実施例2中に記載したようにVirtis凍結乾燥機でプログラム1を使用して凍結乾燥させた。各製剤の詳細は表9中に述べる。
【表9】
【0322】
各製剤を作製して、二連において+4℃で6カ月残留結合活性を評価した。
【0323】
凍結乾燥後、バイアルを+4℃の冷蔵庫中に置き加熱刺激を開始した。Kelsius温度モニタリングシステムを使用して、その温度をモニタリングし、任意の温度変動を絶えず記録した。
【0324】
一価Fab活性のアッセイ
一価Fabの活性をELISAによりアッセイした。抗原(ラットIgG2b-kappa)はPBS中に2.5μg/mlに希釈し、ELISAプレートウエルは100μlでコーティングした。1:400000希釈の正常マウス血清の2対照ウエルも含めた。これらは一貫した結果を与えることが分かり、これらを使用してデータを標準化した。プレートを+4℃で18時間インキュベートし、次いで0.05%のTween20を含有するPBS(洗浄バッファー)で三回洗浄した。ペーパータオル上へのブロッティングにより、プレートを乾燥させた。このブロッティング法は各洗浄ステップで使用した。5%のスキムミルクパウダー及び0.05%のTween20を含有するPBS(ブロッキングバッファー)を用いて、プレートを1.5時間ブロッキングした。
【0325】
サンプルを加える前に、プレートを洗浄バッファーで三回洗浄した。加熱刺激でのインキュベーション後、Fab製剤を冷蔵庫から取り出し、1mlの洗浄バッファー中で元の状態に戻し、これによってELISAに必要な抗体濃度(2μg/ml)を得た。各々の希釈サンプルは二連でプレートに加え、プレートで2倍希釈した(最終濃度、2μg/ml〜0.0625μg/mlの範囲)。各ウエル中の最終体積は100μlであった。mAbがない条件(洗浄バッファーのみ)も含めてバックグラウンドシグナルを測定した。プレートは1.5時間室温でインキュベートし、その後プレートは洗浄バッファーで五回洗浄した。
【0326】
ヤギ抗ヒトHRP結合抗体を洗浄バッファー中に1:5000希釈し、全てのウエルに100μlを加えた(ウサギ抗マウスHRP結合体は1:1000希釈し、100μlをマウス血清対照ウエルに加えた)。プレートは室温で1.5時間インキュベートし、次いで洗浄バッファーで五回洗浄した。100μlのTMB安定化クロモゲンを各ウエルに加え、室温で20分間反応させ、その後100μlの200mM硫酸を加え反応を停止させた。プレートはSynergy HTマイクロプレートリーダーを使用して450nmで読み取った。
【0327】
統計解析
平均及び標準誤差をそれぞれ二連で得て、指定Fab濃度での棒グラフとしてデータポイントをプロットした。結果は4℃ストック抗体対照に標準化した。プレートの2陽性対照ウエルの平均で各々の結果を割った(各プレートは別々の陽性対照を有していた)。
【0328】
結果
液体設定における24時間+56℃での加熱処理後の一価Fab断片の活性。
【0329】
予備試験において、(AbD Serotecにより供給された濃度1mg/mlの)ストックFabを+56℃で貯蔵して、高温における初期安定性を評価した。結果は
図8中に示し、その中でデータは標準化せず、エラーバーは標準偏差である、n=2。抗体は非常に熱不安定であることが分かり、56℃では24時間後に活性はほとんど残っておらず、この抗体を安定化させる本発明の賦形剤の能力を試験するのに良い開始地点となった。
【0330】
固体設定における賦形剤あり及びなしでの+4℃における加熱処理後の一価Fab断片の活性。
【0331】
Fabを、様々な組合せ及び濃度の賦形剤の存在下において加熱刺激し、6カ月後に+4℃においてアッセイした。
図9は+4℃6カ月におけるデータを示し、S--は糖単独を示す(エラーバーは標準偏差である、n=2)。
【0332】
+4℃での貯蔵後、糖単独の添加は6カ月での防御に十分ではなかった。MSMを多量のDMG及び糖(SHLとSHH)と組合せると、防御のレベルは一層高くなり、相乗効果が示され、多量のMSMを加えることによりこれはさらに高まる。
【0333】
結論
一価Fab断片が非常に熱不安定であることは
図8において見ることができる。凍結乾燥は、糖のみの基本製剤でさえ+4℃において最大6カ月、抗体結合活性を保つのを手助けする。糖、MSM及びDMGを組合せた使用は相乗効果をもたらすことができる。
【0334】
[実施例6]
方法
実験の設計
MODDE9.0を使用してDoehlert設計を作製した(以下の表10参照)。Doehlert設計は、レギュラーシンプレックス及びサポート二次モデルから構築された、表面反応モデリング(RSM)設計の型である。Doehlert設計は異なる方向に延長可能であり、新たな因子を既存の設計に加えることができる。通常の製剤化設計と異なり、非有意性因子は分析から排除することができ、したがって混同因子とはならない。
【0335】
この試験で使用したサイトカイン
通常のM-NFS-60の細胞培養中、ATCCの奨励に従い精製組換えマウスマクロファージ-コロニー刺激因子(マウスM-CSF)を使用して細胞を刺激した。マウスM-CSFはMilteny Biotecから得て(製品番号130-094-129)、非製剤化状態で提供された。
【0336】
Peprotech(300-23)から得た非製剤化顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)を使用して安定性試験を実施した。このG-CSFは大腸菌で発現され、非製剤化状態で提供された。このG-CSFの活性は製造者により≧1×10
7単位/mgとして決定された。
【0337】
M-NFS-60細胞
M-NFS-60細胞は液体窒素貯蔵物から回収した。これらの細胞の一回継代を使用して貯蔵細胞バンクを作製した。1回継代細胞の1mlアリコートを、RPMI増殖培地、及び5%DMSO、及び10%ウシ胎児血清(FBS)で、6.43×10
5個細胞/mlにおいて細胞で作製した。液体窒素貯蔵物に後に移すまで、アリコートは-80℃で凍結させた。この細胞バンクを使用して、この試験用のさらなる培養を確定させた。
【0338】
M-NFS-60細胞の通常の維持
細胞はATCCのガイドラインに従い維持した。簡単に言うと、0.05mMのβ-メルカプトエタノール、10%のFBS、1%のペニシリンストレプトマイシン、及び62ng/mlのM-CSFを含むRPMI-1640培地中で細胞を増殖させた。細胞は+37℃、+5%CO
2で培養した。細胞は2.5×10
4個生存細胞/mlで接種した。
【0339】
G-CSFの調製、凍結乾燥及び加熱刺激
表10中に記載したように酢酸バッファーにおいて賦形剤を調製した。
【表10】
【0340】
各々の賦形剤の質量を測り、3mlの予め温めた酢酸バッファーに溶かした。電子レンジ中での短時間の温め及び攪拌を施した。完全に溶解した後、合計体積を追加の酢酸バッファーで5mlにした。(表10中に示した設計に従い)溶液は所望最終濃度の1.3倍で故意に作成した。
【0341】
(表10中に言及する濃度で)75μlの賦形剤混合物と25μlのG-CSFを含有する2mlガラスバイアルを調製した。表10中に記載する各々の製剤に関して1バイアルを調製した。
【0342】
バイアルはアルミニウムプレートに載せ、実施例2中に記載したようにフリーズドライさせた。
【0343】
凍結乾燥サイクルの終了後、それらが回収可能になるまでサンプルを+4℃で機器に保持した。バイアルは真空下で密封し、それらのケークを撮影して、+56℃で4日間の加熱刺激に移すまで1〜5で記録した。加熱刺激後、サンプルはそれらをアッセイすることが可能になるまで+4℃に移した。
【0344】
XTT(2,3-ビス[2-メトキシ-4-ニトロ-5スルホフェニル]-2H-テトラゾリウム-5カルボキシアニリド不活性塩)を使用したM-NFS-60細胞におけるG-CSFのアッセイ
10%のFBS、1%のペニシリンストレプトマイシン、及び0.05mMのβ-メルカプトエタノールを含有するが、サイトカインは含まないRPMI-1640培地中に細胞を縣濁させた。細胞は96ウエルプレートに、ウエル当たり20000細胞、190μl/ウエルで接種した。
【0345】
凍結乾燥G-CSFサンプルを冷蔵庫から回収し、100μl滅菌水中で元の状態に戻した。20μlの各サンプルを取り出し、RPMI-1640に1対3希釈した。さらに7個の希釈を10倍連続希釈により1対3希釈から作製し、これによって1対3希釈から1対3×10
7の10倍連続希釈を作製した。各々の希釈液は、3個の別個プレート上のウエルに、ウエル当たり10μlで加えた。
【0346】
さらに、非製剤化G-CSFを+4℃での貯蔵から回収し、滅菌水中で15μg/mlの濃度まで元の状態に戻した。このサンプルは1対100希釈して150ng/mlの初期標準を生成した。半Log
10希釈系を生成して、150ng/mlと0.05ng/mlの間で標準曲線を作製した。各々の標準は、プレート当たり3ウエルに、ウエル当たり10μlで加えた。
【0347】
次いでプレートは、+37℃、+5%CO
2(EQP#014)に72時間置いた。72時間後、1%PMSを含むXTTのバイアルをPBS中で元の状態に戻した(バイアル当たり5ml)。多数のバイアルを元の状態に戻し、これらのバイアルは使用するまでプールした。40μlのXTT溶液をウエル当たりに加え、プレートはさらに8時間+37℃、+5%CO
2に戻した。この時点でプレートを軽く混合してXTTホルマザンを分散させ、次いで450nm及び690nmでの吸光度をプレートリーダーにおいて測定した。
【0348】
回収したG-CSFの推定
各サンプルに関して、450nmでの吸光度から690nmでの吸光度を引いた。既知濃度の標準を標準化した吸光度に対してプロットし、指数関数的増加を示す曲線の一部を確認した。この濃度範囲内のデータポイントは、濃度の自然対数対標準化吸光度としてプロットした。
【0349】
最小二乗回帰直線を、個別に各プレートにおける標準に関して作製した。次いでこの標準曲線に関する式を使用して、その特定プレートでの各公式化処理においてG-CSFの濃度を推定した。最も希釈したが依然アッセイの動的吸光度範囲内にあるG-CSFの希釈液を使用して濃度を推定し、これを既知の希釈係数と比較して調節した。
【0350】
異なる製剤は異なる開始G-CSF濃度を含んでいたので、加熱刺激後の推定濃度は、開始値の割合に変換し公平な比較を可能にした。得られた3個の測定値の平均を後の分析において使用した。
【0351】
結果
この試験において生じたケークの質は、凍結乾燥直後のケークの撮影及び0(非常に悪い)〜5(非常に良い)の後のスコアリングによって評価した。この評価は非常に主観的であり、スケールは厳密に直線的である必要はなく、さらにこの一評価は、多数の影響、例えばケーク崩壊、再溶解、縮小などを得るために行われる。しかしながら、スコアは依然有用であり表11中に示す。
【表11】
【0352】
上質なケークは重要であり得るが、この試験の優先事項は回収G-CSF活性の最大化であり、ケークの質は二次的要因であった。
【0353】
各製剤は異なる開始活性を有していたので、回収活性は開始活性の割合として表し、これによって製剤をより良く比較することができた。さらに回収活性は一定範囲の反応を示したが、大部分は1ログ消失内であり、全ては1.5ログ消失内であった。反応は5.6〜153%の範囲であった(表11参照)。100%を超える回収活性をもたらした幾つかの製剤は、おそらくこのアッセイ内で固有の変動性の製品である。中心点はこの反応中で比較的広範囲の分散を示すが(72.1〜110.2%)、有意性モデルが適合可能であったので、反応中の製剤間変動と比較して、この分散が十分小さいと考えられる。
【0354】
有意性モデルをこれら両方の反応に適合することができた(
図10参照)。回収活性に関して、モデルの評価パラメータはR
2=0.79、Q
2=0.41、モデルの妥当性=0.51、再現性=0.95である。一方ケーク質に関して、それらはR
2=0.84、Q
2=0.53、モデルの妥当性=0.91、再現性=0.68である。
【0355】
回収活性に関して、タンパク質濃度にはプラスの線形効果があった。タンパク質の濃度が上昇するほど、安定性は高まった。DMGとラフィノース両方の二次効果(非線形効果)を観察し、それらの濃度の真の最適値を確認することができた。スクロース自体は回収活性に影響がないが、ラフィノースと相互作用があることが分かった。モデル中の保持係数は、影響の大きさの指標と共に
図11中に示す。
【0356】
モンテカルロシミュレーションを使用して、回収活性を最大にする製剤を予想した。ケークの質は二次的要因とみなしたので、それはこの初期分析では無視した。203.9mMのラフィノース、1.3MのDMG、0.45Mのスクロース、及び300μg/mlの最適値を確認した。この最適値は活性消失をもたらさないと予想される。
【0357】
最適領域の4Dコンタープロット(
図12)は、約1.2Mの最適DMG濃度を明らかに実証する。タンパク質濃度が増大することによって、100%の回収が予想される、この理論上DMG最適値周辺の領域が増大する。この図は、ラフィノースの二次効果及び203.9mMの明らかな最適値も実証する。
【0358】
図13は製剤範囲の同じ領域を示し最適値を記す。しかしながら、ここでプロットするのはケーク質である。このモデルは、スクロースの増大がケーク質を高めることを示す。タンパク質濃度の増大自体が、ラフィノース濃度の増大と同様にケーク質を改善することを示す。
【0359】
後の分析でモンテカルロシミュレーションを使用して、ケーク質も最高にしながら回収活性を最大にした。二つの反応は等しい重み付けで与えた。これによって、250mMのラフィノース、0.6MのDMG、0.15Mのスクロース、300μg/mlのタンパク質の製剤最適値を確認した。反応の推定値は、4.7のケーク質及び76.5%の回収活性であった。
【0360】
(
図12及び13中と同様に)
図14及び15は二つの反応の4Dコンタープロットを示すが、第二分析では新たな最適値付近で確認した。
【0361】
[実施例7]
方法
実験の設計
MODDE9.0を使用してDoehlert設計を作製した(以下の表12参照)。Doehlert設計は実施例6中に記載する。
【0362】
この試験で使用したサイトカイン
M-NFS-60細胞を、実施例6中に記載したように入手、調製及び維持した。G-CSFも実施例6中に記載したのと同様であった。
【0363】
G-CSFの調製、凍結乾燥及び加熱刺激
表12中に記載したように酢酸バッファーにおいて賦形剤を調製した。
【表12】
【0364】
各々の賦形剤の質量を測り、3mlの予め温めた酢酸バッファーに溶かした。電子レンジ中での短時間の温め及び攪拌を施し、溶解を助長した。完全に溶解した後、合計体積を追加の酢酸バッファーで5mlにした。(表12中に示した設計に従い)溶液は所望最終濃度の1.3倍で故意に作成した。
【0365】
75μlの賦形剤混合物と25μlのG-CSFを含有する2mlガラスバイアルを調製した(1200μg/mlの濃度、したがってバイアル中の最終濃度は300μg/mlであった)。表12中に記載する各々の製剤に関して1バイアルを調製した。
【0366】
バイアルはアルミニウムプレートに載せ、実施例2中に記載したように充填しフリーズドライさせた。
【0367】
凍結乾燥サイクルの終了後、それらが回収可能になるまでサンプルを+4℃で機器に保持した。バイアルは真空下で密封し、それらのケークを撮影して、+56℃で4日間の加熱刺激に移すまでケーク質を1〜5で記録した。加熱刺激後、サンプルはそれらをアッセイすることが可能になるまで+4℃に移した。
【0368】
G-CSFのアッセイ及び回収活性の推定
実施例6中に記載したように、G-CSFをアッセイし回収活性を決定した。
【0369】
結果
表13中に示したように、回収活性の反応中の十分な範囲を開始活性の12.3〜81.1%で観察した。
【表13】
【0370】
この十分な分散によって、比較的強力な適合モデルが可能になった。いずれの製剤にも、この非常に有意な加熱刺激中1ログを超える消失はなかった。
【0371】
ケーク質の反応値の範囲も十分であった。反応値は0〜4.5で変化したが、この非常に主観的な人造スコアリングシステムは一定範囲の反応値をもたらす傾向がある。
【0372】
適合モデルの強度
有意性モデルは両反応に適合した。
図16中に示すように、主な読み取り値である回収活性は、モデルの評価パラメータ(R
2=0.87、Q
2=0.58、モデルの妥当性=0.60、再現性=0.93)により判断して強力なモデルをもたらした。ケーク質に適合させたこのモデルは、おそらくケーク質の主観的な性質のため、
図16中にも述べるようにそれほど強力ではなかった。
【0373】
モデルにおける重要因子
モデルにおける重要因子を
図17中に述べる。回収活性に関して、観察した唯一の線形効果は、プラスの効果がある、即ちスクロースが増大すると回収活性が増大する、スクロースの効果であった。これに加えて、TMGには二次非線形効果があることが分かり(即ち、最適濃度を観察し)、スクロースとラフィノースの両方と相互作用することも分かった。
【0374】
最適製剤の同定
モンテカルロシミュレーションを適合モデルと共に使用して、最適製剤を予想した。あまり重要でないケーク質の反応は無視しながら回収活性を最大にする具体的な目的で、最適製剤を作製した。最適製剤は1.4Mのスクロース、0.3MのTMG及び150.5mMのラフィノースであることが分かり、78.4%の回収活性をもたらすと予想した。
【0375】
適合モデルの記載
図18は、予想最適製剤周辺の製剤範囲のコンタープロットを示す。このグラフでプロットした反応は、開始活性の割合としての回収活性である。高レベルのスクロースにより、有意な防御が得られることが分かる。ラフィノースとTMGの両方が、必要とされるスクロースの量を減らす。回収活性とケーク質の間の折衷が必要とされ得る。150.5mMのラフィノース、0.33MのTMG、1.14Mのスクロースの製剤が、十分な回収活性(81.1%)とケーク質(ケーク質スコア=4)の両方をもたらした。
【0376】
[実施例8]
方法
マンニトール製剤のフリーズドライサンプルを示差走査熱量測定(DSC)により調べて、マンニトールが非晶質又は結晶であるかどうか決定した。マンニトールはフリーズドライ製剤においてしばしば使用されるが、経時的な非晶質形の不安定性が原因で、サイクル中それは通常結晶化される。
【0377】
DSCの手順
Perkin Elmer DSC 4000を使用した。最初に、インジウムのサンプルを以下に記載するように施して、機器のキャリブレーションを調べた。これは、一分当たり20℃の割合で20℃から200℃への、インジウムサンプルの加熱を含んでいた。DSCを適切に施した場合、結晶溶解による吸熱は通常156.6℃で見られる。
【0378】
キャリブレーションを調べた後、サンプルをアルミニウム製サンプル容器に密封して、DSC内で20℃に平衡状態にした。対照の容器は参照として使用し、サンプルの隣の加熱プレート上に置いた。次いでプログラムを施用し、一分当たり20℃で20℃から200℃までサンプルと参照を加熱し、次いで一分当たり20℃で200℃から20℃までそれらを冷却した。
【0379】
インジウム参照物質
インジウムを参照物質として使用し、DSC機器が予想される結果をもたらすことを確実にした。インジウムは156.6℃というよく知られている溶解温度を有する。この試験で得た値は、許容限度内にある157.02℃であった(
図20参照)。
【0380】
マンニトール
標準解析等級マンニトール(Sigma)を、結晶物質の陽性対照としてDSCにおいて施用した。結果は
図21中に示す。粉末状マンニトールは166.9℃で明らかな結晶溶解を示し、これは公開済みのデータと一致する。冷却段階中、115℃で明らかな結晶化による発熱がある。この実験は、マンニトールの溶解と再結晶化の両方を示した。
【0381】
274mM溶液由来のフリーズドライマンニトール
非晶質マンニトールを得るための試みにおいて、274mMのマンニトールを約100μbar(Mechatec凍結乾燥機)で、-40℃で72時間フリーズドライさせた。後のDSC分析の加熱段階中、166.6℃での結晶溶解前に、わずかな再結晶化による発熱があった。これは、10℃の無水マンニトールの非常に低いTgが原因で、分析前に大部分のマンニトールが再結晶化していたことを示唆し得る。DSCの結果は
図22中に示す。予想通り、強烈な再結晶化による発熱が約110℃で生じた。
【0382】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のフリーズドライマンニトール
PBS中のマンニトール(530mM)のサンプル(3.9mg)をフリーズドライさせた。生成したサンプルはDSCにより分析して、結果は
図23中に示す。約160℃で強烈な結晶溶解による吸熱、及び約80℃で再結晶化による発熱があった。このことから、PBS単独製剤において、マンニトールが結晶化及び再結晶化し得ると結論付けることができる。
【0383】
DMG含有溶液由来のフリーズドライマンニトール
マンニトールとDMGを含有する2サンプルを、VirTis Advantageフリーズドライヤーを使用して、表14中に記載する方法を使用してフリーズドライさせた(550mMのマンニトール、1MのDMG、PBS中)。真空圧を最初に200ミリトールで施す前に、サンプルを-40℃で120分凍結させた。貯蔵温度と真空圧はプロセスを通じて調節した。
【0384】
一次乾燥期中、貯蔵温度は当初-45℃まで低下させた。二次乾燥期は、乾燥が終了するまで最大30℃に温度を上昇させる一連の保持ステップを含んでいた。プローブで貯蔵温度とコンデンサー温度を記録した。
【表14】
【0385】
物質をバイアルから取り出しDSCにおいて施用した。結果は
図24及び25中に示す。60℃〜100℃で、おそらく加熱中の物質からの水の消失であるわずかな吸熱があった。しかしながら、166℃での結晶溶解、又は約110℃での再結晶化による発熱はない。これは、マンニトールの非晶質が始まるだけでなく、冷却中結晶化が妨げられることを示唆し得る。
【0386】
結論
DSCからのデータは、DMGはフリーズドライ中、それが非晶質構造を保持するように、マンニトールが結晶化するのを妨げることを実証する。
【0387】
[実施例9]
この実験の目的は、TMG及び/又はマンニトールを含有する製剤において、組換え防御抗原(rPA)を凍結乾燥することであった。次いでrPAの活性を競合ELISAにより調べた。ELISAは凍結乾燥前、凍結乾燥後、及び+37℃で9日後にサンプルに実施した。
【0388】
方法
HEPESバッファーにおいて100μg/mlのrPAで、表14中に述べるように溶液を作製した。
【表15】
【0389】
次いでこれらをバイアル中に300μl体積に等分し、一部に栓をいれ表15中に示すレシピに従いフリーズドライさせた。
【表16】
【0390】
二連液体サンプルELISAによりすぐに試験した(凍結乾燥前サンプル)。凍結乾燥後、各賦形剤製剤からの一組のサンプルを300μlの水中で元の状態に戻し、ELISAにより試験した(凍結乾燥後サンプル)。各条件からの第二組の凍結乾燥サンプルは+37℃で9日間置き、次いで300μlの水中で元の状態に戻し、ELISAにより試験した。
【0391】
ELISAプレートは0.05μg/mlのrPAでコーティングした。rPA溶液は8〜0.125μg/mlの二倍希釈で滴定し、一定濃度の炭疽菌mAb(1.5μg/ml)によって、サンプルrPAをmAb結合に関してプレート結合rPAと競合させた。次いでマウスIgG特異的HRPを用いてプレートをプローブ処理し、TMBを使用して発色させた。(-80℃から解凍した)新たなrPA対照を、内部対照として全プレートに施用した。
【0392】
得られた全ての結果は450nmの吸光度であった。三連又は二連いずれかの各賦形剤/rPA混合物の平均値を計算した。溶液中でのrPAによるプレート上でのrPAと抗体の結合の阻害率を次いで計算し、プロットして阻害曲線を得た。阻害曲線は全3時間地点間で比較してrPA活性の変化を示した。
【0393】
結果
結果は
図26(マンニトール+TMG)及び
図27(マンニトールのみ)中に示す。TMGとマンニトールの組合せは、+37℃での凍結乾燥rPAの加熱刺激に、マンニトールのみより高い防御能力を示す。
【0394】
[実施例10]
この実験の目的は、DMG及び/又はTMG及び/又はマンニトールを含有する製剤において、組換え防御抗原(rPA)を凍結乾燥することであった。次いでrPAの活性を競合ELISAにより調べた。ELISAは凍結乾燥前、凍結乾燥後、及び+37℃で9日後にサンプルに実施した。
【0395】
方法
HEPESバッファーにおいて100μg/mlのrPAで、表16中に述べるように溶液を作製した。
【表17】
【0396】
全てのサンプルは、実施例9中に記載したプロトコールに従い凍結乾燥させた。
【0397】
サンプルは凍結乾燥の前後で試験し、二連組のサンプルは+37℃で放置した。3賦形剤製剤の二連サンプルも+4℃及び+25℃で放置して、様々な温度でさらに長期の安定性データを得た。
【0398】
全てのサンプルは、実施例9中に記載したようにrPA競合ELISAで試験した。
【0399】
結果
結果は
図26〜32中に示す。
図27及び33及び34中の対応するマンニトール単独濃度で観察した結果と、これらを比較することによって、(a)DMGとマンニトールの組合せはマンニトールのみより高い防御能力を示すこと、及び(b)TMG、DMG及びマンニトールの組合せは依然さらなる改善を示し、抗原活性の消失がほとんどないことを見ることができる。
【0400】
[実施例11]
この実験の目的は、マンニトールの再結晶化挙動に対する、様々な賦形剤の影響を調べることであった。
【0401】
方法
以下の表18中に述べる濃度でDMGとマンニトールの水溶液を調製した。
【表18】
【0402】
次いでこれらの溶液をフリーズドライさせた。フリーズドライは、HetoFD8.0CD8030フリーズドライヤー(Heto Lab equipment Ltd、UK)を使用して実施した。サンプルは透明なガラス製1.5mlクリンプネックバイアル(32×11.6mm)にピペットで注いだ(1.5cm
3)。サンプルは(-45℃)で二時間凍結させた。一次乾燥は(-45℃)で15分間実施し、表19中に詳述するように二次乾燥を続けた。
【表19】
【0403】
さらに、(i)0.5Mマンニトールと0.5Mグリシン[サンプル6]及び(ii)0.5Mマンニトールと0.5Mサルコシン[サンプル7]の水溶液も前述のプロトコールに従いフリーズドライさせて、サンプル5との比較を可能にした。
【0404】
次いでサンプルは、TAQ-2000シリーズ熱分析システム(TA Instruments Ltd、UK)を使用して示差走査熱量測定(DSC)により分析した。10℃/分の加熱率及び30℃/分の冷却率を利用した。
【0405】
さらに、走査電子顕微鏡(SEM)画像をフリーズドライサンプル5に関して得た。これは
図39中に示す。
【0406】
結果
サンプル1〜5に関するDSCトレースを
図35中に示す。比較用に、マンニトール単独に関するDSCトレースを
図36中に示す。
図36中の上部トレースは、初期加熱後の冷却によりマンニトールが容易に再結晶化し、再加熱により多形が変わらないことを示す(上部トレース)。
【0407】
図35中のDSCの結果は、DMG濃度が増大すると、マンニトールの再結晶化が低減することを示す。冷却サイクル中のマンニトールの再結晶化ピークは、0.3M以上のDMGの濃度では検出不能である。
図37は、0.5Mマンニトール/0.5MDMG(サンプル5)に関するトレースをより詳細に示す。
【0408】
図38中のDSCの結果をサンプル5、6及び7と比較する。これらの結果は、マンニトールの再結晶化を妨げる際に、試験した濃度でDMGはサルコシン又はグリシンより有効であることを示す。
【表20】
【0409】
これらの結果は、全ての場合で、マンニトールのガラス転移温度は賦形剤濃度の増大と共に増大すること、及びこれらの濃度で、DMGはサルコシン又はグリシンより有効であることを示す。