(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
半導体デバイス、およびかかるデバイスを作成する方法は、少なくとも1つの窒化物半導体ナノワイヤ、例えばGaNナノワイヤを備える。
【0015】
III族窒化物半導体系のダイオード(例えば、ショットキーダイオード)およびトランジスタ(例えば、MOSFET、HEMT、またはHEFT)は、多くの異なる方法を使用して形成することができ、多くの異なる設計を有してもよい。寸法、配列、ならびに他の材料の組込み(ドーパント原子、インジウムの組込みおよび含量など)は様々にされる。Al
2O
3およびSiO
2などの誘電体は、電極の間に適用され、金属酸化物半導体HEMT(MOSHEMT)のゲート電極の下に形成されてもよい。ノーマリーオフ型デバイスの場合、ゲートは多くの場合、AlGaNを通ってGaN内に掘り込みされて(recessed)、AlGaN/GaNの2DEGを遮断する。以下のデバイスの説明は、いかなる形でも包括的であることを意図するものではなく、単に明確にするための例として使用される。窒化物系の電子デバイスは、主として、不整合基板上の成長による不整合転位としてのスレッディング転位による、結晶欠陥によって制限される。このことは、デバイスの製造技術および設計とは関係なく当てはまる。後述するように、本発明の実施形態は、GaN系のデバイス層成長テンプレートまたはバッファなど、III族窒化物系の結晶品質を改善し、ウェハ面上に既に存在するデバイス間の絶縁を実現して、窒化物系デバイスの電力および電圧公差、寿命、ならびに性能を改善する。
【0016】
図1に概略的に示される窒化物半導体ナノワイヤ110は、この文脈では、500nmなど、1ミクロン未満の直径と、数μm以下の長さとを有する、本質的にロッド状の構造として定義される。ナノワイヤ110は、その基部において、基板105にエピタキシャル接続されており、基板105は、エピタキシャル層、例えばナノワイヤ110に最も近いGaN層から構成されてもよい。ナノワイヤ110は、例えばSiNxの成長マスク111または別の絶縁層の開口部を通って突出する。
図1に示されるように、基板105の表面は、単に例示の目的で図面中では誇張されている、ある程度の粗さ112を呈してもよい。以下、ナノワイヤという用語は、表面粗さによって制約されない構造を指すものとして理解すべきであり、即ち、ナノワイヤは、基板105の上の第1の原子層(またはその代わりに第1の「自由」層と表現される)で始まる。しかし、ナノワイヤ110のこの第1の層は、一般的に、成長マスク111の開口部内にあることになる。ナノワイヤの長さはLで示される。
【0017】
従来技術で作成された窒化物ナノワイヤは、一般的に、多数の欠陥を含む。上述のパルス化した選択成長は著しい改善を表すが、方法は、ナノワイヤの基部の近くに積層欠陥を作り出すことがある。一般的に、かかる方法を用いて作成されたナノワイヤは、基部の近くに立方晶系から六方晶系までの結晶構造のばらつきを有するようになる。複数のかかるナノワイヤを備える半導体デバイスは、ナノワイヤの大部分またはすべてがこの種の欠陥を呈するようになる。積層欠陥は、光学的および電気的性質に関して、ナノワイヤの物理的性質に対する影響を有する。例えばLED用途では、基部の近くの積層欠陥によって発生する比較的小さい歪みも性能を妨げることがあるが、それは積層欠陥が電気抵抗を増加させるためである。面積が非常に小さいため、増加した抵抗はLEDの性能に対して著しい影響を有することがある。
【0018】
本発明の一実施形態による窒化物半導体ナノワイヤは、その全長にわたって同じ結晶構造を有し、即ち、ナノワイヤは基部の近くにおいて積層欠陥を呈さない。好ましくは、結晶構造は六方晶系である。長さ全体を通して同じ結晶構造を有するナノワイヤは、後述する方法を用いて作成することができる。
【0019】
本発明の一実施形態による半導体デバイスは、ナノワイヤの全長にわたって同じ結晶構造をそれぞれ有するナノワイヤ110で始まる。複数のナノワイヤの大部分が1つのみの結晶構造を有するべきである。さらにより好ましくは、半導体デバイスのナノワイヤの少なくとも90%がそれぞれ同じ結晶構造を有する。さらにより好ましくは、半導体デバイスのナノワイヤの99%がそれぞれ同じ結晶構造を有する。
【0020】
本発明の非限定的な一実施形態による窒化物半導体ナノワイヤの成長方法は、CVDに基づく選択領域成長技術を利用する。ナノワイヤ成長ステップの間、窒素源および有機金属源が存在し、少なくとも窒素源の流量は、ナノワイヤ成長ステップの間継続的である。本発明の方法で利用されるV/III比は、窒化物系半導体の成長と一般に関連付けられるV/III比よりも著しく低い。
【0021】
方法は、したがって、金属有機化学気相成長(MOCVD)プロセスおよび装置によって実現することができる。方法はまた、他のCVD、ならびに、水素化物VPEまたは有機金属VPE(MOVPE)に基づくプロセスに当業者には明白であるはずの修正を加えたものなどの、気相エピタキシー(VPE)によって実現することができる。方法は、
図2aの概略図および
図2bのフローチャートに示されており、次のステップを含む。
a)基板105の主表面(例えば、上面)105A上に成長マスク111を提供する。基板は、III族窒化物ナノワイヤを成長させるのに適した任意の材料、例えば、GaN、シリコン、サファイア、あるいは、シリコン基板上のGaNバッファ層など、1つまたは複数のバッファ層を任意に含んでもよい、AlNウェハであってもよい。成長マスク111は、好ましくは、SiN
xまたはSiO
xなどの誘電体層である。ただし、他の材料が使用されてもよい。
b)成長マスクに開口部113を形成する。開口部は、好ましくは、それらの直径とそれらの相対的な位置決めの両方の点で、十分に制御される。電子線リソグラフィ(EBL)、ナノインプリントリソグラフィ、光学リソグラフィ、および反応性イオンエッチング(RIE)、または湿式化学エッチング方法を含むがそれらに限定されない、当該技術分野において知られているいくつかの技術を、形成に使用することができる。好ましくは、開口部は直径約100nm、間隔0.5〜5μmである。開口部は、ナノワイヤ110が作成される位置および直径を規定する。
c)CVDまたはMOVPEに基づくプロセスによってナノワイヤを成長させる。好ましくは、基板105の主表面105Aにほぼ垂直に延在する(例えば、表面105Aに対して正確に垂直に、または表面105Aに対する法線の10°以内で延在する)、複数のIII族窒化物半導体ナノワイヤが形成される。好ましくは、ナノワイヤを形成する間、前駆物質源のフローは継続的である。前駆物質源の流量は、成長域内における低い過飽和を達成するように調節される。V/III比は、1〜100の範囲、好ましくは1〜50の範囲、さらにより好ましくは5〜50の範囲であるべきである。このV/III比は、膜成長に使用される比よりも相当に低いことに留意すべきである。
【0022】
上述の方法で製造されたナノワイヤが、
図3a〜bのSEM像に示される。開始基板上に、PECVDによってSiN
xの層(厚さ30nm)を堆積させた。後続のステップで、ドットパターン化したGaN開口部(直径約100nm)のアレイを、電子線リソグラフィ(EBL)および反応性イオンエッチング(RIE)によって作った。開口部間のピッチを0.5〜3.2μmの範囲に定めて、ナノワイヤの直径と位置の両方を規定する成長マスクが得られた。次に、そのように処理されたサンプルを、水平MOCVDチャンバに挿入して、GaNナノワイヤを成長させた。
図3aは、ピラミッド形の末端を備えたナノワイヤを形成できることをさらに示しており、これは特定の用途にとっては有利である。
【0023】
方法は、前処理ステップc’)、例えばナノワイヤ成長ステップc)に先立つアニーリングとして示される、成長条件を向上させるための様々なステップを含んでもよい。前処理ステップは複数のサブステップを含んでもよい。本発明の実施形態による前処理ステップはナノワイヤ成長をもたらさないが、前駆物質の1つまたは複数を前処理に、例えばアニーリングに使用できることに留意すべきである。また、ナノワイヤ成長ステップc)の間のV/III比の変動を想定することができる。しかし、ナノワイヤ成長ステップの間、前駆物質材料のフローを中断すべきではない。
【0024】
ナノワイヤは、様々な異なる用途で使用することができる。ナノワイヤは、非常に低い欠陥密度を有し得る、高品質GaNの合体させた離散的なアイランドを形成するのに使用される、構造上の基礎的要素(structural building blocks)として使用することができる。連続する合体させた層がいかにしてナノワイヤから形成されるかについて、Samuelsonらの米国特許出願第10/613071号に記載されており、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0025】
本発明の実施形態による半導体ナノワイヤを備える製造過程のデバイスが、
図4に概略的に示される。デバイスは基板105を備え、ナノワイヤ110が基板105からエピタキシャル成長している。ナノワイヤ110の一部分は、任意のシェル114および体積要素115によって包囲されている。体積要素115は、好ましくは、ナノワイヤ110にエピタキシャル接続される。ナノワイヤ110は、一般的に、50nm〜500nm程度の直径を有し、体積要素は200〜700nm程度の幅を有する。体積要素115は、ナノワイヤとは異なる形状を有してもよい。
図4に示されるように、ナノワイヤ110は、体積要素115を形成するピラミッド形のオーバーグロースによって包囲される。上述のように、ピラミッド形のオーバーグロースは、所望により、層116、117、118を備えてもよい。
【0026】
本発明の方法の一実施形態によれば、オーバーグロース、即ち体積要素をナノワイヤ上に提供する、さらなる成長ステップが含まれる。方法は、
図2bのフローチャートを参照して記載されるように、2つの段階を含む。第1段階は、ナノワイヤ成長条件、即ち低V/III比のステップa)〜c)を含む、ナノワイヤ成長段階と見なすことができる。第2段階では、ナノワイヤは、第1段階の成長プロセスに類似したCVDに基づくプロセスで、好ましくは同じ成長チャンバ内において、複数の異なる層を備えてもよい体積要素115によって過成長させられるが、ただし成長パラメータは平面成長向けに調節され、即ちナノワイヤ成長よりは高い、一般的には1000程度のV/III比を有する。実施形態による方法は、ナノワイヤ成長段階と、それに続く平面成長段階、即ち横方向成長段階として見なされてもよい。ナノワイヤの側壁は非極性となり、いわゆるm面{1−100}なので、ナノワイヤ成長段階は、平面成長にとって理想に近い表面を有するナノワイヤを作成する。かかる表面は、従来の方法によって作成するのは非常に困難である。ナノワイヤ成長段階に続く平面成長段階、即ち横方向成長段階では、ステップd)、および1つまたは複数の任意のステップe)、f)などにおいて、シェル層の成長にとって理想的な表面が利用されて、デバイスの部品が形成される。
【0027】
デバイスを作成する方法ステップが、
図12a〜dに示される。
図12aは、
図2aのステップc)に類似した、マスク111を通って突出するGaNナノワイヤ110を示す。ナノワイヤの継続的な選択成長は、第1に、ELO(エピタキシャルラテラルオーバーグロース)において知られているように、成長面積を低減させることによって、また第2に、付加的な歪みエネルギーを解放する手段として、転位を早期に掃出しナノワイヤから排除することによって、2つの手法でデバイスの転位密度を低減することが予期される。スレッディング転位はナノワイヤをもたらす。スレッディング転位は、表面または第2の転位が溶解することを要するので、かかる緩和はバルク層では不可能である。ナノワイヤ成長条件の副作用として、ナノワイヤは、変動する量の不純物、空孔および置換型欠陥を含んで、nドーピングは増加するが電子移動度は減少する傾向がある。したがって、本発明の実施形態では、ナノワイヤコアは、電気的な使用については信頼性がなく(例えば、デバイスの能動部分に組み込むことについては信頼性がない)、絶縁についても信頼性がないが、一種の欠陥に対するフィルタとして使用される。
【0028】
図12bは、
図4に類似した、GaNのピラミッド形の体積要素115の成長(即ち、ナノワイヤのオーバーグロース)を示す。この要素または層は、平面GaNに類似した条件で成長させられて、不純物、空孔、および置換型欠陥を減少させることによって、ナノワイヤコアに比べて結晶の純度および化学量論が大幅に改善される。好ましくは、明確に後述する理由で、この体積要素または層は、半絶縁性半導体材料として挙動するように、真性の低ドープのもの(即ち、10
16cm
-3未満のドーパント含量)、またはさらには補償ドープしたもの(即ち、材料導電性を低減するため、Fe、Cで、もしくはn型およびp型両方のドーパントでドープしたもの)として成長させてもよい。通常、かかる用途向けの十分に半絶縁性のGaNは、高い転位および欠陥密度に由来する意図的でないnドーピングを効率的に補償することができないため、小さい寸法全体にわたって実行可能ではない。しかし、体積要素の大部分には転位がないので、10
5Ω*cmを超える高い抵抗率レベル(例えば、10
6〜10
7Ω*cm)を達成することができる。優れた化学量論を達成することができる場合、より高い抵抗率10
7Ω*cm、および10
9Ω*cmを超えるような高い抵抗率(例えば、10
9〜10
11など、10
7〜10
12Ω−cm)が達成されてもよい。
【0029】
図12cは、c面配向を有する平坦な上面115Cを有するベース要素115Aを形成するための、ピラミッド形の体積要素115および任意にナノワイヤ110のin−situエッチバックなどの平坦化を示す。「c面」は{0001}面を表す。好ましくは、ナノワイヤの上部は平坦化ステップの間に除去される。しかし、代替実施形態では、体積要素115がナノワイヤ110の上方で十分な高さまで延在した場合、平坦化はナノワイヤで、またはその上方で止まる。エッチバックは、化学反応もしくは温度補助の異方性エッチング、または化学的機械的研磨によって行われてもよい。ベース要素115Aは、平坦な上部のc面表面と、マスク層111まで延在する傾斜した側壁とを備えたメサを形成する。ピラミッド形以外の形状を有する体積要素115の場合、ベース要素115Aの側壁は、傾斜するのではなく直線であってもよい。この方法によって製造されたベース要素は、0.1μm〜100μmの幅、好ましくは1μm〜50μmの幅範囲であってもよい。幅の選択は、好ましくは、記載した層の成長パラメータおよび成長時間と併せて、ナノワイヤ110用のマスク111の開口部113(
図2aに図示)の間隔によって制御される。
【0030】
図12dは、c面表面上における追加の単結晶半導体エピタキシャル層115B(本明細書では、置換層(displacing layer)と呼ばれる)の堆積を示している。好ましくは、層115Bの上面もc面配向を有する。層115Bの上面は、ナノワイヤコア110の頂部が平坦化した体積要素の表面で露出することに起因して、表面に何らかの不均一性を有することを回避するため、ナノワイヤコア110から除去または置換される。このように、置換層115Bは、転位がない結晶性も利用して、体積要素と類似のやり方で成長させられることがあるので、能動素子表面はナノワイヤコアから電気的に置換され、10
6Ω*cm以上の高い抵抗率レベル(例えば、10
6〜10
7Ω*cm)を達成することができる。優れた化学量論を達成することができた場合、10
9Ω*cmを超えるなど、10
7Ω*cm以上のさらに高い抵抗率(例えば、10
9〜10
11など、10
7〜10
12Ω−cm)が達成されてもよい。
【0031】
層115Bは、GaN層、三元もしくは四元層(例えば、AlGaN)、またはかかる層のシーケンスであってもよく、シーケンスは、平坦化したGaN体積要素上にエピタキシャル堆積させて、ベース要素の上面115Cがナノワイヤ110の上部先端の上に位置する、置換したベース要素115Aを形成することができる。層115Bが存在する場合、その上面は、置換したベース要素115Aのc面配向を有する平坦な上面115Cを形成する。層115Bのセグメントは、好ましくは、高い化学量論(0.5%以下の偏差で、実質的に50原子%の窒素および実質的に50原子%のIII族材料)を呈するように成長する。このように、ナノワイヤセグメント110は結晶転位を除去し、置換層115Bおよび平坦化した体積要素115は結晶の純度を向上させて、転位のない高純度の層がもたらされる。図示しないが、置換層115Bは、成長段階の間に露出したメサ115Aのすべてのファセット上で成長する。ピラミッド形のファセットはc面表面よりも成長が遅い傾向があるが、かなり薄い層が得られる。
【0032】
さらに、この方法によって、置換層115Bおよび平坦化した体積要素115が、完全に絶縁性または半絶縁性のベース要素115Aを形成するので、ベース要素を備えるメサの上面全体が、ナノワイヤコア110から電気的に置換されることに留意することが重要である。好ましくは、
図12a〜12dに示されるステップは、1つの中断されない成長行程で(例えば、単一チャンバまたは多チャンバの半導体製造装置内で、真空を中断するまたはウェハを取り出すことなく)実施される。
【0033】
好ましくは、ベース要素メサ115Aの実質的に平坦なc面上面115C(即ち、置換層115Bの上面、または置換層115Bが省略される場合、平坦化した体積要素115の上面)は、実質的にスレッディング転位を有さない。例えば、ベース要素メサ115Aの実質的に平坦なc面上面は、10
8未満、10
7未満、10
6未満、10
5未満など、10
9未満のスレッディング転位、例えば、10
4〜10
9およびそれらの間のすべての部分範囲のスレッディング転位を有する。別の例では、ベース要素メサ115Aの90〜99%など、少なくとも90%は、それらの実質的に平坦なc面上面にスレッディング転位を有さない。
【0034】
ベース要素115Aは、後続のデバイス層のための単一の半絶縁性テンプレートを提供して、基板が導電性、絶縁性、または半導体のいずれであるかに係わらず、基板105上に事前区分化した(pre−partitioned)デバイスを成長させ製造するのに適した、低欠陥、高純度、かつ半絶縁性のメサを製造する可能性を提供する。あるいは、半導体体積要素115およびナノワイヤ110からのデバイス層の絶縁が重要ではないとき、置換層115Bは省略されてもよく、能動素子の製造が、
図12cに示されるベース要素115Aの平坦化した体積要素115部分上で直接継続してもよい。
【0035】
概して、ナノワイヤコア110は、スレッディング転位および基板のNWインターフェース欠陥など、基板またはバッファ層(例えば、基板105上の層)からの欠陥に対するフィルタとして働く。この方法によって、c面の特性を利用するとともに相当量の熱を発生させるパワー電子デバイス(例えば、ダイオード、MOSFETおよびバイポーラトランジスタなどのトランジスタ、整流器、サイリスタ、HEMTなど)に適している、高熱伝導率、絶縁性、および半絶縁性の基板105(例えば、カーボン膜、半絶縁性シリコン、SOI(シリコンオンインシュレータ)、サファイアなど)上にナノワイヤを成長させることが可能になる。あるいは、基板105は導電性基板(例えば、金属)または半導体基板(例えば、シリコン、GaNなど)であってもよく、ベース要素115Aは、単結晶または高品質な多結晶質のIII族窒化物半導体の能動素子層のエピタキシャル成長に適した、電気絶縁性または半絶縁性のIII族窒化物半導体バッファ(例えば、GaNもしくはAlGaNメサ)を備える。
【0036】
GaNにおける理論上の電子移動度はかなり高いが、高純度GaNデバイスのRF特性は、本明細書に記載されるように、適切な半絶縁性基板が欠落していることによって依然として制限される。半絶縁性または絶縁性の基板上にこれらのデバイスを成長させる能力により、GaNの電子移動度によって与えられる電位にしたがって高周波の機能性が改善される。c面(プレーナー技術で使用される表面)の極性は、GaN HEMT技術において2DEGチャネルを作り出すために使用される。HEMTにおける2DEGは、AlGaNとGaNとの間のヘテロ構造のバンド曲がりによって形成される。2DEGにおける電子移動度は、GaNの理論上の移動度を簡単に超えることがある。
【0037】
図13a〜dは、
図12a〜dの方法にしたがってトランジスタ(例えば、MESFETまたはHEMT)を形成する方法を示す。
図13aおよび13bはそれぞれ
図12aおよび12dに相当し、
図13cは、1つまたは複数の能動素子層202を示し、それらの層は、置換層115Bを備えてもよく、あるいは、ベース要素115A上に(例えば、置換層115B上に、もしくは平坦化した体積要素115上に直接)エピタキシャル成長させた、追加の単結晶または高品質多結晶質の半導体層(1つもしくは複数)を備えてもよく、その場合、ベース要素は、半導体能動素子層(1つもしくは複数)202のエピタキシャル成長のためのバッファ構造(例えば、実質的に平坦な上面を有するメサ)を備える。デバイス層202は、成長ステップ中に露出したメサ115Aのすべてのファセットを覆うことに留意されたい。このことは、すべての能動層202および置換層115Bに関しては当てはまるが、異なるファセットは異なる層厚をもたらすことになる。通常、単純にするため、ピラミッド形の(側面)ファセットは、c面表面よりも成長が遅い傾向があり、結果としてかなり薄い層になるので、図面中に示されない。
【0038】
高純度および高品質の能動素子層(1つもしくは複数)202は、好ましくは、意図されるp型またはn型ドーパントを除いて、5×10
16cm
-2未満の不純物含量を有する。換言すれば、層202が意図的にドープされた場合、意図的に添加されたドーパント原子を除いて、層202は、10
16cm
-2未満、10
15cm
-2未満、10
14cm
-2未満、10
13cm
-2未満、10
12cm
-2未満など、5×10
16cm
-2未満の望ましくない不純物、例えば、10
12cm
-2〜10
16cm
-2およびそれらの間のすべての部分範囲の望ましくない不純物を有する。デバイス層(1つもしくは複数)202はまた、実質的にスレッディング転位を有さない。例えば、層202は、10
8未満、10
7未満、10
6未満、10
5未満など、10
9未満のスレッディング転位、例えば、10
4〜10
9およびそれらの間のすべての部分範囲のスレッディング転位を有する。別の例では、メサ115A上の層202の90〜99%など、少なくとも90%は、スレッディング転位を有さない。
【0039】
図13dは、AlGaN能動層202(例えば、トランジスタのチャネル領域の少なくとも一部分を備える層)上における、ソース電極204、ゲート電極206、およびドレイン電極208の形成を示す。HEMT構造では、電極は、AlGaN/GaNの2DEG(二次元電子ガス)中の電子と接続し、それらに対して作用するようになる。MESFETは、置換層115B、またはベース要素115Aの上に位置する追加層を備えてもよい、半絶縁性のGaNもしくはAlGaN層の上に、AlGaN層もしくはGaN層202を備えてもよい。したがって、本発明の実施形態は、記載したベース要素115Aに含まれるような、高品質の半絶縁層によって窒化物MESFETの性能を改善することが予期される。各ベース要素115Aは、隣接したベース要素から電気的に隔離(絶縁性基板105による)および/または絶縁(基板105の導電性に係わらず、半絶縁性もしくは絶縁性であることによる)されるので、単一のデバイス(例えば、ダイオード、トランジスタなど)が各ベース要素115Aの中または上に形成されてもよい。
【0040】
図14a〜cは、ベース要素115A上に形成することができる、他のデバイス(それぞれ、ショットキーダイオード、pnダイオード、およびMOSFET)を示す。
図14aに示されるショットキーダイオードを形成するため、ナノワイヤシード110およびベース要素115Aは上述のように形成されるが、体積要素115は、好ましくは、絶縁性または半絶縁性のIII族窒化物材料ではなく、nドープ半導体などのドープ半導体である。これは、半導体のベース要素115Aを形成する。次に、低ドープIII族窒化物半導体材料をベース要素115A上に堆積させることによって、ショットキー障壁層214が形成される。次に、第1の電極210が層214上に形成され、第2の電極212が、ベース要素115Aの表面上の層214にある選択的に形成された開口部内に形成される。あるいは、ベース要素は半絶縁性であってもよく、それに続いて、デバイス層202が半絶縁性のベース要素上に成長させられ、デバイス層202とのショットキーインターフェースを形成する材料の第1の電極210が形成され、デバイス層202に対するオーム接点を形成する材料の第2の電極212が形成される。
【0041】
図14Bに示されるpnダイオードを形成するため、ナノワイヤシード110およびベース要素115Aが上述のように形成される。次に、ベース要素115Aの第1の部分214がマスキングされ、ベース要素115のマスキングされない第2の部分216には、ベース要素115Aを形成するときに使用されたのとは逆の導電型のイオンがイオン注入される。例えば、ベース要素115Aがn型材料で形成される場合、ベース要素115Aのマスキングされない第2の部分216は、それがp型になるまでアクセプタイオンをイオン注入されてもよい。次にマスクが除去される。次に、第1の電極210がベース要素115Aの第1の部分214上に形成され、第2の電極212がベース要素115Aの第2の部分216上に形成されてもよい。
【0042】
図14Cに示されるMOSFETを形成するため、ナノワイヤシード110およびベース要素115Aが上述のように形成される。次に、ゲート誘電体層218がベース要素115Aの上面の上に形成される。任意に、ベース要素115Aの頂部部分のイオン注入およびアニーリングによって、チャネル領域202を形成することができる。イオン注入は、領域115Aと同じまたは異なる導電型を有するイオンを用いて行われてもよい。ゲート誘電体層218を形成するため、ソースおよびドレイン接点が形成されることになるベース要素115Aの側面部分がマスキングされ、ベース要素115Aのマスキングされない頂部および側縁部の領域全体に誘電材料が堆積されてもよい。あるいは、ベース要素115A全体が誘電材料の層で覆われ、頂部および側縁部の領域がマスキングされ、誘電材料がベース要素115Aの側面から除去されて、ゲート誘電体218ならびに絶縁性の側壁層220Aおよび220Bが形成されてもよい。導電材料層が堆積されパターニングされて、ソース接点204およびドレイン接点208が形成される。ゲート電極206が接点204、208とは異なる材料から作られている場合、ゲート電極206は、同時にまたは別個のステップで形成されてもよい。図示されるように、この実施形態のMOSFETはN−N−Nの「エンハンスメント型」MOSFETである。あるいは、「デプリーション型」MOSFETが、チャネル領域202とは逆の導電型のベース要素115Aにソースおよびドレイン領域を形成することによって作られてもよい。
【0043】
ショットキーダイオードおよびMOSFETとしての多くの電子デバイスは、均質な高純度の半導体テンプレートの高度な処理によって製造される。しかしながら、HEMTテンプレートは、通常はAlGaN障壁層である、障壁層を備えるエピタキシャル層スタックを含むという点で異なる。AlGaN/GaNのインターフェースは天然の2DEGを提供する。1つの区分化した基板上で両方のテンプレートを組み合わせることによって、二端子のデバイスシステムおよびHEMTに基づく三端子のデバイスシステムの両方を備えたICプラットフォームを実現することができる。方法は、HEMTデバイスおよびショットキーダイオードデバイスの形成によって例証したように、以下のステップを含む。
【0044】
図14dに示されるように、第1の成長ステップで、上述したようにベース要素115Aが形成される。次に、第2の成長ステップで、通常はAlGaN障壁層である障壁層を備えるエピタキシャル能動素子層スタック402が、ベース要素115Aの上に形成されて、HEMTの一部分が形成される。その後、第3の成長ステップで、
図14eに示されるように、ダイオードを製造するための少なくとも1つの高純度窒化物半導体デバイス層404が、すべてのベース要素115Aの上にあるスタック402の上に形成される。
【0045】
次に、フォトレジストマスク406などのエッチマスクが、ダイオード形成範囲410A、410B内のデバイス層404の上に(即ち、範囲410A、410B内のベース要素115Aの上に)形成される。HEMT形成範囲412(即ち、範囲412内のベース要素115A)に位置する、エッチマスク406で覆われていない(即ち、マスクにおいて露出している)デバイス層404の部分は、エッチングによって除去されて、
図14fに示されるように、範囲412内のスタック402の上面408を露出させる。次に、エッチマスク406は除去され、次に電極および接点が形成されて、同じ基板の上の個々の範囲410A、410B、および412にダイオードおよびHEMTが完成する。
【0046】
あるいは、HEMTヘテロ構造成長ステップは、ダイオードを製造するために高純度窒化物半導体デバイス層404をエッチングすることなく、選択的に行われてもよい。この方法では、
図14gに示されるように、通常はAlGaN障壁層である障壁層を備えるエピタキシャル能動素子層スタック402が、ベース要素115Aの上に形成されて、HEMTの部分が形成される(
図14dに示されるステップに類似)。
【0047】
次に、
図14hに示されるように、成長マスク416が、HEMT形成のためのHEMT範囲412内のベース要素115Aは覆うが、ダイオード範囲410A、410Bにあるベース要素は露出させて形成される。成長マスク416は、その上面上における選択的なIII族窒化物成長を遅らせるかまたは防ぐ、誘電体など、例えば酸化シリコンまたは窒化シリコンの、硬質マスクであってもよい。あるいは、マスク416は、レジストリフトオフマスクなど、リフトオフマスクを含んでもよい。
【0048】
図14iに示される次の成長ステップで、次に、ダイオードを製造するための高純度窒化物半導体デバイス層404が、ダイオード範囲410A、410Bにあるベース要素115A上に選択的に形成される。しかし、層404は成長マスク416の上面上には形成されない。あるいは、マスク416がリフトオフマスクである場合、層404の部分404Aは、リフトオフマスク416の上面上に形成される。
【0049】
次に、マスク416が除去されて、HEMT範囲412にあるスタック402の上面408を露出させる。マスク416がリフトオフマスクである場合、マスク上に位置していたいずれのデバイス層部分404Aも、リフトオフプロセスによって剥離され除去される。次に、電極および接点が形成されて、同じ基板の上の個々の範囲410A、410B、および412にダイオードおよびHEMTが完成する。この代替方法は、事前定義された構成のHEMTおよびダイオードテンプレート(即ち、個々の範囲412および410A/410Bのベース要素115A)を用いて、基板が事前に製造されるという利点を提供する。
【0050】
両方の代替方法において、ショットキーダイオードをその下の2DEGから絶縁するために、2DEGを確立するヘテロ構造を備えるデバイス層の後に続く成長ステップにおいて、半絶縁性層を含めるのが有利なことがある。
【0051】
図15A〜15Eは、ナノワイヤによって可能になるパワーウェハの一実施形態を示す。
図15Cは、ナノワイヤパワーウェハの平面図である。
図15Cに示されるように、ナノワイヤパワーウェハは、シリコン基板ウェハ105全体を使用して製造されてもよい。
図15Dは
図15Cの拡大図、
図15Eは
図15Dの拡大図である。
図15Dおよび15Eは、個々のナノワイヤパワーデバイスが基板105上にアレイの形で製造されている一実施形態を示す。即ち、個々のナノワイヤパワーデバイスは平行な列および行の形で位置する。
図15Aは、単一のナノワイヤパワーデバイスの横断面図であり、
図15Bは、
図15Aのナノワイヤパワーデバイスの平面図である。
【0052】
上述したように、本発明の実施形態の1つの態様は、ナノワイヤのフィルタリング作用を通して、デバイス層内へと拡大するバッファ層に関連する欠陥をより少なくする。したがって、バッファ層の追加は排除されてもよく、あるいは、シリコン基板の場合、バッファ層(例えば、AlGaN/GaN、GaN/AlN、またはAlNのバッファ層112)の厚さは、従来のバルク窒化物層成長方法に求められるバッファ層に比べて低減されてもよい。あるいは、従来のエピタキシャルバッファ層は、デバイス絶縁を改善するため、アルミナ、ダイヤモンド、またはグラフェンなどの硬質絶縁性材料と置き換えられてもよい。このように、従来の方法に比べてコストが低減されてもよい。さらに、改善されたデバイス統合が達成されてもよい。
【0053】
それに加えて、バッファ層を含む実施形態では、ナノワイヤシード110は、ナノワイヤからの結晶転位/ナノワイヤ中のバッファインターフェースの突出および生成を制限する。その結果は、転位を有さないナノワイヤである。しかし、米国特許第7,829,443号で教示されているものなどの、ナノワイヤの成長条件によって、不純物、空孔、および化学量論的不規則性など、点欠陥を有するナノワイヤがもたらされることがある。
【0054】
したがって、上述したように、突出するナノワイヤ110は、
図15A〜15Eに示される窒化物半導体のアイランドまたはメサ115Aなど、高品質のベース要素115Aを形成するためのシードとして使用されてもよい。窒化物半導体のアイランドまたはメサ115Aは、本明細書で考察する高純度GaN材料の成長に使用されるものなどの成長条件下で成長させてもよい。さらに、窒化物半導体アイランド115Aの均質性は、ナノワイヤ110の長さによって制御される。この実施形態によって、高純度、低欠陥(例えば、低転位密度)のGaNアイランドまたはメサが、シリコン基板105上に製造されてもよい。
【0055】
この実施形態は、ナノワイヤ/バッファのインターフェースからの低いスレッディング転位密度移動を提供するので、より高い動作電圧およびより高い信頼性でナノワイヤ電子デバイスを製造することができる。また、スレッディング転位が低密度であることにより、ナノワイヤ上に優れた半絶縁性層を成長させることができ、エレクトロニクスデバイスの緊密なテンプレートとして働く。このことはさらに、従来とは異なって、例えば
図13および14に示されるような、デバイス上の頂部接点のみを使用することによって可能になるので、ナノワイヤ110および/またはベース要素115Aは、電子回路などのデバイスの能動部分に含まれない。したがって、好ましくは、各ベース要素のメサ115Aは絶縁性または半絶縁性のメサを含み、その場合、メサおよびナノワイヤ110はデバイスの能動デバイス領域の一部ではなく、メサおよびナノワイヤはそれぞれ外部回路に電気的に接続されず、各メサは他のメサに電気的に接続されない。
【0056】
さらに、方法によって、従来の厚いエピ層ではなく、薄いAlN、Al
2O
3、グラフェン、またはダイヤモンド膜のバッファ層112が可能になる。それに加えて、薄いAlNまたはダイヤモンド膜のバッファ層を使用することによって、デバイス間の絶縁が改善され、ウェハ反りが低減されるかまたはなくなる。この実施形態は、上述した実施形態および後述する実施形態のすべてと同じく、欠陥のないテンプレート成長によって特徴付けられる材料品質と、放射方向成長による低いバックグラウンド不純物レベルとを改善している。さらに、本明細書に開示する実施形態は、導電性のバッファ層を要しないので、バッファ層の成長ステップが任意選択になる。本明細書に開示するデバイスはまた、従来のデバイスに対してRF特性が改善される。それに加えて、本明細書に開示する方法では、GaNのc面を使用して高移動度トランジスタを製造することができる。
【0057】
デバイス層の向上した材料品質は、デバイスの降伏電圧とベース要素115Aのサイズ減少とに直接的関係する。これは、次いで、デバイスのデバイス密度および設計の柔軟性の改善をもたらす。降伏電圧の増加および欠陥密度の減少によって、デバイス上における電極間隔も減少してもよい。例えば、パワーHEMTおよびHFETでは、10〜50μmの電極間隔が一般的である。降伏電圧およびデバイス幅最小化を改善する追加的な手法は、
図12〜15に示されるように、傾斜した側壁を有するベース要素115Aを形成することであり、その場合、電極は少なくとも部分的に、
図13dおよび14a〜14cに示されるように、傾斜したファセット面上で互いから離れる方向に面して位置付けられ、その結果、電極間の電界が減少するとともに、高電圧での放電による降伏のリスクが減少する。
【0058】
それに加えて、デバイス層の向上した材料品質は、デバイスの電子移動度に直接関係し、したがって、デバイスの導電性、電流容量、開閉速度、およびデバイスの電力効率に直接関係する。このことはHEMTの場合に特に重要であり、その場合、2DEG中における電子移動度に対する条件が量子閉じ込め効果とドーピング原子の欠如とによって改善される。このことに係わらず、室温移動度は、標準的なGaNの高い欠陥密度に起因して、2000cm
2V
-1・s
-1未満のままである。より高い電流容量は、主として、より低いゲート幅、および高電力デバイスのために並行して必要なテンプレートの数がより少ないことと言い換えられる。
【0059】
図16A(概略平面図)および16B(概略横断面図)は、従来の平面の高電子移動度トランジスタ200(HEMT)を示す。HEMT 200は、ソース電極S、ドレイン電極D、およびゲート電極Gを含む。好ましくは、HEMTがオンチップ回路類に使用される場合、HEMTデバイス200は、シャロートレンチアイソレーション(STI)を用いて電気的に分離されるべきである。STIプロセスでは、シャロートレンチのパターンはトランジスタの製造に先立ってエッチングされる。次に、トレンチは誘電材料で充填され、それによってトレンチの両側の領域を電気的に分離する。次に、電気的に分離されたデバイスが、トレンチ間の領域に製造されてもよい。STIプロセスは、シリコンCMOS製造で広く使用されている。しかし、STIプロセスは破壊的かつ高価な傾向があるので、プロセスはGaN系のデバイスには不適切である。GaN用の化学エッチング液は効率的ではなく、十分に低い導電性を備えた十分に信頼性の高い半絶縁性の平面GaNは達成するのが難しいので、深いトレンチが必要とされる。
【0060】
対照的に、上述したように、電子デバイスのテンプレートとして作用する個々の分離したメサ115A間に絶縁を提供する、区分化したウェハまたは支持体を、本明細書に記載する実施形態の方法を用いて作成することができる。この区分化したパワーウェハは、パワーエレクトロニクス用途向けのSTIを有さないオンチップの小型システムおよび回路、ならびにエレクトロニクス全般に対する可能性を提供する。
【0061】
図17A(概略平面図)および17B(概略横断面図)は、一実施形態によるHEMT 200Aを示す。HEMT 200Aのチャネルは、上から見て全体的に六角形の形状のアイランド115Aを有する。薄いAlNまたはダイヤモンド膜のバッファ層112と、例えば、Al
2O
3、SiO
2、Si
3N
4、もしくは別の絶縁層で作られた誘電体成長マスク111とを使用することによって、絶縁が提供される。一実施形態では、1つのアイランド115につき1つのHEMTが提供される。代替実施形態では、HEMT 200Aはシリコン基板およびGaNナノワイヤを含む。
【0062】
図18A〜18Fは、HEMTの代替実施形態の概略平面図(18A、18C、18E)および個々の概略横断面図(18B、18D、18F)を示す。
図18Cおよび18Dに示される実施形態は、ソース電極Sおよびゲート電極Gを覆う大型のフィールドプレート201を含み、HEMTの効率を増大させてもよい。フィールドプレート201は、ソース電極Sに電気的に接続されるが、絶縁層301によってゲート電極Gからは絶縁される。
図18Eおよび18Fに示される実施形態は、ゲート電極Gを覆うがソース電極Sは覆わない、より小型のフィールドプレート201を含む。フィールドプレート201は、ゲート電極Gに電気的に接続されるが、絶縁層301によってソース電極Sからは絶縁される。
図18Aおよび18Bに示される実施形態はフィールドプレート201を含まない。
【0063】
図19Aは、カスコード構成302の2つのトランジスタ200Aおよび200Bを有する一実施形態の概略平面図である。これは、2つのHEMT、つまりHEMT 200Aと、その下のノーマリーオフ型MOSFET、MESFET、またはJFET 200Bとであってもよい。後者の構成によって、ノーマリーオフ型回路を、HEMTのみを用いて作るのは難しいノーマリーオン型にすることが可能になる。
図19Bは、
図19Aに示されるカスコード型トランジスタの等価回路を示す(第1のソース電極S1が第2のゲート電極G2に接続され、第1のドレインD1が第2のソースS1に接続される)。あるいは、複数のHEMTを並列に接続することができる。さらに、
図19Cに示されるように、複数のHEMTを同じデバイス内で並列かつカスコード結合で接続することができる。
【0064】
図20A〜20Cは、複数のHEMT 200Aが共通のゲート線GLを用いて接続されている代替実施形態を示す。即ち、HEMTのゲート電極Gは電気的に接続されている。図示されるように、
図20Aの実施形態は、
図18Aおよび18Bに示される実施形態の4つのHEMT 200Aを含む。しかし、より少数またはより多数のHEMTが接続されてもよい。
図20Bに示される実施形態は、
図18Cおよび18Dに示される実施形態のHEMTを含み、
図20Cに示される実施形態は、
図18Eおよび18Fに示される実施形態のHEMTを含む。
【0065】
図21Aは別の実施形態を示す。この実施形態では、HEMTは、ゲート電極Gが共通のゲート線GLを用いて接続され、ドレイン電極Dが共通のドレイン線DLを用いて接続され、ソース電極Sが共通のソース線SLを用いて接続されるように構成される。
図21Bは、
図21Aに示されるデバイスに対する等価回路を示す。個々のHEMT 200Aは、フィールドプレート201を含んでも含まなくてもよい。即ち、HEMTは、
図18A〜18Gに示されるように、大型のフィールドプレート201もしくは小型のフィールドプレート201を含んでもよく、またはフィールドプレートを含まなくてもよい。
【0066】
図22Hは、一実施形態によるDC/AC電力変換器210を示し、
図22A〜22Gはその構成要素を示す。
図22Hに示されるデバイスは、3つの単相変換器回路Ph1、Ph2、Ph3を含む三相変換器である。電力変換器210はカスコード結合と並列結合の両方を含む。電力変換器210の単相変換器回路Ph1、Ph2、Ph3は、
図22Aおよび22Bに示されるようなナノワイヤダイオード306と、
図22Eおよび22Fに示されるようなナノワイヤHEMT 200Aとを含む。代替実施形態では、電力変換器210は、より大型のフィールドプレート201と共に、
図22Cおよび22Dに示されるようなナノワイヤHEMT 200Aを含んでもよい。
図22Gは、直列で(即ち、「ソース」Sから「ドレイン」Dまで)接続された複数のダイオード306を示す。
【0067】
本発明の実施形態による方法は、2つを超える周期表の元素、例えばInGaNなどの三元組成物を含む構造にも適用可能である。歪みは、
図5aに示されるような、GaNナノワイヤ510がInGaNシェル層516によって包囲されている、In含量の高いInGaN/GaNコアシェル構造を作る場合の重大な問題である。ナノワイヤ511にもInGaNを使用することにより、
図5bに示されるような、InGaNシェル層の歪みが低減されるであろう。しかし、InGaNは熱的に不安定な材料であり、In−N結合の解離を防ぐためにNH
3のフローが必要とされる。したがって、分裂されたNH
3のフローを利用する従来技術の方法は、InGaNナノワイヤの作成に適さないことがある。InGaNの成長温度におけるNH
3の割込みステップ(interruption step)で、In−N結合が解離し、Inが結晶から脱着する場合があることが示唆される。本発明によって得られるような継続的なナノワイヤ成長の使用は、In含量がより高いInGaNナノワイヤの成長を支援する。
【0068】
従来のMOCVDまたはMOVEP装置は、ナノワイヤ成長段階とその直後の平面成長段階とを含む実施形態による方法を実施するのに最適ではないことがある。ガス供給システムにおける技術的な制限により、該ガス供給システムは、ナノワイヤ成長段階および平面成長段階それぞれと関連付けられる低いV/III比と高いV/III比の両方を、求められる精度で提供できないことがある。
図6に概略的に示される、本発明の一実施形態による成長装置は、サンプル615が中に配置される成長チャンバ610を備える。III族供給システム622は、III族源620および質量流量コントローラ(MFC)を備える。V族供給システムは、低流量MFC 633を備える低原料流量(low source flow rate)のV族供給ライン634と、それとは別個の、高流量MFC 631を備える高原料流量のV族供給ライン632とに接続されたV族源630を備える。低流量MFC 633は、ナノワイヤ成長段階と関連付けられる、例えばNH
3の低流量を扱うように適合され、高流量MFC 631は、平面成長段階と関連付けられる高流量を扱うように適合される。2つの別個のV族供給ラインを切り換えて、ナノワイヤ成長段階から平面成長段階へと進むことによって、2つの異なる段階における流量の迅速な変化を求められる精度で行うことができる。求められる流量を得ることが2つのMFCでは不可能な場合、当然ながら、装置は、より多数の別個の供給ラインを備えてもよい。
【0069】
本発明の方法の適用可能性は以下の実施例によって実証され、それらの実施例は非限定例と見なすべきである。
【0070】
図2a,a)〜c)は、選択領域成長によるGaNナノワイヤの製造手順を示すことができる。サファイア、SiC、またはSi上のGaNエピタキシャル膜、およびさらには自立GaNを出発基板として使用し、その上に、PECVDによってSiN
xの層(厚さ30nm)を堆積させた(a)。これに続いて、EBLおよびRIEによって、ドットパターン化したGaN開口部(直径約100nm)のアレイを作った(b)。開口部間の間隔は0.5〜3.2μmの範囲であった。次に、そのように処理したサンプルを、自家製造の水平MOCVDチャンバに挿入して、GaNナノワイヤを成長させた(c)。成長プロセスは初期段階を含み、その際、75sccmの高いNH
3流量を用いて、5分以内で900〜1200℃の成長帯まで温度を上昇させた。基板には、成長温度で1分間アニーリングを施す。後に続くナノワイヤ成長段階で、NH
3流量を3.0〜0.2sccmまで低減させて、TMG(トリメチルガリウム)をチャンバに導入しながら成長を開始させた。この作業を通して、0.12〜1.2μモル/分の低いTMG流量を使用した。
【0071】
実験において確認された、本発明の実施形態によれば、NH
3の流量は開口部からの成長形態を制御する重要な因子である。
図7a〜7bは、3.0sccmのNH
3流量で成長させたサンプルのSEM像を示す。平面図の
図7aから、報告されたものと同一である、開口部からの選択成長を見ることができる。ここで明確にする必要があるのは、成長後の横方向のサイズが1.0μmよりも大きく、これは、約100nmの開口部サイズよりもはるかに大きいという点である。したがって、GaNが開口部から伸びた後の横方向成長は相当なものである。
図7bは、サンプルを35°傾けて撮ったSEM像であり、得られたものがワイヤではなくピラミッドであったことを明示している。ピラミッドは、6つの等価な(1101)面によって境界が定められている。(1101)面のダングリングボンド密度は16.0/nm
2であり、これは(1100)面(12.1/nm
2)および(0001)面(11.4/nm
2)よりも高い。この視点から見て、(1100)面および(0001)面は、GaNが開口部から伸びた後に出現するものと予想される。しかし、
図2はその逆を示している。つまり、可能な説明は、(1101)面がN分極を有するということであり、そのことによって、NH
3流量が高いときに安定する。これに基づいて、NH
3の流量3sccmは、実際には、(1100)面によってファセットが刻まれたGaNワイヤを成長させるにはまだ高い。
図8a〜8bは、1.0sccmのNH
3流量で成長させたサンプルのSEMによる特性描写を示す。平面図の画像である
図8aは、
図7aに類似している。しかし、35°傾けた画像である
図8bは異なっており、即ち、(1100)面の垂直ファセットがピラミッドの先端の下から出現し始めている。
【0072】
これは有望な点であり、N極性化した(1101)面が、ピラミッドの成長形態の境界を定めることができなくなり始めていることを示している。これにも係わらず、横方向のサイズは開口部の1つよりもはるかに大きいままであり、
図7に示されるものと同じである。
【0073】
図9a〜9bは、NH
3流量をさらに0.5sccmまで低減させた成長結果を示す。平面図の画像(a)および35°傾けた画像(b)は両方とも、横方向で縮小しているサイズを示しているが、それらは約100nmの開口部サイズよりも大きいままである。傾けた画像の
図9bは垂直のファセットも示している。NH
3流量を0.2sccmまで低下させるにつれて、
図10a〜10c((a)は平面図、(b)および(c)は45°傾けたもの)に示されるように、真のGaNナノワイヤが合成され始めた。100nmよりも大きいいくつかの結晶子が存在するが、開口部のほとんどは、開口部のサイズと同じ100nmの直径を有するワイヤへと発展する。したがって、NH
3流量が0.2sccmのとき、横方向成長も良好に制御される。気相成長の場合、過飽和の程度によって優勢な成長形態が決まるが、即ち、低い過飽和はナノワイヤの成長に必要であり、一方で中程度の過飽和はバルク結晶の成長に対応する。高い過飽和では、気相中の核生成によって粉末が形成される。これによれば、NH
3流量を0.2sccmまで低減させることによって過飽和が有効に低下し、それによって横方向成長が制約され、成長がアキシャル方向でのみ起こるようになるという説明が理にかなっている。ここで、成長はすべて、成長プロセス全体の間、TMGおよびNH
3を同時かつ継続的にチャンバに流入させ続けながら実施された。しかし、従来技術で報告された作業は、ナノワイヤ成長を得るためにパルス化成長モードが必要であったことを示しているものと思われる。ここで提示した結果に基づいて、継続的な原料流量を用いてナノワイヤ成長を達成できることは明白である。GaNナノワイヤを製造するためには、低い過飽和が達成されるように、または言い換えればマイグレーションエンハンスト成長を達成するため、NH
3流量を調節すべきである。
【0074】
Cp
2Mgは垂直側壁のファセット形成を向上させることが示されてきた。表1に関係する
図11a〜cには、Cp
2Mgとしてのドーピング源が、潜在的に、この作用によってナノワイヤ成長条件を安定化させることができることが示されている。また、過飽和/NH
3流量を増加させることによって、ピラミッド形の成長を再確立できることがさらに示されている。これは、横方向成長段階において、ナノワイヤの横方向成長を提供するのに利用することができる。
【0076】
本発明の方法によって製造したナノワイヤは、広範囲のデバイスに、例えばダイオード、トランジスタ、および他のパワー電子デバイスに利用することができる。窒化物系のエレクトロニクスは、高圧および高温の用途において特に興味深い。
【0077】
結論として、NH
3流量を減少させることによって、過飽和を制御することによるGaN開口部からの選択領域成長を使用して、MOCVDによってGaNナノワイヤを製造することができる。提示した結果では、パルス成長は必須の方法ではないが、NH
3流量を十分に低減することでもナノワイヤを作成できることが示されている。
【0078】
本発明の方法を、GaN、NH
3、およびTMGを非限定例として用いて記載してきた。当業者であれば、方法の原理は、例えばAlInGaN、III族NA、およびIII族NPなど、インジウムまたはアルミニウムを含む、他の半導体窒化物系のナノワイヤの成長に適用可能であることを理解する。NH
3は、便利で十分に確立された窒素源であるが、他の原料、例えばt−ブチルアミンN(C
4H
9)H
2、1,1−ジメチルヒドラジン(CH
3)
2NNH
2、およびt−ブチルヒドラジン(CH
3)
3CNHNH
2が知られており、それらを利用することができる。III−V族半導体の選択に応じて、異なる原料が利用可能である。異なる原料は、低い過飽和を達成するための、流量の異なる適正値に結び付き、したがって、V/III比を適宜調節することが必要になる。かかる調節は、上述の教示を所与として当業者が行うことができる。
【0079】
完成デバイスにその成長基板105が残っている、方法およびデバイスについて記載してきた。当業者であれば、成長基板105の全体もしくは一部が除去されるか、または別の材料(例えば、メサ115Aの上方もしくは下方に取り付けられるハンドル基板)に置き換えられてもよいことを理解する。電気的絶縁が保たれる限り、ハンドル基板材料は熱伝導性材料基板を、例えばグラフェンまたはCuもしくはAlなどの金属を含む。
【0080】
米国特許第7,829,443号となった、2008年12月11日出願の米国特許出願第12/308,249号の全内容を、参照により本明細書に組み込む。