特許第6197007号(P6197007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197007
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】痛み治療用の医薬配合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20170904BHJP
   A61K 31/13 20060101ALI20170904BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170904BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170904BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20170904BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   A61K31/137
   A61K31/13
   A61P43/00 121
   A61P29/00
   A61P25/04
   A61P25/06
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-151003(P2015-151003)
(22)【出願日】2015年7月30日
(62)【分割の表示】特願2013-514579(P2013-514579)の分割
【原出願日】2011年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-232015(P2015-232015A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2015年8月7日
(31)【優先権主張番号】10006202.5
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390035404
【氏名又は名称】グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(72)【発明者】
【氏名】シーネ・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ブロムス−フンケ・ペートラ
【審査官】 鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/025931(WO,A1)
【文献】 特開2003−201254(JP,A)
【文献】 特表2009−539792(JP,A)
【文献】 特表2006−500395(JP,A)
【文献】 特表2002−506047(JP,A)
【文献】 特表2002−520363(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/067703(WO,A1)
【文献】 Drugs,1992年,Vol.44 No.3,pp.279-292
【文献】 Neuropharmacology,1991年,Vol.30 No.6,pp.651-656
【文献】 Neuropharmacology,1999年,Vol.38,pp.735-767
【文献】 Pharmacol. Rep.,2008年,Vol.60,pp.149-155
【文献】 J. Pharmacol. Exp. Ther.,2007年,Vol.323 No.1,pp.265-276
【文献】 Brain Res. Bull.,2006年,Vol.69,pp.204-213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/137
A61K 31/13
A61P 25/04
A61P 25/06
A61P 29/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分として、
(a)次式(I’):
【化1】
の(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール又はその塩酸塩付加塩と
(b)NMDAアンタゴニストとしてメマンチン又はその塩酸塩付加塩
を含む医薬配合物を含有する医薬組成物
【請求項2】
前記成分(a)及び(b)は、前記医薬配合物が患者への投与に対して相乗効果を発揮する重量比で存在する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
請求項1または2に記載の医薬配合物と、任意に1種以上の助剤とを含む医薬組成物
【請求項4】
請求項1または2に記載の医薬配合物と、任意に1種以上の助剤とを含む製剤
【請求項5】
経口投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮内投与、経皮投与、くも膜下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経粘膜投与、皮下投与又は直腸投与に好適であることを特徴とする、請求項4に記載の製剤
【請求項6】
前記成分(a)及び(b)の一方又は両方が放出制御形態で存在する、請求項4又は5に記載の製剤
【請求項7】
前記医薬配合物の成分(a)及び成分(b)が同時に又は連続的に投与され、ここで、該化合物(a)を該化合物(b)の前又は後に投与されてよく、該化合物(a)又は(b)が同一の又は異なる投与経路により投与される、請求項4〜6のいずれか1つに記載の製剤
【請求項8】
痛みの治療用の、請求項1〜3のいずれか1つに記載の医薬組成物
【請求項9】
前記痛みが炎症性痛、神経障害性痛、急性痛、慢性痛、内臓痛、偏頭痛の痛み及び癌の痛みから選択される、請求項8に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記痛みが炎症性痛である、請求項9記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分として、(a)少なくとも1種の3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール化合物と、(b)少なくとも1種のNMDAアンタゴニストとを含む配合物、該配合物を含む医薬処方物及び製剤、並びに痛み、例えば炎症性の痛み又は神経障害性の痛みの治療方法であって、成分(a)及び(b)を哺乳類に同時に又は連続的に投与し、ここで、成分(a)を成分(b)の前又は後に投与することができ、また、成分(a)又は(b)を同一の又は異なる投与経路により該哺乳類に投与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性及び急性の疼痛状態を治療することは医薬において極めて重要である。現在、専らオピオイド系ではなく非常に効果的な追加の疼痛治療に対して世界的な需要がある。患者指向で意味のある疼痛状態の治療(これは、患者にとっては痛みの治療の成功と満足を意味するものと受け取られる)に向けた行動に対する差し迫った要望は、応用鎮痛薬及び痛覚に関する基礎研究の分野において近年見られる多数の学術論文に記録されている。
【0003】
たとえ、近年痛みの治療に使用されている鎮痛薬、例えばオピオイド、NA−及び5HT−再摂取阻害剤、NSAIDS及びCOX阻害剤が鎮痛に有効であるにしても、副作用が起こる場合もある。2つの異なる薬剤を含む物質の組合せは、投与に対して相乗治療効果を示す場合がある。このような相乗効果のため、全投与量及びそれに伴う望ましくない副作用の危険性を低減できる。3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノールを含む配合物の例は、WO2007/128412、WO2007/128413及びWO2010/025931に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/128412号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/128413号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2010/025931号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、特性の改善した配合物をさらに見出すことが本発明の目的であった。また、痛みの治療に好適で、かつ、好ましくは、効果的な投与量で投与されたときに個々の成分と比較して望ましくない副作用が少ない配合物をさらに見出すことも本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(a)少なくとも1種の3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール化合物と(b)少なくとも1種のNMDAアンタゴニストとを含む配合物が鎮痛効果を示すことが分かった。これらの成分が患者への投与により相加又は相乗治療効果が観察される重量比で該組成物に存在する場合には、全投与量を低下させることができ、その結果、望ましくない副作用が生じるのが少なくなる。
【0007】
したがって、本発明は、成分として
(a)次式(I):
【0008】
【化1】
の3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノールであって、任意にその純粋な立体異性体の一つ、特にエナンチオマー若しくはジアステレオマーの形態、ラセミ体又はその立体異性体の混合物、特に任意の混合比のエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの形態にあるもの、或いは任意の対応するその酸付加塩と、
(b)少なくとも1種のNMDAアンタゴニストと
を含む医薬配合物に関する。
【0009】
本発明の配合物の一実施形態では、式(I)の化合物は、
(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール、
(1S,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール、
(1R,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール、
(1S,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール、
及びそれらの任意の混合物
から選択される。
【0010】
本発明の配合物の別の実施形態では、式(I)の化合物は、
(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール、及び
(1S,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール、並びに
それらの任意の混合物
から選択される。
【0011】
さらに別の実施形態では、本発明の配合物は、
(a)次式(I’)の化合物(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール
【0012】
【化2】
又はその酸付加塩と、
(b)少なくとも1種のNMDAアンタゴニストと
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
式(I)の3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール化合物、その立体異性体及びその対応する塩並びにそれらの製造方法は、例えば、米国特許第6,248,737B1号によりよく知られている。その記載の各部分は、引用により含められ、本明細書の一部をなす。
【0014】
ここで使用するときに、成分(a)の定義には、3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール、その誘導体及びその立体異性体(任意の可能な形態)が含まれ、それにより、特に溶媒和物及び多形体、塩、特に酸付加塩並びに対応する溶媒和物及び多形体が含まれる。
【0015】
ここで使用するときに、誘導体という用語には、特に、活性物質のエーテル及びエステルといったプロドラッグが含まれる。所定の物質のプロドラッグを選択し製造するための好適な方法は、例えば「Textbook of Drug Design and Discovery」,第3版,2002,第14章,第410〜458頁、著者:Krogsgaard−Larsen外,Taylor及びFrancisに記載されている。該文献の各部分は、引用により含められ、本明細書の一部をなすものとする。
【0016】
成分(a)がエナンチオマーの混合物として存在する場合には、かかる混合物は、ラセミ型又は非ラセミ型のエナンチオマーを含むことができる。非ラセミ型は、例えば、エナンチオマーを60±5:40±5、70±5:30±5、80±5:20±5又は90±5:10±5の比で含有することができるであろう。
【0017】
成分(a)に従う3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール化合物及びその立体異性体は、本発明の医薬組成物中において酸付加塩の形態で存在することができ、この場合、このような付加塩を形成することのできる好適な酸を使用することができる。
【0018】
3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノールを、例えば好適な酸との反応により対応する付加塩に転化させることは、当業者に周知の態様で達成できる。好適な酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、蟻酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、マンデル酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸が挙げられるが、これらに限定されない。塩形成は、好ましくは溶媒中、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、酢酸アルキル、アセトン及び/又は2−ブタノン中で達成される。さらに、トリメチルクロロシランの水溶液も塩酸塩の調製に好適である。
【0019】
N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体は、グルタミン酸神経伝達物質−受容体系、いわゆるNMDA−受容体/イオンチャンネル複合体の一部である。このものは、このイオンチャンネルの内部及び外部に位置する異なる結合部位を有する。NMDA受容体アンタゴニスト又は単にNMDAアンタゴニストは、このような結合部位と相互作用し、かつ、該結合部位に関連する少なくとも部分的阻害特性を発揮する物質である。
【0020】
NMDAアンタゴニストは、当業者に周知であり、特に、N含有ホスホン酸、例えばノルバリン(AP5)、D−ノルバリン(D−AP5)、4−(3−ホスホノプロピル)ピペラジン−2−カルボン酸(CPP)、D−(E)−4−(3−ホスホノプロプ−2−エニル)ピペラジン−2−カルボン酸(D−CPPene)、cis−4−(ホスホノメチル)−2−ピペラジンカルボン酸(Selfotel、CGS19755)、SDZ−220581、PD−134705、LY−274614及びWAY−126090;キノリン酸、例えばキヌレン酸、7−クロロキヌレン酸、7−クロロチオキヌレン酸及び5,7−ジクロロキヌレン酸、それらのプロドラッグ、例えば4−クロロキヌレニン及び3−ヒドロキシキヌレニン;4−アミノテトラヒドロキノリンカルボキシレート、例えばL−689,560;4−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン、例えばL−701,324;キノキサリンジオン、例えばリコスチネル(ACEA−1021)及びCGP−68,730A;4,6−ジクロロインドール−2−カルボキシレート誘導体、例えばMDL−105,519、ガベスチネル(GV−150,526)及びGV−196,771A;三環式化合物、例えばZD−9,379及びMRZ−2/576、(+)−HA−966、モルフィナン誘導体、例えばデキストロメトルファン及びデキストロファン;ベンゾモルファン、例えばBIII−277CL;他のオピオイド、例えばデキストロプロポキシフェン、ケトベミドン、デキストロメタドン及びD−モルヒネ;アミノアダマンタン、例えばアマンタジン及びメマンチン;アミノアルキルシクロヘキサン、例えばMRZ−2/579;イフェンプロジル及びイフェンプロジル様化合物、例えばエリプロジル及びPD−196,860;イミノピリミジン;又は他のNMDAアンタゴニスト、例えばニトロプルシド、D−シクロセリン、1−アミノシクロプロパンカルボン酸、ジゾシルピン(MK801)及びそのアナログ、フェンシクリジン(PCP)、ケタミン((R,S)−2−(2−クロロフェニル)−2−(メチルアミノ)−1−シクロヘキサノン)、(R)−ケタミン、(S)−ケタミン、ラマセミド及びその脱グリシニル代謝物質FPL−12,495、AR−R−15,896、メタドン、スルファゾシン、AN19/AVex−144、AN2/AVex−73、ベソンプロジル、CGX−1007、EAB−318、フェルバメート及びNPS−1407が挙げられるが、これらに限定されない。NMDAアンタゴニストは、例えば、「Analgesics」,H.Buschmann、T.Christoph,E.Friderichs,C.Maul,B.Sundermann著,2002,Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA,ドイツ国バインハイム,特に第389〜428頁に開示されている。その記載の各部分は、引用により含まれ、本明細書の一部をなすものとする。
【0021】
ケタミン及びメマンチンといったいくつかのNMDAアンタゴニストは、神経障害性の痛みの治療に有用であることが知られている。本発明の一実施形態では、これらのNMDAアンタゴニストの1種以上を成分(b)として使用する。
【0022】
また、NMDAアンタゴニスト成分の立体異性体、塩、溶媒和物、多形体及び誘導体並びにこれらのうち任意のものの混合物も含まれる。
【0023】
本発明の配合物の別の実施形態では、成分(b)のNMDAアンタゴニストは、メマンチン又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩である。
【0024】
本発明の配合物のさらなる実施形態では、成分(b)のNMDAアンタゴニストは、ケタミン又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩である。
【0025】
本発明の配合物のさらに別の実施形態では、成分(b)のNMDAアンタゴニストは、(R,S)−ケタミン又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩である。
【0026】
本発明の配合物のさらに別の実施形態では、成分(b)のNMDAアンタゴニストは、(S)−ケタミン又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩である。
【0027】
本発明の別の特定の実施形態は、(a)(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩と、(b)メマンチン又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩とを含む配合物である。
【0028】
本発明のさらに別の特定の実施形態は、(a)(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩と、(b)ケタミン又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩とを含む配合物である。
【0029】
本発明のさらなる実施形態は、(a)(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩と、(b)(R,S)−ケタミン又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩とを含む配合物である。
【0030】
本発明のさらに別の特定の実施形態は、(a)(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール、又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩と、(b)(S)−ケタミン又はその酸付加塩、例えば塩酸塩付加塩とを含む配合物である。
【0031】
いくつかのNMDAアンタゴニストは、官能基、例えば、式(I)の3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール成分と塩を形成し、それによって成分(a)と(b)の両方を全く同じ塩に取り入れることのできるカルボキシ基などの酸性基を有する。
【0032】
すなわち、本発明の別の実施形態では、本発明の配合物は、成分(a)及び(b)を、これら2種の成分から形成された塩の形態で含む。このような塩形成は部分的であってもよく、すなわち、本発明の組成物はこれらの成分の一方又は両方をそれらの非塩の形態でも含み、或いは、塩形成は本質的に完全であってもよい。
【0033】
成分(a)及び(b)の両方は、本発明の配合物の一部として、当業者に知られているそれらの最大1日投与量までの量で投与できる。
【0034】
メマンチンは、好ましくは、1〜20mgの1日投与量で患者に投与できる。
【0035】
ラセミケタミンは、好ましくは、0.1〜10mg/kgの1日投与量で患者に投与でき、ケタミンのS−エナンチオマーは、好ましくは、1〜10mg/kgの1日投与量で患者に投与できる。
【0036】
化合物(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノールは、好ましくは、25〜1000mgの1日投与量、特に好ましくは50〜800mgの投与量、さらに好ましくは100〜600mgの投与量で患者に投与できる。
【0037】
本発明の配合物の一部として投与されるときに、成分(a)及び/又は成分(b)の1日当たりの投与量は、それぞれの最大1日投与量未満とすることができ、例えば、成分のそれぞれについて、75±15重量%、75±10重量%、75±5重量%、50±15重量%、50±10重量%、50±5重量%、25±15重量%、25±10重量%及び25±5重量%とすることができる。
【0038】
本発明の別の実施形態では、本発明の配合物は、成分(a)及び(b)を本質的に等効果比で含有することができる。
【0039】
本発明の配合物のさらなる実施形態では、成分(a)及び(b)は、得られる組成物が患者への投与により相加又は相乗効果を発揮する重量比で存在する。好適な重量比は、当業者に周知の方法で決定できる。
【0040】
また、成分(a)と(b)の両方は、本発明の配合物中において、等効果比から逸脱した比率で存在することもできる。例えば、これらの成分のぞれぞれは、等効果量の1/50〜等効果量の50倍、等効果量の1/20〜等効果量の20倍、等効果量の1/10〜等効果量の10倍、等効果量の1/5〜等効果量の5倍、等効果量の1/4〜等効果量の4倍、等効果量の1/3〜等効果量の3倍、又は等効果量の1/2〜等効果量の2倍の範囲で存在することができるであろう。
【0041】
本発明の別の実施形態では、成分(a)及び(b)は、痛み、例えば、神経障害性の痛みを治療するための特定の投薬計画で投与できる。成分(a)及び(b)は、互いに同時に又は連続的に、それぞれの場合において同じ又は異なる投与経路により投与できる。
【0042】
したがって、本発明の別の態様は、痛みの治療方法であって、成分(a)及び(b)を哺乳類に同時に又は連続的に投与し、ここで、成分(a)を成分(b)の前又は後に投与することができ、しかも成分(a)又は(b)を同一の又は異なる投与経路により哺乳類に投与することを特徴とする方法である。
【0043】
ここで使用するときに、痛みという用語には、炎症性の痛み、神経障害性の痛み、急性の痛み、慢性の痛み、内臓痛、偏頭痛の痛み及び癌の痛みが含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
好適な投与経路としては、経口投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮内投与、経皮投与、くも膜下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経粘膜投与、皮下投与及び直腸投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の配合物は、毒性学的に安全であるため、哺乳類、特に幼児、子供及び成人を含めたヒトの治療に好適である。
【0046】
したがって、さらなる態様では、本発明は、上記本発明の配合物と1種以上の助剤とを含む医薬組成物に関する。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、上記本発明の配合物と1種以上の助剤とを含む医薬製剤に関する。
【0048】
一実施形態では、本発明の医薬製剤は、経口投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮内投与、経皮投与、くも膜下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経粘膜投与、皮下投与又は直腸投与するのに好適である。
【0049】
本発明の処方物及び製剤は、助剤、例えば、キャリア、充填剤、溶媒、希釈剤、着色剤及び/又は結合剤を含有することができる。助剤の選択及び助剤の使用量は、例えば、薬剤を、例えば皮膚、粘膜又は眼の感染に対して、例えば経口、静脈内、動脈内、腹腔内、皮内、経皮、筋肉内、鼻腔内又は局所に投与すべき方法に依存する。
【0050】
本発明において好適な助剤は、特に、生薬処方物の製造に有用な、当業者に知られている任意の物質である。好適な助剤の例としては、水、エタノール、2−プロパノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グルコース、フルクトース、ラクトース、サッカロース、デキストロース、糖蜜、澱粉、加工澱粉、ゼラチン、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、シェラック、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン、パラフィン、ワックス、天然及び合成ガム類、アカシアガム、アルギネート、デキストラン、飽和及び不飽和脂肪酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、グリセロールステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、食用油、ゴマ油、ココナツ油、ピーナツ油、大豆油、レシチン、乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン及びポリプロピレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビン酸、安息香酸、クエン酸、アスコルビン酸、タンニン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化チタン、二酸化チタン、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸カルシウム、炭酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、臭化カリウム、沃化カリウム、タルカム、カオリン、ペクチン、クロスポビドン、寒天及びベントナイトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
錠剤、発泡錠、チューイングタブレット、糖衣錠、カプセル剤、点滴剤、液剤又はシロップ剤の形態の医薬処方物(製剤)は、例えば、経口投与に好適である。また、経口医薬処方物は、適宜錠剤に圧縮され、カプセルに充填され、小袋に充填され又は好適な液体媒体に懸濁される顆粒、ペレット、球状物、結晶などの多粒子の形態であることもできる。また、経口医薬処方物は、溶腸コーティングを備えることもできる。
【0052】
非経口投与、局所投与及び吸入投与に好適な医薬処方物としては、溶液、懸濁液、容易に再構成できる乾燥製剤及びスプレー剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
座剤は直腸投与に好適な医薬処方物である。溶解状態の被覆剤、例えば、皮膚浸透を促進するための薬剤が随意に添加されたパッチ剤の処方物は、経皮投与に好適な処方物の例である。
【0054】
成分(a)及び(b)の一方又は両方は、本発明の医薬処方物中において、少なくとも部分的に放出制御の形態で存在することができる。さらに、該成分の任意の放出制御/即時放出の組合せが本発明の医薬処方物に存在していてもよい。例えば、該成分の一方又は両方は、例えば、経口、直腸又は経皮投与された場合、本発明の処方物から所定の遅れをもって放出できる。このような処方物は、それぞれ1日当たり1回、1日当たり2回摂取すればよい「1日1回」又は「1日2回」製剤に特に有用である。好適な放出制御材料は、当業者に周知である。
【0055】
本発明の医薬処方物は、例えば「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,A.R.Gennaro(著),第17版,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1985)、特に第8部の第76〜93章に記載されるような、医薬処方物の従来技術においてよく知られている材料、手段、装置及び方法を使用して製造できる。
【0056】
例えば錠剤などの固体医薬処方物を得るために、該医薬組成物の成分は、上記成分を均一な分布状態で含有する固体組成物を形成させるために、製薬キャリア、例えばトウモロコシ澱粉、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、タルカム、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又は製薬上許容できるガム類などの従来の錠剤成分及び製薬希釈剤、例えば水により造粒できる。用語「均一な分布」とは、上記成分が組成物全体にわたって均一に分布し、その結果、該組成物が錠剤、丸剤又はカプセル剤などといった、等効果的な単位用量形態に容易に分割できるようになることを意味する。その後、この固体組成物を単位用量形態に分割する。また、本発明に従う医薬組成物の錠剤又は丸剤は、用量剤形に放出制御を与えるために、様々な方法で被覆又は混練可能である。
【0057】
上記成分の一方が他方の成分より前、例えば少なくとも30分又は1時間前に予め放出されるべき場合には、対応する放出特性を有する医薬処方物を製造することができる。このような処方物の例は、一方の成分の遅延放出を、それよりも早く放出される他方の成分を自身が含有するコーティングにより達成するための浸透圧誘導放出システムである。経口投与に特に好適なこの種の放出システムにおいて、該放出システムの表面の少なくとも一部、好ましくは全て、好ましくは放出媒体と接触する部分は、半透過性であり、好ましくは半透過性のコーティングを備えるため、その(それらの)表面は放出媒体に対して透過性であるが、ただし、実質的に、好ましくは完全に、活性成分、その(それらの)表面及び/又は任意に活性成分を放出するための少なくとも1個の開口を有するコーティングには不透過性である。さらに、正確には、放出媒体と接触するその(それらの)表面は、他方の成分を含有しかつ放出するコーティングを備える。これは、好ましくは、放出開口と、浸透性医薬組成物コアと、半透過性膜と、膨張により圧力をかける重合体部分とを有する錠剤型のシステムを意味する。この種のシステムの好適な例は、OROS(登録商標)という商品名で米国ALZA Corporationから流通されているシステム、特に、OROS(登録商標)Push−Pull(商標)System、OROS(登録商標)Delayed Push−Pull(商標)System、OROS(登録商標)Multi−Layer Push−Pull(商標)system、OROS(登録商標)Push−Stick System、また、特定の場合にはL−OROS(商標)である。
【0058】
浸透圧誘導放出システムの具体例は、例えば、米国特許第4,765,989号、同4,783,337号及び同4,612,008号に記載されている。その個々の内容は引用により含められ、本発明の開示の一部をなすものとする。
【0059】
好適な医薬処方物のさらなる例は、Penwest Pharmaceuticalsが開発した製品(例えば、TimeRXとして)などのゲルマトリックス錠剤である。好適な例は、米国特許第5,330,761号、同5,399,362号、同5,472,711号及び同5,455,046号にある。その個々の内容は引用により含められ、本発明の開示の一部をなすものとする。特に好適なのは、例えば、一方の成分がマトリックスの外側領域(放出媒体と最も迅速に接触する部分)に分布することができ、そして他方の成分がマトリックスの内部に分布する、薬剤活性組成物が不均質に分布した遅延マトリックス処方物である。外側マトリックス層は、放出媒体と接触すると、最初に(かつ迅速に)膨張し、まず第1成分を放出し、その後他方の成分を有意に(より)遅延して放出する。好適なマトリックスの例としては、製薬上許容できるマトリックス形成成分として1種以上の親水性又は疎水性重合体を1〜80重量%有するマトリックスが挙げられる。好適なマトリックスのさらなる例は、米国特許第4,389,393号から推定できる。その個々の内容は引用により含められ、本発明の開示の一部をなす。
【0060】
本発明の薬剤活性配合物の患者への投与量は、当業者に周知の様々な要因、例えば、患者の体重、投与経路又は病気の重症度に応じて変更できる。
【0061】
別の態様では、本発明は、痛みの治療用の上記配合物であって、該痛みが、好ましくは炎症性の痛み、神経障害性の痛み、急性の痛み、慢性の痛み、内臓痛、偏頭痛の痛み及び癌の痛みから選択されるものに関する。
【0062】
さらなる態様では、本発明は、上記本発明の配合物の痛みの治療のための使用に関するものであり、ここで、該痛みとしては、好ましくは炎症性の痛み、神経障害性の痛み、急性の痛み、慢性の痛み、内臓痛、偏頭痛の痛み及び癌の痛みが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
別の態様では、本発明は、上記本発明の配合物の、痛みの治療用の薬剤を製造するための使用に関するものであり、ここで、該痛みとしては、好ましくは炎症性の痛み、神経障害性の痛み、急性の痛み、慢性の痛み、内臓痛、偏頭痛の痛み及び癌の痛みが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
別の態様では、本発明は、哺乳類、好ましくはヒトにおける痛みの治療方法であって、上記本発明の配合物の有効量を該哺乳類に投与することを含む方法に関するものである。
【0065】
また、本発明は、配合物又は該配合物の個々の成分を含む配合物又は製剤を含むキットに関するものでもある。
【実施例】
【0066】
薬理学的方法:
ラットでのランダルセリット試験
本発明の医薬組成物の相加効果(相乗効果)に至る成分(a)及び(b)の重量比は、炎症性の痛み又は神経障害性の痛みのモデルにおいて機械的痛覚過敏を評価するのに適合できる機械的痛覚試験である、Arch.Int.Pharmacodyn.,1957,111:409〜419に記載されたランダル及びセリットの試験により決定できる。この文献の各部は引用によりここに含まれ、本明細書の一部をなす。
【0067】
ガラギナン溶液(蒸留水中0.5%)1mLをラットの後足に足裏内注射することによって急性炎症を誘導する。機械的侵害受容閾値を、痛覚計(イタリア国Ugo Basile)を使用して4時間後に測定する。この装置は、機械力を経時的な直線的増加で生じさせる。この機械力を、炎症したラットの後足の背面に、円形の先端(2mmの先端直径)を有する円錐形の針により加える。この侵害閾値は、ラットが声をあげる力(グラム)であると定義される(カットオフ力250g)。機械的侵害受容閾値を、薬剤又はビヒクルの投与後の様々な時点で測定する。試験した物質の抗侵害受容作用及び/又は抗痛覚過敏作用を最大推定効果のパーセンテージとして表す(%MPE)。群のサイズはn=12である。
【0068】
成分(a)及び(b)を含む本発明の医薬組成物の相乗効果に関する結果の分析を、いわゆる一定比率の配合物の理論添加ED50値と実験的に決定したED50値との統計比較により実施する(Tallarida JT、Porreca F及びCowan A.Statistical analysis of drug−drug and site−site interactions with isobolograms,Life Sci 1989;45:947−961に従うisobolographic分析)。
【0069】
ここで提示した相互作用調査を、単独で投与した場合に各ED50値の比から算出される2種成分の等効果投与量を使用して実施した。
【0070】
適用経路は、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール塩酸塩(以下、タペンタドール塩酸塩という。)については静脈内(i.v.)、ケタミン((R,S)−ケタミン塩酸塩)及びメマンチン(メマンチン塩酸塩)については腹腔内(i.p.)であった。タペンタドール塩酸塩を単独で適用した場合、そのピーク効果は適用当たり15分(第1の測定時点)に達し、しかも1.75(1.69〜1.81)mg/kg i.v.のED50値が算出された。ケタミン塩酸塩は、それぞれ20.2(19.0〜21.3)mg/kg i.p.のED50値で投与量依存鎮痛効果をもたらし、適用当たり15分のピーク効果に達した。それらの個々のピーク効果の時点に従って、相互作用実験の測定時点前に(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール塩酸塩を15分適用し、ケタミン塩酸塩を15分適用した(両方の成分は同時に適用した)。メマンチン塩酸塩は、それぞれ19.1(17.0〜22.0)mg/kg i.p.のED50値で投与量依存鎮痛効果をもたらし、適用当たり15分のピーク効果に達した。それらの各ピーク効果時点に従って、相互作用試験の測定時点前に(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール塩酸塩を15分適用し、メマンチン塩酸塩を15分適用した(両方の成分は同時に適用した)。
【0071】
このように、両方の配合物のED50算出時点は、各化合物のピーク効果の時点に相当していた。このisobolographic分析から、配合物の実験ED50値が各理論ED50値よりも有意に低かったことが明らかになった。したがって、この配合物の研究から、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチルプロピル)−フェノール塩酸塩とNMDAアンタゴニスト、ケタミン塩酸塩及びメマンチン塩酸塩との有意な相乗相互作用が実証された。
【0072】
このisobolographic分析の結果を次の表にまとめる。
【0073】
【表1】
ケタミン塩酸塩に対するAの投与量比は1:11.5であると計算でき、また、メマンチン塩酸塩に対するAの投与量比は1:10.9であると計算できる。