(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子線マイクロアナライザーによる線分析を行い、当該触媒粒子の各深度における触媒活性種の濃度をLα線のカウント数で測定した際、粒子表面から粒子中心に向かって粒子径の10%までの範囲における当該カウント数の平均値をE、粒子中心から粒子表面に向かって粒子径の25%までの範囲における当該カウント数の平均値をFとした場合、E/Fが0.5以上6.5以下となることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の燃料改質触媒。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する電池であり、その水素源としては、都市ガスなどを改質して得られる水素が利用されている。
【0003】
都市ガスなどを改質して水素を得る水蒸気改質反応では、都市ガスの主成分である炭化水素(CnHm)に水蒸気を加え、燃料改質触媒を用いて、次の式(1)のように化学反応させて水素(H
2)を生成する反応が主反応として進行することになる。また、式(1)の反応で得られた一酸化炭素(CO)は多くの水蒸気と結合するため、水性ガスシフト反応によってさらに水素を生成する反応が進行することになる(式(2)参照)。
【0004】
(1)・・・C
nH
m+nH
2O→nCO+(m/2+n)H
2
(2)・・・CO +H
2O→CO
2+H
2【0005】
このような水蒸気改質反応に用いる改質触媒としては、例えば,アルカリ土類金属アルミネートを含む酸化アルミニウムに,ジルコニアゾルを前駆体とする酸化ジルコニウムとルテニウム成分を担持してなる炭化水素の水蒸気改質触媒が開示されている(特許文献1)。
【0006】
特許文献2には、炭化水素、酸素および水蒸気を含むガスから水素を生成するための触媒として、セリアとアルミナがともにnmスケールで分散してなる複合酸化物粉末を含有する担体に触媒活性種を担持させた水素生成触媒が開示されている。
また、特許文献3には、炭化水素を含むガスから水素を生成するための触媒として、セリアとジルコニアがナノスケールで分散してなる複合酸化物を含有する担体に触媒活性種を担持させた水素生成触媒が開示されている。
【0007】
特許文献4には、ルテニウム及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1つの活性成分が、酸化セリウムの第1の酸化物と、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つの第2の酸化物とを含む担体に担持されている燃料改質触媒が開示されている。
【0008】
特許文献5には、アルミナ担体に、ルテニウム、ロジウム、白金の少なくとも1種を含む貴金属成分と希土類金属を含有させてなる水蒸気改質触媒において、触媒に含まれる貴金属成分含有量(質量%)と貴金属成分分散度(%)の積が100以上で、かつ貴金属成分分散度(%)が70%以下であることを特徴とする水素製造用改質触媒が開示されている。
【0009】
特許文献6には、セリアとアルミナとが、ともにナノスケールで分散された複合酸化物を含む担体と、該担体に担持された長周期型周期表の8族〜10族に属する少なくとも1種の金属元素とを含有する水蒸気改質触媒が開示されている。
【0010】
特許文献7には、γ−アルミナからなる担体に貴金属触媒を担持させてなる燃料改質触媒であって、該担体の5〜30質量%の酸化セリウムを該担体に担持させてなることを特徴とする燃料改質触媒が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<本燃料改質触媒>
本実施形態の一例に係る燃料改質触媒(以下、「本燃料改質触媒」と称する)は、無機多孔質担体と、触媒活性種と、CeO
2と、ZrO
2とを含む触媒粒子(以下、「本触媒粒子」と称する)、好ましい一例として、無機多孔質担体に、触媒活性種と、CeO
2と、ZrO
2とが担持されてなる構成を備えた本触媒粒子を含有する燃料改質触媒である。
【0019】
本燃料改質触媒は、本触媒粒子を含んでいればよいから、他の成分を含有してもよい。但し、好ましくは、本燃料改質触媒中の70質量%以上、中でも90質量%以上、その中でも95質量%以上(100%含む)を本触媒粒子が占めるのが好ましい。
本触媒粒子以外の他の成分としては、例えばSiO
2、TiO
2、ZrO
2及びCeO
2などを無機多孔質体とする成分を挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0020】
<本触媒粒子>
本触媒粒子は、無機多孔質担体と、触媒活性種と、CeO
2と、ZrO
2とを含む触媒粒子であり、好ましい一例として、無機多孔質担体に、触媒活性種と、CeO
2と、ZrO
2とが担持されてなる構成を備えた触媒粒子である。そしてまた、触媒粒子におけるZrO
2の濃度が、粒子内部よりも粒子表面近傍の方が高い一方、該触媒粒子におけるCeO
2の濃度は、粒子内部と粒子表面近傍とが同等であるのが好ましい。
【0021】
(無機多孔質担体)
本触媒粒子において担体である無機多孔質担体は、例えばアルミナ、シリカ、シリカアルミナ、コージェライト又はステンレススチールなどからなるものであればよい。
中でも、アルミナ、その中でもγ-Al
2O
3を含むのが好ましい。この際、無機多孔質担体のうち80質量%以上、中でも90質量%以上、その中でも99質量%以上(100質量%を含む)をγ-Al
2O
3が占めるものが特に好ましい。
【0022】
無機多孔質担体の形状は、例として球状、円柱状、ビーズ状、ペレット状、角柱状、打錠状、針状、膜状、ハニカムモノリス状などが挙げられる。中でもビーズ状、ペレット状又はハニカムモノリス状であるのが好ましい。
よって、無機多孔質担体は、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、コージェライト又はステンレススチールからなり、その形状は、ビーズ状、ペレット状又はハニカムモノリス状であるものが特に好ましい。
【0023】
ビーズ状あるいはペレット状の無機多孔質担体の平均径は、ハンドリングや容器内での流動性の観点から、0.5mm以上10mm以下であるのが好ましく、中でも0.7mm以上或いは5mm以下、その中でも1mm以上或いは3mm以下であるのが特に好ましい。
他方、球状の無機多孔質担体の平均径(直径)は、ハンドリングや容器内での流動性の観点から、1mm以上10mm以下であるのが好ましく、中でも1mm以上或いは5mm以下であるのがより好ましい。
なお、ビーズ状あるいはペレット状の無機多孔質担体の平均径は、この平均径は、光学顕微鏡などにより、本燃料改質触媒を観察し、ランダムに100個の無機多孔質担体の長径及び短径を測定して各担体の平均径を求め、さらにこの100個の平均値を算出することで求めることができる。
球状の場合の平均径についても、上記と同様に、光学顕微鏡などにより本燃料改質触媒を観察し、ランダムに100個の無機多孔質担体の直径を測定して各担体の平均径を求め、さらにこの100個の平均値を算出することで求めることができる。
【0024】
無機多孔質担体の平均細孔径は、燃料ガスの拡散と触媒への接触の観点、すなわち、もし大き過ぎれば、触媒との接触回数が減り反応が進みにくく、小さ過ぎれば燃料ガスが拡散しづらくなり、同様に反応が進みづらくなる観点から、0.5nm以上100nm以下であるのが好ましく、中でも1nm以上或いは50nm以下、その中でも2nm以上或いは10nm以下であるのが特に好ましい。
なお、この平均細孔径は、窒素吸着型の細孔分布計などにより、ランダムに10個無機多孔質担体の細孔径を測定し、さらにこの10個の平均値を算出することで求めることができる。
【0025】
(助触媒)
本燃料改質触媒は、助触媒として、少なくともCeO
2とZrO
2とを含有することが重要である。
本触媒粒子において、CeO
2とZrO
2はそれぞれの酸化物として存在するが、一部が固溶体となっていてもよい。
【0026】
本触媒粒子においては、ZrO
2の濃度が、粒子内部よりも粒子表面近傍の方が高くなっている一方、該触媒粒子におけるCeO
2の濃度は、粒子内部と粒子表面近傍とが同等であるのが好ましい。
【0027】
この際、本触媒粒子におけるZrO
2の濃度が、粒子内部よりも粒子表面近傍の方が高くなっていることは、例えばEDXで本触媒粒子を観察した際に、ZrO
2が粒子表面近傍に集中して存在していることを観察することで確認することができる。また、定量的には、例えば電子線マイクロアナライザー(EPMA;Electron Probe Micro Analyzer)による線分析を行った際のLα線のカウント数や、EDXでマッピングして励起されるX線のカウント数によって判定することができる。例えば、EPMAによる線分析を行い、本触媒粒子の各深度におけるZrO
2の濃度をLα線のカウント数で測定した際、粒子表面から粒子中心に向かって粒子径の10%までの範囲における当該カウント数の平均値をC、粒子中心から粒子表面に向かって粒子径の25%までの範囲における当該カウント数の平均値をDとした場合、C/Dが5.5以上であれば、ZrO
2の濃度が粒子表面近傍の方が高くなっていると判定することができる。
【0028】
他方、本触媒粒子におけるCeO
2の濃度が、粒子内部と粒子表面近傍とが同等であることを確認するには、例えばEDXで本触媒粒子を観察した際に、CeO
2が粒子表面近傍に偏っておらず、均一に分散していることを観察することで確認することができる。また、具体的には、例えばEPMAによる線分析を行った際のLα線のカウント数や、EDXでマッピングして励起されるX線のカウント数によって判定することができる。例えば、EPMAによる線分析を行い、本触媒粒子の各深度におけるCeO
2の濃度をLα線のカウント数で測定した際、粒子表面から粒子中心に向かって粒子径の10%までの範囲における当該カウント数の平均値をA、粒子中心から粒子表面に向かって粒子径の25%までの範囲における当該カウント数の平均値をBとした場合、A/Bの比率が0.5以上5.5未満であれば、CeO
2の濃度について粒子内部と粒子表面近傍とは同等であると判定することができる。
【0029】
本触媒粒子においては、ZrO
2の濃度に関しては、粒子中心から粒子表面に向かって粒子径の25%までの範囲における平均濃度に対する、粒子表面から粒子中心に向かって粒子径の10%までの範囲における平均濃度の比率が5.5以上18以下、中でも5.8以上或いは17以下、その中でも7以上或いは16以下であるのが好ましい。
他方、CeO
2に関しては、粒子中心から粒子表面に向かって粒子径の25%までの範囲における平均濃度に対する、粒子表面から粒子中心に向かって粒子径の10%までの範囲における平均濃度の比率が0.5以上5.5未満、中でも1以上或いは5.5未満、その中でも1以上或いは3以下であるのが好ましい。
【0030】
本触媒粒子においては、電子線マイクロアナライザー(EPMA;Electron Probe Micro Analyzer)による線分析を行い、本触媒粒子の各深度におけるCeO
2の濃度をLα線のカウント数で測定した際、粒子表面から粒子中心に向かって粒子径の10%までの範囲における当該カウント数の平均値をA、粒子中心から粒子表面に向かって粒子径の25%までの範囲における当該カウント数の平均値をBとした場合、A/Bの比率が0.5以上或いは5.5未満、中でも0.5以上或いは3.0以下であるのがより好ましい。
【0031】
また、本触媒粒子の各深度におけるZrO
2の濃度を、上記と同様にEPMAによる線分析を行ってLα線のカウント数で測定した際、粒子表面から粒子中心に向かって粒子径の10%までの範囲における当該カウント数の平均値をC、粒子中心から粒子表面に向かって粒子径の25%までの範囲における当該カウント数の平均値をDとした場合、C/Dが5.5以上18以下、中でも8以上或いは18以下、中でも11以上或いは18以下であるのがより一層好ましい。
【0032】
本燃料改質触媒においては、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)法により測定したZrO
2の全含有量1に対するCeO
2の全含有量の比が35以下であるのが好ましく、中でも1以上或いは25以下、その中でも1.5以上或いは17以下であるのが特に好ましい。
また、本燃料改質触媒においては、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)法により測定したZrO
2の全含有量とCeO
2の全含有量の合計が、全触媒質量の3wt%以上32wt%以下を占めるのが好ましく、中でも5wt%以上或いは25wt%以下、その中でも7wt%以上或いは20wt%以下を占めるのが特に好ましい。
【0033】
(触媒活性種)
触媒活性種としては、白金族に属する貴金属であるのが好ましい。例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)を挙げることができ、これらのうちの一種又は二種以上を触媒活性種として含むのが好ましい。中でも、Ruを含むのが特に好ましい。
【0034】
触媒活性種の担持量は、触媒全量の1.0wt%以上5.0wt%以下であるのが好ましく、中でも1.5wt%以上或いは3.0wt%以下であるのが好ましい。担持量がこれより少ないと水素生成活性が低くなる一方、これより多く担持しても水素生成活性が飽和するとともに触媒活性種どうしの粒成長が生じ易くなる。
【0035】
また、触媒粒子における触媒活性種の濃度は、粒子内部と粒子表面近傍とが同等であるのが好ましい。
この特徴を数値で表すと、電子線マイクロアナライザー(EPMA;Electron Probe Micro Analyzer)による線分析を行い、当該触媒粒子の各深度における元素濃度をLα線のカウント数で測定した際、粒子表面から粒子中心に向かって粒子径の10%までの範囲における当該カウント数の平均値をE、粒子中心から粒子表面に向かって粒子径の25%までの範囲における当該カウント数の平均値をFとした場合、E/Fの比率が0.5以上6.5以下であることが好ましく、その中でも0.7以上或いは5.5以下であるのが特に好ましい。
【0036】
(その他の成分)
本触媒粒子は、触媒活性成分及び助触媒成分のほかに、他の成分を含んでいてもよい。例えば担体の耐熱性向上で知られているようなFe
2O
3、SiO
2、Na
2O、La
2O
3、BaCO
3などを含有することができる。
【0037】
<製法>
本燃料改質触媒の製造において、触媒活性種、ZrO
2及びCeO
2を無機多孔質体に担持させる方法としては、公知の含浸法を用いることができる。
但し、ZrO
2の濃度に関しては、粒子内部よりも粒子表面近傍の方を高くする一方、CeO
2の濃度に関しては、粒子内部と粒子表面近傍とを同等にするためには、次のような方法を採用することができる。但し、この方法に限定するものではない。
すなわち、一般的な噴霧ドライ法などで助触媒を無機多孔質体に担持すると、どうしても表面に多く担持されるため、例えばCeイオンを含有する水溶液の濃度を薄くして、該水溶液中に無機多孔質体を複数回含浸させることにより、無機多孔質体の内部まで均等濃度となるようにCeを担持させるのが好ましい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0038】
他方、ZrO
2に関しては、通常のように担持させればよい。例えば、Zrイオンを含有する水溶液を調製し、該水溶液中に無機多孔質体を1回又は2回含浸させることにより担持させればよい。
【0039】
Ceを含有する原料としては硝酸セリウム、Zrを含有する原料としてはオキシ硝酸ジルコニウム、Ruを含有する原料としては硝酸ルテニウム溶液が挙げられる。但し、これらに限定するものではない。
【0040】
このように無機多孔質体に薄くしたCeイオン含有溶液を吸液後乾燥を繰り返し、その後Zrイオン含有溶液を吸液後乾燥させた後、例えば大気雰囲気下、400℃以上800℃以下で1時間以上10時間以下程度焼成することにより、セリア(CeO
2)及びジルコニア(ZrO
2)を無機多孔質体に担持させることができる。
その後、セリア(CeO
2)を担持させたのと同様に、触媒活性種を含有する溶液の濃度を顕著に薄くして、該スラリー中に無機多孔質体を複数回含浸させることにより、無機多孔質体の内部まで均等濃度となるように触媒活性種を担持させ、例えば大気雰囲気下、300℃以上600℃以下で1時間以上10時間以下程度焼成することにより、触媒活性種を前記無機多孔質体に担持させることができる。
【0041】
<用途>
本燃料改質触媒は、そのまま単独の触媒として使用することもできる。また、ペレットやビーズ状などの適宜形状に成形して、単独の触媒として使用することもできる。さらには、セラミックス又は金属材料からなる基材に担持して用いることもできる。
そして、水蒸気改質反応に係わる様々な装置で触媒として使用可能である。例えば製油所などの水素プラントや、定置型分散電源における燃料電池用水素製造装置などで使用可能である。
【0042】
(基材)
本触媒粒子を担持させる基材の材質としては、セラミックス等の耐火性材料や、フェライト系ステンレス等の金属材料を挙げることができる。
【0043】
セラミック製基材としては、耐火性セラミック材料、例えばコージライト、コージライト−アルファアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト(sillimanite)、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト(petalite)、アルファアルミナおよびアルミノシリケート類などを主な材質とするものを挙げることができる。
金属製基材としては、耐火性金属、例えばステンレス鋼または鉄を基とする他の適切な耐食性合金などを主な材質とするものを挙げることができる。
基材の形状は、ハニカム状、ペレット状、球状を挙げることができる。
【0044】
例えば、本燃料改質触媒を、バインダ−及び水を混合・撹拌してスラリーとし、得られたスラリーを、例えばセラミックハニカム体などの基材にウォッシュコートし、これを焼成して、基材表面に触媒層を形成する方法などを挙げることができる。
【0045】
また、本燃料改質触媒と、必要に応じてバインダ−及び水を混合・撹拌してスラリーとし、得られたスラリーを、例えばセラミックハニカム体などの基材にウォッシュコートして触媒担体層を形成した後、これを触媒活性成分を含む溶液に浸漬して、前記触媒担体層に触媒活性成分を吸着させてこれを焼成して、基材表面に触媒層を形成する方法を挙げることもできる。
【0046】
また、本燃料改質触媒と、必要に応じてバインダ−及び水を混合・撹拌してスラリーとし、得られたスラリーを基材に塗布し、これを焼成して基材表面に触媒層を形成する方法を挙げることもできる。
なお、本触媒を製造するための方法は公知のあらゆる方法を採用することが可能であり、上記例に限定するものではない。
【0047】
いずれの製法においても、触媒層は、単層であっても、二層以上の多層であってもよい。
【0048】
<語句の説明>
本明細書において、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0050】
(実施例1−
11、13)
球状ペレット状のγ―アルミナ(SSA:約190m
2/g程度、細孔容積:約0.43cc/g、充填密度:約0.85g/cc、平均径2mm)100gを150℃の環境下で2時間静置して乾燥して、乾燥アルミナペレットを得た。
硝酸セリウムを酸化物換算で下記表1の担持量となるよう秤量し、前記乾燥アルミナペレット100gの給水量の200%の熱湯(90℃)に、前記硝酸セリウムを投入、撹拌して溶解させて硝酸セリウム溶液を得た。そして、該溶液に乾燥アルミナペレット100gを投入して10分間撹拌し、150℃の熱風で完全に乾燥するまで乾燥させて、セリウム担持乾燥アルミナペレットを得た。
このようにして得られたセリウム担持乾燥アルミナペレットを、600℃、5時間焼成して、セリア担持焼成アルミナペレットを得た。得られたセリア担持焼成アルミナペレットを前記硝酸セリウム溶液に投入して、150℃の熱風で完全に乾燥するまで乾燥させた後、600℃、5時間焼成して、目的のセリア担持量のサンプルを得た。
次いで、前記セリア担持工程と同様の方法でオキシ硝酸ジルコニウムを担持し、150℃の熱風で完全に乾燥するまで乾燥させた後、600℃、5時間焼成して、セリア―ジルコニア担持焼成アルミナペレットを得た。
【0051】
(実施例1−
11)
市販の5wt%硝酸Ru液を、触媒全体のRuメタル量が下記表1の担持量となるよう各々秤量し、この硝酸Ru液中に前記セリア・ジルコニア担持焼成アルミナペレットを投入して10分間撹拌し、80℃以上100℃未満の環境下に10時間以上静置し、その後500℃で2時間焼成して、セリア・ジルコニア・Ru担持焼成アルミナペレット(サンプル)を得た。
【0052】
(実施例13)
市販の硝酸Ru液中に1Nのアンモニア水をpH7.5になるまで添加し、黒色の水酸化ルテニウムを含むスラリーを調製した。次いで、触媒全体のRuメタル量が下記表1の担持量となるよう秤量し、このスラリー中に前記セリア・ジルコニア担持焼成アルミナペレットを投入して10分間撹拌し、120℃で12時間十分に乾燥させた後、さらに700℃で24時間焼成して、セリア・ジルコニア・Ru担持焼成アルミナペレット(サンプル)を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
(各元素含有量の測定方法)
ICP分析法により、各元素含有量を測定した。
【0055】
(各深度における元素濃度分析方法)
各実施例で得られた触媒粒子の断面を、電子線マイクロアナライザー(EPMA;Electron Probe Micro Analyzer)を使用して、表2の測定条件にて各深度におけるZrO
2(助触媒)、CeO
2(助触媒)、Ru(触媒活性種)の濃度をカウント数で測定した。
【0056】
【表2】
【0057】
(C2以上濃度の測定方法)
図1に示す燃料改質評価装置を用いて、各実施例で得られたC2以上濃度を測定した。
この燃料改質評価装置は、気体燃料1としてボンベより供給される都市ガスと、純水タンク3に入った純水を、それぞれ気体マスフローコントローラー2と、液体マスフローコントローラー4により流量を調製することができるものである。純水は電気炉5内の気化器6を通り水蒸気となって、燃料ガス/水蒸気混合部7にて気体燃料と混合され、電気炉8内のステンレス容器に封じられた改質触媒9へ送られ、改質触媒9にて改質されたガスはバブラー11を経て排気される。
この排気の一部をガスクロマトグラフィー(以下「GC」と称する)13内蔵のポンプにて吸引し、水分除去器12を通過した改質ガスはGC13によって定量される。この時、全ガス量に対するエタン、プロパン、イソブタン、ノルマルブタンの濃度の総和をC2以上濃度と定義し評価した。
【0058】
(ガス改質評価試験)
改質器内の改質触媒量は、体積5ccとなる量とし、熱電対10にて測温された値で、電気炉8を550℃に制御した。
供給する水蒸気のモル量と、燃料ガス中の全カーボン量のモル量の比(以下「S/C比」と称する)は2.5とし、熱電対10が550℃を示してから30分経過したときのC2以上濃度をFresh値とした。Fresh値の測定後、S/C比を4.0に上昇し、750℃まで昇温させて1時間30分経過後、再びS/C比2.5へ戻し、550℃まで降温させた後、10分間経過したときのC2以上濃度をAged値とした。
なお、燃料ガスの流量を触媒体積で割った空間速度(SV)が約9000h
-1となるよう、流量をコントロールした。
【0059】
【表3】
【0060】
上記実施
例で得たサンプルをEDXで観察したところ、いずれの実施例においても、ZrO
2の濃度は粒子内部よりも粒子表面近傍の方が高くなっている一方、CeO
2の濃度は、粒子内部と粒子表面近傍とが同等であることを確認することができた。
【0061】
また、上記実施例1−
11及び13で得たサンプルを、EPMAによる線分析を行い、ZrO
2の濃度をLα線のカウント数で測定した際、粒子表面から粒子中心に向かって粒子径の10%までの範囲における当該カウント数の平均値をC、粒子中心から粒子表面に向かって粒子径の25%までの範囲における当該カウント数の平均値をDとした場合、C/Dが5.5以上18以下の範囲内となることが確認できた。
さらにまた、上記実施例1−
11及び13で得たサンプルを、EPMAによる線分析を行い、CeO
2の濃度をLα線のカウント数で測定した際、粒子表面から粒子中心に向かって粒子径の10%までの範囲における当該カウント数の平均値をA、粒子中心から粒子表面に向かって粒子径の25%までの範囲における当該カウント数の平均値をBとした場合、A/Bの比率が0.5以上5.5未満の範囲内となることが確認できた。
【0062】
上記実
施例の結果、並びに、これまで発明者が行ってきた各種試験の結果からすると、ZrO
2の濃度に関しては、粒子内部よりも粒子表面近傍の方を高くする一方、CeO
2の濃度に関しては、粒子内部と粒子表面近傍とを同等とすることにより、炭素数の多い炭化水素を、より炭素数の少ない炭化水素へ分解する反応を促進させることができ、水蒸気改質反応を経たガスにおける、C2以上の炭化水素の濃度を有効に低減することができることが分かった。
このようにC2以上の炭化水素の濃度を有効に低減することができる理由としては、ZrO
2濃度の高い粒子表面で、炭素数が比較的大きな炭化水素について、より炭素数の低い炭化水素へ分解する反応を促進させることができるとともに、ZrO
2濃度が低く留まる粒子内部ではそのように炭素数が低減された炭化水素を効率的に水素に改質させることができるためと推察される。