(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る両面粘着シート1は、2枚の剥離シート2a,2bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート2a,2bに挟持されている。剥離シート2a、両面粘着シート1および剥離シート2bからなる積層体を、以下、剥離シート付き両面粘着シート3という。
【0025】
本実施形態において、上記の剥離シート2a,2bは必須の構成要素ではなく、両面粘着シート1の使用時に剥離・除去されるものである。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0026】
本実施形態に係る両面粘着シート1は、
図2に示すように、再利用に供される第1の硬質体4と、第2の硬質体5とを積層してなる積層体10において、第1の硬質体4と第2の硬質体5との間での接着に使用されるものである。この両面粘着シート1は、第1の硬質体4および/または第2の硬質体5に直接接着されてもよいし、第1の硬質体4側に積層された部材および/または第2の硬質体5側に積層された部材に接着されてもよい。すなわち、
図2では、両面粘着シート1は、第1の硬質体4および第2の硬質体5に直接接着され、両者を直接貼合しているが、これに限定されるものではない。
【0027】
なお、本明細書における「硬質体」とは、JIS K7127:1999に準拠して測定したヤング率が10GPa以上のものをいう。硬質体は、単層または単一の部材からなるものであってもよいし、複数層または複数の部材からなるものであってもよい。後者の場合には、複数層または複数の部材からなる一の物として、上記のヤング率を満たせば、その物の一部の層または部材が上記のヤング率を満たさなくても、その物は硬質体ということができる。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係る両面粘着シート1は、第1の硬質体4または得られる積層体10において当該両面粘着シート1よりも第1の硬質体4側にある部材(以下「第1の硬質体側部材」という場合がある。)に接着される第1の粘着面11Sと、第2の硬質体5または得られる積層体10において当該両面粘着シート1よりも第2の硬質体5側にある部材(以下「第2の硬質体側部材」という場合がある。)に接着される第2の粘着面12Sとを備えている。
【0029】
本実施形態の両面粘着シート1においては、第1の硬質体4または第1の硬質体側部材(例えば、ガラス板)に対する第1の粘着面11Sのループタック試験による剥離力をL1、第2の硬質体5または第2の硬質体側部材(例えば、ガラス板)に対する第2の粘着面12Sのループタック試験による剥離力をL2としたときに、L2に対するL1の比(L1/L2)が、0.0005〜0.05であり、好ましくは0.001〜0.03であり、特に好ましくは0.002〜0.02である。ここで、ループタック試験は、JIS Z0237:2009に規定される試験であり、詳しくは後述する試験例に示す通りである。
【0030】
また、本実施形態の両面粘着シート1においては、少なくとも第1の粘着面11Sにおけるジヨードメタンに対する接触角が85°以上であり、好ましくは88〜99°であり、特に好ましくは90〜95°である。本明細書における粘着面のジヨードメタンに対する接触角は、ジヨードメタンが粘着面に接触した直後の静的接触角であり、市販の接触角測定装置を用いて、23℃、50%RHにて測定した値とする。詳しくは後述する試験例に示す通りである。
【0031】
L2に対するL1の比が上記範囲内にあり、かつ少なくとも第1の粘着面11Sにおけるジヨードメタンに対する接触角が上記範囲内にあることにより、両面粘着シート1を使用して貼合した第1の硬質体4と第2の硬質体5とを剥離するときに、両面粘着シート1の第1の粘着面11Sと第1の硬質体4または第1の硬質体側部材との界面にて、両面粘着シート1と第1の硬質体4または第1の硬質体側部材とが良好に分離し、第1の硬質体4または第2の硬質体5が破断したり、第1の硬質体4または第1の硬質体側部材に糊残りが生じたりしない。これにより、少なくとも第1の硬質体4の再利用が可能となる。このように、L2に対するL1の比およびジヨードメタンに対する接触角が上記範囲内にある両面粘着シート1は、リワーク性に非常に優れる。
【0032】
L2に対するL1の比が0.0005未満であると、第1の粘着面11Sにおける粘着力が小さくなり過ぎて、積層体10の使用時等において、第1の粘着面11Sと第1の硬質体4または第1の硬質体側部材との界面にて意図しない剥離が生じてしまう。一方、L2に対するL1の比が0.05を超えると、第1の硬質体4と第2の硬質体5とを剥離するときに、第2の硬質体5が破断したり、第1の硬質体4または第1の硬質体側部材に糊残りが生じたりして、第1の硬質体の再利用が可能なように剥離することができない。
【0033】
また、第1の粘着面11Sにおけるジヨードメタンに対する接触角が85°未満であると、第1の粘着面11Sの濡れ性が大きくなり、被着体(第1の硬質体4または第1の硬質体側部材)に対する密着力が高くなって、上記のような剥離を良好に行うことができず、リワーク性に劣るものとなる。
【0034】
なお、本実施形態の両面粘着シート1においては、第2の粘着面12Sにおけるジヨードメタンに対する接触角も85°以上であってもよい。これにより、第2の粘着面12Sの被着体(第2の硬質体5または第2の硬質体側部材)に対する糊残りの発生を抑制して、第2の硬質体5の再利用を図ることが可能となる。
【0035】
両面粘着シート1は、L2に対するL1の比が上記範囲内となり、かつジヨードメタンに対する接触角が上記範囲内となるように、第1の粘着面11Sおよび第2の粘着面12Sが構成されていればよく、単層からなってもよいし、複数層からなってもよいし、層間が明確でない複数の材料からなってもよい。製造の容易さの観点から、両面粘着シート1は、
図1および
図2に示すように、第1の粘着面11Sを有する第1の粘着剤層11と、第2の粘着面12Sを有する第2の粘着剤層12とを備えていることが好ましい。また、両面粘着シート1のハンドリング性の観点から、第1の粘着剤層11と第2の粘着剤層12との間に芯材13が設けられていることが特に好ましい。なお、第1の粘着面11Sは、第1の粘着剤層11における第2の粘着剤層12とは反対側の表面であり、第2の粘着面12Sは、第2の粘着剤層12における第1の粘着剤層11とは反対側の表面である。
【0036】
なお、後述の試験例では、被着体である硬質体としてガラス板を使用し、剥離力を測定するとともにリワーク性を評価したが、被着体である硬質体として他の材料を使用した場合でも、同様の評価結果が得られるものと考えられる。
【0037】
1.両面粘着シート
(1)第1の粘着剤層
第1の粘着剤層11は、第1の粘着面11Sが上記の剥離力比(L1/L2)およびジヨードメタンに対する接触角を満たす粘着剤から構成されればよいが、具体的には、オルガノポリシロキサン、特に付加型オルガノポリシロキサン(の硬化物)を含有するシリコーン粘着剤から構成されることが好ましい。かかるシリコーン粘着剤は、上記の物性を満たし易い。
【0038】
付加型オルガノポリシロキサンは、シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0039】
シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、次の平均単位式(1)で示される化合物であって、かつ分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する化合物であることが好ましい。
R
1aSiO
(4−a)/2・・・(1)
(式中、R
1は互いに同一又は異種の炭素数1〜12、好ましくは1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0040】
上記R
1で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、硬化時間の短さおよび生産性の点から、ビニル基が好ましい。
【0041】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中にSiH基を有する。上記オルガノポリシロキサンのアルケニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基とが反応することにより、両者は付加反応し、付加型オルガノポリシロキサンが得られる。
【0042】
付加型オルガノポリシロキサンは、白金触媒の存在下で良好に硬化するため、上記シリコーン粘着剤は、白金触媒を含有することが好ましい。白金触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフェン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等を例示することができる。
【0043】
上記シリコーン粘着剤中における白金触媒の含有量は、付加型オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.01〜3質量部であることが好ましく、特に0.05〜2質量部であることが好ましい。白金触媒の含有量が上記の範囲内にあることにより、塗工を妨げることなく、付加型オルガノポリシロキサンを硬化させ、第1の粘着剤層11を形成することができる。
【0044】
付加型オルガノポリシロキサンには、本発明の目的を損なわない範囲において粘着力を高めるため、分子中に3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン(シリコーンレジン)を含有させることができる。
【0045】
上記シリコーン粘着剤中における3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサンの含有量は、付加型オルガノポリシロキサン100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、特に5〜80質量部であることが好ましく、さらには10〜50質量部であることが好ましい。3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサンの含有量が100質量部以下であると、第1の粘着面11Sのジヨードメタンに対する接触角が85°以上となり易く、優れたリワーク性が得られ易い。
【0046】
第1の粘着剤層11の厚さは、5〜50μmであることが好ましく、特に10〜40μmであることが好ましく、さらには15〜35μmであることが好ましい。第1の粘着剤層11の厚さが5μm以上であることにより、所望の粘着力を発揮することができる。また、第1の粘着剤層11の厚さが50μm以下であることにより、製造過程に起因する残留溶剤や気泡の混入が有効に防止され、粘着力の安定性および光学特性に優れたものとすることができる。
【0047】
第1の粘着剤層11を形成するには、例えば、付加型オルガノポリシロキサンと、所望により3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサンと、白金触媒とを、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル、キシレン等の溶媒で10〜60質量%程度に希釈した塗布溶液を、塗布対象(例えば芯材13)に塗布し、加熱して硬化させればよい。加熱温度は、90〜180℃程度であることが好ましく、加熱時間は1〜5分間程度であることが好ましい。
【0048】
ここで、第1の硬質体4または第1の硬質体側部材(例えば、ガラス板)に対する第1の粘着面11Sのループタック試験による剥離力(L1)は、0.005〜1N/25mmであることが好ましく、特に0.01〜0.5N/25mmであることが好ましく、さらには0.02〜0.3N/25mmであることが好ましい。上記剥離力が0.005N/25mm以上であると、積層体10の使用時等において、第1の粘着面11Sと第1の硬質体4との界面にて意図しない剥離が生じることを防止することができる。また、上記剥離力が1N/25mm以下であると、第1の粘着剤層11の被着体に対する剥離性が良好に維持され、優れたリワーク性が発揮される。
【0049】
また、第1の硬質体4(例えば、ガラス板)302の硬質体5(例えば、ガラス板)とを両面粘着シート1で接着してなる積層体を、第1の硬質体4と第1の粘着面11Sとの界面で剥離するときの剥離力は、1〜40N/25mmであることが好ましく、特に5〜35N/25mmであることが好ましく、さらには10〜30N/25mmであることが好ましい。上記剥離力が40N/25mm以下であると、第2の硬質体5および両面粘着シート1を含む積層体を、第1の硬質体4から容易に剥離することができ、したがって、優れたリワーク性が発揮される。また、上記剥離力が1N/25mm以上であると、積層体10の使用時等において、第1の粘着面11Sと第1の硬質体4との界面にて意図しない剥離が生じることを防止することができる。なお、上記剥離力は、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度90°の条件で測定した剥離力であり、具体的な測定方法は、後述する試験例(リワーク性の評価)に示す通りである。
【0050】
(2)第2の粘着剤層
第2の粘着剤層12は、第2の粘着面12Sが前述した剥離力比(L1/L2)を満たす粘着剤から構成されればよいが、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有するアクリル系粘着剤から構成されることが好ましい。かかる粘着剤は、上記の物性を満たし易い。
【0051】
上記アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)を含有し、好ましくは当該(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)が架橋剤(b)によって架橋されたものを含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)は、粘着力の調整を容易にする観点から、紫外線硬化性基を有しないことが好ましい。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)は、当該重合体を構成するモノマーとして、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)は、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤(b)と反応する官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)と、所望により用いられる他のモノマーとの共重合体であることが特に好ましい。
【0053】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40〜99質量%含有することが好ましく、特に70〜98質量%含有することが好ましく、さらには80〜95質量%含有することが好ましい。
【0055】
上記反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)における水酸基の架橋剤(b)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)におけるカルボキシル基の架橋剤(b)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを1〜40質量%含有することが好ましく、特に2〜30質量%含有することが好ましく、さらには5〜20質量%含有することが好ましい。
【0060】
上記他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)の重量平均分子量は20万〜100万であることが好ましく、特に30万〜90万であることが好ましく、さらには40万〜70万であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)の重量平均分子量が20万以上であると、第2の粘着剤層12の凝集力が高いものとなり、第2の粘着面12Sにて被着体から両面粘着シート1を剥離したときにも、被着体に糊残りが生じ難いものとなる。一方、静電容量方式のタッチパネル等では、配線層を隠すために、カバー材の周縁部に段差となる印刷層が設けられることが多いが、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)の重量平均分子量が100万以下であると、第2の粘着剤層12の上記印刷段差への追従性(段差追従性)が良好なものとなる。すなわち、第2の粘着剤層12と上記段差を有するカバー材とを貼合したときに、第2の粘着剤層12がその段差に追従するため、段差近傍に浮きや気泡等のないものとなる。また、それらの積層体を耐久条件下においても、段差近傍に気泡や剥がれ等が発生することが抑制される。
【0064】
なお、上記アクリル系粘着剤において、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
架橋剤(b)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)が有する反応性官能基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)が有する反応性官能基がカルボキシル基の場合、カルボキシル基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤または金属キレート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(b)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0067】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0068】
金属キレート系架橋剤は、少なくとも金属キレート化合物を含むものである。金属キレート化合物としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等の金属キレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物およびジルコニウムキレート化合物が好ましく、特にアルミニウムキレート化合物が好ましい。また、これらの金属キレート化合物は、アセチルアセトン錯体であることが好ましい。
【0069】
架橋剤(b)の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.01〜5質量部であることが好ましく、さらには0.05〜1質量部であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)100質量部に対して架橋剤(b)を0.001質量部以上とすることにより、第1の硬質体4と第1の粘着剤層11との間で剥離(リワーク)を行う際、意図せずに第2の硬質体5と第2の粘着剤層12との間で剥がれないようにすることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)100質量部に対して架橋剤(b)を10質量部以下とすることにより、第2の粘着剤層12の段差追従性を確保することができる。
【0070】
重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含む(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)と、架橋剤(b)とを含有する粘着性組成物を加熱等すると、架橋剤(b)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)を構成する反応性官能基含有モノマーの反応性官能基と反応する。これにより、架橋剤(b)によって(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)が架橋された構造が形成され、得られる粘着剤層の凝集力、ひいては強度や耐久性が向上する。
【0071】
上記アクリル系粘着剤には、所望により、通常使用されている各種添加剤、例えば屈折率調整剤、帯電防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
【0072】
第2の粘着剤層12の厚さは、10〜400μmであることが好ましく、特に20〜300μmであることが好ましく、さらには50〜250μmであることが好ましい。第2の粘着剤層12の厚さが10μm以上であることにより、良好な段差追従性が発揮され、第2の粘着剤層12の厚さが400μm以下であることにより、加工性が良好になる。なお、第2の粘着剤層12は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0073】
第2の粘着剤層12がアクリル系粘着剤から構成される場合、第2の粘着剤層12を形成するには、アクリル系粘着剤および所望により溶剤を含有する塗布溶液を、塗布対象(例えば剥離シート2bの剥離面)に塗布し、加熱処理を行って、塗膜を形成する。形成された塗膜は、養生期間が不要な場合は、そのまま第2の粘着剤層12となり、養生期間が必要な場合は、養生期間経過後に第2の粘着剤層12となる。
【0074】
上記加熱処理は、塗布溶液の希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けてもよい。
【0075】
上記アクリル系粘着剤が、反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)および架橋剤(b)を含有する場合、上記の加熱処理により、架橋剤(b)によって(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)が架橋された構造が形成される。
【0076】
ここで、第2の硬質体5または第2の硬質体側部材(例えば、ガラス板)に対する第2の粘着面12Sのループタック試験による剥離力(L2)は、1〜70N/25mmであることが好ましく、特に3〜50N/25mmであることが好ましく、さらには5〜45N/25mmであることが好ましい。上記剥離力が1N/25mm以上であると、積層体10の使用時等において、第2の粘着面12Sと第2の硬質体5との界面にて意図しない剥離が生じることを防止することができる。一方、上記剥離力が70N/25mmを超えると、硬質体5も再利用したい場合に、硬質体5側に糊残りが生じて再利用できない場合がある。
【0077】
第2の粘着剤層12の段差追従率は、20%以上であることが好ましく、特に25〜80%であることが好ましく、さらには30〜70%であることが好ましい。第2の粘着剤層12の段差追従率が20%以上であれば、第2の粘着剤層12と、印刷層による段差を有するタッチパネル等のカバー材とを貼合したときに、第2の粘着剤層12がその段差に良好に追従するため、段差近傍に浮きや気泡等のないものとなる。また、それらの積層体を耐久条件下においても、段差近傍に気泡や剥がれ等が発生することが抑制される。
【0078】
なお、段差追従率は以下の式によって表わされるものであり、具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
段差追従率(%)={(隙間や気泡無く埋められた段差の高さ)/(粘着剤層の厚み)}×100
【0079】
(3)芯材
芯材13は、両面粘着シート1に剛性を与えて、両面粘着シート1のハンドリング性を向上させるものである。この芯材13は、プラスチックフィルムから構成されることが好ましい。プラスチックフィルムの種類としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルからなるポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。これらの中でも、ポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0080】
上記のようなプラスチックフィルムからなる芯材13においては、隣接する第1の粘着剤層11および/または第2の粘着剤層12との密着性を向上させる等の目的で、所望により片面または両面に、酸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられる。これらの表面処理法は、プラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果および操作性の面から好ましく用いられる。
【0081】
芯材13の厚さは、両面粘着シート1のハンドリング性向上の観点から、2〜250μmであることが好ましく、特に5〜125μmであることが好ましく、さらには10〜75μmであることが好ましい。
【0082】
2.剥離シート
剥離シート2a,2bとしては、特に限定されることはなく、公知のプラスチックフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0083】
上記剥離シート2a,2bの剥離面(特に両面粘着シート1と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい(ただし、粘着剤層11がシリコーン粘着剤の場合、剥離処理が施されていないプラスチックフィルムをそのまま使用することも好ましい。)。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート2a,2bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0084】
剥離シート2a,2bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0085】
3.剥離シート付き両面粘着シートの製造
剥離シート付き両面粘着シート3の一製造例としては、芯材13の一方の面に第1の粘着剤層11を形成した後、粘着剤層11の露出面に、剥離シート2aをその剥離面が接するように積層し、これを第1の積層体とする。一方、剥離シート2bの剥離面に第2の粘着剤層12を形成し、これを第2の積層体とする。次いで、第1の積層体の芯材13と第2の積層体の第2の粘着剤層12とが重なるように、第1の積層体と第2の積層体とを貼り合わせて、剥離シート付き両面粘着シート3を得る。
【0086】
4.両面粘着シートの使用
図2に示す積層体10は、上記両面粘着シート1を使用して、再利用に供される第1の硬質体4と第2の硬質体5とを貼合したものである。すなわち、積層体10は、第1の硬質体4と、第2の硬質体5と、それらの間に介在する両面粘着シート1とから構成される。
【0087】
本実施形態における両面粘着シート1は、第1の粘着剤層11、芯材13および第2の粘着剤層12を備えており、第1の粘着剤層11における第1の粘着面11Sは、第1の硬質体4に接着しており、第2の粘着剤層12における第2の粘着面12Sは、第2の硬質体5に接着している。
【0088】
再利用に供される第1の硬質体4としては、例えば高価な部材、具体的には表示体モジュール、太陽電池モジュール等が挙げられる。表示体モジュールとしては、例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール、電子ペーパー等が挙げられる。なお、この表示体モジュールの両面粘着シート1側には、各種の機能層(透明導電膜等)が設けられていてもよい。
【0089】
上記のような部材における、両面粘着シート1と接する部分の材料は、通常、ガラス板、プラスチック板、金属板、半導体板等であり、好ましくはガラス板である。
【0090】
また、第2の硬質体5としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、金属板、半導体板、またはそれらの積層体等が挙げられ、好ましくはガラス板である。
【0091】
上記のガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1〜5mmであり、好ましくは0.2〜2mmである。
【0092】
上記のプラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、ポリメチルメタクリレート等からなるアクリル板、ポリカーボネート板などが挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2〜5mmであり、好ましくは0.4〜3mmである。
【0093】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、金属配線が形成されていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。なお、本実施形態における「両面粘着シートよりも第1の硬質体側にある部材」および「両面粘着シートよりも第2の硬質体側にある部材」としては、前述の各種の機能層および光学部材などを好ましく挙げることができる。
【0094】
上記光学部材としては、例えば、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、ハードコートフィルム、半透過反射フィルム等が挙げられる。
【0095】
上記積層体10を製造するには、一例として、まず、剥離シート付き両面粘着シート3の一方の剥離シート2bを剥離して、露出した第2の粘着剤層12と第2の硬質板5とを貼合する。次いで、剥離シート付き両面粘着シート3から他方の剥離シート2aを剥離して、露出した第1の粘着剤層11と第1の硬質板4とを貼合する。
【0096】
上記のように製造した積層体10において、貼合位置にずれが生じたような場合、第1の硬質体4と第2の硬質体5とを剥離する必要がある。この積層体10において第1の硬質体4と第2の硬質体5とを剥離すると、両面粘着シート1(第1の粘着剤層11)の第1の粘着面11Sと第1の硬質体4との界面にて、両面粘着シート1(第1の粘着剤層11)と第1の硬質体4とが良好に分離し、第1の硬質体4または第2の硬質体5が破断したり、第1の硬質体4に糊残りが生じたりしない。これにより、少なくとも第1の硬質体4は再利用が可能となる。このように、本実施形態に係る両面粘着シート1は、リワーク性に非常に優れる。
【0097】
本実施形態における積層体10は、タッチパネル、特に静電容量方式のタッチパネルであることが好ましく、したがって、第1の硬質体4および第2の硬質体5は、タッチパネルを構成する部材であることが好ましい。この場合、第1の硬質体4は、表示体モジュールまたは表示体モジュールを含む部材であることが好ましく、第2の硬質体5は、ガラス板もしくはプラスチック板からなるカバー材またはカバー材を含む部材であることが好ましい。第2の硬質体5は、カバー材にセンサー機能が設けられた(カバー材に透明導電膜の回路が形成された)、カバー材一体型のセンサー(OGS:One Glass Solution)であってもよい。
【0098】
上記カバー材の両面粘着シート1側の周縁部には、段差となる印刷層が設けられていてもよい。第2の粘着剤層12を構成する(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)の重量平均分子量および第2の粘着剤層12の厚さが前述したように規定された第2の粘着剤層12は、上記印刷層による段差に対する段差追従性が良好なものとなる。
【0099】
印刷層を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層の厚さ、すなわち段差の高さは、3〜45μmであることが好ましく、5〜35μmであることがより好ましく、7〜25μmであることが特に好ましく、7〜15μmであることがさらに好ましい。
【0100】
また、印刷層の厚さ(段差の高さ)は、第2の粘着剤層12の厚さの2〜40%であることが好ましく、特に5〜30%であることが好ましく、さらには10〜20%であることが好ましい。これにより、第2の粘着剤層12は、印刷層による段差に追従し易く、段差近傍に浮きや気泡等が発生することが抑制される。
【0101】
なお、
図2では図示されていないが、積層体10における両面粘着シート1と第1の硬質体4との間および/または両面粘着シート1と第2の硬質体5との間には、タッチパネル用のフィルムセンサーが1層または複数層設けられていてもよい。また、複数層のフィルムセンサーの間には、所望の粘着剤層が設けられていてもよい。フィルムセンサーは、例えば、基材フィルムとパターニングされたスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜とからなる。
【0102】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0103】
例えば、剥離シート付き両面粘着シート3における剥離シート2a,2bのいずれか一方は省略されてもよい。また、積層体10における両面粘着シート1と第1の硬質体との間および/または両面粘着シート1と第2の硬質体との間には、他の部材が存在していてもよい。
【実施例】
【0104】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0105】
〔製造例1〕
シロキサン結合を主骨格としビニル基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる付加型オルガノポリシロキサン(信越化学工業社製,商品名:KS−847H)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン(シリコーンレジン;東レダウコーニング社製,商品名:SD−4584)20質量部と、白金触媒(東レダウコーニング社製,商品名:SRX−212)1.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着剤塗布液を得た。
【0106】
得られた粘着剤塗布液を、芯材としての易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,PET A4300,厚さ:38μm)の易接着層の面に、乾燥後の厚さが35μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、120℃で2分間加熱処理して、シリコーン粘着剤からなる粘着剤層(シリコーン粘着剤層A)を形成した。その後、シリコーン粘着剤層Aの粘着面を、剥離シートとしての、剥離処理や易接着処理が施されていない未処理PETフィルム(東レ社製,T60,厚さ:50μm)で保護した。
【0107】
〔製造例2〕
シロキサン結合を主骨格としビニル基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる付加型オルガノポリシロキサン(信越化学工業社製,商品名:KS−847H)100質量部と、3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン(シリコーンレジン;東レダウコーニング社製,商品名:SD−4584)50質量部と、白金触媒(東レダウコーニング社製,商品名:SRX−212)1.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着剤塗布液を得た。
【0108】
得られた粘着剤塗布液を、芯材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET A4300,厚さ:38μm)の一方の面に、乾燥後の厚さが35μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、120℃で2分間加熱処理して、シリコーン粘着剤からなる粘着剤層(シリコーン粘着剤層B)を形成した。その後、シリコーン粘着剤層Bの粘着面を、剥離シートとしての、剥離処理や易接着処理が施されていない未処理PETフィルム(東レ社製,T60,厚さ:50μm)で保護した。
【0109】
〔製造例3〕
アクリル酸n−ブチル(BA)90質量部およびアクリル酸(AA)10質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量50万であった。
【0110】
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部と、エポキシ系架橋剤としての1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製,TERAD−C)0.05質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤塗布液を得た。
【0111】
得られた粘着剤塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して、アクリル粘着剤からなる粘着剤層を形成した。同様にして、剥離シートの剥離処理面上に厚さ25μmの粘着剤層を形成し、上記粘着剤層と重ね合わせ、剥離シートの剥離処理面上に厚さ50μmの粘着剤層(アクリル粘着剤層A)を形成した。
【0112】
〔製造例4〕
製造例3で得られた粘着剤塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して、アクリル粘着剤からなる粘着剤層を形成した。同様にして、剥離シートの剥離処理面上に厚さ25μmの粘着剤層を形成したものを5枚作製した。そして、各粘着剤層を重ね合わせ、剥離シートの剥離処理面上に厚さ150μmの粘着剤層(アクリル粘着剤層A’)を形成した。
【0113】
〔製造例5〕
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)70質量部、メタクリル酸メチル(MMA)10質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)20質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量60万であった。
【0114】
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部と、イソシアネート系架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(TDI;綜研化学社製,L−45)0.2質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤塗布液を得た。
【0115】
得られた粘着剤塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して、アクリル粘着剤からなる粘着剤層を形成した。同様にして、剥離シートの剥離処理面上に厚さ25μmの粘着剤層を形成し、上記粘着剤層と重ね合わせ、剥離シートの剥離処理面上に厚さ50μmの粘着剤層(アクリル粘着剤層B)を形成した。
【0116】
〔製造例6〕
アクリル酸n−ブチル(BA)75質量部、アクリル酸エチル(EA)20質量部およびアクリル酸(AA)5質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量90万であった。
【0117】
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部と、金属キレート系架橋剤としてのアルミニウムアセチルアセトネート(綜研化学社製,M−5A)1.0質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤塗布液を得た。
【0118】
得られた粘着剤塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して、アクリル粘着剤からなる粘着剤層を形成した。同様にして、剥離シートの剥離処理面上に厚さ25μmの粘着剤層を形成し、上記粘着剤層と重ね合わせ、剥離シートの剥離処理面上に厚さ50μmの粘着剤層(アクリル粘着剤層C)を形成した。
【0119】
各製造例で調製した粘着剤(主剤)の組成および(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量(Mw)、架橋剤の種類および配合量、ならびに粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0120】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0121】
〔実施例1〕
第1の粘着剤層として、製造例1で得られたPETフィルム(芯材)/シリコーン粘着剤層A/未処理PETフィルム(剥離シート)からなる積層体のPETフィルム(芯材)側の表面に、第2の粘着剤層として、製造例3で形成したアクリル粘着剤層Aを貼付した。得られた積層体を、幅25mm×長さ200mmに裁断し、剥離シート/アクリル粘着剤層A(第2の粘着剤層)/PETフィルム(芯材)/シリコーン粘着剤層A(第1の粘着剤層)/未処理PETフィルム(剥離シート)からなる剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0122】
得られた剥離シート付き両面粘着シートから第1の粘着剤層側の剥離シートを剥離し、露出したシリコーン粘着剤層Aが、第1の硬質体である105mm×140mmの大きさのソーダライムガラス(セントラル硝子社製,厚さ:1.1mm,ヤング率:71GPa;
図3中、符号4)に接するように、かつ、上記両面粘着シートが長さ方向にはみ出すように、当該両面粘着シートを上記第1の硬質体に貼付した(
図3参照)。
【0123】
次いで、上記両面粘着シートから第2の粘着剤層側の剥離シートを剥離し、露出したアクリル粘着剤層Aに対して、第2の硬質体である35mm×70mmの大きさのソーダライムガラス(セントラル硝子社製,厚さ:1.1mm,ヤング率:71GPa;
図3中、符号5)を貼合した。このとき、第1の硬質体上にある両面粘着シートの長さ方向の端部と、第2の硬質体の長さ方向の端部とが同じ位置になるように、第2の硬質体を両面粘着シートに貼合した(
図3参照)。このようにして、ソーダライムガラス(第2の硬質体)/アクリル粘着剤層A(第2の粘着剤層)/PETフィルム(芯材)/シリコーン粘着剤層A(第1の粘着剤層)/ソーダライムガラス(第1の硬質体)からなる積層体を得た。
【0124】
なお、本実施例では、手作業での貼付位置調整の容易さの観点から、先にシリコーン粘着剤層Aを第1の硬質体に貼付したが、工業的生産を考えた場合、第2の硬質体とアクリル粘着剤層Aとを先に貼合し、その後、シリコーン粘着剤層Aと第1の硬質体とを貼合してもよい。
【0125】
〔実施例2〜5,比較例1〜2〕
表2に示すように、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層の材料を変更する以外、実施例1と同様にして第2の硬質体/第2の粘着剤層/芯材/第1の粘着剤層/第1の硬質体からなる積層体を作製した。ただし、比較例1及び2では、芯材となるPETフィルム(東洋紡社製,PET A4300;厚さ38μm)の両面に、製造例で得られたアクリル粘着剤層/剥離シートの積層体を貼付することにより、剥離シート/アクリル粘着剤層B又はC/PETフィルム(芯材)/アクリル粘着剤層A/剥離シートからなる剥離シート付き両面粘着シートを得て、当該両面粘着シートを用いて、第2の硬質体/第2の粘着剤層/芯材/第1の粘着剤層/第1の硬質体からなる積層体を作製した。
【0126】
〔試験例1〕(ループタック試験)
製造例1〜6で作製した各粘着剤層の表面(芯材側とは反対側の表面)におけるループタックの剥離力を、以下のようにして測定した。製造例1及び2の粘着剤層については、幅25mm、長さ300mm、両端における遊び部25mmのテープ状に切断し、その後、未処理PETフィルムを除去した。一方、製造例3〜6の粘着剤層については、粘着剤層の露出面側をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,PET A4300,厚さ:38μm)と貼り合わせ、上記と同様にして切断し、その後、剥離シートを除去した。
【0127】
次いで、粘着剤層の面を外側にし、両端を揃えてループ状にして、引張試験機の上部つかみ(ヘッド部)に両端の遊び部を取り付けた。一方、引張試験機の下部つかみには、被着体であるソーダライムガラスを水平に取り付けた。続いて、ヘッド部からの距離が60mmになるまで試験片を被着体(ソーダライムガラス)に接触させ、15秒後に被着体を300mm/minで引き下げ、そのときの引き剥がし強度を測定し、その平均値をループタックの剥離力(N/25mm)とした。
【0128】
また、上記結果に基づいて、実施例および比較例で使用した第2の粘着剤層の剥離力(L2)に対する第1の粘着剤層の剥離力(L1)の比(L1/L2)を算出した。結果を表2に示す。
【0129】
〔試験例2〕(ジヨードメタン接触角の測定)
製造例1〜6で作製した各粘着剤層の表面(芯材側とは反対側の表面)の接触角(°)を、接触角計(協和界面科学社製,DM−701)を使用し、JIS R3257に準じて静滴法によって測定した。液滴としては、ジヨードメタンを使用した。結果を表2に示す。
【0130】
〔試験例3〕(リワーク性の評価)
実施例および比較例で作製した積層体からはみ出している両面粘着シートを万能型引張試験機(オリエンテック社製,テンシロンUTM−4−100)にセットし、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度90°の条件(上方への剥離)で、両面粘着シートにおける第1の粘着剤層の、第1の硬質体に対する剥離力(N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0131】
また、上記の剥離試験を行った後、第1の硬質体の表面における糊残りの有無を目視により確認し、以下の基準で糊残りを評価した。結果を表2に示す。
◎…糊残りが全くなかった。
○…貼合面積の20%未満の糊残りがあった。
△…貼合面積の20%以上50%未満の糊残りがあった。
×…貼合面積の50%以上の糊残りがあった。
【0132】
〔試験例4〕(段差追従性の評価)
(a)評価用サンプルの作製
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS−911墨」)を塗布厚が5μm、10μm、15μm及び20μmのいずれか1つとなるように額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm
2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10〜15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:5μm、10μm、15μm及び20μmのいずれか1つ)を有する段差付ガラス板を作製した。
【0133】
製造例で作製した各粘着剤層(剥離シート上の粘着剤層)を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET A4300,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、剥離シートを剥がし、粘着剤層を表出させた。そして、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように上記積層体を各段差付ガラス板にラミネートし、これを評価用サンプルとした。
【0134】
(b)評価用サンプルの評価
得られた評価用サンプルを、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。次いで、85℃、85%RHの湿熱条件下にて72時間保管し、その後、段差追従性を評価した。段差追従性は、粘着剤層により印刷段差が完全に埋められたか否かで判断し、印刷段差と粘着剤層との界面で隙間や気泡などが観察された場合は、印刷段差に追従できなかったと判断される。ここでは、段差追従性は、下記式に基づく段差追従率(%)によって評価した。結果を表2に示す。
段差追従率(%)={(隙間や気泡無く埋められた印刷段差の高さ(μm))/(粘着剤層の厚み:50μm)}×100
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
表2から分かるように、実施例で得られた両面粘着シートは、硬質体を剥離する場合におけるリワーク性に優れていた。また、当該両面粘着シートの第2の粘着剤層は、段差追従性に優れていた。