【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項によるカセットによって、インジェクタデバイスによって及び方法によって達成される。
【0010】
本発明によるカセットは、眼内レンズを受承するために形成され、このカセットは、眼内レンズを眼に導入するためのインジェクタデバイスに組み付けるために形成される。カセットは基部を含み、この基部上には2つのカバーフラップが上記基部に対して移動可能に、特に枢動可能に配置される。これら2つのカバーフラップは特に、それ自体の破壊を引き起こすことなく変形可能である。これは、これら2つのカバーフラップが、カセットの長手方向軸に対して垂直な基本形状から始まって、所定の様式で非破壊的に屈曲可能であり、これによって、この文脈においてカバーフラップの屈曲形状を変化させることができることを意味している。従って、カバーフラップの根本的な基本形状を、好ましくは少なくとも複数のセクションにおける屈曲形状によって変化させることができ、従ってこの屈曲を増減させることができるという意味において、カバーフラップの柔軟な本質的変形が可能である。カバーフラップのこのような本質的変形は、非破壊的な様式で逆方向に実行でき、従って複数回反復できる。カセットのカバーフラップ自体が変形可能であるというこのような構成により、カセット内での眼内レンズの折り畳みは、特にこのような閉鎖運動、即ちカセットの長手方向軸の周りでのカバーフラップの枢動において、カバーフラップの閉鎖とは完全に独立させることができ、かつカバーフラップの閉鎖によって所定の影響を受けるものとすることができる。ここでカバーフラップの本質的変形及び屈曲は特に、長手方向軸の周りでのカバーフラップの枢動運動において、長手方向軸に向かって提供され、これによりカバーフラップは、長手方向軸に対して垂直な平面内で観察した場合に、長手方向軸に向かって実質的に屈曲する。
【0011】
特に、弧状フラップセクションの基本位置において、カバーフラップは少なくとも特定の領域において湾曲し、またカバーフラップを閉鎖する際に、閉鎖によって、定義された自律的な様式でそれ自体が屈曲可能である。
【0012】
このカセットの有利な実装形態では、各カバーフラップは、基部と反対方向を向いた自由端部にT字型肉厚部分を有する。この構成により、カバーフラップのガイドされた枢動はここでも、特にインジェクタデバイスの閉鎖チップによって促進される。というのは、特に枢動運動が既に相当進んでおり、カバーフラップの位置が最終位置に近い場合、閉鎖チップに沿ったカバーフラップのスリップは不可能であり、従ってカバーフラップの望ましくない再開放が防止されるためである。更に、カバーフラップの端部のこのような構成により、機械的に極めて安定した、自立型の構成も達成され、これにより特にカバーフラップが閉鎖状態にある場合でも、断面が閉鎖された機械的に自己安定性の構造が提供される。これは特に、それ自体が屈曲可能なカバーフラップにおいて特に有利であり、上記カバーフラップは、これらの比較的堅固で機械的に安定したT字型肉厚部分によって閉鎖状態に保持され、従ってカバーフラップの破損は一切発生せず、閉鎖されたカセットの、対称性の高い断面形状が維持される。
【0013】
好ましくは、上記T字型肉厚部分は、これらが少なくとも一時的に、カバーフラップが閉鎖位置へと枢動する際の折り畳み安定器として、眼内レンズ上に静置されるよう成形されることが考えられる。これによりレンズは特にその側部領域において、特にその光学部分において、実質的にある程度まで取り囲まれ、折り畳みシナリオがサポートされ、かつ促進される。
【0014】
好ましくはカバーフラップは、カバーフラップを閉鎖する際に、まず肉厚部分の外側端部のみが接触し、フラップセクションは、更なる閉鎖と、肉厚部分の互いに対する接触によって変形可能である。これにより、特に正確で自発的な機構が形成され、これは特にフラップセクションの変形をガイドし、これによってカセット内でのレンズの所望の折り畳みが実行される。
【0015】
従って、カセット内での事前折り畳み時に眼内レンズが上向きにスリップすることも、好ましくは防止される。
【0016】
好ましくは、各肉厚部分は端部側接触表面を有し、その径方向寸法は、T字型又はT字状肉厚部分の外側のカバーフラップの径方向厚さよりも大きいことが考えられる。
【0017】
好ましくは、カセット及び閉鎖チップは、軸方向に観察した場合に互いに対して変位可能であることが考えられる。このような構成により、カセット内でのレンズの事前折り畳みは、大幅に促進された、明確に定義された方法で実行できる。
【0018】
好ましくは、カバーフラップの外側は、断面において観察した場合に段差のない外形推移を有さず、段差を有する。好ましくは、外側に少なくとも1つの隆起を有する。特にこの隆起は、カバーフラップを自動的に閉鎖するための閉鎖チップの係合をガイドするために形成される。
【0019】
好ましくは、断面(長手方向軸に対して垂直な平面)において観察した場合に隆起と端部側肉厚部分との間に形成された、上記肉厚部分と比べて(径方向に考えた場合に)薄い、フラップセクションは、それ自体を非破壊的に屈曲させることはできず、特に上記セクション又は領域のみが屈曲可能である。カバーフラップの他の部分に対する、それ自体屈曲可能な領域のこのような特定の局所的位置及び/又は長さにより、カセット内でレンズを屈曲させる改善されたシナリオに関する特定の利点が達成される。
【0020】
特に、カバーフラップ、特にフラップセクションはそれ自体が逆方向にも屈曲可能であり、これにより変形を繰り返し実行でき、かつ再度復元できることが考えられる。
【0021】
しかしながら、上記本質的変形は、所定の様式で塑性変形として、即ち1回のみ実施されることも考えられる。
【0022】
特に上記変形は、2つのカバーフラップの端部部品又は外側端部が、カバーフラップの閉鎖によって接触しているものの、まだその最終位置ではないときに、発生させることができ、これにより、端部部品の互いに対する支持力による更なる閉鎖動作において、カバーフラップの、特にフラップセクションの望ましい変形が自動的に発生する。これは好ましくは、上記端部部品が他の構成部品上で更に物理的に支持されることなく行われる。
【0023】
眼内レンズを眼に挿入するための本発明によるインジェクタデバイスは、本発明によるカセット又はその有利な実装形態を含む。
【0024】
このインジェクタデバイスは特に、眼内レンズ用の連続ガイドチャネルを有するインジェクタチップを含む。このガイドチャネルは後部入口及び前部出口を有する。これはインジェクタチップの、従ってガイドチャネルの、そしてインジェクタデバイスの、長手方向軸の方向に確認できる。ここで後部入口は、眼内レンズがインジェクタチップに入る場所を指し、その後眼内レンズはインジェクタチップを通過し、前部出口を出て眼に導入される。
【0025】
インジェクタデバイスは少なくとも2つの閉鎖チップを含み、これらは眼内レンズを受承するカセットを閉鎖するために形成される。2つの閉鎖チップは、インジェクタデバイスの長手方向軸の方向に観察した場合に、後部入口よりも更に後方へと軸方向に延在する。閉鎖チップの個数及び形状並びに局所的位置に関する構成によって、インジェクタデバイス内での眼内レンズの折り畳みを改善できる。プロング又はブレードと呼ぶこともできる上記閉鎖チップにより、位置に関して正確に、並びに状況及びタイミングに関して正確に、眼内レンズの折り畳みを極めて適切に開始でき、またこれに続く折り畳みを、眼内レンズの望ましくない急な折り畳み動作又は形状及び位置に関して望ましくない折り畳みを防止できるように行うことができる。
【0026】
好ましくは、閉鎖チップはインジェクタデバイスの長手方向軸の方向に、互いに対して平行に、離間して延在することが考えられる。このような配置により、閉鎖チップと、眼内レンズを受承するカセットとの間の、軸方向に行われる相対運動により、カセットのカバーフラップの特に均一な枢動が可能となる。これにより、望ましくない力の印加及び力のピークに関連する場合がある、眼内レンズの望ましくない急な折り畳み動作を防止できる。従ってこの文脈では、カセット内でのレンズの望ましくないスリップ又はねじれも防止できる。閉鎖チップが離間して配置されることにより、カバーフラップ上で生成されることになるてこ力に関する更なる利点も達成され、またこれら構成部品の互いに対する更なる軸方向変位により、閉鎖チップによるカバーフラップの側方支持も実質的に可能となる。従ってカセットは、閉鎖チップによって横方向に支持され、これによって閉鎖チップが多機能様式で構成される。この軸方向相対変位によってカセットのカバーフラップを閉鎖する、閉鎖チップの機能の他に、これらの閉鎖チップによるカセットのガイド機能及び側方安定化が更に追加される。特に、閉鎖チップの配置及び形状により、カセットの正確な軸方向変位も安定化される。
【0027】
好ましくは、閉鎖チップは、長手方向軸に関して互いに対称に形成及び配置されることが考えられる。上述の利点はこれによって更に促進される。
【0028】
好ましくは、閉鎖チップの自由後端部はテーパ付きであり、それぞれ屈曲したガイド表面を有することが考えられる。このような構成は、閉鎖チップがカセットと接触する際に障壁を乗り越える必要がなくなる(もし上記障壁を乗り越える必要がある場合には、軸方向変位運動の停止、更にはこの障壁を乗り越えるために力を増大させる努力が必要となる)ため特に有利である。閉鎖チップのこの特定の形状によってこれを回避でき、また閉鎖チップがカセット接触する際及びその後の、軸方向変位に関する急な動作のない連続的な運動シーケンスも可能となる。カバーフラップの、急な動作のない連続的な枢動運動は、これら屈曲したガイド表面によって特に好ましく達成される。ここでまた偶然にも、特に、カセット内での眼内レンズの望ましい折り畳みに関する上述の利点も発生する。
【0029】
好ましくは、好ましい実装形態において、ガイド表面が急峻なターン状の後部セクションを有することも考えられる。実質的に螺旋状の巻きの短いセクションを呈するこのねじ曲がったセクションにより、閉鎖チップとカセットとの間の軸方向相対変位も継続しながらの、インジェクタデバイスの長手方向軸の周りでのカセットのカバーフラップの極めて均一な枢動運動に関する、上述の利点が可能となる。
【0030】
好ましくは、この急峻なターン状の後部セクションは、その後端部が閉鎖チップの自由端部において始まり、上記自由端部は、インジェクタデバイスの長手方向軸への直線状の接続において、この急峻なターン状の後部セクションの前端部よりも離間している。これは、急峻なターン状の後部セクションの位置が、上記後端部から始まって、長手方向軸に向かう方向に湾曲していることを意味する。このような構成もまた、上述の利点をかなりの程度まで強固なものとする。更にこのような構成において、ガイド表面の前部セクションに対する、枢動するカセットのカバーフラップの漏斗状ガイドの促進も達成される。この前部セクションは好ましくはスリットとして形成され、これは、閉鎖チップに対するカセットの更なる軸方向変位によって、特に既に閉鎖されたカバーフラップをガイドする働きをする。
【0031】
好ましくは、後端部におけるガイド表面の傾斜、及びこれに伴う後端部におけるガイド表面に対する接線は、ガイド表面の前端部において形成される接線に対して60°〜100°の好ましい角度とすることが考えられ、上記2つの接線は1つの平面内に確認され、この平面はインジェクタデバイスの長手方向軸に対して垂直である。2つの端部間に位置するガイド表面がこれに対応して連続的に、段差を有することなく屈曲し、特に1方向のみに屈曲して1つの湾曲方向を有する場合、上記急峻なターン状のガイド表面はこれに対応して更に具現化される。
【0032】
上述の有利な実装形態において、少なくとも1つの閉鎖チップは頂部側を含み、これはガイド表面の上側縁部と隣接する。この頂部側は好ましくは平坦に形成される。更に閉鎖チップは外側も含み、これもまたガイド表面と隣接し、また上記頂部側とも隣接し、また好ましくは実質的に平坦に形成される。反対側には底部側が形成され、これは閉鎖チップの前部セクション内に実質的に延在し、この底部側は好ましくは湾曲して又は弧状に形成される。この文脈では、湾曲は好ましくは、頂部側及び外側に向かう方向に、従って好ましくは凸状に形成される。
【0033】
特に、上記急峻なターン状の後部セクションは薄い後端部を有し、これは中間厚さまで連続的に広がり、そして中間厚さからこの後部セクションの前端部まで再び連続的に薄くなる。このような仕様は、ガイド表面の表面形状を更に具体的に説明する。この構成により、改善されたガイドと、閉鎖チップの必要な支持機能によるカバーフラップの連続的な枢動とに関する上述の利点が、更に改善される。
【0034】
その一方で特に、上記端部と、これに伴ってガイド表面のテーパ領域端部もこのように薄くなることにより、前部側における初めの接触において、カバーフラップの外側との接触領域を極めて小さくすることができ、これにより、大きな摩擦又は機械的膨張がまず発生し得ない。その後ガイド表面が増大することにより、ガイド表面とカバーフラップとの間の機械的接触及び当接は増大し、これによってガイド挙動及び安定性が改善される。
【0035】
好ましくは、急峻なターン状の後部セクションは、長手方向軸に対して平行に延在するガイド表面の前部セクションに接合することが考えられる。このようにガイド表面が少なくとも2つのセクションに分離することにより、上述のような極めて異なる複数の機能性を達成できる。軸方向におけるこのような正確な配置により、複数の機械的要件に関して、及び上述の構成部品の軸方向変位が特定の一時的シーケンスにおいて及び特定の期間に亘って発生する場合に上記機械的要件が実質的に必要となる一時的段階に関して、必要とされる機能それぞれが極めて正確に達成される。
【0036】
好ましくは、ガイド表面は後部セクションを有し、この後部セクションは、垂直断面において確認される、頂部側の第1のS字型延長部分を有することが考えられる。ガイド表面の形状のこのような代替的構成においても、上述の利点は達成される。上記断面は、長手方向軸の方向又は長手方向軸に対して平行な方向に配向される。極めて具体的な方向及び全体の幾何学的形状の極めて具体的な側における、このような閉鎖チップの形状により、上述のような利点は異なる概念によって達成される。
【0037】
好ましくは、この更なる実装形態において、ガイド表面は後部セクションに第2のS字型延長部分を有し、これは、長手方向軸の方向の長さ全体に亘って観察した場合の少なくとも特定の領域において、第1のS字型延長部分よりも深い位置に位置することが考えられる。このような構成により、カセットに対する閉鎖チップの、急な動作のない軸方向の相対変位が可能となり、またその一方で、側部方向における高いガイド機能性及び安定性が可能となる。更に、カセットのカバーフラップの枢動挙動は特に促進され、支持される。
【0038】
好ましくは、閉鎖要素上又は閉鎖チップ上の第2のS字型延長部分は、反対側の他方の閉鎖チップに対面し、かつ上記他方の閉鎖チップに対して、閉鎖チップの第1のS字型延長部分よりも近接して配置される。従ってこの第2のS字型延長部分は、インジェクタデバイスの長手方向軸に対して垂直に観察した場合、第1のS字型延長部分よりも上記長手方向軸に近接している。特にこの具体的な位置決めにより、側方安定化及びガイドに関する上述の利点は促進される。
【0039】
第1及び第2のS字型延長部分の間の遷移部分は、少なくとも特定の領域に段差を有するように形成されることが考えられる。このような不連続な遷移部分の構成により、特にレール状の側方安定化による軸方向変位を構成及び維持できる。
【0040】
好ましくは、各閉鎖チップのガイド表面は前部セクションを有し、少なくともこれら前部セクションの間に、カセットのカバーフラップのための、軸方向のガイド用のガイドスリットが形成されることが考えられる。
【0041】
これに関して達成される利点は既に詳細に説明されている。特に、閉鎖チップの後部セクションの特定の形状の、上述の第1の実施形態では、長手方向軸に対して垂直に観察した場合のこのガイドスリットの幅は、ガイド表面の後部セクション間の距離より短い。このような狭いガイドスリットにより、特に閉鎖されたカバーフラップのための、閉鎖チップに対する更なる軸方向変位を伴う正確に適合したガイドが可能となり、これにより、カバーフラップが偶然に部分的に再び開くことが防止され、更に長手方向軸の周りでカセットが完全に1回転することも防止される。従って、インジェクタチップのガイドチャネル内への導入前にカセット内で事前に折り畳まれたこの状態において達成される、眼内レンズの位置は、不変のまま所定の位置に正確に維持される。インジェクタチップのガイドチャネル自体の更なる折り畳みを必要に応じて続行でき、ガイドチャネルの出口においてレンズの正確な最終的な折り畳みが達成され、この最終的な折り畳みは、特に小さな切開部を用いて導入を達成できるようにするために、レンズを眼に最適に導入できるようなものである。
【0042】
好ましくは、閉鎖チップは、特にインジェクタチップと隣接するインジェクタチューブ内に形成されたカセット用の溝状受承空間内へと延在し、受承空間の前部境界壁の内側と接合することが考えられる。このような構成により、閉鎖チップは機械的に安定した状態で固定され、その一方で、若干沈んだ位置に、保護されるように配置される。これにより、他の構成部品による望ましくない打撃を防止でき、閉鎖チップの屈曲又は破損を防止できる。
【0043】
好ましくは、閉鎖チップはインジェクタチップと一体として形成されることが考えられる。好ましくは、閉鎖チップとインジェクタチューブとの一体構成も考えられる。特に閉鎖チップはそれぞれ、インジェクタチップ及び/又はインジェクタチューブと一体の構成で、プラスチックで一体として形成され、その後一体型本体がそれぞれ形成される。
【0044】
好ましくは、眼内レンズを受承するためのカセットを有し、このカセットは基部を含み、カバーフラップはこの基部上に、基部に対してインジェクタデバイスの長手方向軸の周りで枢動可能に配置されることが考えられる。これらのウィング又はカバーフラップにより、カセットへの眼内レンズの、特に簡単な、容易にアクセス可能な導入が可能となり、更に、カセット内での更なる事前折り畳みを、特に好適な方法で実行できるようにもなる。
【0045】
特に、眼内レンズはカセット内に事前に配置される。
【0046】
カセットは、カセットが別個のモジュールとなり、特に医療従事者であるユーザによってインジェクタデバイスに機械的に取り付けることができるように、形成できる。しかしながら、カセットが事前にインジェクタデバイスに取り付けられており、これに対応して、インジェクタデバイスの製造者から医療従事者にカセットが提供されることも考えられる。
【0047】
好ましくは、カセットもまた、特にプラスチックで一体として形成される。この文脈では、有利な実装形態では膜ヒンジであってよいスイング式ヒンジを介して、基部がカバーフラップに接続されると有利である。
【0048】
好ましい実装形態では、カバーフラップは少なくとも特定の領域において屈曲又は湾曲して形成されることも考えられる。
【0049】
好ましくは、インジェクタデバイスは特に、インジェクタチップに隣接するインジェクタチューブ内に形成された、カセット用の溝状受承空間を有し、この溝状受承空間は少なくとも1つの軸方向ガイドトラックを含み、この軸方向ガイドトラックにより、ガイドチューブとカセットとの間の相対運動が軸方向にガイドされることが考えられる。これにより上記相対運動は、遥かに明確に定義された様式で事前に設定され、維持される。
【0050】
好ましくは、ガイドトラックはインジェクタチューブの底部のスリット又は溝又は孔である。インジェクタチューブ自体は極めて安定であるため、これは特に有利には、カセット用の支持体として好適であり、またこの文脈において、ガイドトラックを極めて直線状に維持して、ねじれないようにすることができる。これにより軸方向変位は、遥かに明確に定義された様式で、また急な動作のない状態で実施できる。詰まり又は閉塞は防止される。更にこれにより、ガイドトラックの一体構成が達成され、これは設置空間を節約できる。
【0051】
インジェクタデバイスが支持体スライドを有し、また眼内レンズを有するカセットがこの支持体スライド内に受承されると特に有利である。まずこれによって、場合によっては僅かに繊細に構成されるカセットが、そして特にカバーフラップ自体が屈曲可能である場合には、支持体スライドによって、堅固で機械的に安定な構成部品が提供され、上記支持体スライドは、有利には一方ではカセットの受承、他方ではカセットの運動を可能とする。インジェクタデバイスの他の構成部品との機械的相互作用が上記支持体スライドによって達成され、特にインジェクタチューブ及び閉鎖チップに対する軸方向相対運動がこの支持体スライドによって空間的にガイドされる。
【0052】
好ましくは、支持体スライドは、上述の利点が促進されるよう、ねじれに対する耐性が高くなるように形成された寸法で形成される。好ましくはカセットは支持体スライドの内部に完全に受承され、これによってカセットはその周囲が保護されるものの、前側及び後側からアクセス可能となる。
【0053】
好ましくは、支持体スライドは管状に形成され、カセットはこの支持体スライドの内部に、特に位置が固定された様式で配置されることが考えられる。これにより、上述の利点をある程度達成できる。好ましくは、支持体スライドはインジェクタデバイスの受承空間内に配置され、これにより支持体スライドをここでもある程度埋め込むことができ、側方及び下方から支持された状態で位置決めできる。
【0054】
好ましくは、インジェクタチューブとカセットとの間の相対運動を軸方向にガイドすることが考えられる。このために支持体スライドはこれに対応してインジェクタデバイスに、特にインジェクタチューブに連結される。
【0055】
好ましい実装形態では、支持体スライドは、その変位しない基本位置において、閉鎖チップに対して後方に位置する受承空間内に位置決めされることが考えられる。この文脈において、受承空間は有利には、閉鎖チップ及びこの支持体スライドを、インジェクタデバイスの長手方向において観察した場合に互いに対して実質的に直列に配置できるよう、寸法決定される。このようにして、支持体スライドを受承空間に極めて簡単かつユーザフレンドリーな方法で装填でき、また閉鎖チップ及び支持体スライドの両方に対するアクセシビリティが、制約のない様式で可能となる。更に、特に上述のような受承空間の寸法決定と、閉鎖チップとカセットを有するこの支持体スライドとの間の相対軸方向変位の望ましいシナリオとにより、最大限の考慮が行われ、これにより、構成部品を互いに対して軸方向に変位させることによる、閉鎖チップの特定の形状によって完全に定義されるカバーフラップの運動のシナリオを、完全に有効とすることができる。
【0056】
好ましくは、支持体スライドは把持要素を有し、ユーザはこれを把持でき、カセットを有する支持体スライドは、ユーザがガイドする様式で、インジェクタデバイスの他の構成部品に対して、受承空間の前端部へと軸方向に変位されることが考えられる。このような構成では、インジェクタチューブはインジェクタデバイスのピストンチューブに固定接続され、ここでピストンをピストンチューブに押し込むことによって、眼内レンズをカセットからインジェクタチップ内、特にガイドチャネル内へとシフトさせる。従ってこの構成では、カセットを有する支持体スライドだけを移動させ、軸方向に変位させることで、構成部品間の軸方向相対変位が達成される。
【0057】
代替構成では、支持体スライドはインジェクタデバイスのピストンチューブ上に、位置を固定して配置され、また、インジェクタチップが配置される、受承空間を有するインジェクタデバイスのインジェクタチューブは、カセットを有するピストンチューブに対して軸方向に変位できることが考えられる。従ってこの構成では、カセットを有する支持体スライドはアクティブに変位されず、インジェクタチューブは、ユーザによってピストンチューブに対して実質的に変位される。
【0058】
好ましくは、支持体スライドはその底部にガイドブレードを有し、これはインジェクタチューブ内のガイドトラックと係合することが考えられる。このような構成によって、支持体スライドとインジェクタチューブとの間の極めて単純な機械的連結が可能となり、軸方向運動のガイドが極めて簡単に実行できる。更に、長手方向軸に対して側方又は斜め方向の望ましくない運動が防止される。
【0059】
好ましくは、ガイドブレードは可撓性ロック要素として形成される。これらのロック要素はスナップイン要素としても形成でき、これらは構成部品の単純かつ確実な機械的連結を可能とし、ガイドトラックの後ろに係合する。この文脈では、ガイドトラックが孔又はスリットであり、これによって、ロック要素の形態のこれらガイドブレードがガイドスリットを通って延在し、スリットの縁部に実質的に位置してスリットの縁部をその外側で取り囲むと有利である。これにより、上述の利点は特に促進される。
【0060】
好ましくは、閉鎖チップのための係合空間は、支持体スライドの内壁と、カセットの枢動可能なカバーフラップの外側との間に形成されることが考えられる。この構成により、カバーフラップの枢動のためのカバーフラップの十分な運動が可能となり、その一方でこの枢動の好適なガイドも依然として達成される。
【0061】
好ましくは、閉鎖チップ及びカセットは、カセットと閉鎖チップとの間の軸方向相対変位において、閉鎖チップは、開いたカバーフラップの外側に接触し、カセットと閉鎖チップとの間の互いに対する更なる軸方向変位において、カバーフラップはインジェクタデバイスの長手方向軸の周りで自動的に枢動可能であり、閉鎖チップによって閉鎖可能であることが考えられる。ここで達成される利点については既に広範囲に亘って説明されている。
【0062】
好ましくは、支持体スライドの内壁の天井側は、湾曲して形成され、特にドーム状に形成され、その曲率半径は、少なくとも特定の領域において、カバーフラップの曲率半径よりも大きい。これにより、カバーフラップの閉鎖は、妨害のない望ましい様式で実施できる。
【0063】
特に、カバーフラップは、インジェクタデバイスの長手方向軸の周りで枢動する際、枢動中の少なくとも特定の段階において、又は一時的に、天井側に当接し、これによってそれ自体が屈曲可能となることが考えられる。特にこれは、カバーフラップ自体が屈曲可能であるこの構成によって提供できる。従って、閉鎖時のこの本質的な屈曲は、これに対応して定義される様式で実施される。従ってこの定義される実施は、屈曲の度合い、及びカバーフラップの枢動中に屈曲を実施する時点の両方に関して有効である。変形の度合い及び/又は時点に関するシナリオは自動的に実施される。
【0064】
好ましくは、カバーフラップの自由端部におけるT字型又はT字状肉厚部分は、カバーフラップの、特に弧状フラップセクションの本質的な屈曲による枢動において、T字状肉厚部分の接触表面の外側端部のみと接触することが考えられる。従ってまず、肉厚部分間の直線状の又は極めて小さい領域の機械的接触が達成される。これは、更なる閉鎖動作において、それ自体が屈曲したカバーフラップの所定の運動シナリオを実施することにより、カバーフラップを再び変形していない基本形状とするために特に有利であり、続いてこの動作において、カセット内での眼内レンズの事前折り畳みを、定義したように完了させることもできる。
【0065】
好ましくは、カバーフラップ及び肉厚部分は、カバーフラップの最終閉鎖位置への、長手方向軸の周りでの更なる枢動において、これらT字状肉厚部分の接触表面が互いに対して傾斜し、カバーフラップ自体の屈曲した状態が自動的にその基本位置に復帰できるように形成される。この文脈では、上記基本位置は弧状フラップセクションによって提供されるが、弧状フラップセクションはそれ自体が屈曲した状態よりも僅かに屈曲が浅い。
【0066】
カセットの好ましい実装形態では、カセットはカバーフラップの他に、レンズ用の上向きに枢動可能な保護カバーを有することが考えられる。従ってこの保護カバーは、カバーフラップ以外の追加の更なる構成部品である。これにより、上方への落下又は長手方向軸の方向における望ましくない前方へのスリップが防止される。
【0067】
好ましくは、保護カバーはカセットの基部に対して相対的に枢動可能である。特に保護カバーは、膜ヒンジを介して基体又は基部に接続され、基体又は基部に対して上向き及び下向きに枢動可能である。
【0068】
好ましくは、保護カバーは前方に延在するフック型保護ブラケットを有する。これによって上述の利点は特に達成され、カバーフラップはその形状及び開放状態における局所的位置決めに関して制約を受けない。
【0069】
好ましくは、保護カバーはカバーフラップが開いた状態において閉鎖されることが考えられる。
【0070】
特に好ましい実装形態では、保護カバーはリフティング要素、特にリフティングフランクを有することが考えられ、これは、カバーフラップの閉鎖中及びカセットの長手方向軸の周りでのカバーフラップの枢動中にカバーフラップと接触し、カバーフラップの更なる閉鎖時に保護カバーを自動的に開くことができる。
【0071】
更に本発明は、カセット内で眼内レンズを折り畳むための方法に関し、上記カセットは、眼内レンズを眼に導入するためのインジェクタデバイス内に配置されるように形成され、カセットの基部に配置された2つのカバーフラップは、カセットを閉鎖するために、カセットの長手方向軸の周りで枢動し、カバーフラップは更に、閉鎖時に眼内レンズに向かってそれ自体が屈曲し、これにより眼内レンズは、カバーフラップを枢動させること及びそれ自体の上記屈曲によってカセット内で事前に折り畳まれる。これによって達成できる利点については既に上述されている。
【0072】
好ましくは、カセットを閉鎖チップに対して軸方向に変位させる際、支持体スライドと、上記支持体スライドに受承されたカセットとの間で、閉鎖チップの係合が達成される。閉鎖チップは、ガイド表面を有するカバーフラップの外側に当接し、ガイド表面の形状によって、閉鎖チップとカセットとの間の更なる軸方向のみの変位において、カバーフラップがその最終閉鎖位置へと遷移する。閉鎖チップとカセットとの間の、上記更なる軸方向のみの相対変位のみによって、カセットのカバーフラップは長手方向軸の周りで自動的に枢動して閉鎖される。特に、閉鎖されたカバーフラップは、閉鎖チップの間のガイドスリット内で更にガイドされる。これは好ましくは、カセットとインジェクタデバイスのインジェクタチューブとの間の最終位置が達成されるまで実施され、その後眼内レンズはカセットからインジェクタチップ又はインジェクタチップのガイドチャネル内へとシフトされる。
【0073】
本発明による方法の更なる有利な実装形態は、インジェクタデバイス又はカセットの有利な実装形態によって構成される。インジェクタデバイス及びカセットに関して本明細書で言及した、目的となる特徴は、対応する方法ステップを実現するために独立して又は組み合わされた状態で機能する。
【0074】
「後部(rear)」又は「前部(front)」に関して、これは、長手方向軸の方向において観察した場合に、及びインジェクタチップに関して、互いに対して定義される。
【0075】
更に本発明は、眼内レンズ用の包装及び輸送デバイスに関する。本デバイスは、輸送コンテナと、本発明によるインジェクタデバイス又はその有利な構成とを含む。インジェクタデバイスは輸送コンテナに導入でき、特に包装及び輸送デバイスの最終状態において、インジェクタデバイスは輸送コンテナ内に、位置が安定した状態で配置される。包装及び輸送デバイスのこの最終状態において、眼内レンズはインジェクタデバイス内に配置される。この眼内レンズ用の包装及び輸送デバイスにおいて、上述の利点が明らかに功を奏する。操作性が改善される以外に、眼内レンズの損傷を低減できる。更に、外科手術における必要な使用時に眼内レンズを輸送コンテナから除去するために、例えばピンセット等のような追加の副次的ツールは必要ない。
【0076】
好ましくは輸送コンテナは滅菌液を含み、レンズはこの滅菌液中に浸漬された状態で配置される。包装後、即ち輸送時、レンズはこの滅菌液に包囲され、これによっても望ましくない汚染を回避できる。特に、輸送コンテナは、頂部側において外被によって閉鎖され、これによっても、汚染物質は輸送コンテナの受承空間に入ることができない。更にこれに関して、液体を失わずに運送が可能である。
【0077】
好ましくは、輸送コンテナの滅菌され細菌が存在しない閉鎖は、上記外被によって保証される。従ってここで、閉鎖の接着又は熱溶接接続を提供できる。従って、輸送コンテナは保管及び輸送のために完全に閉鎖される。輸送コンテナ内の保持デバイス及び眼内レンズを視認できるよう、外被は少なくとも特定の領域において透明に形成できる。眼内レンズの特徴を決定するパラメータに関する情報を外被上に表示できる。
【0078】
全体として、包装及び輸送デバイス並びにインジェクタデバイスによってシステム全体が提供され、これは、レンズの製造及び包装からレンズを眼に挿入するまでの、極めて機能的な手順を保証する。これは特に、レンズの滅菌作業及び殺菌処理に関して、並びにレンズ使用時のユーザフレンドリーな操作性及び整理されたシーケンスに関して、改善される。このようなレンズを外科手術で実質的に使用する場合、本発明による眼内レンズの包装及び輸送デバイス又はその有利な構成は、医療従事者に事前に提供され、外被を輸送コンテナから除去することによって包装を開封する必要があるだけである。医療従事者は輸送コンテナからインジェクタデバイスを取り外し、上述の初期運動を実施するだけで、レンズを有するインジェクタチップの更なる自動装填を達成できる。
【0079】
受承コンテナの前側開口部のうちの少なくとも1つが極めて薄い箔によって閉鎖される場合、眼内レンズをカセット内に事前に直接導入することによってカセットを多機能様式で形成できるようになる。従ってこれは輸送コンテナの機能も一体として有する。従って本発明によるカセットは、一方では輸送コンテナ自体を構成し、また一方では、インジェクタデバイスに接続される又はインジェクタデバイスに接続でき、かつインジェクタデバイスに接続された状態において内部に配置された眼内レンズをカセットの外へとシフトさせることができる、構成部品を正確に構成する。上記箔によって機械的に安定な閉鎖も可能となり、またこれによりカセット内に眼内レンズを滅菌状態で保管できる。
【0080】
好ましくは、平衡塩類溶液又は純水を受承コンテナの内部に配置する。これにより、受承コンテナ内に配置される眼内レンズは滅菌状態で保管される。
【0081】
前側の少なくとも1つに箔を取り付けることによって、この箔は、後で受承コンテナから眼内レンズを出すことができるようにするための努力が僅かしか必要ない簡単な様式で処理することもできる。これは特に、インジェクタデバイスのピストンによってこの眼内レンズをこのカセットから出るようにシフトさせる場合に当てはまる。
【0082】
従って特に、カセットの完成後、眼内レンズを受承コンテナ及び平衡塩類溶液中に導入する。その後、開口部のうちの少なくとも1つの箔で閉鎖する。従って、このようにして提供されたカセットは、気密的に閉鎖された受承コンテナを含み、眼内レンズは滅菌状態でこの受承コンテナ内に事前に保管されて一体化される。このようにして形成されたカセットは更に、インジェクタデバイスに事前に一体化でき、これによって完全なインジェクタデバイスを事前に提供でき、その後任意に配送して外科医に提供できる。従って、このような構成において、作業量、特に組み立てのための努力の量が最小化される。
【0083】
箔が共押出タイプの箔であれば特に有利である。このような特別な箔に関して、箔による開口部の気密性の密閉を、際立った様式で保証できる。またその一方で、これにより、受承コンテナの内部に望ましくない汚染物質が入ることができないよう、特に滅菌状態の障壁を箔によって生成することも達成される。更にこの共押出タイプの箔はまた、後に眼内レンズをカセットの外へとシフトさせる際に除去又は穿孔するにあたって望ましい可撓性を保証する。
【0084】
共押出タイプの箔がアルミニウム層を有すると有利である。ここでアルミニウムは、箔の滅菌障壁を際立った様式で達成できる材料である。
【0085】
有利には、共押出タイプの箔がプロピレンを有し、特にプロピレン層を含むことが考えられる。特にこの材料成分は、受承コンテナへの気密性の密閉及び取り付けに好適である。ここでプロピレン材料は、特に気密性の高い様式で、受承コンテナの材料に接続できる。
【0086】
好ましくは、共押出タイプの箔は、ポリプロピレン層を有するように形成され、その上にアルミニウム層が形成される。そしてアルミニウム層はまた、好ましくはニス又は他のコーティングで被覆される。
【0087】
好ましくは、箔は開口部上に2層で形成されることが考えられる。これは特に、受承コンテナに近い方の層が受承コンテナに緊密に連結されることによって密閉及び滅菌障壁が保証されるように設計される。受承コンテナと反対側の第2の層は特に、第1の層との重複領域において第1の層に特に緊密に連結されないように設計される。これにより、第1の層の特定の相対運動性が保証される。特にカセットは、水媒体(純水又は塩水)中で親水性レンズを保管するための受承コンテナとすることができる。
【0088】
好ましくは、カセットは蒸気で滅菌され、インジェクタチップ及びインジェクタチューブは酸化エチレンで滅菌されることが考えられる。
【0089】
本発明の更なる特徴は、請求項、図面、図面の説明から明らかである。発明の概要において上述した特徴及び特徴の組み合わせ、並びに以下で図面の説明において説明する及び/又は単に図面に示す特徴及び特徴の組み合わせは、明記されている各組み合わせのみならず、本発明の範囲から逸脱しない他の組み合わせで又は単独で使用できる。従って、明確に図示及び説明されていないものの、記載されている説明からの別個の特徴の組み合わせから派生する、及び上記組み合わせから生成できる実装形態もまた、本発明によって包含され、開示されているものと見做される。
【0090】
これより、本発明の実施形態を概略図に基づいて更に詳細に説明する。