特許第6197110号(P6197110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6197110負荷遮断のときのアクティブ整流器のための過電圧保護
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197110
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】負荷遮断のときのアクティブ整流器のための過電圧保護
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/155 20060101AFI20170904BHJP
   H02M 7/162 20060101ALI20170904BHJP
   H02M 7/219 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   H02M7/155 G
   H02M7/162
   H02M7/219
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-520534(P2016-520534)
(86)(22)【出願日】2014年6月24日
(65)【公表番号】特表2016-521963(P2016-521963A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2014063230
(87)【国際公開番号】WO2015007467
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2015年12月22日
(31)【優先権主張番号】102013213802.4
(32)【優先日】2013年7月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】オッテ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】メーリンガー パウル
【審査官】 戸次 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−019655(JP,A)
【文献】 特開平10−127062(JP,A)
【文献】 特開平09−219938(JP,A)
【文献】 特開平04−178170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
H02M3/00−3/44
7/00−7/98
H02P9/00−9/48
21/00−25/03
25/04
25/10−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の交流電圧接続部(u−y)と、2つの直流電圧接続部(B+,B−)と、前記複数の交流電圧接続部(u−y)に呼応する数のハーフブリッジ(U−Y)とを有するブリッジ整流器(1)であって、
各々の前記ハーフブリッジ(U−Y)は2つの前記直流電圧接続部(B+,B−)の間に直列につながれて制御可能な2つの切換部材(S1−S10)を有しており、これらの間でそれぞれ1つの前記交流電圧接続部(u−y)が接続されており、
各々の前記ハーフブリッジ(U−Y)は、2つの前記直流電圧接続部(B+,B−)の間に印加される出力電圧(301)を検出して、それぞれの前記ハーフブリッジ(U−Y)の2つの前記切換部材のうち第1の切換部材(S1−S10)を、前記出力電圧(301)が上側の閾値(30U−30W)を上回った後に下側の閾値(31U−31W)を下回るまでは第1の制御信号による制御によって導通へと切り換えるとともに、
前記出力電圧(301)が下側の閾値(31U−31W)を下回った後に上側の閾値(30U−30W)を上回るまでは第2の制御信号による制御によってクロック式に制御するためにセットアップされた制御回路(4U−4Y)を含んでいる、そのようなブリッジ整流器において、
各々の前記制御回路(4U−4Y)は、前記出力電圧(301)が前記上側の閾値(30U−30W)を上回った後に前記下側および/または上側の閾値(30U−30W,31U−31W)の変更を開始するためにセットアップされた閾値手段(A2)を有しており、
前記制御回路は、前記出力電圧(301)が前記上側の閾値(30U−30W)を上回った後所定のタイムスロット経過後に前記第1の切換部材(S1−S10)を導通へと切り換え、および/または、前記出力電圧(301)が前記下側の閾値を下回った後所定のタイムスロット経過後に前記第1の切換部材(S1−S10)をクロック式に切り替えるよう制御を行う、
ことを特徴とするブリッジ整流器。
【請求項2】
前記閾値手段(A2)は前記出力電圧(301)が前記上側の閾値(30U−30W)を上回った時点から前記下側の閾値(31U−31W)を連続的に引き上げるためにセットアップされている、請求項1に記載のブリッジ整流器(1)。
【請求項3】
前記閾値手段(A2)は、コンパレータの出力部につながれたRC素子と接続された閾値入力部を有するヒステリシス回路として構成されたコンパレータを含んでいる、請求項2に記載のブリッジ整流器(1)。
【請求項4】
前記制御回路(4U−4Y)および/または制御可能な前記切換部材(S1−S10)へ第2の制御信号を提供するためにセットアップされた制御ユニット(3)を含んでいる、請求項1から3のうちいずれか1項に記載のブリッジ整流器(1)。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか1項に記載のブリッジ整流器(1)を有する自動車の車内電力網(4)において、前記交流電圧接続部(u−y)が発電機(2)の位相接続部と接続されており、前記2つの直流電圧接続部(B+,B−)は前記車内電力網(4)の少なくとも1つの電力消費部(R1)への供給をするためにセットアップされている、自動車の車内電力網。
【請求項6】
少なくとも1つの車内電力網キャパシタンス(C1)および/または車内電力網インダクタンス(L1)をさらに有している、請求項5に記載の自動車の車内電力網(4)。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のブリッジ整流器(1)および/または請求項5または6に記載の自動車の車内電力網(4)を作動させる方法において、
前記方法は次の内容を含んでおり、
すなわち負荷遮断が生じたとき、前記出力電圧(301)が上側の閾値(30U−30W)を上回った後に下側の閾値(31U−31W)を下回るまでは少なくとも2つのハーフブリッジ(U−Y)の2つの切換部材(S1−S10)のうちそれぞれ第1の切換部材(S1−S10)を第1の制御信号による制御によって導通へと切り換えるとともに、前記出力電圧(301)が前記下側の閾値(31U−31W)を下回った後に前記上側の閾値(30U−30W)を上回るまでは第2の制御信号による制御によってクロック式に制御し、前記出力電圧(301)が前記上側の閾値(30U−30W)を上回った後に前記制御回路(4U−4Y)の下側および/または上側の閾値(30U−30W,31U−31W)の変更がそのつど開始される方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法を実施するためにセットアップされている、請求項1から4のいずれか1項に記載のブリッジ整流器(1)のための、もしくは請求項5または6に記載の自動車の車内電力網のための制御ユニット(3)。
【請求項9】
計算ユニットで実行されたときに請求項7に記載の方法が実施されるように計算ユニットへ指示をする、請求項8に記載の制御ユニット(3)へ指示をするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷遮断のときの過電圧から保護するための手段を有するアクティブブリッジ整流器、そのような種類のブリッジ整流器を備えた自動車の車内電力網、これに対応する作動方法、およびそのような作動方法を具体化するための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
三相システムから直流システムの供給をするために、さまざまな型式の整流器を利用することができる。自動車の車内電力網では、そこに通常取り付けられている三相発電機に対応して、6パルス式のブリッジ整流器がしばしば用いられる。しかしながら本発明は、それ以外の相数についても、たとえば5相発電機についても同様に適している。
【0003】
ブリッジ整流器における1つのクリティカルな故障ケースは負荷遮断(英語Load dump)である。負荷遮断が発生するのは、発電機が高度に励起されていて電流が相応に高く放出されているときに、発電機ないしこれと接続されたブリッジ整流器で(たとえば電力消費部がオフになることによって)負荷が急激に低下し、直流電圧網の容量として作用する部材(たとえば自動車の車内電力網にあるバッテリ)によってそれを捕捉することができない場合である。その場合、発電機ないしこれと接続されたブリッジ整流器によって、極端なケースでは最大で300から500msまでの時間のあいだエネルギーがさらに自動車の車内電力網へ送られる可能性がある。そのようなエネルギーは、自動車の車内電力網の電気部品を過電圧障害から保護するために、ブリッジ整流器で捕捉できなければならない。このことはパッシブブリッジ整流器では、通常、そこに取り付けられている整流器ダイオードによって行われ、そこで余剰のエネルギーを熱に変換することができる。
【0004】
しかし、たとえば特許文献1で説明されているように、自動車ではアクティブブリッジ整流器を採用するのが望ましく、その理由は特に、それがパッシブ型ないし制御されないブリッジ整流器とは異なり、低い損失出力を有していることにある。しかしながら、このような種類のアクティブブリッジ整流器のために現在入手できる制御可能ないしアクティブ型の切換部材、たとえばMOS電界効果トランジスタは、過電圧をダイオードのように低減することができない。したがってアクティブブリッジ整流器では、追加の保護仕様が必要となる。
【0005】
負荷遮断が生じたとき、たとえば上側または下側の整流器分路の全部の切換部材の導通切換によって、発電機位相を一時的に短絡させることができ、それはたとえば特許文献2に開示されており、特許文献1でも検討されている。このことは特に、アクティブブリッジ整流器の直流電圧接続部に印加される出力電圧の評価に基づいて行われる。この出力電圧が設定された上側の閾値を上回ると、相応の短絡が開始されて出力電圧が低下する。それによって出力電圧が所定の下側の閾値を下回ると、短絡が再び解消される。出力電圧があらためて上昇していく。すなわち、これは典型的なヒステリシス挙動である。したがって、負荷遮断が生じると出力電圧が実質的に上側と下側の閾値の間を往復し、それは、電圧制御がこの新たな状況に合わせて適合化されて、発電機の励起領域が相応に低減されるまで続く。
【0006】
その場合、個々のハーフブリッジが、それぞれ個別に出力電圧を検出する独立した制御回路をそれぞれ有する、いわゆる分散型に構成されたアクティブブリッジ整流器では問題が生じる可能性がある。その場合、ある程度の許容差が不可避であるために、以下で説明するように、個々のハーフブリッジでそれぞれ異なる切換挙動が生じ得る。その結果、アクティブブリッジ整流器の個々の切換部材が明らかに過負荷になる可能性があり、このことは、相応の切換部材の熱による破損および不具合につながりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102009046955A1号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第19835316A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、負荷遮断のときのアクティブブリッジ整流器を保護するための改善された仕様の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上を背景としたうえで本発明は、それぞれ独立請求項の構成要件を有する、負荷遮断のときの過電圧から保護するための手段を有するアクティブブリッジ整流器、そのような種類のブリッジ整流器を備えた自動車の車内電力網、これに対応する作動方法、およびそのような作動方法を具体化するための手段を提案する。
【0010】
本発明は、前述したとおり、負荷遮断が生じたときのアクティブブリッジ整流器の作動に関するものである。上述のように、このような種類の動作は、発電機位相ないしこれに対応するアクティブブリッジ整流器の交流電圧接続部を、上側の閾値を上回ったときに、整流器分路の制御可能ないしアクティブ型の全部の切換部材の同時の制御(およびこれに伴って同時の導通切換)によって相互に導通接続し(短絡させ)、下側の閾値を下回ったときに相応の短絡を再び同時に解消することを含むことができる。個々のハーフブリッジが、アクティブブリッジ整流器の直流電圧接続部に印加される出力電圧をそれぞれ個別に検出する独立した制御回路をそれぞれ有する、前述のように分散型に構成されたアクティブブリッジ整流器においても、このような種類の動作が尽力されているが、従来技術では、冒頭に説明した電圧認識部および/またはこれに後置された制御回路の部材の許容差に基づき、必ずしも実現されていない。それに対して本発明による方策は、特別に好ましい形態でこの種の動作を可能にする。
【0011】
前述した許容差に基づき、たとえばそれぞれの比較回路の間の誤差によって、閾値がそれぞれ相違するという事態が生じる可能性がある。
【0012】
下側の閾値がそれぞれ相違しているときのケースが、特別にクリティカルであることが判明している。もっとも低い有効な下側の閾値を有する制御回路よりも前に、他のすべてのハーフブリッジの制御回路が通常の動作を再び開始するので、出力電圧が再び上昇していく。したがって、もっとも低い有効な下側の閾値を有する制御回路は、このもっとも低い有効な下側の閾値を下回る出力信号を一度も検出しないことになる可能性がある。したがって、これに応じて制御される切換部材は継続的に導通切換されたままに保たれる。
【0013】
つまり状況によっては、個々の位相が通常の整流を再び開始しているのに対して、他の位相は継続的に短絡のままに維持されている。このような挙動は、以下で説明する図3から5に示すとおり、発生する相電流の非対称性をもたらすことになる。それに基づき、整流器の個々の切換部材が明らかに過負荷になる可能性があり、このことは、相応の切換部材の熱による破損をもたらす恐れがある。それに伴ってアクティブブリッジ整流器の早期の不具合、または負荷遮断により引き起こされる過電圧の不十分な制限が考えられる。
【0014】
アクティブブリッジ整流器は、一般に知られているとおり、それぞれの切換部材によって上側および下側、ないし、ハイサイド整流器分路およびローサイド整流器分路を定義するハーフブリッジを有している。上側ないしハイサイドの整流器分路に配置された切換部材によって、1つまたは複数の交流電圧接続部と正の直流電圧接続部との接続をそれぞれ成立させることができ、また、下側ないしローサイドの整流器分路に配置された切換部材によって、1つまたは複数の交流電圧接続部と負の直流電圧接続部との接続を成立させることができる。すなわち各々のハーフブリッジは、2つの直流電圧接続部の間に直列につながれて制御可能な2つの切換部材を有しており、これらの間でそれぞれ1つの交流電圧接続部が接続されている。
【0015】
交流電圧接続部により、アクティブブリッジ整流器は相応数の発電機位相と接続されており、直流電圧接続部が直流電圧車内電力網に供給を行う。負の直流電圧接続部は特にアースにつなぐことができる。直流電圧接続部には、アクティブブリッジ整流器が整流動作にあるとき、接続されている電力網の車内電力網電圧に相当していてよい出力電圧が印加される。当然のことながら、たとえばハイブリッド車両では電動モータを整流するために、相応のアクティブブリッジ整流器を逆変換式に作動させることもできる。このような種類の動作段階についてはここでは考察しない。しかしながら、本願で発電機が話題となるとき、それは発電機としてもモータとしても作動可能な電気機械であり得ることは自明である。同様のことは、整流をするための相応の動作段階のとき逆変換式に作動可能であり得るアクティブ整流器にも当てはまる。
【0016】
本発明は、先ほど述べたとおり、2つの直流電圧接続部の間で印加される出力電圧を検出するためにセットアップされた制御回路を各々のハーフブリッジが含んでいる、いわゆる分散型のブリッジ整流器に関する。さらにこの制御回路は、出力電圧がその前に上側の閾値を上回った後に下側の閾値を下回るまではそれぞれのハーフブリッジの2つの切換部材のうち第1の切換部材を第1の制御信号による制御によって導通するように切り換えるとともに、出力電圧がその前に下側の閾値を下回った後に上側の閾値を上回るまでは第2の制御信号による制御によってクロック式に制御するようにセットアップされている。
【0017】
第1の切換部材は、相応の位相短絡を開始ないし解消するために設けられた切換部材である。それぞれ他方の切換部材は、本願では第2の切換部材と呼ばれる。本発明は、以下において主として第1の制御信号による下側ないしローサイドの整流器分路の第1の切換部材の制御を援用して説明するが、上側ないしハイサイドの整流器分路の相応の第1の切換部材の制御にも同様にして適用することができる。
【0018】
このように第1の制御信号が適用されるのは、負荷遮断が認識されたときである。この認識は制御回路での閾値比較によって行われる。第1の制御信号は、相応の第1の制御信号が印加されている限り、第1の切換部材が継続的に導通状態へと移されることを開始する、すなわち、それぞれハーフブリッジと接続された交流電圧接続部と2つの直流電圧接続部との間で導通接続を成立させる、継続信号であるのが好ましい。
【0019】
別の制御信号は、特に、通常の整流器動作のときに相応のブリッジ整流器を制御するために利用される制御信号である。したがってこの制御信号は、パルス幅変調によってクロック化される。任意選択で、上位の制御ユニットから制御信号を提供することもでき、その場合、それぞれの制御回路は、上位の制御ユニットにより提供される制御信号をそれぞれの第1の切換部材へ転送するためにセットアップされている。
【0020】
本発明によると各々の制御回路は、出力電圧がその前に上側の閾値を上回った後に、またはすでに上回ってしまった後に、下側および/または上側の閾値の変更を開始するためにセットアップされた閾値手段を備えている。閾値手段はアナログ式またはデジタル式の閾値手段として構成されていてよい。
【0021】
上述したように、分散型の整流器でハーフブリッジ個別的な制御回路を使用するときの典型的な問題は、もっとも低い有効な下側の閾値を有する制御回路がその閾値を下回る出力信号を一度も検出しないという事態が生じる可能性があるという点にある。それに伴って、相応に制御される切換部材は、本発明の方策がなければ継続的に導通をするように切り換わったままとなる。
【0022】
それに対して本発明は、そのようなケースで下側および/または上側の閾値の変更を開始することを可能にする。その場合、たとえばそれぞれの切換部材の導通切換後に下側の閾値を徐々に(すなわちたとえば段階的または連続的に)引き上げることが意図されていてよい。このことは、たとえば図7を参照して以下で説明する回路によって行うことができる。このような方策により、少なくとも位相短絡の開始および解消の後続するサイクルのうちの1つで、この制御回路の下側の閾値にも到達され(下回り)、この制御回路も再び通常動作へと移行できることを実現することができる。
【0023】
それぞれ相違する上側および下側の閾値にもかかわらず、すべての位相へ負荷を均等に配分するために、1つの制御回路で上側の閾値を上回った後にこの上側の閾値も、たとえば定義された増分だけ上方へと移すことができる。所定のタイムスロット(フィルタ時間)の内部で、上側の閾値の超過があらためて認識されたときには、これをあらためて、たとえば再び増分だけ引き上げることができ、そうでない場合には相応に引き下げることができる。したがって定常状態では上側の閾値が交互に増加、低減される。すなわち、それぞれの切換部材が交互に導通と非導通に切り換えられる。それに伴って有効な上側の閾値はどの位相でも、たとえば上側の閾値についての増分値の大きさによって設定される狭い範囲内にある。
【0024】
上記方策はまた、当然ながら、特に上側の閾値と同期して引き上げることができる、ないしは引き下げることができる、下側の閾値に関わる方策に関する。
【0025】
本発明による方法の1つの特別に好ましい実施形態は、位相個別的な制御回路でのむだ時間の利用を含んでいる。このような種類のむだ時間は、それぞれの制御回路が相応の事象を検知したとき、制御信号をそのために意図される切換部材へ即座に出力するのではなく、所定のタイムスロットの経過後に初めて出力することを開始する。相応のむだ時間は、上側の閾値を上回るのを認識するときにも、下側の閾値を下回るときにも具体化されていてよい。すなわち、たとえば出力電圧が上昇していくとき、もっとも低い(有効な)上側の閾値を有する制御回路が、当該閾値の超過を最初に認識する。しかし、この制御回路はそのために意図される切換部材を即座に導通へと切り換えるのではなく、まずむだ時間の経過を「待機する」。したがって、出力電圧はむだ時間のあいだ引き続き上昇していき、それはまた、さらに高い(有効な)上側の閾値を有する(同じく相応のむだ時間が具体化された)切換部材が閾値超過を認識するまで続く。このようにして、すべての切換部材の切換が確保される。これに準じて、もっとも高い(有効な)下側の閾値を有する切換部材は、出力電圧が低下していくときにこれを最初に認識する。この場合にも、この出力電圧がそのために意図される切換部材を即座に制御するのではなく、まずむだ時間の経過を「待機する」。したがって出力電圧はむだ時間のあいだも引き続き低下していき、それはまた、さらに低い(有効な)下側の閾値を有する(同じく相応のむだ時間が具体化された)切換部材か閾値過小を認識するまで続く。むだ時間は回路工学的には、たとえば使用されるコンパレータの出力部にあるRC素子によって、またはデジタル式のカウンタによって具体化されていてよい。むだ時間は、位相個別的な制御回路における個別の差異(許容差)が確実に補償される一方で、出力電圧がクリティカルに高い値または低い値をとることがないように選択される。
【0026】
本願で説明する構成要件、およびそれによって実現可能な利点は、本発明に基づくアクティブブリッジ整流器、このようなブリッジ整流器を備える本発明による自動車の車内電力網、本発明による作動方法、およびこの作動方法を具体化するための本発明による手段に関する。
【0027】
本発明による計算ユニット、たとえば自動車の制御装置や整流器制御部は、特にプログラム工学的に、本発明による方法を実施するようにセットアップされている。
【0028】
ソフトウェアの形態での本方法の具体化も好ましい。このことは特別に少ないコストしかもたらさないからであり、それは特に、実行をする制御装置がさらに別の役割のためにも利用され、したがってもともと存在している場合である。コンピュータプログラムを提供するための適当なデータ媒体は、特にフロッピー(登録商標)、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM、CD−ROM、DVDなどである。コンピュータネットワーク(インターネット、イントラネット等)を通じてのプログラムのダウンロードも可能である。
【0029】
本発明のその他の利点や実施形態は、明細書および添付の図面から明らかとなる。
【0030】
当然ながら、上に掲げた構成要件および以下に説明する構成要件は、それぞれ記載されている組合せとしてだけでなく、本発明から逸脱することなしにそれ以外の組合せで、あるいは単独でも適用可能である。
【0031】
本発明が1つの実施例を用いて図面に模式的に示されており、以下において図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A】アクティブブリッジ整流器を有する構造、およびその機能を示す模式図である。
図1B】アクティブブリッジ整流器を有する構造、およびその機能を示す模式図である。
図1C】アクティブブリッジ整流器を有する構造、およびその機能を示す模式図である。
図2】負荷遮断が生じたときにアクティブブリッジ整流器が制御されるときの電流推移である。
図3】従来技術に基づくアクティブブリッジ整流器における電圧推移である。
図4】従来技術に基づくアクティブブリッジ整流器における電流推移と電圧推移である。
図5】本発明の一実施形態に基づくアクティブブリッジ整流器における電流推移と電圧推移である。
図6】従来技術に基づく制御回路を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に基づく制御回路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下において、同じ部材または互いに対応する部材は同じ符号で表示されている。繰り返して説明することはしない。
【0034】
図1Aから1Cは、アクティブブリッジ整流器を有する構造とその機能を模式図として示している。
【0035】
図1Aには、アクティブブリッジ整流器1と発電機2を有する構造が、三相のシステムを例にとって模式的に示されている。アクティブブリッジ整流器1は、図1Aでは、三相発電機2の三相電流を整流するためにセットアップされた6パルスのアクティブブリッジ整流器1として図示されている。しかしながら同様にして、たとえば4相、5相、6相、または7相の発電機2およびこれに対応して適合化されたアクティブブリッジ整流器1を適用することもできる。図1Bおよび1Cは、5相発電機2とこれに対応するアクティブブリッジ整流器1とを有する構造を一例として示している。
【0036】
アクティブブリッジ整流器1は、アクティブブリッジ整流器1の交流電圧接続部u,vおよびwを介して発電機2の相応の出力部と接続され、およびこれに伴ってそれぞれの発電機巻線と接続されたハーフブリッジU,VおよびWを有している。
【0037】
ハーフブリッジU,VおよびWは出力側で、すなわちアクティブブリッジ整流器1の相応の直流電圧接続部B+およびB−を介して、たとえば正のバッテリ極(B+)および負のバッテリ極(B−)および/または直流電圧網の相応の供給配線に接続されている。直流電圧接続部B−はアースと接続されていてよい。ハーフブリッジU,VおよびWは、それぞれ制御可能ないしアクティブな切換部材S1からS6を有しており、これらはそれぞれのハーフブリッジU,VおよびWの上側の分路H(ハイサイド)と下側の分路L(ローサイド)にそれぞれ組み込まれている。
【0038】
交流電圧接続部u,vおよびwのうちの1つは、切換部材S1からS6の相応の切換に準じてB+および/またはB−と接続することができ、1つのハーフブリッジU,VおよびWのそれぞれ両方の切換部材(すなわちS1/S4,S2/S5およびS3/S6)の同時の制御は通常動作では回避され、それは、2つの直流電圧接続部B+およびB−の間のいわゆるホットパスを防止するためである。
【0039】
アクティブブリッジ整流器1を制御するために、制御ユニット3が設けられていてよい。しかし、ここに図示する分散型のアクティブブリッジ整流器1では、ここには符号4Uから4Wで表された個別の制御回路が、それぞれのハーフブリッジU,VおよびWの必要な切換の役割の少なくとも一部を担う。切換部材S1からS6は、それぞれのゲート接続部Gを介して、点線で図示する配線gを通じて個別の制御回路4Uから4Wにより、制御パターンに従って制御信号の供給を受けることができる。制御パターンはたとえば制御ユニット3によって設定することができる。
【0040】
ハーフブリッジU,VおよびWの回路部材(すなわちS1/S4,S2/S5およびS3/S6)は、図示した構造の通常動作のとき、相応の交流電圧接続部u,vおよびwに印加される、これと接続された発電機2の発電機巻線の電流信号が、両方の直流電圧接続部B+およびB−の一方へ交互に導通されるように制御される。このことは通常、交流電圧接続部u,vおよびwに正の半波が印加されると、そのつどの信号が直流電圧接続部B+へ導通され、それに対して負の半波が印加されると、信号が直流電圧接続部B−へ導通されるように行われる。直流電圧接続部B+における出力信号の調整は、相応のクロッキングによっても行うことができる。
【0041】
負荷遮断は、図1Aに示す構造では、直流電圧接続部B+およびB−の間で印加される電圧に基づいて検知することができる。そのために図示した例では、個別の制御回路4Uから4Wは、以下で図4Aを参照して図解するようにセットアップされている。個別の制御回路4Uから4Wは、ここでは配線bを介してアクティブブリッジ整流器1の少なくとも1つの直流電圧側の出力部と接続されており、本例では符号B+と接続された出力部と接続されている。アクティブブリッジ整流器1のこの直流電圧側の出力部に印加される電圧の定義された閾値を上回ったときに、負荷遮断を認識することができる。当然ながら、個別の制御回路4Uから4Wは電圧認識のために、たとえば他の直流電圧接続部ないしアースのような基準電位とさらに接続されていてよい。
【0042】
負荷遮断が認識されたときのアクティブブリッジ整流器1の制御は、交流電圧接続部u,vおよびwのうちの1つを介してアクティブブリッジ整流器1のハーフブリッジU,VおよびWとそれぞれ接続されている発電機2の位相巻線が、時間的に定義されたとおりに短絡されるように行うことができる。その帰結として、車内電力網へ供給される電流がゼロまで低下する。相応の短絡は、それぞれ1つの整流器分路HないしLの切換部材S1からS3ないしS4からS6の同時の制御およびこれに伴う導通切換によって成立させることができる。短絡が解消されると、電流が再び上昇していく。発電機コントローラを通じての通常の制御が再び始まるまで、この過程を移行段階で発電機2の出力電力を制御するために適用することができる。しかしこのことは、前述したように、従来技術に基づく個別の評価回路4Uから4Wが使用された場合には信頼度が高くない。生じるネガティブな現象は、以下で図3から図5を参照して図解されている。適合化された個別の評価回路4Uの形態での本発明の実施形態に基づく解決法は、以下で図7を参照して図解されている。
【0043】
図1Bおよび1Cには、5相発電機2と、5つのハーフブリッジを備えたアクティブブリッジ整流器1とを有する構造がそれぞれ示されている。入力部は符号uからy、ハーフブリッジはこれに応じて符合UからY、個別の制御回路は符号4Uから4Xで表されている。配線bおよびgの図示は、図面の見やすさの都合から省略している。ハーフブリッジUからYは切換部材S1からS10をそれぞれ有する。切換部材S1からS10は、並列につながれたダイオードを有するスイッチとして図示されているが、実際には、たとえば図1AのようなMOS電界効果トランジスタとして構成される。その他の点では、図1Bおよび1Cの構造は図1Aの構造に呼応している。
【0044】
後置されている車内電力網4には、車内電力網キャパシタンスC1と抵抗性負荷R1とが配置されている。抵抗性負荷は、たとえば車内電力網4にある電力消費部に相当する。車内電力網4の配線によって配線インダクタンスL1が生じる。
【0045】
図1Bには、これに対応する構造の通常動作の瞬間的状態が示されている。ここでは、この時点で交流電圧接続部uおよびvを介して電流が発電機からアクティブブリッジ整流器へと流れ、それに対して交流電圧接続部w,xおよびyを介して電流がアクティブブリッジ整流器から発電機へ流れると想定している。切換部材S1およびS2は、相応の制御により、交流電圧接続部uおよびvと直流電圧接続部B+との導通接続を成立させる。切換部材S8,S9およびS10は、交流電圧接続部w、xおよびyと直流電圧接続部B−との導通接続を成立させる。このとき交流電圧接続部uおよびvには相応の瞬間に正の電位が印加され、それに対して交流電圧接続部w,xおよびyには負の電位が印加される。発電機によって供給される電流は負荷遮断のときに高くなり、たとえば150Aである。
【0046】
このケースでは車内電力網キャパシタンスC1が想定されているので、電流の一部、たとえば130Aがここに流れ込んでこれを充電する。残りの割合、ここでは20Aが、本来の車内電力網4ないし抵抗性負荷R1へと流れる。
【0047】
負荷遮断時の高すぎる車内電力網電圧を回避するために、図1Cに示すように、切換状態を周期的に調整することができる。ここでは、下側の整流器分路Lの全部の切換部材S6からS10が導通へと切り換わっている。別案として、切換部材S1からS5によって導通接続を成立させることも可能である。交流電圧接続部uからy、およびこれに対応する発電機位相は、それによって相互に導通接続される(短絡される)。発電機2からアクティブブリッジ整流器1へ電流がもはや流れなくなる。車内電力網4はこの切換状態のとき、車内電力網キャパシタンスC1からのみ供給を受ける。図1Cの切換状態は、直流電圧接続部B+およびB−の間の電圧が許容される値を再び下回るまで調整される。すると図1Bの切換状態が再び調整され、それは、直流電圧接続部B+およびB−の間の電圧が許容される値を再び上回るまで続く。
【0048】
図2には、アクティブブリッジ整流器1のこのような種類の制御での、負荷遮断時における従来技術に基づく発電機電流推移が示されている。図示しているグラフでは、発電機電流推移はy軸上の単位Aの電流Iとして、x軸上の単位msの時間tに対してプロットされている。
【0049】
すでに図1Aとの関連で説明したとおり、負荷遮断のときの従来式の制御では、それぞれ整流器分路HないしLの切換部材S1からS3ないしS4からS6(ないしは図1Bおよび1Cに示すように切換部材S1からS5ないしS6からS10)が特定の時間帯21のあいだ同時に制御され、交流電圧接続部がそれによって短絡される。それによって車内電力網4へ電流が放出されなくなる。それに対して、時間帯22のあいだは短絡が解消されて、通常の整流器動作のように電流が車内電力網4へと放出される。
【0050】
図3には、従来技術に基づく三相アクティブブリッジ整流器の正の直流電圧接続部B+における電圧推移が示されており、そのハーフブリッジは、図1Aを参照して図示したとおり、個別の制御回路を有している。ここでは個別の制御回路ないしこれに対応する評価回路は各々の位相で若干反応が相違しており、このことは、位相U,VおよびWについて相応に異なる閾値を生じさせる。ただしこの説明は、図1Bおよび1Cに図示するような5相のアクティブブリッジ整流器についても同様に当てはまる。
【0051】
図3では、相応の整流器のハーフブリッジUからW(図1Aの制御回路4Uから4W参照)の個別の制御回路のそれぞれ上側の閾値が30Uから30Wで表示されており、下側の閾値はそれに応じて31Uから31Wである。明らかなように、ハーフブリッジWの制御回路の上側および下側の閾値30Wおよび31Wは、
ハーフブリッジVの制御回路の閾値30Vおよび31Vよりも明らかに上回っており、さらに、これらの閾値はハーフブリッジUの制御回路の閾値30Uおよび31Uを上回っている。
【0052】
グラフ300では、たとえばこのような種類のアクティブブリッジ整流器の直流電圧接続部に印加される、たとえば直流電圧接続部B+に印加される、電圧推移301が単位Vの電圧値Uとして縦軸に、横軸上の単位sの時間tに対してプロットされている。
【0053】
ここでは時点t0とtLDの間で通常の動作が行われ、電圧推移301の電圧値は整流のときに普通の範囲内にあり、たとえば車内電力網の目標電圧、たとえば12Vに相当している。それにより相応のアクティブブリッジ整流器は、通常の整流器動作をしている。時点tLDで、たとえば車内電力網の電力消費部のスイッチオフによって負荷遮断が行われる。電圧推移301の電圧値が急激に上昇する。
【0054】
点311で、電圧推移301の電圧値はハーフブリッジUの制御回路の上側の閾値30Uに達する。そのために意図される当該ハーフブリッジUの切換部材、たとえばローサイド切換部材(図1の切換部材S4参照)が、それに伴って導通へと切り換えられる。それによって電圧上昇が緩やかになるが、さらに点312で、ハーフブリッジVの制御回路の上側の閾値30Vに到達する。そのために意図される当該ハーフブリッジVの切換部材(図1の切換部材S5参照)も、それに伴って導通へと切り換えられる。それに基づいて電圧推移310の電圧値が低下する。ハーフブリッジWの制御回路の上側の閾値30Wは、それに伴ってもはや到達されないので、当該ハーフブリッジWの相応の切換部材(図1の切換部材S6参照)は、時点t0とtLDの間にも受ける通常の制御、たとえばクロック式の制御のままに保たれる。
【0055】
点313で、電圧推移301の電圧値はハーフブリッジWの制御回路の下側の閾値31Wに達する。しかし、この制御回路はそれ以前に相応の切換部材の導通状態を開始していないので、ここでは何も変化は生じない。
【0056】
しかし点314で、電圧推移301の電圧値はハーフブリッジVの制御回路の下側の閾値31Vに達する。するとハーフブリッジVの制御回路は、相応の切換部材の継続的に導通の状態を解消して、時点t0とtLDの間でも行われる通常の制御、たとえばクロック式の制御へと復帰し、それにより、ハーフブリッジUの制御回路によって制御される切換部材だけが継続的に導通の状態にとどまることになる。
【0057】
しかし、この1つの切換部材だけが継続的に導通へと切り換わっているので、電圧推移301の電圧値が再び上昇していく。したがって、ハーフブリッジUの制御回路により制御される切換部材はもはや通常の制御に入ることができない。下側の閾値31にもはや達しないからである。
【0058】
その結果として生じる、従来技術に基づく相応の5相のアクティブ整流器の電流推移および電圧推移に対する効果が図4に示されている。図4では、部分グラフ4Aに、ここではB+であるアクティブブリッジ整流器の直流電圧側の出力部における単位Vの電圧推移UB+、部分グラフ4Bに、単位Vの位相電圧UuからUyの推移、部分グラフ4Cに、相応に単位Aの位相電流IuからIyがそれぞれ縦軸に、横軸の単位sの共通の時間軸tに対して示されている。明らかなように、従来技術も負荷遮断のときの出力電圧UB+の制限を可能にするが、位相Uでは、そこでは下側の閾値31が到達されなくなっているために、ハーフブリッジUの制御回路によって制御される切換部材が通常の制御に入れなくなっているという事実に基づき、相応の切換部材を著しく負荷する高すぎる電流(部分グラフ4D,Iu)が生じる。
【0059】
それに対して、継続的に導通の状態が開始された後、相応の制御回路で下側の閾値を連続的に引き下げていくと、ハーフブリッジUの制御回路によって制御される切換部材が再び通常の制御に入ることができる。このことが本発明の1つの実施形態で意図される。その効果は図5に示されている。この図面は図4に対応している。どの位相電流IuからIyもここではクリティカルな値に達しておらず、切換部材が保全される。
【0060】
図6は、従来技術に基づく制御回路を模式図として示している。この制御回路は全体として符号4U’で表されており、たとえば図1Aから1Cに示すようなアクティブブリッジ整流器1で適用される。相応の制御回路はすべての位相UからWないしYについて同一に構成されていてよい。
【0061】
制御回路4Uには、ヒステリシス回路A1がその入力部(+および−)により、アクティブブリッジ整流器1の直流電圧接続部B+およびB−(ないしはアース)と接続されている。それによりヒステリシス回路A1は、直流電圧接続部B+およびB−(ないしアース)の間に印加される電圧を評価することができる。これが上側の閾値(図3の点311に相当)を上回ると、ヒステリシス回路A1の出力部に信号が印加され、この信号を通じてアクティブな切換部材S2がダイオードD1を介して導通状態へと移される。
【0062】
下側の閾値(これに到達した場合)を下回った後、ヒステリシス回路A1の出力部には信号がもはや印加されない。ダイオードD2を介して、アクティブな切換部材S2は制御ユニット3の信号によってのみ制御されるようになる。さらに制御ユニット3は、直流電圧接続部B+およびB−(ないしアース)の間に印加される電圧および位相電圧を評価するための配線と、アクティブな切換部材S1を制御するための別の制御配線とを有している。通常の整流器動作のとき、制御ユニット3は、切換部材S1およびS2を相応の配線を介してクロック式に制御する。
【0063】
図7は、本発明の1つの実施形態に基づく制御回路を模式図として示している。この制御回路は符号4Uで表されており、制御回路4U’(図6参照)の主要な部品を備えている。ここでも相応の制御回路はすべての位相UからWないしYについて同一に構成されていてよい。
【0064】
しかし制御回路4Uには、抵抗器R2とコンデンサC2とを含むRC素子を有する、制御回路4U’に対して相違するヒステリシス回路A2が設けられている。ヒステリシス回路A2の出力部に信号が印加されると、抵抗器R2を介してコンデンサC2が充電される。ヒステリシス回路A2は配線aにより、その閾値を当該配線への電圧の印加によって上方へシフトさせるためにセットアップされている。このことはRC素子により、ヒステリシス回路A2で上側の閾値が上回る時点を過ぎてから連続的に行われる。それによってヒステリシス回路A2の下側の閾値が連続して上昇していく。ヒステリシス回路A2の出力部では常に方形の信号が印加されるので(短絡について「ハイ」、通常動作について「ロー」)、閾値のシフトは、短絡状態が非常に長く維持される位相について特別に重要性が高い。それにより、たとえばグラフ4Cの位相Uのような位相が再び下側の閾値に達して短絡を無効にするように作用する、重ね合わされた制御回路が形成される。
【符号の説明】
【0065】
1 ブリッジ整流器
2 発電機
3 制御ユニット
4 車内電力網
301 出力電圧、電圧推移
A2 閾値手段
B+,B− 直流電圧接続部
R1 電力消費部
S1−S10 切換部材
4U−4Y 制御回路
30U−30W 上側の閾値
31U−31W 下側の閾値
u−y 交流電圧接続部
U−Y ハーフブリッジ
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7