【課題を解決するための手段】
【0009】
以上を背景としたうえで本発明は、それぞれ独立請求項の構成要件を有する、負荷遮断のときの過電圧から保護するための手段を有するアクティブブリッジ整流器、そのような種類のブリッジ整流器を備えた自動車の車内電力網、これに対応する作動方法、およびそのような作動方法を具体化するための手段を提案する。
【0010】
本発明は、前述したとおり、負荷遮断が生じたときのアクティブブリッジ整流器の作動に関するものである。上述のように、このような種類の動作は、発電機位相ないしこれに対応するアクティブブリッジ整流器の交流電圧接続部を、上側の閾値を上回ったときに、整流器分路の制御可能ないしアクティブ型の全部の切換部材の同時の制御(およびこれに伴って同時の導通切換)によって相互に導通接続し(短絡させ)、下側の閾値を下回ったときに相応の短絡を再び同時に解消することを含むことができる。個々のハーフブリッジが、アクティブブリッジ整流器の直流電圧接続部に印加される出力電圧をそれぞれ個別に検出する独立した制御回路をそれぞれ有する、前述のように分散型に構成されたアクティブブリッジ整流器においても、このような種類の動作が尽力されているが、従来技術では、冒頭に説明した電圧認識部および/またはこれに後置された制御回路の部材の許容差に基づき、必ずしも実現されていない。それに対して本発明による方策は、特別に好ましい形態でこの種の動作を可能にする。
【0011】
前述した許容差に基づき、たとえばそれぞれの比較回路の間の誤差によって、閾値がそれぞれ相違するという事態が生じる可能性がある。
【0012】
下側の閾値がそれぞれ相違しているときのケースが、特別にクリティカルであることが判明している。もっとも低い有効な下側の閾値を有する制御回路よりも前に、他のすべてのハーフブリッジの制御回路が通常の動作を再び開始するので、出力電圧が再び上昇していく。したがって、もっとも低い有効な下側の閾値を有する制御回路は、このもっとも低い有効な下側の閾値を下回る出力信号を一度も検出しないことになる可能性がある。したがって、これに応じて制御される切換部材は継続的に導通切換されたままに保たれる。
【0013】
つまり状況によっては、個々の位相が通常の整流を再び開始しているのに対して、他の位相は継続的に短絡のままに維持されている。このような挙動は、以下で説明する
図3から5に示すとおり、発生する相電流の非対称性をもたらすことになる。それに基づき、整流器の個々の切換部材が明らかに過負荷になる可能性があり、このことは、相応の切換部材の熱による破損をもたらす恐れがある。それに伴ってアクティブブリッジ整流器の早期の不具合、または負荷遮断により引き起こされる過電圧の不十分な制限が考えられる。
【0014】
アクティブブリッジ整流器は、一般に知られているとおり、それぞれの切換部材によって上側および下側、ないし、ハイサイド整流器分路およびローサイド整流器分路を定義するハーフブリッジを有している。上側ないしハイサイドの整流器分路に配置された切換部材によって、1つまたは複数の交流電圧接続部と正の直流電圧接続部との接続をそれぞれ成立させることができ、また、下側ないしローサイドの整流器分路に配置された切換部材によって、1つまたは複数の交流電圧接続部と負の直流電圧接続部との接続を成立させることができる。すなわち各々のハーフブリッジは、2つの直流電圧接続部の間に直列につながれて制御可能な2つの切換部材を有しており、これらの間でそれぞれ1つの交流電圧接続部が接続されている。
【0015】
交流電圧接続部により、アクティブブリッジ整流器は相応数の発電機位相と接続されており、直流電圧接続部が直流電圧車内電力網に供給を行う。負の直流電圧接続部は特にアースにつなぐことができる。直流電圧接続部には、アクティブブリッジ整流器が整流動作にあるとき、接続されている電力網の車内電力網電圧に相当していてよい出力電圧が印加される。当然のことながら、たとえばハイブリッド車両では電動モータを整流するために、相応のアクティブブリッジ整流器を逆変換式に作動させることもできる。このような種類の動作段階についてはここでは考察しない。しかしながら、本願で発電機が話題となるとき、それは発電機としてもモータとしても作動可能な電気機械であり得ることは自明である。同様のことは、整流をするための相応の動作段階のとき逆変換式に作動可能であり得るアクティブ整流器にも当てはまる。
【0016】
本発明は、先ほど述べたとおり、2つの直流電圧接続部の間で印加される出力電圧を検出するためにセットアップされた制御回路を各々のハーフブリッジが含んでいる、いわゆる分散型のブリッジ整流器に関する。さらにこの制御回路は、出力電圧がその前に上側の閾値を上回った後に下側の閾値を下回るまではそれぞれのハーフブリッジの2つの切換部材のうち第1の切換部材を第1の制御信号による制御によって導通するように切り換えるとともに、出力電圧がその前に下側の閾値を下回った後に上側の閾値を上回るまでは第2の制御信号による制御によってクロック式に制御するようにセットアップされている。
【0017】
第1の切換部材は、相応の位相短絡を開始ないし解消するために設けられた切換部材である。それぞれ他方の切換部材は、本願では第2の切換部材と呼ばれる。本発明は、以下において主として第1の制御信号による下側ないしローサイドの整流器分路の第1の切換部材の制御を援用して説明するが、上側ないしハイサイドの整流器分路の相応の第1の切換部材の制御にも同様にして適用することができる。
【0018】
このように第1の制御信号が適用されるのは、負荷遮断が認識されたときである。この認識は制御回路での閾値比較によって行われる。第1の制御信号は、相応の第1の制御信号が印加されている限り、第1の切換部材が継続的に導通状態へと移されることを開始する、すなわち、それぞれハーフブリッジと接続された交流電圧接続部と2つの直流電圧接続部との間で導通接続を成立させる、継続信号であるのが好ましい。
【0019】
別の制御信号は、特に、通常の整流器動作のときに相応のブリッジ整流器を制御するために利用される制御信号である。したがってこの制御信号は、パルス幅変調によってクロック化される。任意選択で、上位の制御ユニットから制御信号を提供することもでき、その場合、それぞれの制御回路は、上位の制御ユニットにより提供される制御信号をそれぞれの第1の切換部材へ転送するためにセットアップされている。
【0020】
本発明によると各々の制御回路は、出力電圧がその前に上側の閾値を上回った後に、またはすでに上回ってしまった後に、下側および/または上側の閾値の変更を開始するためにセットアップされた閾値手段を備えている。閾値手段はアナログ式またはデジタル式の閾値手段として構成されていてよい。
【0021】
上述したように、分散型の整流器でハーフブリッジ個別的な制御回路を使用するときの典型的な問題は、もっとも低い有効な下側の閾値を有する制御回路がその閾値を下回る出力信号を一度も検出しないという事態が生じる可能性があるという点にある。それに伴って、相応に制御される切換部材は、本発明の方策がなければ継続的に導通をするように切り換わったままとなる。
【0022】
それに対して本発明は、そのようなケースで下側および/または上側の閾値の変更を開始することを可能にする。その場合、たとえばそれぞれの切換部材の導通切換後に下側の閾値を徐々に(すなわちたとえば段階的または連続的に)引き上げることが意図されていてよい。このことは、たとえば
図7を参照して以下で説明する回路によって行うことができる。このような方策により、少なくとも位相短絡の開始および解消の後続するサイクルのうちの1つで、この制御回路の下側の閾値にも到達され(下回り)、この制御回路も再び通常動作へと移行できることを実現することができる。
【0023】
それぞれ相違する上側および下側の閾値にもかかわらず、すべての位相へ負荷を均等に配分するために、1つの制御回路で上側の閾値を上回った後にこの上側の閾値も、たとえば定義された増分だけ上方へと移すことができる。所定のタイムスロット(フィルタ時間)の内部で、上側の閾値の超過があらためて認識されたときには、これをあらためて、たとえば再び増分だけ引き上げることができ、そうでない場合には相応に引き下げることができる。したがって定常状態では上側の閾値が交互に増加、低減される。すなわち、それぞれの切換部材が交互に導通と非導通に切り換えられる。それに伴って有効な上側の閾値はどの位相でも、たとえば上側の閾値についての増分値の大きさによって設定される狭い範囲内にある。
【0024】
上記方策はまた、当然ながら、特に上側の閾値と同期して引き上げることができる、ないしは引き下げることができる、下側の閾値に関わる方策に関する。
【0025】
本発明による方法の1つの特別に好ましい実施形態は、位相個別的な制御回路でのむだ時間の利用を含んでいる。このような種類のむだ時間は、それぞれの制御回路が相応の事象を検知したとき、制御信号をそのために意図される切換部材へ即座に出力するのではなく、所定のタイムスロットの経過後に初めて出力することを開始する。相応のむだ時間は、上側の閾値を上回るのを認識するときにも、下側の閾値を下回るときにも具体化されていてよい。すなわち、たとえば出力電圧が上昇していくとき、もっとも低い(有効な)上側の閾値を有する制御回路が、当該閾値の超過を最初に認識する。しかし、この制御回路はそのために意図される切換部材を即座に導通へと切り換えるのではなく、まずむだ時間の経過を「待機する」。したがって、出力電圧はむだ時間のあいだ引き続き上昇していき、それはまた、さらに高い(有効な)上側の閾値を有する(同じく相応のむだ時間が具体化された)切換部材が閾値超過を認識するまで続く。このようにして、すべての切換部材の切換が確保される。これに準じて、もっとも高い(有効な)下側の閾値を有する切換部材は、出力電圧が低下していくときにこれを最初に認識する。この場合にも、この出力電圧がそのために意図される切換部材を即座に制御するのではなく、まずむだ時間の経過を「待機する」。したがって出力電圧はむだ時間のあいだも引き続き低下していき、それはまた、さらに低い(有効な)下側の閾値を有する(同じく相応のむだ時間が具体化された)切換部材か閾値過小を認識するまで続く。むだ時間は回路工学的には、たとえば使用されるコンパレータの出力部にあるRC素子によって、またはデジタル式のカウンタによって具体化されていてよい。むだ時間は、位相個別的な制御回路における個別の差異(許容差)が確実に補償される一方で、出力電圧がクリティカルに高い値または低い値をとることがないように選択される。
【0026】
本願で説明する構成要件、およびそれによって実現可能な利点は、本発明に基づくアクティブブリッジ整流器、このようなブリッジ整流器を備える本発明による自動車の車内電力網、本発明による作動方法、およびこの作動方法を具体化するための本発明による手段に関する。
【0027】
本発明による計算ユニット、たとえば自動車の制御装置や整流器制御部は、特にプログラム工学的に、本発明による方法を実施するようにセットアップされている。
【0028】
ソフトウェアの形態での本方法の具体化も好ましい。このことは特別に少ないコストしかもたらさないからであり、それは特に、実行をする制御装置がさらに別の役割のためにも利用され、したがってもともと存在している場合である。コンピュータプログラムを提供するための適当なデータ媒体は、特にフロッピー(登録商標)、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM、CD−ROM、DVDなどである。コンピュータネットワーク(インターネット、イントラネット等)を通じてのプログラムのダウンロードも可能である。
【0029】
本発明のその他の利点や実施形態は、明細書および添付の図面から明らかとなる。
【0030】
当然ながら、上に掲げた構成要件および以下に説明する構成要件は、それぞれ記載されている組合せとしてだけでなく、本発明から逸脱することなしにそれ以外の組合せで、あるいは単独でも適用可能である。
【0031】
本発明が1つの実施例を用いて図面に模式的に示されており、以下において図面を参照しながら詳細に説明する。