(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6197137
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】視野異常者のための服用薬収納具
(51)【国際特許分類】
A61J 7/04 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
A61J7/04 Z
A61J7/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-85888(P2017-85888)
(22)【出願日】2017年4月25日
【審査請求日】2017年4月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516164162
【氏名又は名称】大東 栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】大東 栄子
【審査官】
落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−5871(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3126497(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3201517(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/04
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTP包装された錠剤をスライド可能に挟持する挟持部を含む薬収納シートが複数設けられた、視野の一部が欠ける視野異常者のための服用薬収納具であって、
前記挟持部は、前記薬収納シートの略中央部を前記視野異常者の中心視とした場合の該中心視を基準に前記視野異常者の症状に応じた視認可能な領域のみに設けられていることを特徴とする視野異常者のための服用薬収納具。
【請求項2】
請求項1に記載の視野異常者のための服用薬収納具において、
前記薬収納シートの略中央部が前記中心視となるように前記視野異常者の注意を引くための中心視マークと、服用に関する情報とが設けられ、前記薬収納シート上に重ねることが可能な補完シートを備えることを特徴とする視野異常者のための服用薬収納具。
【請求項3】
請求項1に記載の視野異常者のための服用薬収納具において、
前記挟持部は、前記視野異常者が注目するための色彩が施されていることを特徴とする視野異常者のための服用薬収納具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野異常者のための服用薬収納具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医師に処方された薬を患者が決められた時間帯に決められた量を服用することがある。複数種類の薬がある場合など飲み忘れや飲み残しが生じてしまうことがあるため、このような課題に対する対応策として、曜日と時間帯とが一覧表示されて、飲むべき薬が予め収納されたお薬カレンダーなどが開発されている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、弾性を有するシート材からなる台紙を備え、この台紙に表示された薬を服用すべき日時を表示する日時表示部と、この日時表示部に対応した位置に形成された互いに反対方向に傾斜した部分を有する少なくとも一対の保持スリット部とを備え、これら保持スリット部は台紙の上下方向に対して上方に凸となる曲線状をなし、これら保持スリット部に分離された薬のプッシュスルーパッケージの両側隅部を挟持させることを特徴とする薬の服用管が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−5871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、お薬カレンダーなどに薬が収納された場合に、視野異常者が薬を取り出す際に、収納された領域によっては薬が見えない状態となるため、飲み忘れや飲み残しなどに繋がる虞がある。
【0006】
本発明の目的は、視野異常者が薬を服用する場合であっても飲み忘れや飲み残しなどを防止することを可能とする服用薬収納具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る服用薬収納具は、PTP包装された錠剤をスライド可能に挟持する挟持部を含む薬収納シートが複数設けられ
た、視野の一部が欠ける視野異常者のための服用薬収納具であって、前記挟持部は、前記薬収納シート
の略中央部を前記視野異常者の中心視とした場合の該中心視を基準に前記視野異常者の
症状に応じた視認可能な領域
のみに設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る視野異常者のための服用薬収納具において、前記薬収納シートの略中央部が前記中心視となるように前記視野異常者の注意を引くための中心視マークと
、服用に関する情報とが設けられ、前記薬収納シート上に重ねることが可能な補完シートを備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る視野異常者のための服用薬収納具において、前記挟持部は、前記視野異常者が注目するための色彩が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、錠剤が挟持された挟持部が薬収納シート上において錠剤を服用する視野異常者の中心視を基準とする視野異常者の視認可能な領域に設けられている。これにより、視野異常者の目に留まる領域に配置されているため飲み忘れや飲み残しを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態において、視野異常者のための服用薬収納具の斜視図である。
【
図2】本発明に係る実施形態において、視野異常者のための服用薬収納具の収納部の拡大図である。
【
図3】本発明に係る実施形態において、収納部の様々な変形例を示す図である。
【
図4】本発明に係る実施形態において、視野異常者のための服用薬収納具の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、視野異常者のための服用薬収納具10の斜視図である。
図1(a)は補助シート14が薬収納シート12に重ねられている状態を示す図であり、
図1(b)は補助シート14を捲って薬収納シート12を露出させた状態を示す図である。
図2は、視野異常者のための服用薬収納具10の収納部26の拡大図である。
図3は、収納部26の様々な変形例を示す図である。
図4は、視野異常者のための服用薬収納具の変形例である服用薬収納具11を示す図である。
【0014】
視野異常者のための服用薬収納具10は、収納部26が配置された複数枚の薬収納シート12と、薬収納シート12に重ねられるように設けられる複数枚の補助シート14とを備えている。すなわち、複数枚の薬収納シート12と補助シート14とが交互に設けられている。
【0015】
薬収納シート12は、左端辺に2つの綴じ穴15が形成されたシートである。薬収納シート12は、適度な厚みを有する厚紙を用いて構成することができる。薬収納シート12は、中央部に有効視野に対応し所定の直径を有する第1円領域22と、第1円領域22と同心円であり周辺視野に対応する第2円領域24とを備えている。
【0016】
ここで、第1円領域22と第2円領域24の中心は、視野異常者の中心視となる部分である。
【0017】
視野異常のない一般的な成人が見た薬収納シート12の上記中心視を見た場合には、第1円領域22は視力が高く細かいものを見ることが出来る領域である有効視野であり、第2円領域24は有効視野以外の視力が低い周辺視野に対応する。
【0018】
視野異常の原因は、例えば、緑内障、網膜剥離、加齢黄斑変性症、脳卒中、脳腫瘍などのように様々な要因が考えられる。ここでは、薬収納シート12の右半分が見えない状態となっていることを想定している。
【0019】
薬収納シート12の右半分が視認できない状態となっている視野異常者が薬を服用するために収納部26が左半分に設けられている。収納部26は、左右の端辺と下側の端辺が固定され上側から内部に収納領域を有するポケット部28と、ポケット部28の上側から収納されポケット部28の内部の収納領域よりも小さいシート部30とを備えている。
【0020】
シート部30は、PTP包装された錠剤6をスライド可能に挟持する挟持部32が
図2に示されるように左上側に設けられている。PTP包装は、錠剤6が収納される凸部が形成されたプラスチック部と、錠剤6が収納されたプラスチック部を覆うアルミ部で構成され、凸状のプラスチック部分を強く押す事でアルミが破け、収納された錠剤6が取り出される仕組みになっている。
【0021】
挟持部32は、凸部を突出させつつ平坦部を抑えるように折り曲げ加工されてPTP包装された錠剤6を挟持しているが、PTP包装された錠剤6と挟持部32との間には若干のクリアランスが形成されているため長手方向にスライド可能となっている。
【0022】
挟持部32は、一方の方向からスライド可能なように他方は封止されており、
図1,2の例では左側から挿入可能な状態としている。挟持部32は、視野異常者が注目するための色彩が施されており、ここでは黒色のペンで縁取りして挟持部32を際立たせている。
【0023】
ポケット部28は、
図2に示されるように、ポケット部28に収納されたシート部30を取り出す際に指で摘みやすいように上辺の中央部において凹み部が形成されている。また、ポケット部28には、錠剤6とは異なる粉末薬8が収納されている。
【0024】
ここで、ポケット部28とシート部30は、様々な材質で構成されることが考えられるが、いずれの材質を用いた場合であっても共通するのは透明性を有する点である。透明性を有することでシート部30がポケット部28に収納された場合であっても、錠剤6や粉末薬8の存在を確認することができる。
【0025】
補助シート14は、薬収納シート12と同一の大きさを有し、左端辺に2つの綴じ穴15が形成されたシートである。補助シート14及び薬収納シート12に形成された綴じ穴15を重ね合わせた状態で2つのリング部17を通すことにより、補助シート14及び薬収納シート12がバラバラにならない状態とすることができる。ここでは、リング部17で綴じるものとして説明したが、もちろん、その他の手段で綴じてもよく、例えば、紐部材を使って綴じてもよい。
【0026】
補助シート14には、薬収納シート12の第2円領域24に対応する点線の円が記載され、この円の直径を示す線が描かれるとともに、中心には所定の大きさの中心視マーク18が描かれている。上記直径を示す線の上には、薬の服用の時間を示す情報(例えば、木曜日の寝る前に服用する旨の表示)が記載されている。
【0027】
補助シート14は、様々な材質で構成されることができるが、透明性を有する材質で構成される必要がある。補助シート14を薬収納シート12に重ねた際に薬収納シート12が透けた状態になっていることが好ましい。
【0028】
続いて、上記構成の視野異常者のための服用薬収納具10の作用について説明する。ここでは、視野異常者が有効視野及び周辺視野の右側半分が見えない状態として説明するが、もちろん、その他の状態も含まれる。
【0029】
この視野異常者が医師に処方された薬を決められた時間帯に決められた量を服用する際に服用薬収納具10を用いることが好ましい。具体的には、
図1に示されるように、例えば、木曜日の寝る前に服用する必要がある薬を飲む場合に、当該視野異常者は最前面の補助シート14の中心視マーク18を注視する。
【0030】
この状態で、矢印A方向に補助シート14を捲ることで最後尾に移動させる。そうすると、中心視が第1円領域22と第2円領域24の中心に一致する状態となる。このとき、有効視野が第1円領域22と一致し、周辺視野が第2円領域24と一致することなる。
【0031】
この視野異常者は有効視野及び周辺視野の右半分が見えない状態となっているが、服用薬収納具10は左半分に収納部26が設けられているため、錠剤6が粉末薬8の存在を確認することができるため、ポケット部28に手を入れて粉末薬8を取り出すことができる。
【0032】
また、シート部30の上部略中央部を指で摘まんでシート部30を取り出す。この際、視野異常者がシート部30の中心を中心視として見た場合に、挟持部32が左上にあるため、右半分が見えない当該視野異常者であっても錠剤6の存在を確認できるとともに、錠剤を指で押さえつつ左側にスライドすることで錠剤6を取り出すことができる。このように、服用薬収納具10によれば、視野異常者が視認できる領域に収納部26が設けられているため、薬の存在を確認した状態で薬を服用することができるため飲み忘れや飲み残しを防止することができる。
【0033】
さらに、収納部26は、錠剤6を視野異常者が注目するための色彩が施された挟持部32に挟持されているため、粉末薬8に比べて小さく、特に、飲み忘れがちな錠剤6の存在を確実に注目させることができる。
【0034】
上記では、有効視野及び周辺視野の右半分が見えない視野異常者のための服用薬収納具10であるものとして説明したが、もちろん、その他の視野異常者に応じて変形することができる。
図3は、収納部26の様々な変形例を示す図であり、ここでは挟持部32のみが簡略的に表示されている。ここでは、薬収納シート12のシート状に中心視マーク18を記載するものとして説明しているが、もちろん、省略することも可能である。
【0035】
図3(a)は、有効視野及び周辺視野の下半分が見えない視野異常者のために、挟持部32を含む収納部26が有効視野の上半分に設けられている。挟持部32の方向は、右側から挿入する場合と左側から挿入する場合のどちらのパターンで設置してもよい。
【0036】
図3(b)は、
図3(a)とは対称的で有効視野及び周辺視野の上半分が見えない視野異常者のために、挟持部32を含む収納部26が有効視野の下半分に設けられている。挟持部32の方向は、右側から挿入する場合と左側から挿入する場合のどちらのパターンで設置してもよい。
【0037】
図3(c)は、有効視野の全体と周辺視野の左半分が見えない視野異常者のために挟持部32を含む収納部26が右上の領域に設けられている。この視野異常者は右側が見える状態となっているため、挟持部32の方向は右側から挿入することを想定して設置している。
【0038】
図3(d)は、有効視野の全体と周辺視野の右半分が見えない視野異常者のために挟持部32を含む収納部26が左上の領域に設けられている。この視野異常者は左側が見える状態となっているため、挟持部32の方向は左側から挿入することを想定して設置している。
【0039】
図3(e)は、有効視野及び周辺視野の右半分が見えない視野異常者もしくは、有効視野及び周辺視野の左上1/4の領域しか見えない視野異常者のために挟持部32を含む収納部26が左上の領域に設けられている。この配置は、
図3(d)と同一の配置となる。
【0040】
図3(f)は、有効視野及び周辺視野の左半分が見えない視野異常者もしくは、有効視野及び周辺視野の右上1/4の領域しか見えない視野異常者のために挟持部32を含む収納部26が右上の領域に設けられている。この配置は、
図3(c)と同一の配置となる。
【0041】
図3(g)及び
図3(h)は、周辺視野の左端部と右端部が見えない視野異常者のために挟持部32を含む収納部26が中央部の領域に設けられている。
図3(g)は、中心視よりも左側に配置されており、
図3(h)は、中心視よりも右側に配置されている。
【0042】
このように様々な視野異常のパターンに応じて収納部26の配置位置を変更することで色んな視野異常者が薬を服用する場合であっても飲み忘れを防止させることができる。
【0043】
図4は、視野異常者のための服用薬収納具10の変形例である服用薬収納具11を示す図である。服用薬収納具11は、服用薬収納具10とは異なり補助シート14を用いていない。また、薬収納シート12において第1円領域22と第2円領域24も省略している。この場合であっても、視野異常者が薬収納シート12を見た場合に一般的には薬収納シート12の中心を中心視とすることが多いため、薬収納シート12の左半分の領域に設けられたシート部30や挟持部32を把握することができる。
【符号の説明】
【0044】
6 錠剤、8 粉末薬、10,11 視野異常者のための服用薬収納具、12 薬収納シート、14 補助シート、15 綴じ穴、17 リング部、18 中心視マーク、22 第1円領域、24 第2円領域、26 収納部、28 ポケット部、30 シート部、32 挟持部。
【要約】
【課題】視野異常者が薬を服用する場合であっても飲み忘れなどを防止することを可能とする服用薬収納具を提供することである。
【解決手段】視野異常者のための服用薬収納具10は、PTP包装された錠剤6をスライド可能に挟持する挟持部32を含む薬収納シート12が複数設けられた視野異常者のための服用薬収納具10であって、挟持部32は、薬収納シート12上において錠剤6を服用する視野異常者の中心視を基準とする視野異常者の視認可能な領域に設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図1