(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197153
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】すくい取り搬出具
(51)【国際特許分類】
A47L 11/22 20060101AFI20170911BHJP
A47L 13/52 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
A47L11/22
A47L13/52 101
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-6911(P2015-6911)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2016-131617(P2016-131617A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2016年10月19日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】715001493
【氏名又は名称】奥村 映子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 茂夫
【審査官】
大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−030681(JP,U)
【文献】
特開2011−224033(JP,A)
【文献】
特開2005−021432(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3129960(JP,U)
【文献】
実開平07−005549(JP,U)
【文献】
実開昭54−072875(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 11/22
A47L 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容器の開口部の一端にすくい取り部を備えたすくい取り搬出用具であって、前記開口部に隣接する側面のうちの一つの面に対して間を有する逆流防止板を前記収容器内に備え、
前記逆流防止板と底面と両側面と背面よりなる逆流防止ユニットを構成し、前記開口部より挿入ができ収容器から取り外し可能としたことを特徴とする、すくい取り搬出用具。
【請求項2】
前面に開口部を備え、底面前縁部に形成した鋭利なすくい取り部を備えた容器状の収容器を形成し、前記収容器の底面内側と両側面内側に固着し、上面と所定の間隔を保ち、底面から奥方へ所定の角度で起立した1枚乃至複数枚の逆流防止板と、前記収容器両側面外側の前方中央付近の軸支点に連結され回動可能な取っ手と、を具備し、
前記逆流防止板と底面と両側面と背面よりなる逆流防止ユニットを構成し、前記開口部より挿入ができ収容器から取り外し可能としたことを特徴とする、すくい取り搬出用具。
【請求項3】
収容器両側面外側の後方下部に軸支点を備え、その軸支点に軸支され回転可能な一対の車輪を具備することを特徴とする、請求項1乃至2に記載のすくい取り搬出用具。
【請求項4】
すくい取り搬出用具の収容器両側面外側前方下部に一対の軸支点を備え、その軸支点に連結され回動可能なハンドル、を具備し、前記ハンドル手元のレバーからの遠隔操作により前記ハンドルの角度が任意に固定または自由にできる角度固定機構を具備することを特徴とする、請求項1乃至3に記載のすくい取り搬出用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットな面に堆積した物体をすくい取り、搬出する用具に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の特徴および利用方法を説明するにあたり、想定される利用場面である洪水等による家屋や施設への土砂流入被害における泥の回収および搬出場面を例に述べる。
津波や洪水に伴う施設、家屋への侵入泥の除去方法は、スコップ、鋤簾、ほうき、スクレイパーで泥を掻き集め、これをスコップ等によりすくい上げ、バケツや土嚢、一輪車等の運搬用具に移し替えて持ち出す方法が一般的である。また,搬出においてはバケツリレーで泥を運び出す方法もとられる。
しかし、作業現場における泥は、多水分で液状の泥や乾いた土状のもの、固形化したものまで多様であり、これらの掻き出しと回収は、前述のいずれの用具においても一長一短があり一台で効率的な作業はできない。また、搬出用具への移し替えの作業が必要となり、バケツや土嚢を吊り下げての搬出は身体への負担も大きい。
すくい取り搬出用具の1例として、特許文献1には、塵取りにおいて、底壁、両側壁及び後壁に囲まれて前面から上面にわたって開放された収容部を形成する塵取り本体と、前記塵取り本体の後壁面が底壁より起立する固定壁と該固定壁に対して回転軸を中心に回転可能に連繋する可動壁を備え、前記固定壁若しくは両側壁に回転可能に軸支された車輪と、前記可動壁に両側脚部が連結されたコ字状の把手部と、前記可動壁を把手部と共に所定角度に傾けて任意の角度に固定可能な角度調整部と、を具備し、前記角度調整部は、前記把手部と可動壁を塵取り本体の底壁に対向して重ね合わさる位置と塵取り本体の後壁より後方へ延出した位置との間で使用目的に応じて所定角度に傾けた姿勢で固定可能であることを特徴とする可動式汎用塵取りが提示されている。
また、液状の物体を回収する用具の1例として、非特許文献1には市販品として、柄付き塵取りの収容部前方に、内方向に傾斜した高さの低い邪魔板を設けた鉄道型水取りが提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−224033号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社テラモトの2014年版テラモト総合カタログの324頁に記載の鉄道型水取り
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の可動式汎用塵取りは、塵取り本体の前面から上面にわたり開口していることを特徴としている。このため、塵取り本体を垂直方向に起こした場合に上面は後方に開口した状態となり、収容物がこぼれ落ちてしまい使用において塵取り本体の仰角が制限され収容量は少ないものである。さらに、流れ出やすい液状の回収物については傾けた塵取り本体にはわずかな量しか留まらず、移動の際には波動が発生することから収容量はさらに少なくなり、かつ、周辺に回収物をまき散らすことになる。また、前記可動式汎用塵取りは、塵取り本体と把手部が一体であり収容器のみでの利用はできず、汎用性に乏しいものである。
【0006】
非特許文献1に記載の鉄道型水取りは、柄付き塵取りの収容部前方に、内方向に傾斜した低い邪魔板を設けたものである。使用方法は前方にある液体を箒やスイーパー等で水取りの開口部に掃き込み邪魔板を越させて収容部に収容するものであり、本構造では掃き込みの操作を必要とし、かつ、邪魔板の高さが低いため収容量は少ない。このため、少量の液体のピンポイント回収には有効であるが、想定される利用場面である洪水等による家屋や施設への大量の流入土砂の回収および搬出作業においては実用的でない。
【0007】
本発明は以上のような従来のすくい取り搬出用具の欠点に鑑み、簡素な構造で、液状の泥から乾いた泥まで、すくい取りと搬出が一台で楽にできるすくい取り搬出用具を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明のすくい取り搬出用具は、前面に開口部を備え、底面前縁部に形成した鋭利なすくい取り部を備えた容器状の収容器を形成し、前記収容器の底面内側と両側面内側に固着し、上面との間隔を2〜10cm保ち、底面から直角〜奥方に30度傾斜し起立した1枚乃至複数枚の逆流防止板と、収容器両側面外側の前方中央付近の軸支点に連結され回動可能な取っ手と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
第2の発明のすくい取り搬出用具は、第1の発明における固着の逆流防止板に替え、1乃至複数枚の逆流防止板と底面と両側面と背面よりなる逆流防止ユニットを構成し、前記収容器の開口部より挿入ができ収容器から取り外し可能としたことを特徴とする。
【0010】
第3の発明のすくい取り搬出用具は、収容器両側面外側の後方下部に軸支点を備え、その軸支点に軸支され回転可能な一対の車輪を具備することを特徴とする。
【0011】
第4の発明のすくい取り搬出用具は、第1乃至第3の発明によるすくい取り搬出用具の前記収容器の両側面外側前方下部に一対の軸支点を備え、その軸支点に連結され回動可能なハンドル、を具備し、前記ハンドル手元のレバーからの遠隔操作により前記ハンドルの角度が任意に固定または自由にできる角度固定機構を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
洪水の被災現場等において土間等に流れ込んだ泥は、水分を多く含んだ流れやすい液状のものや、湿った土状のもの、乾いたものなど様々である。本発明は上記のように構成したことにより、多様な状態の泥の回収と搬出に以下の効果を奏する。
【0013】
第1の発明のすくい取り搬出用具は、水分が多く流れやすい液状の泥のすくい取りを可能とするために収容器内に逆流防止板を設けた。開口部を有する容器で液状の泥をすくい取る場合、容器を載置し前方へ素早くスライドし前方押圧力をかけると一時的に液状の泥が収容器内に流れ込むが、スライドを止めるとすぐに開口部から流れ出てしまう。このため、本法では収容器底面より起立した逆流防止板を配置した収容器を用い、一回のスライドが終わると直ちに収容器を起こして泥を収容器内に取り込む。取り込まれた泥は、逆流防止板を伝い上面との隙間から収容器の後方へ流し落とされる。収容器の奥に溜まった泥は、再びスライドの態勢に載置した際にも逆流防止板に阻まれ流れ出ないため、泥が溜まり逆流防止板を超えるまですくい取りの操作を続けて収容器内に溜めることができる。所定量の泥が収容器内に溜まったら、付属の取っ手で吊り下げバケツと同様の姿勢で搬出し、排出の際は上面が下方になるように傾け逆流防止板と上面との隙間から流し出す。
【0014】
第2の発明のすくい取り搬出用具は、第1の発明が逆流防止板が収容器に固着しているのに対し、1乃至複数枚の逆流防止板と底面と両側面と背面よりなる逆流防止ユニットを構成し、逆流防止機構を取り外し可能としたものであり、本ユニットは収容器開口部より挿入でき収容器の背面に固定できる。逆流防止ユニットを取り外せば、収容器内は障害物がなくなり、乾いた泥や粘性の泥の回収と搬出が可能となる。乾いた泥や粘性の泥の層に収容器を載置し前方にスライドし挿し込むことにより泥を取り込むことができる。泥が収容器前方に溜まってくれば、一旦収容器を垂直方向に起せば泥は収容器内の奥方に流れ落ちて留まるため、再びスライドの態勢に載置し作業を続けることができる。所定量の泥が収容器に溜まったら、付属の取っ手で吊り下げバケツと同様の姿勢で搬出し、排出の際は開口部を下げることで容易に排出することができる。
【0015】
第3の発明のすくい取り搬出用具は、第1乃至2の発明のすくい取り搬出用具の両側面外側後方下部に設けた軸支点に軸支する一対の車輪を具備したもので、すくい取りにおけるスライド時の床面との摩擦抵抗を減じる作用のほか、第4の発明における運搬車としての利用時における車輪としても活用できる。また、車輪軸にラチェット機構を具備し、すくい取り搬出用具の前進時には車輪が空転し後退時にはブレーキがかかる機能と、ラチェット機能を任意に解除できる機能を付加することにより、第4の発明におけるすくい取り作業時のハンドルを引き寄せすくい取り搬出用具を起こす際の後退を防ぐことができ、搬出の際にラチェット機能を解除することにより押しても引いてもすくい取り搬出用具を移動することができる。
【0016】
第4の発明のすくい取り搬出用具は、第1乃至第3の発明によるすくい取り搬出用具の収容器両側面外側前方下部に一対のハンドル軸支部と、ハンドル軸支部と連結するハンドルと、を具備するもので、ハンドルがハンドル軸支部を中心に回動する機能を有する。ハンドルは任意の角度ですくい取り搬出用具に固定することができ、もしくは固定せずフリーな状態でも使用することができる。以下、ハンドル角固定方法の一例を示す。収容器側面外側には、ハンドル軸支部を中心とする円周上に対になる複数のハンドル固定用穴が配置されており、ハンドルには、ハンドル手元に付属するレバーからワイヤーハーネスを介した遠隔操作により進退動可能なピンがハンドル固定用の穴に抜き差しできるハンドル角固定機構を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1におけるすくい取り搬出用具の正面図である。
【
図2】実施例1におけるすくい取り搬出用具の背面図である。
【
図3】実施例1におけるすくい取り搬出用具の右側面説明図である。
【
図4】実施例1におけるすくい取り搬出用具の平面説明図である。
【
図5】すくい取り搬出用具を載置し前方にスライドし泥を取り込む状態を示す実施例1の説明図である。
【
図6】すくい取り搬出用具を起し、取り込んだ液状の泥を奥へ流し込む状態を示す実施例1の説明図である。
【
図7】液状の泥が収容器内に一定溜まった状態で載置した実施例1の説明図である。
【
図8】液状の泥を満たし、人手により吊り下げた搬出の状態を示す実施例1の説明図である。
【
図9】開口部付近に、内側に急傾した低い逆流防止板を1枚増設した実施例1 の説明図である。
【
図10】逆流防止ユニットを示す実施例2の説明図である。
【
図11】逆流防止ユニットを装着しない状態のすくい取り搬出用具において乾いた泥の回収状態を示す実施例2の説明図である。
【
図12】ハンドルを装着しすくい取り姿勢にある、実施例4の右側面図である。
【
図13】ハンドルを装着しすくい取り姿勢にある、実施例4の正面図である。
【
図14】ハンドルを装着し、泥を収容部奥へ送り込む姿勢にある、すくい取り搬出用具の実施例4の説明図である。
【
図15】ハンドルを装着し、搬出姿勢にある、すくい取り搬出用具の実施例4の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明のすくい取り搬出用具の実施形態を説明する。ただし、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に示した具体的な用途や形状・寸法などには限定されない。
【実施例1】
【0019】
図1〜4に示す第1の発明に第3の発明を加えたすくい取り搬出用具は、収容器(1)内部に逆流防止板(12)を1枚乃至複数枚設けたものであり、水分が多く流れやすい液状の泥の回収をしやすくするものである。液状の泥(13)は抵抗が小さいため、逆流防止板(12)の無いすくい取り搬出用具では泥の層に対しすくい取り搬出用具を前方にスライド操作しても収容器(1)内へ取り込める量は少なく、スライド操作を終えると直ちに開口部(2)より流れ出てしまう。
【0020】
このため、
図5に示すようにすくい取り搬出用具の一回のスライド操作により泥を収容器内に取り込んだら、ただちに
図6に示すようにすくい取り搬出容具を起こし、取り込まれた液状の泥(13)を逆流防止板(12)を超させて収容器(1)の深部に送り込む。収容器(1)に溜まった液状の泥(13)は、
図7に示すように再びすくい取りの態勢に戻した際にも逆流防止板(12)に阻まれ、開口部(2)には流れ出さない。この操作を繰り返すことにより収容器(1)に順次、液状の泥(13)を溜めることができる。なお、収容器(1)に溜まった液状の泥(13)は、スライド操作時に収容器(1)内で波立つが、逆流防止版(12)を平行に複数枚設けることで、波動による逆流を少なくすることができる。その効果は逆流防止板(12)の枚数が多いほど高い。収容器(1)に泥が満ちたら、起こしたすくい取り搬出用具の取っ手(10)を掴み、バケツ様に吊り下げて搬出する。すくい取り搬出用具をバケツリレーで搬出することも可能である。液状の泥(13)を排出する際は、すくい取り搬出用具を垂直に起てた状態からさらに90度以上傾げることにより、泥は逆流防止板(12)と上面(6)との隙間より開口部(2)へ流れ出るため、スムーズに排出ができる。
【0021】
図9に示すように、開口部付近に内側に急傾した低い逆流防止板(12)をさらに1枚設けると、すくい取り搬出用具のスライド操作により、一定量の泥は低い逆流防止板を越えて次の逆流防止板との隙間に留まる。このためスライドと同時に収容器を起こす機敏なすくい取り操作を必要としない。また、スライド操作による泥の取り込み法に替え、箒等により泥を収容器開口部から掃き込んでも低い逆流防止板を越させて確実に回収することができる。
【実施例2】
【0022】
図10は第2の発明による1乃至複数枚の逆流防止板(14)と底面(16)と両側面(15)と背面(17)よりなる逆流防止ユニットを示す。本ユニットは収容器(1)の開口部(2)より出し入れができ、逆流防止ユニット固定用ネジ(18)で収容器背面(5)に固定できる。逆流防止板をユニット化し着脱可能としたことで、1台のすくい取り搬出用具を逆流防止機構付き、または逆流防止機構無しの2通りに用いることができ、逆流防止機能無しのすくい取り搬出用具は、乾いた泥や水分の少ない泥を回収する際に効果を発揮する。
【0023】
図11は第2の発明による逆流防止ユニットを取り外したすくい取り搬出用具を、前方にスライドし水分の少ない泥を取り込んだ状態を示した。
すくい取り搬出用具の収容器(1)は、比較的水分の少ない土状の泥を対象としたものであり、前記収容器前面はすべて開口部(2)となっており、底面(4)はフラットである。すくい取りの際は、泥の層にすくい取り搬出用具を前方にスライドすることにより、泥(13)は開口部底辺のすくい取り部(7)により収容器(1)内にすくい上げられる。この操作を繰り返すことにより、泥(13)は収容器(1)の開口部(2)付近に山成りとなり、次第にすくい取りがし難くなる。このようになれば、収容器(1)を起こし、開口部付近に溜まった泥(13)を重力により落下させ収容器(1)の深部に収める。再び収容器(1)をスライドの態勢に戻すことで、回収を再開することができる。収容器(1)に泥が満ちたら、起こしたすくい取り搬出用具の取っ手(10)を掴み、バケツ様に吊り下げて搬出する。すくい取り搬出用具をバケツリレーで搬出することも可能である。排出の際は、片手で取っ手(10)を握り、もう一方の手で下方の握り手(8)をもち上げ、開口部(2)より排出する。
【実施例3】
【0024】
第3の発明による収容器両側面(3)後方下部に設けた一対の車輪(9)により、第1乃至第2の発明によるすくい取り搬出用具のスライド操作において、床と収容器底面(4)との摩擦を減じスムーズに操作することができる。また第4の発明によるハンドル(19)を具備したすくい取り搬出用具においては、車輪(9)を利用し2輪運搬車として用いることで、泥で満ちた重い収容器(1)を軽い力で移動することができる。
【0025】
すくい取り搬出具の収容器(1)に具備する車輪(9)および取っ手(10)は、工具の不要な簡易ボルトで取り外しを可能とし、収容器(1)を開口部(2)から背面(5)にかけてテーパー状の形状とすることにより、重ね収納ができ保管に場所を取らない。
【実施例4】
【0026】
第4の発明のすくい取り搬出用具は、
図12〜13に示すように、第1乃至第3の発明によるすくい取り搬出用具の、収容器(1)の両側面(3)前方下部に一対のハンドル軸支点(21)と連結するハンドル(19)と、を具備しており、ハンドル(19)がハンドル軸支点(21)を中心に回動する機能を有する。また、ハンドル(19)を任意の角度に固定することも可能であり、その1例を以下に説明する。
図12に示すように、収容器側面(3)外側にはハンドル軸支点(21)を中心とする円周上に対になる複数のハンドル固定用穴(22)が配置されている。また、
図17に示すようにハンドル(19)先端には引きバネ(27)の作用で上端または下端で止まるレバー(26)を具備し、レバーの動きに連結するワイヤーハーネス(25)により
図16に示す進退動可能なロックピン(24)が連結している。レバー(26)を下端位置に倒すとワイヤーが引かれロックピン(24)は凹んだ状態で止まるため、ハンドル角は固定されずに回動自在となる。ハンドル角を固定する際は、ハンドル(19)を想定する角度付近に移動した後、レバー(26)を上端位置に倒しワイヤーの張りを緩めてハンドル(19)を少し上下動すると、ロックピン(24)は押しバネ(20)の作用により最寄のハンドル固定用穴(22)に挿し込まれ、ハンドル(19)角を固定することができる。
【0027】
このようにしたことで、すくい取り作業においては作業者に最適なハンドル角度を選ぶことができ、すくい取り部付近にハンドル軸支点(21)があることから押し出す力とすくい取り部を接地する力がほどよく分散できる。液状の泥(13)の回収には、第1の発明もしくは第2の発明による逆流防止板(12)を備えた収容器(1)を用いる。この際、スライド操作とすくい取り搬出用具の引き起こしを連続的に素早くする必要があるが、この場合はレバーを下端に倒してハンドル角度を自由な状態に保っておき、ハンドル(19)を押してすくい取り搬出用具を前方にスライドさせ、直ちにハンドル(19)を手前に引き寄せることですくい取り搬出用具を起こすことができ、この押し引きを繰り返すことにより、流れ出やすい液状の泥(13)を効率よく回収することができる。
【0028】
乾いた泥や水分の多い泥の回収には、第2の発明による逆流防止ユニットを取り外した収容器(1)を用いる。泥の取り込みのためのスライド操作は泥の層にすくい取り部をあてがいハンドルを押せばよく、ハンドル角度は固定しておいても自由にしておいてもよい。開口部(2)付近に溜まった泥(13)を収容器(1)深部に送り込む際には、
図14に示すように作業者がハンドル(19)のレバー(26)を下端に倒し角度自由な状態にし、すくい取り搬出用具の後方上端部を片足(28)で押さえつつ、ハンドル(19)を手前に引き寄せることにより、容易にすくい取り搬出用具を起こすことができる。
【0029】
回収作業を繰り返し、泥が収容器(1)に満ちたら、
図16に示すようにハンドル(19)を運搬に最適な角度に変えて、レバー(26)を上端に倒しハンドル角を固定する。作業者はハンドル(19)を握り、歩行姿勢により押して、または引いて搬出する。第3の発明による車輪(9)を用い2輪運搬車として用いることで、泥で満ちた重い収容器(1)を軽い力で移動することができる。移動中に障害物や段差等があり車輪(9)で乗り越えられない場合には、作業者がすくい取り搬出用具を持ちあげることで障害物等を乗り越えることができる。
【0030】
車輪軸にラチェット機構を具備し、すくい取り搬出用具の前進時には車輪が空転し後退時にはブレーキがかかる機能と、ラチェット機能を任意に解除できる機能を付加することにより、第4の発明におけるすくい取り作業時のハンドルを引き寄せすくい取り搬出用具を起こす際の後退を防ぐことができ、搬出の際にラチェット機能を解除することにより押しても引いてもすくい取り搬出用具を移動することができる。(図省略)
【0031】
第4の発明によるハンドル付のすくい取り搬出用具は、ハンドル(19)を工具の不要な簡易ボルトで取り外しを可能とすることで、ハンドルのない第1乃至第3の発明によるすくい取り搬出用具として使用することが可能であり、1台で復旧現場の様々な状況にあわせ機敏に活用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のすくい取り搬出具は、電気や燃料を必要としないことから、物資が不足しがちな災害現場等における家屋や施設での泥出し作業に有効である。また、火山噴火による降灰の除去や、平時における水路やプールの清掃等に活用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 収容器
2 開口部
3 側面
4 底面
5 背面
6 上面
7 すくい取り部
8 握り手
9 車輪
10 取っ手
11 取っ手軸支点
12 逆流防止板
13 泥
14 逆流防止ユニットの逆流防止板
15 逆流防止ユニットの側面
16 逆流防止ユニットの底面
17 逆流防止ユニットの背面
18 逆流防止ユニット固定用ネジ
19 ハンドル
20 押しバネ
21 ハンドル軸支点
22 ハンドル固定用穴
23 ハンドル角固定機構
24 ロックピン
25 ワイヤーハーネス
26 レバー
27 引きバネ
28 作業者の脚部