(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6197157
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】一輪運搬車
(51)【国際特許分類】
B62B 1/04 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
B62B1/04
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-42476(P2017-42476)
(22)【出願日】2017年3月7日
【審査請求日】2017年3月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517067486
【氏名又は名称】青島華天車輌有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】水口 稔
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−269583(JP,A)
【文献】
特開2009−196638(JP,A)
【文献】
特開2006−001546(JP,A)
【文献】
特開2016−179735(JP,A)
【文献】
特開2003−002226(JP,A)
【文献】
実開平03−093278(JP,U)
【文献】
実開昭58−029561(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤホイールに通されたシャフトをフレームに取付けられたシャフト取付プレートの凹部に嵌め込んで固定する一輪運搬車において、
前記シャフトは、端部に雄ねじを有する雄ねじシャフトと、端部に雌ねじを有する雌ねじシャフトとが同軸上で螺合されて成るものであり、
前記雄ねじシャフト及び前記雌ねじシャフトの各々は、外周面から径方向外側に拡がることで軸方向への前記タイヤホイールの移動を規制する規制プレートと、軸方向に移動自在な移動プレートと、前記移動プレートを軸方向内側に押し付けるためのレバーとを備えており、
前記シャフトが前記凹部に嵌め込まれた状態で、前記レバーによって前記移動プレートが前記シャフト取付プレートに押し付けられることで、前記シャフトが前記フレームに固定されることを特徴とする一輪運搬車。
【請求項2】
前記凹部が前後方向にのびる長穴であることを特徴とする請求項1に記載の一輪運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押し式の一輪運搬車であり、特にタイヤの取付け・取外しを容易に行えると共にタイヤの取付け位置を変えることができる一輪運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
図8及び
図9に示すように一輪運搬車100のタイヤ101はフレーム102の前方に取付けられている。一般的にタイヤは一輪運搬車の製造工場出荷時には装着されておらず、販売店等で店員が装着することが多い。また、タイヤの破損時や摩耗時には使用者自身がタイヤを交換できる構造になっている。
具体的には
図10に示すように、作業者はタイヤのホイール103に形成されている貫通穴104にシャフト105を通し、シャフトの左右からナット106を通し、
図11に示すようにナットを工具107でホイールに固定する。この際にナットを強く締めすぎるとタイヤが回らなくなるため、適度な強さで締める必要がある。
図12(a)に示すようにフレームには凹部108を備えるシャフト取付プレート109が取り付けられている。作業者は
図12(b)に示すようにシャフトを凹部に嵌め込み、シャフトの左右からナット110を通し、
図13に示すようにナットを工具107でホイールに固定することでタイヤの装着が完了する。
【0003】
このように、従来はタイヤを装着する際に工具を使用しなければならず、また、工具を使用してナットを適度な強さで締めなければならないため手間と時間がかかるという問題がある。
また、従来はシャフトをプレートの凹部に嵌め込む構造になっており、タイヤの前後方向の取り付け位置を変えることができないため、重量物を運搬する際に作業者に過度の負担がかかるという問題がある。
そこで、例えば特許文献1にはタイヤの後方の左右に補助輪を設けることで、重量物を運搬する際に三輪車として使用できる一輪運搬車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−1056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献に開示された技術では次のような問題がある。
すなわち、補助輪の分だけ重量が増加するため、軽量物を運搬する際など補助輪を使用しない場合には作業者の負担が増えるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を考慮して、タイヤの取付け・取外しを容易に行えると共に、運搬物の重量に応じてタイヤの取付け位置を変えることができる一輪運搬車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一輪運搬車は、タイヤホイールに通されたシャフトをフレームに取付けられたシャフト取付プレートの凹部に嵌め込んで固定する一輪運搬車において、前記シャフトは、端部に雄ねじを有する雄ねじシャフトと、端部に雌ねじを有する雌ねじシャフトとが同軸上で螺合されて成るものであり、前記雄ねじシャフト及び前記雌ねじシャフトの各々は、外周面から径方向外側に拡がることで軸方向への前記タイヤホイールの移動を規制する規制プレートと、軸方向に移動自在な移動プレートと、前記移動プレートを軸方向内側に押し付けるためのレバーとを備えており、前記シャフトが前記凹部に嵌め込まれた状態で、前記レバーによって前記移動プレートが前記シャフト取付プレートに押し付けられることで、前記シャフトが前記フレームに固定されることを特徴とする。
また、前記凹部が前後方向にのびる長穴であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明ではシャフトに取り付けたレバーを操作するだけでシャフトをフレームに対して強固に固定できるのでフレームへのタイヤの取付けを容易に行なうことができる。また、レバーを逆方向に操作するだけでタイヤの取外しを容易に行なうことができる。
また、シャフト取付プレートの凹部を長穴にすることで、運搬物の重量に応じてタイヤの取付け位置を変えることができる。つまり、荷物が重量物の場合は持ち手から荷受台までの距離を短くできるので使用者の腕に掛かる負担が小さくなり、荷物が軽量物の場合は持ち手から荷受台までの距離が長くできるので一輪運搬車の直進安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】タイヤを後方に取付けた状態の一輪運搬車の左側面図
【
図2】タイヤを前方に取付けた状態の一輪運搬車の左側面図
【
図4】フレームへのタイヤの取付け方法を示す縦断面図
【
図5】フレームへのタイヤの取付け方法を示す縦断面図
【
図6】フレームへのタイヤの取付け方法を示す縦断面図
【
図7】フレームへのタイヤの取付け方法を示す縦断面図
【
図10】従来のフレームへのタイヤの取付け方法を示す縦断面図
【
図11】従来のフレームへのタイヤの取付け方法を示す縦断面図
【
図12】従来のフレームへのタイヤの取付け方法を示す側面図(a)及び縦断面図(b)
【
図13】従来のフレームへのタイヤの取付け方法を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一輪運搬車について説明する。
図1〜
図3に示すように一輪運搬車1はフレーム10の上部に荷受台11を備えており、フレーム10の後部に持ち手12と支持脚13を備えている。また、フレーム10の前部にシャフト取付プレート14を備えており、シャフト取付プレート14の凹部15にシャフト16を固定することでタイヤ17をフレーム10に取り付ける構造になっている。
【0011】
図4に示すようにシャフト16は雄ねじシャフト20と雌ねじシャフト30から成る。
雄ねじシャフト20は雄ねじ21、規制プレート22、移動プレート23及びレバー24を備える。
雄ねじ21は雄ねじシャフト20の一方の端部に形成されている。
規制プレート22は、雄ねじシャフト20の外周面から径方向外側に拡がる板状の部材である。規制プレート22はフレーム10に取り付けられた状態のタイヤホイール18が軸方向(左右方向)へ移動しないようにその動きを規制するために設けられる。
移動プレート23は貫通穴を有しており、貫通穴に雄ねじシャフト20を通すことで雄ねじシャフト20の表面を軸方向へ移動自在になっている。移動プレート23の内面側にゴム等の弾性材23aを取り付けるのが好ましい。
【0012】
レバー24は移動プレート23を軸方向に押し付けるための部材である。レバー24は円形部24aと、円形部24aから径方向外側にのびる操作部24bから成る。
円形部24aは雄ねじシャフト20の端部においてその中心から離れた位置で軸支されており、操作部24bを水平面内で移動させると円形部24aは偏心しながら回転する。したがって、円形部24aの側面と接触する位置に移動プレート23を配置しておけば、操作部24bの移動により偏心しながら回転する円形部24aによって移動プレート23を軸方向内側に移動させることができる。
【0013】
雌ねじシャフト30は雌ねじ31、規制プレート32、移動プレート33及びレバー34を備える。
雌ねじ31は雌ねじシャフト30の一方の端部に形成されている。雄ねじ21と雌ねじ31とを同軸上で螺合することで雄ねじシャフト20と雌ねじシャフト30とが連結されて一本のシャフト16が形成される。
雌ねじシャフト30の規制プレート32、移動プレート33及びレバー34等については雄ねじシャフト20と同様のため説明を省略する。
【0014】
次に、タイヤ17の取り付け方法を説明する。
図4に示すように、タイヤ17はタイヤホイール18に装着されており、作業者はタイヤホイール18の中央に形成されている貫通穴18aに対して左右から雄ねじシャフト20と雌ねじシャフト30を挿入する。
次に、
図5に示すように作業者は雄ねじ21と雌ねじ31を螺合することで雄ねじシャフト20と雌ねじシャフト30とを連結して一本のシャフト16を形成する。この状態では左右の規制プレート22,32がタイヤホイール18の近傍に位置するため、タイヤホイール18の軸方向への移動が規制される。
【0015】
次に、
図6に示すように作業者はシャフト16のうち規制プレート22,32と移動プレート23,33に挟まれた部分を左右のシャフト取付プレート14の凹部15に嵌め込む。
図1及び
図2に示すように本実施の形態では凹部15が前後方向にのびる長穴になっており、長穴はその前端及び後端において僅かに下方に向かって傾斜している。
作業者は、荷受台11に載せる荷物が重量物の場合は
図1に示すようにシャフト16を長穴の後端に移動させ、軽量物の場合は
図2に示すようにシャフト16を長穴の前端に移動させる。この状態では移動プレート23,33とシャフト取付プレート14との間に隙間Sが空いた状態になっている。長穴の前端及び後端が僅かに下方に向かって傾斜することで、シャフト16が前端及び後端から抜け出し難くなるため、一輪運搬車1の使用中にシャフト16がフレーム10から外れてしまう事態を抑制できる。
【0016】
そして、
図7に示すように作業者が操作部24bを上方に移動させると、円形部24aが偏心しながら回転し、移動プレート23,33を軸方向内側へ移動させる。移動プレート23,33が移動することで上記隙間Sが次第に小さくなっていき、移動プレート23,33に取り付けたゴム23aがシャフト取付プレート14の側面に接触する。作業者が操作部24bを完全に上方まで移動させた状態では、ゴム23aが弾性変形した状態でシャフト取付プレート14に押し付けられる。これによりシャフト16がフレーム10に固定され、タイヤ17の取付けが完了する。
シャフト16をフレーム10から取外す際には操作部24bを後方に移動させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、タイヤの取付け・取外しを容易に行えると共に、運搬物の重量に応じてタイヤの取付け位置を変えることができる一輪運搬車に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0018】
S 隙間
1 一輪運搬車
10 フレーム
11 荷受台
12 持ち手
13 支持脚
14 シャフト取付プレート
15 凹部
16 シャフト
17 タイヤ
18 タイヤホイール
18a 貫通穴
20 雄ねじシャフト
21 雄ねじ
22 規制プレート
23 移動プレート
23a 弾性材
24 レバー
24a 円形部
24b 操作部
30 雌ねじシャフト
31 雌ねじ
32 規制プレート
33 移動プレート
34 レバー
100 一輪運搬車
101 タイヤ
102 フレーム
103 ホイール
104 貫通穴
105 シャフト
106 ナット
107 工具
108 凹部
109 シャフト取付プレート
110 ナット
【要約】
【課題】 タイヤの取付け・取外しを容易に行えると共に、運搬物の重量に応じてタイヤの取付け位置を変えることができる一輪運搬車を提供する。
【解決手段】 タイヤホイール18に通されたシャフト16を、フレーム10に取付けられたシャフト取付プレート14の凹部15に嵌め込んで固定する一輪運搬車1において、シャフトは、端部に雄ねじ21を有する雄ねじシャフト20と、端部に雌ねじ31を有する雌ねじシャフト30とが同軸上で螺合されて成るものであり、雄ねじシャフト及び前記雌ねじシャフトの各々は、外周面から径方向外側に拡がることで軸方向への前記タイヤホイールの移動を規制する規制プレート22と、軸方向に移動自在な移動プレート23と、移動プレートを軸方向内側に押し付けるためのレバー34とを備えており、シャフトが凹部に嵌め込まれた状態で、レバーによって移動プレートがシャフト取付プレートに押し付けられることで、シャフトがフレームに固定される。
【選択図】
図4