特許第6197166号(P6197166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タイガー魔法瓶株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6197166-電気湯沸器 図000002
  • 特許6197166-電気湯沸器 図000003
  • 特許6197166-電気湯沸器 図000004
  • 特許6197166-電気湯沸器 図000005
  • 特許6197166-電気湯沸器 図000006
  • 特許6197166-電気湯沸器 図000007
  • 特許6197166-電気湯沸器 図000008
  • 特許6197166-電気湯沸器 図000009
  • 特許6197166-電気湯沸器 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197166
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】電気湯沸器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/21 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   A47J27/21 101Z
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-169646(P2013-169646)
(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-37497(P2015-37497A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(74)【代理人】
【識別番号】100116159
【弁理士】
【氏名又は名称】玉城 信一
(72)【発明者】
【氏名】藤川 尚輝
【審査官】 宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05866878(US,A)
【文献】 特開2011−240075(JP,A)
【文献】 実開昭61−143515(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/21
H05B 3/20
H05B 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容器を収納支持すると共に、底部側に受電部を有する容器本体と、該容器本体の後部に設けられた把手部と、上記容器本体の上部にあって上記内容器上部の開口を閉じる蓋体と、上記容器本体の上端側前部に設けられた湯注出口部と、上記内容器の底部に設けられた湯沸し用のヒータと、該内容器底部のヒータに対応して設けられた空焚き検知手段と、上記容器本体の受電部と任意に接続され、同受電部を介して上記ヒータ等に電源を供給する給電部を有した電源台とを備えてなる電気湯沸かし器において、上記空焚き検知手段を、上記内容器底部の湯注出時において湯と接触しなくなる部分に対応させて設け、上記容器本体が上記電源台から分離された湯注出時における内容器底部の部分的な空焚き状態を検出できるようにするとともに、上記ヒータによる発熱量が、湯注出時において湯と接触する部分と湯注出時において湯と接触しなくなる部分とで、相互に異なる発熱量となるようにしたことを特徴とする電気湯沸かし器。
【請求項2】
内容器を収納支持すると共に、底部側に受電部を有する容器本体と、該容器本体の後部に設けられた把手部と、上記容器本体の上部にあって上記内容器上部の開口を閉じる蓋体と、上記容器本体の上端側前部に設けられた湯注出口部と、上記内容器の底部に設けられた湯沸し用のヒータと、該内容器底部のヒータに対応して設けられた空焚き検知手段と、上記容器本体の受電部と任意に接続され、同受電部を介して上記ヒータ等に電源を供給する給電部を有した電源台とを備えてなる電気湯沸かし器において、上記空焚き検知手段を、上記内容器底部の湯注出時において湯と接触しなくなる部分に対応させて設け、上記容器本体が上記電源台から分離された湯注出時における内容器底部の部分的な空焚き状態を検出できるようにするとともに、上記ヒータによる発熱量は、湯注出時において湯と接触する部分の発熱量よりも、湯注出時において湯と接触しなくなる部分の発熱量の方が大きくなっていることを特徴とする電気湯沸かし器。
【請求項3】
湯抽出時において湯と接触する部分が容器本体の湯抽出口部側であり、湯抽出時において湯と接触しなくなる部分が容器本体の把持部側であることを特徴とする請求項1または2記載の電気湯沸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気ケトルのような電気湯沸器における空焚き検知機構の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、保温ヒータを備え、常時保温ヒータに通電しておくことによって、いつでも所望の温度のお湯が使える保温機能を備えた電気ポットに変わって、必要なときに必要な量のお湯を迅速に沸かすようにし、通電状態の継続による消費電力の無駄を省いた電気ケトルが多く使用されるようになっている。
【0003】
このようなタイプの電気湯沸器では、できるだけ早くお湯を沸かせること、つまり加熱効率の高いものであることが求められる。
【0004】
しかし、従来の電気湯沸かし器では、例えばステンレス製の内容器の底部に伝熱性の良いアルミ板を介してシーズヒータをロー付けした構成のものが一般的であり、内容器の底部を直接加熱するものではないために、必ずしも加熱効率が良いとは言えないのが実情であった(特許文献1、特許文献2を参照)。
【0005】
そこで、これを改良するために、例えば海外の一部の製品に見られるように、内容器の底部に直接面状ヒータを印刷等の手段で設置するなどして、内容器の底部にヒータ部分を一体化することも可能である(特許文献3、特許文献4を参照)。
【0006】
このような構成を採用すると、内容器の底部が幅広く接する面状ヒータによって直接加熱されるので、極めて加熱効率が良くなり、湯沸し時間が大きく短縮される。
【0007】
なお、これら電気湯沸器の場合、いずれにあってもヒータ部にはバイメタルなどの空焚き検知手段が設けられており、内容器底部における空焚き状態が検出される(例えば上記特許文献1、特許文献3、特許文献4のバイメタルを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−240075号公報
【特許文献2】特開2009−125356号公報
【特許文献3】特表平09−507395号公報
【特許文献4】特表平09−506792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、以上のような面状ヒータによる加熱構造を採用した場合、ヒータ部の熱応答性、内容器に対する加熱効率が極めて高いのが利点ではあるが、他方、加熱力が強いがゆえに、次のような問題が生じる。
【0010】
すなわち、容器本体が電源台上に接続され、湯が沸かされている途中において、同容器本体が電源台から分離され、水平な状態に傾けられて、湯が注出されるようになると、通常、上記面状ヒータが設けられている上記内容器底部の上半分側は湯と接触しなくなり、電源の供給がなくても、それまでの上記面状ヒータの高効率な発熱により、相当な温度上昇のオーバーシュートが生じる。そして、同温度が空焚き検知温度以上になると、部分的な空焚き状態となる。
【0011】
しかし、上述した従来例の構成では、空焚きを検出する上記バイメタル等の空焚き検出手段が、上記内容器底部の中央部か、注出口側にしか設けられておらず、湯注出時にも内容器内の湯に接触した部分に対応していることから、そのような湯に接触していない内容器部分の部分的な空焚き状態を検出することはできなかった。
【0012】
そのため、湯の注出が終わって、容器本体が再び電源台上に戻されると、湯沸し途中であったことから、そのまま面状ヒータに対する電源の供給が継続されて、沸騰状態になるまで内容器の湯の加熱が継続される。
【0013】
この場合、湯の残量が多い場合には、そのままでも良いが、もしも湯の残量が少なく、内容器の底部全体が空焚きに近い状態のときには、上記湯に接触していなかった底部部分は、上記高温となった部分的な空焚き状態のまま、さらに面状ヒータによる高温の加熱が始まることになり、きわめて大きな熱負荷を受け、底板部分の変形、塗布されたフッ素樹脂の損傷(焦げ、焼け、撥水性の低下、変色、ミネラル付着、泡切れの悪化など)を招く恐れがある。
【0014】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたもので、空焚き検出手段を、上記内容器底部の湯注出時において湯と接触しなくなる部分に対応させて設けることにより、上記容器本体が上記電源台から分離された湯注出時における内容器底部の部分的な空焚き状態をも確実に検出できるようにした電気湯沸器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願各発明は、上記の課題を解決するために、それぞれ次のような課題解決手段を備えて構成されている。
(1)請求項1の発明の課題解決手段
この発明の電気湯沸器では、内容器を収納支持すると共に、底部側に受電部を有する容器本体と、該容器本体の後部に設けられた把手部と、上記容器本体の上部にあって上記内容器上部の開口を閉じる蓋体と、上記容器本体の上端側前部に設けられた湯注出口部と、上記内容器の底部に設けられた湯沸し用のヒータと、該内容器底部のヒータに対応して設けられた空焚き検知手段と、上記容器本体の受電部と任意に接続され、同受電部を介して上記ヒータ等に電源を供給する給電部を有した電源台とを備えてなる電気湯沸かし器において、上記空焚き検知手段を、上記内容器底部の湯注出時において湯と接触しなくなる部分に対応させて設け、上記容器本体が上記電源台から分離された湯注出時における内容器底部の部分的な空焚き状態を検出できるようにするとともに、上記ヒータによる発熱量が、湯注出時において湯と接触する部分と湯注出時において湯と接触しなくなる部分とで、相互に異なる発熱量となるようにしたことを特徴としている。
【0016】
このような課題解決手段によると、まず湯沸しヒータの採用により、水を入れた内容器の加熱効率が大きく向上し、湯沸し時間が大幅に短縮される。
【0017】
しかも、空焚き検知手段は、上記内容器底部の湯注出時において湯と接触しなくなる部分に対応させて設けられており、上記容器本体が上記電源台から分離された湯注出時における内容器底部の上部側領域等の部分的な空焚き状態をも確実に検出できるようになっている。
【0018】
先に従来例の課題として述べたように、容器本体が電源台上に接続され、湯が沸かされている途中において、同容器本体が電源台から分離され、水平な状態に傾けられて、湯が注出されるようになると、通常、上記ヒータが設けられている上記内容器底部の上半分側は湯と接触しなくなり、電源の供給がなくても、それまでの上記面状ヒータの高効率な発熱により、相当な温度上昇のオーバーシュートが生じる。そして、同温度が空焚き検知温度以上になると、部分的な空焚き状態となる。
【0019】
しかし、従来の構成では、空焚きを検出する空焚き検出手段が、上記内容器底部の中央部か、注出口側に設けられており、湯注出時にも内容器内の湯に接触した部分に対応していることから、そのような湯に接触していない内容器部分の空焚き状態を検出することはできなかった。
【0020】
そのため、湯の注出が終わって、容器本体が再び電源台上に戻されると、湯沸し途中であったことから、そのままヒータに対する電源の供給が継続されて、沸騰状態になるまで内容器の湯の加熱が継続される。
【0021】
この場合、湯の残量が多い場合には、そのままでも良いが、もしも湯の残量が少なく、空焚きに近い状態のときには、上記湯に接触していなかった底部部分は、上記高温となった部分的な空焚き状態のまま、さらにヒータによる高温の加熱が始まることになり、大きな熱負荷を受けて、底板部分の変形、塗布されたフッ素樹脂の損傷(焦げ、焼け、撥水性の低下、変色、ミネラル付着、泡切れの悪化など)が生じる。
【0022】
ところが、この発明の課題解決手段では、上記のように、空焚き検知手段は、上記内容器底部の湯注出時において湯と接触しなくなる部分に対応させて設けられており、上記容器本体が上記電源台から分離された湯注出時における内容器底部の上部側領域等の部分的な空焚き状態をも確実に検出するようになっている。
【0023】
したがって、同構成によれば、容器本体が電源台上にあって、湯が沸かされている途中において、同容器本体が電源台から分離され、水平な状態に傾けられて、湯が注出されるようになり、ヒータが設けられている内容器底部の上述した上半分側が湯と接触しなくなり、それまでのヒータの高効率な発熱により、温度上昇のオーバーシュートが生じ、部分的な空焚き状態になると、同空焚き状態が速やかに検出され、上記ヒータへの電源供給回路が遮断される。
【0024】
その結果、その後、容器本体が電源台側に戻されても、内容器底部の温度が低下し、空焚き検知手段がリセットされるまでは、ヒータが加熱されるようなことはなく、従来のような問題は生じない。
【0025】
また、この発明の電気湯沸器では、内容器底部のヒータによる発熱量が、湯注出時において湯と接触する部分と湯注出時において湯と接触しなくなる部分とで、相互に異なる発熱量となっていることも特徴としている。
【0026】
このような課題解決手段によると、例えば湯注出時においては湯と接触しなくなる内容器底部部分のヒータ発熱量を、湯注出時においても湯と接触する部分の発熱量よりも大きくすることができ、そのようにした場合、上記部分的な空焚き状態を一層迅速に生じさせ、より速やかに電源回路を遮断することができる。
【0027】
また、同発熱量の大きい部分の上方の対応する蓋体位置に沸騰検知部を設けることなどにより、より早期の沸騰検知を可能とすることができ、早期の湯沸し、早期の電源遮断、それによる消費電力の節約、高い蒸気レス機能などを実現することができる。
【0028】
また、それにより発生するトータルの蒸気量が大きく減少するので、合成樹脂部品の劣化等も減少する。
(2)請求項2の発明の課題解決手段
この発明の電気湯沸器では、内容器を収納支持すると共に、底部側に受電部を有する容器本体と、該容器本体の後部に設けられた把手部と、上記容器本体の上部にあって上記内容器上部の開口を閉じる蓋体と、上記容器本体の上端側前部に設けられた湯注出口部と、上記内容器の底部に設けられた湯沸し用のヒータと、該内容器底部のヒータに対応して設けられた空焚き検知手段と、上記容器本体の受電部と任意に接続され、同受電部を介して上記ヒータ等に電源を供給する給電部を有した電源台とを備えてなる電気湯沸かし器において、上記空焚き検知手段を、上記内容器底部の湯注出時において湯と接触しなくなる部分に対応させて設け、上記容器本体が上記電源台から分離された湯注出時における内容器底部の部分的な空焚き状態を検出できるようにするとともに、上記ヒータによる発熱量は、湯注出時において湯と接触する部分の発熱量よりも、湯注出時において湯と接触しなくなる部分の発熱量の方が大きくなっていることを特徴としている。
【0029】
このような課題解決手段によると、湯注出時において湯と接触しなくなる内容器底部部分のヒータ発熱量が、湯注出時において湯と接触する部分の発熱量よりも大きくなっていることから、上記部分的な空焚き状態が一層迅速に生じ、より速やかに電源回路を遮断することができる。
【0030】
また、同発熱量の大きい湯注出時において湯と接触しなくなる部分の上方の対応する蓋体位置に沸騰検知部を設けることにより、より早期の沸騰検知を可能とすることができ、早期の湯沸し、早期の電源遮断、それによる消費電力の節約、高い蒸気レス機能などを実現することができる。
【0031】
また、それにより発生するトータルの蒸気量が大きく減少するので、合成樹脂部品の劣化等も減少する。
【0032】
なお、容器本体が電源台側に戻されても、内容器底部の温度が低下し、空焚き検知手段がリセットされるまでは、ヒータが加熱されるようなことが無いことに関しては、請求項1の発明と同様である。
(3)請求項3の発明の課題解決手段
この発明の電気湯沸器では、上記請求項1または2の発明の課題解決手段において、湯注出時において湯と接触する部分が容器本体の湯注出口側であり、湯注出時において湯と接触しなくなる部分が容器本体の把手側であることを特徴としている。
【0033】
容器本体が電源台上に接続され、湯が沸かされている途中において、同容器本体が電源台から分離され、水平な状態に傾けられて、湯が注出されるようになると、通常、上記ヒータが設けられている内容器底部の把手部側が湯と接触しなくなり、電源の供給がなくても、それまでの上記ヒータの高効率な発熱により、相当な温度上昇のオーバーシュートが生じる。そして、同温度が空焚き検知温度以上になると、部分的な空焚き状態となる。
【0034】
そこで、このような場合に、空焚き検知手段を、当該内容器底部の湯注出時において湯と接触しなくなる把手部側の領域に対応させて設けると、上記容器本体が上記電源台から分離された湯注出時における内容器底部の同領域部分の空焚き状態を確実に検出するようになる。その結果、同様に従来の問題を有効に解決することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上の結果、本願発明によると、内容器内の湯の量に応じて、湯注出時に内容器の底部部分で生じる部分的な空焚き状態を、確実、かつ速やかに検出し、予め電源回路をOFFにした上で、容器本体を電源台に戻すことができるので、従来のように実際に空焚きが生じるまで、不要な加熱を行なう問題が解消され、より信頼性、耐久性の高い電気湯沸器を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本願発明の実施の形態に係る電気湯沸器の蓋閉状態における全体的な構造を示す右半分側の断面図である(容器本体を電源台上に載置一体化した図)。
図2】同電気湯沸器の底部材を取り外した容器本体底部における電装部の構成および配線レイアウト等を示す底面図である(湯沸しヒータ配設パターンを省略して示す図)。
図3】同電気湯沸器の内容器底部における湯沸しヒータ配設パターンおよび電装部の取り付け構造を示す底面図である。
図4】同電気湯沸器の内容器底面部に設けられた電装部の構成を拡大して示す底面図である。
図5】同電気湯沸器の内容器および内容器底面部における底板、湯沸しヒータ、電装部取付金具、受電カプラ、空焚き検知用バイメタル部分の構成を示す断面図である。
図6】同電気湯沸器の内容器底面部における安全用サーモスタット部分の構成を示す拡大断面図である。
図7】同電気湯沸器の内容器底部の底板に対する電装部取付金具、底部材取付金具、サーモスタット取付金具の設置状態を示す内容器の斜視図である。
図8】同電気湯沸器の内容器底部における底板および底板に対する電装部取り付け金具の取付状態を示す内容器全体の側面図である。
図9】同電気湯沸器の内容器底面部における湯沸しヒータの配設パターンと位置関係を容器本体の湯注出口(下口部)および把手位置との関係で示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の電気湯沸器を実施するための一つの形態について詳細に説明する。
【0038】
先ず図1図9には、同本願発明の電気湯沸かし器を実施するための形態にかかる電気湯沸器本体の全体的な構成およびその内容器底部の湯沸しヒータ部を含む電装品部分の構成が示されている。
(電気湯沸器本体の構成)
すなわち、この実施の形態の電気湯沸器は、例えば図1および図2に示すように、内側に貯湯用の内容器3、上部に蓋体4、後部に把手8を備えた容器本体1と、該容器本体1が着脱可能に載置され、該載置状態で当該容器本体1の電装品部の電源回路に電源を供給する電源台2とからなっている。
【0039】
そして、容器本体1は、例えば外装体である金属製の円筒状ケース1aと、該円筒状ケース1aの底部に嵌合一体化された合成樹脂製の皿状の底部材1bと、上記円筒状ケース1aの上端側開口部に嵌合固定された合成樹脂製の環状の肩部材1cと、該環状の肩部材1cの内側に設けた係合段部1dを介して、開口部外周側のフランジ部3aを吊設支持することにより、上記円筒状ケース1aおよび底部材1bの内側に収納一体化された上記内容器3と、上記環状の肩部材1cの内側に着脱自在に嵌合され、上気内容器3の開口部を開閉する上下方向に相当の厚みのある上記蓋体4と、上記内容器3の底面部に設けられ、上記内容器3を湯沸し時において加熱する湯沸しヒータ5と、該湯沸しヒータ5を駆動制御する電源回路を備えた電装部6と、上記肩部材1cの前端部(図1の左側部)に設けられた上記内容器3内の湯を外部へ注出するための湯注出口(下口部)7と、上記円筒状ケース1aの後端部(図1の右側部)にあって、上記肩部材1cから上記円筒状ケース1aの下端部に延びる状態で成形または取り付けられた側面コの字形の湯注出操作用の把手8とを備えて構成されている。
(内容器の構成)
内容器3は、例えば図5図8に示すように、1枚板構造の略等径のステンレス製(合成樹脂製も可)の筒体部31と、該筒体部31の底部側開口部に同開口部を閉じるように外周囲を閉蓋状態で溶接一体化された同じくステンレス製の底板(少し厚め)32とからなっており、該底板32の底面部に上記湯沸しヒータ5が設けられている。底板32は、上記筒体部31の底部側開口部内周に設けた所定の幅の接合用フランジ部に対応する所定の幅の外周側環状のフラット部32aと、その内側の少し段下がりして上方に向けて緩やかな凹球面形状となった球面部32bとからなっており、上記フラット部32aが上記筒体部31の接合用フランジ部に溶接されて筒体部31と一体になり、当該内容器3の底壁部を形成している。そして、同一体化状態において、該内容器3の内周面全体には、例えば粒子状の土鍋粉末やセラミック粉末を混入したフッ素樹脂がコーティングされる。
【0040】
そして、以上のような底板32の上記球面部32bが上記湯沸しヒータ5の設置面とされ、該湯沸しヒータ設置面に対して上記湯沸しヒータ5が設置されている。
(湯沸しヒータの構成)
湯沸しヒータ5は、上記底板32の球面部32bに対して所定の絶縁層(絶縁ガラス層など)51を介して印刷された所定の厚さ、所定の幅の面状ヒータ(帯状ヒータ)よりなり、例えば図3および図9に示すように、上記球面部32bの中心部側に位置し、A−A´軸(図9参照)を挟んで左右対称に設けられている一対の給電部(給電用電源端子部)52a、52bを始点(および終点)として、上記球面部32bの一部扇形部分(A−A´軸上の前端側に位置)のみを残して、上記球面部32bの全体に亘り所定の隣接間隔をおいて、決して相互にクロスさせることなく、所望に屈曲させながら、一筆書き状に連続させて、可能な限り均一に配設した相互に軸対称な左右一対(2組)のウイングパターン(蝶が羽根を広げた形状)のものよりなっている。そして、その下面側(表面側)にも、上記球面部32b側と同様の絶縁層51が印刷されている。
【0041】
この左右対称な一対のウイングパターンの湯沸しヒータ5は、例えば図9に詳細に示されているように、その左右対称軸A−A´を基準として左右対称に配設されているとともに、同状態において、上記球面部32bの中心Oから前方側方向(湯注出口7方向)に上記扇形のヒータ非設置面(湯沸しヒータ5および絶縁層51の設けられていない部分)32Sを設けて形成されている。このヒータ非設置面32Sの後部側(把手8側)球面部32bの中心O部分には、例えば図5図7図8に示すように、後述する電装部6を取り付けるための略三角形状の電装部取り付け金具10が取り付けられている。
【0042】
この電装部取付金具10の金具本体10a部分は、例えば3本の脚部10b、10c、10dにより、上気球面部32bとの間に所定の空間(隙間)を保って取り付けられており、加熱部である底板32からの熱の影響を受けないように構成されている。
【0043】
また、上記底板32の上記フラット部32a部分には、上述した円筒状ケース1aの底部に上述した底部材1bを螺合固定するための支持金具12a、12bと、後述する安全用のサーモスタット(ワンショットサーモ)15を取り付けるための支持金具12cが設けられている。これら各支持金具12a〜12cには、例えば図7に示すように、それぞれ取付用のネジを螺合するためのネジ溝13が設けられている。
【0044】
上記のように構成された湯沸しヒータ5は、例えば図9に示すように、その中心となる上記左右対称軸A−A´の位置を、内容器3の上記容器本体1内への組み込み状態(図1の状態)において、上記容器本体1の前端側湯注出口7と後端側把手8とを結ぶ前後方向の直線X−X´の位置から、底面視右方向に所定角θだけ斜めに回転させた状態で設けられており、上記左右対称な一対のウイングパターンの左右ウイング部を横切る左右方向のウイング軸B−B´も上記容器本体1の左右方向中心軸Y−Y´(X−X´軸に直角)から右方向に同所定の回転角θだけ回転した位置に設けられている。
【0045】
これにより、上記球面部32b上における上記扇形のヒータ非設置部32Sは、例えば図9から明らかなように、当該内容器3を上記容器本体1に組み込んだ状態において、上記容器本体1の底部の前後方向部分を1/2に分割するY−Y´軸よりも前部側のX−O−Y´領域部分に位置することになり、上記湯沸しヒータ5の面状ヒータ部分は、上記容器本体1の底部の前後方向部分を1/2に分割するY−Y´軸よりも後半部分において、全体の略2/3の量のヒータが配設された状態となるように構成されている。
【0046】
この結果、この実施の形態では、内容器3底部の加熱能力が全体に均一ではなく、湯注出口7側(前部側)よりも把手8側(後部側)の方が大きく、内容器3内の湯も上記湯注出口7側よりも同把手8側に近い部分の湯の方が相対的に早く沸騰し始めることになる。そこで、これに対応して、後述するように、蓋体4側の沸騰検知用蒸気導入通路44も、把手8側後端寄りに設けており、それによって可能な限り速やかに沸騰を検知し、少しでも無駄な蒸気を出すことなく、湯沸しを完了させるようになっている。
【0047】
なお、このようなヒータの配列パターンに関連して、以下に述べる空焚き検出用のバイメタル25A、25Bも、その内の一つ25Bは、上記Y−Y´軸よりも後端側に位置して設置されるようになっている(例えば、図2および図9を参照)。
(電装部の構成)
上記電装部6は、例えば図4に示されるように、耐熱性のある合成樹脂成形体よりなる電装用基体(基板兼用の筐体)を中心とし、同電装用基体に形成した各種電装品設置部に、例えば電源端子、スイッチ機構、空焚き検知手段等の各種電装品を設けて構成されている。この実施の形態の場合、上記空焚き検知手段としては、例えば円盤構造のバイメタルが採用されている。
【0048】
この実施の形態の場合、上記電装用基体は、例えば上記扇形のヒータ非設置部32Sを有し、上記容器本体1の前後方向軸X−X´よりも所定角θ右方向に回転したA−A´軸を介して左右に対称な左右一対のウイング構造に配設された上記湯沸しヒータ5のレイアウトに対応して、同じくA−A´を介して左右に対称な左右一対のウイング構造(蝶翼構造)のものに形成されている。そして、同電装用基体部分が上記電装品取り付け金具10を介して上記底板32の球面部32a下面側中心部に取り付けられる。
【0049】
先ず符号21は、ガイド筒21a、筒状電極21b、棒状電極21cよりなる全体として筒状の受電カプラであり、同受電カプラ21部分の左右両側前部にバイメタル設置部23A、23B、後部に電源端子設置部24A、24Bが一体成形により設けられている。そして、上記バイメタル設置部23A、23Bには、その上部側に位置して空焚き検知用の円盤状のバイメタル25A、25Bが設けられ、この円盤状のバイメタル25A、25Bによって、上下に対応して設けられた第1、第2の電源接点19a、20a、19b、20bをON、OFFするようになっている。
【0050】
すなわち、円盤状のバイメタル25A、25Bは、上記バイメタル設置部23A、23Bの開口枠部分に一体に樹脂成形されたバイメタル支持部27a、27bの上部側に位置して上方に直角に折り曲げられた板状のバネ部材26a、26bにより上方側に押圧付勢された状態で、上下方向に昇降可能に弾性的に支持されており、通常の温度状態では、その外周縁部(感熱変形部)を上記底板32の球面部32bにおける湯沸しヒータ5の設置面に所定の接触圧を有して接触させている。
【0051】
すなわち、該円盤状バイメタル25A、25Bの上記外周縁部(感熱変形部)は、通常の温度状態では、湯沸しヒータ5の設置面側にスカート状に絞られた形で周縁部全体が当接しているが、湯沸しヒータ5設置面側の温度が所定の作動基準温度(例えば140℃)以上になると、逆方向(下方)に反り返り、逆方向に傾斜した状態となる。
【0052】
一方、上記円盤状のバイメタル25A、25Bは、同外周縁部の下面側に、上記第2の電源接点(可動側接点)20a、20bの上部側に位置して上下方向に弾性変形可能に設けられた第2の電源接点作動部材(レバー片)18a、18b先端の所定長さ上方に延びる軸部材部分が当接可能に対応せしめられている(例えば図4および図5の符号18a、18b部分を参照)。
【0053】
そして、上記円盤状のバイメタル25A、25Bの上記外周縁部(感熱変形部)が、上記湯沸しヒータ5設置面部分の作動基準温度(140℃)以上の温度上昇によって作動状態になると、その外周縁側を下方に反り返させることにより、上記軸部材部分を下方に押し下げ、上記電源接点作動部材18a、18bのレバー動作により上記第2の電源接点20a、20bを下方に押し下げるので、同第2の電源接点20a、20bの先端20c、20dと上記上部側第1の電源接点(固定側接点)19a、19bの先端側接点部19c、19dとが離間されて、上記湯沸しヒータ5への電源の供給が停止される。
【0054】
この状態は、上記円盤状のバイメタル25A、25Bの上記外周縁部(感熱変形部)が元の状態に復帰するまで維持される。
【0055】
そして、この実施の形態の構成の場合、例えば図3および図9に示すように、上記円盤状のバイメタル25A、25Bを、上記面状ヒータの局部加熱による泡の合体を生じにくい、複数本(2本)並列する状態で帯状に延びる面状ヒータが相互に外周側方向に曲成して離間し、相互の間に十分に広い面状ヒータのない空間が形成される5A、5B部分に対応させて設けることにより、また同円盤状のバイメタル25A、25Bを設置しようとする5A、5B部分において、複数本(2本)並列に延びる帯状の面状ヒータを相互に外周側方向に曲成させることによって離間させ、それら相互の間に十分に広い面状ヒータのない空間を形成することによって、対応する面状ヒータ部分を隣り合う面状ヒータによる泡の合体を生じにくい構造のものにすることにより、上記各面状ヒータ部分で生じた多数の泡が相互に合体することを回避し、当該泡の合体によって部分的に大きな空洞部ができ、当該空洞部によって内容器3の底面と水との接触が断たれて、局部加熱が発生し、同局部加熱発生部分で部分的な空焚き状態が発生するのを回避し、上記空焚き検知用の円盤状のバイメタル25A、25Bが誤作動、誤検知を生じるのを防止するようにしている。
【0056】
また、この場合、少なくとも当該円盤状のバイメタル25A、25Bの円形の感知面である上記外周縁部(感熱変形部)に対応する温度検知領域(図3図9中に2点鎖線で示す領域)における面状ヒータの幅は、その他の領域におけるものよりも所定寸法以上幅を小さくして印刷するなど、面状ヒータ部で発生する泡の発生量自体を少なくし、より泡の合体による部分的な空焚きを生じさせないような構成が採用される(後述)。
【0057】
他方、上記電装用基体の上記電源端子設置部24A、24Bには、例えば図4に示すように、上記受電カプラ21の筒状電極21b、棒状電極21cを介して供給される電源を上記湯沸しヒータ5の給電部52a、52bに給電する弾性接触構造の給電端子(同図4のスタッド部22a、22bの上端側部分に設けられている)や後述する把手8側電源スイッチ部47への電源供給端子T1、サーモスタット15の一端側接続端子16bとの接続端子T2、後述する把手8側沸騰検知部46との信号線接続端子T3等の各種接続端子が設けられており、それぞれ図示のような所定のリード線を介して接続されている。
【0058】
上記把手8側電源スイッチ部47への電源供給端子T1は、電源配線である電源リード線を介して、図1に示す把手8内の配線空間8aを介して把手8上端側の操作電源スイッチ47の開閉接点および沸騰検知部46の沸騰検知用バイメタル開閉接点46aとそれぞれ直列な関係で接続され、同沸騰検知用バイメタル開閉接点46a部分から電源配線であるリード線を介して再び把手8内の配線空間8a内をユーターンして上記安全用サーモスタット15の他端側接続端子16a部分に接続されている。
【0059】
安全用サーモスタット15は、例えば上記球面部32bの扇形のヒータ非設置面32S左側の面状ヒータ部分に対応して設けられており、同部分が特別な異常温度(例えば270℃以上の高温)になったようなときに作動して、上記湯沸しヒータ5その他への全ての電源の供給を停止する。この安全用サーモスタット15は、例えば図3および図6に示されるように、上記底板32のフラット部32aのサーモスタット支持金具12cに取り付けられ、上下方向に延びる支持ケース15a内に押圧付勢用のコイルバネ15cを介して感熱センサー15bを収納し、同感熱センサー15bの先端を上記扇形のヒータ非設置面32S左側の面状ヒータ部分に押圧状態で接触させ、外周側に設けた取り付けブラケット部15dを介して上記支持金具12cに固定されている。
(電源台の構成)
さらに、図1において、符号2は卓上型の電源台であり、その中央部には、上記筒体構造の受電カプラ21のガイド筒21a内に嵌合される同じく筒体構造の給電カプラ11が所定の高さ上方に突出して設けられている一方、裏面側には電源コードの収納空間が設けられている。
【0060】
給電カプラ11は、上記受電カプラ21のガイド筒21aに対応して、その内側に摺動可能に嵌合されるガイド筒11aと、該ガイド筒11aの内周側にあって、上記筒状電極21bの内側にブラシ構造の電極を介して嵌合される筒状電極11bとからなり、該筒状電極11bの内側に上記受電カプラ21側の棒状電極21cが挿入されるようになっており、上記電源コード収納空間内の図示しない電源コードがAC電源に接続されると、上記電源台2側給電カプラ11を介して上記容器本体1側の受電カプラ21にAC電源が供給され、さらに同受電カプラ21を介して上述の各電源回路に電源が供給される。
【0061】
その結果、同電源回路を介して、上記湯沸しヒータ5、空焚き検知用のバイメタル25A、25B、安全用サーモスタット15、電源スイッチ部47、沸騰検知部46などに電源が供給されることになる。なお、電源スイッチ部47内には照明用のネオンランプ47aが設けられている。
(蓋体部分の構成)
蓋体4は、例えば合成樹脂製の上板41と該上板41に対して外周縁が結合された合成樹脂製の下板42と、その下方側の金属製の内カバー43とからなっており、上記肩部材1c内側の開口部に対して上下方向に着脱自在に嵌合されている。上記上板41および下板42間の空間は、必要に応じて断熱材を充填した断熱構造体に形成されるとともに、下板42の一部には、下方から上方に向けて沸騰検知用の蒸気導入通路44が設けられている。
【0062】
この蒸気導入通路44は、上記内カバー43の後端側把手8に近い位置に設けられており、その下端側蒸気導入口部分から上記把手部8の上端側前部に設けた沸騰検知用バイメタル46aを有する沸騰検知用の蒸気通路に向けて連通している。そして、同沸騰検知用蒸気通路部分におけるバイメタル46aの作用で沸騰が検知される。
【0063】
そして、それにより上記内容器3内の湯の沸騰が検知されると、同バイメタル46a部分で上記湯沸しヒータ5への電源の供給が遮断される。
【0064】
この場合、この実施の形態の構成では、上述のように内容器3底部の加熱能力が全体に均一ではなく、湯注出口7側(前部側)よりも把手8側(後部側)の方が大きく構成されており、内容器3内の湯も上記湯注出口7側よりも同把手8側に近い部分の湯の方が相対的に早く沸騰し始めることになる。そこで、これに対応して、上記のように蓋体4側の沸騰検知用蒸気導入通路44も、把手8側後端寄りに位置させて設けており、それによって可能な限り速やかに沸騰蒸気を導入、検知し、少しでも無駄な蒸気を出すことなく、湯沸しを完了させるようになっている。
【0065】
また、この蓋体4の前端側には、下部側内カバー43の湯導入口部から上部前面側の湯導出口部に至る給湯通路9が設けられている。そして、この給湯通路9の途中には、ロック・アンロック用の操作ボタン45によって出湯状態を制御する開閉弁機構が設けられている。符号45aは同開閉機構の開閉弁、45bは同開閉弁45aおよび上記操作ボタン45を上方側(閉弁状態)に上昇付勢しているコイルスプリングである。
(空焚き検知用バイメタルの誤検知対策)
ところで、上述のように、内容器3加熱用の湯沸しヒータ5として、以上のような面状ヒータ構造を採用した場合、ヒータ部の加熱効率が高く、きわめて迅速な湯沸しを行なえる反面、内容器3のヒータ部に対応した部分のみが局部的に加熱され、内容器3内面のヒータ部に対応した部分に局部的に多数の泡の発生が生じる。そして、この多数の泡が、やがて合体し、大きな泡となる。この場合、複数本の面状ヒータが相互に隣接していると、それら隣り合って生じる泡が合体して、さらに大きな泡となる。
【0066】
そして、そのような大きな泡が生じると、当該泡部分が空洞となり、同空洞によって内容器3と水との接触が断たれて、上記ヒータ部に対応する内容器3の底板32部分が局部的に加熱され、部分的な空焚き状態となって、同部分の温度が異常に上昇する。
【0067】
その結果、当該ヒータ部に対応して設けられている上記空焚き検知用の円盤状バイメタル25A、25Bが誤作動し、湯沸しヒータ5への電源を遮断してしまう。また、面状ヒータの変形が生じる。さらに、上記内容器3内周面のフッ素樹脂に悪影響を与える(変色、撥水性の低下)。
【0068】
そこで、この実施の形態では、上述の様に、空焚き検知用の円盤状のバイメタル25A、25B(それらの温度感知面)を、上記面状ヒータの局部加熱による泡の合体を生じにくい部分、例えば図3および図9に示すように、隣接し、相互に並設状態で延びる複数本(2本)の帯状の面状ヒータが相互に外周側方向に曲成して離間し、相互の間に十分に広い面状ヒータのない空間が形成され、相互の発生した泡の合体が生じにくい配設パターン部分5A、5Bに対応させて設けることにより、また同空焚き検知用のバイメタル25A、25Bを設置しようとする温度検知領域5A、5B部分において、隣接し、相互に並設状態で延びる複数本(2本)の帯状の面状ヒータを相互に外周側方向に曲成させることによって離間させ、相互の間に十分に広い面状ヒータのない空間を形成することによって、対応する面状ヒータ部分を局部加熱による泡の合体を生じにくい構造のものにすることにより、それら面状ヒータ部分で生じた泡の合体を可能な限り回避し、空焚き検知用バイメタル25A、25Bの誤作動、誤検知を防止するようにしている。
(湯の注出に伴う部分的な空焚き状態の検知構造)
内容器3の底部における部分的な空焚き状態は、上述のような湯沸し時における泡の合体による場合だけでなく、例えば次の場合のような湯の注出時にも発生する。
【0069】
すなわち、上述した容器本体1が電源台2上に接続され、湯が沸かされている途中において、同容器本体1が電源台2から分離され、水平な状態に傾けられて湯が注出されるようになると、通常、上記面状ヒータが設けられている上記内容器3底部の上半分側部分は湯と接触しなくなり、電源の供給がなくても、それまでの上記面状ヒータの高効率な発熱により、相当な温度上昇のオーバーシュートが生じる。そして、同温度が空焚き検知温度以上になると、実質的に部分的な空焚き状態となる。
【0070】
しかし、すでに述べたように、従来の構成では、空焚きを検出する空焚き検出手段が、上記内容器3底部の中央部か、注出口側に設けられており、湯注出時にも内容器3内の湯に接触した部分に対応していることから、そのような湯に接触していない内容器3部分の空焚き状態を検出することはできなかった。
【0071】
そのため、湯の注出が終わって、容器本体1が再び電源台2上に戻されると、湯沸し途中であったことから、そのまま面状ヒータに対する電源の供給が継続されて、沸騰状態になるまで内容器3内の湯の加熱が継続される。
【0072】
この場合、湯の残量が多い場合には、そのままでも良いが、もしも湯の残量が少なく、空焚きに近い状態のときには、上記湯に接触していなかった底部部分は、上記高温となった部分的な空焚き状態のまま、さらに面状ヒータによる高温の加熱が始まることになり、大きな熱負荷を受けて、面状ヒータ設置面である底板32部分の変形、塗布されたフッ素樹脂の損傷(焦げ、焼け、撥水性の低下、変色、ミネラル付着、泡切れの悪化など)を招く。
【0073】
そこで、この発明の実施の形態では、図9に示すように、上記空焚き検知用の円盤状バイメタル25A、25Bの内の一方のもの25Bを、上記内容器3底部の湯注出時において湯と接触しなくなる把手8側部分、例えば内容器3の底部を前後方向(X−X´軸方向)1/2に分割する左右Y−Y´軸よりも後方側部分に設け、上記容器本体1が上記電源台2から分離された湯注出時における内容器3底部の上述した部分的な空焚き状態をも検出できるようにしている。
【0074】
このような構成によると、まず面状ヒータよりなる湯沸しヒータ5の採用により、水を入れた内容器3の加熱効率が大きく向上し、湯沸し時間が大幅に短縮される。
【0075】
しかも、空焚き検知用の円盤状バイメタル25Bは、上記内容器3底部の湯注出時において湯と接触しなくなる把手8側部分に対応させて設けられていることから、上記容器本体1が上記電源台2から分離された湯注出時における内容器3底部の上部側領域等の部分的な空焚き状態をも確実に検出し、同湯注出状態において、上記面状ヒータへの電源回路を遮断する。
【0076】
したがって、その後、容器本体1が電源台2側に戻されても、上記内容器3底部の温度が低下し、円盤状バイメタル25Bがリセットされるまでは、面状ヒータが加熱されるようなことはなく、従来のような問題は生じない。
【0077】
また、この発明の実施の形態の構成では、すでに図9の構成について述べたように、単位面積あたりの面状ヒータの配設量を変えることにより、内容器3底部の加熱能力が全体に均一ではなく、湯注出口7側(前部側)よりも把手8側(後部側)の方が大きくなるように構成されており、内容器3内の湯も上記湯注出口7側よりも同把手8側に近い部分の湯の方が相対的に早く沸騰し始めるようになっている。
【0078】
そこで、これに対応して、上記のように蓋体4側の沸騰検知用蒸気導入通路44も、把手8側後端寄りに位置させて設けており、それによって可能な限り速やかに沸騰蒸気を導入、検知し、少しでも無駄な蒸気を出すことなく、少しでも早く湯沸しを完了させ、電源を遮断するようになっている。
【0079】
これにより、迅速な湯沸し、短時間での電源遮断、可及的な消費電力の節約、高い蒸気レス機能などを実現することができる。
【0080】
また、それにより発生するトータルの蒸気量が大きく減少するので、合成樹脂部品の劣化等も減少する。
【0081】
これらの結果、この発明の実施の形態によると、具体的な内容器3内の湯の量に応じて、湯注出時に内容器3の底部部分で生じる部分的な空焚き状態を、確実、かつ速やかに検出し、予め電源回路をOFFにした上で、容器本体1を電源台2に戻すことができるので、従来のように実際に空焚きが生じるまで、不要な加熱を行なう問題が解消され、より信頼性、耐久性の高い電気湯沸器を提供することができるようになる。
(変形例)
なお、以上の実施の形態の構成では、上記内容器3底部の空焚き検知手段として、円盤状のバイメタル25A、25Bを採用したが、同空焚き検知手段は、例えばサーミスタに変更することもできる。
【0082】
上記実施の形態の構成における内容器3底部の空焚き検知手段は、必ずしも上述のような円盤状バイメタル25A、25Bに限られるものではなく、例えばサーミスタなどの応答性の高い温度検知手段を採用することもできる。
【0083】
このように空焚き検知手段としてサーミスタを使用すると、検知手段自体を小型のもので構成することができるとともに、温度検知性能、応答性の高いものとすることができるので、局部加熱による泡自体が発生しにくい面状ヒータ間の狭い領域や、面状ヒータの局部加熱による泡の合体が生じにくい所望の部位に任意に設置することができるようになり、面状ヒータ部分で局部加熱が生じても、同局部加熱による泡の合体の影響を受けることなく、迅速かつ正確な底板温度の検出が可能となる。
【0084】
その結果、誤動作や誤った空焚き検知を確実に回避することができるだけでなく、必ずしも面状ヒータの幅を狭くしたり、配設間隔を広くしたりする必要がなくなるので、きわめて加熱効率の高いものとすることができる。
【符号の説明】
【0085】
1は容器本体、2は電源台、3は内容器、3aはフランジ部、4は蓋体、5は湯沸しヒータ、6は電装部、7は湯注出口(下口部)、8は把手、10は電装部取り付け金具、11は給電カプラ、15は安全用サーモスタット、18a、18bは電源接点作動部材、19a、19bは第1の電源接点(固定側接点)、20a、20bは第2の電源接点(可動側接点)、21は受電カプラ、23A、23Bはバイメタル設置部、24A、24Bは電源端子設置部、25A、25Bは円盤状バイメタル、26a、26bはバネ部材、27a、27bはバイメタル支持部、32は底板、32bは球面部である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9