(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドア内に固定される不動部材に支持され、車体側のストライカと係合可能な噛合機構部と、前記不動部材に枢軸をもって枢支され、かつ前記ドアのアウタパネルに設けられるアウトサイドハンドルに操作力伝達部材を介して連係されるアウトサイドレバーとを備え、前記アウトサイドハンドルの操作に基づいて前記アウトサイドレバーが待機位置からリリース方向へ回動することにより、前記アウトサイドレバーに連係されるリリース部材を介して、前記噛合機構部と前記ストライカとの係合を解除するようにした自動車用ドアラッチ装置において、
前記ドアの変形に追従して車内方向に移動することにより、前記リリース部材を、前記噛合機構部と前記ストライカとの係合を解除不能とする方向に移動させるドア変形追従部材を有し、
前記アウトサイドレバーを、前記枢軸により、リリース方向に回動可能であることに加えて、車内方向へ移動可能に、かつ付勢手段により車外方向へ付勢して枢支することにより、前記アウトサイドレバー自体を前記ドア変形追従部材とし、前記ドアの変形に追従して前記アウトサイドレバー自体が車内方向に移動することにより、前記アウトサイドレバーに連係された前記リリース部材を、前記噛合機構部と前記ストライカとの係合を解除不能とする方向に移動させることを特徴とする自動車用ドアラッチ装置。
ドア内に固定される不動部材に支持され、車体側のストライカと係合可能な噛合機構部と、前記不動部材に枢軸をもって枢支され、かつ前記ドアのアウタパネルに設けられるアウトサイドハンドルに操作力伝達部材を介して連係されるアウトサイドレバーとを備え、前記アウトサイドハンドルの操作に基づいて前記アウトサイドレバーが待機位置からリリース方向へ回動することにより、前記アウトサイドレバーに連係されるリリース部材を介して、前記噛合機構部と前記ストライカとの係合を解除するようにした自動車用ドアラッチ装置において、
前記ドアの変形に追従して車内方向に移動することにより、前記リリース部材を、前記噛合機構部と前記ストライカとの係合を解除不能とする方向に移動させるドア変形追従部材を有し、
前記アウトサイドレバーは、前記枢軸によりリリース方向に回動可能に枢支され、内端部が前記リリース部材に連係された第1アウトサイドレバーと、当該第1アウトサイドレバーに対して車内方向へ移動可能かつ前記第1アウトサイドレバーと共にリリース方向に回動可能として前記枢軸に支持されるとともに、付勢手段をもって車外方向へ付勢され、車外側の端部が前記操作力伝達部材を介して前記アウトサイドハンドルに連係された第2アウトサイドレバーとからなるものとし、前記第2アウトサイドレバーを前記ドア変形追従部材として前記ドアの変形に追従して車内方向へ移動することにより、前記第1アウトサイドレバーと前記リリース部材との連係を解除することを特徴とする自動車用ドアラッチ装置。
ドア内に固定される不動部材に支持され、車体側のストライカと係合可能な噛合機構部と、前記不動部材に枢軸をもって枢支され、かつ前記ドアのアウタパネルに設けられるアウトサイドハンドルに操作力伝達部材を介して連係されるアウトサイドレバーとを備え、前記アウトサイドハンドルの操作に基づいて前記アウトサイドレバーが待機位置からリリース方向へ回動することにより、前記アウトサイドレバーに連係されるリリース部材を介して、前記噛合機構部と前記ストライカとの係合を解除するようにした自動車用ドアラッチ装置において、
前記ドアの変形に追従して車内方向に移動することにより、前記リリース部材を、前記噛合機構部と前記ストライカとの係合を解除不能とする方向に移動させるドア変形追従部材を有し、
前記ドア変形追従部材は、車内方向へ移動可能で、かつ車外側の端部が前記アウトサイドレバーの車外側の側端よりも車外方向に突出するように付勢され、前記ドアの変形に追従して車内方向に移動することにより、前記アウトサイドレバーと前記リリース部材との連係を解除することを特徴とする自動車用ドアラッチ装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜
図8は、本発明の第1の実施形態(請求項3に記載の発明の実施形態)に係るドアラッチ装置を示す。なお、以下の説明では、
図2及び
図3における左方を自動車の「車内側」、同じく右方を「車外側」とする。また、本発明のドアラッチ装置は、自動車における左右のフロントサイドドア(以下、ドアと略称する)の後端部の内部に取付けられるものであるが、本実施形態では、
図1に示すように、ドアラッチ装置1を右側のドア2に取付けた例について説明する。
【0015】
ドア2は、アウタパネル2aとインナパネル(図示略)とを備え、アウタパネル2aの後上部の外側面には、操作力伝達部材3を介して、ドアラッチ装置1を車外よりオープン操作するアウトサイドハンドル4と、操作力伝達部材5を介して、ドアラッチ装置1を車外よりアンロック操作及びロック操作するキーシリンダ6が設けられている。インナパネルの前部側の内側面には、操作力伝達部材7を介して、ドアラッチ装置1を車内よりオープン操作するインサイドハンドル8と、操作力伝達部材9を介して、ドアラッチ装置1を車内よりアンロック操作及びロック操作するためのロックノブ10が設けられている。
【0016】
図2及び
図3に示すように、ドアラッチ装置1は、車体側のストライカSに係合することによってドア2を閉鎖状態に保持するための噛合部アッセンブリ11を、当該噛合部アッセンブリ11を操作するための操作部アッセンブリ12に組み付けて、噛合部アッセンブリ11と操作部アッセンブリ12とを一体化することにより構成されている。
【0017】
噛合部アッセンブリ11は、ドア2内においてその後端部に固定される合成樹脂製のボディ13と、ボディ13内に前後方向のラッチ軸14により枢支され、車体側のストライカSに係合可能なラッチ15と、ボディ13内に前後方向のラチェット軸16により枢支され、ラッチ15に係合可能なラチェット17と、ボディ13の裏側(ドアラッチ装置1をドア2に取り付けた状態においては前側)に配設され、ラチェット17と一体的に設けられたラチェットピン171と、ボディ13の表側(ドアラッチ装置1をドア2に取り付けた状態においては後側)を閉塞する金属製のカバープレート18と、ボディ13の裏側に固定される金属製のバックプレート19とを備えている。
【0018】
ドア2が閉じられると、車体側のストライカSがボディ13とカバープレート18の上下方向のほぼ中央部に設けられたストライカ進入溝181に進入してラッチ15に係合するとともに、ラチェット17がラッチ15に係合して、ラッチ15の開き方向(
図2、
図3において時計方向)への回動を阻止することにより、ドア2は閉扉状態に保持される。
【0019】
操作部アッセンブリ12は、バックプレート19を介してボディ13の裏側に固定される、ベース部材としての合成樹脂製のケーシング20と、ケーシング20内に組み付けられる各種操作レバー、連係レバー及びモータ(図示略)等を備える。
【0020】
ケーシング20内に組み付けられる各種操作レバーには、前述したアウトサイドハンドル4に、操作力伝達部材3を介して連結された車内外方向を向くアウトサイドレバー21(詳細は後述する)、前述したドア2のインサイドハンドル8に操作力伝達部材7を介して連係され、インサイドハンドル8の操作に連動するインサイドレバー(図示略)、前述したロックノブ10に操作力伝達部材9を介して連係され、ロックノブ10の操作に連動するロッキングレバー(図示略)、前述したキーシリンダ6に操作力伝達部材5を介して連係され、キーシリンダ6の操作に連動するキーレバー(図示略)等がある。
【0021】
また、連係レバーには、アウトサイドレバー21の内端部に連結されるとともに、ロッキングレバーの作動に連動して、アンロック位置及びロック位置に移動可能なリリース部材としてのリリースレバー22がある。リリースレバー22は、アンロック位置にあるとき、アウトサイドハンドル4の開操作に伴うアウトサイドレバー21のリリース作動(
図2において時計方向へ所定角度回動する作動)に連動して上方へ移動することで、アウトサイドレバー21のリリース作動をラチェット17に伝達可能としてラチェット17をラッチ15から外れる解除方向へ回動させてドア2の開きを可能にする。なお、上記アウトサイドレバー21以外のインサイドレバー、ロッキングレバー、キーレバー及びリリースレバー22等の各種レバーは、通常のドアラッチ装置に装着される公知のものであるので、それらの構造やレバー同士の連係形態等の詳細な説明は省略する。
【0022】
ケーシング20は、噛合部アッセンブリ11と操作部アッセンブリ12とを一体化した状態おいて、ボディ13の裏面側にバックプレート19を介して噛合部アッセンブリ11の裏面側に固定される第1ケーシング201と、第1ケーシング201に対して直角な前方を向く第2ケーシング202とを備え、第2ケーシング202内に、アウトサイドレバー21以外の上述した各種レバーが組み付けられている。第1ケーシング201は、ボディ13と対向する基部201aと、ボディ13の上半部の外周面を囲むようにして、基部201aの上半部の外周縁に後向きに突設された上部側壁201bと、基部201aの下半部の外周縁に後向きに突設された、上部側壁201bよりも突出寸法の小さな下部側壁201cとを有している。
【0023】
噛合部アッセンブリ11と操作部アッセンブリ12とを強固に一体化するために、ケーシング20の上部と下部が、後方を向くボルト23、24をもってバックプレート19に締結されている。下側のボルト24は、
図4に示すように、第1ケーシング201の基部201aの後面に一体的に突設された、アウトサイドレバー21を枢支するための前後方向を向く枢軸25の中心を貫通して、バックプレート19における噛合部アッセンブリ11の下方に突出する下端部191の雌ねじ孔26に螺合している。
なお、本実施形態におけるラッチ15及びラチェット17は、本発明に係る噛合機構部を構成し、ボディ13またはケーシング20は、本発明に係る不動部材に相当する。
【0024】
図3及び
図4に示すように、基部201aにおける枢軸25と対向する部分の外側端部には、基部201aを貫通する縦長の矩形孔27が形成されている。また、下部側壁201cにおける枢軸25と対向する部分の基端部には、矩形孔27と連続する切欠部28が形成されている。これにより、下部側壁201cにおける枢軸25と対向する部分を、前後寸法が他部よりも短寸で、かつ基部201aと不連続となる脆弱部201dとしてある。
【0025】
図3、
図4及び
図5の拡大図に示すように、上述したアウトサイドレバー21は、ドア2の車内外方向を向くとともに、中央部に軸孔29を有する第1アウトサイドレバー211と、同じくドア2の車内外方向を向くとともに、車内側寄りに車内外方向を向く長孔30が形成された第2アウトサイドレバー212との2分割構造とされている。なお、第2アウトサイドレバー212は、詳細な説明は後述するが、ドア2のアウタパネル2aが車内側に変形したとき車内方向に移動させられることにより、リリースレバー22を、アウトサイドレバー21のリリース方向への回動を噛合機構部に伝達不能とする方向に移動させ、ラッチ15とラチェット17との係合を解除不能とする、本発明に係るドア変形追従部材としてのドア変形追従レバーをも兼ねている。従って、以下においては、理解を容易とするために、第2アウトサイドレバー212をドア変形追従レバーと称して説明する。
【0026】
第1アウトサイドレバー211の軸孔29は、第1ケーシング201に設けた枢軸25に回動可能に嵌合されている。また、ドア変形追従レバー212は、第1アウトサイドレバー211の後面と重合するようにして、長孔30が枢軸25に車内方向へ移動可能かつ回動可能に嵌合され、第1アウトサイドレバー211に対して車内外方向に相対移動しうるようになっている。枢軸25に第1アウトサイドレバー211の軸孔29とドア変形追従レバー212の長孔30を嵌合したのち、枢軸25の後面には、バックプレート19の下端部191がボルト24をもって固定される(
図4参照)。
【0027】
ドア変形追従レバー212の長さは、第1アウトサイドレバー211のそれよりも長寸とされ、枢軸25が長孔30の車外側の開口縁に当接して、ドア変形追従レバー212が
図2に示す待機状態に位置しているとき、ドア変形追従レバー212の車外側の側部が第1ケーシング201の右側端より車外側に突出するとともに、ドア変形追従レバー212の車内側の側端が、第1アウトサイドレバー211の内端部211aに連係されたリリースレバー22と干渉しないように、若干車外側に離間するようになっている(
図5参照)。
【0028】
また、枢軸25が長孔30の車外側の開口縁に当接し、ドア変形追従レバー212が車内側に最大限移動したとき、ドア変形追従レバー212の車内側の側端が、第1アウトサイドレバー211の車内側の側端より若干車内側に突出し、第1アウトサイドレバー211の内端部211aよりリリースレバー22が外れて、それらの連係状態が解除されるようになっている(
図7参照)。
【0029】
第1アウトサイドレバー211の車外側の端部(アウタパネル2aに対向する端部)には、ドア変形追従レバー212に設けられた後述する係合突部212aと対応するように上端面を傾斜させた上向きの被係合突部211bが設けられている。また、軸孔29のやや内方寄りにおいて第1アウトサイドレバー211の下端には、後述するねじりコイルばね32の一方の足片321を係止するための係止片211cが、下向きに突設されている。
【0030】
ドア変形追従レバー212における長手方向のほぼ中央部上端には、側面視倒立L字状をなし、ドア変形追従レバー212の回動軌跡における接線方向に傾斜する側面視前向き倒立L字状の係合突部212aが突設されている。この実施例では、ドア変形追従レバー212が車内外方向に最大限移動しても、その係合突部212aの下面が第1アウトサイドレバー211の被係合突部211bの上面に当接し、第1アウトサイドレバー211とドア変形追従レバー212とが一体的にリリース方向に回動しうるようにしてあるが(
図5、
図7参照)、ドア変形追従レバー212が車内方向に最大限移動したときに、その係合突部212aが第1アウトサイドレバー211の被係合突部211bの上面より外れて、ドア変形追従レバー212のみが時計方向に回動するようにしてもよい。
【0031】
ドア変形追従レバー212における下部側壁201cより突出する車外側の端部は、前方すなわち下部側壁201c側に向かって平面視L字状に折曲され、その折曲部212bの車内側の内側面は、下部側壁201cにおける脆弱部201dの外側面に接近している。
【0032】
ドア変形追従レバー212における車外側の端部(アウタパネル2aに対向する端部)には、上下方向の貫通孔(図示略)を有する連結部212cが後向きに一体的に折曲形成され、この連結部212cの貫通孔には、合成樹脂製の受け部材31が圧嵌されている。連結部212cには、上端部がアウトサイドハンドル4に連係され、アウトサイドハンドル4の操作力をアウトサイドレバー21に伝達可能なロッドよりなる操作力伝達部材3の下端部のクランク状の折曲部3aが、受け部材30を介して上方より連結されている。
【0033】
第1ケーシング201の基部201aと第1アウトサイドレバー211の対向面間において、枢軸25には、ねじりコイルばね32が遊嵌され、このねじりコイルばね32の一方の足片321は、第1アウトサイドレバー211の係止片211cに係止され、同じく他方の上方へ延伸する足片322は、弾性力を付与した状態で、第1ケーシング201の基部201aの後面に突設した係止突部33に、
図2において左側から係止されている。なお、第1アウトサイドレバー211の係止片211cに係止された一方の足片321は、ドア変形追従レバー212の下端より後方に突出している。
【0034】
これにより、第1アウトサイドレバー211は、
図2、
図3において枢軸25を中心として反時計方向に付勢される。また、第1アウトサイドレバー211の被係合突部211bの上端が、ドア変形追従レバー212における係合突部212aの下面と当接することにより、ドア変形追従レバー212も第1アウトサイドレバー211を介して、枢軸25を中心として反時計方向に付勢される。この結果、アウトサイドレバー21全体がねじりコイルばね32により反時計方向に付勢されることとなり、非作動時において、第1アウトサイドレバー211の係止片211cの車外側の側縁が、第1ケーシング201の基部201aに設けたストッパ34の車内側の側端に当接することにより、アウトサイドレバー21全体は待機位置(
図2、
図5に示す位置)に停止している。
【0035】
図2、
図5及び
図8に示すように、ねじりコイルばね32の上方を向く足片322は、ドア変形追従レバー212を常時車外側に付勢する付勢手段を兼ねている。すなわち、アウトサイドレバー21全体が待機位置にあって、通常位置に停止しているとき、ドア変形追従レバー212における係合突部212aの車内側の側端が、ねじりコイルばね32の上方を向く足片322に当接することにより、ドア変形追従レバー212は、ねじりコイルばね32の付勢力により常時車外側に付勢されるようになっている。この際、枢軸25が長孔30の車内側の端縁と当接することで、ドア変形追従レバー212は車外側へ最大限突出し、通常のドア閉扉状態、すなわち待機位置に保持される。
【0036】
次に、
図5〜
図7に示す拡大図を参照して、上記第1の実施形態に係るドアラッチ装置1の作用、特に側面衝突時等におけるアウトサイドレバー21の動きについて説明する。なお、
図5〜
図7においては、バックプレート19を省略するとともに、第1ケーシング201の一部を切り欠いて図示してある。
【0037】
図5及び
図6は、ドアラッチ装置1の通常状態(ドア閉扉状態)を示すもので、アウトサイドハンドル4が開扉操作され、それに連係された操作力伝達部材3が下方に移動すると、
図6に示すように、アウトサイドレバー21全体、すなわちドア変形追従レバー212と、このドア変形追従レバー212の係合突部212aに被係合突部211aを介して連係されている第1アウトサイドレバー211とが、ねじりコイルばね32の付勢力に抗して、
図5に示す待機位置(ドア閉扉位置)から
図6に示す作動位置(ドア開扉位置)まで、一体的にリリース方向(
図5において時計方向)へ所定角度回動する。
【0038】
これにより、ロックノブがアンロック状態にあってロッキングレバー及びリリースレバー22がアンロック位置にあるときには、第1アウトサイドレバー211の内端部211aに嵌合されているリリースレバー22が上方へ移動して、ラチェットピン171に下方から当接することで、ラチェット17とラッチ15との係合を解除してドア2を開けることができる。
図5、
図6に示す待機状態においては、前述したように、ドア変形追従レバー212は、ねじりコイルばね32の上方を向く足片322の付勢力により、常時車外側に押圧され、かつ係合突部212aの下面は、ドア変形追従レバー212が車内外方向に最大限移動しても、常に第1アウトサイドレバー211の被係合突部211bの上面と当接しているので、第1アウトサイドレバー211とドア変形追従レバー212は、一体のアウトサイドレバー21として機能する。
【0039】
図7に示すように、ドア2の閉扉状態において、側面衝突等により、ドア2のアウタパネル2aが車内側に変形し、アウトサイドレバー21に衝突荷重が加わると、枢軸25に長孔30を介して枢支されているドア変形追従レバー212のみが、ねじりコイルばね32の付勢力に抗して、第1アウトサイドレバー211に対し相対的に車内側に移動し、枢軸25が長孔30の内端縁に当接する位置まで相対移動したところで停止する。なお、ドア変形追従レバー212が車内側に最大限移動しても、その係合突部212aと第1アウトサイドレバー211の被係合突部211bとは係合状態にあるので、ドア変形追従レバー212は、ほぼ水平状態で車内側に移動する。
【0040】
ドア変形追従レバー212がアウタパネル2aの変形に追従して車内側に移動すると、その折曲部212bが第1ケーシング201の下部側壁201cと当接することとなるが、下部側壁201cにおける枢軸25と対向する部分には、脆弱部201dを設けてあるので、強い衝突荷重がドア変形追従レバー212に加わった際には、その折曲部212bにより脆弱部201dを内向きに変形させながら車内側に移動することができる。ドア変形追従レバー212に加わる衝突荷重が比較的小さく、脆弱部201dが変形に至らないときには、ドア変形追従レバー212が車内側に移動することがないので、ドアラッチ装置1は通常のドア閉扉状態に維持される。
【0041】
ドア変形追従レバー212が車内方向に最大限移動すると、ドア変形追従レバー212の車内側の側端が、第1アウトサイドレバー211の内端部211aの側端より車内方向に突出する。これにより、それまで第1アウトサイドレバー211の内端部211aに連結されていたリリースレバー22が、ドア変形追従レバー212の内端により車内側に押し出されて外れ、第1アウトサイドレバー211の内端部211aとの連係が解除される。なお、アウタパネル2aの変形時の衝突荷重が操作力伝達部材3に加わり、この操作力伝達部材3を介してドア変形追従レバー212が車内側に押動された際にも同様に連係状態が解除される。
【0042】
第1アウトサイドレバー211の内端部211aとリリースレバー22との連係が解除されると、
図7に示す状態において、アウタパネル2aがドア変形追従レバー212を下向きに回動させる方向にさらに変形して、第1アウトサイドレバー211やドア変形追従レバー212がリリース方向である時計方向に回動したとしても、その動きがリリースレバー22に伝達されることはない。その結果、リリースレバー22が上方に移動して、それに連係されたラチェット17とラッチ15との係合が解除されることがなくなり、ラッチ15とストライカSは係合状態に維持されるので、ドア2が予期せずに開いてしまうことを防止することができる。
【0043】
図9〜
図12は、本発明の第2の実施形態(請求項4に記載の発明の実施形態)に係るドアラッチ装置を示す。なお、上記第1の実施形態と同様の部材には、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。なお、
図10及び
図11においては、バックプレート19を省略するとともに、第1ケーシング201の一部を切り欠いて図示してある。
この第2の実施形態に係るドアラッチ装置1において、上述した第1の実施形態のドアラッチ装置1と異なる点は、アウトサイドレバー35とは別体のドア変形追従部材、すなわちドア変形追従レバー36を設けたことにある。
【0044】
アウトサイドレバー35は、上述の第2アウトサイドレバー212よりも長寸とされ、やや車内側寄りには、枢軸25に回動可能に嵌合される軸孔37が設けられている。また、車外側の端部には、前記第2アウトサイドレバー212と同形状の連結部351が形成され、この連結部351には、操作力伝達部材3の折曲部3aが嵌合される受け部材31が取り付けられている。
【0045】
軸孔37と連結部351間において、アウトサイドレバー35の上端には、側面視前向き倒立L字状をなし、アウトサイドレバー35の回動軌跡における接線方向に傾斜する側面視倒立L字状の係合突部352が突設されている。アウトサイドレバー35の内端部353には、リリースレバー22の下端部が嵌合されている。
【0046】
ドア変形追従レバー36は、車内外方向の寸法がアウトサイドレバー35のそれよりも所要寸法だけ大とされ、やや車内側寄りには、アウトサイドレバー35と重合する前方において、枢軸25に回動可能かつ車内外方向に移動可能に嵌合される長孔38が形成されている。また、長孔38の内端部のやや内方寄りにおいてドア変形追従レバー36の下端には、ねじりコイルばね32の一方の足片321を係止するための係止片361が、下向きに突設されている。さらに、ドア変形追従レバー36の中央部の上端には、アウトサイドレバー35の係合突部352と対応するように傾斜させた側面視倒立L字状の被係合突部362が、その上面に係合突部352の下面が当接しうるようにして設けられている。なお、被係合突部362の長さは、ドア変形追従レバー36が車内外方向に最大限移動しても、アウトサイドレバー35の係合突部352が被係合突部362より外れないように、係合突部352の長さよりも大としてある。
【0047】
図10に示すように、ねじりコイルばね32における上方を向く他方の足片322は、上記第1の実施形態と同様に、第1ケーシング201の係止突部33に係止されている。また、ねじりコイルばね32の他方の足片322は、アウトサイドレバー35の係合突部352と、ドア変形追従レバー36の被係合部362の車内側の側縁に当接している。
アウトサイドレバー35の係合部352の下面は、ドア変形追従レバー36の被係合部362の上面と当接しているので、アウトサイドレバー35とドア変形追従レバー36は、共にねじりコイルばね32の付勢力により反時計方向に付勢され、かつ一体的にリリース方向に回動するようになる。
【0048】
図10及び
図12に示すように、ドア変形追従レバー36は、長孔38の車内側の開口縁が枢軸25に当接して、車外側に最大限移動しているとき、車外側の側端部がアウトサイドレバー35の車外側の側端354より車外方向に突出するとともに、車内側の側端が、アウトサイドレバー35の内端部353に嵌合されたリリースレバー22と干渉しないように、若干車外側に離間するようになっている。
【0049】
また、
図11に示すように、長孔38の車外側の開口縁が枢軸25に当接し、ドア変形追従レバー36が車内側に最大限移動したとき、ドア変形追従レバー36の車内側の側端が、アウトサイドレバー35の車内側の側端より若干車内側に突出し、アウトサイドレバー35の内端部353と、リリースレバー22との連係状態が解除されるようになっている。
【0050】
次に、第2の実施形態に係るドアラッチ装置1の作用、特に側面衝突時等におけるドア変形追従レバー36の動きについて説明する。
図10は、ドアラッチ装置1の通常状態(ドア閉扉状態)を示すもので、アウトサイドハンドル4が開扉操作され、それに連係された操作力伝達部材3が下方に移動すると、アウトサイドレバー35とドア変形追従レバー36とが、ねじりコイルばね32の付勢力に抗して、一体的にリリース方向(
図10において時計方向)へ所定角度回動する。
【0051】
これにより、ロックノブがアンロック状態にあってロッキングレバー及びリリースレバー22がアンロック位置にあるときには、アウトサイドレバー35の内端部353に嵌合されているリリースレバー22が上方へ移動して、ラチェットピン171に下方から当接することで、ラチェット17とラッチ15との係合を解除してドア2を開けることができる。
図10に示す通常状態においては、前述したように、アウトサイドレバー35の係合突部352の下面が、ドア変形追従レバー36の被係合突部362の上面に当接しているので、アウトサイドレバー35とドア変形追従レバー36は、一体的にリリース方向に回動する。
【0052】
図11に示すように、ドア2が閉扉されている状態において、側面衝突等により、ドア2のアウタパネル2aが車内側に変形し、アウトサイドレバー35の外側端より車外側に突出しているドア変形追従レバー36に衝突荷重が加わると、枢軸25に長孔38を介して枢支されているドア変形追従レバー36が、ねじりコイルばね32の付勢力に抗して車内側に移動し、枢軸25が長孔38の内端縁に当接する位置まで相対移動したところで停止する。なお、ドア変形追従レバー36が車内側に最大限移動しても、その係合突部362とアウトサイドレバー35の被係合突部352とは互いに当接状態にあるので、ドア変形追従レバー36は、ほぼ水平状態で車内側に移動する。
【0053】
ドア変形追従レバー36がアウタパネル2aの変形に追従して車内側に最大限移動すると、ドア変形追従レバー36の車内側の側端が、アウトサイドレバー35の内端部353の内端より車内側に突出する。これにより、それまでアウトサイドレバー35の内端部353に連結されていたリリースレバー22が、ドア変形追従レバー36の内端により車内側に押し出され、アウトサイドレバー35の内端部353との連係状態が解除される。
【0054】
アウトサイドレバー35とリリースレバー22との連係状態が解除されると、
図11に示す状態において、アウタパネル2aがアウトサイドレバー35及びドア変形追従レバー36を下向きに回動させる方向にさらに変形して、アウトサイドレバー35及びドア変形追従レバー36がリリース方向に回動したとしても、それらの動きがリリースレバー22に伝達されることはない。その結果、第1の実施形態と同様に、リリースレバー22が上方に移動して、それに連係されたラチェット17とラッチ15との係合が解除されることがなくなり、ドア2が予期せずに開いてしまうことを防止することができる。
【0055】
図13及び
図14は、本発明の第3の実施形態(請求項2に記載の発明の実施形態)に係るドアラッチ装置の要部を示す。なお、上述した実施形態と同様の部材には、同じ符号を付して説明する。この第3の実施形態に係るドアラッチ装置においては、アウトサイドレバー39の中央部に設けた長孔38を、ケーシング20の枢軸25に上下方向に回動可能かつ車内外方向に移動可能として嵌合することにより、アウトサイドレバー39自体をドア変形追従部材、すなわちドア変形追従レバーとしたものである。
【0056】
アウトサイドレバー39のやや車内側寄りの下端には、ねじりコイルばね32の一方の足片321を係止する係止片391が下向きに突設され、この係止片391の外側面は、アウトサイドレバー39が最大限車外方向に移動したとき、ケーシング20のストッパ34と当接可能となっている。アウトサイドレバー39のやや車外側寄りの上端には、側面視前向倒立L字状の係止片392が上向きに突設され、この係止片392の内側縁は、ねじりコイルばね32における係止突部33に係止された上方を向く足片322に当接している。これにより、アウトサイドレバー39は、ねじりコイルばね32により常時車外方向、すなわち
図13示す待機状態に付勢されている。
アウトサイドレバー39の内端部393は、上述の実施例と同様に、リリースレバー22の下端部に連結されている。アウトサイドレバー39が
図13に示す待機状態にあるときには、リリースレバー22に設けた押圧部221がラチェットピン171を作動させうるように、その下方に位置している。
【0057】
第3の実施形態に係るドアラッチ装置においては、
図14に示すように、ドア2が閉扉されている状態において、側面衝突等により、ドア2のアウタパネル2aが車内側に変形し、その変形に追従してアウトサイドレバーが車内方向に移動すると、その内端部393に連結されているリリースレバー22全体も車内側に移動させられる。すると、リリースレバー22に設けた、ラチェットピン171と連係可能な押圧部221が、
図13に示す位置から車内方向に移動することにより、押圧部221によりラチェットピン171をドアオープン方向(ラチェット17とラッチ15との係合を解除する方向)に移動させることが不能となる。
【0058】
その結果、アウタパネル2aがアウトサイドレバー39を下向きに回動させる方向にさらに変形して、アウトサイドレバー39がリリース方向に回動し、リリースレバー22が上方に移動したとしても、押圧部221によりラチェットピン171がラッチ15との係合が解除される方向に移動させられるおそれはなく、ドア2が予期せずに開いてしまうのが防止される。
【0059】
以上説明したように、上記第1〜第3の実施形態に係るドアラッチ装置1においては、いずれも、ドア2のアウタパネル2aが車内側に変形したとき、ドア変形追従レバー212、36、及びアウトサイドレバー39自体を、噛合機構部を構成するラッチ15及びラチェット17とストライカSとの係合を解除不能とする方向へ移動させることにより、ドア2を閉扉状態に維持することができるので、ドアラッチ装置の信頼性が高まる。
【0060】
以上、本発明を上記各実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような変形や変更を施すことが可能である。
上記第1〜第3の実施形態では、ドア変形追従レバー(第2アウトサイドレバー)212、ドア変形追従レバー36、及びアウトサイドレバー39を常時車外側に付勢する付勢手段に、ねじりコイルばね32の上方を向く足片322を利用しているが、引張コイルばね等の付勢手段を別途設けてもよい。
【0061】
また、第1の実施形態においては、第1アウトサイドレバー211とドア変形追従レバー212とを、それらに設けた被係合突部211bと係合突部212aとを移動可能に係合させることにより、互いにリリース方向に一体的に連動しうるようにしたが、
図15に示すような手段を用いてもよい。なお、ケーシング20やねじりコイルばね32等は省略してある。
【0062】
すなわち、ドア変形追従レバー212における長孔30よりも車外側に、車内外方向を向く係合孔40を設けるとともに、被係合突部211bを省略した第1アウトサイドレバー211における軸孔29よりも車外側の後面に、係合ピン41を後向きに突設し、この係合ピン41を、係合孔40に、車内外方向に摺動可能かつドア変形追従レバー212が
図15に示す待機位置にあるとき、係合孔40の車内側の側端部に位置するように嵌合する。
【0063】
これにより、ドア開扉操作時には、係合孔40と係合ピン41とが係合状態となるので、第1アウトサイドレバー211とドア変形追従レバー212とは、互いに連動してリリース方向に回動する。また、側面衝突時等には、2点鎖線で示すように、係合ピン41が係合孔40の車外側の側端縁まで相対的に移動するので、第1アウトサイドレバー211に対しドア変形追従レバー212が車内方向に移動することができる。なお、図示は省略するが、この変形例においては、上記とは反対に、第1アウトサイドレバー211側に係合孔40を、ドア変形追従レバー212側に係合ピン41を設けてもよい。また、このような係合孔40と係合ピン41を、上述した第2の実施形態に係るドアラッチ装置のアウトサイドレバー35とドア変形追従レバー36とに設けることもできる。
【0064】
さらに、
図16及び
図17に示すような手段により、第1の実施形態にけるドア変形追従レバー212を常時待機位置に付勢するようにしてもよい。
すなわち、ドア変形追従レバー212に、第1の実施形態の長孔30よりも大きな嵌合孔42を設け、この嵌合孔42に圧嵌した合成樹脂よりなるガイド部材43に、枢軸25が摺動及び回動可能に嵌合される車内外方向を向く長孔44を設けるとともに、この長孔44の中央部の上下の対向面に、互いに接近する方向に突出する、弾性変形可能な山形状の弾性保持片45、45を一体的に形成する。両弾性保持片45のベース部には、それらが互いに上下に離間する方向に弾性変形しうるように、肉抜き孔46、46を設ける。
【0065】
ドア変形追従レバー212が
図16に示す待機位置にあるときには、枢軸25は、両弾性保持片45により、長孔44の車内側の端部に弾性保持され、
図17に示すように、側面衝突等の外部荷重により、ドア変形追従レバー212が車内側に押動された際は、枢軸25が、両弾性保持片45を離間する方向に弾性変形させて、長孔44の車外側の端部まで相対移動することができる。
このような構成にすると、ドア変形追従レバー212は、両弾性保持片45により常時待機位置に保持されるので、ドアハンドル4の開扉操作により、ドアラッチ装置を通常状態で円滑かつ確実に作動させることができる。また、ねじりコイルばね32の足片322によりドア変形追従レバー212を常時車外側に付勢するのを省略することが可能となるが、ねじりコイルばね32の付勢力を併用してもよいことは勿論である。なお、両弾性保持片45の形状は、車外側の端部が開放された横向きハ字状であってもよい。また、このような構造のガイド部材43は、第3の実施形態のアウトサイドレバー39にも設けることができる。
【0066】
上記第2の実施形態においては、ドア変形追従レバー36を、車内外方向に移動可能かつアウトサイドレバー35と一体的にリリース方向に回動しうるように枢軸25に嵌合しているが、枢軸25に嵌合しないで、例えば第1ケーシング201に設けたガイド手段により、車内外方向にのみ移動可能、かつ通常時において車外側の端部がアウトサイドレバー35の右端より外方に突出するように車外方向に付勢して支持してもよい。
【0067】
上記第2の実施形態のドア変形追従レバー36と、上記第3の実施形態のアウトサイドレバー39とを組み合わせてもよい。このようにすると、ドア変形追従レバー36により、アウタパネル2aの車内側への移動を、アウトサイドレバー39により、操作力伝達部材3に加わる衝突荷重を、それぞれ検出することが可能となる。
【0068】
上記実施形態では、操作力伝達部材3をロッド状のものとして、アウトサイドレバー21、35、39の外端部を押し下げる方向に回動させるドアラッチ装置としたが、プッシュプル式またはボーデンケーブル等の操作力伝達部材を用いて、アウトサイドレバー21、35、39を引き上げる方向に回動させるドアラッチ装置にも、本発明を適用することができる。
また、ドアを自動車のリヤドア、スライドドアまたはバックドアとしてもよい。