特許第6197245号(P6197245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197245
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】発電床材とその連結体
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   E04F15/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-148162(P2013-148162)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-21240(P2015-21240A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年4月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)株式会社日刊建設産業新聞社、平成25年5月1日付の日刊建設産業新聞の第2面 (2)株式会社日刊建設通信新聞社、平成25年5月1日付の日刊建設通信新聞の第3面 (3)株式会社日刊建設工業新聞社、平成25年5月1日付の日刊建設工業新聞の第3面 (4)株式会社日経BP、平成25年5月15日発行、日経コンストラクション5/27号の第27頁 (5)平成25年5月15日ウェブサイト掲載、 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20130510/614850/
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507419172
【氏名又は名称】株式会社音力発電
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】平松 有情
(72)【発明者】
【氏名】西岡 純一
(72)【発明者】
【氏名】速水 浩平
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−153469(JP,A)
【文献】 特開2007−332538(JP,A)
【文献】 特開2011−250521(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0145350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
H02N 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材を構成する上板及び下板と、該上板と該下板との間に配置された一以上の感圧発電装置と、該上板と該下板との間に形成されて該一以上の感圧発電装置を囲繞する囲繞壁とを備えた発電床材であって、
上記上板が、硬質合成樹脂板又は金属板であり、
上記囲繞壁が、一液又は二液反応型の樹脂液を上板の四周縁に沿って上板と下板との間に充填し、反応させることによって形成された軟質合成樹脂の囲繞壁であることを特徴とする発電床材。
【請求項2】
上記囲繞壁を形成する軟質合成樹脂の25%モジュラスが0.1〜1.5N/mmであることを特徴とする、請求項1に記載の発電床材。
【請求項3】
更に発光素子を備え、この発光素子と上記感圧発電装置が電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の発電床材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発電床材が二枚以上連結された発電床材連結体であって、
上記発電床材が隣接して配置され、上記連結体の両側縁に配置されて上記発電床材に取付けられた縁材によって上記発電床材が連結されていることを特徴とする発電床材連結体。
【請求項5】
上記縁材が軟質合成樹脂で形成され、上記発電床材に脱着可能に取付けられていることを特徴とする、請求項4に記載の発電床材連結体。
【請求項6】
請求項3に記載の発電床材が帯状に少なくとも三枚連結され、第一の発電床材の感圧発電装置が感圧すると第二の発電床材又は第一と第二の発電床材の発光素子が発光し、第二の発電床材の感圧発電装置が感圧すると第一と第三の発電床材の発光素子が発光するように制御されていることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の発電床材連結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感圧発電装置を組み込んだ発電床材に関し、更に詳しくは、工事現場のような荒れた地面に敷いて歩行者を安全に誘導するパネル状床材として好適に用いられる発電床材に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者の一人は、物体の移動によって生じる圧力変動により発電する圧電素子を使用した発電装置であって、圧電素子の過剰な変形を防止するストッパーを設けることで、強い圧力変動に対しても圧電素子が破損することなく発電できるようにした感圧発電装置の発明を出願し、特許を受けた(特許文献1,2)。
【0003】
この感圧発電装置は、圧電素子の過剰な変形を防止するストッパーを備えているため、圧電素子が破損し難く耐久性があり、製造コストの低減や発電量の増加も可能であることから、種々の技術分野においてその有効利用が見込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−97278号公報
【特許文献2】特許第4504292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の感圧発電装置の有効利用を図ったもので、例えば工事現場などの荒れた地面に敷くことによって歩行者を安全に誘導しながら同時に発電できるようにすると共に、望ましくは、発電した電力で発光素子を発光させて暗い場所でも歩行者をより安全に誘導できるようにした新規且つ有用な発電床材と、この発電床材の連結体を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る発電床材は、床材を構成する上板及び下板と、該上板と該下板との間に配置された一以上の感圧発電装置と、該上板と該下板との間に形成されて該一以上の感圧発電装置を囲繞する囲繞壁とを備えた発電床材であって、上記上板が硬質合成樹脂板又は金属板であり、上記囲繞壁が、一液又は二液反応型の樹脂液を上板の四周縁に沿って上板と下板との間に充填し、反応させることによって形成された軟質合成樹脂の囲繞壁であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の発電床材においては、上記囲繞壁を形成する軟質合成樹脂の25%モジュラスが0.1〜1.5N/mmであることが好ましく、更に、発光素子を備え、この発光素子と上記感圧発電装置が電気的に接続されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る発電床材連結体は、上記の本発明の発電床材が二枚以上連結されたものであって、上記発電床材が隣接して配置され、上記連結体の両側縁に配置されて上記発電床材に取付けられた縁材によって上記発電床材が連結されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の発電床材連結体においては、上記縁材が軟質合成樹脂で形成され、上記発電床材に脱着可能に取付けられていることが好ましい。そして、発光素子を備えた発電床材が帯状に少なくとも三枚連結され、第一の発電床材の感圧発電装置が感圧すると第二の発電床材又は第一と第二の発電床材の発光素子が発光し、第二の発電床材の感圧発電装置が感圧すると第一と第三の発電床材の発光素子が発光するように制御されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発電床材は、硬質合成樹脂板又は金属板である上板と下板を備えているので、パネル状床材として例えば工事現場などの荒れた地面に敷いても歩行者を安全に誘導することができる。そして、感圧発電装置が上板と下板と囲繞壁によって内包されているため、感圧発電装置の防水性が良好であり、屋外で好適に使用することができる。しかも、囲繞壁は、一液又は二液反応型の樹脂液を上板の四周縁に沿って上板と下板との間に充填し、反応させることによって形成された軟質合成樹脂の囲繞壁であるため、上板や下板に衝撃力が作用しても、囲繞壁が弾性変形して衝撃力を吸収、緩和することができ、また、歩行者の歩行圧が上板に作用すると、囲繞壁が弾性変形して歩行圧が感圧発電装置に伝達されるので確実に発電することができる。そして、感圧発電装置が存在しない空洞部分の真上に位置する上板の当該部分に歩行圧が作用した場合でも、軟質合成樹脂製の囲繞壁が形成されていれば、その弾性変形によって上板が感圧発電装置を押圧し、歩行圧が感圧発電装置に伝達されて発電することができる。
【0011】
特に、囲繞壁を形成する軟質合成樹脂の25%モジュラスが0.1〜1.5N/mmであると、歩行圧によって囲繞壁が適度に弾性変形し、歩行圧が上板から感圧発電装置にロスなく伝達されて効率良く発電することができ、且つ、歩行圧等で感圧発電装置が破損するなどの不具合が生じ難くなる。
【0012】
そして、更に発光素子を備え、この発光素子と感圧発電装置が電気的に接続されている発電床材は、感圧発電装置で発電した電力を用いて発光素子を発光させることにより、夜間や暗所において発光誘導体や発光表示体或いは照明具として発電床材を兼用し、歩行者をより安全に誘導することができる。
【0013】
また、本発明の発電床材連結体は、該連結体の両側縁に配置されて発電床材に取付けられた縁材によって発電床材が連結されているため、上述した発電床材の作用効果に加えて、発電床材相互の連結強度が向上し、荒れた地面に設置したり乱暴な取り扱いをしたときでも、発電床材同士を直接連結する場合のように連結部分が簡単に破損する心配が少なくなる。しかも、上記のように縁材を連結材として兼用すると、専用の連結材が不要となるので、部品点数が減少し、経済的に有利である。
【0014】
そして、縁材が軟質合成樹脂で形成され、発電床材に脱着可能に取付けられていると、設置面に不陸があっても、軟質合成樹脂の縁材が変形することで発電床材連結体が不陸に追従して発電床材相互の連結部分で折れ曲がり、また、縁材を発電床材から取り外すと発電床材を個々に分離できるので、運搬や収納が容易になる。
【0015】
更に、発光素子を備えた発電床材が帯状に少なくとも三枚連結され、第一の発電床材の感圧発電装置が感圧すると第二の発電床材又は第一と第二の発電床材の発光素子が発光し、第二の発電床材の感圧発電装置が感圧すると第一と第三の発電床材の発光素子が発光するように制御された発電床材連結体は、夜間や暗所に設置したとき、発光による歩行者の誘導効果や視認性が一層向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る発電床材を、その被覆シートと上板を一部破断して示す平面図である。
図2】同発電床材の横断面図である。
図3】同発電床材に組み込まれる感圧発電装置の概略分解斜視図である。
図4】同発電床材を縁材で連結した本発明の発電床材連結体の平面図である。
図5図4のA−A線に沿った部分断面図である。
図6図4のB−B線に沿った部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る発電床材を、その被覆シートと上板を一部破断して示す平面図、図2は同発電床材の横断面図、図3は同発電床材に組み込まれる感圧発電装置の概略分解斜視図であって、図1図2に示すように、この発電床材Pは、上板1、下板2、感圧発電装置3、囲繞壁4、帯状発光部5、被覆シート6、弾性体層7などの主要部品で構成されている。
【0019】
上板1と下板2は方形の硬質塩化ビニル樹脂板からなるもので、これらの間に感圧発電装置3を配置できるだけの上下間隔をあけて、互いに平行に設けられている。上板1は、歩行圧(歩行時の荷重)によって破損しないように、その板厚が下板2の板厚よりも厚くなっており、下板2は、その両側縁に帯状発光部5と後述する連結用縁材8の取付け部9を設けることができるように、その横幅が上板1の横幅よりも広くなっている。
【0020】
上板1と下板2は上記の硬質塩化ビニル樹脂板に限定されるものではなく、これ以外のポリカーボネート樹脂板やアクリル樹脂板などの硬質合成樹脂板、金属板、ゴム板、半硬質ないし軟質の塩化ビニル樹脂シートなどを使用してもよい。
また、上板1と下板2の形状も方形に限定されるものではなく、多角形、円形、楕円形、不定形など、所望の形状とすることができる。
上板1と下板2の大きさは、これらが方形の板である場合、歩行のし易さ、運搬のし易さ等の観点から、その縦(長さ)寸法及び横(幅)寸法をそれぞれ30〜100cmの範囲内とするのが適当である。この実施形態では、下板2の縦寸法を60cm程度、下板2の横寸法を55cm程度とし、上板1の縦寸法を下板2の縦寸法と同じ寸法、上板1の横寸法を下板2の横寸法から帯状発光部5,5の幅寸法と縁材取付け部9,9の幅寸法を差し引いた寸法としている。
上板1と下板2の厚みは、これらが硬質塩化ビニル樹脂板などの硬質合成樹脂板である場合、下板2の厚みを1〜2mm程度とし、上板1の厚みを2〜5mm程度と下板2よりも厚くすることによって、歩行圧によって破損しない充分な強度を付与することが好ましい。
【0021】
上板1の上面は、図2に示すように被覆シート6で被覆されており、また、下板2の下面には弾性体層7が積層されている。被覆シート6としては軟質ないし半硬質の合成樹脂シート、発泡樹脂シート、ゴムシートなどが使用され、特に、表面に防滑用の凸部を多数形成したものが好ましく使用される。弾性体層7は、発電床材Pにクッション性や設置面との緩衝性を付与する目的で下板2の下面に積層されるものであって、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)フォームその他の軟質合成樹脂フォーム、ラバーフォーム、各種エラストマーなどが使用される。被覆シート6や弾性体層7の厚さは、2〜5mm程度とするのが適当であり、この実施形態では厚さ2.9mmの被覆シート6と厚さ3mmの弾性体層7が使用されている。
【0022】
図1図2に示すように、上板1と下板2との間には、基板10に搭載された複数(この実施形態では五つ)の感圧発電装置3が配置されており、これらの感圧発電装置3は、上板1の四周縁に沿って上板1と下板2との間に形成された軟質合成樹脂製の二重の囲繞壁4によって水密的に囲繞されている。また、下板2の左右両側縁の上面には、左右一対の帯状発光部5,5が囲繞壁4の左右外側面と上板1及び被覆シート6の左右両側辺に沿って設けられており、この帯状発光部5,5に沿って外側に、後述する連結用縁材8を取付けるための帯状の取付け部9,9が設けられている。そして、この取付け部9,9の上面には、所謂「面ファスナー」の係合ループ又は係合フックを有する片方の面状材11a,11aが貼着されている。
【0023】
基板10は、図1に示すように囲繞壁4の内側に納まる正方形の合成樹脂板からなるものであって、その中央部と四隅部に合計五つの感圧発電装置3が搭載されており、この基板10は下板2に固定されている。このように合計五つの感圧発電装置3が基板10に搭載されて上板1と下板2の間に配置されていると、歩行時に被覆シート6のどの部分を踏んでも、歩行圧が上板1を介して一つ以上の感圧発電装置3に伝達されるため、確実に発電することができる。
【0024】
基板10の前後両辺の中央部には、図1に示すように中継基盤12a、12bが設けられており、感圧発電装置3と双方の中継基盤12a,12b、及び、帯状発光部5,5と片方の中継基盤12a、及び、感圧発電装置3同士が電気的に接続されている。従って、感圧発電装置3が発電すると、その電力を用いて帯状発光部5の発光素子を発光させることができるようになっている。
但し、この発電床材Pを連結した後述の発電床材連結体においては、該発電床材Pの感圧発電装置3が発電すると、該発電床材Pの前の発電床材、又は、該発電床材Pとその前の発電床材、又は、該発電床材Pの前後に連結された発電床材の帯状発光部5の発光素子が発光するように電気的に制御されている。
【0025】
双方の中継基盤12a,12bの左右両側には、保護柱10a,10aが基板10から立設されており、歩行圧によって上板1が下方に撓んだときでも、保護柱10a,10aで上板1を支えて中継基板12a,12bが押し潰されないように保護している。そして、この中継基板12a,12bからリード線13a,13bが囲繞壁4を水密的に貫通して発電床材Pの右前コーナー部及び右後のコーナー部に引き出され、先端にコネクタ14a,14bが取付けられている。リード線13a,13bが引き出された発電床材Pの右前コーナー部と右後コーナー部は、図1図6に示すように、下板2も取付け部9も面ファスナーの片方の面状材11aも切除されて凹部15,15が形成されており、この凹部15,15にリード線先端のコネクタ14a,14bが納まるようになっている。
なお、リード線13a,13bは、囲繞壁4を貫通させないで、囲繞壁4の一部を切り欠いて発電床材Pのコーナー部に引き出すようにしてもよく、その場合には囲繞壁4の切り欠いた部分を後からシーリング材などで水密的にシールすることが望ましい。
【0026】
感圧発電装置3は、図3の概略分解斜視図に示すように、上下に重ね合わされる方形板状の緩衝材3a,3bと、下側の緩衝材3bの上に配置された複数(本実施形態では9つ)の円形振動板3cと、それぞれの円形振動板3cの下面に接合されたチタン酸バリウム、ジルコニア等の圧電セラミックスやリチウムタンタレート等の圧電単結晶からなる円板状の圧電素子(不図示)と、下側の緩衝材3bの上面から突き出してそれぞれの圧電素子の中央部を下方から支える軸(不図示)と、上側の緩衝材3aの下面から突き出してそれぞれの円形振動板3cの周囲を複数箇所で支持する軸(不図示)と、この上側の緩衝材3aの下面から突き出すそれぞれの軸の先端に形成されたストッパー(不図示)とを備えたものである。
【0027】
この感圧発電装置3は、上下いずれかの緩衝材3a又は3bに圧力(外力)が作用すると、それぞれの圧電素子の中央部が下側の緩衝材3bの軸によって下方から支えられる一方、それぞれの円形振動板3cの周囲が上側の緩衝材3aの軸によって上方から押えられ、円形振動板3cと圧電素子の周囲が相対的に下側の緩衝材3bの方に反るため、この圧電素子の反り変形によって発電できるものであり、そのときの円形振動板3cと圧電素子の過剰な変形、破損が上記ストッパーで防止できるようになっている。
【0028】
なお、この感圧発電装置3については前記特許文献1,2に詳しく開示されているので、これ以上の詳細な説明は省略することにする。
【0029】
上記の感圧発電装置3を囲繞する囲繞壁4は、一液又は二液反応型の樹脂液を上板1の四周縁に沿って上板1と下板2との間に充填し、反応させることによって形成した軟質合成樹脂製の二重壁であって、基板10に搭載した感圧発電装置3を上板1と下板2との間に実質的に隙間なく配置できるように、囲繞壁4の高さ寸法を基板10の厚みと感圧発電装置3の高さとの合計寸法と同一、又は、それよりも僅かに大きい寸法としている。具体的には、囲繞壁4の高さを2〜10mmの範囲に設定することが好ましく、この実施形態では4mmとしている。感圧発電装置3と上板1との間に大きい隙間があると、歩行圧が上板1から感圧発電装置3の上面に伝達され難くなるので不適当である。
囲繞壁4の厚み(幅)は、5〜30mmとすることが好ましく、ここでは10mmとしている。
【0030】
囲繞壁4を形成する軟質合成樹脂としては、一液又は二液反応型のシリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリサルファイド樹脂、アクリル樹脂などが使用され、特に、25%モジュラスが0.1〜1.5N/mmの範囲に調整されたものが好ましく使用される。このような軟質合成樹脂で囲繞壁4を形成すると、歩行時に被覆シート6と上板1を介して囲繞壁4に作用する歩行圧で囲繞壁4が適度に弾性変形し、上板1が感圧発電装置3に圧接して歩行圧が感圧発電装置3に確実に伝達されるので、効率良く発電することができる。また、外部からの衝撃力が被覆シート6や上板1に作用した場合でも、衝撃力を適度に吸収、緩和することができる。
なお、ここにおける25%モジュラスの数値は、JIS K 6251に準じて、厚さ2mmのダンベル1号の形状に成形した供試体を使用して、100mm/分の引張速度で測定したものである。
【0031】
25%モジュラスが1.5N/mmよりも高い軟質合成樹脂で囲繞壁4を形成すると、囲繞壁4が弾性変形しにくいため、子供のように歩行圧が小さい場合には、上板1から感圧発電装置3に歩行圧が伝達し難くなり、発電が困難になる恐れがあるので好ましくない。一方、25%モジュラスが0.1N/mmよりも低い軟質合成樹脂で囲繞壁4を形成すると、囲繞壁4が軟らかくなり過ぎるため、上板1や被覆シート6を充分に支え難くなり、歩行圧が殆ど減衰されないまま感圧発電装置3に作用して感圧発電装置3を破壊する恐れがあるので好ましくない。なお、25%モジュラスの範囲は、0.1〜0.6N/mmであると前記効果がさらに顕著となるので、より好ましい。
【0032】
囲繞壁4は単壁でもよいが、水密性を高めて感圧発電装置3を保護する観点からは、本実施形態のような二重壁、或いは、それ以上の多重壁とすることが好ましい。但し、四重壁以上の多重壁にすると、囲繞壁で囲まれる空間が減少し、配置できる感圧発電装置3の個数が少なくなることもあるので、二重壁ないし三重壁とするのが適当であり、本実施形態のように二重壁とするのが最適である。
【0033】
帯状発光部5は、帯状の配線基板の表面に、発光素子5aとしてLEDを所定間隔をあけて多数並べて搭載すると共に、その上から樹脂などの透明材料で封止又は被覆したものであって、発光素子5a(LED)が感圧発電装置3から中継基盤12aを経て供給される電力によって発光、点灯するように電気的に接続されている。この帯状発光部5の長さは、前記リード線13a,13bの端部を発電床材Pのコーナー部に引き出すことができるように、発電床材Pの左右両側辺の長さよりも少し短くなっている。この帯状発光部5は、被覆シート6で被覆された上板1の左右両側辺のほぼ全長に亘り連続して設ける必要は必ずしもなく、断続的に設けるようにしてもよい。
【0034】
帯状発光部5の発光素子5aはLEDに限定されるものではなく、有機ELや無機ELなどを使用してもよい。その場合は、陽電極と陰電極を両側縁に備えた帯状の有機EL又は無機ELを帯状の基板上に設け、その上から樹脂などの透明材料で封止又は被覆して帯状発光部5を作製すればよい。また、発光素子5aとして白熱球や蛍光灯を使用し、これらを帯状発光部5に埋め込んでもよい。
【0035】
下板2の左右両側縁に形成された帯状の取付け部9,9は、後述する連結用の縁材8を脱着可能に取付けるためのものであって、前述したように、取付け部9,9の上面には、「面ファスナー」の係合ループ又は係合フックを有する片方の面状材11a,11aが貼着されている。そして、下板2の右側縁に形成された取付け部9と、その上面に貼着された面状材11aは、前述したように、リード線先端のコネクタ14a,14aを納める凹部15,15が形成されるように、両端部が切除されている。なお、リード線13a,13bの先端を発電床材Pの左前コーナー部又は左後コーナー部に引き出す場合は、下板2の左側縁に形成された取付け部9と、その上面に貼着された面状材11aの両端を切除して、上記凹部15,15を形成すればよいことは言うまでもない。
【0036】
次に、前述の発電床材Pを連結した本発明の発電床材連結体について、図4図6を参照しながら説明する。図4は本発明の発電床材連結体の平面図、図5図4のA−A線に沿った部分断面図、図6図4のB−B線に沿った部分断面図である。
【0037】
この発電床材連結体は、図4に示すように、発電床材Pを隣接させて直線的に三枚配置すると共に、互いに隣接する発電床材Pの左右両側縁に連結用の縁材8を半ピッチずつ位置をずらせて脱着可能に取付け、この連結用の縁材8によって三枚の発電床材Pを連結したものであって、前端に位置する発電床材Pの前端縁と後端に位置する発電床材Pの後端縁には非連結用の縁材80が、また、前端に位置する発電床材Pの左右両側縁の前半部と後端に位置する発電床材Pの左右両側縁の後半部には非連結用の縁材81が、それぞれ脱着可能に取付けられている。
【0038】
連結される発電床材Pの枚数は二枚以上であればよく、また、連結の形態は、図4に示すような直線的な連結形態でも、L形の連結形態でも、十字形の連結形態でも、その他の所望の連結形態でもよい。もっとも、歩行・誘導路として発電床材連結体を用いる場合は、目的とする歩行・誘導路の形状に応じて直線的な連結形態もしくはL形の連結形態又はこれらを組み合わせた連結形態とすることが好ましい。
【0039】
連結用の縁材8は、図5に示すように、水平な重ね縁8aの外側に略直角三角形の断面形状を有する外縁部8bを一体に設けたものであって、重ね縁8aの上面と外縁部8bの緩やかな斜面には防滑性を付与するための複数の浅い溝8cが、また、外縁部8bの底面には肉盗み用の複数の溝8dが、それぞれ形成されており、更に、重ね縁8aの下面には、面ファスナー11の係合フック又は係合ループを有する他方の面状材11bが貼着されている。
【0040】
この連結用の縁材8は、発電床材Pの左右両側縁の長さと実質的に同一の長さを有しており、図4に示すように、該縁材8を発電床材Pの左右両側縁に対し前後に半ピッチずつ位置をずらして、図5に示すように、該縁材8の重ね縁8aを発電床材Pの側縁の取付け部9に重ね、面ファスナー11の片方の面状材11aと他方の面状材11bの係合フックと係合ループを係合させることによって、脱着可能に発電床材Pの取付け部9に取付けられている。そして、このように縁材8が取付けられた状態では、縁材8の重ね縁8aの上面と、帯状発光部5の上面と、被覆シート6の上面が面一になり、縁材8の外縁部8bの底面と、弾性体層7の底面が面一になっている。
【0041】
連結用の縁材8の材質は特に限定されるものではなく、各種の合成樹脂、ゴム、金属、木材などで作製された縁材がいずれも使用可能であるが、特に、軟質塩化ビニル樹脂やオレフィン系樹脂などの軟質合成樹脂で成形された縁材8が好ましく使用される。このような軟質合成樹脂製の縁材8で発電床材Pを連結すると、発電床材連結体の設置面に不陸があっても、軟質合成樹脂製の縁材8が変形することで、発電床材連結体が不陸に追従して発電床材相互の連結部分で折れ曲がりながら設置できる利点がある。また、ゴム製の縁材8も、同様の利点があるので好ましく使用される。
【0042】
非連結用の前記縁材80,81は、連結用の縁材8と同じ材質、同じ断面形状を有するものであって、連結用の縁材8と同様に、重ね縁の下面に面ファスナー11の係合フック又は係合ループを有する他方の面状材11bを貼着したものであるが、図4に示すように、縁材80の両端と縁材81の一端は斜め45°に切断されており、縁材81の長さは縁材8の長さの略1/2になっている。そのため、縁材80の両端に縁材81,81をコ字形に接合した状態で、前端に位置する発電床材Pの前端縁と左右両側縁の前半分、及び、後端に位置する発電床材Pの後端縁と左右両側縁の後半分に脱着可能に取付けられるようになっている。
【0043】
なお、図示はしていないが、非連結用の縁材80を、前端に位置する発電床材Pの前端縁と後端に位置する発電床材Pの後端縁に脱着可能に取付けることができるように、前端に位置する発電床材Pの前端縁と後端に位置する発電床材Pの後端縁には帯状の取付け部がそれぞれ設けられており、その上面に面ファスナー11の片方の面状材11aが貼着されている。
【0044】
この実施形態の発電床材連結体では、面ファスナー11によって連結用縁材8を発電床材Pの左右両側縁の取付け部9に脱着可能に取付けているが、面ファスナー以外の取付け手段で脱着可能に取付けてもよい。面ファスナー以外の取付け手段としては、例えば、発電床材Pの取付け部9又は連結用縁材8のいずれか一方に嵌合凸部を形成すると共に他方に嵌合凹部を形成して、嵌合凸部を嵌合凹部に脱着可能に嵌合させる取付け手段、或いは、発電床材Pの取付け部9又は連結用縁材8のいずれか一方に係合凸部を形成すると共に他方に係合凹部を形成して、係合凸部と係合凹部を脱着可能に係合させる取付け手段、或いは、発電床材Pの取付け部9に連結用縁材8を止具で脱着可能に取付ける取付け手段などが挙げられる。
【0045】
また、連結用縁材8は、発電床材Pの取付け部9に脱着可能に取付ける必要は必ずしもなく、例えば、発電床材Pの下板2の左右両側縁に面ファスナーや上記取付け手段によって脱着可能に取付けたり、或いは、帯状発光部5の邪魔にならない場合には上板1の左右両側縁に脱着可能に取付けたりしてもよい。
【0046】
連結用縁材8の取付けは、熱溶着などの手段で脱着できないようにしてもよいが、上記のように脱着可能に取付けられていると、縁材8を発電床材Pから取り外して発電床材Pを個々に分離できるので、運搬や収納が容易になるという利点がある。
【0047】
図4図6に示すように、前後に連結された発電床材P,Pの対向するコーナーの凹部15,15にそれぞれ引き出されたリード線13a,13bは、コネクタ14a,14bで接続されており、発電床材連結体の全体に亘って帯状発光部5の発光素子5aの発光・点灯が制御されるようになっている。
帯状発光部5の最も基本的な制御態様は、歩行圧が作用した発電床材Pの帯状発光部5の発光素子5aを発光・点灯させるものであるが、視認性や誘導性を顕著に高めるためには、歩行圧が作用した発電床材Pよりも歩く方向に一つ先又は二つ以上先の発電床材Pの帯状発光部5の発光素子5aが発光・点灯するように制御することが好ましい。また、歩く方向が前後二方向で特定できない場合は、歩行圧が作用した発電床材Pの前後の発電床材P,Pの帯状発光部5が発光・点灯するように制御することが好ましい。
【0048】
この実施形態の発電床材連結体は、上記の制御態様を考慮して、前端又は後端に位置する第一の発電床材Pの感圧発電装置3が感圧すると、中間に位置する第二の発電床材P、又は、第一と第二の発電床材P,Pの帯状発光部5の発光素子5aが発光・点灯し、中間に位置する第二の発電床材Pの感圧発電装置3が感圧すると、前後両端に位置する第一と第三の発電床材P,Pの帯状発光部5の発光素子5aが発光するように制御されている。そのため、この発電床材連結体を夜間や暗所に設置すると、各発電床材Pの帯状発光部5の発光素子5aの発光・点灯により、歩行者の誘導効果や視認性が顕著に向上する利点がある
【0049】
なお、各発電床材Pの帯状発光部5の発光素子5aは、その全てが一斉に発光・点灯するように制御されている必要はなく、帯状発光部5の一部の発光素子5aが同時に発光・点灯するように制御されていてもよい。例えば、発電床材Pの寸法が大きくて帯状発光部5がかなり長い場合には、歩行圧を感圧した感圧発電装置3よりも先方に位置する発光素子5aが同時に発光・点灯するように制御してもよい。
【0050】
以上のような構成の発電床材連結体は、発電床材Pが軟質合成樹脂製の縁材8によって連結されているため、例えば工事現場のような荒れた地面であっても、発電床材相互の連結部分で発電床材連結体が折れ曲がり、荒れた地面の不陸に追従して敷設することができる。
そして、各発電床材Pは、上板1と下板2の間に感圧発電装置3を配置したパネル状の床材であって、上板1が被覆シート6で被覆されているため、歩行しやすく、また、下板2の下面には弾性体層7が積層されているので、クッション性や設置面との緩衝性も良好である。
また、感圧発電装置3が二重の囲繞壁4で囲繞されているため、防水性に優れており、しかも、この囲繞壁4は25%モジュラスが0.1〜1.5N/mmである軟質合成樹脂で形成されているため、歩行圧が被覆シート6で被覆された上板1のどの部分に作用しても、囲繞壁4が弾性変形していずれかの感圧発電装置3に歩行圧が確実に伝達されて効率良く発電することができる。
このように感圧発電装置3が発電すると、その電力によって帯状発光部5の発光素子5aが発光・点灯するため、この発電床材連結体は、夜間や暗所において発光誘導体や発光表示体、或いは、照明具として兼用することができ、歩行者を安全に誘導することができる。特に、この実施形態の発電床材連結体は、第一の発電床材Pの感圧発電装置3が感圧すると第二の発電床材P、又は、第一と第二の発電床材P,Pの帯状発光部5の発光素子5aが発光・点灯し、第二の発電床材Pの感圧発電装置3が感圧すると第一と第三の発電床材P,Pの帯状発光部5の発光素子5aが発光・点灯するように制御されているので、歩行者の誘導効果や視認性が顕著に向上することになる。
上記のように、第一の発電床材Pの感圧発電装置3が感圧した際には、第二の発電床材Pのみの帯状発光部5の発光素子5aが発光・点灯してもよいし、第一と第二の発電床材P,Pの帯状発光部5の発光素子5aが同時に発光・点灯してもよいが、後者のようにすると、第一の発電床材が感圧した場合と第二の発電床材が感圧した場合とで発光する発光素子の数が合致し、発光光量が合致するので好ましい。
また、連結用の縁材8が、隣接する発電床材P,Pの左右両側縁に脱着自在に取付けられているので、この縁材8を発電床材Pから取り外して発電床材Pを個々に分離すると、運搬や収納が容易になる。なお、本発明の発電床材連結体のように、縁材8を連結材として兼用して発電床材Pを互いに連結すると、専用の連結材が不要となるので、部品点数が減少し、経済的に有利になるというメリットもある。
【0051】
本発明の発電床材Pや発電床材連結体は、工事現場などの荒れた地面に設置するのに適したものであるが、屋内又は屋外の床面や階段の踏み面などにも好適に敷設できるものであることは言うまでもない。
【0052】
次に、発電床材における囲繞壁の効果確認試験について説明する。
下記表1に示すように25%モジュラスの数値が異なる囲繞壁を形成した実施例1〜3の発電床材と比較例1〜3の発電床材(いずれも図1図2に示す構造を有するもの)を作製し、これらの発電床材についてキャスター試験による感圧発電装置の保護状況並びに発電効率の試験(発光試験)を行った。その結果を下記表1に示す。
なお、キャスター試験による感圧発電装置の保護状況は、JIS A 1454に規定のA−1法に準じてそれぞれの発電床材のキャスター試験を行い(荷重1kN)、その際の感圧発電装置の破損の有無を確認することで評価した。
また、発電効率の試験は、20kgの質量をもつ物体を10cmの高さから発電床材の全面に落下するように、発電床材上に落下させ、その際の発光素子の発光が、蛍光灯下200ルクスの環境下で視認できるか否かで評価した。
【0053】
【表1】
【0054】
上記表1に示す試験結果をみると、囲繞壁の25%モジュラスが0.1N/mmよりも低い比較例1の発電床材は、発電効率試験において発光素子の発光を良好に視認できるけれども、感圧発電装置の破損があるので保護性能に劣っており、一方、囲繞壁の25%モジュラスが1.5N/mmよりも高い比較例2,3の発電床材は、感圧発電装置の破損がなく保護性能に優れるけれども、発電効率試験において発光素子の発光がほとんど視認できないので発電効率に劣っていることがわかる。
これに対し、囲繞壁の25%モジュラスが0.1〜1.5N/mmの範囲にある実施例1〜3の発電床材は、感圧発電装置の破損がなく、且つ、発電効率試験においても発光素子の発光が視認できるので、感圧発電装置の保護性能も発電効率も良いことがわかる。なお、比較例2の発電効率試験の結果を勘案すると、囲繞壁の25%モジュラスが1.5N/mmに近づくほど、発光素子の発光が視認しにくくなり、発電効率が低下することが推定できるが、実施例1〜3の発電効率試験の結果から、囲繞壁の25%モジュラスを0.1〜0.6N/mmの範囲にすると、発電効率を充分向上させることができるので、より好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0055】
1 上板
2 下板
3 感圧発電装置
3c 圧電素子
4 囲繞壁
5 帯状発光部
5a 発光素子
6 被覆シート
7 弾性体層
8 連結用の縁材
9 取付け部
11 面ファスナー
11a 面ファスナーの係合ループ又は係合フックを有する片方の面状材
11b 面ファスナーの係合フック又は係合ループを有する他方の面状材
12a,12b 中継基盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6