特許第6197246号(P6197246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントリー食品インターナショナル株式会社の特許一覧 ▶ サントリーホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6197246-印字検査装置及び印字検査方法 図000002
  • 特許6197246-印字検査装置及び印字検査方法 図000003
  • 特許6197246-印字検査装置及び印字検査方法 図000004
  • 特許6197246-印字検査装置及び印字検査方法 図000005
  • 特許6197246-印字検査装置及び印字検査方法 図000006
  • 特許6197246-印字検査装置及び印字検査方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197246
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】印字検査装置及び印字検査方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20170911BHJP
   G01N 21/90 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   G06T1/00 310A
   G01N21/90 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-168965(P2013-168965)
(22)【出願日】2013年8月15日
(65)【公開番号】特開2015-36937(P2015-36937A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】313000128
【氏名又は名称】サントリー食品インターナショナル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】問田 幸隆
(72)【発明者】
【氏名】森谷 勇
(72)【発明者】
【氏名】安彦 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】依田 泰幸
【審査官】 新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−320931(JP,A)
【文献】 特開平07−181139(JP,A)
【文献】 特開昭62−065179(JP,A)
【文献】 特開2002−024805(JP,A)
【文献】 特開平08−138049(JP,A)
【文献】 特開平09−251513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00−7/90
G01N 21/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字部分の文字を撮像して画像データを出力する撮像部と、
前記印字部分の文字の標準文字に対応する、減点を設定した複数のエリアを有するマスクを記憶するマスク記憶部と、
前記印字部分の文字の画像データと、該印字部分の文字に対応するマスクとを照合してスコアを算出する照合部と、
前記照合部で算出されたスコアに基づいて文字の良否判定を行う文字良否判定部と、を備え、
前記スコアの算出が以下の計算式(1):
スコア=(N−Σ(|f1(x,y)−f2(x,y)|×M(x,y)))/N×100・・・式(1)
(Nは総エリア数、f1は2値化処理された印字部分の文字、f2は対応する標準文字、Mは設定された減点の値、(x,y)はエリアの座標を示し、f1及びf2には0又は1の値が入る)、
に従って行われることを特徴とする印字検査装置。
【請求項2】
前記減点を設定した複数のエリアが、対応する標準文字の特徴を示すエリアほど減点が高くなるようにランク分けされていることを特徴とする請求項1に記載の印字検査装置。
【請求項3】
印字部分の文字を撮像して画像データを入手する撮像工程と、
前記印字部分の文字の画像データと、前記印字部分の文字の標準文字に対応する、減点を設定した複数のエリアを有するマスクとを照合して、スコアを算出する照合工程と、
前記照合工程で算出されたスコアに基づいて文字の良否判定を行う文字良否判定工程と、を包含し、
前記スコアの算出が以下の計算式(1):
スコア=(N−Σ(|f1(x,y)−f2(x,y)|×M(x,y)))/N×100・・・式(1)
(Nは総エリア数、f1は2値化処理された印字部分の文字、f2は対応する標準文字、Mは設定された減点の値、(x,y)はエリアの座標を示し、f1及びf2には0又は1の値が入る)、
に従って行われることを特徴とする印字検査方法。
【請求項4】
前記減点を設定した複数のエリアが、対応する標準文字の特徴を示すエリアほど減点が高くなるようにランク分けされていることを特徴とする請求項3に記載の印字検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料缶やペットボトル等の被検査物品における製造年月日や賞味期限等の印字状態の良否を判定する印字検査装置及び印字検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の印字検査装置及び印字検査方法としては、例えば以下の特許文献1に示すものが挙げられる。この文献には、検査対象となる文字列の文字に欠けやはみ出しがないかを抽出して解析することによって印字検査を行う旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−181139号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の印字検査装置及び印字検査方法によれば、例えば、文字列を含む検査範囲にたまたま小さなインクのカスが付着していたり、あるいは文字列の文字のなかに、左右に傾いていたり、上下に伸びたり縮むなどして多少変形したものがあると(図6(b)〜(d)参照)、文字の欠けやはみ出しがあると判断され、たとえそれらの文字が目視によれば十分に判読可能で合格基準に達するものであったとしても、印字不良と判定されてしまう場合がある。
本発明の目的は、印字された文字の良否判断をする際に、標準文字に類似するかしないかの判断と合わせて、目視と同じ程度に正確な印字検査を自動で実施できる印字検査装置及び印字検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印字検査装置に係る第1特徴構成は、印字部分の文字を撮像して画像データを出力する撮像部と、前記印字部分の文字の標準文字に対応する、減点を設定した複数のエリアを有するマスクを記憶するマスク記憶部と、前記印字部分の文字の画像データと、該印字部分の文字に対応するマスクとを照合してスコアを算出する照合部と、前記照合部で算出されたスコアに基づいて文字の良否判定を行う文字良否判定部と、を備え、前記スコアの算出が以下の計算式(1):スコア=(N−Σ(|f1(x,y)−f2(x,y)|×M(x,y)))/N×100・・・式(1)(Nは総エリア数、f1は2値化処理された印字部分の文字、f2は対応する標準文字、Mは設定された減点の値、(x,y)はエリアの座標を示し、f1及びf2には0又は1の値が入る)、に従って行われる点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
本構成のごとく、複数のエリアを有するマスクを用いることによって、文字の形状に関与するエリア群のなかに画像データの文字の部分が存在しないエリアが検出されたり、文字の形状に関与しないエリア群のなかに画像データの文字の部分やインクのカス等が存在するエリアが検出されるごとに減点するように設定することができる。これにより印字された文字の形状が、対応する標準文字の形状に近ければ近いほど減点が少なくなり高いスコアが算出され、逆に印字された文字の汚れ度合や変形度合が大きければ大きいほど減点が大きくなり低いスコアが算出されるようになり、印字された文字の汚れ度合や変形度合を数値化して細かく評価することが可能となる。
従って、本構成によれば、仮に目視であれば十分に判読可能で合格基準に達している形状を有する文字のスコアを閾値として設定し、そのスコアよりも低い場合に印字不良と判定するなどの設定が可能となるため、標準文字に類似するかしないかの判断と合わせて、目視と同じ程度に正確な印字検査を自動で実施できるようになる。
【0007】
第2特徴構成は、前記減点を設定した複数のエリアが、対応する標準文字の特徴を示すエリアほど減点が高くなるようにランク分けされている点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、印字された文字の形状が、対応する標準文字の形状に近ければ近いほどより高いスコアが算出され、逆に印字された文字の汚れ度合や変形度合が大きければ大きいほどより低いスコアが算出されるようになるため、より目視に近い正確な印字検査を実施することができるようになる。
【0009】
本発明の印字検査方法に係る第1特徴構成は、印字部分の文字を撮像して画像データを入手する撮像工程と、前記印字部分の文字の画像データと、前記印字部分の文字の標準文字に対応する、減点を設定した複数のエリアを有するマスクとを照合して、スコアを算出する照合工程と、前記照合工程で算出されたスコアに基づいて文字の良否判定を行う文字良否判定工程と、を包含し、前記スコアの算出が以下の計算式(1):スコア=(N−Σ(|f1(x,y)−f2(x,y)|×M(x,y)))/N×100・・・式(1)(Nは総エリア数、f1は2値化処理された印字部分の文字、f2は対応する標準文字、Mは設定された減点の値、(x,y)はエリアの座標を示し、f1及びf2には0又は1の値が入る)、に従って行われる点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
本構成のごとく、複数のエリアを有するマスクを用いることによって、文字の形状に関与するエリア群のなかに画像データの文字の部分が存在しないエリアが検出されたり、文字の形状に関与しないエリア群のなかに画像データの文字の部分やインクのカス等が存在するエリアが検出されるごとに減点するように設定することができる。これにより印字された文字の形状が、対応する標準文字の形状に近ければ近いほど減点が少なくなり高いスコアが算出され、逆に印字された文字の汚れ度合や変形度合が大きければ大きいほど減点が大きくなり低いスコアが算出されるようになり、印字された文字の汚れ度合や変形度合を数値化して細かく評価することが可能となる。
従って、本構成によれば、仮に目視であれば十分に判読可能で合格基準に達している形状を有する文字のスコアを閾値として設定し、そのスコアよりも低い場合に印字不良と判定するなどの設定が可能となるため、標準文字に類似するかしないかの判断と合わせて、目視と同じ程度に正確な印字検査を自動で実施できるようになる。
【0011】
第2特徴構成は、前記減点を設定した複数のエリアが、対応する標準文字の特徴を示すエリアほど減点が高くなるようにランク分けされている点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、印字された文字の形状が、対応する標準文字の形状に近ければ近いほどより高いスコアが算出され、逆に印字された文字の汚れ度合や変形度合が大きければ大きいほどより低いスコアが算出されるようになるため、より目視に近い正確な印字検査を実施することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の印字検査装置及び印字検査方法において使用される、標準文字とその標準文字に対応するマスクの一例を示す図である。
図2】本発明の印字検査方法における第1検査範囲設定工程を示す図である。
図3】本発明の印字検査方法における位置補正工程を示す図である。
図4】本発明の印字検査方法における第2検査範囲設定工程を示す図である。
図5】本発明の印字検査方法における照合工程を示す図である。
図6】撮像された文字(印字された文字)の未変形例(a)及び変形例(b)〜(d)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の印字検査装置及び印字検査方法の実施形態を説明する。
【0015】
〔実施形態〕
〔1〕印字検査装置
本発明に係る印字検査装置は、飲料缶やペットボトル等の被検査物品を連続して搬送する搬送手段と、被検査物品に印字された製造年月日や賞味期限等の印字の良否を判定する印字検査手段と、印字検査手段によって印字不良と判定された被検査物品を選択的に取り除く排出手段とを備えて構成される。
【0016】
(搬送手段と排出手段)
本発明の印字検査装置における搬送手段及び排出手段については、従来の印字検査装置に通常用いられる公知のシステムや装置を使用して良い。例えば、搬送手段としては、公知のベルトコンベアシステムを使用して良い。また排出手段としては、エア吹き出し口からのエア噴射により排出するエアジェット排出装置や、アームによる払い出しによって排出する排出アーム装置等を使用することができる。
【0017】
(印字検査手段)
本発明の印字検査装置における印字検査手段は、
(1)印字される製造年月日や賞味期限等の文字列を予め入力して記憶させておく文字列記憶部、
(2)被検査物品の印字部分を撮像して画像データを出力する撮像部、
(3)撮像部から出力された画像データを記憶する画像データ記憶部、
(4)画像データにおいて文字列を含む第1検査範囲を設定する第1検査範囲設定部、
(5)第1検査範囲設定部の画像データを所定の閾値に基づいて2値化処理する第1データ変換部、
(6)2値化処理された第1検査範囲の文字列の右端、左端、上端、下端を捜査し、文字列の右端及び左端の中心であり、且つ文字列の上端及び下端の中心を画像の中心として位置補正を行う位置補正部、
(7)複数の標準文字のそれぞれを2値化処理して記憶可能な標準文字記憶部、
(8)文字列における各文字を含む第2検査範囲を、文字毎に設定する第2検査範囲設定部、
(9)第2検査範囲の画像データを所定の閾値に基づいて2値化処理する第2データ変換部、
(10)文字列記憶部に記憶されている文字列の各文字について、標準文字記憶部から対応する標準文字を読み出し、2値化処理された第2検査範囲毎に、対応する標準文字とのパターンマッチングを行う検査部、
(11)各標準文字に対応する、減点を設定した複数のエリアを有するマスクを記憶可能なマスク記憶部、
(12)パターンマッチングにより検査された第2検査範囲と、対応するマスクとを照合してスコアを算出する照合部、
(13)照合部で算出されたスコアに基づいて各文字の印字状態の良否判定を行う文字良否判定部、及び、
(14)文字列全体の印字状態の良否判定を行う総合良否判定部を備えて構成される。
【0018】
尚、標準文字記憶部に記憶させる標準文字としては、例えば、アラビア数字、ローマ数字、アルファベット、ギリシャ文字等が挙げられる。
【0019】
(マスク)
図1では、マスクMを例示するものとして、標準文字のアラビア数字の「8」に対応するマスクMを示してある。
【0020】
マスクMには、複数のエリアが設定されている。各エリアには、所定の減点が設定されており、対応する標準文字Sの特徴を示すエリアほど減点が高くなるようにランク分けされている。
【0021】
図1に示す例では、マスクMに5×7=35箇所のエリアが設定されており、各エリアを、レベル1〜4エリアまでの4段階にランク分けしている。レベル数が大きいほど、数字「8」の特徴を示すより重要なエリアであり、より高い減点が設定される。例えば、図1において、マスクMの座標(x,y)=(3,4)で示されるエリアは、最高のレベル4エリアにランク付けされる。これは、仮に、標準文字「8」の座標(x,y)=(3,4)のエリアに配置される黒丸が欠けて無い場合、数字の「0」と見分けがつき難くなるため、最重要点エリアに位置付けられ、最も高い減点が設定される。
【0022】
尚、マスクMは、ユーザーによって標準文字S毎に予め作成される。即ち、標準文字Sに応じて、そのエリアの数や、各エリアの減点などが設定される。そして、複数の標準文字Sのそれぞれに対応する複数のマスクMが、マスク記憶部に登録され記憶されている。
【0023】
〔2〕印字検査方法
次いで、図2〜5を参照しつつ、本発明の印字検査方法について説明する。
まず、被検査物品Pに印字される製造年月日や賞味期限等の文字列を予め入力して文字列記憶部に記憶させる。本実施形態における文字列を「204385/B」として例示する。
【0024】
次に、CCD等のエリアセンサを内蔵したカメラ(撮像部の一例)を使用して、ベルトコンベア(搬送手段の一例)で搬送されてきた被検査物品Pの印字部分を撮像し、その画像データを画像データ記憶部に記憶させる(撮像工程)。
【0025】
図2に示すように、画像データ記憶部から画像データを読み出し、印字部分の文字列(「204385/B」)を含むように第1検査範囲W1を設定して、これを2値化処理する(第1検査範囲設定工程)。
【0026】
図3に示すように、2値化処理された文字列の右端、左端、上端、下端を捜査し、文字列の右端及び左端の中心であり、且つ文字列の上端及び下端の中心を画像の中心Xとして位置補正を行う(位置補正工程)。
【0027】
次に、図4に示すように、文字列の文字毎に第2検査範囲W2を設定して、これら第2検査範囲W2のそれぞれを2値化処理する(第2検査範囲設定工程)。
【0028】
次に、文字列記憶部に記憶されている文字列の各文字について、標準文字記憶部から対応する2値化処理された標準文字Sをそれぞれ読み出し、第2検査範囲W2毎に、対応する標準文字Sとのパターンマッチングを行う。このとき、第2検査範囲W2の各座標のデータ(図5参照)が、対応する標準文字Sの各座標のデータ(図1参照)と一致するか否かを検査する(検査工程)。
【0029】
次に、文字列の各文字の標準文字Sに対応するマスクMのそれぞれを、マスク記憶部から呼び出す。そして、図5に示すように、パターンマッチングにより検査された第2検査範囲W2毎に、対応するマスクMと照合して、文字毎にスコアを算出する(照合工程)。
【0030】
スコアの算出は、以下の計算式(1)に従って行われる。
スコア=(N−Σ(|f1(x,y)−f2(x,y)|×M(x,y)))/N×100・・・式(1)
ここで、Nは総エリア数、f1は2値化処理された第2検査範囲W2内の文字、f2は対応する標準文字S、Mは設定された減点の値、(x,y)はエリアの座標を示し、f1及びf2には0又は1の値が入る。
【0031】
スコアの算出方法の一例を以下に示す。
例えば、図1に示すマスクMの各エリアに以下のように減点を設定したとする。
レベル1エリア:1点減点
レベル2エリア:4点減点
レベル3エリア:16点減点
レベル4エリア:30点減点
これにより、上記式(1)におけるMの値は、例えば、M(2,1)=1、M(3,1)=4、M(1,1)=16、M(3,4)=30と設定される。また、Nの値はN=5×7=35となる。
【0032】
f1(x,y)及びf2(x,y)については、エリアに黒丸があれば1、何もない場合は0とする。図1の「8」の標準文字Sでいえば、f1(1,1)=0、f1(1,2)=1、f1(2,1)=1等となる。図5の「8」の第2検査範囲W2でいえば、f2(1,1)=0、f2(1,2)=1、f2(2,1)=1等となる。
【0033】
検査工程において、図1の「8」の標準文字Sと、図5の「8」の第2検査範囲W2との場合のように、第2検査範囲W2の各座標のデータと、対応する標準文字Sの各座標のデータとがすべて一致する場合、減点対象となるエリアが存在しない。そのため、照合工程において、上記式(1)のΣ(|f1(x,y)−f2(x,y)|×M(x,y))=0となり、スコア=((35−0)/35)×100=100点となる。
【0034】
しかし、例えば、図5の「8」の第2検査範囲W2において、レベル1エリアのf2(2,1)の黒丸が欠けていた場合、上記式(1)のΣ(|f1(x,y)−f2(x,y)|×M(x,y))=|f1(2,1)−f2(2,1)|×M(2,1)=|1−0|×1=1となるため、スコア=(35−1)/35×100=97点となる。
【0035】
また、図5の「8」の第2検査範囲W2において、レベル2エリアのf2(5,5)の黒丸と、レベル2エリアのf2(5,6)の黒丸とが欠けており、さらにレベル3エリアのf2(1,4)に黒丸がある場合、減点は大きく増加し、上記式(1)のΣ(|f1(x,y)−f2(x,y)|×M(x,y))=(|1−0|×4)+(|1−0|×4)+(|0−1|×16)=24となるため、スコア=(35−24)/35×100=31点となる。
【0036】
特に、図5の「8」の第2検査範囲W2において、レベル4エリアのf2(3,4)の黒丸が欠けていた場合、上記式(1)のΣ(|f1(x,y)−f2(x,y)|×M(x,y))=|1−0|×30=30となるため、スコア=(35−30)/35×100=14点となる。
【0037】
次に、照合部で算出されたスコアに基づいて各文字の印字状態の良否判定を行う(文字良否判定工程)。即ち、スコアが、所定の値以上であれば、印字状態を「良」と判定し、所定スコア未満であれば「否」と判定する。例えば、スコア80点以上を「良」とする場合、上述のスコアの例によれば、100点及び97点の文字は「良」と判定され、31点及び14点の文字は「否」と判定される。また特にこの場合、レベル4エリアの黒丸が一つ欠けていただけで「否」と判定されることになる。
【0038】
最後に、文字列全体の印字状態の良否判定を行う(総合判定工程)。即ち、文字列の文字全ての印字状態が「良」であれば、文字列の印字状態は「良」であると判定され、文字列の文字の中に一つでも「否」と判定されたものがあれば、文字列の印字状態は「否」であると判定される。文字列の印字状態を「否」と判定された被検査物品Pについては、その後、排出手段により取り除かれる。
【0039】
上述の実施形態では、図5に示すように、撮像された文字(印字された文字)が標準文字Sからほとんど変形していない例(図6(a))を用いて説明したが、図6(b)〜(d)に示されるような変形文字についても同様の手順で印字検査が実施される。
【0040】
〔その他の実施形態〕
上述の実施形態では、減点を設定したエリアのみを有するマスクを示したが、これに限定されるものではなく、減点を設定したエリアだけでなく減点を設定していないエリアをも有するマスクを使用しても良い。即ち、減点を設定していないエリアとしては、そのエリアにたまたま小さなインクのカスが付着するなどしていたりしても、印字された文字の良否判断に影響を与えないようなエリアが選定される。これにより、より一層、標準文字に類似するかしないかの判断と合わせて、目視と同じ程度に正確な印字検査を自動で実施できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る印字検査装置及び印字検査方法は、飲料缶やペットボトル等における製造年月日や賞味期限等の印字状態の良否を判定する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
M マスク
P 被検査物品
S 標準文字
W1 第1検査範囲
W2 第2検査範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6