(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陽極と陰極の間に少なくとも発光層が存在し、電気エネルギーにより発光する発光素子であって、発光素子が請求項1〜5のいずれか記載の発光素子材料を含有することを特徴とする発光素子。
陽極と陰極の間に少なくとも正孔輸送層および発光層が存在し、電気エネルギーにより発光する素子であって、正孔輸送層と陽極の間に正孔注入層が存在し、正孔注入層がアクセプター性化合物を含有する請求項6〜8のいずれか記載の発光素子。
発光層と陰極の間に少なくとも電子輸送層が存在し、電子輸送層が、電子受容性窒素を含み、さらに炭素、水素、窒素、酸素、ケイ素、リンの中から選ばれる元素で構成されるヘテロアリール環構造を有する化合物を含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれか記載の発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物について詳細に説明する。
【0019】
R
1〜R
8はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基、−P(=O)R
9R
10および下記一般式(2)からなる群より選ばれる。R
9およびR
10はアリール基またはヘテロアリール基である。ただしR
1〜R
8のうち少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基であり、一般式(2)におけるR
11〜R
23のうちいずれかの位置と連結する。Yは単結合またはアリーレン基である。Zは下記式(3)で表される基である。
【0021】
R
11〜R
23はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基および−P(=O)R
24R
25からなる群より選ばれる。R
24およびR
25はアリール基またはヘテロアリール基である。R
19〜R
23は隣接する置換基同士で環を形成してもよい。ただし、R
11〜R
23のうちいずれか1つは一般式(1)におけるR
1〜R
8のうちいずれかの位置と連結する。また、R
11〜R
23は、一般式(1)におけるR
1〜R
8のうちいずれかの位置と連結する場合を除いて、窒素原子を含む縮環構造、酸素原子を含む縮環構造、硫黄原子を含む縮環構造およびアミン構造は含まない。なお、一般式(1)におけるR
3またはR
6の位置と一般式(2)におけるR
13またはR
16の位置が連結することはない。
【0023】
X
1〜X
3はCHまたはNを示し、X
1〜X
3のうち少なくとも1つはNである。Ar
1およびAr
2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、縮環構造でない置換もしくは無置換のアリール基またはヘテロアリール基である。
【0024】
これらの置換基のうち、水素は重水素であってもよい。また、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0025】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3以上20以下の範囲である。
【0026】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0027】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0028】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
【0029】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0030】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上20以下の範囲である。
【0031】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上20以下の範囲である。
【0032】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
【0033】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
【0034】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
【0035】
ヘテロアリール基とは、フラニル基、チオフェニル基、ピリジル基、キノリニル基、ピラジニル基、ナフチリジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基などの炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上30以下の範囲である。中でも、フラニル基、チオフェニル基、ピリジル基、ピラジニル基であることが好ましい。
【0036】
ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ホスフィンオキサイド基は、置換基を有していても有していなくてもよく、置換基としては例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
【0037】
カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよく、置換基としては例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
【0038】
アミノ基とは、無置換でも置換されていてもよく、置換基としては例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されていてもかまわない。
【0039】
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基などのケイ素原子への結合を有する官能基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。シリル基の炭素数は特に限定されないが、通常、3以上20以下の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1以上6以下の範囲である。
【0040】
アリーレン基とは、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基から導かれる2価の基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アリーレン基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。一般式(1)のLがアリーレン基の場合、該アリーレン基は置換基を有していても有していなくてもよいが、置換基も含めて炭素数は6以上60以下の範囲である。
【0041】
隣接する置換基同士で環を形成する場合、任意の隣接2置換基(例えば一般式(1)のR
17とR
18)が互いに結合して共役または非共役の縮合環を形成できる。縮合環の構成元素として、炭素以外にも窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。
【0042】
窒素原子を含む縮環構造、酸素原子を含む縮環構造、硫黄原子を含む縮環構造とは、二つ以上の芳香環が縮合した化合物であって、1つ以上の窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子を含むものである。具体的には、キノリン構造、インドール構造、ベンゾフラン構造、ベンゾチオフェン構造、カルボリン構造などのベンゾ縮環構造、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造、フェノキサジン構造、フェノチアジン構造、アクリジン構造などのジベンゾ縮環構造などが挙げられる。
【0043】
従来のカルバゾール骨格を有する化合物は、発光素子材料として必ずしも十分な性能を有するものではなかった。本発明者らは、その改良の検討において、カルバゾール骨格を有する化合物の正孔輸送能と電子輸送能の強さに着目した。一般に、カルバゾール骨格を有する化合物は、正孔と電子の両電荷を輸送する特性を有するが、本発明者らは、正孔輸送能に対して電子輸送能が劣るために、発光層中の電荷のバランスが崩れることが発光性能の低下につながるのではないかと考え、かかる仮説を元に一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物を発明するに至った。
【0044】
一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物は、分子中にカルバゾール骨格と電子受容性窒素を含む芳香族複素環であるピリジン環、ピリミジン環またはトリアジン環を有している。これにより、電子受容性窒素を含む芳香族複素環が電子の注入・輸送に関与するため、電子輸送能が大きくなり、発光層内の電荷のバランスがとれ、高効率発光と優れた耐久性を発現すると考えられる。また、カルバゾール骨格が高い三重項準位を有するため、一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物も高い三重項準位を維持することが可能であり、容易な失活を抑制できるため、高い発光効率が達成される。
【0045】
Zは一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物の三重項準位を下げない基が好ましく、中でも大きく共役を伸ばさない基が好ましい。特にX
1〜X
3のうち1つが窒素原子(N)である場合は、X
3が窒素原子であることが好ましく、X
1〜X
3のうち2つが窒素原子である場合は、X
1およびX
2が窒素原子であることが好ましい。中でも、X
1〜X
3が全て窒素原子である場合が高い電子輸送能を有するため好ましい。
【0046】
Ar
1およびAr
2は、それぞれ、上記の中でも置換もしくは無置換のフェニル基であることが好ましい。好ましい具体例としては、フェニル基、重水素化フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。中でもフェニル基、重水素化フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基であることがより好ましい。
【0047】
Yは単結合であることがより好ましい。
【0048】
R
1〜R
8のうち一般式(2)で表される基以外のものは、それぞれ、上記の中でも水素(重水素を含む)、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であることが好ましい。中でも、R
1〜R
8のうち少なくとも1つがアルキル基またはアリール基であることは、特に好ましい態様の1つである。
【0049】
また、R
11〜R
23のうち一般式(1)におけるR
1〜R
8との連結に用いられる基以外のものは、それぞれ、上記の中でも水素(重水素を含む)、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であることが好ましい。中でも、R
11〜R
23のうち少なくとも1つがアルキル基またはアリール基であることは、特に好ましい態様の1つである。
【0050】
R
11〜R
23は、一般式(1)におけるR
1〜R
8のうちいずれかの位置と連結する場合を除いて、窒素原子を含む縮環構造、酸素原子を含む縮環構造、硫黄原子を含む縮環構造およびアミン構造を含まない。このような構造を含むと熱分解が起こる可能性があるからである。
【0051】
一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物は、分子中にカルバゾール骨格が2個含まれることが好ましく、これにより、高い薄膜安定性と優れた耐熱性を有する。
【0052】
一般式(1)におけるR
3またはR
6の位置と一般式(2)におけるR
13またはR
16の位置が連結する化合物は、本発明の一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物には含まれない。これは以下の理由による。一般式(1)におけるR
3またはR
6の位置と一般式(2)におけるR
13またはR
16の位置が連結する場合、HOMO(最高被占軌道)の分布が二つのカルバゾール上に非局在化するため、正孔輸送能が高くなる。このため、Zで表される基のような高い電子輸送性置換基を導入しても、依然として正孔輸送性の高い化合物となり、発光層中の電荷のバランスを十分に改善することができない。本発明の一般式(1)で表される化合物は、R
3またはR
6の位置と一般式(2)におけるR
13またはR
16の位置が連結する場合が除かれているため、二つのカルバゾールの一方のカルバゾールにHOMOが局在化し、正孔輸送能は低下する。この状態でZで表される基のような高い電子輸送性置換基が導入されると、正孔輸送能と電子輸送能のバランスが保たれる。
【0053】
一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物において、一般式(2)で表される基はR
11、R
12、R
14、R
15、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23のいずれか一つがR
1〜R
8との連結に用いられることが好ましく、一般式(2)で表される基はR
13、R
16のいずれか一つがR
1、R
2、R
4、R
5、R
7、R
8との連結に用いられることが好ましい。なお、例えばR
21がR
6との連結に用いられるとは、一般式(1)のR
6部分と一般式(2)のR
21部分とが直接結合することをいう。なお、R
4またはR
5の位置とR
14またはR
15の位置が連結する場合は除かれることが好ましい。
【0054】
中でも、R
3、R
6のいずれか一つが一般式(2)で表される基のR
11、R
12、R
14、R
15、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23のいずれか一つと連結する化合物であると、正孔輸送能と電子輸送性のバランスに優れるため好ましい。
【0055】
また、本発明の一般式(1)で表される化合物の中でも、一般式(1)におけるR
1〜R
8のうちいずれかの位置と一般式(2)におけるR
19〜R
23のうちいずれかの位置とが連結した化合物も好ましい。
【0056】
一般式(1)におけるR
1〜R
8のうちいずれかの位置と一般式(2)におけるR
19〜R
23のうちいずれかの位置とが連結に用いられることにより、一般式(2)で表される基にHOMOが局在化し、正孔輸送能は低下する。この状態でZで表される基のような高い電子輸送性置換基が導入されると、正孔輸送能と電子輸送能のバランスが保たれる。
【0057】
一方、本発明の一般式(1)で表される化合物の中でも、一般式(1)におけるR
4またはR
5のうちいずれかの位置と一般式(2)におけるR
11またはR
23の位置が連結した化合物も好ましい。
【0058】
一般式(1)におけるR
4またはR
5のうちいずれかの位置と一般式(2)におけるR
11〜R
23のうちいずれかの位置とが連結に用いられることにより、一般式(2)で表される基にHOMOが局在化し、正孔輸送能は低下する。この状態でZで表される基のような高い電子輸送性置換基が導入されると、正孔輸送能と電子輸送能のバランスが保たれる。
【0059】
上記一般式(1)で表されるカルバゾール化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。なお、以下の例はあくまでも一例であり、例えば、ある化合物が有する一般式(2)で表される基を別の化合物の一般式(2)で表される基と適宜組み替えたような化合物も、これらと同様に好ましい例として挙げることができる。
【0064】
一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物の合成には、公知の方法を使用することができる。フェニルカルバゾールのフェニル基の部分と別のカルバゾール骨格を結合する方法としては、例えば、パラジウムや銅触媒を用いたカルバゾール誘導体とハロゲン化物とのカップリング反応を用いる方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。一例として、4−(9−カルバゾリル)フェニルボロン酸を用いた例を以下に示す。
【0066】
なお、上記の反応において、4−(9−カルバゾリル)フェニルボロン酸の代わりに9−フェニル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾールを用いても同様に反応は進行する。この場合は、フェニルカルバゾールのカルバゾール骨格の部分と別のカルバゾール骨格が結合した構造を得ることができる。
【0068】
また、上記の反応において、3−ブロモカルバゾールの代わりに4−ヒドロキシカルバゾールのトリフラート体を用いても同様に反応は進行する。
【0070】
本発明における一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物は発光素子材料として用いられる。ここで本発明における発光素子材料とは、発光素子のいずれかの層に使用される材料を表し、後述するように、正孔注入層、正孔輸送層、発光層および/または電子輸送層に使用される材料であるほか、陰極の保護膜に使用される材料も含む。本発明における一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物を発光素子のいずれかの層に使用することにより、高い発光効率が得られ、かつ耐久性に優れた発光素子が得られる。
【0071】
一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物は、高い発光効率、高い三重項準位、バイポーラー性(両電荷輸送性)および薄膜安定性を有しているため、発光素子の発光層に用いることが好ましい。特に、高い三重項準位を有していることから、燐光性ドーパントに対するホスト材料として発光層に用いることが好ましい。
【0072】
次に、本発明の発光素子の実施の形態について詳細に説明する。本発明の発光素子は、陽極と陰極、およびそれら陽極と陰極との間に介在する有機層を有し、該有機層は少なくとも発光層を含み、該発光層が電気エネルギーにより発光する。
【0073】
有機層は、発光層のみからなる構成の他に、1)正孔輸送層/発光層/電子輸送層および、2)発光層/電子輸送層、3)正孔輸送層/発光層、4)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、5)正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層、6)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層などの積層構成が挙げられる。また、上記各層は、それぞれ単一層、複数層のいずれでもよく、ドーピングされていてもよい。正孔輸送層および電子輸送層が複数層を有する場合、電極に接する側の層をそれぞれ正孔注入層および電子注入層と呼ぶことがあるが、以下の説明では特に言及しない限りでは正孔注入材料は正孔輸送材料に、電子注入材料は電子輸送材料にそれぞれ含まれる。
【0074】
本発明の発光素子において、陽極と陰極は素子の発光のために十分な電流を供給するための役割を有するものであり、光を取り出すために少なくとも一方は透明または半透明であることが望ましい。通常、基板上に形成される陽極を透明電極とする。
【0075】
陽極に用いる材料は、正孔を有機層に効率よく注入できる材料、かつ光を取り出すために透明または半透明であれば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)酸化亜鉛インジウム(IZO)などの導電性金属酸化物、あるいは、金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなど特に限定されるものでないが、ITOガラスやネサガラスを用いることが特に望ましい。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。透明電極の抵抗は素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、20Ω/□以下の低抵抗の基板を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。
【0076】
また、発光素子の機械的強度を保つために、発光素子を基板上に形成することが好ましい。基板は、ソーダガラスや無アルカリガラスなどのガラス基板が好適に用いられる。ガラス基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、0.5mm以上あれば十分である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましい。または、SiO
2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することもできる。さらに、第一電極が安定に機能するのであれば、基板はガラスである必要はなく、例えば、プラスチック基板上に陽極を形成しても良い。ITO膜形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法および化学反応法など特に制限を受けるものではない。
【0077】
陰極に用いる材料は、電子を効率よく発光層に注入できる物質であれば特に限定されない。一般的には白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属、またはこれらの金属とリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの低仕事関数金属との合金や多層積層などが好ましい。中でも、主成分としてはアルミニウム、カルシウム、銀、マグネシウムが電気抵抗値や製膜しやすさ、膜の安定性、発光効率などの面から好ましい。特にマグネシウムと銀で構成されると、本発明における電子輸送層および電子注入層への電子注入が容易になり、低電圧駆動が可能になるため好ましい。
【0078】
さらに、陰極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、シリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などの有機高分子化合物を、保護膜層として陰極上に積層することが好ましい例として挙げられる。ただし、陰極側から光を取り出す素子構造(トップエミッション構造)の場合は、保護膜層は可視光領域で光透過性のある材料から選択される。これらの電極の作製法は、抵抗加熱、電子線ビーム、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど特に制限されない。
【0079】
正孔輸送層は、正孔輸送材料の一種または二種以上を積層または混合する方法、もしくは、正孔輸送材料と高分子結着剤の混合物を用いる方法により形成される。また、正孔輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して正孔輸送層を形成してもよい。正孔輸送材料は、電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率良く輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率良く輸送することが望ましい。そのためには適切なイオン化ポテンシャルを持ち、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが要求される。このような条件を満たす物質として、特に限定されるものではないが、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、フラーレン誘導体、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましい。
【0080】
さらにp型Si、p型SiC等の無機化合物も使用できる。また、下記一般式(4)で表される化合物、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(4F−TCNQ)または酸化モリブデンも用いることができる。
【0082】
R
26〜R
31はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、ハロゲン、スルホニル基、カルボニル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基からなる群より選ばれる。
【0083】
中でも、化合物(5)(1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル)が正孔輸送層または正孔注入層に含まれると、より低電圧駆動となるため好ましい。
【0085】
本発明において、発光層は単一層、複数層のどちらでもよく、それぞれ発光材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成され、これはホスト材料とドーパント材料との混合物であっても、ホスト材料単独であっても、いずれでもよい。すなわち、本発明の発光素子では、各発光層において、ホスト材料もしくはドーパント材料のみが発光してもよいし、ホスト材料とドーパント材料がともに発光してもよい。電気エネルギーを効率よく利用し、高色純度の発光を得るという観点からは、発光層はホスト材料とドーパント材料の混合からなることが好ましい。また、ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれでもよい。ドーパント材料は積層されていても、分散されていても、いずれでもよい。ドーパント材料は発光色の制御ができる。ドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、ホスト材料に対して20重量%以下で用いることが好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。ドーピング方法は、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
【0086】
一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物はピリジン環、ピリミジン環またはトリアジン環を有することから電子輸送材料として用いてもよいが、高い発光性能を有することから発光材料として好適に用いられる。また、本発明の発光素子材料は、青緑〜赤色領域(500〜680nm領域)に強い発光を示すことから、青緑〜赤色発光材料として好適に用いることができる。また、ホスト−ドーパント系の発光材料として用いる場合は、一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物はドーパント材料として用いてもよいが、薄膜安定性に優れることから、ホスト材料として好適に用いられる。一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物をホスト材料として用いると、組み合わせて用いられるドーパントの種類に応じ、高発光効率で高色純度な緑色発光や赤色発光を得ることができる。
【0087】
発光材料は、一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物の他に、以前から発光体として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウムを始めとする金属キレート化オキシノイド化合物、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、そして、ポリチオフェン誘導体などが使用できるが特に限定されるものではない。
【0088】
発光材料に含有されるホスト材料は、一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物一種のみに限る必要はなく、本発明の複数のカルバゾール骨格を有する化合物を混合して用いたり、その他のホスト材料の一種類以上を本発明のカルバゾール骨格を有する化合物と混合して用いてもよい。混合しうるホスト材料としては、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリナート)アルミニウム(III)をはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体などが使用できるが特に限定されるものではない。中でも、発光層がりん光発光を行う際に用いられるホストとしては、金属キレート化オキシノイド化合物、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体などが好適に用いられる。
【0089】
ドーパント材料として用いられる三重項発光材料としては、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びレニウム(Re)からなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む金属錯体化合物であることが好ましい。配位子は、フェニルピリジン骨格またはフェニルキノリン骨格などの含窒素芳香族複素環を有することが好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではなく、要求される発光色、素子性能、ホスト化合物との関係から適切な錯体が選ばれる。具体的には、トリス(2−フェニルピリジル)イリジウム錯体、トリス{2−(2−チオフェニル)ピリジル}イリジウム錯体、トリス{2−(2−ベンゾチオフェニル)ピリジル}イリジウム錯体、トリス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウム錯体、トリス(2−フェニルベンゾオキサゾール)イリジウム錯体、トリスベンゾキノリンイリジウム錯体、ビス(2−フェニルピリジル)(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、ビス{2−(2−チオフェニル)ピリジル}イリジウム錯体、ビス{2−(2−ベンゾチオフェニル)ピリジル}(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、ビス(2−フェニルベンゾオキサゾール)(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、ビスベンゾキノリン(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、ビス{2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジル}(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、テトラエチルポルフィリン白金錯体、{トリス(セノイルトリフルオロアセトン)モノ(1,10−フェナントロリン)}ユーロピウム錯体、{トリス(セノイルトリフルオロアセトン)モノ(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)}ユーロピウム錯体、{トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン)モノ(1,10−フェナントロリン)}ユーロピウム錯体、トリスアセチルアセトンテルビウム錯体などが挙げられる。また、特開2009−130141号に記載されているリン光ドーパントも好適に用いられる。これらに限定されるものではないが、高効率発光が得られやすいことから、イリジウム錯体または白金錯体が好ましく用いられる。
【0090】
ホスト材料として用いられる一般式(1)で示されるカルバゾール骨格を有する化合物およびドーパント材料として用いられる上記三重項発光材料は、発光層中に各々一種類のみが含まれていてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。三重項発光材料を二種以上用いる際には、ドーパント材料の総重量がホスト材料に対して20重量%以下であることが好ましい。
【0091】
また、発光層には上記ホスト材料および三重項発光材料の他に、発光層内のキャリヤバランスを調整するためや発光層の層構造を安定化させるための第3成分を更に含んでいてもよい。但し、第3成分としては、上記カルバゾール骨格を有する化合物からなるホスト材料および三重項発光材料からなるドーパント材料との間で相互作用を起こさないような材料を選択する。
【0092】
三重項発光系における好ましいホストおよびドーパントとしては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0095】
本発明において、電子輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送する層である。電子輸送層には、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送することが望まれる。そのため電子輸送層は、電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが要求される。特に膜厚を厚く積層する場合には、低分子量の化合物は結晶化するなどして膜質が劣化しやすいため、安定な膜質を保つ分子量400以上の化合物が好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、電子輸送層が陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たすならば、電子輸送能力がそれ程高くない材料で構成されていても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料で構成されている場合と同等となる。したがって、本発明における電子輸送層には、正孔の移動を効率よく阻止できる正孔阻止層も同義のものとして含まれる。
【0096】
電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体、ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体が挙げられるが、駆動電圧を低減し、高効率発光が得られることから、炭素、水素、窒素、酸素、ケイ素、リンの中から選ばれる元素で構成され、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物を用いることが好ましい。
【0097】
本明細書において電子受容性窒素とは、隣接原子との間に多重結合を形成している窒素原子を表す。窒素原子が高い電子陰性度を有することから、該多重結合は電子受容的な性質を有する。それゆえ、電子受容性窒素を含む芳香族複素環は、高い電子親和性を有する。電子受容性窒素を有する電子輸送材料は、高い電子親和力を有する陰極からの電子を受け取りやすくし、より低電圧駆動が可能となる。また、発光層への電子の供給が多くなり、再結合確率が高くなるので発光効率が向上する。
【0098】
電子受容性窒素を含むヘテロアリール環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、ピリミドピリミジン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環、フェナンスロイミダゾール環などが挙げられる。
【0099】
これらのヘテロアリール環構造を有する化合物としては、例えば、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジンやターピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、キノキサリン誘導体およびナフチリジン誘導体などが好ましい化合物として挙げられる。中でも、トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼンなどのイミダゾール誘導体、1,3−ビス[(4−tert−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなどのオキサジアゾール誘導体、N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなどのトリアゾール誘導体、バソクプロインや1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどのフェナントロリン誘導体、2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなどのベンゾキノリン誘導体、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロールなどのビピリジン誘導体、1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−ターピリジニル))ベンゼンなどのターピリジン誘導体、ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなどのナフチリジン誘導体が、電子輸送能の観点から好ましく用いられる。また、これらの誘導体が、縮合多環芳香族骨格を有していると、ガラス転移温度が向上すると共に、電子移動度も大きくなり発光素子の低電圧化の効果が大きいのでより好ましい。さらに、素子耐久寿命が向上し、合成のし易さ、原料入手が容易であることを考慮すると、縮合多環芳香族骨格はアントラセン骨格、ピレン骨格またはフェナントロリン骨格であることが特に好ましい。上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いても構わない。
【0100】
好ましい電子輸送材料としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0102】
上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いても構わない。また、ドナー性化合物を含有してもよい。ここで、ドナー性化合物とは電子注入障壁の改善により、陰極または電子注入層からの電子輸送層への電子注入を容易にし、さらに電子輸送層の電気伝導性を向上させる化合物である。
【0103】
ドナー性化合物の好ましい例としては、アルカリ金属、アルカリ金属を含有する無機塩、アルカリ金属と有機物との錯体、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属を含有する無機塩またはアルカリ土類金属と有機物との錯体などが挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属の好ましい種類としては、低仕事関数で電子輸送能向上の効果が大きいリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムといったアルカリ金属や、マグネシウム、カルシウム、セリウム、バリウムといったアルカリ土類金属が挙げられる。
【0104】
また、真空中での蒸着が容易で取り扱いに優れることから、金属単体よりも無機塩、あるいは有機物との錯体の状態であることが好ましい。さらに、大気中での取扱を容易にし、添加濃度の制御のし易さの点で、有機物との錯体の状態にあることがより好ましい。無機塩の例としては、LiO、Li
2O等の酸化物、窒化物、LiF、NaF、KF等のフッ化物、Li
2CO
3、Na
2CO
3、K
2CO
3、Rb
2CO
3、Cs
2CO
3等の炭酸塩などが挙げられる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の好ましい例としては、大きな低電圧駆動効果が得られるという観点ではリチウム、セシウムが挙げられる。また、有機物との錯体における有機物の好ましい例としては、キノリノール、ベンゾキノリノール、ピリジルフェノール、フラボノール、ヒドロキシイミダゾピリジン、ヒドロキシベンズアゾール、ヒドロキシトリアゾールなどが挙げられる。中でも、より発光素子の低電圧化の効果が大きいという観点ではアルカリ金属と有機物との錯体が好ましく、さらに合成のしやすさ、熱安定性という観点からリチウムと有機物との錯体がより好ましく、比較的安価で入手できるリチウムキノリノールが特に好ましい。
【0105】
電子輸送層のイオン化ポテンシャルは、特に限定されないが、好ましくは5.6eV以上8.0eV以下であり、より好ましくは6.0eV以上7.5eV以下である。
【0106】
発光素子を構成する上記各層の形成方法は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法など特に限定されないが、通常は、素子特性の点から抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が好ましい。
【0107】
有機層の厚みは、発光物質の抵抗値にもよるので限定することはできないが、1〜1000nmであることが好ましい。発光層、電子輸送層、正孔輸送層の膜厚はそれぞれ、好ましくは1nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上100nm以下である。
【0108】
本発明の発光素子は、電気エネルギーを光に変換できる機能を有する。ここで電気エネルギーとしては主に直流電流が使用されるが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値および電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、できるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるよう選ばれるべきである。
【0109】
本発明の発光素子は、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式で表示するディスプレイとして好適に用いられる。
【0110】
マトリクス方式とは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置され、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法は、線順次駆動方法やアクティブマトリクスのどちらでもよい。線順次駆動はその構造が簡単であるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリクスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0111】
本発明におけるセグメント方式とは、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、このパターンの配置によって決められた領域を発光させる方式である。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。そして、前記マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0112】
本発明の発光素子は、各種機器等のバックライトとしても好ましく用いられる。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が検討されているパソコン用途のバックライトに本発明の発光素子は好ましく用いられ、従来のものより薄型で軽量なバックライトを提供できる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、下記の各実施例にある化合物の番号は上記に記載した化合物の番号を指すものである。
【0114】
合成例1
化合物[48]の合成
4−ヒドロキシカルバゾール4.5g、ジクロロメタン360mlとジイソプロピルアミン3.0gの混合溶液を窒素気流下、0℃に冷やし、無水トリフルオロメタンスルホン酸8.3gを滴下した。この混合溶液を室温で2時間撹拌した後、水50mlを注入し、ジクロロメタン50mlで抽出した。有機層を水50mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、9H−カルバゾール−4−イルトリフルオロメタンスルホナート7.0gを得た。
【0115】
次に、9H−カルバゾール−4−イルトリフルオロメタンスルホナート3.2g、9−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸3.3g、1M炭酸ナトリウム水溶液22.6ml、1,2−ジメトキシエタン51mlとビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド223mgの混合溶液を窒素気流下、4時間還流した。室温に冷却した後、トルエンで抽出した。 有機層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、9−フェニル−9H,9’H−3,4’−ビカルバゾール3.4gを得た。
【0116】
また、2,4,6−トリクロロピリミジン10g、フェニルボロン酸13.3g、2M炭酸ナトリウム水溶液163.5ml、1,2−ジメトキシエタン545mlとビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの混合溶液を窒素気流下、2時間還流した。室温に冷却した後、トルエンで抽出した。 有機層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、2−クロロ−4,6−ジフェニルピリミジン6.46gを得た。
【0117】
次に、9−フェニル−9H,9’H−3,4’−ビカルバゾール1.4g、2−クロロ−4,6−ジフェニルピリミジン1.0g、ナトリウム-t-ブトキシド460mg、脱水トルエン34mlの混合溶液を窒素気流下、室温で攪拌した。この混合溶液にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.47g、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート0.27gを添加した後、還流下で3時間加熱攪拌した。この混合溶液を室温に冷却し、濾過した後、エバポレートした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、淡黄色粉末1.7gを得た。
【0118】
得られた粉末の
1H−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた淡黄色結晶が化合物[48]であることが確認された。
1H−NMR(CDCl
3(d=ppm)):7.02(t,1H),7.30−7.70(m,20H),8.04(s,1H),8.15(d,1H),8.33−8.39(m,5H),8.91(d,1H),8.97(d,1H)。
【0119】
なお、この化合物[48]は、油拡散ポンプを用いて1×10
−3Paの圧力下、約320℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.7%、昇華精製後が99.9%であった。
【0120】
合成例2
化合物[2]の合成
シアヌル酸クロリド12.5gとテトラヒドロフラン12.5gの混合溶液を窒素気流下、0℃に冷やし、攪拌した。この混合溶液にフェニルマグネシウムブロミド(32% in THF)105.6gを1時間半かけてゆっくり滴下した。その際、系内温度は15℃以下を維持した。滴下後、室温で1時間半攪拌して、トルエン80mlを添加して、0℃に冷やした。この混合溶液に12%HClを15分間かけてゆっくり滴下した。その際、系内温度は30℃以下を維持した。その後、水を注入し、トルエンで抽出した。有機層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン8.15gを得た。
【0121】
次に、55%水素化ナトリウム0.29gと脱水DMF31mlの混合溶液を窒素気流下、室温で攪拌した。この混合溶液に9−フェニル−9H,9’H−3,4’−ビカルバゾール2.5gを脱水DMF36mlに溶解させた溶液をゆっくり滴下し、1時間攪拌した。その後、2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン1.8gを脱水DMF18mlに溶解させて、ゆっくり滴下し、さらに12時間攪拌した後、水50mlを注入し、1時間攪拌した後、ろ過した。得られた固体をメタノール150mlで加熱洗浄した後、ろ過した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、テトラヒドラフランとメタノールの混合溶媒で2回再結晶を行い、真空乾燥した後、白色粉末3.2gを得た。
【0122】
得られた粉末の
1H−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた白色結晶が化合物[2]であることが確認された。
1H−NMR(CDCl
3(d=ppm)):7.06(t,1H),7.28−7.73(m,20H),8.15(d,1H),8.37(s,1H),8.78−8.82(m,4H),9.14(d,1H),9.21(d,1H)。
【0123】
なお、この化合物[2]は、油拡散ポンプを用いて1×10
−3Paの圧力下、約320℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.8%、昇華精製後が99.9%であった。
【0124】
合成例3
化合物[13]の合成
3−ブロモカルバゾール1.6g、4−(9−カルバゾリル)フェニルボロン酸2.1g、2M炭酸カリウム水溶液7.2ml、1,2−ジメトキシエタン33mlと酢酸パラジウム29mgとトリス(2−メチルフェニル)ホスフィン100mgの混合溶液を窒素気流下、6時間還流した。室温に冷却した後、トルエンで抽出した。 有機層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、3−(4−(9H−カルバゾル−9−イル)フェニル)−9H−カルバゾール2.0gを得た。
【0125】
次に、55%水素化ナトリウム0.23gと脱水DMF24mlの混合溶液を窒素気流下、室温で攪拌した。この混合溶液に3−(4−(9H−カルバゾル−9−イル)フェニル)−9H−カルバゾール2.0gを脱水DMF74mlに溶解させた溶液をゆっくり滴下し、1時間攪拌した。その後、2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン1.4gを脱水DMF24mlに溶解させて、ゆっくり滴下し、さらに12時間攪拌した後、ろ過した。得られた固体をメタノール150mlで洗浄した後、ろ過した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、白色結晶2.9gを得た。
【0126】
得られた粉末の
1H−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた白色結晶が化合物[13]であることが確認された。
1H−NMR(CDCl
3(d=ppm)):7.43−7.55(m、6H),7.65−7.74(m,10H),7.96−8.04(m,3H),8.18−8.20(m,3H),8.41(m,1H),8.79−8.83(d、4H),9.21−9.31(m,2H)。
【0127】
なお、この化合物[13]は、油拡散ポンプを用いて1×10
−3Paの圧力下、約330℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.8%、昇華精製後が99.9%であった。
【0128】
合成例4
化合物[12]の合成
4−(9−カルバゾリル)フェニルボロン酸の代わりに3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニルボロン酸を用いた以外は合成例3と同様の方法で合成し、白色結晶を得た。
【0129】
得られた粉末の
1H−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた白色結晶が化合物[12]であることが確認された。
1H−NMR(DMSO−d6(d=ppm)):7.32(td、2H),7.43−7.53(m,5H),7.63−7.75(m,8H),7.84(t,1H),8.05−8.11(m,3H),8.28−8.31(d,2H),8.34−8.37(d,1H),8.67−8.71(m、5H),9.07(d,1H),9.14(d、1H)。
【0130】
なお、この化合物[12]は、油拡散ポンプを用いて1×10
−3Paの圧力下、約300℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.8%、昇華精製後が99.9%であった。
【0131】
合成例5
化合物[38]の合成
2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンの代わりに2−(3−クロロフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンを用いた以外は合成例3と同様の方法で合成し、白色結晶を得た。
【0132】
得られた粉末の
1H−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた白色結晶が化合物[38]であることが確認された。
1H−NMR(CDCl
3(d=ppm)):7.32−7.71(m、18H),7.79−7.89(m,3H),7.98(d,2H),8.18(d,2H),8.29(d,1H),8.52(s,1H),8.77−8.80(m,4H),8.95(m、1H),9.04(s,1H)。
【0133】
なお、この化合物[36]は、油拡散ポンプを用いて1×10
−3Paの圧力下、約370℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.6%、昇華精製後が99.9%であった。
【0134】
合成例6
化合物[9]の合成
2−ブロモニトロベンゼン20g、4−クロロフェニルボロン酸17g、リン酸三カリウム45g、テトラブチルアンモニウムブロミド6.9g、酢酸パラジウム480mgとジメチルホルムアミド500mlの混合溶液を窒素気流下、130℃で5時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、水100mlを注入し、トルエン150mlで抽出した。有機層を水100mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、真空乾燥後、2−(4−クロロフェニル)ニトロベンゼン22gを得た。
【0135】
次に、2−(4−クロロフェニル)ニトロベンゼン22g、トリフェニルホスフィン61gとo−ジクロロベンゼン190mlの混合溶液を窒素気流下、6時間還流した。室温に冷却した後、減圧下でo−ジクロロベンゼンを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、真空乾燥後、2−クロロ−9H−カルバゾール17.7gを得た。
【0136】
次に、2−クロロ−9H−カルバゾール17.7g、ヨードベンゼン22g、銅粉20gと炭酸カリウム43g、ジメチルホルムアミド200mlの混合溶液を窒素気流下、140℃で16時間加熱攪拌した。室温に冷却した後、酢酸エチル50mlを加え、セライトろ過した。得られたろ液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてしばらく撹拌した後に、酢酸エチルとヘキサンを用いて抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、真空乾燥後、2−クロロ−9−フェニル−9H−カルバゾール14gを得た。
【0137】
次に、2−クロロ−9−フェニル−9H−カルバゾール14g、ビス(ピナコラート)ジボロン15.4g、酢酸カリウム14.8gとジオキサン100mlとトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.58gと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’4’6’−トリイソプロピルビフェニル961mgの混合溶液を窒素気流下、7時間還流した。室温に冷却した後、トルエンで抽出した。 有機層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、9−フェニル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール16gを得た。
【0138】
次に、3−ブロモカルバゾール4.0g、9−フェニル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール6.6g、2M炭酸カリウム水溶液18ml、1,2−ジメトキシエタン80mlと酢酸パラジウム72mgとトリス(2−メチルフェニル)ホスフィン243mgの混合溶液を窒素気流下、6時間還流した。室温に冷却した後、トルエンで抽出した。 有機層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、9−フェニル−9H,9’H−2,3’−ビカルバゾール5.2gを得た。
【0139】
次に、55%水素化ナトリウム0.24gと脱水DMF24mlの混合溶液を窒素気流下、室温で攪拌した。この混合溶液に9−フェニル−9H,9’H−2,3’−ビカルバゾール2.0gを脱水DMF24mlに溶解させた溶液をゆっくり滴下し、1時間攪拌した。その後、2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン1.4gを脱水DMF24mlに溶解させて、ゆっくり滴下し、さらに12時間攪拌した後、ろ過した。得られた固体をメタノール150mlで洗浄した後、ろ過した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、白色結晶3.0gを得た。
【0140】
得られた粉末の
1H−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた白色結晶が化合物[9]であることが確認された。
1H−NMR(CDCl
3(d=ppm)):7.30−7.36(m、1H),7.43−7.56(m,4H),7.61−7.76(m,13H),7.91(dd,1H),8.14−8.33(m,4H),8.76−8.80(m,4H),9.18−9.23(m,2H)。
【0141】
なお、この化合物[9]は、油拡散ポンプを用いて1×10
−3Paの圧力下、約340℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.8%、昇華精製後が99.9%であった。
【0142】
合成例7
化合物[20]の合成
3−ブロモカルバゾールの代わりに2−ブロモカルバゾールを用いた以外は合成例3と同様の方法で合成し、白色結晶を得た。
【0143】
得られた粉末の
1H−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた白色結晶が化合物[20]であることが確認された。
1H−NMR(CDCl
3(d=ppm)):7.26−7.36(m、2H),7.45−7.84(m,15H),8.08−8.21(m,6H),8.80−8.83(m,4H),9.24−9.27(d,1H),9.76(s、1H)。
【0144】
なお、この化合物[20]は、油拡散ポンプを用いて1×10
−3Paの圧力下、約300℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.7%、昇華精製後が99.9%であった。
【0145】
実施例1
ITO透明導電膜を125nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10
−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入材料として、銅フタロシアニンを10nm、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルを50nm蒸着した。
【0146】
次に、発光材料として、ホスト材料として化合物[13]を、またドーパント材料としてD−1をドープ濃度が10重量%になるように40nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送材料として、下記に示すE−1を20nmの厚さに積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを70nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子を10mA/cm
2で直流駆動したところ、発光効率21.0lm/Wの高効率緑色発光が得られた。この発光素子を10mA/cm
2の直流で連続駆動したところ、3000時間で輝度半減した。
【0147】
【化19】
【0148】
実施例
または参考例2〜6
ホスト材料として表1に記載した材料を用いたこと以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。各実施例の結果は表1に示した。
【0149】
比較例1〜6
ホスト材料として下記式に示すH−1〜H−6を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。各比較例の結果は表1に示した。
【0150】
【化20】
【0151】
【表1】
【0152】
実施例7
ITO透明導電膜を50nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10
−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、正孔注入層としてHI−1を10nm蒸着した。次に、第一正孔輸送層として、HT−1を80nm蒸着した。次に、第二正孔輸送層として、HT−2を10nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料に化合物[13]を、ドーパント材料に化合物D−2を用い、ドーパント材料のドープ濃度が10重量%になるようにして30nmの厚さに蒸着した。次に、有機化合物(E−2)とドナー性化合物(Liq:リチウムキノリノール)を蒸着速度比1:1(=0.05nm/s:0.05nm/s)で混合した層を、電子輸送層として35nmの厚さに積層した。
【0153】
次に、リチウムキノリノールを1nm蒸着した後、マグネシウムと銀の共蒸着膜を蒸着速度比がマグネシウム:銀=10:1(=0.5nm/s:0.05nm/s)で100nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子を10mA/cm
2で直流駆動したところ、発光効率50.0lm/Wの緑色発光が得られた。この発光素子を10mA/cm
2の直流で連続駆動したところ、5000時間で輝度半減した。なお化合物HT−1、HT−2、D−2は以下に示す化合物である。
【0154】
【化21】
【0155】
実施例8〜10
ホスト材料として表2に記載した材料を用いたこと以外は実施例7と同様に発光素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0156】
比較例7〜11
ホスト材料として表2に記載した化合物を用いたこと以外は実施例7と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0157】
実施例11〜14
正孔注入層として、化合物HI−1の代わりに化合物HT−1と化合物HI−2を用い、化合物HT−1に対して化合物HI−2のドープ濃度が3重量%になるようにして10nm蒸着したこと以外は実施例7と同様にして発光素子を作製した。結果を表2に示す。なお、HI−2は以下に示す化合物である。
【0158】
【化22】
【0159】
実施例
または参考例15〜19
ホスト材料に化合物[13]の代わりに化合物[13]と化合物H−7の混合ホスト(化合物[13]と化合物H−7の共蒸着膜を蒸着速度比が1:1で蒸着、さらにドーパントが蒸着される)を用いたこと以外は実施例11〜14と同様にして発光素子を作製した。結果を表2に示す。なお、H−7、HT−3、HT−4は以下に示す化合物である。
【0160】
【化23】
【0161】
実施例20〜23
正孔注入層として、化合物HI−1の代わりに化合物HI−3を用いたこと以外は実施例11〜14と同様にして発光素子を作製した。結果を表2に示す。なお、HI−3は以下に示す化合物である。
【0162】
【化24】
【0163】
実施例
または参考例24〜26
電子輸送層として、化合物E−2とドナー性化合物(Liq:リチウムキノリノール)を混合した層の代わりに表2に記載した材料を用いた以外は実施例11と同様にして発光素子を作製した。結果を表2に示す。なお、E−3〜E−5は以下に示す化合物である。
【0164】
【化25】
【0165】
実施例27
電子輸送層として、化合物E−2とドナー性化合物(Liq:リチウムキノリノール)を混合した層の代わりに化合物E−2と化合物E−1を膜厚比1:1で35nmの厚さに積層して用いた以外は実施例11と同様にして発光素子を作製した。結果を表2に示す。
【0166】
実施例28
電子輸送層として、化合物E−2とドナー性化合物(Liq:リチウムキノリノール)を混合した層の代わりに化合物[15]と化合物E−1を膜厚比1:1で35nmの厚さに積層して用いた以外は実施例11と同様にして発光素子を作製した。結果を表2に示す。
【0167】
参考例29
電子輸送層として、化合物E−2とドナー性化合物(Liq:リチウムキノリノール)を混合した層の代わりに化合物E−4と化合物E−1を膜厚比1:1で35nmの厚さに積層して用いた以外は実施例11と同様にして発光素子を作製した。結果を表2に示す。
【0168】
参考例30〜31
電子輸送層として、化合物E−2とドナー性化合物(Liq:リチウムキノリノール)を混合した層の代わりに化合物E−4と、化合物E−1とドナー性化合物(Li:金属リチウム)を蒸着速度比1:1(=0.05nm/s:0.05nm/s)で混合した層を膜厚比1:1で35nmの厚さに積層して用いた以外は実施例7と同様にして発光素子を作製した。結果を表2に示す。
【0169】
【表2】