特許第6197301号(P6197301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197301
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】水素製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20170911BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20170911BHJP
   B01J 33/00 20060101ALI20170911BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20170911BHJP
   B01D 63/06 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C01B3/38
   C01B3/56 Z
   B01J33/00 G
   B01D53/22
   B01D63/06
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-26894(P2013-26894)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-156362(P2014-156362A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年11月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成24年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構”水素製造・輸送・貯蔵システム等技術開発 水素製造機器要素技術に関する研究開発 水素分離型リフォーマーの高耐久化・低コスト化研究開発”における委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】井関 孝弥
(72)【発明者】
【氏名】久米 高生
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正也
(72)【発明者】
【氏名】高木 保宏
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 英昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−107109(JP,A)
【文献】 特表2006−502070(JP,A)
【文献】 特開2005−044709(JP,A)
【文献】 特開2010−201304(JP,A)
【文献】 特表2003−527279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−3/58
B01D 53/22
B01D 63/06
B01J 33/00
C01B 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の側から他方の側へ水素を選択的に透過させる水素分離体と、
該水素分離体の一方の側に配置された粒状の改質触媒とを有し、
該水素分離体及び改質触媒が装置殻体内に配置されている水素製造装置において、
該改質触媒が通気性ケース内に収容されて触媒収容体とされている水素製造装置であって、
前記水素分離体は外周側から内周側に水素を透過させるように筒形状に形成されており、
前記通気性ケースは、該水素分離体の外周面に沿う内周壁と、該内周壁と同軸状の外周壁と、該内周壁及び外周壁の軸心方向一端側が連なる第1のエンド壁とを有しており、該通気性ケースに改質触媒を収容してなる該触媒収容体が該水素分離体に外嵌されていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
請求項において、前記通気性ケースは、前記内周壁及び外周壁の軸心方向他端側が連なる第2のエンド壁を有することを特徴とする水素製造装置。
【請求項3】
請求項又はにおいて、前記通気性ケースの軸心方向の長さは前記水素分離体の軸心方向長さよりも小さく、複数個の前記触媒収容体が水素分離体の軸心方向に配列されていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項4】
請求項において、隣接する前記触媒収容体同士を係合させる係合部が各通気性ケースに設けられていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項において、前記通気性ケースはメッシュ又は多孔板よりなることを特徴とする水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスを改質触媒により改質し、改質ガスから水素ガスを水素分離体によって選択的に分離することにより水素を製造する水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に供給する水素を製造する装置として、特許文献1,2に、天然ガス等の原料ガスを改質して水素を生成する触媒と、水素のみを透過させる金属製の水素透過膜(水素分離金属層)を有する筒状の水素分離体とを反応器(装置殻体)内に配置した水素製造装置が記載されている。
【0003】
特許文献1の水素製造装置では、金属製の反応管の内部に、外側表面に水素透過膜を有する水素分離体が配置されるとともに、水素分離体と反応管の内壁との間に、ペレット状(ビーズ状)の触媒が充填されている。
【0004】
特許文献2の水素製造装置では、ペレット状の触媒の代わりに、円環形状の触媒担持セラミック多孔質体を筒状水素分離体に外嵌させている。
【0005】
特許文献1,2の水素製造装置では、炭化水素ガス及び水蒸気を含む原料ガスが触媒に接触して、水蒸気改質反応等が生じることにより、水素ガスを含んだ改質ガスが生成する。
【0006】
例えばメタンの水蒸気改質では、下記式(1)及び式(2)の反応式に従って、水素、一酸化炭素、二酸化炭素を含んだ改質ガスが生成する。
CH+HO → CO+3H (改質反応) ・・・(1)
CO+HO → CO+H (シフト反応) ・・・(2)
【0007】
この改質ガスから、水素分離体によって水素を選択的に分離することにより、高純度の水素ガスを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−58823号公報
【特許文献2】WO2006/082933
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水素製造装置には、使用時は高温とし不使用時は低温とする熱サイクルが加えられるので、反応管が膨張と収縮を繰り返す。そのため、上述した特許文献1,2の水素製造装置では、水素分離体が破損し易いという問題があった。
【0010】
即ち、特許文献1の水素製造装置の場合、金属製の反応管(装置殻体)が高温になって膨張すると、ペレット状の触媒はその膨張した空間を満たすように下降するが、反応管が低温になって収縮すると、その下方に詰まった状態の成形触媒は殆ど移動できないので、反応管によって内側に押圧されることになる。その結果、内側に押圧された触媒はセラミックス製の水素分離体を押圧し、この押圧力によって水素分離体が破損することがある。
【0011】
また、特許文献1の水素製造装置では、反応管とモジュールの間に触媒を直に充填するところから、密に触媒を充填することができるが、多数のモジュールで比較した場合に、触媒の充填量(充填密度)が異なり、各モジュールで通気抵抗(圧力損失)が異なることになる。そして、この結果、原料ガスが流れやすいモジュールと流れにくいモジュールが生じ、システム全体としての性能が低下してしまうという課題があった。また、触媒を密に詰める際には、反応管に外力を加える必要があり、モジュールが破損するおそれもある。
【0012】
また、特許文献1,2のいずれの水素製造装置においても、温度の昇降による熱膨張・収縮に伴って触媒と水素分離体とが摩擦摺動し、水素分離体(特に水素分離膜)に破損が生じ易い。
【0013】
特許文献2の触媒は円環形状のセラミック多孔質体よりなるものであるが、このようなセラミック多孔質体は気孔分布の最適化が難しい。また、セラミックスを焼成する際に焼成収縮が生じることから、円環形状体の内径及び外径の寸法公差が小さくなると水素分離体を損傷し易くなるため、寸法公差を大きく、水素分離体とセラミック多孔質体の内周面との間隔の公差も大きくする必要があり、その場合、水素製造効率が下がるおそれがある。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、規定量の粒状触媒が通気性ケース内に均一に充填された触媒収容体を有し、水素製造効率に優れると共に、水素分離体の損傷も防止される水素製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の水素製造装置は、一方の側から他方の側へ水素を選択的に透過させる水素分離体と、該水素分離体の一方の側に配置された粒状の改質触媒とを有し、該水素分離体及び改質触媒が装置殻体内に配置されている水素製造装置において、該改質触媒が通気性ケース内に収容されて触媒収容体とされている水素製造装置であって、前記水素分離体は外周側から内周側に水素を透過させるように筒形状に形成されており、前記通気性ケースは、該水素分離体の外周面に沿う内周壁と、該内周壁と同軸状の外周壁と、該内周壁及び外周壁の軸心方向一端側が連なる第1のエンド壁とを有しており、該通気性ケースに改質触媒を収容してなる該触媒収容体が該水素分離体に外嵌されていることを特徴とする。
【0017】
前記通気性ケースは、前記内周壁及び外周壁の軸心方向他端側が連なる第2のエンド壁を有してもよい。
【0018】
前記通気性ケースの軸心方向の長さは前記水素分離体の軸心方向長さよりも小さく、複数個の前記触媒収容体が水素分離体の軸心方向に配列されていることが好ましい。
【0019】
隣接する前記触媒収容体同士を係合させる係合部が各通気性ケースに設けられてもよい。
【0020】
前記通気性ケースはメッシュ又は多孔板よりなることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水素製造装置では、改質触媒を収容した通気性ケースと水素分離体との間に間隙をあけ、触媒収容体と水素分離体との摩擦摺動を防止し、水素分離体の損傷を防止することができる。
【0022】
本発明の水素製造装置にあっては、粒状改質触媒が通気性ケースに収容されており、規定量の触媒粒子を通気性ケース内に均一に充填することができる。従って、本発明の水素製造装置を複数個並列設置した場合であっても、各水素製造装置に均等にガスが流れるようになり、水素が安定して製造される。また、改質触媒を収容した通気性ケースと水素分離体とからなるモジュールを1つの装置殻体内に複数個並列設置した場合であっても、各モジュールに均等にガスが流れるようになり、水素が安定して製造される。
【0023】
本発明では、改質触媒を通気性ケースに収容して触媒収容体としており、触媒収容体を水素分離体に容易に着脱することができる。装置殻体内に触媒収容体を複数個設置することにより、各触媒収容体の大きさも適切となり、取り扱いが容易となる。
【0024】
本発明の水素製造装置では、触媒の担持量、気孔率などを最適化した改質触媒を別途用意する必要がなく、一般的な粒状改質触媒を使用することができる。
【0025】
本発明において、前記水素分離体は外周側から内周側に水素を透過させるように筒形状に形成されており、前記通気性ケースは、該水素分離体の外周面に沿う内周壁と、該内周壁と同軸状の外周壁と、該内周壁及び外周壁の軸心方向一端側が連なる第1のエンド壁とを有しており、該通気性ケースに改質触媒を収容してなる該触媒収容体が該水素分離体に外嵌されている構成とすることにより、改質反応で生じた水素ガスを効率よく水素分離体によって分離することができる。
【0026】
この場合、通気性ケースの軸心方向長さを水素分離体の軸心方向長さよりも小さくし、複数個の通気性ケースを水素分離体の軸心方向に配列させる構成とすることが好ましい。このように構成すると、通気性ケースの軸心方向長さが比較的短いものとなるので、通気性ケース内に粒状改質触媒を容易に均一に充填することができる。また、通気性ケースの長さが比較的短いところから、触媒収容体が若干変形しても、該触媒収容体を水素分離体に容易に嵌合させることができる。
【0027】
通気性ケースの他端側に第2のエンド壁を設けた場合、触媒収容体を傾けたりしても改質触媒が通気性ケースから流出しないので、触媒収容体の取り扱いが容易となる。
【0028】
触媒収容体同士を係合させる係合部を通気性ケースに設けることにより、触媒収容体の位置ずれが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態に係る水素製造装置の縦断面図である。
図2】水素分離体の先端部の拡大断面図である。
図3】通気性ケースの斜視図である。
図4】通気性ケースの縦段面図である。
図5図4のV−V線断面図である。
図6】別の実施の形態に係る水素製造装置の系統図である。
図7】さらに別の実施の形態に係る水素製造装置の縦断面図である。
図8】(a)図は別形状の通気性ケースの斜視図、(b)図はその縦断面図である。
図9】(a)図はさらに別形状の通気性ケースの斜視図、(b)図はその縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0031】
図1〜5は実施の形態に係る水素製造装置1を示している。図1の通り、この水素製造装置1は、装置殻体(ベッセル)2と、該装置殻体2内に設置された水素分離体3及び触媒収容体4とを有する。装置殻体2は、円筒形であり、一端側(図1の上端側)に原料ガスの流入口5及び水素ガス取出口6が設けられ、他端側にオフガスの流出口7が設けられている。水素ガス取出口6は装置殻体2の天蓋部の軸心部に配置されている。この実施の形態では、原料ガス流入口5及びオフガス流出口7はそれぞれ装置殻体2の側周部に設けられているが、これに限定されない。
【0032】
水素ガス取出口6に対し継手8を介して水素分離体3が接続されている。水素分離体3は、図1の下端側が封じられた円筒形状であり、装置殻体2と同軸状に設置されている。水素分離体3は、図2の通り、ガス透過性のセラミックス多孔質体よりなる本体3aと、該本体3aの外面に形成された3層の多孔質層3b,3c,3dとを有する。3層の多孔質層3b〜3dのうち中間の多孔質層3cの気孔の一部にはPd、Pd合金などの水素透過性金属材料が充填されており、これにより、水素ガスが選択的に水素分離体3の外周側から内周側へ透過するよう構成されている。最外層の多孔質層3dは保護層である。
【0033】
触媒収容体4は、図3〜5に示す通気性ケース10内に粒状の改質触媒15を充填したものである。通気性ケース10は、メッシュ又はパンチングプレート等(この実施の形態ではメッシュ)よりなる通気性を有した内周壁11及び外周壁12を有した二重筒状である。この実施の形態では、内周壁11及び外周壁12の軸心方向の一端側(図3,4の下端側)が第1のエンド壁13に連なっており、このエンド壁13に通気孔14が設けられている。エンド壁13はメッシュ製とされてもよい。
【0034】
内周壁11と外周壁12との間のスペースに粒状の改質触媒15が充填されている。改質触媒15を充填した後、上端部に第2のエンド壁(図3,4では図示略)を装着してもよい。第2のエンド壁としては第1のエンド壁13と同様の構成のものが好適である。なお、第2のエンド壁を設けることにより、触媒収容体4を傾けても改質触媒15が通気性ケース10から流出せず、触媒収容体4の取り扱いが容易となる。
【0035】
改質触媒15は、平均粒径1〜5mm特に1〜3mm程度の略均一粒径の球状であることが好ましい。この粒状改質触媒としては、触媒特性が既知の市販品等を用いることができる。改質触媒15の平均粒径をa(mm)とした場合、内周壁11と外周壁12との間隔bはaの1〜3倍、特に1.5〜2倍程度が好ましい。また、通気性ケース10の軸心方向の長さLは、水素分離体の長さに対して、1/10〜1/2、特に1/5〜1/3程度であることが好ましい。このような条件を満たす場合、改質触媒15を通気性ケース10内に容易に均一に充填することができる。また、Lが比較的小さいので、改質触媒15を充填しても、内周壁11及び外周壁12が中膨れ状に変形することがなく、保形性(形状保持性)が良好である。また、仮に触媒収容体4が若干変形した場合であっても、該触媒収容体4を水素分離体3に容易に嵌合させることができる。
【0036】
なお、内周壁11及び外周壁12のメッシュの目開き及び通気孔14の孔径は改質触媒15の最小粒径の20〜80%特に30〜50%程度が好適である。
【0037】
通気性ケース10内に改質触媒15を充填するに際して、予め秤量しておいた規定量の改質触媒15を充填することにより、各触媒収容体4の重量を均一にすることができる。また、改質触媒15を通気性ケース10に充填している途中でバイブレータや叩打機等によって振動や軽い衝撃を加えることにより、通気性ケース10内に粒状の改質触媒15を均等充填密度となるように充填することができる。
【0038】
規定量の改質触媒15を通気性ケース10内に充填した後、触媒の上側に触媒落下防止のために耐熱性ウール(ガラスウール、ロックウール、スラグウール、アルミナウール等)を詰めてもよく、前述の第2のエンド壁を取り付けてもよい。耐熱性ウールを詰めてから第2のエンド壁を取り付けてもよい。
【0039】
改質触媒15を通気性ケース10内に収容した触媒収容体4が、水素分離体3に外嵌され、図1の通り、装置殻体2内に多段に積み重ねられるようにして配置されている。水素分離体3は、各触媒収容体4の内孔に縦通するようにして設置されている。触媒収容体4の内周面と水素分離体3との間には、0.5〜20mm特に0.5〜2mm程度の間隙を形成することが好ましい。なお、この間隙が小さすぎると、両者が接触するおそれがあり、大きすぎると性能が低下する可能性がある。各触媒収容体4の内径は同一であってもよく、異なってもよい。
【0040】
図示は省略するが、装置殻体2を囲むようにチャンバが設けられ、該チャンバと装置殻体2との間に燃焼ガス等の高温ガスを流通させることにより装置殻体2内を300〜600℃特に500〜550℃程度に加熱可能に構成する。
【0041】
このように構成された水素製造装置1によって水素を製造するには、水素製造装置1を300〜600℃特に500〜550℃程度に昇温させた状態で原料ガスを流入口5から装置殻体2内に導入する。原料ガスが改質触媒15と接触することにより、前記反応式に従って改質反応が進行し、水素ガスを含んだ改質ガスが生成する。生成した水素は、水素分離体3を選択的に透過し、取出口6から取り出される。CO、CO、HO等よりなるオフガスは、流出口7から流出する。
【0042】
図6図1に示す水素製造装置1を複数個並列に設置した水素製造システム図であり、原料ガスライン20により各水素製造装置1に原料ガスが供給され、水素ライン21により各水素製造装置1からの水素が取り出され、オフガスライン22により各水素製造装置1からのオフガスが取り出される。
【0043】
図6では水素製造装置1を個別に設置しているが、図7では複数個の水素分離モジュール24を1個の装置殻体25内に設置している。各モジュール24は、水素分離体3と、該水素分離体3に外嵌された複数個の触媒収容体4とからなる。水素分離体3及びそれを取り巻く触媒収容体4の構成は水素製造装置1の場合と同一である。
【0044】
装置殻体25内には、複数個の円筒状のモジュール収容室26が区画形成されており、各モジュール収容室26にそれぞれモジュール24が設置されている。装置殻体25には原料ガスの流入口27とオフガスの流出口30とが設けられている。
【0045】
この実施の形態では、各モジュール収容室26は上下方向に延設されており、流入口27は下側ヘッダー部28を介して各モジュール収容室26の下部に連通している。各モジュール収容室26の上部は、上側ヘッダー部29を介して流出口30に連通している。
【0046】
なお、図示とは逆に、流入口27を装置殻体25の上側に設置し、流出口30を下側に設置してもよい。
【0047】
各水素分離体3は、装置殻体25の天井部を貫通して上方に延出している。装置殻体25を取り巻くようにチャンバ40が設けられている。装置殻体25とチャンバ40との間のスペースに流入口41から加熱用ガス(燃焼ガス)が導入され、装置殻体25及びその内部を加熱した後、流出口42から排ガスとなって流出する。チャンバ40の天井面には、各モジュール24の上方位置に水素ガスの取出口43が設けられ、該取出口43に継手44を介して水素分離体3の上端が連結されている。
【0048】
この図7の水素製造装置においては、チャンバ40内に燃焼ガスを流通させることにより、各モジュール24を300〜600℃例えば500〜550℃程度に加熱した状態で流入口27から原料ガスが装置殻体25内に導入される。この原料ガスは、下側ヘッダー部28から各モジュール収容室26に分配供給され、触媒収容体4の改質触媒と接触し、水素ガスを含んだ改質ガスが生成する。生成した水素ガスは、水素分離体3を透過し、取出口43から水素取出ライン46を経て取り出される。オフガスは、上側ヘッダー部29を経て流出口30から流出する。
【0049】
このように各触媒収容体4に規定量の改質触媒15が均一な充填密度にて充填されているため、図6,7のように複数個の水素製造装置1又は水素分離モジュール24を並列設置した場合においても、各水素製造装置1又はモジュール24にガスが均等に流れる。そのため、触媒の経時劣化も各水素製造装置1又はモジュール24において同等となる。
【0050】
また、触媒収容体4の内周面と水素分離体3の外周面との間に若干(例えば0.5〜20mm程度)の隙間をあけておくと、触媒収容体4と水素分離体3の外周面とが摩擦摺動することがなく、水素分離体3の水素分離膜の損傷も防止される。
【0051】
本発明では、上下に積み重ねられた触媒収容体4の位置決めを行うために、触媒収容体4同士を係合させる係合部を通気性ケースに設けてもよい。図8,9はかかる係合部が設けられた通気性ケースの一例を示す。
【0052】
図8の通気性ケース10Aは、第1のエンド壁13及び第2のエンド壁16をテーパ形とし、上下に重ねたときに、通気性ケース10A,10Aのテーパ形状部同士が係合するようにしたものである。
【0053】
図9の通気性ケース10Bは、第2のエンド壁16に凸部18を設け、第1のエンド壁13に凹部19を設け、上下に重ねたときに下段側通気性ケース10Bの凸部18が上段側通気性ケース10Bの凹部19に係合するようにしたものである。各通気性ケース10Bの第2のエンド壁16には通気孔17が設けられている。各通気性ケース10Bを積み重ねた場合、上段側の通気性ケース10Bの通気孔14と下段側の通気性ケース10Bの通気孔17とが重なり合って連通することが好ましい。
【0054】
次に触媒、水素分離体、装置殻体等の好適な材料について説明するが、本発明は以下のものになんら限定されない。
【0055】
改質触媒15の触媒としては、ニッケル、ルテニウム、銅、鉄、白金、パラジウム、亜鉛、及びこれらの混合物や合金などが挙げられる。
【0056】
この触媒を担持する担持体としては、多孔質セラミックスが挙げられ、この多孔質セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、安定化ジルコニア、セリア、ドープセリア、ムライト、シリカ、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
前記水素分離体3の本体3a、層3b〜3dを構成する多孔質セラミックスとしては、イットリア安定化ジルコニア、安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、セリア、ドープドセリアおよびこれらの混合物などが挙げられる。
【0058】
水素分離金属層を構成する水素分離金属(水素透過性金属)としては、Pd単体、Pd合金(例えばPdAg合金、PdCu合金、PdAu合金)等が挙げられる。水素脆化の抑制の点からは、Pd単体よりもPdAg合金が望ましい。また、450℃以上の高温で使用される水素製造装置の場合には、PdAg合金が望ましい。
【0059】
なお、本体3aの軸方向端部などに、ガスの透過性の無い緻密部を接合してもよい。例えば、図7の水素分離体3のうち、装置殻体25の天井面よりも上方に延出した部分をこの緻密部で構成することが好ましい。ここで、「ガス透過性の無い」とは、原料ガスや改質ガスの透過を防止できればよく、例えば相対密度70%以上の緻密さが挙げられる。この緻密部を構成する材料としてはセラミックスが挙げられ、このセラミックスとしては、イットリア安定化ジルコニア、安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、セリア、ドープドセリアおよびこれらの混合物などが挙げられる。
【0060】
緻密部を有した水素分離体3を製造するには、例えば、ゴム型に、イットリア安定化ジルコニア造粒粉、次に、造孔材として40〜50体積%程度の有機ビーズを添加したイットリア安定化ジルコニア造粒粉の順番に充填する。緻密部を設けない場合には、ゴム型に有機ビーズ添加イットリア安定化ジルコニア造粒粉のみを充填する。その後、プレス成形法により、円筒有底管形状(試験管形状)に成形して、成形体を作製する。次に、この成形体を、脱脂後、1300〜1500℃程度で焼結することにより、本体3aを作成する。
【0061】
次に、イットリア安定化ジルコニア粉末を有機溶媒中に分散させたスラリーを作製し、ディップコーティング法により、本体3aの多孔質部上に、層3b,3cとなる層を付着させ、乾燥後、1100〜1300℃程度に加熱して焼き付けを行い、層3b,3cを形成する。
【0062】
次に、層3cの表面に、周知のPdの核付け処理を行った後、イットリア安定化ジルコニアスラリーをディップコーティングし、前記と同様に焼き付けることにより、層3dを形成する。次に、無電解めっき法により、多孔質層3c内部のPd核を成長させ、Pd等からなる水素分離金属層を形成する。
【0063】
前記装置殻体2,25や通気性ケース10、チャンバ40を構成する材料としては、例えばSUS316、SUS613L、SUS430のステンレス鋼が挙げられる。
【0064】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、図示の触媒収容体4の積み重ね段数は一例であり、これに限定されない。触媒収容体4は1本の水素分離体3に対し1個だけ外嵌配置されてもよい。また、図示の水素製造装置では、水素分離体3が装置殻体の天井部から吊支される構成となっているが、装置殻体の底面部から立ち上がる構成とされてもよい。本発明では、前記特許文献2のように、触媒収容体4同士の間に原料ガスを撹拌して流れを乱す撹拌手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 水素製造装置
2,25 装置殻体
3 水素分離体
4 触媒収容体
10,10A,10B 通気性ケース
11 内周壁
12 外周壁
13 第1エンド壁
14,17 通気孔
15 改質触媒
16 第2エンド壁
18 凸部
19 凹部
24 水素分離モジュール
40 チャンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9