特許第6197314号(P6197314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6197314電力系統のシミュレーション方法および電力系統シミュレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197314
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】電力系統のシミュレーション方法および電力系統シミュレータ
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20170911BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   G06F17/50 662G
   G06F17/50 666Z
   H02J3/00 170
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-50796(P2013-50796)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-178751(P2014-178751A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮平
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−021281(JP,A)
【文献】 特開2013−114512(JP,A)
【文献】 GEYER, T. et al.,Hybrid emergency voltage control in power systems,European Control Conference (ECC) 2003 [online],2003年,pp. 1893 - 1898,[2016年12月20日検索],インターネット,URL,http://ieeexplore.ieee.org/document/7085242/
【文献】 BECCUTI, A.G. et al.,Optimal Control of the Boost dc-dc Converter,Proceedings of the 44th IEEE Conference on Decision and Control and the European Control Conference 2005,IEEE,2005年12月,pp. 4457 - 4462,[2016年12月21日検索],インターネット,URL,http://ieeexplore.ieee.org/document/1582864/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
H02J 3/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、1つ以上の開閉器を有する電力系統のシミュレーションを実行する方法であって、
前記コンピュータが、
前記電力系統の等価回路を表す回路方程式を、前記開閉器の開閉状態を表す論理変数を用いた混合論理動的システムとして表現し、前記論理変数を含む線形状態方程式および線形不等式に変換するシステム変換ステップと、
前記線形不等式と、前記論理変数の値とに基づいて、前記電力系統の第1の状態量を求める不等式演算ステップと、
前記線形状態方程式と、前記第1の状態量および前記論理変数の値とに基づいて、前記電力系統の第2の状態量を求めるシステム演算ステップと、
実行することを特徴とする電力系統のシミュレーション方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電力系統のシミュレーション方法であって、
前記コンピュータが、
前記第2の状態量の時系列波形を求める波形演算ステップをさらに実行することを特徴とする電力系統のシミュレーション方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電力系統のシミュレーション方法であって、
前記コンピュータが、
前記論理変数を用いて、前記等価回路の各ノードにおける電圧と電流との関係を示す前記回路方程式を生成する回路方程式生成ステップをさらに実行することを特徴とする電力系統のシミュレーション方法。
【請求項4】
1つ以上の開閉器を有する電力系統の状態量を求める電力系統シミュレータであって、
前記電力系統の等価回路を表す回路方程式を、前記開閉器の開閉状態を表す論理変数を用いた混合論理動的システムとして表現することにより得られる、前記論理変数を含む線形不等式と、前記論理変数の値とに基づいて、前記電力系統の第1の状態量を求める不等式演算部と、
前記回路方程式を前記混合論理動的システムとして表現することにより得られる、前記論理変数を含む線形状態方程式と、前記第1の状態量および前記論理変数の値とに基づいて、前記電力系統の第2の状態量を求めるシステム演算部と、
前記第2の状態量の時系列波形を求める波形演算部と、
を有することを特徴とする電力系統シミュレータ。
【請求項5】
請求項4に記載の電力系統シミュレータであって、
前記回路方程式を前記混合論理動的システムとして表現し、前記線形状態方程式および前記線形不等式に変換するシステム変換部をさらに有することを特徴とする電力系統シミュレータ。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電力系統シミュレータであって、
前記論理変数を用いて、前記等価回路の各ノードにおける電圧と電流との関係を示す前記回路方程式を生成する回路方程式生成部をさらに有することを特徴とする電力系統シミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統のシミュレーション方法および電力系統シミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路の解析法として、状態変数法が従来から広く知られている。例えば、特許文献1では、当該状態変数法による回路解析ツールが開示されている。
【0003】
状態変数法では、まず、キルヒホッフの電流則および電圧則から、状態量x=(i,v)として、以下の式(1),(2)を得る。
ここで、M,A,B,C,C’,Dは、回路のコンダクタンス、インダクタンス、キャパシタンス、および電流源からなる行列である。また、式(1),(2)より、以下の状態方程式(3)および出力方程式(4)が得られる。
そして、これらの式を解くことによって、電気回路の状態量を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−21281号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】岩ヶ谷崇、山口哲、「Maple/MapleSim/MapleT.A.に見る数式処理の応用技術」、数式処理 Bulletin of JSSAC、日本数式処理学会、平成24年5月、第18巻、第2号、p.117-125
【非特許文献2】井村順一、「ハイブリッドシステムの制御−II−モデリング」、システム/制御/情報、システム制御情報学会、平成19年7月15日、第51巻、第7号、p.306-312
【非特許文献3】F. D. Torrisi and A. Bemporad,"HYSDEL-A Tool for Generating Computational Hybrid Models for Analysis andSynthesis Problems," IEEE Transactions on Control Systems Technology, Vol.12, No. 2, pp. 235-249, March 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような状態変数法では、各行列の定数が一定であれば、式(3),(4)をそのまま離散化することにより、ステップごとの状態量を容易に求めることができる。
【0007】
しかしながら、電気回路がスイッチや非線形インダクタ、キャパシタなどを含む場合、電流・電圧の動作点が変化することにより各行列の定数が変化するため、その都度逆行列M−1を求め、式(1),(2)から式(3),(4)への変換を改めて行う必要がある。そのため、遮断器などの開閉器を有する電力系統のシミュレーションにこの方法を用いた場合、開閉器の開閉状態が変化する度に逆行列を求めることとなり、シミュレーション時間が長くなる。特に開閉器の台数が多くなるほど、例えばオンラインでのリアルタイムシミュレーションに用いることは困難となる。
【0008】
一方、その都度逆行列を求める代わりに、以下の式(5)のように、電流・電圧の各動作点に対応する行列を事前に求め、記憶装置などに記憶させておくこともできる。
ここで、mは動作点の種類を示すモード数であり、電力系統がn台の開閉器を有している場合、モード数m=2となり、開閉器の台数nに対して指数的に増加する。この場合、事前に求めておく行列の個数やそれらの合計サイズは、モード数m=1(開閉器の台数n=0)の場合に対して2倍となり、特に開閉器の台数nが多くなるほど、計算リソースが爆発的に増加し、実装が困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決する主たる本発明は、コンピュータが、1つ以上の開閉器を有する電力系統のシミュレーションを実行する方法であって、前記コンピュータが、前記電力系統の等価回路を表す回路方程式を、前記開閉器の開閉状態を表す論理変数を用いた混合論理動的システムとして表現し、前記論理変数を含む線形状態方程式および線形不等式に変換するシステム変換ステップと、前記線形不等式と、前記論理変数の値とに基づいて、前記電力系統の第1の状態量を求める不等式演算ステップと、前記線形状態方程式と、前記第1の状態量および前記論理変数の値とに基づいて、前記電力系統の第2の状態量を求めるシステム演算ステップと、を実行することを特徴とする電力系統のシミュレーション方法である。
【0010】
また、前述した課題を解決するその他の主たる本発明は、1つ以上の開閉器を有する電力系統の状態量を求める電力系統シミュレータであって、前記電力系統の等価回路を表す回路方程式を、前記開閉器の開閉状態を表す論理変数を用いた混合論理動的システムとして表現することにより得られる、前記論理変数を含む線形不等式と、前記論理変数の値とに基づいて、前記電力系統の第1の状態量を求める不等式演算部と、前記回路方程式を前記混合論理動的システムとして表現することにより得られる、前記論理変数を含む線形状態方程式と、前記第1の状態量および前記論理変数の値とに基づいて、前記電力系統の第2の状態量を求めるシステム演算部と、前記第2の状態量の時系列波形を求める波形演算部と、を有することを特徴とする電力系統シミュレータである。
【0011】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力系統が有する開閉器の台数によらず状態変数の行列を単一としつつ、シミュレーション時間の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における電力系統シミュレータの構成を示す図である。
図2】プログラムを実行することによって電力系統シミュレータの機能を実現するコンピュータシステムの構成を示す図である。
図3】対象回路10の一例を示す図である。
図4】不等式演算部40およびシステム演算部50の動作を説明するフローチャートである。
図5】従来の電力系統のシミュレーション方法によるシミュレーション結果の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態における電力系統のシミュレーション方法によるシミュレーション結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0015】
===電力系統シミュレータの構成===
以下、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態における電力系統シミュレータの構成について説明する。
【0016】
図1に示されている電力系統シミュレータは、1つ以上の開閉器を有する電力系統をシミュレーション対象とし、回路方程式生成部20、システム変換部30、不等式演算部40、システム演算部50、および波形演算部60を含んで構成されている。なお、シミュレーション対象の電力系統は、開閉器の一例として遮断器などを有する。
【0017】
回路方程式生成部20は、シミュレーション対象とする電力系統の等価回路(以下、対象回路10と称する)を表す回路方程式を生成して、システム変換部30に入力する。また、システム変換部30は、回路方程式を線形状態方程式および線形不等式に変換して、それぞれ不等式演算部40およびシステム演算部50に入力する。さらに、不等式演算部40およびシステム演算部50は、線形不等式を満たすように線形状態方程式を解いて電力系統の状態量を求め、波形演算部60に入力する。そして、波形演算部60は、入力された状態量の時系列波形を求め、ディスプレイなどの出力装置に出力する。
【0018】
図1に示した電力系統シミュレータは、図2に示すようなコンピュータシステム上に構築することができる。図2に示されているコンピュータシステムは、バス104を介して互いに接続された、コンピュータ100、入力装置101、出力装置102、および記憶装置103を含んで構成されている。そして、コンピュータ100にプログラムを実行させることによって電力系統シミュレータの機能を実現することができる。
【0019】
なお、このようなコンピュータシステムによって、図1に示した電力系統シミュレータの各部の機能をすべて実現する必要はない。例えば、回路方程式生成部20やシステム変換部30の工程は、不等式演算部40およびシステム演算部50の工程の前に一度行えばよく、共通のアルゴリズムであらゆる構成の対象回路10に対応することは困難であるため、人による手計算としてもよい。一方、それ以降の工程は、同じ式に基づく反復計算を含むため、図1において破線で囲まれた、不等式演算部40、システム演算部50、および波形演算部60の機能は、コンピュータ100にプログラムを実行させることによって実現するのに適している。
【0020】
===電力系統のシミュレーション方法===
以下、図3および図4を適宜参照して、本実施形態における電力系統シミュレータによる電力系統のシミュレーション方法について説明する。
【0021】
ここで、対象回路10の一例を図3に示す。図3において、Eは、直流電源またはその電圧を示し、Lは、インダクタまたはそのインダクタンスを示し、Rは、抵抗またはその抵抗値を示し、SWは、開閉器を示す。また、V1は、直流電源EとインダクタLとの接続ノードまたはそのノード電圧を示し、V2は、インダクタLと開閉器SWとの接続ノードまたはそのノード電圧を示し、V3は、開閉器SWと抵抗Rとの接続ノードまたはそのノード電圧を示す。さらに、Iは、対象回路10を流れる電流を示す。
【0022】
回路方程式生成部20は、対象回路10の各ノードにおける電圧と電流との関係を示す回路方程式を生成する。
【0023】
図3に示した対象回路10において、直流電源E−ノードV1間、ノードV1−ノードV2間、およびノードV3−グランド間における電圧と電流との関係は、開閉器の開閉状態によらず以下の式(6),(7),(8)のように表される。
ここで、sはラプラス変換子である。なお、当該回路方程式の生成工程は、電気回路のモデリング言語(例えば非特許文献1を参照)を用いることによって自動化することができるため、より複雑な構成の電力系統に対しても適用可能である。
【0024】
一方、ノードV2−ノードV3間においては、開閉器SWが開放状態の場合にI=0となり、開閉器SWが投入状態の場合にV2−V3=0となる。したがって、ノードV2−ノードV3間における電圧と電流との関係は、開閉器SWの開閉状態を表す論理変数(0−1変数)pを用いて、以下の式(9)のように表される。
ここで、論理変数pは、開閉器SWが開放状態の場合にp=0となり、開閉器SWが投入状態の場合にp=1となる。
【0025】
システム変換部30は、回路方程式(6),(7),(8),(9)を、論理変数pを含む1つの線形状態方程式および1つの線形不等式に変換する。
【0026】
まず、式(6),(7),(8)を式(9)に代入して、Iについて整理すると、
となる。また、式(10)を逆ラプラス変換すると、
となる。さらに、式(11)を後退オイラー法で離散化すると、
となる。ここで、kはステップを示し、ΔTはステップ幅を示す。そして、式(12)をi,ik−1について整理すると、
となる。
【0027】
ここで、補助変数zを用いて、
なる変換を式(13)に適用すると、z=i,x=ik−1より、
となり、1つの線形状態方程式(15)および1つの線形不等式(16)が得られる。このようにして、式(14)に示した変換により、対象回路10を表す回路方程式(6),(7),(8),(9)は、論理変数を用いた線形不等式制約付き線形等式モデルに変換され、MLD(Mixed Logical Dynamical:混合論理動的)システムとして表現される(例えば非特許文献2を参照)。
【0028】
また、同様に、回路方程式(6),(7),(8),(9)を電圧V1,V2,V3について整理すると、以下の式(17),(18),(19)が得られる。
そして、式(17),(18),(19)を逆ラプラス変換し、後退オイラー法で離散化したうえで、式(14)に示した変換を適用すると、
となり、出力方程式(20)が得られる。なお、上記の式(9)ないし式(20)に示した、回路方程式から線形不等式制約付き線形等式モデルへの変換工程は、モデル変換ツール(例えば非特許文献3を参照)を用いることによって自動化することができる。
【0029】
不等式演算部40およびシステム演算部50は、論理変数pの値に基づいて、不等式(16)を満たすように状態方程式(15)を解き、電力系統(対象回路10)の状態量を求める。図4は、不等式演算部40およびシステム演算部50の動作を示している。
【0030】
不等式演算部40およびシステム演算部50の処理が開始されると、まず、初期化処理を行い、k=1とし(S1)、例えばオンラインで制御入力uおよび開閉器の開閉状態pを取得する(S2)。
【0031】
次に、取得した開閉器状態pに基づいて、前回のステップk−1における状態量ik−1(k=1の場合には、初期状態量i)に不等式(16)を適用した、電力系統の(第1の)状態量を求める(S3)。また、求めた(第1の)状態量と取得した開閉器状態pとに基づいて状態方程式(15)を解いて、(第2の)状態量を求める(S4)。さらに、出力方程式(20)を解いて、出力v1,v2,v3を求めてもよい(S5)。そして、kがシミュレーション終了ステップKに達するまでの間(S6:NO)、kをインクリメントして(S7)、S2に戻り、次のステップにおける状態量や出力を求める。一方、k≧Kが成立すると(S6:YES)処理を終了する。
【0032】
このようにして、Kステップ分の(第2の)状態量や出力を求めることができる。そして、波形演算部60は、求めたKステップ分の状態量や出力から時系列波形を求め、ディスプレイ(出力装置102)などに表示させる。
【0033】
ここで、式(5)と式(15)とを比較すると、対象回路10について得られた状態方程式(15)においては、対象回路10を流れる電流iが状態量xに相当し、直流電源電圧eが制御入力uに相当する。したがって、状態方程式(15)は、1つのモード(動作点)における状態方程式に対して、開閉器状態(ベクトル)pを成分ごとに乗算したものとなっている。そのため、開閉器の開閉状態が変化しても、その変化に応じた開閉器状態(ベクトル)pを乗算すればよく、逆行列を求める必要がないため、シミュレーション時間の増加を抑制することができる。また、開閉器の台数nによらずモード数m=1となるため、システム行列を単一とすることができる。さらに、図5および図6に示すように、状態方程式(3)による従来のシミュレーション結果の波形と、状態方程式(15)および不等式(16)による本実施形態のシミュレーション結果の波形とは完全に一致する。
【0034】
前述したように、1つ以上の開閉器を有する電力系統のシミュレーション方法において、対象回路10を表す回路方程式(6),(7),(8),(9)を、開閉器SWの開閉状態を表す論理変数pを用いたMLDシステムとして表現して、論理変数pを含む1つの線形状態方程式(15)および1つの線形不等式(16)に変換し、論理変数pの値に基づいて、不等式(16)を満たすように状態方程式(15)を解き、対象回路10の状態量を求めることによって、電力系統が有する開閉器の台数nによらず状態変数の行列を単一としつつ、シミュレーション時間の増加を抑制することができる。
【0035】
また、ステップごとに求めたKステップ分の状態量から時系列波形を求めることによって、その波形をディスプレイなどに表示させることができる。
【0036】
また、論理変数pを用いて、対象回路10の各ノードにおける電圧と電流との関係を示す回路方程式を生成することによって、式(14)に示した変換により、論理変数pの値に応じて場合分けされた回路方程式を、論理変数pを用いた線形不等式制約付き線形等式モデルに変換することができる。
【0037】
また、前述したように、1つ以上の開閉器を有する電力系統をシミュレーション対象とする電力系統シミュレータにおいて、回路方程式を、論理変数pを用いたMLDシステムとして表現することにより得られた線形状態方程式(15)および線形不等式(16)を解いて対象回路10の状態量を求め、その時系列波形を求めることによって、電力系統が有する開閉器の台数によらず状態変数の行列を単一としつつ、シミュレーション時間の増加を抑制することができる。
【0038】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0039】
10 対象回路
20 回路方程式生成部
30 システム変換部
40 不等式演算部
50 システム演算部
60 波形演算部
100 コンピュータ
101 入力装置
102 出力装置
103 記憶装置
104 バス
SW 開閉器
図1
図2
図3
図4
図5
図6