(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カバーガラスとして使用されうる化学強化ガラスに関して、特許文献1及び特許文献2には、特定のガラス組成が開示されているが、表示装置の具体的な構成は開示されていない。
【0008】
タッチセンサーが多面付け形成された大型ガラス基板から個々に裁断する方法については、ケミカルエッチングで裁断する方法が特許文献3に、ダイヤモンドカッターで裁断する方法が特許文献4に開示されている。しかし、特許文献3の方法では、カバーガラス両面からエッチングによって切断するため、タッチセンサーの部分がエッチングされないようにマスキングを施し、エッチング後の洗浄や廃液処理も施さなければならず、その結果、工程の長期化・複雑化につながる。また、特許文献4の方法では、タッチセンサー側の面をダイヤモンドカッターで裁断しているため、ダイヤモンドカッターの切断溝痕が残ってしまう。切断溝痕は、ダイヤモンドカッターのような機械工具とガラスとの接触によって生じるため、ガラスに微細な傷を付けていることと表裏一体である。つまり、ガラスに切断溝痕が残っている状態では、高い端面強度(ガラス端面の強度)は得られない。
【0009】
このように、1枚の大型ガラス基板から複数のタッチパネルを効率良く製造する方法では、化学強化ガラスを後切断するため、ガラス端面の強度は、化学強化の度合いとは関係なく、切断方法又は端面処理方法によって決まってしまう。高い端面強度を得るためには、端面をいわゆる「クリーンカット面」に仕上げる必要がある。クリーンカット面とは、例えば、機械工具によるスクライブを分割することで得られる切断面のうち非スクライブ側の切断面、あるいは、レーザースクライブによる切断面等をいう。
【0010】
ただ、クリーンカット面は、チッピング(欠け)やマイクロクラック(傷)がないため、高強度である反面、鋭利なエッジを有するため、手又は指の切創等が起こりやすく、安全性に問題があった。そのため、端面に対して面取り加工が施されるのが通例であった。すなわち、従来、クリーンカット面による高い端面強度という利点が活かされることはなかった。
【0011】
本発明は、上記の問題点を鑑み、タッチセンサーが形成されたカバーガラスにおいて、安全性が高く、かつ、高い端面強度を有するカバーガラスを備える表示装置、及び、該表示装置の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該表示装置に用いられるタッチパネル、及び、該タッチパネルの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示装置は、表示パネルと、上記表示パネルの前面に取り付けられたタッチパネルとを備える表示装置であって、上記タッチパネルは、上記表示パネルの前面と対向する第1の表面、及び、上記第1の表面と反対側の第2の表面を有するカバーガラスと、上記カバーガラスの上記第1の表面上に形成されたタッチセンサーとを備え、上記カバーガラスは、化学的に強化されたガラスであり、上記カバーガラスの表面圧縮応力が600〜900MPa、圧縮応力層深さが5〜20μmであり、上記カバーガラスは、上記第1の表面に対して略垂直なクリーンカット面、及び、上記第2の表面の端縁に形成された面取り面を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の表示装置は、表示パネルの前面にタッチパネルが取り付けられたものであり、上記タッチパネルは、カバーガラスと、上記カバーガラスの第1の表面(表示パネルの前面と対向する面)に形成されたタッチセンサーとを備えている。そして、本発明の表示装置においては、タッチパネルを構成するカバーガラスに特徴がある。
【0014】
本発明の表示装置では、化学的に強化されたガラスがカバーガラスとして使用されており、カバーガラスの表面圧縮応力が600〜900MPa、圧縮応力層深さが5〜20μmである。
【0015】
上記カバーガラスの表面圧縮応力が600〜900MPaであるため、カバーガラスは強度的に優れている。表面圧縮応力が600MPa未満であると、ガラスの平均強度が低下してしまい、高硬度部材との接触による衝撃や落下による衝撃などにより割れてしまうため、市場での使用に耐えられない。一方、表面圧縮応力が900MPaを超えると、ガラスの切断性が悪化するため、特に薄いガラスでは表面圧縮応力に対して形成される内部引張応力も増加してしまい、クラック導入時にガラスが破壊される恐れがある。
【0016】
上記カバーガラスの圧縮応力層深さが5〜20μmであるため、カバーガラスは耐加傷性及び切断加工性に優れている。圧縮応力層深さが5μm未満であると、化学強化前において発生した「グリフィスフロー」と呼ばれる微小クラックに起因するガラスの破壊を防止することができない。また、圧縮応力層深さが5μm未満であると、加傷性にも劣るため、市場での使用に耐えられない。一方、圧縮応力層深さが20μmを超えると、ガラスをスクライブ線に沿って分割すること、つまりガラスを切断することが容易でなくなる。
【0017】
上記カバーガラスは、第1の表面に対して略垂直なクリーンカット面、及び、第2の表面の端縁に形成された面取り面を有しており、この点が、本発明の表示装置の大きな特徴である。
【0018】
まず、カバーガラスの第1の表面に対して略垂直にクリーンカット面が形成されているため、高い端面強度が得られる。また、指やペン等の入力操作によりカバーガラス面を押すとタッチセンサー側(第1の表面側)のガラス面に引張応力が印加されることになるため、タッチセンサー側の端面強度が高いことは好ましい。
【0019】
また、カバーガラスの第2の表面は、表示装置の最外側にあたり、手又は指等で直接触れて操作する面である。その第2の表面の端縁に面取り加工を施すことにより、手又は指の切創等を起こすことなく、安全に表示装置を使用することができる。
【0020】
上記カバーガラスにおいて、モバイル機器などの最終製品の軽量化やバッテリーなどの装置容量の確保のために、ガラスの板厚はできるだけ薄い方が望ましいが、薄すぎるとガラスがたわむことにより発生する応力が大きくなってしまう。また、板厚は厚すぎると装置重量の増加や表示装置の視認性の低下をまねいてしまう。そのため、本発明の表示装置においては、上記カバーガラスの厚みが0.3〜3mmであることが好ましい。
【0021】
本発明の表示装置において、上記カバーガラスは、ガラス表面側の応力分布パターンAとガラス内部側の応力分布パターンBとの2種類の応力パターンを圧縮応力層の中に有し、該応力パターンA及び該応力パターンBをそれぞれ1次関数で近似する場合において、該応力パターンAの傾きをS
A、該応力パターンBの傾きをS
Bとしたとき、S
A>S
Bの関係を満たし、かつ、光導波路効果を観測原理とする表面応力計を用いて上記カバーガラスの干渉縞を観察し、ガラス表面から1番目の干渉縞と2番目の干渉縞との間隔をr
1、ガラス表面から2番目の干渉縞と3番目の干渉縞との間隔をr
2、ガラス表面から3番目の干渉縞と4番目の干渉縞との間隔をr
3としたとき、r
2/r
1及びr
3/r
2の少なくとも1つが、0.3〜0.7を満たすことが好ましい。
【0022】
一般に、表面圧縮応力の値が高くなればなるほど、圧縮応力層における圧縮応力の積算値との均衡を保つために必要な内部引張応力の値は高くなってしまうと考えられている。
上記カバーガラスが、ガラス表面側の応力分布パターンAとガラス内部側の応力分布パターンBとの2種類の応力パターンを圧縮応力層の中に有し、上述のS
A>S
Bの関係を満たしていると、高い表面圧縮応力の値を有しながらも、圧縮応力層における圧縮応力の積算値を低減させることができる。
【0023】
また、応力パターンの傾きを評価するための指標として、上述の比r
2/r
1及びr
3/r
2を評価し、r
2/r
1及びr
3/r
2の少なくとも1つが0.3〜0.7を満たす場合、ガラス表面側においては、応力が急激に減少し、ガラス内部側に向かうほど、応力が減少する割合が小さくなる。これは、上述した応力パターンの傾きの変化を近似的に表現できている。従って、S
A>S
Bの関係を満たすことが可能となり、圧縮応力層における圧縮応力の積算値を低減させることができる。r
2/r
1の比及びr
3/r
2の比が0.3未満であると、ガラス表面側において、応力が急激に減少しすぎる傾向にあり、カバーガラスを使用中に生じうるマイクロクラックによって強度が低下してしまう懸念が生じる。一方、r
2/r
1の比及びr
3/r
2の比が0.7を超えると、応力パターンの傾きが一定に近くなる。つまり、ガラス表面から内部に向かっての圧縮応力の減少の程度がより直線的な傾向となる。そのため、圧縮応力層における圧縮応力の積算値を低減させる効果が得られにくくなる。
【0024】
本発明の表示装置においては、上記カバーガラスの上記クリーンカット面の算術平均粗さRaが0.07μm以下であり、かつ、最大高さ粗さRzが0.70μm以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の表示装置においては、上記カバーガラスの上記面取り面における取り代が、上記カバーガラスの厚みの3〜35%であることが好ましい。
【0026】
本発明の表示装置の製造方法は、表示パネルと、上記表示パネルの前面に取り付けられたタッチパネルとを備える表示装置の製造方法であって、化学的に強化されたガラス板であって、表面圧縮応力が600〜900MPa、圧縮応力層深さが5〜20μmであるガラス板を準備する工程と、上記ガラス板の第1の表面上の少なくとも第1の領域及び第2の領域に、タッチセンサーをそれぞれ形成する工程と、上記第1の領域及び上記第2の領域が分割され、かつ、上記ガラス板の上記第1の表面に対して略垂直なクリーンカット面が形成されるように上記ガラス板を切断することにより、第1の表面上に上記タッチセンサーが形成されたカバーガラスを少なくとも2枚作製する工程と、上記カバーガラスの上記第1の表面と反対側の第2の表面の端縁に面取り加工を施す工程と、上記カバーガラスの上記第1の表面を、上記表示パネルの前面に対向するように配置する工程とを含むことを特徴とする。
【0027】
上記の方法では、1枚の大型のガラス板に複数のタッチセンサーを形成した後に当該ガラス板を分割するため、複数のタッチパネルを効率良く作製することができる。また、タッチセンサー側の面(第1の表面)に対して略垂直にクリーンカット面を形成するため、タッチセンサー側の端面強度を高くすることができる。このように、本発明の表示装置を効率良く製造することができる。
【0028】
本発明の表示装置の製造方法においては、上記カバーガラスの厚みが0.3〜3mmであることが好ましい。
【0029】
本発明の表示装置の製造方法において、上記カバーガラスは、ガラス表面側の応力分布パターンAとガラス内部側の応力分布パターンBとの2種類の応力パターンを圧縮応力層の中に有し、該応力パターンA及び該応力パターンBをそれぞれ1次関数で近似する場合において、該応力パターンAの傾きをS
A、該応力パターンBの傾きをS
Bとしたとき、S
A>S
Bの関係を満たし、かつ、光導波路効果を観測原理とする表面応力計を用いて上記カバーガラスの干渉縞を観察し、ガラス表面から1番目の干渉縞と2番目の干渉縞との間隔をr
1、ガラス表面から2番目の干渉縞と3番目の干渉縞との間隔をr
2、ガラス表面から3番目の干渉縞と4番目の干渉縞との間隔をr
3としたとき、r
2/r
1及びr
3/r
2の少なくとも1つが、0.3〜0.7を満たすことが好ましい。
【0030】
本発明の表示装置の製造方法においては、上記カバーガラスの上記クリーンカット面の算術平均粗さRaが0.07μm以下であり、かつ、最大高さ粗さRzが0.70μm以下であることが好ましい。
【0031】
本発明の表示装置の製造方法においては、上記カバーガラスの上記面取り面における取り代が、上記カバーガラスの厚みの3〜35%であることが好ましい。
【0032】
本発明のタッチパネルは、第1の表面、及び、上記第1の表面と反対側の第2の表面を有するカバーガラスと、上記カバーガラスの上記第1の表面上に形成されたタッチセンサーとを備えるタッチパネルであって、上記カバーガラスは、化学的に強化されたガラスであり、上記カバーガラスの表面圧縮応力が600〜900MPa、圧縮応力層深さが5〜20μmであり、上記カバーガラスは、上記第1の表面に対して略垂直なクリーンカット面、及び、上記第2の表面の端縁に形成された面取り面を有することを特徴とする。
【0033】
本発明のタッチパネルにおいては、上記カバーガラスの厚みが0.3〜3mmであることが好ましい。
【0034】
本発明のタッチパネルにおいて、上記カバーガラスは、ガラス表面側の応力分布パターンAとガラス内部側の応力分布パターンBとの2種類の応力パターンを圧縮応力層の中に有し、該応力パターンA及び該応力パターンBをそれぞれ1次関数で近似する場合において、該応力パターンAの傾きをS
A、該応力パターンBの傾きをS
Bとしたとき、S
A>S
Bの関係を満たし、かつ、光導波路効果を観測原理とする表面応力計を用いて上記カバーガラスの干渉縞を観察し、ガラス表面から1番目の干渉縞と2番目の干渉縞との間隔をr
1、ガラス表面から2番目の干渉縞と3番目の干渉縞との間隔をr
2、ガラス表面から3番目の干渉縞と4番目の干渉縞との間隔をr
3としたとき、r
2/r
1及びr
3/r
2の少なくとも1つが、0.3〜0.7を満たすことが好ましい。
【0035】
本発明のタッチパネルにおいては、上記カバーガラスの上記クリーンカット面の算術平均粗さRaが0.07μm以下であり、かつ、最大高さ粗さRzが0.70μm以下であることが好ましい。
【0036】
本発明のタッチパネルにおいては、上記カバーガラスの上記面取り面における取り代が、上記カバーガラスの厚みの3〜35%であることが好ましい。
【0037】
本発明のタッチパネルは、本発明の表示装置を構成するタッチパネルと同じ構成を有している。したがって、本発明の表示装置で説明した効果と同様の効果を発揮するため、その詳細な説明を省略する。
【0038】
本発明のタッチパネルの製造方法は、化学的に強化されたガラス板であって、表面圧縮応力が600〜900MPa、圧縮応力層深さが5〜20μmであるガラス板を準備する工程と、上記ガラス板の第1の表面上の少なくとも第1の領域及び第2の領域に、タッチセンサーをそれぞれ形成する工程と、上記第1の領域及び上記第2の領域が分割され、かつ、上記ガラス板の上記第1の表面に対して略垂直なクリーンカット面が形成されるように上記ガラス板を切断することにより、第1の表面上に上記タッチセンサーが形成されたカバーガラスを少なくとも2枚作製する工程と、上記カバーガラスの上記第1の表面と反対側の第2の表面の端縁に面取り加工を施す工程とを含むことを特徴とする。
【0039】
本発明のタッチパネルの製造方法においては、上記カバーガラスの厚みが0.3〜3mmであることが好ましい。
【0040】
本発明のタッチパネルの製造方法において、上記カバーガラスは、ガラス表面側の応力分布パターンAとガラス内部側の応力分布パターンBとの2種類の応力パターンを圧縮応力層の中に有し、該応力パターンA及び該応力パターンBをそれぞれ1次関数で近似する場合において、該応力パターンAの傾きをS
A、該応力パターンBの傾きをS
Bとしたとき、S
A>S
Bの関係を満たし、かつ、光導波路効果を観測原理とする表面応力計を用いて上記カバーガラスの干渉縞を観察し、ガラス表面から1番目の干渉縞と2番目の干渉縞との間隔をr
1、ガラス表面から2番目の干渉縞と3番目の干渉縞との間隔をr
2、ガラス表面から3番目の干渉縞と4番目の干渉縞との間隔をr
3としたとき、r
2/r
1及びr
3/r
2の少なくとも1つが、0.3〜0.7を満たすことが好ましい。
【0041】
本発明のタッチパネルの製造方法においては、上記カバーガラスの上記クリーンカット面の算術平均粗さRaが0.07μm以下であり、かつ、最大高さ粗さRzが0.70μm以下であることが好ましい。
【0042】
本発明のタッチパネルの製造方法においては、上記カバーガラスの上記面取り面における取り代が、上記カバーガラスの厚みの3〜35%であることが好ましい。
【0043】
本発明のタッチパネルの製造方法においては、本発明の表示装置の製造方法と同じ工程によりタッチパネルを製造する。したがって、本発明の表示装置の製造方法で説明した効果と同様の効果を発揮するため、その詳細な説明を省略する。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、タッチセンサーが形成されたカバーガラスにおいて、タッチセンサー側の面における端面強度が高く、かつ、視認側の最外面における安全性が高いカバーガラスを備える表示装置とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0047】
まず、本発明の実施形態に係る表示装置について説明する。なお、以下に説明する表示装置の構成要素である、カバーガラスと、上記カバーガラスの第1の表面上に形成されたタッチセンサーとを備えるタッチパネルも、本発明の実施形態である。
【0048】
図1は、本発明の実施形態に係る表示装置の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す表示装置10は、タッチパネル100と表示パネル200とを備えており、タッチパネル100は、カバーガラス110とタッチセンサー120とを備えている。
【0049】
タッチパネル100は、表示パネル200の前面(視認側の面)に取り付けられている。つまり、タッチパネル100の背面(反視認側の面)は、表示パネル200の前面に対向して配置されている。
【0050】
カバーガラス110は、反視認側の面である第1の表面111と視認側の面である第2の表面112とを有しており、また、第1の表面111に対して略垂直なクリーンカット面113、及び、第2の表面112の端縁に形成された面取り面114を有している。さらに、カバーガラス110の第1の表面111は、表示パネル200の前面に対向して配置されている。カバーガラス110については、後で詳細に説明する。
【0051】
タッチセンサー120は、カバーガラス110の第1の表面111上に形成されており、タッチセンサー120の反視認側の面は、表示パネル200の前面に対向して配置されている。
【0052】
したがって、
図1に示す表示装置10においては、視認側から、カバーガラス110、タッチセンサー120、表示パネル200がこの順で配置されている。カバーガラス110は、視認側の最外側に配置されている。
【0053】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスは、「One Glass Solution」あるいは「カバーガラス一体型」と呼ばれるような、カバーガラスをタッチセンサー形成の基板として用いることにより、カバーガラス1枚でカバー機能と基板機能を担うものである。
【0054】
図2は、本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスの一例を模式的に示す斜視図である。
上述のように、カバーガラス110は、第1の表面111と、第1の表面111と反対側の第2の表面112とを有している。また、カバーガラス110は、第1の表面111に対して略垂直なクリーンカット面113、及び、第2の表面112の端縁に形成された面取り面114を有している。
【0055】
クリーンカット面113は、チッピングやマイクロクラックのない面であり、好ましくは鏡面である。このようなクリーンカット面113は、第2の表面112にメカニカルスクライブを施して折割ることで得ることができ、また、第1の表面111又は第2の表面112側からレーザースクライブによって切断することで得ることもできる。クリーンカット面113は、レーザースクライブによる切断面であることが好ましく、第1の表面111側からのレーザースクライブによる切断面であることがより好ましい。
【0056】
クリーンカット面113は、第1の表面111に対して略垂直である。
なお、本明細書において「略垂直」とは、完全に垂直であるもののみならず、本発明の効果に鑑みて実質的に垂直と同視できるものを含むものである。
【0057】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスにおいては、クリーンカット面が第1の面に対して略垂直である限り、弗酸やバッファード弗酸などからなるエッチング液によってエッチングが施されていてもよい。
【0058】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスにおいて、クリーンカット面(端面)の算術平均粗さRaは、好ましくは0.07μm以下、より好ましくは0.06μm以下、さらに好ましくは0.05μm以下である。また、クリーンカット面(端面)の最大高さ粗さRzは、好ましくは0.70μm以下、より好ましくは0.60μm、さらに好ましくは0.50μm以下である。Raの下限は、小さければ小さい程よいが、特に設定されるものではなく、0.005μmとしてもよい。Rzの下限は、小さければ小さい程よいが、特に設定されるものではなく、0.010μmとしてもよい。なお、Raは、JIS B 0601:2001で定義される算術平均粗さであり、Rzは、JIS B 0601:2001で定義される最大高さ粗さである。
【0059】
なお、本発明の実施形態に係る表示装置において、クリーンカット面は、カバーガラスの第1の表面と連続して形成されていればよく、また、面取り面と連続して形成されている方が好ましい。また、クリーンカット面は、カバーガラスのすべての第1の表面と連続して形成されていることが好ましい。
【0060】
面取り面114は、第2の表面112の端縁に面取り加工を施すことで得ることができる。面取りとは、角部を削って面を作ることであり、その加工方法としては、機械加工によるC面取り及びR面取りの中から1種又は複数を組み合わせた方法から選ばれる。さらに、酸化セリウムのような研磨材等で鏡面状態に仕上げられていることが好ましい。あるいは、弗酸やバッファード弗酸などからなるエッチング液に浸漬させることで面取り加工を施してもよい。またさらに、上記のような機械加工とエッチング液への浸漬などを組み合わせることで面取り加工を施してもよい。
【0061】
図3(a)及び
図3(b)は、本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスの面取り面の形状を模式的に示す拡大断面図である。
図3(a)は、角部の形状を1つの平面で切り落とした形状にする面取りを示しており、このような面取りをC面取りということとする。
図3(b)は、角部の形状を曲面状にする面取りを示しており、このような面取りをR面取りということとする。なお、
図3(a)及び
図3(b)では、両矢印xで示す長さが表面側及び端面側で同じであるが、この長さは表面側及び端面側で異なっていてもよい。
【0062】
本発明の実施形態に係る表示装置においては、手又は指の切創等を起こさず安全性が確保できれば、カバーガラスの面取り面における取り代(面取り範囲)は適宜決めればよい。例えば、面取り面の形状がC面取り又はR面取りである場合、頂部Aからの取り代(
図3(a)及び
図3(b)中、両矢印xで示す長さ)は、カバーガラスの厚みの3〜35%であることが好ましい。なお、面取り面の形状がC面取り又はR面取り以外の場合においても、頂部Aからの取り代は、カバーガラスの厚みの3〜35%であることが好ましい。カバーガラスの厚みに対して取り代が3%より小さいと、スクライブ痕を除去することができない。一方、カバーガラスの厚みに対して取り代が35%より大きいと、カバーガラスの厚みに対して取り代が大きくなりすぎてしまい、外観的に好ましくない。
【0063】
なお、本発明の実施形態に係る表示装置において、面取り面は、カバーガラスの第2の表面のすべての端縁に形成されていることが好ましいが、第2の表面の端縁に面取り面が形成されていない部分があってもよい。
【0064】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスは、化学的に強化されたガラス(化学強化ガラス)である。例えば、ガラス表面層中のナトリウムイオンが、ガラス外部に存在するカリウムイオンとイオン交換されることにより、ガラス表面に圧縮応力層が形成されている。
【0065】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスの表面圧縮応力は、600〜900MPaである。ガラスへの衝撃又はキズ等への抵抗性を考慮すると、表面圧縮応力の下限は、620MPa、さらには650MPaであってもよい。表面圧縮応力の値は高い方が好ましいが、表面圧縮応力の値が高くなることにより内部引張応力が増加することを考慮すると、表面圧縮応力の上限は、850MPa、さらには800MPa、またさらには750MPaであってもよい。
【0066】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスの圧縮応力層深さは、耐加傷性と切断加工性を同時に考慮すると、5〜20μmであり、好ましくは6〜15μmであり、より好ましくは9〜15μmであり、さらに好ましくは10〜13μmである。
【0067】
本明細書において、イオン交換後の表面圧縮応力、及び、圧縮応力層深さとは、それぞれ、光導波路効果を活用する表面応力計を用いて光弾性法により測定した値をいう。なお、表面応力計を用いた測定においては、イオン交換前のガラスのガラス組成に対応した屈折率及び光弾性定数を用いなければならない。
【0068】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスにおいて、モバイル機器などの最終製品の軽量化やバッテリーなどの装置容量の確保のために、ガラスの板厚はできるだけ薄い方が望ましいが、薄すぎるとガラスがたわむことにより発生する応力が大きくなってしまう。また、板厚は厚すぎると装置重量の増加や表示装置の視認性の低下をまねいてしまう。よって、カバーガラスの厚みの上限は、好ましくは3mm、より好ましくは2mmである。また、カバーガラスの厚みの下限は、好ましくは0.3mm、より好ましくは0.4mmである。
【0069】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスの形状は特に限定されないが、板状体であることが好ましい。また、カバーガラスの形状が板状体である場合、平板でも曲げ板でもでもよく、種々の形状を包含する。また、平板状において、矩形や円盤状であってよく、また、部分的な穴あけ加工やコーナー部にR加工等が施された意匠的形状に加工されていてもよい。
【0070】
本発明の実施形態に係る表示装置におけるカバーガラスの表面は、薬剤塗布による表面コーティング、微細加工、又は、フィルム貼付等によって、防指紋性、防眩性、機能が付与された状態であってもよい。また、カバーガラスの表面に、表示パネルの色調に合わせたプリントが施されていてもよいし、部分的な穴あけ加工等が施されていてもよい。
例えば、カバーガラスには、低反射機能やアンチグレア機能を有する膜、指紋付着防止機能を有する膜、コントラストを向上させるための偏光子膜が設けられていてもよい。これらの機能を有する膜は、上記した機能を有するプラスチックフィルム等をカバーガラスに貼り付けして設けてもよいし、塗布や蒸着等の手段により設けてもよい。
カバーガラスの形状やサイズについても、単純な矩形だけでなく、コーナー部が円形等に加工された形状等、表示パネルの意匠的形状に対応した様々な形状やサイズが考えられる。
【0071】
上述のように、本発明の実施形態に係る表示装置におけるカバーガラスは、化学強化ガラスであるが、このような化学強化ガラスは、ガラス表面で、ガラス中に最も多く含まれるアルカリ金属イオンAを、上記アルカリ金属イオンAよりイオン半径の大きいアルカリ金属イオンBに置換するイオン交換により作製することができる。
【0072】
例えば、アルカリ金属イオンAがナトリウムイオン(Na
+イオン)である場合には、アルカリ金属イオンBとして、カリウムイオン(K
+イオン)、ルビジウムイオン(Rb
+イオン)及びセシウムイオン(Cs
+イオン)の少なくとも1つを用いることができる。アルカリ金属イオンAがナトリウムイオンである場合、アルカリ金属イオンBとして、カリウムイオンを用いることが好ましい。
【0073】
また、イオン交換には、少なくともアルカリ金属イオンBを含む硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物塩及びリン酸塩のうちの1種又は2種以上を用いることができる。そして、アルカリ金属イオンAがナトリウムイオンである場合、少なくともカリウムイオンを含む硝酸塩を用いることが好ましい。
【0074】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスにおいて、イオン交換前のガラスは、イオン交換可能であるアルカリ金属イオンを含有していれば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウケイ酸塩ガラスなど、特に限定されないが、ソーダライムガラスであることが好ましく、実質的に質量%で、SiO
2:65〜75%、Na
2O+K
2O:5〜20%、CaO:2〜15%、MgO:0〜10%、Al
2O
3:0〜5%からなることがより好ましい。
【0075】
カバーガラスとして使用され得る化学強化ガラスとして、例えば、特許文献1及び特許文献2には、いわゆるアルミノシリケートガラスが開示されている。化学強化されたアルミノシリケートガラスを後述するレーザースクライブにより切断する場合、レーザースクライブするための初期亀裂を導入しようとしても、ビッカース硬度が高いために初期亀裂を形成することが難しい。初期亀裂を形成することば難しければ、レーザーによって亀裂を進展させることも困難となるため、このようなガラスのスクライブは容易ではない。一方、ソーダライムガラスでは、アルミノシリケートガラス等に比べて低いレーザーパワーでレーザースクライブを行うことができる。
【0076】
本明細書において、「Na
2O+K
2O:5〜20%」とは、ガラス中のNa
2O及びK
2Oの総和の含有量が5〜20質量%であることをいう。
【0077】
SiO
2はガラスの主成分であり、65%未満では強度が低くなる上に、ガラスの化学耐久性を悪化させる。他方、75%を超えるとガラス融液の高温粘度が高くなり、ガラス成形が困難となる。従って、その範囲は、好ましくは65〜75%、より好ましくは68〜73%である。
【0078】
Na
2Oは、化学強化処理する上で不可欠であり、必須成分である。5%未満だとイオン交換が不充分で、化学強化処理後の強度があまり向上せず、他方20%を超えるとガラスの化学耐久性を悪化させ、耐候性が悪くなる。従って、その範囲は、好ましくは5〜20%、より好ましくは5〜18%、さらに好ましくは7〜16%である。一方、K
2Oは、必須成分ではなく、Na
2Oとともにガラス溶解時の融剤として作用し、若干の添加はイオン交換を促進させる補助成分としての作用を有するが、過大に添加するとNa
2Oとの混合アルカリ効果によりナトリウムイオンの移動を抑制してイオン交換がし難くなる。5%を超えるとイオン交換による強度向上がし難くなるため、5%以下の範囲で導入するのが望ましい。Na
2O+K
2Oの範囲としては、好ましくは5〜20%、より好ましくは7〜18%、さらに好ましくは10〜17%である。
【0079】
CaOは、ガラスの化学的耐久性を改善する。また、ガラス溶解時の溶融ガラスの粘度を下げる作用を有し、量産性を向上させるため、2%以上含有するのが望ましい。一方、15%を超えるとナトリウムイオンの移動を抑制してしまう。従って、その範囲は、好ましくは2〜15%、より好ましくは4〜13%、さらに好ましくは5〜11%である。
【0080】
MgOは、必須成分ではないが、CaOと比較してナトリウムイオンの移動を抑制してしまう効果が少なく、CaOをMgOで置換していくのが望ましい。一方で、CaOと比較して、ガラス溶融時の溶融ガラスの粘度を下げる作用も小さく、10%を超えるとガラス粘性が高くなってしまい、量産性を悪化させる。従って、その範囲は、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜8%、さらに好ましくは1〜6%である。
【0081】
Al
2O
3は、必須成分ではないが、強度を高くし、かつイオン交換効率を向上させる成分である。質量%において5%を超えるとガラス融液の高温粘度が高くなる上に、失透傾向が増大するためガラス成形が困難になる。また、イオン交換効率が過大となってしまい、圧縮応力層深さが深くなるため、化学強化後の切断性が悪化してしまう。従って、その範囲は、好ましくは0〜5%、より好ましくは1〜4%、さらに好ましくは1〜3%(3は含まないこととする)である。
【0082】
イオン交換前のガラスは、ソーダライムガラスであり、実質的に上記成分からなることが好ましいが、これにFe
2O
3、TiO
2、CeO
2、SO
3その他の微量成分を合量で1%まで含有してもよい。
【0083】
イオン交換前のガラスの歪点は、好ましくは450〜550℃であり、より好ましくは480〜530℃である。ガラスの歪点が450℃未満であると、化学強化時の耐熱性が不充分であり、一方、550℃を超えると、ガラス溶融温度が高くなりすぎてしまい、ガラス板の生産効率が悪化し、コスト増加をもたらしてしまう。
【0084】
イオン交換前のガラスは、フロート法、ロールアウト法及びダウンドロー法等、一般的なガラス成形方法により成形されるが、これらの中では、フロート法により成形されることが好ましい。
また、イオン交換前のガラスの表面は、上記の成形方法により成形されたままの状態でもよいし、弗酸エッチング等を用いて表面を荒らすことにより、防眩性等の機能性を付与した状態でもよい。
【0085】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスにおいて、化学強化後のガラスのビッカース硬度は、好ましくは5.0〜6.0GPaであり、より好ましくは5.2〜6.0GPaであり、さらに好ましくは5.2〜5.8GPaである。ビッカース硬度が5.0GPa未満であると、加傷性に劣るため、市場での使用に耐えられず、一方、6.0GPaを超えると、切断性が悪化する。
【0086】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスは、ガラス表面側の応力分布パターンAとガラス内部側の応力分布パターンBとの2種類の応力パターンを圧縮応力層の中に有し、該応力パターンA及び該応力パターンBをそれぞれ1次関数で近似する場合において、該応力パターンAの傾きをS
A、該応力パターンBの傾きをS
Bとしたとき、S
A>S
Bの関係を満たし、かつ、光導波路効果を観測原理とする表面応力計を用いて上記カバーガラスの干渉縞を観察し、ガラス表面から1番目の干渉縞と2番目の干渉縞との間隔をr
1、ガラス表面から2番目の干渉縞と3番目の干渉縞との間隔をr
2、ガラス表面から3番目の干渉縞と4番目の干渉縞との間隔をr
3としたとき、r
2/r
1及びr
3/r
2の少なくとも1つが、0.3〜0.7を満たすことが好ましい。
【0087】
上記の場合、少なくともr
2/r
1が0.3〜0.7を満たすことがより好ましく、また、r
2/r
1及びr
3/r
2の両方が0.3〜0.7を満たすことがさらに好ましい。
【0088】
なお、r
3/r
2が0.3〜0.7を満たし、r
2/r
1は0.3〜0.7を満たさない場合も想定されうるが、その場合、最表面における圧縮応力が生産時の徐冷等の影響により若干の緩和傾向にあるためであり、上記のような場合においても、r
3/r
2が0.3〜0.7を満たしているならば、内部引張応力は低減される傾向にある。
【0089】
図4は、応力パターンの傾きと圧縮応力層における圧縮応力の積算値との関係を模式的に示すグラフである。
図4では、好ましいカバーガラス(化学強化ガラス)における応力パターンを1次関数で近似したグラフを実線で示している。
図4では、ガラス表面側の応力分布パターンAとガラス内部側の応力分布パターンBとの2種類の応力パターンを圧縮応力層の中に有しており、応力パターンAの傾きをS
A、応力パターンBの傾きをS
Bとしたとき、S
A>S
Bの関係を満たしている。
一方、
図4では、応力パターンの傾きが一定であるグラフ、すなわち、1種類のみの応力パターンを有するグラフを破線で示している。
図4から明らかなように、表面圧縮応力の値σ及び圧縮応力層の深さdが同じである場合であっても、実線で示す化学強化ガラスにおいては、圧縮応力層における圧縮応力の積算値を低減させることができる。
【0090】
化学強化ガラスでは、圧縮応力層における圧縮応力の積算値と、引張応力層における内部引っ張り応力の積算値とは、互いに均衡が保たれている。
従って、好ましいカバーガラスにおいては、高い表面圧縮応力の値を有しながらも、低い内部引張応力を有していると推測される。
【0091】
なお、本明細書において「応力パターンの傾き」とは、ガラス表面からの深さに対する圧縮応力の傾きの絶対値を意味する。
したがって、大きな傾きを有する応力パターンは急であり、小さな傾きを有する応力パターンは緩やかである。
なお、圧縮応力層における圧縮応力はガラス表面からガラス内部に向かって減少していくため、応力パターンA及び応力パターンBにおいて、傾きの正負は一致する。
【0092】
また、応力パターンの傾きを求める際には、発生した応力パターンの形状に関わらず、ガラス表面側から1次関数で近似した応力パターンをA、ガラス内部側から1次関数で近似した応力パターンをBとして、それぞれの傾きを求めればよい。
【0093】
以下、干渉縞の間隔と応力パターンの傾きとの関係について説明する。
図5(a)〜
図5(c)は、干渉縞の間隔と応力パターンの傾きとの関係を模式的に示すグラフである。
図5(a)〜
図5(c)に示すように、干渉縞の間隔は、応力パターンの傾きに対応していることが知られている。
すなわち、
図5(a)に示すように、干渉縞の間隔が広い場合には、応力パターンの傾きが大きく、一方、
図5(b)に示すように、干渉縞の間隔が狭い場合には、応力パターンの傾きが小さいことを意味する。また、
図5(c)は、
図5(a)及び
図5(b)が組み合わさった応力パターンである。応力パターンを、異なる傾きを有する2つの1次関数で近似した場合において、干渉縞の間隔変化の様子と応力パターンの傾きの変化の様子との対応が確認できる。このように、干渉縞の間隔を観察することによって、応力パターンの傾きに関する情報が得られる。
【0094】
ここで、r
2/r
1が1に近いことは、ガラス表面から2番目の干渉縞と3番目の干渉縞との間隔r
2がガラス表面から1番目の干渉縞と2番目の干渉縞との間隔r
1と同程度であることを意味し、r
2/r
1が1より小さくなるほど、間隔r
2が間隔r
1よりも小さくなることを意味している。r
3/r
2についても同様である。
【0095】
なお、イオン交換は基本的にはFickの拡散法則に従い、拡散法則そのものは一次関数では無いので、厳密には応力パターンは直線ではない。干渉縞の間隔と応力パターンの関係に関して、より厳密には、r
2/r
1及びr
3/r
2の少なくとも1つによって関係付けられる干渉縞幅の数列を用いると、直線を用いる場合よりも近似の精度としては高くなり、また生産管理としても簡便である。
【0096】
以上より、r
2/r
1及びr
3/r
2の少なくとも1つが、0.3〜0.7を満たす場合、ガラス表面側においては、応力が急激に減少し、ガラス内部側に向かうほど、応力が減少する割合が小さくなる。これは、
図4に示したような応力パターンの傾きの変化を近似的に表現できている。従って、S
A>S
Bの関係を満たすことが可能となる。
【0097】
以下、表面応力計を用いて化学強化ガラス板の干渉縞を観察する方法について説明する。
図6は、表面応力計の視野内の干渉縞の一例を模式的に示す図である。
図6の下側はガラス表面側を表しており、
図6の上側はガラス内部側を表している。
【0098】
図6に示すように、ガラス表面から1番目の干渉縞L
1と2番目の干渉縞L
2との間隔r
1、ガラス表面から2番目の干渉縞L
2と3番目の干渉縞L
3との間隔r
2、及び、ガラス表面から3番目の干渉縞L
3と4番目の干渉縞L
4との間隔r
3を計測する。計測した間隔r
1、間隔r
2及び間隔r
3から、r
2/r
1の値及びr
3/r
2の値を算出する。
【0099】
上記の方法により算出したr
2/r
1又はr
3/r
2の値が0.3〜0.7であることが好ましい。r
2/r
1又はr
3/r
2の下限値は、好ましくは0.35であり、より好ましくは0.4である。r
2/r
1又はr
3/r
2の上限値は、好ましくは0.65であり、より好ましくは0.63である。
【0100】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するタッチセンサーは、例えば静電容量方式の検出方式の場合には、透明電極の多層配線構造を有している。静電容量方式の検出方式については、特開2008−80743号公報等で紹介されている。
【0101】
図7(a)及び
図7(b)は、静電容量方式によるタッチパネルにおける位置検出の原理の一例を説明するための図である。ただし、
図7(a)及び
図7(b)には、説明を簡単にするために、一次元での位置を検出する場合が示されている。静電容量方式を用いる場合には、ガラス基板160上にITO(Indium Tin Oxide:スズ又は酸化スズが添加された酸化インジウム)等の透明導電膜170が成膜されたタッチパネル150が用いられる。
【0102】
図7(a)に示すように、タッチパネル150の両端には、電流検出用抵抗rを介して電流源から同位相の交流電圧が印加される。ペンや指等の接触体が接触も近接もしていない場合には、タッチパネル150に電流は流れない。
図7(b)に示すように、導体である接触体180がタッチパネル150に接触したり近接したりすると、接触体180とタッチパネル150との間にキャパシタが形成され、接触体180に微弱な電流が流れる。よって、電流源から電流I
1、I
2が流れる。接触体180の接触位置が異なると電流I
1、I
2の値が異なるので、電流I
1、I
2の値を検出することによって、接触体180が接触したり近接したりした位置を検出することができる。実際には、タッチパネルは、接触体が接触したり近接したりした二次元的な位置を検出することが一般的であるから、タッチパネルにおける4箇所から交流電圧が印加される。
【0103】
なお、検出方式としては、静電容量方式以外に、抵抗検出方式、光学方式、超音波方式等であってもよい。
【0104】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成するタッチパネルは、カバーガラスよりも大きいガラス板に対して化学強化処理を施し、タッチセンサーを形成した後、当該ガラス板を分割することにより作製することが好ましい。この場合、複数のタッチパネルを効率良く作製することができる。ただし、ガラス板を先に切断し、曲げ板状等の意匠的形状に加工した後、化学強化処理を施し、タッチセンサーを形成することによりタッチパネルを作製してもよい。
【0105】
本発明の実施形態に係る表示装置を構成する表示パネルとしては、通常は液晶表示パネルが使用されるが、場合によっては、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイパネル等の他の表示パネルが使用されてもよい。
【0106】
本発明の実施形態に係る表示装置は、カバーガラスと表示パネル等を一体化させるための部材を有していることが好ましい。この部材や表示装置の周縁側に設けられた配線を覆い隠すために、カバーガラスの周縁には、覆い隠すに足る幅を有するマスキング層、好ましくは吸光度が3以上、より好ましくは4以上のマスキング層が設けられることが好ましい。
【0107】
このマスキング層は、熱硬化性合成樹脂と、顔料、染料とを含む調合物を塗布し、乾燥、加熱等することで形成することができる。上記熱硬化合成樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリルシリコン樹脂、アルキッド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。
【0108】
上記顔料としては、酸化鉄、酸化銅、酸化クロム、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、クロム酸鉛、硫酸鉛、モリブデン酸鉛等からなる群より選ばれる1種または2種以上の材料を混合したものを使用することができる。
【0109】
上記染料としてはジオキサジン系、フタロシアニン系、アントラキノン系の有機物等を用いることができる。
【0110】
塗布のためにこの混合物をペースト状にするための媒体としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル等の溶剤を用いることができる。また、硬化反応促進剤として、変性脂肪族ポリアミン樹脂、N−ブタノール等を混合してもよい。
【0111】
上記マスキング層の厚さは、35μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。マスキング層の厚さが35μmよりも大きいと、マスキング層表面とガラス基板表面との境界部の段差が大きくなり、前記したようなフィルムを設けた場合、この段差部分に気泡が残留しやすくなる。
【0112】
以下、本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法について説明する。なお、以下に説明する表示装置の製造方法の一部である、タッチパネルの製造方法も、本発明の実施形態である。
【0113】
図8(a)〜
図8(f)は、本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【0114】
図8(a)に示す工程では、ガラス板310を準備する。
準備するガラス板は、化学的に強化されたガラス板であり、その表面圧縮応力は600〜900MPa、圧縮応力層深さは5〜20μmである。
【0115】
上記ガラス板を作製する場合、その方法は特に限定されないが、アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBを含み、アルカリ金属イオンAのモル量及びアルカリ金属イオンBのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率P(mol%)を有する第1の塩にガラス板を接触させる第1の工程と、上記第1の工程の後、上記比率Pより小さい比率Q(mol%)を有する第2の塩にガラス板を接触させる第2の工程とを含む方法(以下、第1の化学強化方法という)が好ましい。
また、上記ガラス板を作製する方法としては、アルカリ金属イオンAを含む第1の塩にガラス板を接触させる工程であって、上記第1の塩は、アルカリ金属イオンのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率X(mol%)=90〜100mol%を有する第1の工程と、上記第1の工程の後、アルカリ金属イオンBを含む第2の塩にガラス板を接触させる工程であって、上記第2の塩は、アルカリ金属イオンのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率Y(mol%)=0〜10mol%を有する第2の工程と、上記第2の工程の後、アルカリ金属イオンBを含む第3の塩にガラス板を接触させる工程であって、上記第3の塩は、アルカリ金属イオンのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンBのモル量の比率Z(mol%)=98〜100mol%を有する第3の工程とを含む方法(以下、第2の化学強化方法という)も好ましい。
【0116】
化学強化(イオン交換)前のガラス板、及び、化学強化(イオン交換)後のガラス板については、上述した本発明の実施形態に係る表示装置を構成するカバーガラスで説明したガラスと共通の構造及び特性を有するため、その詳細な説明を省略する。
【0117】
まず、第1の化学強化方法について説明する。
第1の化学強化方法では、上記のような第1の塩の構成とすることで、第1の工程中にガラス表面層は、アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンB(好ましくはナトリウムイオン及びカリウムイオン)がともに含まれる状態に改質される。その結果、第2の工程において発生する圧縮応力の緩和現象を妨げる効果がもたらされる。すなわち、この第2の工程におけるイオン交換により発生する表面圧縮応力は、第1の工程を行っているため、わずかに緩和されるだけで残留する。したがって、大きな表面圧縮応力を得ることができる。
【0118】
第1の工程及び第2の工程において、「塩にガラス板を接触させる」とは、ガラス板を塩浴に接触又は浸漬させることをいう。このように、本明細書において「接触」とは、「浸漬」も含む概念とする。第2の方法でも同様である。
【0119】
また、塩の接触形態としては、ペースト状の塩を直接接触させるような形態、水溶液として噴射するような形態、融点以上に加熱した溶融塩に浸漬させるような形態などが可能であるが、これらの中では、溶融塩に浸漬させるのが望ましい。
【0120】
アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBの具体例は、先に述べたとおりであるが、それぞれナトリウムイオン及びカリウムイオンであることが好ましい。
【0121】
また、塩の種類としては、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物塩及びリン酸塩のうちの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
アルカリ金属イオンAを含む塩としては、硝酸ナトリウム溶融塩を用いることが好ましく、アルカリ金属イオンBを含む塩としては、硝酸カリウム溶融塩を用いることが好ましい。したがって、アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBを含む塩としては、硝酸ナトリウム及び硝酸カリウムからなる混合溶融塩を用いることが好ましい。
【0122】
第1の工程後に形成される圧縮応力層深さは、5〜23μmとすることが好ましい。また、7〜20μmであることがより好ましく、10〜18μmであることがさらに好ましい。上記の圧縮応力層の深さとなるように、第1の工程では、比率Pに応じて、第1の塩の温度及び第1の塩に接触させる時間を調整することが好ましい。
【0123】
また、第2の工程においては、第2の工程後に形成される圧縮応力層の深さが5〜20μmとなるように、比率Qに応じて、第2の塩の温度及び第2の塩に接触させる時間を調整することが好ましい。
【0124】
ここで、第1の塩の比率Pが大きすぎると、ガラス板の表面層の組成が改質されにくく、ガラス板の表面に白濁が生じやすくなる傾向もあり、ガラス強度の信頼性向上を妨げてしまう。一方、第1の塩の比率Pが小さすぎると、第1の工程において、ガラス板の表面層の組成の改質がなされすぎてしまう傾向にあり、ガラス中のアルカリ金属イオンAのほとんどがアルカリ金属イオンBとイオン交換されてしまう。そのため、第2の工程においてイオン交換が進まず、所望の表面圧縮応力及び破壊確率1%となる強度を得ることができない。また、比率Pが小さすぎると、第1の工程後に圧縮応力層が深くなってしまう傾向にあり、ガラスの切断性に影響を与える。よって、比率Pは、好ましくは5〜50mol%である。比率Pの下限は、より好ましくは15mol%であり、さらに好ましくは20mol%である。比率Pの上限は、より好ましくは40mol%であり、さらに好ましくは35mol%である。
【0125】
また、第2の塩の比率Qが大きすぎると、第2の工程において、充分な量のアルカリ金属イオンBがガラス板の表面層に導入されず、また、アルカリ金属イオンBの再拡散の駆動力も弱くなってしまう傾向にあり、所望の表面圧縮応力を得ることが難しくなる。そのため、比率Qは、好ましくは0〜10mol%である。比率Qの下限は、より好ましくは2mol%であり、さらに好ましくは1mol%である。このように、第2の塩は、アルカリ金属イオンA(例えばナトリウムイオン)を実質的に含まず、陽イオンとしてアルカリ金属イオンB(例えばカリウムイオン)のみを含んでもよい。
【0126】
なお、第1の塩及び第2の塩の構成をアルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBに限定して説明したが、本発明の目的を損なわない限り、塩と反応を起こさない安定的な金属酸化物、不純物又は他の塩類が存在することを妨げるものではない。例えば、第1の塩又は第2の塩に、銀イオンや銅イオンが含まれていてもよい。
【0127】
また、第1の工程における処理温度(第1の塩の温度)が高すぎると、ガラス板の表面が白濁する可能性が高くなり、ガラス強度の信頼性を向上させることができないだけでなく、圧縮応力層も深くなってしまうことから、ガラス切断性に影響を与えてしまう。また、第1の工程中に発生する圧縮応力の緩和も進行してしまう傾向にある。一方、第1の塩の温度が低すぎると、第1の工程におけるイオン交換が促進されず、所望の圧縮応力層深さを得ることができない。そのため、第1の塩の温度は、好ましくは400〜530℃である。第1の塩の温度の下限は、より好ましくは410℃であり、さらに好ましくは430℃である。第1の塩の温度の上限は、より好ましくは515℃であり、さらに好ましくは500℃であり、特に好ましくは485℃である。
【0128】
また、第2の工程における処理温度(第2の塩の温度)が高すぎると、第2の工程中において、第1の工程で発生した圧縮応力の緩和を招いてしまうだけでなく、圧縮応力層も深くなってしまうことから、ガラス切断性に影響を与えてしまう。一方、第2の塩の温度が低すぎると、第2の工程におけるイオン交換が促進されず、第2の工程中に高い表面圧縮応力を発生させることができないだけでなく、アルカリ金属イオンBの再拡散も起こりにくくなることから、所望の圧縮応力層深さを得ることができない。そのため、第2の塩の温度は、第1の塩の温度以下であることが好ましく、第1の塩の温度よりも低温であることがより好ましい。また、第2の塩の温度は、好ましくは380〜500℃である。第2の塩の温度の下限は、より好ましくは390℃であり、さらに好ましくは400℃であり、特に好ましくは410℃である。第2の塩の温度の上限は、より好ましくは490℃であり、さらに好ましくは480℃であり、特に好ましくは460℃である。
【0129】
また、第1の工程において第1の塩にガラス板を接触させる時間、及び、第2の工程において第2の塩にガラス板を接触させる時間の合計は、好ましくは1〜12時間であり、より好ましくは2〜6時間である。
【0130】
具体的には、第1の塩にガラス板を接触させる時間が長すぎると、第1の工程において発生した圧縮応力が緩和されやすくなる。さらに、圧縮応力層の深さが深くなる傾向がある。これは、ガラスの切断性に影響する。一方、第1の塩にガラス板を接触させる時間が短すぎると、第1の工程においてガラス表面層の改質効果が充分に得られず、第2の工程において応力緩和が起こりやすくなる傾向となってしまう。
よって、第1の工程において第1の塩にガラス板を接触させる時間は、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜6時間、さらに好ましくは1〜4時間である。
【0131】
第2の工程においては、イオン交換処理によって発生する応力の緩和をできる限り妨げるのが望ましいが、応力緩和は塩にガラス板を接触させる時間が長ければ長いほど進行してしまう。また、第2の工程後の圧縮応力層の深さが深くなる傾向があり、これもまたガラスの切断性に影響する。一方、第2の塩にガラス板を接触させる時間が短すぎても、アルカリ金属イオンAとアルカリ金属イオンBとのイオン交換が充分に進まず、所望の圧縮応力を発生させることが難しくなってしまう。
よって、第2の工程において第2の塩にガラス板を接触させる時間は、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは0.5〜6時間、さらに好ましくは0.5〜3時間である。
【0132】
なお、第1の工程の処理温度及び接触時間、並びに、第2の工程の処理温度及び接触時間について上に述べたが、これらは第1の工程及び第2の工程におけるイオン交換量(化学強化前後のガラス板の質量差の絶対値をガラス板の表面積で除した量として定義される)と関係がある。すなわち、第1の工程及び第2の工程における、それぞれのイオン交換量が同程度であるならば、ここに記載した処理温度範囲、接触時間範囲には限定されることなく、自由に変更してもよい。
【0133】
次に、第2の化学強化方法について説明する。
第2の化学強化方法では、第1の工程によって、ガラス板の表面層におけるアルカリ金属イオンAの割合を増加させることができ、後の第2の工程及び第3の工程を経て得られる最終的な化学強化ガラスの表面圧縮応力を高くすることができる。第2の工程において、ガラス板から流出するアルカリ金属イオンAによって第2の塩浴は希釈されていくが、第2の塩浴のアルカリ金属イオンAの割合(比率Y)を0〜10mol%の範囲としている。確かに、第2の塩浴のアルカリ金属イオンAの割合が高くなる、つまり、アルカリ金属イオンBの割合が低くなると、第2の工程後における表面圧縮応力の値は低くなる。しかし、比率Yが0〜10mol%の範囲であれば、アルカリ金属イオンBを多く含む第3の塩浴を用いて第3の工程を行うことにより、最終的に高い表面圧縮応力を有する化学強化ガラスを製造することができる。さらに、第2の工程においてイオン交換の大半が完了しているため、第3の工程においてはガラスからアルカリ金属イオンAが流出しにくい。そのため、第3の工程で用いる第3の塩浴の希釈を防止することができる。従って、第3の塩浴のアルカリ金属イオンBの割合(比率Z)を高い値で維持することができる。
【0134】
このように、第2の化学強化方法では、イオン交換に用いる塩浴を頻繁に交換しなくても、高い表面圧縮応力を有する化学強化ガラスを継続的に製造することができる。したがって、第1の工程〜第3の工程をすべて行うことにより、高い表面圧縮応力の値を有する化学強化ガラスを継続的に製造することができる。
【0135】
アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBの具体例は、先に述べたとおりであるが、それぞれナトリウムイオン及びカリウムイオンであることが好ましい。
また、塩の種類としては、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物塩及びリン酸塩のうちの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。これらの中では、硝酸塩が好ましい。
【0136】
第1の塩において、アルカリ金属イオンのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率X(mol%)は、90〜100mol%であり、好ましくは95〜100mol%であり、より好ましくは98〜100mol%である。第1の塩の比率Xが100mol%であること、つまり、第1の塩が他のアルカリ金属イオンを実質的に含まず、陽イオンとしてアルカリ金属イオンA(例えば、ナトリウムイオン)のみを含んでいることが好ましい。
【0137】
第1の塩の比率Xが小さすぎると、ガラス板の表面層におけるアルカリ金属イオンAの割合を増加させる効果が得られにくくなり、第2の工程及び第3の工程を行っても所望の表面圧縮応力を有する化学強化ガラスを製造することができない。
【0138】
第1の工程における塩の温度(第1の塩の温度)は、375〜520℃であることが好ましい。第1の塩の温度の下限は、より好ましくは385℃であり、さらに好ましくは400℃である。第1の塩の温度の上限は、より好ましくは510℃であり、さらに好ましくは500℃である。
第1の塩の温度が高すぎると、ガラス表面が白濁する可能性が高くなってしまう。一方、第1の塩の温度が低すぎると、第1の工程におけるガラス表面改質の効果が充分に得られない。
【0139】
第1の工程において第1の塩にガラス板を接触させる時間は、好ましくは0.5〜10時間であり、より好ましくは1〜7時間である。第1の塩にガラス板を接触させる時間が長すぎると、化学強化ガラスを製造するために必要な時間が長くなりすぎてしまう。一方、第1の塩にガラス板を接触させる時間が短すぎると、第1の工程におけるガラス表面層の改質効果が充分に得られない。
【0140】
第2の工程において、硝酸塩と水酸化物塩の混合物を用いる場合、硝酸塩のみの場合より、第2の工程により発生する圧縮応力を高めることができる。ただし、第2工程のみでは、大気中に保管した場合、ガラス板の表面に白濁が生じやすくなる。しかしながら、第2の工程後に、後述する第3の工程を行うことにより、白濁の発生を防ぎ、かつ、高い表面応力を得ることができる。硝酸塩に混合する水酸化物塩は、硝酸塩100mol%に対して、好ましくは0〜1500ppmであり、より好ましくは0〜1000ppmである。
【0141】
第2の塩において、アルカリ金属イオンのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率Y(mol%)は、0〜10mol%であり、好ましくは0〜5mol%であり、より好ましくは0〜1mol%である。第2の塩の比率Yは0mol%であることが好ましく、第2の塩がアルカリ金属イオンAを実質的に含まず、陽イオンとしてアルカリ金属イオンB(例えば、カリウムイオン)のみを含んでいることがより好ましい。
【0142】
第2の塩の比率Yが10mol%より大きいと、第2の工程において充分な量のアルカリ金属イオンBがガラス表面層に導入されず、後の第3の工程を行っても所望の表面圧縮応力を有する化学強化ガラスを製造することができない。
【0143】
なお、第2の塩は、アルカリ金属イオンBのみを含む未使用の塩であることが好ましいが、アルカリ金属イオンAによって希釈された既使用の塩であってもよい。
【0144】
第2の工程では、第2の工程後に形成される圧縮応力層の深さが3〜25μm(より好ましくは5〜20μm、さらに好ましくは5〜18μm)になるように、第2の塩の比率Yに応じて処理温度(第2の塩の温度)を調整することが好ましい。
【0145】
第2の工程における処理温度(第2の塩の温度)が高すぎると、ガラス表面が白濁する可能性が高くなり、さらにまた、圧縮応力層も深くなってしまうことから、ガラス切断性に影響を与えてしまう。一方、第2の塩の温度が低すぎると、第2の工程におけるイオン交換が促進されず、所望の圧縮応力層の深さを得ることができない。
そのため、第2の塩の温度は、380〜500℃であることが好ましい。第2の塩の温度の下限は、より好ましくは390℃であり、さらに好ましくは400℃である。第2の塩の温度の上限は、より好ましくは490℃であり、さらに好ましくは480℃である。
【0146】
第2の工程において第2の塩にガラス板を接触させる時間は、好ましくは1〜6時間であり、より好ましくは1〜4時間である。第2の塩にガラス板を接触させる時間が長すぎると、第2の工程において発生した圧縮応力が緩和されやすくなる。さらに、圧縮応力層の深さが深くなる傾向がある。これは、ガラスの切断性に影響する。一方、第2の塩にガラス板を接触させる時間が短すぎると、第2の工程におけるイオン交換が促進されず、所望の圧縮応力層の深さを得ることができない。
【0147】
第3の塩において、アルカリ金属イオンのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンBのモル量の比率Z(mol%)は、98〜100mol%であり、好ましくは99〜100mol%であり、より好ましくは99.3〜100mol%である。第3の塩の比率Zが100mol%であること、つまり、第3の塩が他のアルカリ金属イオンを実質的に含まず、陽イオンとしてアルカリ金属イオンB(例えば、カリウムイオン)のみを含んでいることが好ましい。
【0148】
第3の塩の比率Zが小さすぎると、第3の工程において充分な量のアルカリ金属イオンBがガラス表面層に導入されず、所望の表面圧縮応力を有する化学強化ガラスを製造することができない。
【0149】
なお、第3の塩は、アルカリ金属イオンBのみを含む未使用の塩であることが好ましいが、アルカリ金属イオンA等によって希釈された既使用の塩であってもよい。
【0150】
第3の工程では、第3の工程後に形成される圧縮応力層の深さが5〜25μm(より好ましくは7〜20μm、さらに好ましくは8〜18μm)になるように、第3の塩の比率Zに応じて処理温度(第3の塩の温度)を調整することが好ましい。
【0151】
第3の工程における処理温度(第3の塩の温度)が高すぎると、第3の工程において、第2の工程で発生した圧縮応力の緩和を招いてしまうだけでなく、圧縮応力層も深くなってしまうことから、ガラス切断性に影響を与えてしまう。一方、第3の塩の温度が低すぎると、第3の工程におけるイオン交換が促進されず、第3の工程中に高い表面圧縮応力を発生させることができないだけでなく、所望の圧縮応力層の深さを得ることができない。
そのため、第3の塩の温度は、380〜500℃であることが好ましい。第3の塩の温度の下限は、より好ましくは390℃であり、さらに好ましくは400℃である。第3の塩の温度の上限は、より好ましくは480℃であり、さらに好ましくは470℃である。
【0152】
第3の工程において第3の塩にガラス板を接触させる時間は、好ましくは0.5〜4時間であり、より好ましくは0.5〜3時間である。第3の工程においては、イオン交換処理によって発生する応力の緩和をできる限り妨げるのが望ましいが、応力緩和は塩にガラス板を接触させる時間が長ければ長いほど進行してしまう。また、第3の工程後の圧縮応力層の深さが深くなる傾向があり、これもまたガラスの切断性に影響する。一方、第3の塩にガラス板を接触させる時間が短すぎても、アルカリ金属イオンAとアルカリ金属イオンBとのイオン交換が充分に進まず、所望の圧縮応力を発生させることが難しくなってしまう。
【0153】
なお、第1の工程の処理温度及び接触時間、第2の工程の処理温度及び接触時間、並びに、第3の工程の処理温度及び接触時間について上に述べたが、これらはイオン交換量(化学強化前後のガラス板の質量差の絶対値をガラス板の表面積で除した量として定義される)と関係がある。すなわち、各工程におけるそれぞれのイオン交換量が同程度であるならば、ここに記載した処理温度範囲、接触時間範囲には限定されることなく、自由に変更してもよい。
【0154】
また、第1の塩、第2の塩及び第3の塩の構成をアルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBに限定して説明したが、本発明の目的を損なわない限り、塩と反応を起こさない安定的な金属酸化物、不純物又は他の塩類が存在することを妨げるものではない。例えば、第1の塩、第2の塩又は第3の塩に、銀イオンや銅イオンが含まれていてもよい。
【0155】
図8(b)に示す工程では、準備したガラス板310の第1の表面311上に、複数のタッチセンサー120を形成する。
本発明の実施形態においては、ガラス板の第1の表面を複数の領域に分割し、それぞれの領域にタッチセンサーを形成する。そして、後述するように、それぞれの領域ごとにガラス板を切断することにより、複数のタッチパネル(タッチセンサーが形成されたカバーガラス)を作製することができる。
図8(b)では、2つの領域にタッチセンサー120を形成する例を示しているが、最初に準備するガラス板の大きさや作製するタッチパネルの大きさに応じて、タッチセンサーを形成する数量を適宜変更してよいことは言うまでもない。
【0156】
タッチセンサーを形成する方法としては特に限定されず、特開2012−88946号公報等で紹介されている公知の方法を用いることができる。例えば、特開2012−88946号公報には、静電容量方式の検出方式の場合には、透明電極の多層配線構造を有するように、所定の電極配線からなる構造を、フォトリソグラフィー法により形成する方法が開示されている。
【0157】
図8(c)及び
図8(d)に示す工程では、タッチセンサー120を形成した領域がそれぞれ分割され、かつ、ガラス板310の第1の表面311に対して略垂直なクリーンカット面が形成されるように、タッチセンサー120が形成されたガラス板310を切断する。
【0158】
具体的には、
図8(c)に示すように、タッチセンサー120が形成されたガラス板310の第1の表面311上に、レーザースクライブによりスクライブ線315を形成する。
図8(c)では、タッチセンサー120が形成されている2つの領域を分けるようにスクライブ線315を形成しているが、作製するタッチパネルの数量に応じてスクライブ線を形成すればよい。なお、レーザースクライブについては、後で詳細に説明する。
次いで、スクライブ線315に沿ってガラス板310を分割することにより、
図8(d)に示すように、2枚のガラス板310’とする。ガラス板を分割する方法としては、後述するように、機械的に分割する方法でもよいし、スクライブ線に重ねてレーザー光を照射することにより分割する方法でもよい。
【0159】
その後、
図8(e)に示すように、カバーガラス110の第2の表面112の端縁に面取り加工を施すことにより、カバーガラス110の第1の表面111上にタッチセンサー120が形成されたタッチパネル100を作製することができる。
タッチパネル100を構成するカバーガラス110は、第1の表面111に対して略垂直なクリーンカット面113と、第2の表面112の端縁に形成された面取り面114とを有している。
面取り加工の方法は、先に説明したとおりであるので、その詳細な説明を省略する。
【0160】
図8(f)に示す工程では、カバーガラス110の第1の表面111を、表示パネル200の前面に対向するように配置する。これにより、表示パネル200と、表示パネル200の前面に取り付けられたタッチパネル100とを備える表示装置10が完成する。
【0161】
図8(a)〜
図8(f)に示す方法では、タッチセンサー120を形成するガラス板310の面と、スクライブ線315を形成するガラス板310の面は、ともに第1の表面311である。これにより、ロール等の搬送手段を用いてガラス板310を搬送する際、ロール等との接触によってタッチセンサー120が損傷することを防止することができる。
【0162】
本発明の実施形態においては、第1の領域及び第2の領域が分割され、かつ、ガラス板の第1の表面に対して略垂直なクリーンカット面が形成される限り、ガラス板を切断する方法は特に限定されない。ガラス板を切断する方法としては、
図8(c)及び
図8(d)で示したように、ガラス板の第1の表面側からレーザースクライブにより切断することが好ましいが、ガラス板の第2の表面側からレーザースクライブにより切断してもよいし、ガラス板の第2の表面側からメカニカルスクライブにより切断してもよい。
【0163】
以下、レーザースクライブについて説明する。
レーザースクライブでは、炭酸ガスレーザー(CO
2レーザー)等からのレーザー光がガラス表面層にて吸収され、レーザー光を吸収した部位が発熱し、当該部位に局所的に圧縮応力が生じる。この圧縮応力が生じた状態で、冷却水等を用いて当該部位を冷却すると、反対に引張応力が発生し、ガラス表面層に亀裂が生じる、当該亀裂を2次元的、好ましくは直線的に発生されることによりスクライブ線が形成される。
なお、CO
2レーザーの他、COレーザー、YAGレーザー等も使用可能である。
【0164】
図9(a)〜
図9(e)は、レーザースクライブによる加工原理の一例を説明するための図である。
まず、
図9(a)に示すように、ダイヤモンドカッター等を用いて、ガラス板310の端面にスクライブを開始するための初期亀裂314を生成する。
次に、
図9(b)に示すように、ガラス板310の端面から分断予定線に沿ってレーザー光320を照射し、ガラス板310の表面を加熱する。
そして、
図9(c)に示すように、加熱直後に、レーザー光の後端付近の領域330をウォータージェット等で急冷する。
すると、
図9(d)に示すように、ガラス板310の端面に設けた初期亀裂314からガラス板310の表面層において亀裂が進展する。その結果、ガラス板310の表面にスクライブ線315が形成される。
その後、スクライブ線315に沿ってガラス板を分割することにより、
図9(e)に示すように、切断面がクリーンカット面313となるガラス板310’を作製することができる。
ガラス板を分割する方法としては特に限定されず、機械的に分割する方法でもよいし、スクライブ線に重ねてレーザー光を照射することにより分割する方法でもよい。
【実施例】
【0165】
以下、本発明の実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0166】
以下の実施例では、表示装置及びタッチパネルを構成するカバーガラスを作製し、その特性を評価した。
【0167】
(実施例1)
化学強化(イオン交換)前のガラス板として、ソーダライムガラス(質量%でSiO
2:71.3%、Na
2O:13.0%、K
2O:0.85%、CaO:9.0%、MgO:3.6%、Al
2O
3:2.0%、Fe
2O
3:0.15%、SO
3:0.1%)からなり、厚みが0.7mm、短辺400mm×長辺500mmであるガラス板を準備した。
【0168】
準備したガラス板に対して、475℃に保持された硝酸カリウム75mol%及び硝酸ナトリウム25mol%からなる混合溶融塩(第1の塩、比率P:25mol%)浴中に2時間浸漬する第1の工程を行った後、435℃に保持された実質的に硝酸カリウム100mol%からなる溶融塩(第2の塩、比率Q:0mol%)浴中に1時間浸漬する第2の工程を行うことにより、化学強化処理を施した。
【0169】
化学強化後のガラス板について、表面応力計(東芝硝子製(現、折原製作所製)、FSM−60V)を用いて、干渉縞の本数とその間隔を観察し、表面圧縮応力、及び、ガラス板の表面に形成された圧縮応力層深さをそれぞれ測定した。なお、表面応力計による測定において、上記ソーダライムガラスのガラス組成の屈折率として1.52、同光弾性定数として26.8((nm/cm)/MPa)を用いた。なお、光源としては、ナトリウムランプを用いた。
その結果、表面圧縮応力は675MPa、圧縮応力層深さは12μmであった。
【0170】
同時に、ガラス表面から1番目の干渉縞L
1と2番目の干渉縞L
2との間隔r
1、ガラス表面から2番目の干渉縞L
2と3番目の干渉縞L
3との間隔r
2、及び、ガラス表面から3番目の干渉縞L
3と4番目の干渉縞L
4との間隔r
3を計測した。
そして、計測した間隔r
1、間隔r
2及び間隔r
3から、r
2/r
1の値及びr
3/r
2の値を算出したところ、r
2/r
1=0.61、r
3/r
2=0.65であった。
【0171】
また、化学強化後のガラス板について、4点曲げ試験による平均破壊応力を以下の方法で測定した。この値は、表示装置及びタッチパネルを構成するカバーガラスとして用いた場合におけるタッチセンサー側(第1の表面側)の端面強度の指標として用いることができる。
【0172】
化学強化後のガラス板を、メカニカルスクライブ装置(三星ダイヤモンド工業社製、MS500)を用いて120mm×60mmの大きさにスクライブし、折割によってカバーガラスとなる個片を得た。得られたカバーガラスにおいて、スクライブを入れた面と反対側の面を第1の面とした場合、第1の面に対して略垂直なクリーンカット面が形成されていた。
【0173】
切断した上記ガラス板のクリーンカット面を、非接触三次元測定装置(三鷹光器社製、NH−3N)を用いて、JIS B 0601:2001に準拠して測定し、端面の算術平均粗さRa及び端面の最大高さ粗さRzを測定した。このときのRaは0.013μm、Rzは0.18μmであった。
【0174】
カバーガラスの第1の面に引張応力が発生するようにカバーガラスを支持して4点曲げ試験を行い、平均破壊応力を測定した。
なお、破壊始発点が面内に存在した場合はデータを除外し、エッジ部分に破壊始発点が存在しているもののみを有効サンプルとした、このときの有効サンプル数は50であり、平均破壊応力は563MPaであった。
【0175】
(実施例2)
ガラス板の厚みを0.55mmに変更した以外は、実施例1と同様のガラス板を準備した。化学強化前のガラス板を、レーザースクライブ装置(レミ社製、SC−7392S)を用いて120mm×60mmの大きさにスクライブし、折割によってカバーガラスとなる個片を得た。得られたカバーガラスに対して、実施例1と同様に化学強化処理を施したところ、表面圧縮応力が740MPa、圧縮応力層深さが12μm、r
2/r
1=0.67、r
3/r
2=0.57のカバーガラスを得た。得られたカバーガラスに対して、実施例1と同様に、端面の算術平均粗さRa及び端面の最大高さ粗さRzを測定したところ、Raは0.031μm、Rzは0.42μmであった。また、実施例1と同様に、4点曲げ試験によってレーザースクライブ側の平均破壊応力を測定したところ、有効サンプル数は8であり、平均破壊応力は757MPaであった。
【0176】
(比較例1)
実施例1と同様のガラス板を準備した。化学強化前のガラス板を、実施例1と同様にメカニカルスクライブ装置を用いて120mm×60mmの大きさにスクライブし、折割によってカバーガラスとなる個片を得た。得られたカバーガラスに化学強化処理を施さない状態で、実施例1と同様に、端面の算術平均粗さRa及び端面の最大高さ粗さRzを測定したところ、Raは0.013μm、Rzは0.14μmであった。また、実施例1と同様に、4点曲げ試験によってクリーンカット面側の平均破壊応力を測定したところ、有効サンプル数は50であり、平均破壊応力は234MPaであった。
【0177】
(比較例2)
ガラス板の厚みを1.1mmに変更した以外は、実施例1と同様のガラス板を準備した。化学強化前のガラス板を、実施例1と同様にメカニカルスクライブ装置を用いて120mm×60mmの大きさにスクライブし、折割によってカバーガラスとなる個片を得た。得られたカバーガラスに対して、
図3(a)に示した頂部Aより0.2mmの取り代(ガラス板の厚みの18%)でC面取りを施した後、実施例1と同様に化学強化処理を施したところ、表面圧縮応力が750MPa、圧縮応力層深さが13μm、r
2/r
1=0.68、r
3/r
2=0.63のカバーガラスを得た。得られたカバーガラスに対して、実施例1と同様に、端面の算術平均粗さRa及び端面の最大高さ粗さRzを測定したところ、Raは1.662μm、Rzは10.17μmであった。また、実施例1と同様に、4点曲げ試験によって平均破壊応力を測定したところ、有効サンプル数は7であり、平均破壊応力は425MPaであった。
【0178】
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2のカバーガラスの板厚、表面圧縮応力、圧縮応力層深さ、r
2/r
1値、r
3/r
2値、端面の算術平均粗さRa、端面の最大高さ粗さRz、4点曲げ試験による有効サンプル数及び平均破壊応力を表1に示す。表1からも明らかであるように、実施例1及び2のカバーガラスは、比較例1及び2のカバーガラスに比べて平均破壊応力の値が高かった。そのため、実施例1及び2のカバーガラスは、比較例1及び2のカバーガラスに比べて充分な端面強度を有することが確認された。
【0179】
【表1】
【0180】
なお、2012年9月27日に出願された国際出願PCT/JP2012/074925、2012年9月27日に出願された国際出願PCT/JP2012/074926、2012年9月27日に出願された国際出願PCT/JP2012/074929、及び、2013年1月10日に出願された日本国特許出願2013−002747号の内容は、その全体が本願中に参照として組み込まれている。