特許第6197377号(P6197377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6197377-排気浄化装置 図000003
  • 特許6197377-排気浄化装置 図000004
  • 特許6197377-排気浄化装置 図000005
  • 特許6197377-排気浄化装置 図000006
  • 特許6197377-排気浄化装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197377
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20170911BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20170911BHJP
   F01N 3/031 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   F01N3/023 A
   F01N3/023 K
   F01N3/025 101
   F01N3/031
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-116999(P2013-116999)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-234773(P2014-234773A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 充宏
(72)【発明者】
【氏名】内山 正
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−097410(JP,A)
【文献】 特開2004−076605(JP,A)
【文献】 特開2002−021537(JP,A)
【文献】 特開平08−068310(JP,A)
【文献】 特開2008−101604(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/117853(WO,A1)
【文献】 特開2012−072686(JP,A)
【文献】 特開2008−215105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/021−3/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられて、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタの入口温度を検出する入口温度センサと、
前記フィルタの出口温度を検出する出口温度センサと、
前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する強制再生を実行可能なフィルタ再生手段と、
前記フィルタの静電容量を検出する静電容量検出手段と、
前記静電容量検出手段で検出される静電容量に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質及びアッシュ成分の合計堆積量を推定する合計堆積量推定手段と、
前記フィルタ再生手段による強制再生が終了した時に、前記合計堆積量推定手段で推定され、前記入口温度センサにより検出された前記入口温度と前記出口温度センサにより検出された前記出口温度との平均温度に基づいて補正された合計堆積量をアッシュ堆積量として演算するアッシュ堆積量演算手段と、を備える
ことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記合計堆積量推定手段で推定される合計堆積量から、前記アッシュ堆積量演算手段で演算されたアッシュ堆積量を減算することで、前記フィルタに捕集される粒子状物質の堆積量を演算するPM堆積量演算手段をさらに備え、
前記フィルタ再生手段は、前記PM堆積量演算手段で演算される粒子状物質の堆積量が、前記フィルタに捕集可能な上限閾値に達すると、強制再生を実行する
請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記アッシュ堆積量演算手段で演算されるアッシュ堆積量が、前記内燃機関の許容排圧に影響を与える上限閾値に達すると、前記フィルタに堆積したアッシュを清掃するメンテナンスを必要と判定する清掃要求判定手段をさらに備える
請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
静電容量検出手段は、前記フィルタ内に少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置されて、コンデンサを形成する少なくとも一対の電極を含む
請求項1から3の何れか一項に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
内燃機関の排気通路に設けられて、排気中の粒子状物質を捕集する第1のフィルタと、
前記第1のフィルタよりも排気上流側及び下流側の前記排気通路を接続して、前記第1のフィルタを迂回するバイパス通路と、
前記バイパス通路に設けられて、当該バイパス通路を流れる排気中の粒子状物質を捕集する第2のフィルタと、
前記バイパス通路における前記第2のフィルタより上流側の位置に設けられ、前記バイパス通路を流れる排気の流量を調整するオリフィスと、
前記第2のフィルタ内に少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置されて、コンデンサを形成する少なくとも一対の電極を含み、前記第2のフィルタの静電容量を検出する静電容量検出手段と、
前記第2のフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する強制再生を実行可能なフィルタ再生手段と、
前記静電容量検出手段で検出される静電容量に基づいて、前記第2のフィルタに捕集された粒子状物質及びアッシュ成分の合計堆積量を推定する合計堆積量推定手段と、
前記フィルタ再生手段による強制再生が終了した時に、前記合計堆積量推定手段で推定された合計堆積量をアッシュ堆積量として演算するアッシュ堆積量演算手段と、を備える
ことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項6】
前記第2のフィルタの強制再生を実行する際は、前記一対の電極をヒータとして機能させる
請求項5に記載の排気浄化装置。
【請求項7】
内燃機関の排気通路に設けられて、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する強制再生を実行可能なフィルタ再生手段と、
前記フィルタの静電容量を検出する静電容量検出手段と、
前記静電容量検出手段で検出される静電容量に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質及びアッシュ成分の合計堆積量を推定する合計堆積量推定手段と、
前記フィルタ再生手段による強制再生が終了した時に、前記合計堆積量推定手段で推定された合計堆積量をアッシュ堆積量として演算するアッシュ堆積量演算手段と、
前回の強制再生の終了時におけるアッシュ堆積量に対する今回の強制再生の終了時におけるアッシュ堆積量の増加率を演算し、前記増加率が異常を示す閾値を超えた場合、故障が発生したと判定する故障判定手段と、を備える
ことを特徴とする排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の粒子状物質(Particulate Matter、PM)を捕集するフィルタとして、例えば、ディーゼル・パティキュレイト・フィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFという)が知られている。
【0003】
DPFは、PM捕集量に限度があるため、堆積したPMを定期的に燃焼除去するいわゆる強制再生を行う必要がある。強制再生は、排気管内噴射やポスト噴射によって、排気上流側の酸化触媒に未燃燃料(HC)を供給し、酸化により発生する熱で排気ガスの温度をPM燃焼温度まで昇温することで行われる。
【0004】
DPFに堆積するPMには、主としてエンジンから排出されるスート(煤)成分等が含まれている。また、DPFには、エンジンオイルの成分等も堆積する。このうち、スート成分は強制再生により燃焼除去されるが、エンジンオイルは燃え残りアッシュ(灰)となる。アッシュ成分は不燃性のため、強制再生を行っても除去できない。アッシュ成分の堆積が進むと、DPFの目詰まりにより圧力損失が増加するため、堆積したアッシュを定期的に清掃するメンテナンスが必要となる。
【0005】
このようなアッシュ堆積量をDPFの強制再生が終了した直後に検出されるDPF前後差圧から推定することで、DPFのメンテナンス時期を予測する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−270503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、強制再生によって堆積したPMの燃焼が進むと、特に強制再生の終盤はDPF前後差圧の低下によって、PM堆積量とDPF前後差圧との相関は落ちてしまう。そのため、DPF前後差圧に基づいた推定手法では、強制再生の終了(完全再生)を正確に把握できず、DPF前後差圧に含まれるアッシュ成分の影響を切り分けられない課題がある。
【0008】
また、図5に示すように、強制再生を実行する度にアッシュ堆積量は増加し、これに伴いDPF前後差圧も増加するため、再生開始閾値に対するPM堆積量の比重は少なくなる。その結果、再生インターバルA〜Dが不要に短くなり、強制再生の回数増加により、燃費の悪化を招くと共に、DPFの劣化を加速させる可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、DPFに捕集されるアッシュの堆積量を効果的に検出することができる排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明の排気浄化装置は内燃機関の排気通路に設けられて、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する強制再生を実行可能なフィルタ再生手段と、前記フィルタの静電容量を検出する静電容量検出手段と、前記静電容量検出手段で検出される静電容量に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質及びアッシュ成分の合計堆積量を推定する合計堆積量推定手段と、前記フィルタ再生手段による強制再生が終了した時に、前記合計堆積量推定手段で推定された合計堆積量をアッシュ堆積量として演算するアッシュ堆積量演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記合計堆積量推定手段で推定される合計堆積量から、前記アッシュ堆積量演算手段で演算されたアッシュ堆積量を減算することで、前記フィルタに捕集される粒子状物質の堆積量を演算するPM堆積量演算手段をさらに備えてもよい。
【0012】
また、前記フィルタ再生手段は、前記PM堆積量演算手段で演算される粒子状物質の堆積量が、前記フィルタに捕集可能な上限閾値に達すると、強制再生を実行するものであってもよい。
【0013】
また、前記アッシュ堆積量演算手段で演算されるアッシュ堆積量が、前記内燃機関の許容排圧に影響を与える上限閾値に達すると、前記フィルタに堆積したアッシュを清掃するメンテナンスを必要と判定する清掃要求判定手段をさらに備えてもよい。
【0014】
また、静電容量検出手段は、前記フィルタ内に少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置されて、コンデンサを形成する少なくとも一対の電極を含むものであってもよい。
【0015】
また、前記フィルタよりも排気上流側及び下流側の前記排気通路を接続して、前記フィルタを迂回するバイパス通路と、前記バイパス通路に設けられて、当該バイパス通路を流れる排気中の粒子状物質を捕集する第2のフィルタと、をさらに備え、前記一対の電極は、前記第2のフィルタ内に少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置されるものであってもよい。
【0016】
また、前記第2のフィルタの強制再生を実行する際は、前記一対の電極をヒータとして機能させてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の排気浄化装置によれば、DPFに捕集されるアッシュの堆積量を効果的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置を示す模式的な全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置による制御内容を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置による再生インターバルを示すタイムチャートである。
図4】他の実施形態に係る排気浄化装置を示す模式的な全体構成図である。
図5】従来の排気浄化装置による再生インターバルを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る排気浄化装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジン)10には、吸気マニホールド10a及び排気マニホールド10bが設けられている。吸気マニホールド10aには新気を導入する吸気通路11が接続され、排気マニホールド10bには排気ガスを大気に放出する排気通路12が接続されている。さらに、排気通路12には、排気上流側から順に排気管内噴射装置13、排気後処理装置14、DPF入口温度センサ31、DPF出口温度センサ32が設けられている。
【0021】
排気管内噴射装置13は、ECU20から出力される指示信号に応じて、排気通路12内に未燃燃料(HC)を噴射する。なお、エンジン10の多段噴射によるポスト噴射を用いる場合は、この排気管内噴射装置13を省略してもよい。
【0022】
排気後処理装置14は、ケース14a内に排気上流側から順に酸化触媒15、DPF16を配置して構成されている。
【0023】
酸化触媒15は、例えば、コーディエライトハニカム構造体等のセラミック製担体表面に触媒成分を担持して形成されている。酸化触媒15は、排気管内噴射装置13又はポスト噴射によって未燃燃料(HC)が供給されると、これを酸化して排気ガスの温度を上昇させる。
【0024】
DPF16は、例えば、多孔質セラミックの隔壁で区画された多数のセルを排気ガスの流れ方向に沿って配置し、これらセルの上流側と下流側とを交互に目封止して形成されている。DPF16は、排気ガス中のスート成分を主とするPMを隔壁の細孔や表面に捕集すると共に、PM堆積量が所定量に達すると、これを燃焼除去するいわゆる強制再生が実行される。強制再生は、排気管内噴射装置13又はポスト噴射により酸化触媒15に未燃燃料(HC)を供給し、DPF16をPM燃焼温度(例えば、約600℃)まで昇温することで行われる。
【0025】
また、本実施形態のDPF16には、少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置されてコンデンサを形成する一対の電極17a,17bが設けられている。これら一対の電極17a,17bは、それぞれ電子制御ユニット(以下、ECU)20と電気的に接続されている。
【0026】
DPF入口温度センサ31は、DPF16に流入する排気ガスの温度(以下、入口温度TIN)を検出する。DPF出口温度センサ32は、DPF16から流出する排気ガスの温度(以下、出口温度TOUT)を検出する。これら、入口温度TIN及び、出口温度TOUTは、電気的に接続されたECU20に出力される。
【0027】
ECU20は、エンジン10や排気管内噴射装置13の燃料噴射等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。また、ECU20は、静電容量演算部21と、合計堆積量推定部22と、アッシュ堆積量演算部23と、PM堆積量演算部24と、強制再生制御部25と、アッシュ清掃要求判定部26と、故障判定部27とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、一体のハードウェアであるECU20に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0028】
なお、本実施形態において、静電容量演算部21と一対の電極17a,17bとは、本発明の静電容量演算手段を構成、強制再生制御部25と排気管内噴射装置13(又は、エンジン10の図示しない燃料噴射装置)とは、本発明のフィルタ再生手段を構成する。
【0029】
静電容量演算部21は、電極17a,17b間の媒体の誘電率ε、電極17a,17b間の距離dとする以下の数式1に基づいて、一対の電極17a,17b間の静電容量Cを演算する。
【0030】
【数1】
【0031】
合計堆積量推定部22は、静電容量演算部21で演算される静電容量Cに基づいて、PM堆積量PMDEP及びアッシュ堆積量ASHDEPの合計堆積量SUMDEP(SUMDEP=PMDEP+ASHDEP)を推定する。電極17a,17b間に誘電率εを有するPMやアッシュが堆積すると、これら電極17a,17b間の距離dが実質的に短くなるため、静電容量Cは増加する。また、電極17a,17b間にPMやアッシュの堆積が進むと、誘電率εの増加に伴い静電容量Cも増加する。すなわち、静電容量Cと合計堆積量SUMDEPとの間には比例関係がある。
【0032】
ECU20のメモリには、予め実験等により作成した静電容量と合計堆積量との関係を示すマップ(不図示)が記憶されている。合計堆積量推定部22は、このマップから、静電容量演算部21で演算される静電容量Cに対応する値を読み取ることで、DPF16に捕集されたPMやアッシュの合計堆積量SUMDEPを推定する。なお、静電容量Cは温度に応じて変化するため、推定される合計堆積量SUMDEPを、入口温度TINと出口温度TOUTとの平均温度(DPF内部温度)に基づいて補正してもよい。
【0033】
アッシュ堆積量演算部23は、合計堆積量推定部22で推定される合計堆積量SUMDEPからアッシュ堆積量ASHDEPを切り分けて演算する。DPF16の強制再生によって堆積したPMが完全に燃焼除去(以下、完全再生という)されると、DPF16内には不燃性のアッシュ成分が残る。このような状態になると、アッシュ成分の堆積量は変化しなくなるため、静電容量推定部21で演算される静電容量Cの変化率ΔC/ΔTは小さくなる。すなわち、完全再生時に合計堆積量推定部22で推定される合計堆積量SUMDEPは、残存するアッシュ堆積量ASHDEPとすることができる。アッシュ堆積量演算部23は、静電容量Cの変化率ΔC/ΔTが完全再生を示す所定の下限閾値に達すると、この完全再生時に合計堆積量推定部22で推定された合計堆積量SUMDEPをアッシュ堆積量ASHDEPとして演算する(SUMDEP=ASHDEP)。
【0034】
PM堆積量演算部24は、強制再生の終了後、合計堆積量推定部22で推定される合計堆積量SUMDEPからPM堆積量PMDEPを演算する。完全再生によりDPF16からPMが燃焼除去されてアッシュ成分のみが残ると、再びPMの堆積が始まる。すなわち、完全再生時に演算されたアッシュ堆積量ASHDEPをオフセット量(初期値)とすれば、その後に増加する合計堆積量SUMDEPからPM堆積量PMDEPを推定することが可能である。
【0035】
PM堆積量演算部24は、完全再生時にアッシュ堆積量演算部23で演算されたアッシュ堆積量ASHDEPをオフセット量として記憶すると共に、その後、合計堆積量推定部22で推定される合計堆積量SUMDEPからオフセット量としてのアッシュ堆積量ASHDEPを減算することで、PM堆積量PMDEPを連続的に演算する(PMDEP=SUMDEP−ASHDEP)。
【0036】
強制再生制御部25は、PM堆積量演算部24で演算されるPM堆積量PMDEPに基づいて、DPF16の強制再生を制御する。ECU20のメモリには、予め規定したDPF16に捕集可能なPM上限堆積量PMMAXが記憶されている。強制再生制御部25は、PM堆積量演算部24で演算されるPM堆積量PMDEPがこのPM上限堆積量PMMAXに達すると(PMDEP≧PMMAX)、排気管内噴射装置13に燃料を噴射(又は、ポスト噴射)させる強制再生を実行する。
【0037】
アッシュ清掃要求判定部26は、アッシュ堆積量演算部23で演算されるアッシュ堆積量ASHDEPに基づいて、アッシュの清掃を定期的に行うDPF16のメンテナンスが必要か否かを判定する。ECU20のメモリには、予め規定した清掃要求閾値ASHMAXが記憶されている。この清掃要求閾値ASHMAXは、例えば、アッシュの堆積によるDPF16前後の圧力損失が、エンジン10の許容排圧に影響を与えない範囲を基準に設定されている。
【0038】
アッシュ清掃要求判定部26は、アッシュ堆積量演算部23で演算されるアッシュ堆積量ASHDEPがこの清掃要求閾値ASHMAXに達すると(ASHDEP≧ASHMAX)、メンテナンスが必要と判定する。なお、判定結果は、ECU20のメモリに記憶され、サービスツール等の外部接続機器が接続された際に、この外部接続機器に出力される。なお、警告灯などで、ドライバーにサービスの必要を知らせるように構成してもよい。
【0039】
故障判定部27は、アッシュ堆積量演算部23で演算されるアッシュ堆積量ASHDEP及び強制再生の実行回数に基づいて、エンジン10等の故障有無を判定する。一般的に、アッシュの堆積量とエンジンオイルの消費量等との間には相関があることが知られている。故障判定部27は、強制再生の実行回数と、強制再生の度に演算されるアッシュ堆積量ASHDEPとに基づいて、アッシュ堆積量ASHDEPの増加率(傾き)を演算すると共に、この増加率が異常を示す閾値を超えた場合に、エンジン10等に故障が発生したと判定する。
【0040】
次に、図2に基づいて、本実施形態の排気浄化装置による制御フローを説明する。なお、本制御は、DPF16にアッシュが堆積していない状態(例えば、新品時又はメンテナンス完了後)から開始される。
【0041】
S100では、オフセット量としてのアッシュ堆積量ASHDEPがゼロに設定されると共に、推定される合計堆積量SUMDEPがPM堆積量PMDEPとして演算される(ASHDEP=0、SUMDEP=PMDEP)。
【0042】
S110では、PM堆積量PMDEPがPM上限閾値PMMAXに達したか否かが判定される。PM堆積量PMDEPがPM上限閾値PMMAXに達している場合(PMDEP≧PMMAX)、本制御はS120に進み一回目の強制再生が開始される。
【0043】
S130では、静電容量Cの変化率ΔC/ΔTに基づいて、完全再生が判定される。変化率ΔC/ΔTが完全再生を示す下限閾値に達した場合(ΔC/ΔT≦下限閾値)、本制御はS140に進む。S140では、完全再生時の合計堆積量SUMDEPがアッシュ堆積量ASHDEPとして演算される(SUMDEP=ASHDEP)。
【0044】
S150では、アッシュ堆積量ASHDEPが清掃要求閾値ASHMAXに達したか否かが判定される。アッシュ堆積量ASHDEPが清掃要求閾値ASHMAXに達している場合(ASHDEP≧ASHMAX)、本制御は、S300でアッシュの清掃要求(DPF16のメンテナンスが必要)をECU20のメモリに保存して、その後リターンされる。
【0045】
S200では、直前に演算されたアッシュ堆積量ASHDEP(n-1)をオフセット量として、PM堆積量PMDEP(n)の演算が開始される。このPM堆積量PMDEP(n)は、合計堆積量SUMDEP(n)からアッシュ堆積量ASHDEP(n-1)を減算することで演算される(PMDEP(n)=SUMDEP(n)−ASHDEP(n-1))。
【0046】
S210では、PM堆積量PMDEP(n)がPM上限閾値PMMAXに達したか否かが判定される。PM堆積量PMDEP(n)がPM上限閾値PMMAXに達している場合(PMDEP(n)≧PMMAX)、本制御はS220に進み二回目以降の強制再生が開始される。
【0047】
S230では、静電容量Cの変化率ΔC/ΔTに基づいて、完全再生が判定される。変化率ΔC/ΔTが完全再生を示す下限閾値に達した場合(ΔC/ΔT≦下限閾値)、本制御はS240に進む。S240では、完全再生時の合計堆積量SUMDEP(n)がアッシュ堆積量ASHDEP(n)として演算される(SUMDEP(n)=ASHDEP(n))。
【0048】
S250では、アッシュ堆積量ASHDEP(n)が清掃要求閾値ASHMAXに達したか否かが判定される。アッシュ堆積量ASHDEP(n)が清掃要求閾値ASHMAXに達している場合(ASHDEP(n)≧ASHMAX)、本制御はS300に進み、アッシュの清掃要求を保存してリターンされる。一方、アッシュ堆積量ASHDEP(n)が清掃要求閾値ASHMAXに達していない場合(ASHDEP(n)<ASHMAX)、本制御はS200に戻される。すなわち、アッシュ堆積量ASHDEPが清掃要求閾値ASHMAXに達するまで、S200〜250の各ステップが繰り返し実行される。
【0049】
なお、図2に示すフローでは説明を省略したが、S240〜S250の何れかのステップ間で、前回のアッシュ堆積量ASHDEP(n-1)に対する今回のアッシュ堆積量ASHDEP(n)の増加率を演算し、この増加率が異常を示す閾値を超えた場合は、エンジン10等の故障を判定するように構成してもよい。
【0050】
次に、本実施形態に係る排気浄化装置の作用効果を説明する。
【0051】
従来技術では、DPFに捕集されたアッシュ堆積量を、DPFの完全再生時に検出されるDPF前後差圧から推定している。しかしながら、強制再生の終盤は、DPF前後差圧の低下により、PM堆積量とDPF前後差圧との相関が落ちるため、完全再生を正確に検知できず、DPF前後差圧に含まれるアッシュ成分の影響を正確に切り分けられない可能性がある。
【0052】
これに対し、本実施形態の排気浄化装置は、強制再生の終盤においても感度が良好な静電容量Cに基づいて、完全再生時期を判定すると共に、この完全再生時に検出される静電容量Cからアッシュ堆積量ASHDEPを切り分けて演算している(図3のT2,4,6参照)。また、演算されるアッシュ堆積量ASHDEPが清掃要求閾値ASHMAXに達した場合は(図3のT6参照)、DPF16のメンテナンスを必要と判定するように構成されている。したがって、本実施形態の排気浄化装置によれば、DPF16に捕集されたアッシュの堆積量を高精度に検出することが可能となり、定期的にアッシュの清掃を行うDPF16のメンテナンス時期を正確に判定することができる。
【0053】
また、本実施形態の排気浄化装置では、完全再生時に演算されたアッシュ堆積量ASHDEPをオフセット量とし、その後増加する合計堆積量SUPDEPからアッシュ堆積量ASHDEPを減算することで、PM堆積量PMDEPを演算している。そして、初期値としてのアッシュ堆積量ASHDEPを考慮に入れたPM堆積量PMDEPがPM上限閾値PMMAXに達した時に強制再生を実行するように構成されている(図3のT1,3,5参照)。したがって、本実施形態の排気浄化装置によれば、アッシュの堆積が進んでも再生インターバルを長く確保することが可能となり(図3のA〜C参照)、燃費の悪化や触媒の劣化を効果的に防止することができる。
【0054】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0055】
例えば、図4に示すように、排気通路12にDPF16を迂回させるバイパス通路18を接続し、このバイパス通路18に容量の小さい計測用DPF16a(第2のフィルタ)を備えて構成してもよい。この場合、一対の電極17a,17bを計測用DPF16a内に少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置すると共に、バイパス通路18には排気ガスの流量を調整するオリフィス18a(絞り)を設けることが好ましい。また、計測用DPF16aの強制再生を実行する場合は、一対の電極17a,17bに電圧を印加してヒータとして機能させてもよい。また、電極17a,17bの本数は一対に限定されず、複数対を備えるものであってもよい。また、本発明はエンジン等の内燃機関に限定されず、例えばプラント等から排出される排煙中に含まれるPMの浄化装置としても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 エンジン
12 排気通路
13 排気管内噴射装置
14 排気後処理装置
15 酸化触媒
16 DPF(フィルタ)
20 ECU
21 静電容量演算部
22 合計堆積量推定部
23 アッシュ堆積量演算部
24 PM堆積量演算部
25 強制再生制御部
26 アッシュ清掃要求判定部
27 故障判定部
図1
図2
図3
図4
図5