特許第6197509号(P6197509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197509
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】リヤサイドメンバ
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   B62D25/20 H
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-184357(P2013-184357)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-51671(P2015-51671A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】石井 貞行
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−233898(JP,A)
【文献】 特開平04−303074(JP,A)
【文献】 特開平11−348824(JP,A)
【文献】 特開2005−029000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁部と、対をなす第1及び第2の縦壁部と、一対のフランジ部とを有し、前記両フランジ部を上方に、前記第1の縦壁部を車体中心側に、前記第2の縦壁部を車体外側にして車体後部に配設されるハット型断面形状のリヤサイドメンバであって、
前記第1及び第2の縦壁部には、部材後端から所定距離だけ前方のビード開始点から前方へ所定ピッチで複数のビードがそれぞれ並設され、
前記第1の縦壁部のビード開始点は、前記第2の縦壁部のビード開始点よりも前方に配置され
前記第1の縦壁部の前記ビードとこれに対応する前記第2の縦壁部の前記ビードとは、前記所定ピッチの2分の1だけずれている
ことを特徴とする、リヤサイドメンバ。
【請求項2】
底壁部と、対をなす第1及び第2の縦壁部と、一対のフランジ部とを有し、前記両フランジ部を上方に、前記第1の縦壁部を車体中心側に、前記第2の縦壁部を車体外側にして車体後部に配設されるハット型断面形状のリヤサイドメンバであって、
前記第1及び第2の縦壁部には、部材後端から所定距離だけ前方のビード開始点から前方へ所定ピッチで複数のビードがそれぞれ並設され、
前記第1の縦壁部のビード開始点は、前記第2の縦壁部のビード開始点よりも前方に配置され
前記底壁部の正面視で、前記第1の縦壁部の前記ビードとこれに対応する前記第2の縦壁部の前記ビードとを結んだ線は、幅方向に対して0度よりも大きく45度以下の角度で傾斜している
ことを特徴とする、リヤサイドメンバ。
【請求項3】
前記第1の縦壁部に設けられる前記複数のビードは、給油パイプよりも後方に配置されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のリヤサイドメンバ
【請求項4】
前記ビードは、少なくとも前記第1又は第2の縦壁部とこれに連続する前記フランジ部との角部、若しくは前記第1又は第2の縦壁部と前記底壁部との角部に形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載のリヤサイドメンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体後部に配設され、後突時に衝撃エネルギを吸収するリヤサイドメンバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の衝突時に、車体部材が変形することによって車体が受ける衝撃エネルギを吸収するようにした技術が開発されている。その一例として、車体下部の両側方にそれぞれ設けられフレーム部材として機能するサイドメンバが、衝突時にその端部を変形させることによって衝撃エネルギを吸収するようにしたものがある。
自動車の衝突には、前面衝突(前突),側面衝突及び後面衝突(後突)があるが、特許文献1及び2には、車体前部に設けられるフロントサイドメンバが、前突時にその前端部を変形させることによって衝撃エネルギを吸収するようにした技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されているフロントサイドメンバは、対をなす横壁部と対をなす縦壁部とによって閉断面形状に形成され、前端近傍の閉断面周方向に凸条及び凹条が設けられたものである。このフロントサイドメンバは、前突時にこれら凸条及び凹条を潰れ変形させることによって衝撃エネルギを吸収するとされている。
特許文献2に記載されているフロントサイドメンバは、特許文献1のものと同様な閉断面形状に形成され、一方の縦壁部の前端近傍に、複数のビードが前後方向に所定のピッチで設けられ、これに対して半ピッチずれるように他方の縦壁部にも複数のビードが設けられたものである。このフロントサイドメンバは、前突時に両縦壁部のビードをそれぞれ谷として部材前端部を蛇腹状に変形させることによって衝撃エネルギを吸収するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−231268号公報
【特許文献2】特開平5−105110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2の技術は何れもフロントサイドメンバに関するものであるが、特許文献1に示唆されているように、これらの技術を車体後部に設けられるリヤサイドメンバに適用することも可能である。この場合、リヤサイドメンバが後突時にその後端部を変形させることによって衝撃エネルギを吸収する。
しかしながら、上記特許文献1及び2の技術を用いても、後突時にリヤサイドメンバの後端部のみが変形することによって衝撃エネルギを完全に吸収することは困難である。つまり、実際の後突時には、リヤサイドメンバの後端部だけでなく、リヤサイドメンバ全体が変形することによって衝撃エネルギが吸収される。
【0006】
図6は一般的な自動車(乗用車)の車体後部を示す図であり、図6(a)はその下面図、図6(b)はその側面図である。図6(a)及び図6(b)に示すように、車体5の後部に装備されるリヤサイドメンバ10,10は、一般に、後輪(図示略)を収容する空間であるホイールハウス51,51の周りに沿うように形成されている。
リヤサイドメンバ10の部材前部を形成するリヤサイドメンバフロント10Fは、その前端部10fから後方に向けて車長方向に対して上方且つ車体中心側に湾曲して傾斜した湾曲部10cを備えている。また、リヤサイドメンバフロント10Fの後方に接続され部材後部を形成するリヤサイドメンバリヤ10Rは、車長方向に沿って略水平に且つ互いに平行に延びている。
【0007】
このため、後突時にリヤサイドメンバ10の後端に対して前方向の衝撃力が入力されると、相対的に大きなモーメントが前端部10fに作用する。特にオフセット後突時には、衝突した側のリヤサイドメンバ10の湾曲部10cの周辺に衝撃力が集中し、図6(c)及び図6(d)に示すように、リヤサイドメンバ10は後端部10rが変形するだけでなく、大きなモーメントが作用する前端部10f付近でも折れ変形してしまう。これによって、リヤサイドメンバ10は、前端部10f付近を支点として車体中心側且つ上側に大きく変位する。
【0008】
ところで、リヤサイドメンバ10,10の前端部10f,10fと車幅方向に延びるフレーム部材であるリヤシートクロスメンバ6S及びリヤフロアクロスメンバ6Fとで前後左右を包囲された空間には、燃料タンク4や高電圧バッテリ(図示略)が搭載される。燃料タンク4や高電圧バッテリ(図示略)は、このようにフレーム部材で包囲されることにより保護されているが、リヤサイドメンバ10が車体中心側に変位した場合、損傷を受けてしまうおそれがある。
【0009】
また、リヤサイドメンバ10が上側に変位した場合、リヤサイドメンバ10の上側近傍に配設される給油パイプ41が損傷を受けてしまうおそれがある。このため、オフセット後突等の後突に対して、リヤサイドメンバ10の前端部10fの折れ変形を抑制し、リヤサイドメンバ10の車体中心側且つ上側への変位を抑制することが望まれている。
これには通常、図6(a)に二点鎖線で示すように、車幅方向に延びるリヤフロアクロスメンバ61を一対のリヤサイドメンバ10,10の後部の相互間に追加したり、リヤサイドメンバ10,10自体に補強部材を追加したりして剛性を高めることも有効であるが、このように新たな部材を追加すれば、重量増及びコスト増を招いてしまうとともにレイアウト上の制限が増えて荷室空間を縮小しなければならなくなる。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みて案出されたもので、重量増及びコスト増を抑制しながら前端部の変形を抑制することができるようにした、リヤサイドメンバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明のリヤサイドメンバは、底壁部と、対をなす第1及び第2の縦壁部と、一対のフランジ部とを有し、前記両フランジ部を上方に、前記第1の縦壁部を車体中心側に、前記第2の縦壁部を車体外側にして車体後部に配設されるハット型断面形状のリヤサイドメンバであって、前記第1及び第2の縦壁部には、部材後端から所定距離だけ前方のビード開始点から前方へ所定ピッチで複数のビードがそれぞれ並設され、前記第1の縦壁部のビード開始点は、前記第2の縦壁部のビード開始点よりも前方に配置され、前記第1の縦壁部の前記ビードとこれに対応する前記第2の縦壁部の前記ビードとは、前記所定ピッチの2分の1だけずれていることを特徴としている。
【0012】
(2)あるいは、上記目的を達成するために、本発明のリヤサイドメンバは、底壁部と、対をなす第1及び第2の縦壁部と、一対のフランジ部とを有し、前記両フランジ部を上方に、前記第1の縦壁部を車体中心側に、前記第2の縦壁部を車体外側にして車体後部に配設されるハット型断面形状のリヤサイドメンバであって、前記第1及び第2の縦壁部には、部材後端から所定距離だけ前方のビード開始点から前方へ所定ピッチで複数のビードがそれぞれ並設され、前記第1の縦壁部のビード開始点は、前記第2の縦壁部のビード開始点よりも前方に配置され、前記底壁部の正面視で、前記第1の縦壁部の前記ビードとこれに対応する前記第2の縦壁部の前記ビードとを結んだ線は、幅方向に対して0度よりも大きく45度以下の角度で傾斜していることを特徴としている。
)前記第1の縦壁部に設けられる前記複数のビードは、給油パイプよりも後方に配置されていることが好ましい
【0013】
)前記ビードは、少なくとも前記第1又は第2の縦壁部とこれに連続する前記フランジ部との角部、若しくは前記第1又は第2の縦壁部と前記底壁部との角部に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリヤサイドメンバによれば、第1の縦壁部のビード開始点が第2の縦壁部のビード開始点よりも前方に配置されている。すなわち、部材後端からビード開始点までの距離が第1の縦壁部よりも第2の縦壁部において短く設定されている。このため、後突時、第1及び第2の縦壁部の各ビード開始点より後方部分がまず座屈変形をすると、第2の縦壁部のビード開始点より後方部分は、第1の縦壁部のビード開始点より後方部分に比べて大きく曲げ変形し大きな反力を生じる。これによって、第2の縦壁部には大きな衝撃力が作用し、部材後端部では第2の縦壁部が第1の縦壁部に比べて大きく圧縮変形しようとするので、部材後端部全体が車体中心側に凸となる折れを生じる。
【0015】
したがって、本発明のリヤサイドメンバによれば、部材後端部が座屈によって曲げ変形することと車体中心側に凸となる折れを生じることとによって、後突時の衝撃エネルギを吸収することができる。このため、部材前端部に伝達される衝撃エネルギを低減することができるので、部材前端部の変形を抑制することができる。
また、本発明のリヤサイドメンバによれば、クロスメンバ等の補強部材を用いなくても部材前端部の変形を抑制することができるので、重量増及びコスト増を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係るリヤサイドメンバの要部構造を示す模式的な上面図である。
図2】一実施形態に係るリヤサイドメンバの全体構造を示す模式的な斜視図である。
図3】一実施形態に係るリヤサイドメンバが変形する過程を(a),(b),(c),(d),(e)の順に示す模式的な上面図である。
図4】一実施形態に係るリヤサイドメンバの変形を比較例の変形とともに示す模式的な図であり、(a)は上面図,(b)は側面図である。
図5】一実施形態に係るリヤサイドメンバに並設されるビードの模式的な斜視図であり、(a)は一実施形態に係るビード,(b)は第1変形例に係るビード,(c)は第2変形例に係るビードを示している。
図6】一般的な自動車の車体後部を示す模式的な図であり、(a)は通常時の下面図,(b)は通常時の側面図,(c)はオフセット後突後の下面図,(d)はオフセット後突後の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明における前後方向及び左右方向は、本実施形態に係るリヤサイドメンバが備えられた自動車の車体の前後方向及び左右方向にそれぞれ対応している。また、以下の説明では、重力の方向を下方とし、その逆を上方とする。さらに、自動車の車体中心側を内側、その逆側を外側とする。
【0018】
[1.構成]
[1−1.車体後部の構造]
まず、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10が備えられた自動車の車体5の後部構造について、図6(a)及び図6(b)を流用して説明する。図6(a)の下面図に示すように、車体5は強度を向上させるためのフレーム部材として、前後方向に延在する一対のリヤサイドメンバ10,10と、左右方向(車幅方向)に延在するリヤシートクロスメンバ6S及びリヤフロアクロスメンバ6Fとを有している。これらのフレーム部材は、鋼板をプレス加工することによって形成され、互いに重なり合う箇所においてスポット溶接等により接合されている。
【0019】
リヤサイドメンバ10,10は、車体下部の左右側方にそれぞれ設けられている。各リヤサイドメンバ10は、前端部10fがフロアサイドシル7に溶接等により接続されるとともに、後端部10rがリヤエンドパネル9に溶接等により接続されている。また、前端部10fはフロアサイドメンバ(図示略)にも直接又は間接的に接続されている。
なお、フロアサイドメンバ及びフロアサイドシル7の前方にはフロントサイドメンバ(図示略)が接続されており、これらのフロントサイドメンバ,フロアサイドメンバ,フロアサイドシル7及びリヤサイドメンバ10が前後方向に並んで接続されることによって、左右一方のフレーム部材が車体前端部から車体後端部まで延設されている。
【0020】
リヤシートクロスメンバ6Sは、後部座席(図示略)の下方で強度や剛性が要求される箇所、すなわちフロアサイドメンバ及びフロアサイドシル7の後端部とリヤサイドメンバ10の前端部10fとの接合部付近に配設されている。リヤシートクロスメンバ6Sの左右両端部は、何れもフロアサイドメンバやフロアサイドシル7やリヤサイドメンバ10に接合されている。
【0021】
リヤフロアクロスメンバ6Fは、リヤシートクロスメンバ6Sの後方において強度や剛性が要求される箇所、すなわち、ここでは燃料タンク4の後方に隣接して配設されている。リヤフロアクロスメンバ6Fの左右両端部は、何れもリヤサイドメンバ10に接合されている。
このように構成された車体5の後部のリヤサイドメンバ10,リヤシートクロスメンバ6S及びリヤフロアクロスメンバ6Fの上方には、車体5の底面を形成するリヤフロアパネル8が略水平に配設されている。リヤフロアパネル8は、他部材と対応するように、あるいは剛性確保のために、表面に適宜凹凸がプレス成形された鋼板である。リヤフロアパネル8は、後輪(図示略)を収容する空間であるホイールハウス51,51を確保すべく、左右側縁の一部が何れも外側に向かって凹状の輪郭をなす形状に形成されている。
【0022】
リヤフロアパネル8の下面は、リヤサイドメンバ10,リヤシートクロスメンバ6S及びリヤフロアクロスメンバ6Fの上面に接合されている。また、リヤフロアパネル8の後端部、すなわち、車体5の後端部には、リヤフロアパネル8と略垂直な車体後面を形成するリヤエンドパネル9が接合されている。さらに、ホイールハウス51よりも前方のリヤフロアパネル8の左右両端部には、何れもフロアサイドシル7が接合されている。
【0023】
リヤエンドパネル9は、車体5の後端部において車幅方向に延在し、正面視で略矩形状の鋼板である。リヤエンドパネル9の前面(内側面)には、リヤフロアパネル8の後端部及びリヤサイドメンバ10の後端部10rがスポット溶接により接合されている。また、リヤエンドパネル9の後面(外側面)には、リヤバンパ(図示略)が取り付けられる。
フロアサイドシル7は、左右一対のフロアサイドメンバの外側にそれぞれ設けられ、前輪のホイールハウス(図示略)から後輪のホイールハウス51までの間において、前後方向に延在している。図6(b)に示すように、フロアサイドシル7の後端部は、側面視で、リヤサイドメンバ10の後述するリヤサイドメンバフロント10Fの外側に位置している。
【0024】
図6(a)に示すように、車体5には、一対のリヤサイドメンバ10,10の前端部10f,10fとリヤシートクロスメンバ6S及びリヤフロアクロスメンバ6Fとで前後左右を包囲された空間に燃料タンク4が搭載されている。換言すると、燃料タンク4は一対のリヤサイドメンバ10,10の前端部10f,10fの間に搭載されている。また、左右一方(図6(a)に示すものでは右方)のリヤサイドメンバ10の上側近傍には、燃料タンク4に燃料を供給するための給油パイプ41が配設されている。給油パイプ41は、一端が燃料タンク4に接続されるととともに、他端が車体5の外部に開口する給油口に接続されている。
【0025】
なお、本実施形態では内燃機関(エンジン)を備える自動車にリヤサイドメンバ10を適用した例を示しているが、本発明のリヤサイドメンバは内燃機関(エンジン)を備えていない自動車にも適用することができる。例えば、電気自動車に本発明のリヤサイドメンバを適用してもよく、この場合、燃料タンク4の位置には、燃料タンク4に替えて高電圧バッテリや高電圧部品(インバーター,車載充電器等)を装備する。また、ハイブリッド車に本発明のリヤサイドメンバを適用する場合、燃料タンク4の位置に燃料タンク4と高電圧バッテリ等とを装備する。
【0026】
[1−2.リヤサイドメンバの構造]
次に、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10の基本的な構造について説明する。なお、一対のリヤサイドメンバ10,10は互いに左右対称な構造であるため、ここでは車体左側に備えられるリヤサイドメンバ10について図2の斜視図を参照して説明し、車体右側に備えられるリヤサイドメンバ10については説明を省略する。また、以下の説明における前後方向,左右方向,上下方向,並びに,内側及び外側は、リヤサイドメンバ10が車体5に配設された状態におけるものにそれぞれ対応している。
【0027】
図2に示すように、リヤサイドメンバ10は、底面を形成する底壁部3と、底壁部3の左右側縁からそれぞれ略直角に立ち上がり側面を形成する一対の縦壁部1,2とを有するハット型断面形状のフレーム部材である。ここでは一対の縦壁部1,2のうち、車体内側に位置する一方を内側壁部(第1の縦壁部)1とし、車体外側に位置する他方を外側壁部(第2の縦壁部)2とする。なお、これらを区別しない場合は単に「縦壁部1,2」ともいう。
【0028】
内側壁部1の上端縁には、内フランジ部12が車体内側に向かって延設されている。また、外側壁部2の上端縁には、外フランジ部22が車体外側に向かって延設されている。換言すると、これら内フランジ部12及び外フランジ部22は、それぞれ内側壁部1及び外側壁部2の上端縁から互いに離隔する方向に延びる一対のフランジ部12,22である。なお、これら内フランジ部12及び外フランジ部22は、それぞれ内側壁部1及び外側壁部2の後端から前方に向かって少なくとも一定の長さを有するように形成されている。
【0029】
内側壁部1の後端縁には、車体内側に向かって略鉛直面を形成する内接合部13が延設されている。また、外側壁部2の後端縁には、車体外側に向かって略鉛直面を形成する外接合部23が延設されている。さらに、底壁部3の後端縁には、下側に向かって略鉛直面を形成する下接合部33が延設されている。なお、これらを総称して「接合部13,23,33」ともいう。
【0030】
リヤサイドメンバ10は、部材前部を形成するリヤサイドメンバフロント10Fと、部材後部を形成するリヤサイドメンバリヤ10Rとを有している。つまり、リヤサイドメンバ10は、リヤサイドメンバフロント10Fとリヤサイドメンバリヤ10Rとの二部材が長手方向に並んで接合されたものである。リヤサイドメンバフロント10Fの後端部とリヤサイドメンバリヤ10Rの前端部とは、互いに重合されてスポット溶接等により接合されている。
なお、本発明のリヤサイドメンバは、このように二部材からなるものに限定されるものでなく、例えば、一つの部材から構成されているものであってもよいし、三つ以上の部材から構成されているものであってもよい。
【0031】
リヤサイドメンバフロント10Fは、図6(a)に示すホイールハウス51の周りに沿うように、前端部10rから後方に向けて上方且つ内方に湾曲し、前後方向に対して傾斜した湾曲部10cを備えている。これに対し、リヤサイドメンバリヤ10Rは、前後方向に沿った直線的な形状を有している。したがって、図6(b)に示すように、車体5に組み付けられた状態の側面視で、リヤサイドメンバフロント10FはS字のような曲線をなすのに対し、リヤサイドメンバリヤ10Rは水平方向に延びる直線をなす。
【0032】
図2に示すように、底壁部3は、リヤサイドメンバフロント10Fが備える湾曲部10cを除いて略水平な面に形成されている。換言すると、底壁部3のうち、リヤサイドメンバフロント10Fの前端部10fとリヤサイドメンバフロント10Fの後端部よりも後側部分とに位置する部位は、略水平な面に形成されている。
リヤサイドメンバ10は、一対のフランジ部12,22を上方にして配設され、これら一対のフランジ部12,22がリヤフロアパネル8の下面とスポット溶接により接合されることで、車体5に組み付けられる。さらに、リヤサイドメンバ10の接合部13,23,33は、図6(a)に示すリヤエンドパネル9の前面とスポット溶接により接合される。なお、各部材間の結合方法は、上述したような締結及び溶接に限られない。
【0033】
[1−3.ビード]
次に、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10の特徴的な構造について説明する。
図1は、図2に示すリヤサイドメンバ10の後部を拡大した模式的な上面図である。図1に示すように、ここではリヤサイドメンバ10の縦壁部1,2とこれに連続するフランジ部12,22との角部に、複数のビードBがそれぞれ並設されている。このうち、内側壁部1には、リヤサイドメンバ10の後端より所定距離Lだけ前方の内ビード開始点(第1の縦壁部のビード開始点)Sから、前方へ所定ピッチPで三つのビードB(後方からそれぞれ第1内ビードB11,第2内ビードB12,第3内ビードB13とする。)が並設されている。これらのビードB11,B12,B13は、何れも、給油パイプ41(図6(a)参照)よりも後方に配置されている。
【0034】
また、同様に外側壁部2には、リヤサイドメンバ10の後端より所定距離Lだけ前方の外ビード開始点(第2の縦壁部のビード開始点)Sから、前方へ所定ピッチPで三つのビードB(後方からそれぞれ第1外ビードB21,第2外ビードB22,第3外ビードB23とする。)が並設されている。なお、ここではビードBが縦壁部にそれぞれ三つずつ並設されているものを例示しているが、ビードBの個数はこれに限定されない。
【0035】
以下、内側壁部1の後端から内ビード開始点Sまでの所定距離Lを「内所定距離L」,外側壁部2の後端から外ビード開始点Sまでの所定距離Lを「外所定距離L」ともいって区別する。また、内ビード開始点S及び外ビード開始点Sを区別せず、単に「ビード開始点S,S」ともいう。
内ビード開始点Sは、外ビード開始点Sよりも前方に配置されている。具体的には、内ビード開始点Sと外ビード開始点Sとは、リヤサイドメンバ10の後端からのそれぞれの所定距離L,Lが、ビードBの所定ピッチPを用いて、以下の式に表す関係を満たすように設定されている。
【0036】
=2.5P (1)
=2P (2)
これにより、内ビード開始点S(すなわち、第1内ビードB11の中心)は、外ビード開始点S(すなわち、第1外ビードB21の中心)よりも所定ピッチPの2分の1だけ前方に配置されている。したがって、内側壁部1のビードB11,B12,B13とこれに対応する外側壁部のビードB21,B22,B23とは、それぞれ所定ピッチPの2分の1だけずれて配設されている。
【0037】
所定ピッチPは、主としてリヤサイドメンバ10の材質,寸法,必要とされる強度等に応じて適当な値に設定される。特に、リヤサイドメンバ10の幅と所定ピッチPとは関連するものと考えられ、ここでは、底壁部3の正面視で内側壁部1のビードBとこれに対応する外側壁部2のビードB(例えば第1内ビードB11と第1外ビードB21)とを結んだ線αが幅方向に対して45度以下の角度で傾斜するように、所定ピッチPが設定されている。すなわち、ここでは、線αは幅方向に対して0度よりも大きく45度以下の角度で傾斜している。また、線αは幅方向に対して20度以上40度以下の角度で傾斜することがより好ましい。
【0038】
図5(a)に示すように、内側壁部1に並設されたビードB11,B12,B13は、内側壁部1の上端部を車体外側から車体内側に向かって逆三角形に窪ませたような形状である。つまり、内側壁部1のビードBは、内側壁部1から車体内側に向かって突出形成されている。
なお、図5(a)では外側壁部2を省略しているが、外側壁部2には、上述した内側壁部1のビードB11,B12,B13に対して左右(内外)対称の形状を有するビードB21,B22,B23が並設されている。また、ビードBの大きさは、所定ピッチPに比べて十分小さく設定されている。
【0039】
[2.作用]
次に、上述した構成を備えるリヤサイドメンバ10の後突時の作用について説明する。ここでは、左側にオフセットした後突を想定している。
図3は、車体5の左側後面が衝突した場合に、図2に示すリヤサイドメンバ10の後端部10rが衝撃力を受けて変形する過程を(a)〜(e)の順に模式的に示した上面図である。左側にオフセットした後突の場合、後突による衝撃力は車体左側に設けられるリヤサイドメンバ10に集中する。
【0040】
なお、図3に示す変形は、リヤサイドメンバ10の前端部10fを基準にしたものである。また、図3中には、リヤサイドメンバ10の中心線を一点鎖線で示すとともに、変形前の底壁部3を二点鎖線で示しており、一対のフランジ部12,22及び接合部13,23,33等は省略している。
図3(a)に示すように、変形前のリヤサイドメンバ10は、後端縁が車幅方向に略平行な直線をなしており、中心線が前後方向に略平行である。後突時、リヤサイドメンバ10の後端、すなわち縦壁部1,2の後端には、まず、前方向の略均等な衝撃力F,Fがそれぞれ入力される。換言すると、この時点で内側壁部1に入力される衝撃力Fと外側壁部2に入力される衝撃力Fとは、同程度の大きさである。
【0041】
次に、これらの衝撃力F,Fによって縦壁部1,2のビード開始点S,Sよりも後方部分が変形を始める。このとき、図3(b)に示すように、縦壁部1,2のビード開始点S,Sよりも後方部分はそれぞれ中心線の外側に膨出するように変形する。つまり、内側壁部1は、内ビード開始点Sよりも後方部分が車体内側に向かって凸となるように湾曲し、外側壁部2は、外ビード開始点Sよりも後方部分が車体外側に向かって凸となるように湾曲する。
【0042】
このように縦壁部1,2のビード開始点S,Sよりも後方部分が最初に変形するのは、この部分に衝撃力F,Fが直接入力され、しかも、ビードBの形成された箇所の強度が他の部分の強度よりも高いためである。つまり、縦壁部1,2のビード開始点S,Sよりも後方部分は、ビードBが形成されている部分に比べて強度が相対的に低下するため、ビードBが形成されている部分に比べて容易に座屈による曲げ変形を生じる。
【0043】
このため、衝撃力F,Fが入力されると、まず縦壁部1,2のビード開始点S,Sよりも後方部分が変形する。また、縦壁部1,2がそれぞれ中心線の外側に向かって凸に湾曲するのは、それぞれのビードB11,B21の入力側の屈曲部の屈曲が促進される形で変形するためと考えられる。
この際、外所定距離Lが内所定距離Lよりも小さく設定されていることから、外側壁部2の外ビード開始点Sの後方部分は、内側壁部1の内ビード開始点Sの後方部分に比べて曲率が大きくなる。したがって、外側壁部2には内側壁部1に比べて大きな反力が生じる。言い換えると、図3(b)に示すように縦壁部1,2の後端縁が前方向に同じ距離だけ変位した場合、外側壁部2に作用する衝撃力F´は、内側壁部1に作用する衝撃力F´よりも大きくなる。
【0044】
このため、外側壁部2は外ビード開始点Sよりも後方部分だけでなく、図3(c)に示すように、外ビード開始点Sの前方部分、すなわち第1外ビードB21と第2外ビードB22との間の第1外ビード前方部212においても座屈による曲げ変形を生じ始める。この曲げ変形は、外側壁部2の第1外ビードB21において図中時計回りのモーメントMを加えながら、第1外ビード前方部212に軸方向の力fとしても作用する。
【0045】
これに対し、内側壁部1は、この時点では内ビード開始点Sの後方部分のみが変形し、内ビード開始点Sの前方部分では変形を生じない。つまり、外側壁部2には内側壁部1に作用する衝撃力F´よりも大きい衝撃力F´が作用するため、外側壁部2では内側壁部1に比べて早い段階で衝撃力F´が部材前方に伝達されて変形が進行する。
次に、図3(d)に示すように、縦壁部1,2の後端縁がさらに前方向に変位すると、内側壁部1においても内ビード開始点Sの前方部分、すなわち第1内ビードB11と第2内ビードB12との間の第1内ビード前方部112が変形し始める。この時点で、これに対応する外側壁部2の第1外ビード前方部212では変形がより進行しており、第1内ビード前方部112に比べて曲率の大きい曲げが生じている。また、外側壁部2では、第2外ビードB22と第3外ビードB23との間の第2外ビード前方部223においても曲げ変形が生じ始める。
【0046】
そして、縦壁部1,2の後端縁がさらに前方向に変位していくと、内側壁部1の第2内ビードB12と第3内ビードB13との間の第2内ビード前方部123においても曲げ変形が生じ始める。このように、外側壁部2では内側壁部1よりも変形が進行し変形量(曲率)が大きくなるため、外側壁部2は内側壁部1に比べて大きく圧縮変形しようとする。これによってリヤサイドメンバ10は、縦壁部1,2に一定以上の衝撃力が作用すると、図3(e)に示すように、外側壁部2が内側壁部1に対して大きく圧縮するように、第3内ビードB13及び第3外ビードB23の後方部分で内側に凸となる折れを生じる。
つまり、リヤサイドメンバ10は、相対的に強度の低いビードBの形成されていない部分がそれぞれ座屈によって蛇腹状に曲げ変形するとともに、後端部10r全体が内側に凸となる折れを生じる。
【0047】
[3.効果]
(1)本実施形態に係るリヤサイドメンバ10では、上述したように、後突時、外側壁部2に生じる反力が内側壁部1に生じる反力よりも大きくなるため、外側壁部2には内側壁部1に作用する衝撃力F´比べて大きな衝撃力F´が作用する。これによって、後端部10rでは外側壁部2が内側壁部1に比べて大きく圧縮変形しようとするため、外側壁部2が内側壁部1に比べて大きく圧縮するように後端部10r全体が内側に凸となる折れを生じる。したがって、リヤサイドメンバ10は、後端部10rが座屈によって蛇腹状に曲げ変形することと内側に凸となる折れ生じることとによって、後突時の衝撃エネルギを吸収することができる。
【0048】
図4(a)は、後突による変形後の状態について、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10と比較例のリヤサイドメンバ100とを比較して示した模式的な上面図であり、図4(b)はその側面図である。図4(a)及び図4(b)中に破線で示す比較例のリヤサイドメンバ100は、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10に対して、内所定距離Lと外所定距離Lとが同じ値に設定されている(すなわち、内ビード開始点Sと外ビード開始点Sとが部材後端から同じ距離に設定されている)点のみ異なっており、他の点は本実施形態に係るリヤサイドメンバ10と同様の構造を有している。
【0049】
図4(a)に示すように、比較例のリヤサイドメンバ100は、内ビード開始点Sと外ビード開始点Sとが部材後端から同じ距離に設定されているため、後突時、上述したような内側に凸となる折れを生じない。つまり、比較例のリヤサイドメンバ100では、主として、ビードBを設けたことにより形成された相対的に強度の低下する部分が座屈して蛇腹状に曲げ変形することによって、後突時の衝撃エネルギを吸収する。
【0050】
これに対し、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10では、上述したように、座屈による蛇腹状の変形によって後突時の衝撃エネルギを吸収することに加え、後端部10r全体が内側に凸となる折れを生じることによっても後突時の衝撃エネルギを吸収することができる。特に、後端部10r全体が折れ変形することによる衝撃エネルギの吸収量は大きいため、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10によれば、比較例のリヤサイドメンバ100に比べて、後突時に前端部10fに伝達される衝撃エネルギを低減することができるので、前端部10fの変形を抑制することができる。
【0051】
したがって、図4(a)及び図4(b)に示すように、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10によれば、後突時、前端部10f付近を支点とした内側及び上側への変位を低減することができる。このため、後突時にリヤサイドメンバ10が前端部10f付近を支点として内側及び上側に大きく変位して燃油タンク4及び給油パイプ41を損傷することを防止することができる。
また、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10によれば、図6(a)に示すようなリヤフロアクロスメンバ61等の補強部材を追加しなくても、前端部10fの変形を抑制することができる。このため、リヤフロアクロスメンバ61等の補強部材を追加することで生じる重量増及びコスト増を抑制することができる。
【0052】
(2)また、リヤサイドメンバ10では、内側壁部1に設けられるビードB11,B12,B13が、何れも、給油パイプ41よりも後方に配置されている。このため、リヤサイドメンバ10によれば、給油パイプ41よりも後方に位置する部位が、ビードBを基点に曲げ変形及び折れ変形することによって後突時の衝撃エネルギを吸収する。言い換えると、リヤサイドメンバ10のうち給油パイプ41よりも前方に位置する部位では、伝達される衝撃エネルギが低減されて変形が抑制される。これにより、リヤサイドメンバ10の給油パイプ41よりも前方に位置する部位が変形して給油パイプ41を損傷してしまうことを防止することができる。
【0053】
(3)また、リヤサイドメンバ10では、内側壁部1のビードB11,B12,B13とこれに対応する外側壁部のビードB21,B22,B23とがそれぞれ所定ピッチPの2分の1だけずれている。このようにビードBを配置することによって、後突時、上述した座屈による蛇腹状の曲げ変形をより確実に生じさせることができるため、前端部10fの変形をより確実に抑制することができる。
【0054】
(4)また、リヤサイドメンバ10においては、内側壁部1のビードBとこれに対応する外側壁部2のビードB(例えば第1内ビードB11と第1外ビードB21)とを結んだ線αが幅方向に対して0度よりも大きく45度以下の角度で傾斜している。このように線αを傾斜させることによって、内側壁部1のビードB11,B12,B13を、外側壁部2のビードB21,B22,B23に対してリヤサイドメンバ10の幅方向の寸法に対応した適切な距離だけ前方にずらして配置することができるため、リアサイドメンバ10の変形モードを容易に最適化することができる。したがって、容易に前端部10fの変形をより確実に抑制することができる。
【0055】
(5)また、リヤサイドメンバ10によれば、ビードBが縦壁部1,2とこれに連続するフランジ部12,22との角部に形成されている。この位置にビードBを配置することによって、ビードBをリヤサイドメンバ10に比較的容易に形成することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0056】
[4.変形例]
以上に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以上の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以上の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0057】
例えば、縦壁部1,2に並設されるビードBの形状及び配置は、上記のものに限定されない。第1変形例として図5(b)に示すように、内側壁部1と内フランジ部12との角部及び内側壁部1と底壁部3との角部を含んで上下方向に延設され、車体外側に凸となる形状のビードB´を、上記実施形態に係るリヤサイドメンバ10の内側壁部1のビードB11,B12,B13に替えて形成してもよい。
【0058】
また、第2変形例として図5(c)に示すように、内側壁部1とこれに連続する底壁部3との角部に設けられ、車体外側に凸となる形状のビードB´´を、上記実施形態に係るリヤサイドメンバ10の内側壁部1のビードB11,B12,B13に替えて形成してもよい。これら第1及び第2変形例に係るビードB´,B´´の何れのものを採用する場合も、上記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0059】
なお、図5(b)及び図5(c)では外側壁部2を省略しているが、外側壁部2には、上述した内側壁部1のビードB´,B´´に対して左右(内外)対称の形状を有するビードB´,B´´がそれぞれ並設される。また、図5(b)及び図5(c)には、縦壁部1,2にビードB´,B´´がそれぞれ三つずつ並設されているものを例示したが、ビードB´,B´´の個数はこれに限定されず、縦壁部1,2にそれぞれ複数個ずつ設けられていればよい。
【0060】
また、所定距離L,Lは、式(1)及び式(2)に示した関係を有するものに限らず、内所定距離Lが外所定距離Lよりも大きければ(すなわち、内ビード開始点Sが外ビード開始点Sよりも前方に配置されていれば)適宜の値(距離)に設定することができる。
また、内側壁部1のビードBとこれに対応する外側壁部2のビードBとを結んだ線αは、上記のように幅方向に対して0度よりも大きく45度以下の角度で傾斜していることが好ましく、20度以上40度以下の角度で傾斜していることがより好ましいが、これらの範囲外の角度で傾斜していても、一定の効果が得られるものと考えられる。
【0061】
また、所定ピッチPは、上記のものに限らず適宜の大きさに設定することができる。
また、上記実施形態では、左側にオフセットした後突時におけるリヤサイドメンバ10の変形を示したが、右側にオフセットした後突時においては、車体右側に備えられるリヤサイドメンバ10について上記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。さらに、オフセットのない後突時等、一対のリヤサイドメンバ10,10の何れに対しても衝撃力が入力される場合には、一対のリヤサイドメンバ10,10の何れについても上記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0062】
また、リヤサイドメンバ10は、上記の車体5を有する自動車に限らず、種々の自動車に適用することができる。例えば、燃油タンク4及び給油パイプ41を装備していない自動車や、上記したものとは別の位置に燃油タンク4,給油パイプ41又は高電圧バッテリ等を装備している自動車にも適用することができる。
また、図3及び図4に示すリヤサイドメンバ10の変形は一例であって、リヤサイドメンバ10の具体的な変形形態は、後突時の衝撃力の大きさやビードBの形状,配置等によって異なる。
【符号の説明】
【0063】
1 内側壁部(第1の縦壁部)
2 外側壁部(第2の縦壁部)
3 底壁部
4 燃料タンク
5 車体
6F リヤフロアクロスメンバ
6S リヤシートクロスメンバ
7 サイドシル
8 リヤフロアパネル
9 リヤエンドパネル
10 リヤサイドメンバ
10c 湾曲部
10F リヤサイドメンバフロント
10f 前端部
10R リヤサイドメンバリヤ
10r 後端部
12 内フランジ部
22 外フランジ部
41 給油パイプ
51 ホイールハウス
61 リヤフロアクロスメンバ
B(B11〜B23),B´,B´´ ビード
,F,F´,F´ 衝撃力
内所定距離(所定距離)
外所定距離(所定距離)
P 所定ピッチ
内ビード開始点(ビード開始点)
外ビード開始点(ビード開始点)
図1
図2
図3
図4
図5
図6