(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197512
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20170911BHJP
A61K 31/4535 20060101ALI20170911BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20170911BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20170911BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20170911BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20170911BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20170911BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20170911BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20170911BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20170911BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/4535
A61K31/198
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/16
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/02
A61P11/00
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-189069(P2013-189069)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-111565(P2014-111565A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-247349(P2012-247349)
(32)【優先日】2012年11月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】土屋 裕里
(72)【発明者】
【氏名】桑田 亜矢
【審査官】
横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−225529(JP,A)
【文献】
特開2011−168580(JP,A)
【文献】
特開2011−079814(JP,A)
【文献】
特開2006−104186(JP,A)
【文献】
特開2006−124288(JP,A)
【文献】
特開2009−109406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
A61K9/00−9/72
A61P1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェン又はその塩、チペピジン又はその塩、及びL−カルボシステインを含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
ロキソプロフェン又はその塩が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
チペピジン又はその塩が、チペピジンヒベンズ酸塩である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
固形製剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
剤形が、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤又は錠剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェン又はその塩、チペピジン又はその塩、及びL−カルボシステインを含有し、崩壊性及びチペピジンの溶出性が優れた医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェンは、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)の一種であり、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛、急性上気道炎や、手術後・外傷後・抜歯後等の消炎・鎮痛・解熱に有効なものとして知られている(非特許文献1)。
ロキソプロフェンは、その優れた薬理作用から、様々な薬物と配合された検討が既になされている。例えば、ケトチフェンフマル酸塩との配合による解熱作用の増強(特許文献1)や、チキジウム臭化物の配合による胃障害の軽減(特許文献2)、プソイドエフェドリン塩酸塩との配合によるくしゃみ防止(特許文献3)などが挙げられる。
【0003】
一方、チペピジンは、咳中枢の抑制による鎮咳作用を示すことや去痰作用を示すこと等が知られている。チペピジンはこれらの作用に基づき、かぜ薬や鎮咳去痰薬に用いられる薬物である(非特許文献2)。
【0004】
本発明者らは、ロキソプロフェンとチペピジンを医薬組成物として利用すべく検討したところ、これらを含有する医薬組成物の崩壊性が悪くなってしまうことがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004―83579号公報
【特許文献2】特開2000―26313号公報
【特許文献3】特開2004−2362号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】第十六改正日本薬局方解説書 株式会社廣川書店 第C−5359−5364頁
【非特許文献2】OTCハンドブック 2008−09 株式会社学術情報流通センター 第290頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、製剤の崩壊性を改善するためには、崩壊剤を配合して改善させることが考えられるが、ロキソプロフェンとチペピジンを含有する製剤においては、一般的な崩壊剤を配合するとチペピジンの溶出性が悪化することを本発明者らは発見した。
したがって、本発明の目的は、ロキソプロフェン又はその塩及びチペピジン又はその塩を含有する医薬組成物の崩壊性とチペピジンの溶出性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々の検討を行ったところ、L−カルボシステインを医薬組成物中に含有せしめることにより、意外にも医薬組成物の崩壊性が改善され、かつチペピジンの溶出性が改善されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は
[1]ロキソプロフェン又はその塩、チペピジン又はその塩、及びL−カルボシステインを含有することを特徴とする医薬組成物、
[2]ロキソプロフェン又はその塩が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である[1]記載の医薬組成物、
[3]チペピジン又はその塩が、チペピジンヒベンズ酸塩である[1]に記載の医薬組成物、
[4]固形製剤である[1]〜[3]のいずれか1に記載の医薬組成物、
[5]剤形が、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤又は錠剤である[1]〜[4]のいずれか1に記載の医薬組成物、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ロキソプロフェン及びチペピジンを配合し、製剤の崩壊性及びチペピジンの溶出性が優れた医薬組成物の提供が可能となった。さらに、ロキソプロフェンによる消炎・鎮痛・解熱作用、チペピジンによる鎮咳作用、及びL−カルボシステインによる去痰作用を兼ね備えた優れた一般用医薬品(OTC)製剤の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例2及び比較例8及び9の製剤のチペピジンヒベンズ酸塩の溶出性試験結果を示した図である。
【
図2】実施例2及び比較例8及び9の製剤のロキソプロフェンナトリウムの溶出性試験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の医薬組成物中におけるロキソプロフェン又はその塩には、ロキソプロフェンのみならず、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩、さらには水やアルコール等との溶媒和物が含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明において、ロキソプロフェン又はその塩としては、ロキソプロフェンナトリウム水和物(化学名:Monosodium 2-[4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl]propanoate dihydrate)が好ましい。
本発明の医薬組成物におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、医薬組成物全質量に対して、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で3.5〜60質量部、好ましくは5.0〜40質量部、特に好ましくは5.0〜30質量部、最も好ましいのは6.0〜20質量部である。
【0013】
本発明の医薬組成物におけるチペピジン又はその塩の含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、医薬組成物全質量に対してチペピジン又はその塩を0.1〜35質量部、好ましくは0.15〜25質量部、より好ましくは0.2〜15質量部である。
【0014】
本発明の医薬組成物に含まれるL−カルボシステインは、気道粘液調整及び粘膜正常化作用を有し、優れた去痰作用を有する化合物として公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明の医薬組成物におけるL−カルボシステインの含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、医薬組成物全質量に対してL−カルボシステインを10〜85質量部、好ましくは15〜70質量部、より好ましくは20〜60質量部、更に好ましくは30〜50質量部である。
【0015】
本発明の医薬組成物に含まれるロキソプロフェン又はその塩、及びチペピジン又はその塩の含有比は、ロキソプロフェン又はその塩を、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、チペピジン又はその塩を、0.025〜10質量部含有するものが好ましく、0.03〜5.0質量部含有するものがより好ましく、特に0.03〜1.25質量部が好ましい。
【0016】
本発明の医薬組成物に含まれるチペピジン又はその塩とL−カルボシステインの含量比は、チペピジン又はその塩1質量部に対してL−カルボシステインは1.2〜300質量部、崩壊性改善の点から特に5〜100質量部が好ましい。本発明の医薬組成物中におけるロキソプロフェン又はその塩、チペピジン又はその塩及びL−カルボシステインの含有量は、20質量部以上、好ましくは25〜60質量部である。
【0017】
また、本発明の医薬組成物中にはロキソプロフェン又はその塩、チペピジン又はその塩、L−カルボシステインの他に、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分(例えばジヒドロコデインリン酸塩等の鎮咳剤、メチルエフェドリン塩酸塩等の気管支拡張剤、カフェイン無水物等の中枢興奮剤など)、賦形剤、崩壊剤、結合剤などを配合しうる。
【0018】
また本発明の医薬組成物の剤形は特に限定されず、固形製剤、ドライシロップ剤などが挙げられるが、製剤の崩壊性及びチペピジンの溶出性改善という効果の点から、固形製剤で実施する意義は大きい。固形製剤としては、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤(フィルムコーティング錠、糖衣錠、積層錠を含む)、カプセル剤、ドライシロップ剤、トローチ剤等、服用時に固形の剤形のものであるが、特に錠剤が好ましい。
【実施例】
【0019】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0020】
(試験例1)
表1に示す各成分及び分量を秤量、混合し得られた医薬組成物300mgずつを秤量し、卓上簡易錠剤成型機(商品名:HANDTAB;市橋精機)を用いて15kNで打錠し、錠剤径9mmの錠剤を得た。
それぞれの錠剤の崩壊時間を3回ずつ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0021】
(試験例2)
表2に示すステアリン酸マグネシウム以外の各成分及び分量を秤量、混合し、水を加えて乳鉢で練合し、十分乾燥させた後、30メッシュの篩を通し、各々にステアリン酸マグネシウムを添加し、よく混合した。この医薬組成物300mgずつを秤量し、卓上簡易錠剤成型機(商品名:HANDTAB;市橋精機)を用いて5kNで打錠し、錠剤径9mmの錠剤を得た。それぞれの錠剤の崩壊時間を3回ずつ測定し、その平均値を求めた。その結果を、表2に示す。また、実施例2、比較例8及び9について1錠につき、第十六改正日本薬局方の溶出試験法パドル法に従い、37℃、パドル回転数100rpmの条件で試験し、5、10、15、30、60分後のチペピジンヒベンズ酸塩及びロキソプロフェンナトリムの溶出率を算出した。その結果を表3及び
図1及び
図2に示す。
【0022】
表1〜3及び
図1〜2から明らかなように、チペピジンヒベンズ酸塩とロキソプロフェンナトリウムを配合した錠剤は、チペピジンヒベンズ酸塩のみを配合した錠剤よりも崩壊時間が遅かった(比較例1、2)。チペピジンヒベンズ酸塩とロキソプロフェンナトリウムに一般的な崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウム又はカルボキシメチルスターチナトリウムを配合すると崩壊時間は改善されたが、チペピジンヒベンズ酸塩は十分に溶出しなかった(比較例3、4、8、9)。
一方、チペピジンヒベンズ酸塩とロキソプロフェンナトリウムにL−カルボシステインを配合した錠剤は、チペピジンヒベンズ酸塩とロキソプロフェンナトリウムを配合した錠剤と比べて崩壊時間が改善され、チペピジンヒベンズ酸塩及びロキソプロフェンナトリウムの溶出性は良好であった(実施例1、2、比較例7)。
なお、表1から明らかなように、チペピジンヒベンズ酸塩とロキソプロフェンナトリウムに、L−カルボシステインと同じ去痰薬であるアンブロキソール塩酸塩またはブロムヘキシン塩酸塩を配合しても、崩壊時間は改善されなかった(比較例5、6)。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩及びL−カルボシステインを含有し、製剤の崩壊性及びチペピジンの溶出性が優れた医薬組成物の提供が可能となる。