(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197621
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】薄葉紙用紙料の調成方法、薄葉紙用紙料、薄葉紙の製造方法、薄葉紙、および製造装置
(51)【国際特許分類】
D21H 21/24 20060101AFI20170911BHJP
A47K 10/16 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
D21H21/24
A47K10/16 D
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-255352(P2013-255352)
(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公開番号】特開2015-113531(P2015-113531A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 敬司
【審査官】
長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−180609(JP,A)
【文献】
特開2006−283231(JP,A)
【文献】
特開昭63−165597(JP,A)
【文献】
特公昭48−038886(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K7/00
10/16
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料パルプを水中に分散させた懸濁液に対し界面活性剤を添加する、薄葉紙を抄紙する紙料の調成方法であって、
カチオン性界面活性剤を添加する第1工程と、
前記第1工程よりも後に行われる両イオン性界面活性剤を添加する第2工程と、
を含むことを特徴とする、薄葉紙用紙料の調成方法。
【請求項2】
前記第1工程と前記第2工程との間に前記懸濁液を攪拌する攪拌工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の薄葉紙用紙料の調成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薄葉紙用紙料の調成方法によって調成された薄葉紙用紙料。
【請求項4】
請求項3に記載の薄葉紙用紙料を用いて抄紙を行う抄紙工程を含む薄葉紙の製造方法。
【請求項5】
前記抄紙工程よりも前に行われる薄葉紙用紙料を調成する調成工程をさらに含み、前記調成工程では前記請求項1または2に記載の薄葉紙用紙料の調成方法によって前記薄葉紙用紙料を調成することを特徴とする、請求項4に記載の薄葉紙の製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の薄葉紙用試料を用いて製造されたことを特徴とする薄葉紙。
【請求項7】
請求項1または2に記載の調成方法によって薄葉紙用紙料を調成するための製造装置であって、
カチオン性界面活性剤を添加する第1手段と、
前記第1手段によるカチオン性界面活性剤の添加の後に両イオン性界面活性剤を添加する第2手段と、
を備えることを特徴とする製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄葉紙、特にティシュペーパー、トイレットペーパー、ちり紙等の衛生薄葉紙に関し、薄葉紙用紙料の調成方法、薄葉紙用紙料、薄葉紙の製造方法、薄葉紙および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパー、トイレットペーパー、ちり紙等の衛生薄葉紙には、柔らかさに優れ肌触りが良いといった官能的性能、および使用時に破れたりすることのない程度の強度を有するといった強度性能が求められている。柔らかさを向上させる方法として、原料パルプに柔軟剤として界面活性剤を添加する方法が知られている。例えば、特許文献1は、原料パルプの質量に対してカチオン性の界面活性剤を0.05〜1質量パーセントの量で添加する衛生薄葉紙の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4044103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、柔軟剤の添加量を増やしすぎると薄葉紙の紙力強度が低下することを開示している。近年、柔らかさや肌触りに対する要求がますます高まってきているが、特許文献1の方法では、官能的性能をさらに向上させようとすると、強度性能が損なわれてしまう。
【0005】
したがって、本発明の目的は、使用に適した強度性能を満たしつつ柔らかさ等の官能的性能に優れた薄葉紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、以下の発明を包含する。
(1)原料パルプを水中に分散させた懸濁液に対し界面活性剤を添加する、薄葉紙を抄紙する紙料の調成方法であって、カチオン性界面活性剤を添加する第1工程と、第1工程よりも後に行われる両イオン性界面活性剤を添加する第2工程と、を含む薄葉紙用紙料の調成方法。
(2)第1工程と第2工程との間に懸濁液を攪拌する攪拌工程をさらに含む、(1)の薄葉紙用紙料の調成方法。
(3)(1)または(2)の薄葉紙用紙料の調成方法によって調成された薄葉紙用紙料。
(4)(3)の薄葉紙用紙料を用いて抄紙を行う抄紙工程を含む薄葉紙の製造方法。
(5)抄紙工程よりも前に行われる薄葉紙用紙料を調成する調成工程をさらに含み、調成工程では(1)または(2)の薄葉紙用紙料の調成方法によって薄葉紙用紙料を調成する、(4)の薄葉紙の製造方法。
(6)(4)または(5)の薄葉紙の製造方法によって製造されたことを特徴とする薄葉紙。
(7)(1)または(2)の調成方法によって薄葉紙用紙料を調成するための製造装置であって、カチオン性界面活性剤を添加する第1手段と、第1手段によるカチオン性界面活性剤の添加の後に両イオン性界面活性剤を添加する第2手段と、を備える製造装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用に適した強度性能を満たしつつ、柔らかさ等の官能的性能に優れた薄葉紙が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る紙料調成工程の例を説明する製造装置図。
【
図2】本発明の実施例の官能評価試験結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る薄葉紙およびその製造方法の実施の形態を説明する。本発明の薄葉紙の例は、トイレットペーパー、ティシュペーパー、ちり紙等の衛生薄葉紙を含む。本発明の薄葉紙は、原料から原料パルプ繊維の懸濁液(パルプスラリー)である紙料を調成する紙料調成工程と、紙料から原料パルプ繊維を抄いて繊維ウェブを形成し、形成した繊維ウェブを乾燥させる抄紙工程と、によって製造される。本発明の薄葉紙は、これを製造する際の紙料調成工程において、原料に、柔軟剤として、カチオン性界面活性剤と両イオン性界面活性剤とをこの順番で添加して併用することを特徴とする。
【0010】
[原料]
本発明の薄葉紙に用いることができる原料について説明する。本発明の薄葉紙は、パルプを主原料とする。本発明において使用することができる原料パルプは、水素結合を生じて製紙に使用することのできる繊維であればよく、製法および原料に特に制限はない。例えば:機械パルプ(MP);化学的機械パルプ(CGP);半化学的パルプ(SCP);広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP);ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP);ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ;脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ;かすパルプ(TP);木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ;わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ;靭皮パルプ等の補助パルプなどの中から、原料パルプを適宜選択することができる。製造する薄葉紙の用途や要求される性能に応じて、1種類の原料パルプを使用してもよく、または複数種類の原料パルプを任意の比率で使用してもよい。原料パルプは、未叩解パルプであってもよく、全体または一部が叩解されていてもよい。原料パルプは、紙料調成工程において叩解されてもよい。
【0011】
本発明の薄葉紙は、柔軟剤として、カチオン性界面活性剤と、両イオン性界面活性剤と、をこの順番で添加して用いることを特徴とする。
【0012】
カチオン性界面活性剤は、水中でプラス(正)の電荷を持つように電離する界面活性剤である。本発明のカチオン性界面活性剤として、例えば、第4級アンモニウム塩、アミン塩、アミン、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルなどを使用することができる。
【0013】
両イオン性界面活性剤は、水中でプラス(正)およびマイナス(負)の両方の電荷を持つことができる界面活性剤である。本発明の両イオン性界面活性剤として、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体、もしくは複素環式第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体などを使用することができる。
【0014】
カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤は、それぞれ高分子の形態であることができる。カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤は、一般的にはそれぞれ1種のみを使用するが、複数種を用いるものであってもよい。
【0015】
必要に応じて、分散剤、苛性ソーダやアンモニア水などのpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤などの薬品を添加することができる。
【0016】
[衛生薄葉紙の製造方法]
上述のように、本発明の薄葉紙の製造方法は、原料から原料パルプの懸濁液(パルプスラリー)である紙料を調成する紙料調成工程と、紙料から原料パルプを抄いて繊維ウェブを形成し、形成した繊維ウェブを乾燥させる抄紙工程と、を含む。本発明は、このうち紙料調成工程における紙料調成方法に特徴を有する。本発明に係る薄葉紙の製造方法における各工程を以下に説明する。
【0017】
(紙料調成工程)
本発明に係る紙料調成工程を説明する。
【0018】
まず、原料パルプを構成するパルプ繊維を水に分散させて懸濁液(パルプスラリー)とする。
【0019】
次いで、懸濁液に対し、カチオン性界面活性剤を添加する。パルプ繊維は懸濁液中でアニオン性を示すので、カチオン性界面活性剤はパルプ繊維に対して吸着または結合することができる。吸着または結合したカチオン性界面活性剤の存在により、パルプ繊維同士の水素結合が生じにくくなり、また、パルプ繊維同士の間隔が広くなるため、製造される薄葉紙(最終製品)の柔らかさが向上すると考えられる。
【0020】
懸濁液における原料パルプ繊維に対するカチオン性界面活性剤の吸着または結合の機会を促進させるために、添加されたカチオン性界面活性剤を懸濁液中に均一に分散させる。均一分散の手段に特に制限はない。例えば、知られている任意の攪拌機を用いて攪拌を行ってもよく、ポンプによる懸濁液の揚水等を利用して同様の効果を得てもよく、また、必要に応じて行うパルプ繊維の離解/叩解処理において生じるせん断力等を利用してもよい。このような均一分散のための処理は、界面活性剤の添加の後のみならず、添加の前または最中から行うものであってもよい。以下、本明細書において、「攪拌」、「攪拌手段」、「攪拌効果」等の用語は、それぞれ、「均一分散のための処理」、「均一分散のための手段」、「均一分散効果」等と同義に用いられるものとする。
【0021】
次いで、カチオン性界面活性剤を添加して均一に分散させた後の懸濁液に対し、両イオン性界面活性剤を添加する。任意の攪拌手段を用いて、添加された両イオン性界面活性剤を懸濁液中に均一に分散させる。
【0022】
両イオン性界面活性剤は、そのマイナスの電荷により、プラスに帯電するものに対して吸着または結合することができる。先に添加したカチオン性界面活性剤がパルプ繊維に吸着されてその表面にプラスの電荷を与えている場合、両イオン性界面活性剤は、これに対して吸着することができる。このとき、パルプ繊維の表面には、カチオン性界面活性剤と両イオン性界面活性剤とが層を成して存在することとなる。そのような層構成によりパルプ繊維同士の間隔はさらに広くなり、製造される薄葉紙(最終製品)の柔らかさは、カチオン性界面活性剤の単独使用時と比べてより増大すると考えられる。また、両イオン性界面活性剤は、プラスの電荷を持つことができ、これにより、アニオン性のパルプ繊維に吸着または結合することができる。したがって、パルプ繊維とパルプ繊維とは、カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤を介して結合することができ、製造される薄葉紙(最終製品)に強度が得られると考えられる。
【0023】
ここで、本発明において、カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤の添加の順番、ならびに添加に際する攪拌(均一分散のための処理)は、本発明の効果を得るために重要である。
【0024】
まず、攪拌の重要性について説明する。カチオン性界面活性剤を添加した際に攪拌を行わないと、パルプ繊維に対するカチオン性界面活性剤の吸着または結合が懸濁液において均一に生じないため、製造される薄葉紙(最終製品)に品質のばらつきが生じることとなる。また、攪拌を行わないと、攪拌を行った場合と比べて、パルプ繊維に吸着または結合されずに懸濁液中に遊離して存在するカチオン性界面活性剤の量が多くなる可能性がある。このとき、後に添加する両イオン性界面活性剤が、遊離して存在するカチオン性界面活性剤に吸着または結合して、パルプ繊維とは無関係に複合体を形成する可能性がある。このような複合体は、最終製品としての薄葉紙において、パルプ繊維間に存在することによりパルプ繊維同士の間隔を広げて柔らかさを付与することはできるが、パルプ繊維同士の結合に寄与しないため強度を提供することはできないものと考えられる。また、このような複合体は、後に行う抄紙工程において白水と共に排出されてしまう可能性があり、その場合、界面活性剤の添加量に対して得られる柔軟化の効果が小さくなるものと考えられる。したがって、パルプ繊維の懸濁液にカチオン性界面活性剤を添加した際に、両イオン性界面活性剤を添加するまでの間の攪拌は重要である。なお、両イオン性界面活性剤を添加してからの攪拌もまた、懸濁液中で両イオン性界面活性剤を均一に分散させ、反応を均一に生じさせるために重要であることは理解されよう。
【0025】
次に、添加の順番の重要性について説明する。カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤をこの順番で加える本発明においては、カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤は上述のような挙動を示すものと考えられ、官能的性能および強度性能の両立という効果が得られる。これに対し、カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤を本発明とは逆の順番に加える場合は、本発明と同様の効果は得られない。すなわち、両イオン性界面活性剤は、一般に、カチオン性界面活性剤と比べて、パルプ繊維に対する吸着または結合の度合いが小さく、両イオン性界面活性剤を最初に加えた場合、パルプ繊維に吸着または結合されずに遊離している量の割合が高くなる。そのため、次にカチオン性界面活性剤を加えた際に、本発明と比べて、パルプ繊維とは無関係な複合体が形成される割合が高くなり、パルプ繊維同士が両イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤を介して結合する形態が得られにくいものと考えられる。また、カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤を同時に加える場合は、パルプ繊維とは無関係な複合体の形成割合がさらに高くなるものと考えられ、やはり、本発明のような効果は得られない。したがって、パルプ繊維の懸濁液にカチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤を添加する際の添加の順番は重要である。
【0026】
以上のステップを含む紙料調成工程により、本発明の薄葉紙を製造するための紙料を得ることができる。
【0027】
なお、以上説明した紙料調成工程においては、常法に従って、各ステップに適した水分量(パルプ濃度)の調整を適宜行う。紙料調成工程において、懸濁液に対し、先に例示したもののような薬品を必要に応じて添加することができるが、上述の本発明の効果を妨げることのないような材料および添加時期であることを要する。紙料調成工程は、必要に応じて、懸濁液中の原料パルプを解したり切断したりするための離解処理および/または叩解処理のステップを含んでいてもよい。離解処理および叩解処理の手段に特に制限はなく、例えば、トップファイナー(TF)やリファイナー(RF)等の知られている手段を用いることができる。カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤の各添加は、離解処理および叩解処理のそれぞれの前、最中、および後のいずれに行うものであってもよいが、カチオン性界面活性剤が十分に均一分散された後に、両イオン性界面活性剤を添加することを要する。
【0028】
本発明に係る紙料調成工程の1つの実施形態を
図1に示す製造装置図により説明する。本実施形態は、例示目的であり、発明を限定するものではなない。まず、溶解パルパーにて原料パルプを水に分散させて懸濁液とする。第1のポンプを用いて懸濁液を溶解パルパーから第1のチェストに送る。次いで、第2のポンプを用いて懸濁液を第1のチェストからトップファイナー(TF)に送る。このとき、第2のポンプの直前に設けた添加手段Aにより、カチオン性界面活性剤を懸濁液に添加する。この添加ステップの後に第2のポンプによる揚水が行われるので、これにより、カチオン性界面活性剤を添加した懸濁液の攪拌(均一分散)が行われる。トップファイナー(TF)で離解処理された原料パルプの懸濁液は、次いでリファイナ(RF)で叩解処理されて、第2のチェストに送られる。TFおよびRFによる処理によっても攪拌効果が得られる。第2のチェストにおいて、添加手段Bにより、両イオン性界面活性剤を懸濁液に添加する。第3のポンプを用いて懸濁液をスタックボックスまたは抄紙機のヘッドボックスに送る。この添加ステップの後に第3のポンプによる懸濁液の揚水が行われるので、これにより、両イオン性界面活性剤を添加した後の懸濁液の攪拌(均一分散)が行われる。このようにして、次に行われる抄紙工程のための紙料を製造する。
【0029】
(抄紙工程)
抄紙工程は、紙料調成工程によって得られた紙料から、原料パルプを抄いて繊維ウェブを形成するステップと、形成した繊維ウェブを乾燥させるステップと、を含む。本発明の抄紙工程には、従来知られている、薄葉紙を製造するための抄紙方法を採用することができる。例えば、ヘッドボックスから供給する紙料をワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート等で順次処理することによって、薄葉紙を製造することができる。また、必要に応じて、さらに、サイズプレス処理および/またはカレンダー処理を行ってもよい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について説明する。
[実施例]
針葉樹クラフトパルプ(NKP)および広葉樹クラフトパルプ(LKP)を50%:50%の絶乾質量比で水中に分散させて懸濁液とした。この懸濁液に、脂肪酸ベースのカチオン性界面活性剤を原料パルプの質量に対して0.02質量%の量で添加して、十分な攪拌を行った。次いでフリーネスダウン値が50ccとなるように叩解を行い、脂肪族誘導体ベースの両イオン性界面活性剤を原料パルプの質量に対して0.05質量%の量で添加して、さらに十分な攪拌を行って、抄紙用の紙料を得た。この紙料から、丸網抄紙機を用いて米坪量14.1g/m
2の薄葉紙を得た。得られた薄葉紙は、縦214mm×横218mmのサイズの2枚重ねとし、200組の2枚重ねの薄葉紙を、折り畳んだ部分が交互にかみ合うよう2つに折り畳んで組み合わせていき、1つのティシュ箱にセットした。
【0031】
[参考例]
両イオン性界面活性剤の添加量を原料パルプの質量に対して0質量%とした(すなわち、両イオン性界面活性剤を添加しなかった)以外は実施例と同様にして、米坪量14.1g/m2の薄葉紙を得た。得られた薄葉紙は、縦214mm×横218mmのサイズの2枚重ねとし、200組の2枚重ねの薄葉紙を、折り畳んだ部分が交互にかみ合うよう2つに折り畳んで組み合わせていき、1つのティシュ箱にセットした。
【0032】
<試験内容>
実施例および参考例の薄葉紙について官能評価試験を行った。試験項目は以下に示す6つとし、官能評価は5点評価とした。試験者103人による評価点の平均値を求めた。
(試験項目)
(1)柔らかさ:ティシュ箱から取り出したときに柔らかい。
(2)なめらかさ:ティシュ箱から取り出したときになめらかである。
(3)柔らかさ:鼻をかむときに柔らかい。
(4)しっとり感:鼻をかむときにしっとりとした感触がある。
(5)ふんわり感:鼻をかむときにふんわりとした感触がある。
(6)肌への刺激感:鼻をかむときに肌への刺激が少ない。
(官能評価の点数および基準)
5点: たいへんそう感じる。
4点: そう感じる。
3点: どちらともいえない。
2点: そう感じない。
1点: まったくそう感じない。
【0033】
<試験結果>
官能評価試験の結果を
図2の表に示す。本発明の実施例によれば、ティシュ箱から取り出したときの官能的性能(柔らかさ、なめらかさ)および鼻をかむときの官能的性能(柔らかさ、しっとり感、ふんわり感、肌への刺激感)のいずれにおいても、良好な結果が得られた。また、本発明の実施例の薄葉紙に関して、使用時に破れたり解れたりし易い傾向は特段認められず、使用に十分な強度性能を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、使用に適した強度性能を満たしつつ柔らかさ等の官能的性能に優れた薄葉紙が得られる。
【符号の説明】
【0035】
P ポンプ
A、B 界面活性剤の添加手段