特許第6197679号(P6197679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197679
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   F04C18/02 311Q
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-23983(P2014-23983)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-151876(P2015-151876A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】横井 健二
(72)【発明者】
【氏名】水藤 健
(72)【発明者】
【氏名】村上 和朗
(72)【発明者】
【氏名】福谷 義一
(72)【発明者】
【氏名】椿井 慎治
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−304154(JP,A)
【文献】 特開2002−013491(JP,A)
【文献】 特開2001−304153(JP,A)
【文献】 特開2000−120566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定基板と、前記固定基板から渦巻状に突設された固定渦巻壁とを有する固定スクロールと、
可動基板と、前記可動基板から渦巻状に突設された可動渦巻壁とを有し、前記固定スクロールとの間に圧縮室が形成される可動スクロールとを備え、
前記可動スクロールが前記固定スクロールに対して公転することにより、前記圧縮室内の冷媒が圧縮され、
前記圧縮室で圧縮された冷媒を吐出する吐出ポートと、吸入された冷媒の吸入圧よりも高く、吐出された冷媒の吐出圧より低い中間圧の冷媒を、外部冷媒回路から圧縮途中の前記圧縮室に導入するインジェクションポートとが前記固定基板に貫設されたスクロール型圧縮機において、
前記インジェクションポートは、前記固定基板の前記圧縮室側の面に形成された長穴形状の開口と、前記固定基板の前記圧縮室側とは反対側の面に形成された丸穴形状の開口と、前記長穴形状の開口と前記丸穴形状の開口とを連通させる連通通路とを備え、
前記長穴形状の開口は、前記可動渦巻壁により閉塞可能であり、
前記丸穴形状の開口は、前記長穴形状の開口よりも開口面積が大きく、
前記長穴形状の開口は、その長手方向の長さが、前記丸穴形状の開口における径方向の長さよりも大きいことを特徴とするスクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記連通通路は、前記丸穴形状の開口から前記固定基板の厚さ方向に延びると共に、前記丸穴形状の開口に合わせた通路断面を有する第1連通通路と、前記長穴形状の開口から前記固定基板の厚さ方向に延びると共に、前記長穴形状の開口に合わせた通路断面を有する第2連通通路とを有し、
前記第1連通通路の前記固定基板の厚さ方向の長さは、前記第2連通通路の前記固定基板の厚さ方向の長さよりも長い請求項1記載のスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記連通通路は、前記第1連通通路と前記第2連通通路とを接続する接続通路をさらに有し、
前記接続通路は、前記第1連通通路側から前記第2連通通路側に向かうに従って縮径されている請求項2記載のスクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記固定スクロールの前記圧縮室側とは反対側の面には中間圧ハウジングが固定され、
前記中間圧ハウジングには、前記外部冷媒回路から前記中間圧の冷媒が導入される中間圧ポートと、前記吐出ポートに連通される吐出室と、前記丸穴形状の開口に連通されるインジェクション室とが形成されている請求項1乃至3のいずれか1項記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のスクロール型圧縮機(以下、単に圧縮機という。)が開示されている。この圧縮機は、固定スクロールと可動スクロールとを備えている。固定スクロールは、固定基板と、固定基板から渦巻状に突設された固定渦巻壁とを有している。可動スクロールは、可動基板と、可動基板から渦巻状に突設された可動渦巻壁とを有している。可動スクロールは、固定スクロールとの間に圧縮室が形成される。可動スクロールが固定スクロールに対して公転することにより、圧縮室内の冷媒が圧縮される。
【0003】
固定基板には、吐出ポートと、2個のインジェクションポートとが貫設されている。吐出ポートは、圧縮室で圧縮された冷媒を吐出する。各インジェクションポートは、吸入された冷媒の吸入圧よりも高く、吐出された冷媒の吐出圧より低い中間圧の冷媒を、外部冷媒回路から圧縮途中の圧縮室に導入する。各インジェクションポートは、可動渦巻壁により閉塞可能な長穴である。このため、各インジェクションポートを通じて、圧縮室に中間圧の冷媒が導入されれば、圧縮機を用いた冷凍回路の効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−13491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の圧縮機では、インジェクションポートの圧縮室側が可動渦巻壁の厚さによって制限を受けていることから、インジェクションポート全体が長穴とされており、中間圧の冷媒が十分に圧縮室に導入され難い。このため、この圧縮機を用いた冷凍回路では、さらなる効率の向上が難しい。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、冷凍回路の効率を確実に向上させることができる圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスクロール型圧縮機は、固定基板と、前記固定基板から渦巻状に突設された固定渦巻壁とを有する固定スクロールと、
可動基板と、前記可動基板から渦巻状に突設された可動渦巻壁とを有し、前記固定スクロールとの間に圧縮室が形成される可動スクロールとを備え、
前記可動スクロールが前記固定スクロールに対して公転することにより、前記圧縮室内の冷媒が圧縮され、
前記圧縮室で圧縮された冷媒を吐出する吐出ポートと、吸入された冷媒の吸入圧よりも高く、吐出された冷媒の吐出圧より低い中間圧の冷媒を、外部冷媒回路から圧縮途中の前記圧縮室に導入するインジェクションポートとが前記固定基板に貫設されたスクロール型圧縮機において、
前記インジェクションポートは、前記固定基板の前記圧縮室側の面に形成された長穴形状の開口と、前記固定基板の前記圧縮室側とは反対側の面に形成された丸穴形状の開口と、前記長穴形状の開口と前記丸穴形状の開口とを連通させる連通通路とを備え、
前記長穴形状の開口は、前記可動渦巻壁により閉塞可能であり、
前記丸穴形状の開口は、前記長穴形状の開口よりも開口面積が大きく、
前記長穴形状の開口は、その長手方向の長さが、前記丸穴形状の開口における径方向の長さよりも大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明の圧縮機では、インジェクションポートの圧縮室側の面に形成された開口は、可動渦巻壁の厚さによって制限を受けることから、長穴形状とされている。しかし、インジェクションポートの圧縮室側とは反対側の面に形成された開口は、可動渦巻壁の厚さによって制限を受けないため、長穴形状に限定されない。このため、圧縮室側とは反対側のインジェクションポートの開口を丸穴形状にし、かつ丸穴形状の開口の開口面積が長穴形状の開口の開口面積よりも大きくなるようにすれば、従来よりも大量の中間圧の冷媒を圧縮室側とは反対側のインジェクションポートに導入することができる。こうして丸穴形状の開口内に導入した中間圧の冷媒は、連通通路を経て長穴形状の開口から圧縮室に導入される。こうして、従来よりも大量の中間圧の冷媒を圧縮室に導入することができる。なお、丸穴とは、その中心を通る軸から見て、円形に形成された穴である。また、長穴とは、丸穴をその中心を通る軸を平行に移動させて得られる穴である。
【0009】
したがって、この圧縮機では、冷凍回路の効率を確実に向上させることができる。
【0010】
連通通路は、丸穴形状の開口から固定基板の厚さ方向に延びると共に、丸穴形状の開口に合わせた通路断面を有する第1連通通路と、長穴形状の開口から固定基板の厚さ方向に延びると共に、長穴形状の開口に合わせた通路断面を有する第2連通通路とを有し得る。第1連通通路の固定基板の厚さ方向の長さは、第2連通通路の固定基板の厚さ方向の長さよりも長い方が好ましい。
【0011】
この場合、第1連通通路内の中間圧の冷媒が第2連通通路内の中間圧の冷媒よりも多くなることから、圧縮室に導入される中間圧の冷媒の量が確実に増加する。
【0012】
また、丸穴は、回転するエンドミルやドリルをその軸方向に移動させることにより、形成可能である。また、長穴は、回転するエンドミルやドリルをその軸方向に移動させ、かつその軸と直交する方向に移動させることにより、形成可能である。このため、第1連通通路は、外径の太いエンドミルやドリルを用い、回転するそのエンドミルやドリルを固定基板の圧縮室側とは反対側の面からその軸方向に移動させることにより、形成可能である。また、第2連通通路は、外径の短いエンドミルやドリルを用い、回転するエンドミルやドリルを固定基板の圧縮室側の面からその軸方向に移動させ、かつその軸と直交する方向に移動させることにより、形成可能である。このため、第1連通通路の長さが第2連通通路の長さよりも長ければ、インジェクションポートの加工時間のうち、丸穴を形成している時間が長穴を形成している時間より短くなる。このため、第2連通通路が第1連通通路よりも長い場合と比較して、加工時間が短く、製造コストを抑えることができる。
【0013】
連通通路は、第1連通通路と第2連通通路とを接続する接続通路をさらに有していることが好ましい。この接続通路は、第1連通通路側から第2連通通路側に向かうに従って縮径されていることが好ましい。
【0014】
この場合、第1連通通路から第2連通通路に導入される中間圧の冷媒の流路抵抗が接続通路内で低減され、中間圧の冷媒がより圧縮室内に導入され易くなる。
【0015】
固定スクロールの圧縮室側とは反対側の面には中間圧ハウジングが固定され得る。中間圧ハウジングには、外部冷媒回路から中間圧の冷媒が導入される中間圧ポートと、吐出ポートに連通される吐出室と、丸穴形状の開口に連通されるインジェクション室とが形成されていることが好ましい。この場合、中間圧の冷媒を固定スクロールの圧縮室側とは反対側の面から供給し易い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の圧縮機では、冷凍回路の効率を確実に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の圧縮機の断面図である。
図2】実施例1の圧縮機を用いた暖房冷凍回路の構成図である。
図3】実施例1の圧縮機を用いた暖房冷凍回路の構成図である。
図4】実施例1の圧縮機に係り、固定スクロールの平面図である。
図5】実施例1の圧縮機に係り、インジェクションポートの拡大断面図である。
図6】実施例1の圧縮機に係り、インジェクションポートの拡大平面図である。
図7】実施例2の圧縮機に係り、インジェクションポートの拡大平面図である。
図8参考例の圧縮機に係り、インジェクションポートの拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の圧縮機は、ハウジング10を備えている。ハウジング10は、後端側が開口する有底筒状のフロントハウジング11と、中間圧ハウジング12と、蓋状をなして中間圧ハウジング12の後端側を塞ぐリヤハウジング13とからなる。中間圧ハウジング12は、フロントハウジング11とリヤハウジング13との間に設けられている。なお、図1において、右側が前方を示し、左側が後方を示す。
【0020】
フロントハウジング11の後端と中間圧ハウジング12の前端とが互いに突き合わされている。また、中間圧ハウジング12の後端とリヤハウジング13の前端とが互いに突き合わされている。フロントハウジング11、中間圧ハウジング12及びリヤハウジング13は、複数本のボルト17によって相互に固定されている。
【0021】
フロントハウジング11内には、固定ブロック15及び固定スクロール16が設けられている。固定ブロック15の後方に固定スクロール16が設けられている。固定ブロック15と固定スクロール16との間には、円環形状をなす第1プレート60が介在されている。固定ブロック15、第1プレート60及び固定スクロール16は、フロントハウジング11と中間圧ハウジング12との間で互いに当接した状態で固定されている。
【0022】
固定スクロール16は、固定基板16aと、固定基板16aと一体をなし、固定基板16aから軸方向の前方に突設された渦巻状の固定渦巻壁16bと、固定基板16aと一体をなし、固定渦巻壁16bを周囲から覆う外周壁16cとからなる。
【0023】
固定スクロール16には、固定スクロール16と固定ブロック15との間において、可動スクロール22が噛み合わされている。可動スクロール22は、固定基板16aと対面する円板状の可動基板22aと、可動基板22aと一体をなし、可動基板22aから軸方向の後方に突設された渦巻状の可動渦巻壁22bとからなる。
【0024】
フロントハウジング11の前壁の内面中央には、円筒状のボス11aが後方に向かって突設されている。ボス11aには軸受装置26が設けられている。一方、固定ブロック15の中央には軸孔15aが貫通して形成されている。軸孔15a内には軸受装置25が設けられている。軸受装置25、26には軸方向で前後に延びる駆動軸24が回転可能に支持されている。また、固定ブロック15と駆動軸24との間には封止用のシール材30がサークリップ31によって介装されている。
【0025】
固定ブロック15の後面には、複数本の自転防止ピン14cが後方に向けて突設されている。可動スクロール22の可動基板22aには複数個の自転防止孔14aが形成され、各自転防止孔14aには自転防止リング14bが固定されている。各自転防止ピン14cはそれぞれ自転防止リング14b内を転動するようになっている。全ての自転防止リング14b及び自転防止ピン14cによって自転防止機構14が構成されている。
【0026】
可動基板22aの前面中央には、円筒状のボス22cが軸方向の前方に向かって突設されている。駆動軸24の後端には、円柱状の偏心ピン32が軸方向の後方に突出して形成されている。偏心ピン32にはバランサ付きブッシュ33が設けられている。バランサ付きブッシュ33の円柱部と可動スクロール22のボス22cとの間には軸受装置34が設けられている。
【0027】
また、フロントハウジング11内には、固定ブロック15より前方に低圧の冷媒を貯留する吸入室42が形成されている。吸入室42内には、ステータ44がフロントハウジング11の内周面に固定して設けられている。ステータ44の内側には、駆動軸24に固定されたロータ45が設けられている。ロータ45、ステータ44及び駆動軸24によってモータ機構40が構成されている。
【0028】
フロントハウジング11の内周面の後端側には、吸入室42内の冷媒を後述する外側圧縮室C1及び内側圧縮室C2に導く吸入ポート43が形成されている。また、フロントハウジング11の外周壁の前端側には、外部と吸入室42とを連通させる吸入口46が貫設されている。
【0029】
固定スクロール16における固定基板16aの中央には、吐出ポート49が軸方向に貫設されている。固定スクロール16と中間圧ハウジング12との間には、高圧の冷媒を貯留する第1吐出室47が形成されている。吐出ポート49は第1吐出室47に連通している。第1吐出室47内の固定基板16aには、吐出ポート49を開閉可能な吐出リード弁55と、この吐出リード弁55の開度を規制する第1リテーナ56とがボルト57によって固定されている。固定基板16aの後面には、中間圧ハウジング12との間にOリング48が設けられている。
【0030】
また、固定基板16aには、外側インジェクションポート61及び内側インジェクションポート62が軸方向に貫設されている。外側インジェクションポート61は、図4に示すように、外側圧縮室C1と連通するようになっており、内側インジェクションポート62は内側圧縮室C2と連通するようになっている。
【0031】
図1に示すように、中間圧ハウジング12には、第1吐出室47の後方にインジェクション室51が形成されている。インジェクション室51は、第1インジェクション室51aと第2インジェクション室51bとに区画されている。第1インジェクション室51aと第2インジェクション室51bとの間には、ボルト54によって第2プレート52が固定されている。
【0032】
第2プレート52の略中央には供給口52aが設けられている。第1インジェクション室51a内の第2プレート52には、供給口52aを開閉可能なインジェクションリード弁65と、このインジェクションリード弁65の開度を規制する第2リテーナ58とがボルト66によって固定されている。
【0033】
第1インジェクション室51aは、外側連結ポート63によって外側インジェクションポート61と連通しているとともに、内側連結ポート64によって内側インジェクションポート62と連通している。外側インジェクションポート61、内側インジェクションポート62、外側連結ポート63及び内側連結ポート64は、後述するように、エンドミルによって形成されている。中間圧ハウジング12には、第1インジェクション室51aと後述する外部冷凍回路とを連通させる中間圧ポート53が貫設されている。
【0034】
リヤハウジング13には、第1吐出室47と連通する第2吐出室67と、上端が開口した油分離室68とが形成されている。第2吐出室67と油分離室68とは連絡路69によって連通している。中間圧ハウジング12には第2吐出室67と第1インジェクション室51aとを遮蔽する第3プレート70がボルト71によって固定されている。油分離室68内には、連絡路69と直交するようにセパレータ72が設けられている。中間圧ハウジング12の後面にはリヤハウジング13との間にOリング50が設けられている。
【0035】
図2及び図3に示すように、吸入口46には配管73が接続され、油分離室68には配管74が接続されている。配管73は切替弁75の第1流入口75aに接続され、配管74は切替弁75の第2流入口75bに接続されている。切替弁75には第1流出口75c及び第2流出口75dが形成されており、第1流出口75cには配管76が接続され、第2流出口75dには配管77が接続されている。
【0036】
配管76には第1熱交換器81、膨張弁82及びレシーバ83が設けられている。第1熱交換器81は車外の空気との間で熱交換が可能になっている。レシーバ83の底部には配管78が接続され、配管78と配管77との間には膨張弁86及び第2熱交換器84が設けられている。第2熱交換器84はブロア85によって車内の空気との間で熱交換が可能になっている。また、レシーバ83の上部には配管79が接続されている。配管79は中間圧ポート53に接続されている。
【0037】
これら配管73、74、76、77、78、79、切替弁75、圧縮機、第1熱交換器81、膨張弁82、レシーバ83、膨張弁86及び第2熱交換器84は冷媒を循環させる暖房冷凍回路を構成している。この暖房冷凍回路は車両用の空調装置として採用されている。
【0038】
この空調装置では、車両の運転者が操作を行うことにより、図1に示す圧縮機のモータ機構40がロータ45を回転させる。これにより、駆動軸24が回転駆動され、可動スクロール22が偏心ピン32、バランサ付きブッシュ33、軸受装置34及び自転防止機構14との協働により、駆動軸24の周りを公転する。このため、図4に示すように、外側圧縮室C1、内側圧縮室C2及び圧縮室Cが徐々に容積を縮小する。
【0039】
これらの間、図2に示すように、切替弁75が第2流入口75bと第1流出口75cとを連通し、第1流入口75aと第2流出口75dとを連通しておれば、第2熱交換器84は蒸発器として機能し、車室内が冷房される。なお、第1熱交換器81は凝縮器として機能し、冷媒の温熱を車外に放出する。
【0040】
一方、図3に示すように、切替弁75が第1流入口75aと第1流出口75cとを連通し、第2流入口75bと第2流出口75dとを連通しておれば、第2熱交換器84は凝縮器として機能し、車室内が暖房される。なお、第1熱交換器81は蒸発器として機能し、冷媒の冷熱を車外に放出する。
【0041】
図4に示すように、固定スクロール16及び可動スクロール22は圧縮室Cを形成する。可動スクロール22が固定スクロール16に対して駆動軸心O回りで公転すれば、圧縮室Cが容積を縮小する。圧縮室Cは、固定渦巻壁16bの外側に形成される外側圧縮室C1と、固定渦巻壁16bの内側に形成される内側圧縮室C2とからなる。
【0042】
そして、可動スクロール22の公転が進むことにより、外側圧縮室C1及び内側圧縮室C2は、容積を縮小しつつ、内部の冷媒を圧縮する。この圧縮された冷媒は、圧縮室Cと連通する吐出ポート49に吐出される。
【0043】
図5及び図6に示すように、外側インジェクションポート61は、圧縮室C側に設けられた1つの第2連通通路61bと、圧縮室C側とは反対側に設けられた二つの第1連通通路61d、61eと、第2連通通路61bと第1連通通路61d、61eとを接続する二つの接続通路61fとを有している。
【0044】
第1連通通路61d、61eには、固定基板16aの圧縮室C側とは反対側の面に二つの丸穴形状の開口61g、61hが形成されている。第1連通通路61d、61eは、丸穴形状の開口61g、61hに合わせた通路断面を形成している。2つの丸穴形状の開口61g、61hの面積の合計は長穴形状の開口61aの面積より大きくされている。
【0045】
また、第2連通通路61bには、固定基板16aの圧縮室C側の面に一つの長穴形状の開口61aが形成されている。長穴形状の開口61aは可動渦巻壁22bにより閉塞が可能とされている。第2連通通路61bは、長穴形状の開口61aに合わせた通路断面を形成している。
【0046】
第1連通通路61d、61eにおける固定基板16aの厚さ方向の各長さL1は、第2連通通路61bにおける固定基板16aの厚さ方向の長さL2よりも長くされている。そして、第1連通通路61d、61eと第2連通通路61bとを接続する各接続通路61fは、第1連通通路61d、61eから第2連通通路61bに向かうに従って縮径されている。
【0047】
第1連通通路61d、61eは、外径の太いエンドミルやドリルを用い、回転するそのエンドミル等を固定基板16aの圧縮室C側とは反対側の面からその軸方向に移動させることにより、形成可能である。第2連通通路61bは、外径の短いエンドミルやドリルを用い、回転するエンドミル等を固定基板16aの圧縮室C側の面からその軸方向に移動させ、かつその軸と直交する方向にやや湾曲させながら移動させることにより、形成可能である。接続通路61fは、第1連通通路61d、61eを形成するために用いられた外径の太いエンドミル等の先端面の形状によって、形成可能である。つまり、接続通路61fは、その外径の太いエンドミル等によって、第1連通通路61d、61eと第2連通通路61bとを連通させたときに形成される。
【0048】
内側インジェクションポート62も、外側インジェクションポート61と同様、第連通通路62、第連通通路62、62e、丸穴形状の開口62g、62h、長穴形状の開口62a、接続通路62fを有している。
【0049】
この圧縮機では、インジェクションポートの圧縮室C側の面に形成された開口は、可動渦巻壁22bの厚さtによって制限を受けることから、長穴形状とされている。しかし、インジェクションポートの圧縮室C側とは反対側の面に形成された開口は、可動渦巻壁22bの厚さtによって制限を受けないため、長穴形状に限定されない。このため、圧縮室C側とは反対側のインジェクションポートの開口を丸穴形状にすることができる。外側インジェクションポート61及び内側インジェクションポート62の丸穴形状の開口61g、61h、62g、62hの開口面積が長穴形状の開口61a、62aの開口面積よりも大きくなるようにすれば、従来よりも大量の中間圧の冷媒を圧縮室側とは反対側の外側インジェクションポート61及び内側インジェクションポート62に導入することができる。こうして丸穴形状の開口61g、61h、62g、62h内に導入した中間圧の冷媒は、第1連通通路61d、61e、62d、62e及び第2連通通路61b、62bを経て長穴形状の開口61a、62aから圧縮室Cに導入される。こうして、従来よりも大量の中間圧の冷媒を圧縮室Cに導入することができる。
【0050】
特に、接続通路62fは、第1連通通路61d、61e、62d、62eから第2連通通路61b、62bに向かうに従って縮径されている。このため、第1連通通路61d、61e、62d、62eから第2連通通路61b、62bに導入される中間圧の冷媒の流路抵抗が接続通路61f、62fによって低減され、中間圧の冷媒がより圧縮室C内に導入され易い。
【0051】
また、この圧縮機では、第1連通通路61d、61e、62d、62eの各長さL1が第2連通通路61b、62bの各長さL2よりも長くなっている。このため、第1連通通路61d、61e、62d、62e内の中間圧の冷媒が第2連通通路61a、62a内の中間圧の冷媒よりも多くなることから、圧縮室Cに導入される中間圧の冷媒の量が確実に増加する。
【0052】
したがって、この圧縮機では、冷凍回路の効率を確実に向上させることができる。
【0053】
また、この圧縮機では、外側インジェクションポート61及び内側インジェクションポート62の加工時間のうち、第1連通通路61d、61e、62d、62eを形成している時間が第2連通通路61b、62bを形成している時間より短くなる。このため、この圧縮機では、製造コストを抑えることができる。
【0054】
(実施例2)
図7に示すように、実施例2の圧縮機は、外側インジェクションポート161が一つの第1連通通路161dと、一つの第2連通通路161bとから構成されている。丸穴形状の開口161gの開口面積は、長穴形状の開口161aの開口面積より大きい。内側インジェクションポート162も、外側インジェクションポート161と同様である。他の構成は実施例1と同様である。
【0055】
この場合、外側インジェクションポート161及び内側インジェクションポート162の第1連通通路161dは、実施例1で用いたエンドミル等よりも外径の太いエンドミル等を用いて1度で形成可能である。このため、実施例1の圧縮機に比べ、加工時間がより短くなり、製造コストをより抑えることができる。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0056】
参考例
図8に示すように、参考例の圧縮機は、外側インジェクションポート261が第2連通通路261bと、より大径の第1連通通路261dとから構成されている。丸穴形状の開口261gの開口面積は、長穴形状の開口261aの開口面積より大きい。内側インジェクションポート262も、外側インジェクションポート261と同様である。他の構成は実施例1と同様である。
【0057】
この場合、第1連通通路261d内に導入される中間圧の冷媒が実施例1の第1連通通路61d、61e、62d、62e内に導入される中間圧の冷媒よりも多くなることから、圧縮室Cに導入される中間圧の冷媒の量がさらに増加する。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0058】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0059】
例えば、本発明の圧縮機では、外側インジェクションポート、内側インジェクションポート、外側連結ポート及び内側連結ポートをエンドミルで形成したが、鋳抜きによってこれらを形成することも可能である。
【0060】
また、中間圧ハウジング12を用いずに外側インジェクションポート及び内側インジェクションポートを形成してもよい。また、外側インジェクションポート及び内側インジェクションポートの一方を固定渦巻壁に沿ってずらしてもよい。長穴の長さは適宜選択され得る。
【0061】
さらに、本発明の圧縮機は、固定スクロールの固定渦巻壁と可動スクロールの可動渦巻壁とで巻き数が等しくない場合にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、冷凍回路、暖房回路、暖房冷凍回路等に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
12…中間圧ハウジング
16…固定スクロール
16a…固定基板
16b…固定渦巻壁
22…可動スクロール
22a…可動基板
22b…可動渦巻壁
47…第1吐出室(吐出室)
49…吐出ポート
51…インジェクション室
51a…第1インジェクション室
51b…第2インジェクション室
53…中間圧ポート
61、161、261…外側インジェクションポート(インジェクションポート)
62、162、262…内側インジェクションポート(インジェクションポート)
61a、62a、161a、261a…長穴形状の開口
61b、62b、161b、261b…第2連通通路
61g、61h、62g、62h、161g、261g…丸穴形状の開口
61d、61e、62d、62e、161d、261d…第1連通通路
61f、62f…接続通路
67…第2吐出室(吐出室)
圧縮室…C
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8