特許 6197804 産業車両

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6197804

(24)【登録日】2017年9月1日

(45)【発行日】2017年9月20日

(54)【発明の名称】産業車両

(51)【国際特許分類】

   B62D 49/08 20060101AFI20170911BHJP

   B62D 53/00 20060101ALI20170911BHJP

   B64F 1/10 20060101ALI20170911BHJP

   B60G 11/04 20060101ALI20170911BHJP

   B60G 9/04 20060101ALI20170911BHJP

【ＦＩ】

   B62D49/08 A

   B62D53/00 Z

   B64F1/10

   B60G11/04

   B60G9/04

【請求項の数】2

【全頁数】14

(21)【出願番号】特願2015-20138(P2015-20138)

(22)【出願日】2015年2月4日

(65)【公開番号】特開2016-141331(P2016-141331A)

(43)【公開日】2016年8月8日

【審査請求日】2016年6月10日

(73)【特許権者】

【識別番号】000003218

【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機

(74)【代理人】

【識別番号】110001117

【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな

(72)【発明者】

【氏名】深津 史浩

(72)【発明者】

【氏名】竹中 崇晃

【審査官】 梶本 直樹

(56)【参考文献】

【文献】 実開昭６２−１５６０８８（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 特開２０１１−０９８６７２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１１−０９８６２９（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平１０−０８１４９５（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平０８−２８２９８４（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｂ６２Ｄ ４９／０８

Ｂ６２Ｄ ５３／００

Ｂ６４Ｆ １／１０

Ｂ６０Ｇ １１／０４

Ｂ６０Ｇ ９／０４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

前後方向に延びるフレームと、前記フレームの後部に接続されるウェイトと、後輪を駆動させる駆動装置とを備え、
前記ウェイトは、鋳造されてなるウェイト本体を有し、
前記駆動装置は前記ウェイト本体に対して直接取り付けられ、
前記駆動装置は、装置本体と、前記装置本体の左右に各々設けられ、走行によって生じる振動を緩衝可能な緩衝部材とを有し、
前記ウェイト本体には、切削加工によって取付部が左右一対で形成され、
前記各取付部には、互いに同軸をなし、前記各緩衝部材を前記各取付部に各々取り付け可能な取付孔が前記切削加工によって形成され、
前記ウェイト本体には、前記切削加工を行う際の前記ウェイト本体の位置決めを行う複数の基準部が形成されていることを特徴とする産業車両。

【請求項2】

前記各緩衝部材は、リーフスプリングを有するリーフ式サスペンションである請求項１記載の産業車両。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は産業車両に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１に従来の産業車両としてのトーイングトラクタが開示されている。このトーイングトラクタは、フレームと、ウェイトと、駆動装置とを備えている。フレームはトーイングトラクタの下部に配置されており、前後方向に延びている。ウェイトは、フレームの後部に接続されている。駆動装置は、走行モータやアクスルシャフト等によって構成された装置本体と、装置本体の左右に各々設けられ、トーイングトラクタの走行によって生じる振動を緩衝可能な緩衝部材とを有している。

【0003】

このトーイングトラクタでは、各緩衝部材をウェイトの下部に取り付けることにより、装置本体がウェイトに対して直接取り付けられている。こうして、このトーイングトラクタでは、ウェイトが後部フレームを兼ねることにより、後部の構成を簡略化することが可能となっている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１１−９８６２９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

ところで、この種の産業車両では、ウェイトは鋳造されることが一般的である。このため、ウェイトの表面の粗さや熱収縮により、緩衝部材の取付位置のバラツキ等が生じ易く、この結果、ウェイトに緩衝部材を好適に取り付けられない問題がある。そこで、このような産業車両では、まず、ウェイトの左右に取付孔が形成された取付部を溶接等によってそれぞれ取り付ける。そして、各取付部の各取付孔を通じてウェイトに各緩衝部材を取り付ける。こうして、ウェイトに駆動装置を取り付けることが一般的である。

【0006】

しかしながら、ウェイトに駆動装置を精度高く取り付けるに当たり、ウェイトに各取付部を取り付けた際における各取付孔同士の位置には、高い精度が要求される。このため、上記従来の産業車両では、ウェイトに溶接等によって各取付部を取り付ける作業は困難であり、製造が困難となっている。

【0007】

本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ウェイトに駆動装置を精度高く取り付けつつ、容易に製造可能な産業車両を提供することを解決すべき課題としている。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明の産業車両は、前後方向に延びるフレームと、前記フレームの後部に接続されるウェイトと、後輪を駆動させる駆動装置とを備え、
前記ウェイトは、鋳造されてなるウェイト本体を有し、
前記駆動装置は前記ウェイト本体に対して直接取り付けられ、
前記駆動装置は、装置本体と、前記装置本体の左右に各々設けられ、走行によって生じる振動を緩衝可能な緩衝部材とを有し、
前記ウェイト本体には、切削加工によって取付部が左右一対で形成され、
前記各取付部には、互いに同軸をなし、前記各緩衝部材を前記各取付部に各々取り付け可能な取付孔が前記切削加工によって形成され、
前記ウェイト本体には、前記切削加工を行う際の前記ウェイト本体の位置決めを行う複数の基準部が形成されていることを特徴とする。

【0009】

本発明の産業車両では、ウェイト本体に一対の取付部が形成されている。これらの各取付部はウェイト本体に切削加工を施すことによって形成されており、取付孔同士は互いに同軸をなしている。このため、この産業車両では、各緩衝部材を取り付けるに当たり、ウェイト本体に対して各取付部を別途に溶接等によって取り付ける必要がなく、この結果、取付孔同士における位置の精度を高くすることができる。これにより、この産業車両では、ウェイト本体に各緩衝部材を精度高く取り付けることができる。

【0010】

したがって、本発明の産業車両は、ウェイトに駆動装置を精度高く取り付けつつ、容易に製造可能である。

【0011】

各緩衝部材は、リーフスプリングを有するリーフ式サスペンションであることが好ましい。この場合には、各緩衝部材の構成を簡略化でき、製造を容易化することができる。また、ウェイトと各緩衝部材との取り付けも容易に行うことが可能となる。

【発明の効果】

【0012】

本発明の産業車両は、ウェイトに駆動装置を精度高く取り付けつつ、容易に製造可能である。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】図１は、実施例の産業車両を示す斜視図である。

【図2】図２は、実施例の産業車両に係り、フレーム本体及び左フェンダパネル等を示す模式図である。

【図3】図３は、実施例の産業車両を示す分解斜視図である。

【図4】図４は、実施例の産業車両に係り、フレームにウェイトが接続された状態を示す斜視図である。

【図5】図５は、実施例の産業車両に係り、ウェイトを示す斜視図である。

【図6】図６は、実施例の産業車両に係り、ウェイトを示す上面図である。

【図7】図７は、実施例の産業車両に係り、ウェイトを示す斜視図である。

【図8】図８は、実施例の産業車両に係り、ウェイトに駆動装置が取り付けられた状態を示す斜視図である。

【図9】図９は、実施例の産業車両に係り、ウェイトに駆動装置が取り付けられた状態を示す左側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例では、産業車両の一例であるトーイングトラクタを説明する。

【0015】

図１乃至図３に示すように、実施例のトーイングトラクタは、車体本体１と、ウェイト３と、駆動装置５と、一対の前輪７と、一対の後輪９と、操作部１１と、座席１３とを備えている。図１では、車体本体１が配置される側をトーイングトラクタの前方側と規定し、ウェイト３が配置される側をトーイングトラクタの後方側と規定して、トーイングトラクタの前後、左右及び上下の各方向を表示する。また、図１では、各前輪７及び各後輪９のうち、左側に位置する前輪７及び後輪９のみを図示している。なお、図２以降の各図に示す各方向は、全て図１に示す各方向に対応させて表示する。

【0016】

車体本体１は、図４に示すフレーム１５と、右フェンダパネル１７と、左フェンダパネル１９と、燃料タンク２１と、サイドパネル２３と、フロントガード２５と、図１に示すボンネット２７と、センタパネル２８と、フロアパネル２９と、上記の各前輪７と、図示しないエンジン及びトランスミッションとを有している。

【0017】

フレーム１５は、図２に示すフレーム本体１５０と、図４に示す左立壁１５１と、右立壁１５２とを有している。図２に示すように、フレーム本体１５０は複数の長尺の鋼材が互いに接合されることによって形成されており、トーイングトラクタの前後方向に延びる枠状をなしている。フレーム本体１５０は、車体本体１の下方に配置されている。フレーム本体１５０には、エンジン及びトランスミッションが支持されている。なお、エンジンに換えてモータを採用することもできる。また、図２では、説明を容易にするため、フレーム本体１５０の形状を簡略化して図示している。

【0018】

図４に示すように、左立壁１５１及び右立壁１５２は、平坦をなす鋼板によって形成されている。左立壁１５１は、フレーム本体１５０の左後方に接続されており、右立壁１５２は、フレーム本体１５０の右後方に接続されている。左立壁１５１及び右立壁１５２は、それぞれフレーム１５の上方に向かって延びている。

【0019】

図２に示すように、右フェンダパネル１７は、フレーム本体１５０の右側前方に組み付けられている。左フェンダパネル１９は、フレーム本体１５０の左側前方に組み付けられている。燃料タンク２１は、右フェンダパネル１７よりも後方でフレーム本体１５０の右側に組み付けられている。サイドパネル２３は、左フェンダパネル１９よりも後方でフレーム本体１５０の左側に組み付けられている。フロントガード２５は、フレーム本体１５０の前端に組み付けられている。図１に示すボンネット２７は、右フェンダパネル１７と左フェンダパネル１９との間に組み付けられている。センタパネル２８及びフロアパネル２９は、それぞれ燃料タンク２１と、サイドパネル２３との間に組み付けられている。

【0020】

各前輪７は、フレーム本体１５０に支持されて、左フェンダパネル１９の下方及び右フェンダパネル１７の下方にそれぞれ配置されている。

【0021】

ウェイト３は、図５に示すウェイト本体３１と、第１カバー３３と、図３に示す第２カバー３５とを有している。

【0022】

図５に示すように、ウェイト本体３１は、鋳造によって形成された一部材からなる。ウェイト本体３１の後方側には、上方に向かって突出する土手部３１０が形成されている。土手部３１０の後方は、上方側から下方側に向かって傾斜するように形成されている。

【0023】

また、図６に示すように、ウェイト本体３１には、上下方向に延びる開口３７が形成されている。開口３７は、土手部３１０内において左右方向に延びる中央部３７ａと、中央部３７ａと連続しつつ、ウェイト本体３１の後端側から前端側に向かって直線状に延びる直線部３７ｂとを有しており、略十字形状をなしている。なお、開口３７の形状は適宜設計することができる。

【0024】

さらに、ウェイト本体３１には、第１〜５基準部４０１〜４０５が形成されている。これらの第１〜５基準部４０１〜４０５は、ウェイト本体３１を鋳造した際にウェイト本体３１にそれぞれ形成されている。図７に示すように、第１基準部４０１はウェイト本体３１の左側前端に形成されている。第２基準部４０２はウェイト本体３１の右側前端に形成されている。第１基準部４０１と第２基準部４０２とは、それぞれウェイト本体３１の高さ方向において等しく、かつ、ウェイト本体３１の前後方向において等しい位置に配置されている。

【0025】

図６に示すように、第３基準部４０３は、第１、２基準部４０１、４０２よりも後方側でウェイト本体３１の上面３１ａの左側に形成されている。第４基準部４０４は、第１、２基準部４０１、４０２よりも後方側でウェイト本体３１の上面３１ａの右側に形成されている。第３基準部４０３と第４基準部４０４とは、それぞれウェイト本体３１の高さ方向において等しく、かつ、ウェイト本体３１の前後方向において等しい位置に配置されている。第５基準部４０５は、開口３７の直線部３７ｂの後端側に形成されており、直線部３７ｂ内に位置している。これにより、第５基準部４０５は、ウェイト本体３１の高さ方向において、第３基準部４０３及び第４基準部４０４と異なる位置に配置されている。

【0026】

図７に示すように、ウェイト本体３１の下方であって前方左側には、下面３１ｂ側から下方に向かって延びる左脚部３１ｃが形成されている。同様に、ウェイト本体３１の下方であって前方右側には、下面３１ｂ側から下方に向かって延びる右脚部３１ｄが形成されている。左脚部３１ｃの下端には平面状をなす左下端面３１１ａが形成されており、右脚部３１ｄの下端には平面状をなす右下端面３１１ｂが形成されている。左下端面３１１ａと右下端面３１１ｂとは、それぞれウェイト本体３１の高さ方向において等しく、かつ、ウェイト本体３１の前後方向において等しい位置に配置されている。

【0027】

左脚部３１ｃには、前方に向かって突出する第１、２凸部６３ａ、６３ｂが形成されている。第１凸部６３ａは、左脚部３１ｃにおいて上下方向の略中央に位置している。第２凸部６３ｂは、左脚部３１ｃの上端側に位置している。第１凸部６３ａの前端には、平面に形成された第１接触面６３０ａが形成されており、第２凸部６３ｂの前端には平面に形成された第２接触面６３０ｂが形成されている。

【0028】

同様に、右脚部３１ｄにも、前方に向かって突出する第３、４凸部６３ｃ、６３ｄが形成されている。第３凸部６３ｃは、右脚部３１ｄにおいて上下方向の略中央に位置している。第４凸部６３ｄは、右脚部３１ｄの上端側に位置している。第３凸部６３ｃの前端には、平面に形成された第３接触面６３０ｃが形成されており、第４凸部６３ｄの前端には平面に形成された第４接触面６３０ｄが形成されている。第１〜４接触面６３０ａ〜６３０ｄには、それぞれボルト孔６３１ａ〜６３１ｄが形成されている。各ボルト孔６３１ａ〜６３１ｄには、後述するボルト１００ａ〜１００ｄがそれぞれ挿通される。

【0029】

ここで、第１接触面６３０ａと第３接触面６３０ｃとは、それぞれウェイト本体３１の高さ方向において等しく、かつ、ウェイト本体３１の前後方向において等しい位置に配置されている。同様に、第２接触面６３０ｂと第４接触面６３０ｄとは、それぞれウェイト本体３１の高さ方向において等しく、かつ、ウェイト本体３１の前後方向において等しい位置に配置されている。

【0030】

また、ウェイト本体３１の下方であって後方左側には、平面状をなす第１取付部３１ｅが形成されており、ウェイト本体３１の下方であって後方右側には、平面状をなす第２取付部３１ｆが形成されている。これらの第１取付部３１ｅ及び第２取付部３１ｆが本発明における取付部に相当する。第１取付部３１ｅと第２取付部３１ｆとは、それぞれウェイト本体３１の高さ方向において等しく、かつ、ウェイト本体３１の前後方向において等しい位置に配置されている。

【0031】

第１取付部３１ｅには、軸心Ｏ方向に延びる第１取付孔３１２ａが貫設されている。第２取付部３１ｆにも、軸心Ｏ方向に延びる第２取付孔３１２ｂが貫設されている。つまり、第１取付孔３１２ａと第２取付孔３１２ｂとは同軸をなしている。これらの第１取付孔３１２ａ及び第２取付孔３１２ｂが本発明における取付孔に相当する。

【0032】

さらに、ウェイト本体３１の下方左側には、第１ダンパ取付面３１３が形成されており、ウェイト本体３１の下方右側には、第２ダンパ取付面３１４が形成されている。第１ダンパ取付面３１３と第２ダンパ取付面３１４とは、それぞれウェイト本体３１の高さ方向において等しく、かつ、ウェイト本体３１の前後方向において等しい位置に配置されている。

【0033】

また、ウェイト本体３１の後端下部には、第１、２設置面３１５、３１６が形成されている。第１設置面３１５は、ウェイト本体３１の左側に位置しており、第２設置面３１６は、ウェイト本体３１の右側に位置している。第１設置面３１５と第２設置面３１６とは、それぞれウェイト本体３１の高さ方向において等しく、かつ、ウェイト本体３１の前後方向において等しい位置に配置されている。ここで、第１設置面３１５及び第２設置面３１６同士と、左下端面３１１ａ及び右下端面３１１ｂ同士とは、互いにウェイト本体３１における高さ方向の位置が異なっている。

【0034】

さらに、ウェイト本体３１の下面３１ｂには、平面状をなす第１、２当接部３１ｇ、３１ｈ及び第３、４設置面３１７、３１８が形成されている。第１当接部３１ｇは、ウェイト本体３１の左側に位置しており、第２当接部３１ｈは、ウェイト本体３１の右側に位置している。第３設置面３１７は、第１当接部３１ｇよりも後方でウェイト本体３１の左側に形成されている。第４設置面３１８は、第２当接部３１ｈよりも後方でウェイト本体３１の右側に形成されている。

【0035】

これらの左下端面３１１ａ、右下端面３１１ｂ、第１〜４接触面６３０ａ〜６３０ｄ、第１、２取付部３１ｅ、３１ｆ、第１、２取付孔３１２ａ、３１２ｂ、第１、２ダンパ取付面３１３、３１４、第１〜４設置面３１５〜３１８及び第１、２当接面３１ｇ、３１ｈは、それぞれ、鋳造品であるウェイト本体３１に対して切削加工を施すことによって形成されている。

【0036】

具体的には、まず、ウェイト本体３１を図示しない治具に設置する。この際、図７に示す第１、２基準部４０１、４０２の各位置を基に、治具に対するウェイト本体３１の前後方向の位置決めを行う。また、図６に示す第３〜５基準部４０３〜４０５の各位置を基に、治具に対するウェイト本体３１の高さ方向の位置決めを行う。治具に対するウェイト本体３１の左右方向の位置決めは、治具側で調整する。こうして、治具に対するウェイト本体３１の前後方向、左右方向及び高さ方向の各位置が決定される。この後、治具に設置されたウェイト本体３１に対して、図示しない切削加工機によって切削加工を施すことにより、上記の第１、２取付孔３１２ａ、３１２ｂ等がそれぞれ上記の位置に形成される。

【0037】

次に、ウェイト本体３１の表面加工を行う。この表面加工を行うに当たっても、ウェイト本体３１を図示しない治具に設置する。この際、左脚部３１ｃ側の第２接触面６３０ｂ及び右脚部３１ｄ側の第４接触面６３０ｄの各位置を基に、治具に対するウェイト本体３１の前後方向の位置決めを行う。また、第１設置面３１５、第２設置面３１６、左下端面３１１ａ及び右下端面３１１ｂの各位置を基に、治具に対するウェイト本体３１の高さ方向の位置決めを行う。さらに、第１、２取付部３１ｅ、３１ｆの各位置を基に、治具に対するウェイト本体３１の幅方向の位置決めを行う。こうして、治具に対するウェイト本体３１の前後方向、左右方向及び高さ方向の各位置が決定され、ウェイト本体３１の表面加工が行われる。

【0038】

また、ウェイト本体３１の表面加工の後には、左下端面３１１ａに対して図８に示すブラケット５７ａがボルトによって取り付けられる。同様に、図７に示す右下端面３１１ｂに対して図８に示すブラケット５７ｂがボルトによって取り付けられる。

【0039】

図５に示す第１カバー３３は、金属の板材をプレス加工することによって形成されている。第１カバー３３は、第１カバー３３の下方に位置して上下方向に略垂直に延びる垂直面３３１と、第１カバー３３の上方に位置して前後方向に略水平に延びる水平面３３２と、垂直面３３１と水平面３３２とに連続する接続面３３３とを有している。接続面３３３は、土手部３１０の後方の形状に沿って、水平面３３２側から垂直面３３１側に向かって傾斜する形状をなしている。

【0040】

垂直面３３１の左側及び右側には、尾灯３９ａ、３９ｂがそれぞれ取り付けられている。各尾灯３９ａ、３９ｂは、それぞれブレーキ灯３９１と方向指示灯３９２とが組み合わされたコンビネーションランプである。

【0041】

図３に示すように、第２カバー３５についても、金属の板材をプレス加工することによって形成されている。第２カバー３５は、左右方向に平坦に延びる形状に形成されている。なお、第１、２カバー３３、３５の各形状は、ウェイト本体３１の形状に応じて適宜設計可能である。また、第１、２カバー３３、３５をそれぞれ樹脂製とすることもできる。

【0042】

図５に示すように、第１カバー３３は複数のボルトによって土手部３１０の後方側に取り付けられている。同様に、第２カバー３５は複数のボルトによって土手部３１０の前方側に取り付けられている（図１参照）。これらにより、第１カバー３３及び第２カバー３５は、土手部３１０の外形を形成するとともに、開口３７の中央部３７ａを覆っている。一方、図５に示すように、第１カバー３３及び第２カバー３５がウェイト本体３１に取り付けられた状態であっても、開口３７の直線部３７ｂの後端は外部に露出する。また、第１カバー３３が土手部３１０の後方側に取り付けられることにより、各尾灯３９ａ、３９ｂがウェイト３の後方に配置される。

【0043】

図４に示すように、ウェイト本体３１は、ボルト１００ａ〜１００ｄによって、左立壁１５１及び右立壁１５２に締結される。この際、図７に示す第１当接部３１ｇが左立壁１５１の上端面に当接するとともに、第２当接部３１ｈが右立壁１５２の上端面に当接することにより、左立壁１５１及び右立壁１５２とウェイト本体３１との位置決めが行われる。また、第１、２接触面６３０ａ、６３０ｂがそれぞれ左立壁１５１に接触し、第３、４接触面６３０ｃ、６３０ｄがそれぞれ右立壁１５２に接触する。

【0044】

ここで、左立壁１５１及び右立壁１５２にウェイト本体３１を締結するに当たっては、ウェイト本体３１を図示しない治具に載置した状態で行う。この際、図７に示す第１〜４載置面３１５〜３１８の各位置を基に治具に対するウェイト本体３１の位置決めを行いつつ、ウェイト本体３１を治具に載置する。こうして、左立壁１５１及び右立壁１５２にウェイト本体３１が締結されることにより、ウェイト３がフレーム１５の後部に接続される。

【0045】

また、図４に示すように、ウェイト本体３１の左前端には、第１ボルトカバー６１ａが取り付けられ、ウェイト本体３１の右前端には、第２ボルトカバー６１ｂが取り付けられる。こうして、第１ボルトカバー６１ａにより、ボルト１００ａ及び第１基準部４０１が外部から隠蔽される。同様に、第２ボルトカバー６１ｂにより、ボルト１００ｃ及び第２基準部４０２が外部から隠蔽される。さらに、図２に示すように、ウェイト本体３１の前方左側には、座席１３が取り付けられている。また、図８に示すように、ウェイト本体３１の後端下部には、トーイングトラクタと荷物台車とを連結するためのドローバ装置６５が設けられている。なお、図５等では、ドローバ装置６５の図示を省略している。

【0046】

図３に示すように、駆動装置５は、リヤアクスル５１と、リヤアクスル５１の左右にそれぞれ設けられた緩衝部材としてのリーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂとを有している。リヤアクスル５１が本発明における装置本体に相当する。

【0047】

リヤアクスル５１は、アクスルケース５１０内に収納された図示しないディファレンシャルギヤ及びアクスルシャフトと、アクスルシャフトの左右両端にそれぞれ設けられたドラムブレーキ５１１ａ、５１１ｂ及びハブ５１２ａ、５１２ｂと、左ダンパ５１３ａと、右ダンパ５１３ｂ等とを有している。

【0048】

リヤアクスル５１は、エンジン及びトランスミッションと動力伝達可能に接続される。また、図１に示す各後輪９は、ハブ５１２ａ、５１２ｂを介してそれぞれリヤアクスル５１に取り付けられている。これにより、リヤアクスル５１は各後輪９を駆動させて、トーイングトラクタを走行させる。また、各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂは、走行によって生じる振動を緩衝する。

【0049】

リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂは、それぞれ図８に示すように、複数枚の板バネが積層されることによって形成されたリーフスプリング５３０を有している。各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂは、それぞれ前後方向に延びている。各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂは、それぞれウェイト本体３１の下方の左右に取り付けられている。

【0050】

具体的には、リーフ式サスペンション５３ａは、図９に示すように、後端側がブラケット５５ａを介して第１取付孔３１２ａに取り付けられる。これにより、リーフ式サスペンション５３ａの後端側が第１取付部３１ｅに取り付けられている。そして、リーフ式サスペンション５３ａの前端側がブラケット５７ａを介してウェイト本体３１の左脚部３１ｃに取り付けられている。

【0051】

また、リーフ式サスペンション５３ｂは、後端側が図８に示すブラケット５５ｂを介して図７に示す第２取付孔３１２ｂに取り付けられる。これにより、リーフ式サスペンション５３ｂの後端側が第２取付部３１ｆに取り付けられている。そして、リーフ式サスペンション５３ｂの前端側がブラケット５７ｂを介してウェイト本体３１の右脚部３１ｄに取り付けられている。

【0052】

ここで、上記のように、第１、２取付孔３１２ａ、３１２ｂがウェイト本体３１に同軸に形成されていることから、図８に示すように、各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂの各後端側はウェイト本体３１に対して同軸に取り付けられる。また、図９に示すように、左ダンパ５１３ａは、ブラケット５９を介して第１ダンパ取付面３１３に取り付けられる。図示を省略するものの、右ダンパ５１３ｂは、図示しないブラケットを介して図７に示す第２ダンパ取付面３１４に取り付けられる。こうして、このトーイングトラクタでは、各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂを介して、ウェイト本体３１、ひいては、ウェイト３の下方に駆動装置５が直接取り付けられる。

【0053】

図１に示す操作部１１は、インストルメントパネル１１ａと、ハンドル１１ｂと、ドローバレバー１１ｃと、図３に示す操作レバーユニット１１ｄとを有している。図１に示すように、インストルメントパネル１１ａ及びハンドル１１ｂは、それぞれ車体本体１に取り付けられている。ドローバレバー１１ｃはウェイト本体３１の後方に取り付けられており、上記のドローバ装置６５を操作可能にドローバ装置６５と連結されている。図３に示す操作レバーユニット１１ｄは、ウェイト本体３１に取り付けられて座席１３の右側に配置されている。この際、図８に示すように、開口３７の直線部３７ｂの前端側は、操作レバーユニット１１ｄによって覆われることとなる。

【0054】

以上のように構成されたトーングトラクタでは、各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂを介して、ウェイト本体３１の下方に駆動装置５が直接取り付けられる。これにより、このトーングトラクタでは、ウェイト本体３１をフレーム１５の一部として機能させることができ、フレーム本体１５０に対して駆動装置５を取り付けるための取付部を設ける必要がない。このため、このトーイングトラクタでは、フレーム１５の構成を簡略化することができ、製造コストを低廉化することが可能となっている。

【0055】

そして、このトーイングトラクタでは、ウェイト本体３１に対をなす第１、２取付部３１ｅ、３１ｆが形成されており、第１、２取付部３１ｅ、３１ｆには、第１、２取付孔３１２ａ、３１２ｂがそれぞれ形成されている。さらに、ウェイト本体３１の下面３１ｂ側には、左下端面３１１ａ、右下端面３１１ｂ、第１〜４接触面６３０ａ〜６３０ｄ、第１、２ダンパ取付面３１３、３１４及び第１、２当接面３１ｇ、３１ｈ等が形成されている。これらの第１、２取付部３１ｅ、３１ｆ等は、それぞれ、鋳造品であるウェイト本体３１に対して切削加工を施すことによって形成されている。そして、第１、２取付孔３１２ａ、３１２ｂ同士は互いに同軸をなしている。

【0056】

このため、このトーイングトラクタでは、各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂの各後端側をウェイト本体３１に取り付けるに当たり、ウェイト本体３１の後方下部に第１、２取付部３１ｅ、３１ｆを別途に溶接等によって取り付ける必要がなく、この結果、第１、２取付孔３１２ａ、３１２ｂ同士における位置の精度を高くすることができる。このため、ウェイト本体３１に対して、各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂの各後端側を容易に同軸で取り付けることが可能となっている。

【0057】

さらに、切削加工によって、左下端面３１１ａ及び右下端面３１１ｂが平坦に形成されるため、左下端面３１１ａ及び右下端面３１１ｂに対してブラケット５７ａ、５７ｂをそれぞれボルトによって取り付け易くなっている。このため、各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂの各前端側についても、それぞれ左脚部３１ｃ、右脚部３１ｄに好適に取り付けることが可能となっている。これらにより、このトーイングトラクタでは、ウェイト本体３１に各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂを精度高く取り付けることが可能となっている。

【0058】

また、このトーイングトラクタでは、切削加工によって、第１、２ダンパ取付面３１３、３１４も平坦に形成されている。このため、第１、２ダンパ取付面３１３、３１４を通じて、左ダンパ５１３ａ、右ダンパ５１３ｂをそれぞれウェイト本体３１に好適に取り付けることが可能となっている。

【0059】

したがって、実施例のトーイングトラクタは、ウェイト本体３１に駆動装置５を精度高く取り付けつつ、容易に製造可能である。

【0060】

特に、このトーイングトラクタでは、ウェイト本体３１を鋳造した際に、ウェイト本体３１に第１〜５基準部４０１〜４０５がそれぞれ形成されている。そして、これらの第１〜５基準部４０１〜４０５各位置を基に、治具に対するウェイト本体３１の位置決めを行うことにより、切削加工を行う際のウェイト本体３１の位置決めを容易かつ精度高く行うことができる。このため、このトーイングトラクタでは、第１、２取付孔３１２ａ、３１２ｂ等について、ウェイト本体３１に対してそれぞれの位置に精度高く形成することができる。

【0061】

また、ウェイト本体３１の表面加工を行うに当たっては、切削加工によって形成された、第２、４接触面６３０ｂ、６３０ｄ、第１、２設置面３１５、３１６、左下端面３１１ａ、右下端面３１１ｂ及び第１、２取付部３１ｅ、３１ｆの各位置を基に、治具に対するウェイト本体３１の位置決めを行う。このため、このトーイングトラクタでは、表面加工を行う際の治具に対するウェイト本体３１の位置決めについても、容易かつ精度高く行うことができ、表面加工を精度高く行うことが可能となっている。

【0062】

さらに、このトーイングトラクタでは、左立壁１５１及び右立壁１５２にウェイト本体３１を締結する際、切削加工によって形成された第１〜４載置面３１５〜３１８の各位置を基に治具に対するウェイト本体３１の位置決めを行う。これにより、治具に対するウェイト本体３１の位置決めを容易かつ精度高く行うことができる。このため、左立壁１５１及び右立壁１５２に対するウェイト本体３１の位置決めを精度高く行うことができ、左立壁１５１及び右立壁１５２にウェイト本体３１を精度高く締結することが可能となっている。

【0063】

また、切削加工によって、第１〜４接触面６３０ａ〜６３０ｄ及び第１、２当接面３１ｇ、３１ｈが平坦に形成されている。このため、左立壁１５１及び右立壁１５２に対して、ウェイト本体３１を締結する際、これらの第１〜４接触面６３０ａ〜６３０ｄ及び第１、２当接面３１ｇ、３１ｈが左立壁１５１、右立壁１５２に好適に当接する。これにより、このトーイングトラクタでは、ボルト１００ａ〜１００ｄによって、左立壁１５１及び右立壁１５２にウェイト本体３１を締結し易くなっている。

【0064】

さらに、このトーイングトラクタでは、各緩衝部材として、リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂを採用している。このため、トーイングトラクタでは、各緩衝部材の構成を簡略化でき、製造を容易化することが可能となっている。また、リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂを採用することにより、このトーイングトラクタでは、ウェイト本体３１と各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂとの取り付けも容易となっている。

【0065】

以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。

【0066】

例えば、実施例では本発明に係る産業車両としてトーイングトラクタを挙げているが、これに限らず、本発明に係る産業車両をフォークリフトとすることもできる。

【0067】

また、複数の部材を組み合わせることによってウェイト本体３１を形成しても良い。

【0068】

さらに、各緩衝部材は、各リーフ式サスペンション５３ａ、５３ｂに限られず、例えば、コイルばねとショックアブソーバとを有するものを採用しても良い。また、各緩衝部材の構成によっては、ブラケット５５ａ、５５ｂを介さずに、第１、２取付孔３１２ａ、３１２ｂに直接取り付けを行っても良い。

【産業上の利用可能性】

【0069】

本発明は、トーイングトラクタやフォークリフト等の産業車両に利用可能である。

【符号の説明】

【0070】

３…ウェイト
５…駆動装置
９…後輪
１５…フレーム
３１…ウェイト本体
３１ｅ…第１取付部（取付部）
３１ｆ…第２取付部（取付部）
５１…リヤアクスル（装置本体）
５３ａ、５３ｂ…リーフ式サスペンション（緩衝部材）
３１２ａ…第１取付孔（取付孔）
３１２ｂ…第２取付孔（取付孔）

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】