【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽熱集熱管は、通常、一日の日射量が多い砂漠地帯などで太陽光が十分に届くように屋外に設置されるため、その使用環境は非常に厳しい。特に、外部環境と接する太陽熱集熱管用ガラス管の外面は、風雨、砂塵などに曝される上、汚れが付着した際には、太陽熱集熱管用ガラス管の光透過性の低下を防止するために洗浄によって汚れを除去する必要もある。そのため、太陽熱集熱管には、光透過性が高いことに加えて、風雨、砂塵、洗浄処理などの外部環境に対する耐久性(例えば、耐擦傷性、耐摩耗性など)が高いことも要求される。特に、太陽熱集熱管用ガラス管の光透過性を向上させるためにガラス管の外面に反射防止膜を形成する場合には、その反射防止膜が外部環境によって簡単に傷ついたり剥離したりすることを防止する必要がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、光透過率の向上と外部環境に対する耐久性の向上とを両立させた太陽熱集熱管を提供することを目的とする。
また、本発明は、外部環境に対する耐久性が高く、且つ太陽光を熱に効率的に変換することが可能な太陽熱発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の第(1)項〜第(5)項である。
(1)内部を熱媒体が流通可能な内管と、
前記内管との間に環状の断熱空間を形成して前記内管の外周を覆う外管と、
前記内管と前記外管との熱膨張差を吸収する熱膨張差吸収手段と
を備える太陽熱集熱管であって、
前記外管はガラス管であり、
前記ガラス管の内面には第一反射防止膜が形成されており、
前記ガラス管の外面には第二反射防止膜が形成されており、
前記第二反射防止膜は前記第一反射防止膜よりも外部環境に対する耐久性が高く、前記第一反射防止膜は前記第二反射防止膜よりも光透過率が高いことを特徴とする太陽熱集熱管。
(2)前記第一反射防止膜は気孔率が30%〜50%のメソポーラスシリカ膜であり、
前記第二反射防止膜は気孔率が15%〜30%の中空シリカ膜であることを特徴とする第(1)項に記載の太陽熱集熱管
(3)前記第一反射防止膜及び前記第二反射防止膜はそれぞれ膜厚が80nm〜200nmであることを特徴とする第(1)項又は第(2)項に記載の太陽熱集熱管。
(4)前記内管は金属管であり、
前記金属管の表面には、太陽光の可視光線及び近赤外線を吸収し、前記熱媒体から輻射される遠赤外線を反射する光学選択膜が形成されていることを特徴とする第(1)項〜第(3)項のいずれか一項に記載の太陽熱集熱管。
(5)第(1)項〜第(4)項のいずれか一項に記載の太陽熱集熱管を備えることを特徴とする太陽熱発電装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光透過率の向上と外部環境に対する耐久性の向上とを両立させた太陽熱集熱管を提供することができる。
また、本発明によれば、外部環境に対する耐久性が高く、且つ太陽光を熱に効率的に変換することが可能な太陽熱発電装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の太陽熱集熱管及び太陽熱発電装置の好適な実施の形態について説明する。
図1は本発明の太陽熱集熱管の長手方向に垂直な断面図であり、
図2は本発明の太陽熱集熱管の長手方向に平行な断面図である。
図1及び2に示すように、本発明の太陽熱集熱管1は、内管2と外管3とを備える二重管構造を有する。外管3の内面には第一反射防止膜としてのメソポーラスシリカ膜4が形成されており、外管3の外面には第二反射防止膜としての中空シリカ膜5が形成されている。内管2の内部は、熱媒体6が流通可能となっている。内管2と外管3との間は、熱輻射による熱損失を抑えるために断熱領域7が形成されている。断熱領域7は、例えば、内管2と外管3との間に形成される環状空間を真空にしたり、環状空間に不活性ガスを充填したりすることで形成される。また、内管2と外管3とは、両者の熱膨張率差を吸収するための熱膨張差吸収手段8を介して接続されている。
【0011】
上記のような構造を有する本発明の太陽熱集熱管1のうち、メソポーラスシリカ膜4及び中空シリカ膜5が形成された外管3が、太陽熱集熱管用ガラス管に相当する。
太陽熱集熱管用ガラス管は、風雨、砂塵などに曝される上、汚れが付着した際には、太陽熱集熱管用ガラス管の光透過性の低下を防止するために洗浄によって汚れを除去しなければならない。そのため、太陽熱集熱管用ガラス管には、光透過性が高いことに加えて、風雨、砂塵、洗浄処理などの外部環境に対する耐久性(例えば、耐擦傷性、耐摩耗性など)が高いことが要求される。ここで、本明細書において「耐擦傷性」とは、擦れても傷がつき難い性質のことを意味する。また、「耐摩耗性」とは、摩擦などの機械的作用下においても消耗し難い性質のことを意味する。
【0012】
図3は、本発明の太陽熱集熱管に用いられる太陽熱集熱管用ガラス管の部分拡大断面図である。
図3に示すように、太陽熱集熱管用ガラス管9では、外管3の内面に第一反射防止膜としてのメソポーラスシリカ膜4が形成されており、外管3の外面には第二反射防止膜としての中空シリカ膜5が形成されている。なお、Lは太陽光を表す。
【0013】
メソポーラスシリカ膜4は、メソ孔を有するシリカ膜である。ここで、メソ孔とは、2nm〜50nmの直径を有する細孔のことを意味する。メソポーラスシリカ膜4は、光透過性に優れている一方、細孔壁がアモルファス状であるため機械的強度が小さく、中空シリカ膜に比較して、外部環境に対する耐久性が低いという特性を有する。そのため、太陽熱集熱管用ガラス管9では、外部環境に対する耐久性が要求されない外管3の内面にメソポーラスシリカ膜4を形成している。
【0014】
中空シリカ膜5は、中空シリカ粒子を主体とする膜である。ここで、中空シリカ粒子とは、内部に空間を有するシリカ粒子である。中空シリカ膜5は、メソポーラスシリカ膜4に比べて光透過性が若干劣るものの、中空シリカ粒子が規則的に結合しているため機械的強度が大きく、メソポーラスシリカ膜に比較して、外部環境に対する耐久性が高いという特性を有する。そのため、太陽熱集熱管用ガラス管9では、外部環境に対する耐久性が要求される外管3の外面に中空シリカ膜5を形成している。
【0015】
メソポーラスシリカ膜4は、特に限定されないが、ゾルゲル反応によって一般に形成することができる。ゾルゲル反応では、ゾル反応液を外管3の内面に塗布して乾燥させた後、焼成することによってメソポーラスシリカ膜4を形成する。
メソポーラスシリカ膜4を形成することが可能なゾル反応液は市販されているため、市販のゾル反応液を用いてメソポーラスシリカ膜4を形成することができる。
【0016】
ゾル反応液は、シリカ前駆体物質、有機溶媒、触媒、水などを一般に含む。
シリカ前駆体物質としては、特に限定されないが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどのアルコキシシランなどが挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノールなどのアルコールが挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
触媒としては、特に限定されないが、塩酸、酢酸、硝酸などの酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなどの塩基が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
ゾル反応液の塗布方法としては、特に限定されないが、ディップコート法など用いて行うことができる。
塗布膜の焼成方法としては、特に限定されないが、電気炉などを用いて行うことができる。塗布膜の焼成温度としては、特に限定されないが、一般に、600℃以下、好ましくは350℃〜500℃である。
【0019】
メソポーラスシリカ膜4は、気孔率が30%〜50%であることが好ましい。このような気孔率に制御することにより、メソポーラスシリカ膜4の光透過率を向上させることができる。ここで、本明細書において「気孔率」とは、屈折率を測定し、屈折率の測定値をローレンツ−ローレンツの式に導入することによって算出される値のことを意味する。
【0020】
メソポーラスシリカ膜4の厚さとしては、特に限定されないが、好ましくは80nm〜200nmである。このような厚さに制御することにより、メソポーラスシリカ膜4の光透過率を向上させることができる。ここで、本明細書において「厚さ」とは、市販の膜厚計を用いて測定される値のことを意味する。
【0021】
中空シリカ膜5は、当該技術分野において公知の方法を用いて形成することができる。例えば、メソポーラスシリカ膜4と同様に、ゾルゲル反応によって中空シリカ膜5を形成することができる。ゾルゲル反応では、中空シリカゾル、ケイ素化合物、金属キレート化合物などを含むゾル反応液を外管3の外面に塗布して乾燥させた後、焼成することによって中空シリカ膜5を形成することができる。また、中空シリカ粒子が有機溶媒に分散された分散溶液を外管3の外面に塗布して乾燥させた後、焼成することによっても中空シリカ膜5を形成することができる。中空シリカ膜5を形成するためのゾル反応液及び分散溶液は市販されているため、市販のゾル反応液を用いて中空シリカ膜5を形成することができる。
【0022】
ゾル反応液に用いられる中空シリカゾルは、例えば、特開2001−233611号公報において公知のものを使用することができる。
ゾル反応液に用いられるケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
ゾル反応液に用いられる金属キレート化合物としては、アセチルアセトナトなどの二座配位子を有するチタン、ジルコニウム、アルミニウム、スズ、ニオブ、タンタル又は鉛の化合物が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
分散溶液に用いられる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノールなどのアルコールが挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
ゾル反応液又は分散溶液の塗布及び焼成方法は、特に限定されないが、メソポーラスシリカ膜4を形成する場合と同様の条件で行うことができる。
【0024】
中空シリカ膜5を構成する中空シリカ粒子の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは10nm〜100nmである。このような平均粒径に制御することにより、中空シリカ膜5の光透過率を向上させることができる。ここで、本明細書において「平均粒径」とは、動的光散乱法又は断面TEM法による観察により測定された値のことを意味する。
【0025】
中空シリカ膜5の気孔率は、特に限定されないが、好ましくは20%〜40%である。このような気孔率に制御することにより、外管3の光透過率を向上させることができる。
中空シリカ膜5の厚さは、特に限定されないが、好ましくは80nm〜200nmである。このような厚さに制御することにより、外管3の光透過率を向上させることができる。
【0026】
メソポーラスシリカ膜4及び中空シリカ膜5が形成される外管3は、ガラス管である。ガラス管の材質としては、特に限定されず、透明な耐熱ガラスを一般に用いることができる。透明な耐熱ガラス製のガラス管としては、例えば、ホウケイ酸ガラス管等が挙げられる。
【0027】
上記のような構成を有する太陽熱集熱管用ガラス管9によれば、外部環境に対する耐久性に優れた中空シリカ膜5を外管3の外面に形成すると共に、光透過性に優れたメソポーラスシリカ膜4を外管3の内面に形成しているので、光透過率の向上と外部環境に対する耐久性の向上とを両立した太陽熱集熱管1を得ることができる。
【0028】
なお、上記の説明では、第一反射防止膜としてメソポーラスシリカ膜4、第二反射防止膜として中空シリカ膜5を用いた例を説明したが、第二反射防止膜が第一反射防止膜よりも外部環境に対する耐久性が高く、第一反射防止膜が第二反射防止膜よりも光透過率が高いという条件を満たせば、第一反射防止膜及び第二反射防止膜の材料は特に限定されない。すなわち、第一反射防止膜及び第二反射防止膜としては、SiO
2膜、SiN膜、TiO
2膜などの種々の低屈折率膜を用いることもできる。
【0029】
本発明の太陽熱集熱管1において、内部を熱媒体6が流通可能な内管2としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。一般的には、内管2の材質は、鉄系材料(例えば、ステンレス鋼、耐熱鋼、合金鋼、炭素鋼)、アルミニウム系材料等の耐熱性を有する金属を用いることができる。これらの中でも、使用環境(例えば、内管2の加熱温度)を考慮すると、ステンレス鋼又は耐熱鋼製の内管2であることが好ましい。
【0030】
また、内管2は、集熱効率を高める観点から、光学選択膜を外面に形成してもよい。ここで、光学選択膜とは、太陽光Lの可視光線及び近赤外線を吸収し、熱媒体から輻射される遠赤外線を反射する膜のことを意味する。光学選択膜を設けることにより、効率良く太陽光Lを吸収すると共に、熱媒体6からの熱輻射を抑えることが可能になる。光学選択膜としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。光学選択膜の例としては、黒色クロムめっき膜、黒色ニッケルめっき膜、無電解ニッケル黒化処理膜、四三酸化鉄皮膜等が挙げられる。
【0031】
内管2の内部を流通する熱媒体6としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。熱媒体6の例としては、水、油、溶融塩(例えば、溶融ナトリウム)等が挙げられる。
【0032】
熱膨張差吸収手段8は、内管2と外管3との間の熱膨張率差を吸収するために設けられる。熱膨張差吸収手段8としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。熱膨張差収手段8の例としては、ベローズ、ダイアフラムなどが挙げられる。熱膨張差吸収手段8の材質は、特に限定されず、例えば、鉄系材料(例えば、ステンレス鋼、耐熱鋼、合金鋼、炭素鋼)、アルミニウム系材料等の耐熱性を有する金属を用いることができる。
熱膨張差吸収手段8と内管2及び外管3との接続方法としては、特に限定されず、例えば、溶接、半田付け、ロウ付け等の公知の接合方法を用いることができる。
【0033】
内管2と外管3との間は、断熱領域7であるため、熱輻射による熱損失を抑えることができる。
【0034】
上記のような構成を有する本発明の太陽熱集熱管1によれば、光透過率の向上と外部環境に対する耐久性の向上とを両立することができる。
【0035】
本発明の太陽熱集熱管1は、集光手段と組み合わせて用いられる。集光手段としては、太陽熱集熱管1に太陽光Lを集光可能なものであれば特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。集光手段の例としては、いわゆるトラフ式の太陽熱集熱装置に一般に用いられる曲面鏡が挙げられる。集光手段は、一般に、長手方向に沿って放物面の断面を有する形状を有する。また、集光手段の内面(太陽熱集熱管1側の表面)は鏡面になっており、その焦点位置において太陽熱集熱管1が長手方向に沿って支持される。なお、集光手段としては、トラフ式に限定されず、フレネル式、リニアフレネル式等を用いてもよい。
【0036】
また、本発明の太陽熱集熱管1は、太陽熱発電装置において用いられる。太陽熱発電装置では、集光手段によって太陽光Lを太陽熱集熱管1に集光し、集光した太陽光Lによって太陽熱集熱管1の内管2内の熱媒体6を加熱し、加熱された熱媒体6の熱エネルギーを発電機で利用することによって電力を発生させる。この太陽熱発電装置は、光透過率の向上と外部環境に対する耐久性の向上とを両立した太陽熱集熱管1を備えているため、太陽光Lを熱に効率的に変換することができる結果、発電効率が向上する。
太陽熱発電装置に用いられる発電機としては、熱を電気に変換することが可能なものであれば特に限定されない。発電機の例としては、加熱された熱媒体6によって水、アンモニアなどの蒸発媒体を蒸発させ、その蒸気によって蒸気タービンを回転させることで電力を発生させることができる発電機が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
14cm
2の平板状(厚さ1mm)のホウケイ酸ガラスを基材として用い、この基材をアルカリ性洗剤を用いて超音波洗浄した後、イオン交換水を用いてリンスして乾燥させた。次に、基材の表面に、50nmの平均粒径を有する中空シリカ粒子がアルコール溶媒に分散された市販の分散溶液をディップコーターによって塗布した後、室温にて乾燥させた。また、基材の裏面に、アルコキシシランをシリカ前駆体物質として含む市販のゾル反応液をディップコーターによって塗布した後、室温にて乾燥させた。次に、塗布膜が形成された基材を400℃で1時間加熱することにより、表面に中空シリカ膜5及び裏面にメソポーラスシリカ膜4が形成された基材を得た。ここで、基材の表面に形成された中空シリカ膜5、及び基材の裏面に形成されたメソポーラスシリカ膜4の厚さはそれぞれ111nm、119nmであった。また、基材に形成された中空シリカ膜5及びメソポーラスシリカ膜4の屈折率をSEMILAB製の分光エリプソメータを用いて測定し、屈折率の測定値をローレンツ−ローレンツの式に導入することによって気孔率を求めた。その結果、中空シリカ膜5の気孔率は21%、メソポーラスシリカ膜4の屈折率は40%であった。なお、以下の比較例においても、同様の方法によって気孔率を測定した。
【0038】
(比較例1)
基材の表面及び裏面の両方に、50nmの平均粒径を有する中空シリカ粒子がアルコール溶媒に分散された市販の分散溶液をディップコーターによって塗布した後、室温にて乾燥させたこと以外は実施例1と同様にすることにより、表面及び裏面の両方に中空シリカ膜5が形成された基材を作製した。ここで、基材の表面及び裏面に形成された中空シリカ膜の厚さは117nmであった。また、基材に形成された中空シリカ膜5の気孔率は21%であった。
(比較例2)
基材の表面及び裏面の両方に、アルコキシシランをシリカ前駆体物質として含む市販のゾル反応液をディップコーターによって塗布した後、室温にて乾燥させたこと以外は実施例1と同様にすることにより、表面及び裏面の両方にメソポーラスシリカ膜4が形成された基材を作製した。ここで、基材の表面及び裏面に形成されたメソポーラスシリカ膜4の厚さは121nmであった。また、基材に形成されたメソポーラスシリカ膜4の気孔率は40%であった。
【0039】
上記の実施例及び比較例で得られた基材について、光透過率、及び外部環境に対する耐久性を評価した。なお、以下の評価は、基材の表面をガラス管(外管3)の外面、基材の裏面をガラス管(外管3)の内面とみなして行った。
光透過率の評価は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計U−4100を用い、600nmの波長における光透過率を測定した。光透過率の測定結果は、任意の3点において測定した値の平均値である。なお、基材の光透過率は91.6%であった。
外部環境に対する耐久性の評価は、基材の表面に形成された中空シリカ膜5又はメソポーラスシリカ膜4を#0000番のスチールウールを用い、200g/cm
2の摩擦荷重及び40mm/秒の移動速度で10往復摩擦した後、中空シリカ膜5又はメソポーラスシリカ膜4の剥離の有無を目視にて確認した。この評価を200g/cm
2ずつ摩擦荷重を増加しながら行い、中空シリカ膜5又はメソポーラスシリカ膜4が全て剥離したときの摩擦荷重を求めた。
上記の結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果に示されているように、表面に中空シリカ膜5及び裏面にメソポーラスシリカ膜4が形成された実施例1の基材では、光透過率、及び外部環境に対する耐久性の両方が高かった。これに対して、表面及び裏面の両方に中空シリカ膜5が形成された比較例1の基材では、外部環境に対する耐久性は高かったものの、光透過率が低かった。また、表面及び裏面の両方にメソポーラスシリカ膜4が形成された比較例2の基材では、光透過率は高かったものの、外部環境に対する耐久性が低かった。
【0042】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、光透過率の向上と外部環境に対する耐久性の向上とを両立させた太陽熱集熱管を提供することができる。また、本発明によれば、外部環境に対する耐久性が高く、且つ太陽光を熱に効率的に変換することが可能な太陽熱発電装置を提供することができる。