特許第6197839号(P6197839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197839
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】回転検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   G01D5/245 N
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-159058(P2015-159058)
(22)【出願日】2015年8月11日
(65)【公開番号】特開2017-37023(P2017-37023A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100095463
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 潤三
(72)【発明者】
【氏名】上田 国博
(72)【発明者】
【氏名】平林 啓
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−187039(JP,A)
【文献】 実開昭55−130213(JP,U)
【文献】 特開2011−117731(JP,A)
【文献】 特開2002−090181(JP,A)
【文献】 特開平06−317430(JP,A)
【文献】 特開2005−351813(JP,A)
【文献】 特開2009−058240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00− 5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正転方向及び逆転方向に回転可能な回転体に対向し、前記回転体の回転可能方向に沿って順に並設されてなり、前記回転体の回転に基づいて第1〜第N(Nは3以上の整数である。)センサ信号をそれぞれ出力する第1〜第Nセンサ素子と、
前記第1〜第Nセンサ素子から出力される第1〜第Nセンサ信号に基づいて、前記回転体の回転方向を検出する回転方向検出部と
を備え、
前記回転方向検出部は、前記第1センサ信号及び第M(Mは3以上N以下の整数である。)センサ信号から得られる第1差動信号と、前記第1センサ信号及び第L(Lは2以上M−1以下の整数である。)センサ信号から得られる第2差動信号とから、前記回転体の回転方向を検出し、
前記第1センサ素子と第Lセンサ素子との間隔は、前記第Lセンサ素子と第Mセンサ素子との間隔よりも小さいことを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
前記Nが3であり、
前記回転方向検出部は、前記第1センサ信号及び第3センサ信号から得られる前記第1差動信号と、前記第1センサ信号及び第2センサ信号から得られる前記第2差動信号とに基づいて、前記回転体の回転方向を検出することを特徴とする請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記回転方向検出部は、前記第1差動信号のゼロクロス時における前記第2差動信号の正負符号に基づいて、前記回転体の回転方向を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記回転方向検出部は、前記第1差動信号のゼロクロス前後における正負符号と、前記第1差動信号のゼロクロス時における前記第2差動信号の正負符号とに基づいて、前記回転体の回転方向を検出することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記回転体は、磁性材料により構成された複数の歯を有する歯車であり、
前記第1センサ素子と前記第Nセンサ素子との間隔は、前記歯車の隣接する2つの歯の間隔よりも小さいことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の回転検出装置。
【請求項6】
前記回転体は、円周方向に交互に配列された複数のN極及びS極を有し、
前記第1センサ素子と前記第Nセンサ素子との間隔は、隣接する2つの前記N極の間隔よりも小さいことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の回転検出装置。
【請求項7】
前記第1〜第Nセンサ素子は、いずれもTMR素子又はGMR素子であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の回転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転状態を検出する回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の用途で、回転体の回転位置、回転速度、回転方向等の回転状態を検出するための回転検出装置が用いられている。この回転検出装置としては、磁性材料によって構成された複数の歯を有する歯車、円周方向に交互に配列された複数のN極及びS極を有する多極着磁磁石等の回転体と、当該回転体に対向して配置される磁気センサとを備えるものが知られており、磁気センサは、回転体の回転に伴う磁界の方向の変化を検知し、回転体と磁気センサとの相対的位置関係を示す信号を出力する。
【0003】
かかる回転検出装置において、回転体の回転方向(正転方向又は逆転方向)を検出し、判定するためには、位相のずれた2つの信号が必要となる。そのため、回転検出装置における磁気センサとしては、2つの磁気センサ素子を、各センサ素子からの信号の位相が90°ずれるように配置されてなるものが知られている。
【0004】
このような構成の回転検出装置において、磁気センサ素子の組み付け誤差等により信号のオフセットが発生してしまうため、回転検出装置の耐ノイズ性が悪くなるという問題がある。このような問題を解決すべく、従来、3つの磁気センサ素子を回転体の回転方向に並べ、隣り合う2つの磁気センサ素子の差動出力に基づいて回転方向の検出を行う回転検出装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−267494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の回転検出装置において、回転体としての着磁ロータは、磁気センサ素子における検出対象としてのN極及びS極が複数交互に配列されている。3つの磁気センサ素子のうちの隣接する磁気センサ素子の間隔は、着磁ロータの隣接する2つのN極(又は2つのS極)間の距離の1/4に設定されている。そして、2組の隣接する磁気センサ素子の差動出力に基づいて回転方向の検出を行うため、各差動出力の位相を90°ずらすことができ、各差動出力に基づいて回転方向を検出することができる。すなわち、各差動出力の位相が90°ずれていることにより、回転方向の検出が可能となる。
【0007】
しかしながら、複数のN極及びS極が交互に配列された着磁ロータにおいて、隣接する2つのN極(又は2つのS極)間の距離にはバラツキがあるため、3つの磁気センサ素子が高精度に位置決めされて配置されているとしても、着磁ロータにおける着磁精度に依存してノイズが増大してしまい、耐ノイズ性を向上させることができず、得られる回転状態に関する情報に誤差が含まれてしまうという問題がある。
【0008】
また、隣接する2つの磁気センサ素子の差動出力に基づいて回転方向の検出を行うため、回転体が高速回転する場合には、互いに位相をずらしている各差動出力が重なってしまうおそれがあり、回転方向の検出が極めて困難となるおそれがある。
【0009】
なお、回転体として、複数の歯を有する歯車を用いる場合においても、隣接する2つの歯の間隔にバラツキがあるため、上記と同様の問題が生じ得る。
【0010】
上記課題に鑑み、本発明は、回転体における複数の検出対象の間隔にバラツキがある場合、特にそのような回転体が高速に回転する場合であっても、回転方向を正確に検出することの可能な回転検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、正転方向及び逆転方向に回転可能な回転体に対向し、前記回転体の回転可能方向に沿って順に並設されてなり、前記回転体の回転に基づいて第1〜第N(Nは3以上の整数である。)センサ信号をそれぞれ出力する第1〜第Nセンサ素子と、前記第1〜第Nセンサ素子から出力される第1〜第Nセンサ信号に基づいて、前記回転体の回転方向を検出する回転方向検出部とを備え、前記回転方向検出部は、前記第1センサ信号及び第M(Mは3以上N以下の整数である)センサ信号から得られる第1差動信号と、前記第1センサ信号及び第L(Lは2以上M−1以下の整数である。)センサ信号から得られる第2差動信号とから、前記回転体の回転方向を検出し、前記第1センサ素子と第Lセンサ素子との間隔は、前記第Lセンサ素子と第Mセンサ素子との間隔よりも小さいことを特徴とする回転検出装置を提供する(発明1)。
【0012】
上記発明(発明1)によれば、第1差動信号を取得するための2つのセンサ信号(第1センサ信号及び第Mセンサ信号)を出力するセンサ素子間の距離と、第2差動信号を取得するための2つのセンサ信号(第1センサ信号及び第Lセンサ信号)を出力するセンサ素子間の距離とが異なることで、第1差動信号と第2差動信号とが振幅の異なる波形として現われ、振幅の異なる2つの差動信号から回転体の回転方向を検出するため、回転体の検出対象の間隔にバラツキがある場合や、回転体が高速回転する場合であっても、回転方向を正確に検出することができる。
【0013】
上記発明(発明1)において、前記Nが3であり、前記回転方向検出部は、前記第1センサ信号及び第3センサ信号から得られる前記第1差動信号と、前記第1センサ信号及び第2センサ信号から得られる前記第2差動信号とに基づいて、前記回転体の回転方向を検出するのが好ましい(発明2)。
【0015】
上記発明(発明1,2)において、前記回転方向検出部は、前記第1差動信号のゼロクロス時における前記第2差動信号の正負符号に基づいて、前記回転体の回転方向を検出するのが好ましい(発明)。
【0016】
上記発明(発明1〜)において、前記回転方向検出部は、前記第1差動信号のゼロクロス前後における正負符号と、前記第1差動信号のゼロクロス時における前記第2差動信号の正負符号とに基づいて、前記回転体の回転方向を検出するのが好ましい(発明)。
【0017】
上記発明(発明1〜)において、前記回転体は、磁性材料により構成された複数の歯を有する歯車であり、前記第1センサ素子と前記第Nセンサ素子との間隔を、前記歯車の隣接する2つの歯の間隔よりも小さくすることができるし(発明)、前記回転体は、円周方向に交互に配列された複数のN極及びS極を有し、前記第1センサ素子と前記第Nセンサ素子との間隔を、隣接する2つの前記N極の間隔よりも小さくすることができる(発明)。
【0018】
上記発明(発明1〜)において、前記第1〜第Nセンサ素子として、いずれもTMR素子又はGMR素子を用いることができる(発明)。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回転体における複数の検出対象の間隔にバラツキがある場合、特にそのような回転体が高速に回転する場合であっても、回転方向を正確に検出することの可能な回転検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る回転検出装置の概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態における磁気センサの歯車に対する配置を示す部分拡大図である。
図3図3は、本発明の一実施形態における磁気センサの回路構成の一の態様を概略的に示す回路図である。
図4図4は、本発明の一実施形態における磁気検出素子としてのMR素子の概略構成を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の一実施形態における磁気センサの構成を概略的に示すブロック図である。
図6図6は、本発明の一実施形態における第1〜第3センサ信号のアナログ波形を示す図である。
図7図7は、本発明の一実施形態における第1及び第2差動信号のアナログ波形を示す図である。
図8図8は、本発明の一実施形態における演算部から出力されるパルス信号の波形を示す図である。
図9図9は、本発明の一実施形態における磁気センサの回路構成の他の態様を概略的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る回転検出装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は、本実施形態における磁気センサの歯車に対する配置を示す部分拡大図であり、図3は、本実施形態における磁気センサの回路構成の一の態様を概略的に示す回路図であり、図4は、本実施形態における磁気検出素子としてのMR素子の概略構成を示す斜視図であり、図5は、本実施形態における磁気センサの構成を概略的に示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る回転検出装置1は、第1の方向(正転方向及び逆転方向)D1に回転可能な歯車10の外周面に対向する磁気センサ2と、歯車10との間に磁気センサ2を挟むようにして配置されるバイアス磁界発生部3とを備える。歯車10は、磁性材料により構成され、その外周面には複数の歯11が形成されている。なお、図1に示す例において、歯車10の歯11の数は48個であるが、当該歯11の数は特に限定されるものではない。
【0023】
磁気センサ2は、第1磁気センサ部21、第2磁気センサ部22及び第3磁気センサ部23を有する。第1〜第3磁気センサ部21〜23は、歯車10の歯11に対向するように、かつ歯車10の回転可能方向(第1の方向D1)に沿って直線上に並列している。
【0024】
第1磁気センサ部21と第3磁気センサ部23との間隔P1は、歯車10の隣接する歯11,11の間隔P11以内であればよいが、第1磁気センサ部21と第3磁気センサ部23との間隔P1が小さいほど好ましい。第1磁気センサ部21と第3磁気センサ部23との間隔P1をより小さくすることで、磁気センサ2(第1〜第3磁気センサ部21〜23)と後述する演算部30とをワンチップ化したときに当該チップを小型化することができる。第1磁気センサ部21と第3磁気センサ部23との間隔P1は、好適には隣接する歯11,11の間隔P11の1/4程度、より好適には隣接する歯11,11の間隔P11の1/6程度、特に好適には隣接する歯11,11の間隔P11の1/9〜1/6程度であるが、歯車10の隣接する歯11,11の間隔P11は、歯車10の1周分において48個あり、それらにはバラツキがある。そのため、第1及び第3磁気センサ部21,23の間隔P1は、48個の間隔P11のすべてよりも小さければよく、歯車10(歯11)に対して第1〜第3磁気センサ部21〜23を位置合わせする必要はない。歯車10の隣接する歯11,11の間隔P11は、第1〜第3磁気センサ部21〜23により出力される第1〜第3センサ信号S1〜S3における1周期、すなわち電気角の360°(本実施形態においては、歯車10の1/48回転(回転角の7.5°))に相当する。第1磁気センサ部21と第3磁気センサ部23との間隔P1は、電気角で言い換えると、好適には90°程度、より好適には60°程度、特に好適には40〜60°程度である。
【0025】
第1磁気センサ部21と第2磁気センサ部22との間隔P2と、第2磁気センサ部22と第3磁気センサ部23との間隔P3とは、特に限定されるものではないが、第1磁気センサ部21と第2磁気センサ部22との間隔P2が、第2磁気センサ部22と第3磁気センサ部23との間隔P3よりも小さいのが好ましい。後述するように、本実施形態においては、第1磁気センサ部21より出力される第1センサ信号S1と第3磁気センサ部23より出力される第3センサ信号S3とから生成される第1差動信号DS1、及び第1センサ信号S1と第2磁気センサ部22より出力される第2センサ信号S2とから生成される第2差動信号DS2に基づいて、歯車10の回転方向(正転方向又は逆転方向)が検出される。この回転方向の検出において、第1差動信号DS1と第2差動信号DS2との振幅が異なることで、歯車10が高速回転しても確実に歯車10の回転方向が検出され得る。そのため、第1磁気センサ部21と第2磁気センサ部22との間隔P2が、第2磁気センサ部22と第3磁気センサ部23との間隔P3よりも小さいことで、第1差動信号DS1と第2差動信号DS2との振幅をより大きく異ならせることができ、より確実に歯車10の回転方向が検出され得る。なお、図2に示す例において、右方向が正転方向、左方向が逆転方向である。
【0026】
本実施形態における磁気センサ2が備える第1〜第3磁気センサ部21〜23は、それぞれ、少なくとも1つの磁気検出素子を含む。第1〜第3磁気センサ部21〜23のそれぞれは、少なくとも1つの磁気検出素子として、直列に接続された一対の磁気検出素子を含んでいてもよい。この場合において、第1〜第3磁気センサ部21〜23のそれぞれは、直列に接続された一対の磁気検出素子を含むホイートストンブリッジ回路を有する。
【0027】
図3に示すように、第1磁気センサ部21が有するホイートストンブリッジ回路211は、電源ポートV1と、グランドポートG1と、出力ポートE11と、直列に接続された一対の磁気検出素子R11,R12とを含む。磁気検出素子R11の一端は、電源ポートV1に接続されている。磁気検出素子R11の他端は、磁気検出素子R12の一端と出力ポートE11とに接続されている。磁気検出素子R12の他端は、グランドポートG1に接続されている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG1はグランドに接続される。
【0028】
第2磁気センサ部22が有するホイートストンブリッジ回路212は、第1磁気センサ部21のホイートストンブリッジ回路211と同様の構成を有し、電源ポートV2と、グランドポートG2と、出力ポートE21と、直列に接続された一対の磁気検出素子R21,R22とを含む。磁気検出素子R21の一端は、電源ポートV2に接続されている。磁気検出素子R21の他端は、磁気検出素子R22の一端と出力ポートE21とに接続されている。磁気検出素子R22の各他端は、グランドポートG2に接続されている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG2はグランドに接続される。
【0029】
第3磁気センサ部23が有するホイートストンブリッジ回路213は、第1及び第2磁気センサ部21,22のホイートストンブリッジ回路211,212と同様の構成を有し、電源ポートV3と、グランドポートG3と、出力ポートE31と、直列に接続された一対の磁気検出素子R31,R32とを含む。磁気検出素子R31の一端は、電源ポートV3に接続されている。磁気検出素子R31の他端は、磁気検出素子R32の一端と出力ポートE31とに接続されている。磁気検出素子R32の他端は、グランドポートG3に接続されている。電源ポートV3には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG3はグランドに接続される。
【0030】
本実施形態において、ホイートストンブリッジ回路211〜213に含まれるすべての磁気検出素子R11,R12,R21,R22,R31,R32として、TMR素子、GMR素子等のMR素子を用いることができ、特にTMR素子を用いるのが好ましい。TMR素子、GMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、印加される磁界の方向に応じて磁化方向が変化する自由層と、磁化固定層及び自由層の間に配置される非磁性層とを有する。
【0031】
具体的には、図4に示すように、MR素子は、複数の下部電極41と、複数のMR膜50と、複数の上部電極42とを有する。複数の下部電極41は、基板(図示せず)上に設けられている。各下部電極41は細長い形状を有する。下部電極41の長手方向に隣接する2つの下部電極41の間には、間隙が形成されている。下部電極41の上面における、長手方向の両端近傍にそれぞれMR膜50が設けられている。MR膜50は、下部電極41側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54を含む。自由層51は、下部電極41に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料により構成され、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせることで、磁化固定層53の磁化の方向を固定する役割を果たす。複数の上部電極42は、複数のMR膜50上に設けられている。各上部電極42は細長い形状を有し、下部電極41の長手方向に隣接する2つの下部電極41上に配置され、隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。なお、MR膜50は、上部電極42側から順に自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54が積層されてなる構成を有していてもよい。
【0032】
TMR素子においては、非磁性層52はトンネルバリア層である。GMR素子においては、非磁性層52は非磁性導電層である。TMR素子、GMR素子において、自由層51の磁化の方向が磁化固定層53の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°(互いの磁化方向が平行)のときに抵抗値が最小となり、180°(互いの磁化方向が反平行)のときに抵抗値が最大となる。
【0033】
図3において、磁気検出素子R11,R12,R21,R22,R31,R32の磁化固定層の磁化の方向を塗りつぶした矢印で表す。第1〜第3磁気センサ部21〜23において、磁気検出素子R11,R12,R21,R22,R31,R32の磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D1(図1,2参照)に平行であって、磁気検出素子R11,R21,R31の磁化固定層の磁化の方向と、磁気検出素子R12,R22,R32の磁化固定層の磁化の方向とは、互いに反平行方向である。第1〜第3磁気センサ部21〜23において、歯車10の回転に伴う磁界の方向の変化に応じて、出力ポートE11,E21,E31から磁界強度を表す信号としての第1〜第3センサ信号が演算部30(図5参照)に出力される。
【0034】
図5に示すように、本実施形態に係る回転検出装置1は、第1〜第3磁気センサ部21〜23のそれぞれから出力される第1〜第3センサ信号S1〜S3を用いた演算を行う演算部30を備える。演算部30は、第1磁気センサ部21及び第3磁気センサ部23に接続される2つの入力端を有する第1演算回路31と、第1磁気センサ部21及び第2磁気センサ部22に接続される2つの入力端を有する第2演算回路32と、第1及び第2演算回路31,32のそれぞれの出力端に接続される2つの入力端を有するデータ処理部33とを備える。
【0035】
第1演算回路31は、歯車10の回転に伴って第1磁気センサ部21から出力される第1センサ信号S1と、第3磁気センサ部23から出力される第3センサ信号S3とを用いた演算処理を行い、それらの差分である第1差動信号DS1を生成する。
【0036】
第2演算回路32は、第1センサ信号S1と、歯車10の回転に伴って第2磁気センサ部22から出力される第2センサ信号S2とを用いた演算処理を行い、それらの差分である第2差動信号DS2を生成する。
【0037】
データ処理部33は、第1及び第2演算回路31,32のそれぞれから出力される第1及び第2差動信号DS1,DS2に基づき、歯車10の回転方向が正転方向であるのか、逆転方向であるのかを判断する。
【0038】
上述した構成を有する本実施形態に係る回転検出装置1において、歯車10の回転に伴い、バイアス磁界発生部3からの磁界の方向が変動し、第1〜第3磁気センサ部21〜23から第1〜第3センサ信号S1〜S3が出力される。具体的には、図6に示すように、第1〜第3磁気センサ部21〜23と歯車10の歯11との相対的位置に応じて位相のずれたサイン波形で表される第1〜第3センサ信号S1〜S3が出力される。なお、図6において、横軸は第1〜第3センサ信号S1〜S3の電気角(°)であり、縦軸は第1〜第3センサ信号S1〜S3の規格化された信号出力である。
【0039】
第1センサ信号S1と第3センサ信号S3とは、第1演算回路31に入力され、当該第1演算回路31は、第1センサ信号S1と第3センサ信号S3との差分である第1差動信号DS1を生成する。また、第1センサ信号S1と第2センサ信号S2とは、第2演算回路32に入力され、当該第2演算回路32は、第1センサ信号S1と第2センサ信号S2との差分である第2差動信号DS2を生成する。具体的には、図7に示すように、振幅の異なる波形で表される第1及び第2差動信号DS1,DS2が生成される。なお、図7において、横軸は第1及び第2差動信号DS1,DS2の電気角(°)であり、縦軸は第1及び第差動信号DS1,DS2の規格化された信号出力である。
【0040】
第1差動信号DS1及び第2差動信号DS2は、データ処理部33に入力され、データ処理部33は、当該第1差動信号DS1及び第2差動信号DS2に基づき、すなわち、第1差動信号DS1がゼロをクロスする時における第2差動信号DS2の正負符号に基づいて、歯車10の回転方向が正転方向でるのか、逆転方向であるのかを判断する。具体的には、データ処理部33は、例えば、第1差動信号DS1が正から負に向かってゼロをクロスする時に、第2差動信号DS2の符号が負であれば、歯車10の回転方向が正転方向であると判断し、第2差動信号DS2の符号が正であれば、歯車10の回転方向が逆転方向であると判断する。図7に示す例においては、第1差動信号DS1が正から負に向かってゼロをクロスする時(図7中の矢印で示す時)に、第2差動信号DS2の符号が負であるため、データ処理部33は、歯車10の回転方向が正転方向であると判断する。
【0041】
なお、本実施形態に係る回転検出装置1においては、第1〜第3磁気センサ部21〜23から出力される第1〜第3センサ信号S1〜S3がデータ処理部33に入力され、データ処理部33にてそれらのセンサ信号S1〜S3の周期数をカウントすることにより、歯車10の回転位置(回転角度)や回転速度が算出される。
【0042】
本実施形態においては、第1差動信号DS1を生成するために、3つの並列する第1〜第3磁気センサ部21〜23のうちの最も離れる第1磁気センサ部21及び第3磁気センサ部23からの第1センサ信号S1及び第3センサ信号S3を用いる。また、第2差動信号DS2を生成するために、3つの並列する第1〜第3磁気センサ部21〜23のうちの近接する第1磁気センサ部21及び第2磁気センサ部23からの第1センサ信号S1及び第2センサ信号S2を用いる。これにより、データ処理部33により歯車10の回転方向を判断するために用いられる第1差動信号DS1と第2差動信号DS2との振幅を異ならせることができる。第1差動信号DS1と第2差動信号DS2とが、同じ振幅であって位相のみがずれた波形で表されると、歯車10が高速に回転したときに、第1及び第2差動信号DS1,DS2の波形が重なってしまい、それらを分離することができずに、歯車10の回転方向を判断することができないおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、歯車10が高速に回転したとしても、第1及び第2差動信号DS1,DS2が完全に重なることがないため、歯車10の回転方向を確実に判断することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、第1センサ信号S1及び第3センサ信号S3から生成した第1差動信号DS1と、第1センサ信号S及び第2センサ信号S2から生成した第2差動信号DS2とのアナログ信号が、デジタル信号に変換されることなくそのままデータ処理部33にて処理される(データ処理部33にてアナログ信号処理が行われる)。アナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に基づいて回転方向等の回転状態を検出する際には、アナログ信号に含まれるノイズの増大が問題となるため、歯車等の回転体に対する磁気センサ(素子)の位置決め精度や、歯車の歯等のピッチ精度が、回転方向等の回転状態の検出精度に影響を与えてしまう。特に、回転体が高速回転する場合には、上記位置決め精度やピッチ精度の、検出精度に対する影響が顕著に現われる。しかしながら、本実施形態のように、第1及び第2差動信号DS1,DS2が、データ処理部33にてそのまま処理されるため、歯車等の回転体に対する磁気センサ(素子)の位置決め精度や、歯車の歯等のピッチ精度に影響されることなく、回転体の回転方向等の回転状態を正確に検出することができる。
【0044】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0045】
上記実施形態においては、3つの磁気センサ部(第1〜第3磁気センサ部21〜23)を備える態様を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、第1〜第N(Nは3以上の整数である。)磁気センサ部がこの順に並列する態様であってもよい。この場合において、第1差動信号DS1は、第1磁気センサ部から出力される第1センサ信号と、第M(Mは3以上N以下の整数である。)磁気センサ部から出力される第Mセンサ信号とから生成されればよく、第2差動信号DS2は、第1センサ信号と、第L(Lは2以上M−1以下の整数である。)磁気センサ部から出力される第Lセンサ信号とから生成されればよい。すなわち、4つ以上の磁気センサ部を備える態様においては、第1差動信号DS1と第2差動信号DS2との振幅が異なるのであれば、それらの差動信号DS1,DS2を生成するための基礎となるセンサ信号を出力する磁気センサ部の組み合わせに制限はないが、少なくとも第1差動信号DS1は、並列する磁気センサ部のうちの両端に位置する磁気センサ部(例えば、4個の磁気センサ部が並列する場合、第1磁気センサ部及び第4磁気センサ部)からのセンサ信号(第1センサ信号及び第4センサ信号)を用いて生成されるのが好ましい。
【0046】
上記実施形態においては、回転体として複数の歯を有する歯車を備える回転検出装置を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、回転体として、円周方向にN極及びS極が交互に配列された着磁ロータであってもよい。
【0047】
上記実施形態において、データ処理部33は、回転体(歯車10)の回転方向を判断したとき、正転方向であるか逆転方向であるかを、それらに応じてパルス幅を変更したパルス信号(図8参照)を出力してもよい。例えば、データ処理部33は、第1〜第3磁気センサ部21〜23からの第1〜第3センサ信号S1〜S3と、第1及び第2差動信号DS1,DS2とが入力されると、それらの信号S1〜S3,DS1,DS2に基づいて、パルス信号を出力することができる。このとき、回転体(歯車10)の回転方向が正転方向である場合のパルス幅を1としたとき、逆転方向である場合のパルス幅を2としたパルス信号を出力することで、本実施形態に係る回転検出装置1を有するアプリケーションの回転制御を、パルス信号のパルス幅に基づいて行うことができる。
【0048】
上記実施形態において、データ処理部33は、第1差動信号DS1が正から負に向かう方向でゼロをクロスする時の第2差動信号DS2の正負符号に基づいて歯車10の回転方向を判断しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、第1差動信号DS1及び第2差動信号DS2が、正から負に向かう方向(又は負から正に向かう方向)でゼロをクロスする順序により、歯車10の回転方向を判断してもよい。例えば、図7に示す例では、正から負に向かう方向で、第2差動信号DS2が先にゼロをクロスし、次に第1差動信号DS1がゼロをクロスしているため、歯車10の回転方向を正転方向であると判断することができる。
【0049】
上記実施形態において、第1〜第3磁気センサ部21〜23が有するホイートストンブリッジ回路211〜213は、1つの出力ポートE11〜E13と、一対の磁気検出素子R11,R12,R21,R22,R31,R32とを含む態様を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、当該ホイートストンブリッジ回路211〜213は、2つの出力ポートE11,E12,E21,E22,E31,E32と、直列に接続された第1の一対の磁気検出素子R11,R12、R21,R22,R31,R32と、直列に接続された第2の一対の磁気検出素子R13,R14,R23,R24,R33,R34とを含むものであってもよい。この場合において、磁気検出素子R11,R13、R21,R23,R31,R33の各一端は、電源ポートV1〜V3に接続される。磁気検出素子R11,R21,R31の各他端は、磁気検出素子R12,R22,R32の各一端と各出力ポートE11,E21,E31とに接続される。磁気検出素子R13,R23,R33の各他端は、磁気検出素子R14,R24,R34の各一端と各出力ポートE12,E22,E32とに接続される。磁気検出素子R12,R14、R22,R24,R32,R34の各他端は、グランドポートG1〜G3に接続される。
【0050】
そして、磁気検出素子R11〜R14,R21〜R24,R31〜R34の磁化固定層の磁化の方向(図9において塗りつぶした矢印で表す。)は第1の方向D1(図1,2参照)に平行であって、磁気検出素子R11,R14,R21,R24,R31,R34の磁化固定層の磁化の方向と、磁気検出素子R12,R13,R22,R23,R32,R33の磁化固定層の磁化の方向とは、互いに反平行方向である。第1〜第3磁気センサ部21〜23において、歯車10の回転に伴う磁界の方向の変化に応じて、出力ポートE11,E12、E21,E22,E31,E32の電位差が変化し、磁界強度を表す信号が出力され、その信号が第1〜第3センサ信号S1〜S3として、差分検出器25,26,27から演算部30(図5参照)に出力され得る。
【符号の説明】
【0051】
1…回転検出装置
2…磁気センサ
21…第1磁気センサ部
22…第2磁気センサ部
23…第3磁気センサ部
30…演算部(回転方向検出部)
31…第1演算回路(回転方向検出部)
32…第2演算回路(回転方向検出部)
33…データ処理回路(回転方向検出部)
10…歯車(回転体)
11…歯
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