(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、クレーンは、クレーン本体と、クレーン本体に対して起伏可能であり吊り荷を吊るためのアタッチメントと、を備えている。アタッチメントは、ブーム等の起伏部材と、起伏部材に取り付けられた複数のトップシーブと、複数のフックシーブと、フックシーブに接続されたフックと、各トップシーブ及び各フックシーブ間にかけ回されたロープと、を有している。このクレーンでの吊り荷の上げ下げは、ロープの巻き取り及び繰り出しにより行われる。
【0003】
このようなクレーンでは、起伏部材がクレーン本体から比較的起立した姿勢のときは、大きな重量を有する吊り荷の上げ下げが可能である(高い吊り上げ能力を有する)一方、起伏部材がクレーン本体に対して比較的傾斜した姿勢のときは、アタッチメント全体の重量を小さくできることが望ましい。換言すれば、クレーンでは、大きな吊り上げ能力を有する状態と、アタッチメントの重量が低減された状態と、の間を切り替え可能であることが望ましい。
【0004】
特許文献1には、このようなニーズに対応可能なクレーンが開示されている。このクレーンでは、シーブの数が変更可能となっている。このため、起伏部材が比較的起立した姿勢では、シーブ数を増やすことによってロープのかけ回し数、すなわち、吊り上げ能力を増やすことができ、起伏部材が比較的傾斜した姿勢では、シーブ数を少なくすることによってアタッチメントの重量を小さくすることができる。具体的に、特許文献1に記載のクレーンは、ブームの上端部に設けられたブームトップと、ブームトップに支持された支軸と、支軸に支持された複数のトップシーブと、追加シーブブロックと、を備えている。追加シーブブロックは、追加シーブと、この追加シーブを支持する外側支持部材及び内側支持部材と、を有している。各支持部材は、追加シーブをその軸方向の両側から支持しており、支軸の端部(支軸のうちブームトップの外側の部位)に対して着脱自在に接続可能に構成されている。つまり、支軸の端部への支持部材の着脱により、シーブ数の増減が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のクレーンでは、追加シーブを取り付けるために支持部材等多くの部材が必要である上に、支軸の端部に抜け止め部材が接続されたとしても、支軸がブームトップに対して当該支軸の軸方向に変位するのを規制することができない。具体的に、支軸のうちブームトップよりも外側に突出する突出部位の軸方向の寸法は、当該突出部位が追加シーブブロックを支持することが可能な大きさに設定されているため、支軸の端部に抜け止め部材が接続されたとしても、突出部位の軸方向の寸法分だけ支軸がブームトップに対して軸方向に変位し得る。このため、この変位を規制するための特殊な構造が必要となる。
【0007】
本発明の目的は、少ない部品点数で追加シーブの着脱を行うことが可能であるとともに、簡単に支軸の支持部に対する軸方向への変位を抑制可能なクレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、クレーン本体と、前記クレーン本体に接続されており吊り荷を吊るためのアタッチメントと、を備え、前記アタッチメントは、前記クレーン本体に対して起伏可能な起伏部材と、吊り荷を吊り上げるためのロープと、前記起伏部材に設けられた一対の支持部と、前記一対の支持部に支持された支軸と、前記支軸に対して回転可能となるように当該支軸に取り付けられており、前記ロープがかけ回されることが可能な常設シーブと、記支軸に対して回転可能となるように当該支軸に取り付け可能であり、前記ロープがかけ回されることが可能な追加シーブユニットと、前記支軸に対して着脱自在に接続可能な抜け止め部材と、前記支軸に対して取り付け可能でかつ前記支軸が前記一対の支持部に対して当該支軸の軸方向に変位するのを規制する規制部材と、を有し、前記支軸は、前記常設シーブを取り付けるための常設取付部と、当該支軸のうち前記一対の支持部の外側でかつ当該支軸の一方側に位置する端部を含む部位であって前記追加シーブユニット及び前記規制部材のいずれか一方を取り付けるための取付端部と、を有し、前記追加シーブユニット及び前記規制部材は、前記取付端部に対して着脱自在に取り付け可能であり、前記抜け止め部材は、前記取付端部に対して着脱自在に接続可能で、かつ、当該取付端部に接続されたときに前記追加シーブユニット又は前記規制部材の前記取付端部からの離脱を防止し、前記追加シーブユニットは、前記抜け止め部材と前記支持部又は前記常設シーブとの間に介在することにより前記支軸の前記軸方向への変位を規制し、前記規制部材は、前記抜け止め部材と前記支持部又は前記常設シーブとの間に介在することにより前記支軸の前記軸方向への変位を規制し、かつ、前記追加シーブユニットの重量よりも小さな重量を有する、クレーンを提供する。
【0009】
本クレーンでは、取付端部に対して追加シーブユニットを取り付け可能であるため、従来よりも少ない部品点数で追加シーブユニットを取り付けることができ、また、吊り上げ能力を高めるために追加シーブユニットが取り付けられたとき及びアタッチメント全体の重量を低減するために規制部材が取り付けられたときのいずれにおいても、支軸の軸方向への変位が規制される。具体的に、追加シーブユニットは、抜け止め部材と支持部又は常設シーブとの間に介在することにより、吊り上げ能力の向上を可能にしながら、支軸の軸方向への変位を規制する。一方、規制部材は、追加シーブユニットの重量よりも小さな重量を有するので、抜け止め部材と支持部又は常設シーブとの間に介在することにより、取付端部に追加シーブユニットが取り付けられた場合に比べてアタッチメント全体の重量を小さくしながら、支軸の軸方向への変位を規制する。なお、ここでいう「規制」とは、支軸の支持部に対する軸方向への変位を一切許容しないことを意味するのではなく、支軸の軸方向への変位量が予め設定された許容範囲内に収まるように前記変位を規制することを意味する。
【0010】
この場合において、前記支持部は、前記支軸のうち前記常設取付部と前記取付端部との間の部位を支持しており、かつ、前記常設シーブの前記取付端部への変位を規制することが好ましい。
【0011】
このようにすれば、支持部により、支軸の支持と常設シーブの抜け止めとの双方が達成される。
【0012】
また、本発明において、前記追加シーブユニットは、前記ロープがかけ回されることが可能な追加シーブと、前記取付端部に対して着脱自在に取り付け可能なスペーサ部材と、を備え、前記スペーサ部材は、前記抜け止め部材と前記支持部との間に介在することにより前記追加シーブの前記軸方向への変位を規制することが好ましい。
【0013】
この態様では、支軸の軸方向についてのスペーサ部材の寸法を調整することにより、支軸の一対の支持部に対する軸方向への変位をより確実に規制することができる。
【0014】
また、本発明において、前記アタッチメントは、前記追加シーブとは異なる他の追加シーブと、前記抜け止め部材とは異なる他の抜け止め部材と、前記規制部材とは異なる他の規制部材と、をさらに備え、前記支軸は、当該支軸のうち前記一対の支持部の外側でかつ前記取付端部とは異なる側に位置する端部であって前記他の追加シーブ及び前記他の規制部材のいずれか一方を取り付けるための他の取付端部をさらに有することが好ましい。
【0015】
この態様では、支軸の両端部に追加シーブ及び他の追加シーブをそれぞれ追加することが可能であるため、吊り上げ能力をより大きく増やすことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、少ない部品点数で追加シーブの着脱を行うことが可能であるとともに、簡単に支軸の支持部に対する軸方向への変位を抑制可能なクレーンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態のクレーン10について、
図1〜
図5を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のクレーン10の全体構成を示す。このクレーン10は、クレーン本体に相当する旋回体12と、この旋回体12を旋回可能に支持する走行体14と、アタッチメントと、を備えている。アタッチメントは、ブーム16及びジブ18を含む起伏部材を含む。前記旋回体12の後部にはカウンタウエイト13が積載される。本実施形態のクレーン10は、アタッチメントの吊り上げ能力を変更することが可能である。この点については後述する。
【0020】
図に示されるブーム16は、いわゆるラチス型であり、基端側部材16Aと、一または複数(図例では2個)の中間部材16B,16Cと、先端側部材16Dとで構成される。具体的に、前記基端側部材16Aは、前記旋回体12の前部に起伏方向に回動可能となるように連結される。前記中間部材16B,16Cは、その順に前記基端側部材16Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。前記先端側部材16Dは前記中間部材16Cの先端側に着脱可能に継ぎ足され、この先端側部材16Dの先端部に、後述のように前記ジブ18を回動させるためのリヤストラット21及びフロントストラット22が回動可能に連結される。
【0021】
ただし、本発明ではブームの具体的な構造は限定されない。例えば、当該ブームは、中間部材を有していなくてもよいし、1又は3以上の中間部材を有していてもよい。
【0022】
前記ジブ18も、その具体的な構造は限定されないが、図例ではラチス型の構造を有する。そして、このジブ18の基端部は、前記先端側部材16Dの先端部に回動可能に連結されており、前記ジブ18の回動中心軸は、前記旋回体12に対する前記ブーム16の回動中心軸と平行な横軸になっている。
【0023】
旋回体12には、基端及び回動端を有するマスト20が設けられている。具体的に、マスト20の基端が旋回体12に回動可能に連結される。この回動軸は、前記ブーム16の回動軸と平行でかつ当該ブーム16の回動軸のすぐ後方に位置している。すなわち、このマスト20は前記ブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。一方、このマスト20の回動端は左右一対のブーム用ガイライン24を介して前記ブーム16の先端に連結される。この連結は、前記マスト20の回動と前記ブーム16の回動とを連携させる。
【0024】
前記旋回体12上には左右一対のバックストップ23が設けられる。これらのバックストップ23は、前記ブーム16が
図1に示される起立姿勢まで到達した時点で当該ブーム16の基端側部材16Aの左右両側部に当接し、この当接によって、前記ブーム16が強風等で後方に煽られるのを規制する。
【0025】
前記リヤストラット21は、前記先端側部材16Dの先端からブーム起立側(
図1では左側)に張り出す姿勢で保持される。この姿勢を保持する手段として、当該リヤストラット21と前記ブーム16との間に左右一対のバックストップ25及び左右一対のストラットガイライン26が介在する。前記バックストップ25は、前記先端側部材16Dと前記リヤストラット21の中間部位との間に介在し、前記リヤストラット21を下から支える。前記ガイライン26は前記リヤストラット21の先端部と前記基端側部材16Aとを結ぶように張設され、その張力によって前記リヤストラット21の位置を規制する。
【0026】
前記フロントストラット22は、前記ジブ18と連動して回動するようにこのジブ18と連結される。詳しくは、このフロントストラット22の先端部と前記ジブ18の先端部とを結ぶように左右一対のジブガイライン28が張設される。従って、このフロントストラット22の回動駆動によって前記ジブ18も回動駆動される。
【0027】
このクレーン10には、各種ウインチが搭載される。具体的には、前記ブーム16を起伏させるためのブーム起伏用ウインチ30と、前記ジブ18を起伏方向に回動させるためのジブ起伏用ウインチ32と、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ34及び補巻用ウインチ36とが搭載される。この実施の形態に係るクレーン10では、前記ブーム起伏用ウインチ30が前記マスト20の基端近傍部位に据え付けられる。また、前記ジブ起伏用ウインチ32、前記主巻用ウインチ34及び前記補巻用ウインチ36は、いずれも前記ブーム16における基端側部材16Aに据え付けられる。これらのウインチ30,32,34,36は、前記旋回体12に搭載されていてもよい。
【0028】
前記ブーム起伏用ウインチ30は、ブーム起伏用ロープ38の巻取り及び繰出しを行う。そして、この巻取り及び繰出しにより前記マスト20が回動するように前記ブーム起伏用ロープ38が配索される。具体的に、前記マスト20の回動端部及び前記旋回体12の後端部にはそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック40,42が設けられ、前記ブーム起伏用ウインチ30から引き出された前記ブーム起伏用ロープ38が前記シーブブロック40,42間に掛け渡される。従って、前記ブーム起伏用ウインチ30が前記ブーム起伏用ロープ38の巻取りや繰出しを行うことにより、前記両シーブブロック40,42間の距離が変化し、これによって前記マスト20さらにはこれと連動する前記ブーム16が起伏方向に回動する。
【0029】
前記ジブ起伏用ウインチ32は、ジブ起伏用ロープ44の巻取り及び繰出しを行う。そして、この巻取りや繰出しによって前記フロントストラット22が回動するように前記ジブ起伏用ロープ44が配索される。具体的には、前記リヤストラット21の長手方向中間部にはガイドシーブ46が設けられるとともに、このリヤストラット21の回動端部及び前記フロントストラット22の回動端部にそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック47,48が設けられ、前記ジブ起伏用ウインチ32から引き出された前記ジブ起伏用ロープ44が前記ガイドシーブ46に掛けられ、かつ、前記シーブブロック47,48間に掛け渡される。従って、前記ジブ起伏用ウインチ32による前記ジブ起伏用ロープ44の巻取りや繰出しは、前記両シーブブロック47,48間の距離を変え、前記
フロントストラット22さらにはこれと連動する前記ジブ18を起伏方向に回動させる。
【0030】
前記主巻用ウインチ34は、主巻ロープ50による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この主巻について、前記リヤストラット21の基端近傍部位、前記フロントストラット22の基端近傍部位及び前記ジブ18の先端部には、それぞれ主巻用ガイドシーブ52,53,54が回転可能に設けられている。さらに、前記主巻用ガイドシーブ54に隣接する位置(ジブ18の先端部)には、主巻用シーブブロック56が設けられている。主巻用シーブブロック56は、幅方向に並ぶように配置された複数の主巻用ポイントシーブ59を有している(
図2及び
図3を参照)。前記主巻用ウインチ34から引き出された前記主巻ロープ50は、前記主巻用ガイドシーブ52,53,54に順に掛けられ、かつ、主巻用ポイントシーブ59と、吊荷用の主フック57に設けられたフックシーブ58と、の間に掛け渡される。従って、前記主巻用ウインチ34が前記主巻ロープ50の巻取りや繰出しを行うと、前記両シーブ59,58間の距離が変わって前記主フック57の巻上げ及び巻下げが行われる。
【0031】
同様にして、前記補巻用ウインチ36は、補巻ロープ60による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻については、前記主巻用ガイドシーブ52,53,54とそれぞれ同軸に補巻用ガイドシーブ62,63,64が回転可能に設けられ、前記補巻用ガイドシーブ64に隣接する位置に補巻用ポイントシーブが回転可能に設けられている。前記補巻用ウインチ36から引き出された前記補巻ロープ60は、前記補巻用ガイドシーブ62,63,64に順に掛けられ、かつ、前記補巻用ポイントシーブから垂下される。従って、前記補巻用ウインチ36が前記補巻ロープ60の巻取りや繰出しを行うと、前記補巻ロープ60の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、または巻下げられる。
【0032】
次に、
図2〜
図5を参照しながら、主巻用シーブブロック56について詳細に説明する。
図2及び
図3は、主巻用シーブブロック56の正面図である。この主巻用シーブブロック56は、以下に説明するように、吊り上げ能力を変更可能な構造を有している。なお、
図2は、吊り上げ能力が高められた高能力状態を示しており、
図3は、アタッチメント全体の重量が低減された低減状態を示している。
【0033】
図2〜
図5に示されるように、主巻用シーブブロック56は、一対の支持部70と、支軸72と、追加シーブユニット73(
図2及び
図4を参照)と、抜け止め部材76と、規制部材90(
図3及び
図5を参照)と、を備えている。この主巻用シーブ部ブロック56では、支軸72の端部に対して追加シーブユニット73及び規制部材90のいずれか一方を着脱自在に取り付けることが可能である。支軸72の端部に追加シーブユニット73が取り付けられることにより、アタッチメントが高い吊り上げ能力を有した状態(高能力状態)となる。一方、支軸72の端部に規制部材90が取り付けられることにより、アタッチメント全体の重量が低減された状態(低減状態)となる。さらに、支軸72の端部に対して追加シーブユニット73及び規制部材90のいずれが取り付けられた場合であっても、支軸72の一対の支持部70に対する軸方向の変位が規制される。以下、具体的に説明する。
【0034】
一対の支持部70は、ジブ18の先端部に接続されている。各支持部70は、ブーム16の回動軸と平行な方向に互いに離間した位置に配置されている。各支持部70は、平板状に形成されている。
【0035】
支軸72は、一対の支持部70に支持されている。具体的に、支軸72は、当該支軸72の軸方向がブーム16の回動軸と平行となる姿勢で一対の支持部70に支持されている。支軸72の軸方向の寸法は、一対の支持部70間の寸法よりも大きな寸法に設定されている。支軸72には、複数の(本実施形態では11枚の)主巻用ポイントシーブ59が取り付けられている。各主巻用ポイントシーブ59は、常に支軸72に取り付けられているため、以下、主巻用ポイントシーブ59を「常設シーブ59」と称する。支軸72は、常設取付部72aと、取付端部72bと、を有する。
【0036】
常設取付部72aは、複数の常設シーブ59を取り付けるための部位である。本実施形態では、支軸72のうち一対の支持部70間に位置する部位が常設取付部72aを構成する。常設取付部72aは、一対の支持部70間において前記軸方向に互いに離間する位置に配置された一対の仕切壁71により支持されている。本実施形態では、常設取付部72aのうち支持部70と仕切壁71との間の部位にそれぞれ4枚の常設シーブ59が取り付けられており、常設取付部72aのうち一対の仕切壁71間の部位に3枚の常設シーブ59が取り付けられている。各支持部70は、常設シーブ59の軸方向の外側への変位を規制する。なお、支持部70と仕切壁71との間に位置する4枚の常設シーブ59からなる常設シーブユニットと支持部70との間、及び、前記常設シーブユニットと仕切壁71との間には、それぞれスペーサが設けられている。同様に、一対の仕切壁71間に位置する3枚の常設シーブ59からなる常設シーブユニットと各仕切壁71との間には、それぞれスペーサが設けられている。これらのスペーサは、常設シーブユニットの軸方向への変位を規制する。
【0037】
取付端部72bは、追加シーブユニット73及び規制部材90のいずれか一方を取り付けるための部位である。本実施形態では、支軸72のうち一対の支持部70の外側でかつ当該支軸72の一方側に位置する端部を含む部位が取付端部72bを構成する。
【0038】
抜け止め部材76は、取付端部72bに取り付けられた追加シーブユニット73又は規制部材90の取付端部72bからの離脱を防止する。抜け止め部材76は、平板状に形成されており、ボルト等の締結具77により取付端部72bに対して着脱自在に接続される。抜け止め部材76は、抜け止め部材76が取付端部72bに接続されたときに取付端部72bの外周面よりも支軸72の径方向の外向きに突出する形状を有している。
【0039】
ここで、
図2及び
図4を参照しながら、追加シーブユニット73について説明する。追加シーブユニット73は、主巻用シーブブロック56とフックシーブ58との間の主巻ロープ50のかけ回し数(吊り上げ能力)を増やすためのものである。追加シーブユニット73は、取付端部72bに対して着脱自在に接続可能である。追加シーブユニット73は、抜け止め部材76と支持部70との間に介在することにより支軸72の前記軸方向への変位を規制する。具体的に、追加シーブユニット73は、追加シーブ74と、スペーサ部材75と、を有する。
【0040】
追加シーブ74は、取付端部72bに対して回転可能となるように当該取付端部72bに取り付け可能であり、主巻ロープ50をかけ回されることが可能である。各常設シーブ59に加えてこの追加シーブ74にも主巻ロープ50がかけ回されることにより、吊り上げ能力が高まる(高能力状態となる)。追加シーブ74は、シーブ本体74aと、シーブ本体74aと取付端部72bとの間に介在する軸受74bと、を有している。
【0041】
スペーサ部材75は、取付端部72bに対して着脱自在に取り付け可能である。スペーサ部材75は、抜け止め部材76と支持部70との間に介在することにより追加シーブ74の前記軸方向への変位を規制する。具体的に、スペーサ部材75は、追加シーブ74と支持部70との間に介在する第1スペーサ75aと、追加シーブ74と抜け止め部材76との間に介在する第2スペーサ75bと、を有する。各スペーサ75a,75bは、ともに円筒状に形成されている。第1スペーサ75aの内側の端部は、支持部70の外側面に当接しており、第1スペーサ75aの外側の端部は、軸受74bの内側面に当接している。第2スペーサ75bの内側の端部は、軸受74bの外側面に当接しており、第2スペーサ75bの外側の端部は、抜け止め部材76の内側面に当接している。つまり、スペーサ部材75は、追加シーブ74とともに抜け止め部材76と支持部70との間に介在することにより、支軸72の一対の支持部70に対する前記軸方向への変位を規制している。なお、スペーサ部材75は、追加シーブ74と一体的に形成されてもよい。
【0042】
本実施形態では、支軸72は、当該支軸72のうち一対の支持部70の外側でかつ前記取付端部72bとは異なる側に位置する端部を含む他の取付端部72cをさらに有している。この他の取付端部72cには、他の追加シーブユニット80及び他の抜け止め部材82が着脱自在に接続可能となっている。他の追加シーブユニット80は、支軸72の軸方向の中心を通りかつ当該支軸72と直交する基準面に対して追加シーブユニット73の構造と対称な構造を有し、他の抜け止め部材82は、前記基準面に対して抜け止め部材76の構造と対称な構造を有する。
【0043】
次に、
図3及び
図5を参照しながら、規制部材90について説明する。規制部材90は、支軸72が一対の支持部70に対して前記軸方向に変位するのを規制する部材である。規制部材90は、取付端部72bに対して着脱自在に取り付け可能でかつ追加シーブユニット73の重量よりも小さな重量を有する。具体的に、規制部材90は、本体部90aと、内側フランジ90bと、外側フランジ90cと、を有している。
【0044】
本体部90aは、取付端部72bの挿通を許容する円筒状に形成されている。内側フランジ90bは、本体部90aの内側の端部から径方向の外向きに張り出す形状を有している。内側フランジ90bは、支持部70の外側面に当接している。外側フランジ90cは、本体部90aの外側の端部から径方向の外向きに張り出す形状を有している。外側フランジ90cは、抜け止め部材76の内側面に当接している。
【0045】
本実施形態では、内側フランジ90bは、ボルト等の締結具91により支持部70に固定され、外側フランジ90cは、ボルト等の締結具92により抜け止め部材76に固定される。支軸72に抜け止め部材76が固定され、抜け止め部材76に外側フランジ90cが固定され、そして、内側フランジ90bが支持部70に固定されることにより、支軸72の一対の支持部70に対する相対回転が規制される。このため、支軸72と一対の支持部70との間での焼付きの発生が抑制される。なお、内側フランジ90b及び外側フランジ90cは、省略されてもよい。この場合、本体部90aの内側の端部が支持部70の外側面に当接するとともに本体部90aの外側面が抜け止め部材76の内側面に当接することにより、支軸72の前記軸方向への変位が規制される。
【0046】
本実施形態では、他の取付端部72cには、他の規制部材94が着脱自在に接続可能となっている。他の規制部材94は、前記基準面に対して規制部材90の構造と対称な構造を有する。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態のクレーン10では、取付端部72bに対して追加シーブユニット73と規制部材90とを付け替えることにより、高能力状態と低減状態とを切り替えることができる。具体的に、高能力状態とするには、取付端部75bに対して第1スペーサ75a、追加シーブ74及び第2スペーサ75bをこの順に挿入した後、当該取付端部75bに抜け止め部材76を接続する。これにより、各常設シーブ59に加えて追加シーブ74にも主巻ロープ50をかけ回すこと(吊り上げ能力を高めること)ができる。一方、この状態から低減状態に切り替えるには、抜け止め部材76及び追加シーブユニット73を取り外し、追加シーブユニット73の重量よりも小さな重量を有する規制部材90を取付端部72bに挿入した後、当該取付端部72bに抜け止め部材76を接続する。これにより、取付端部72bに追加シーブユニット73が取り付けられた場合に比べてアタッチメント全体の重量を小さくすること(低減状態とすること)ができる。
【0048】
また、高能力状態及び低減状態のいずれの状態であっても、支軸72の一対の支持部70に対する前記軸方向の変位が抑制される。具体的に、追加シーブユニット73は、抜け止め部材76の内側面及び支持部70の外側面の双方に当接するので、支軸72の変位が抑制される。一方、規制部材90も、抜け止め部材76の内側面及び支持部70の外側面の双方に当接するので、支軸72の変位が抑制される。
【0049】
つまり、取付端部75bへの追加シーブユニット73の取り付けは、吊り上げ能力の向上と支軸72の軸方向への変位の規制との両立を可能にする。一方、取付端部75bへの規制部材90の取り付けは、アタッチメント全体の重量の低減と支軸72の軸方向への変位の規制との両立を可能にする。なお、ここでいう「規制」とは、支軸72の一対の支持部70に対する軸方向への変位を一切許容しないことを意味するのではなく、支軸72の軸方向への変位量が予め設定された許容範囲内に収まるように前記変位を規制することを意味する。
【0050】
また、支持部70は、支軸72のうち常設取付部72aと取付端部72bとの間の部位を支持しており、かつ、常設シーブ59の取付端部72bへの変位を規制する。このため、支持部70により、支軸72の支持と常設シーブ59の抜け止めとの双方が達成される。
【0051】
また、追加シーブユニット73は、追加シーブ74とスペーサ部材75とを有しているので、前記軸方向についてのスペーサ部材75の寸法を調整することにより、支軸72の前記軸方向への変位をより確実に規制することができる。
【0052】
また、本クレーン10は、他の取付端部72cに対して他の追加シーブユニット80及び他の規制部材90を取り付けることが可能であるので、吊り上げ能力をより大きく増やすことが可能となる。
【0053】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0054】
例えば、取付端部72bに、2枚以上の追加シーブ74が追加可能に構成されてもよい。つまり、取付端部72bの軸方向の寸法が、2枚以上の追加シーブ74を取り付け可能な大きさに設定されてもよい。このことは、他の取付端部72cについても同様である。あるいは、他の追加シーブユニット80及び他の規制部材94は省略されてもよい。
【0055】
また、各支持部70は、複数の常設シーブ59のうち最も外側に位置する最外常設シーブとその1つ内側に位置する常設シーブとの間に配置されてもよい。換言すれば、一対の支持部70の外側に、常設取付部72aの一部が形成されてもよい。この場合、追加シーブユニット73の内側の端部、規制部材90の内側の端部、他の追加シーブユニット80の内側の端部及び他の規制部材94の内側の端部は、それぞれ前記最外常設シーブの外側の端部に当接する。
【0056】
また、主巻用シーブブロック56の接続先は、ジブ18の先端部に限られない。主巻用シーブブロック56は、ブーム16の先端部に取り付けられてもよい。