特許第6197893号(P6197893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョーシーエムアイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6197893-筒状部材のクラック発見用検査装置 図000002
  • 特許6197893-筒状部材のクラック発見用検査装置 図000003
  • 特許6197893-筒状部材のクラック発見用検査装置 図000004
  • 特許6197893-筒状部材のクラック発見用検査装置 図000005
  • 特許6197893-筒状部材のクラック発見用検査装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197893
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】筒状部材のクラック発見用検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   G01M3/26 L
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-18536(P2016-18536)
(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公開番号】特開2017-138173(P2017-138173A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】594111292
【氏名又は名称】日本電産サンキョーシーエムアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春
(72)【発明者】
【氏名】植松 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】猪田 隆
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−291924(JP,A)
【文献】 実開平02−037344(JP,U)
【文献】 特開2003−042889(JP,A)
【文献】 特開平10−111209(JP,A)
【文献】 特開平10−185749(JP,A)
【文献】 特開2007−108102(JP,A)
【文献】 特開2012−032351(JP,A)
【文献】 特開2008−224407(JP,A)
【文献】 特開平11−118658(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0000188(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材のクラックを発見するための検査装置であって、
底板と筒状の側壁とによって形成されて内部に上記筒状部材が装着される下部枠体と、
上記側壁と同形の側壁の上端部開口が天板によって塞がれるとともに上記天板の内面に外周に沿って押圧リングが固定され、かつ上記天板の中央部に圧縮空気の供給ラインの接続部が設けられた上部枠体と、
上面中央に上記接続部との接続管が一体に形成されるとともに外周面に全面にわたって多数の圧縮空気の噴出口が穿設され、かつ内部に上記接続管から導入される圧縮空気を上記噴出口へと導く流路が形成されて上記筒状部材の中央開口部内に挿入される柱状部材と、
上記筒状部材と上記下部枠体の上記底板との間および上記筒状部材と上記上部枠体の上記押圧リングとの間に介装されて上記筒状部材の上記中央開口部と外周面との間を気密に封じるOリングとを備えてなることを特徴とする筒状部材のクラック発見用検査装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末成型等によって製作された筒状部材におけるクラック発見するための検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図5に示すようなモータのロータ等に用いられるマグネット1は、粉末成型によって円筒状に形成された後に、外周部が着磁されることによって製造されている。
このようにして製造されたマグネットは、モータに組み込まれる前に、クラックが発生していないか全数について検査が行われている。
【0003】
従来、上記マグネットに対するクラック有無の検査は、一般的に、水分を含ませたスポンジの上に上記マグネットを載せ、クラック部が有る場合には、浸透圧で当該クラック部に水分が進入して黒く変色することを利用して、当該変色の有無を目視により確認することにより行っていた。
【0004】
ところが、上記従来のクラック発見方法にあっては、クラックに発展する可能性のある僅かな傷や亀裂等については、熟練を要して確実に判別することが難しいという問題点があるとともに、粉末焼結によって成型されたマグネットに対しては有効であるものの、ボンド磁石やプラスチックマグネット等の水を弾く材質のマグネットに対しては実施することができないという問題点もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、材質に拘わらず、また熟練を要することなく、筒状部材にクラック部やクラックに発展する可能性がある小さな傷等を確実に発見することができる筒状部材のクラック発見用検査装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、筒状部材のクラック発見するための検査装置であって、底板と筒状の側壁とによって形成されて内部に上記筒状部材が装着される下部枠体と、上記側壁と同形の側壁の上端部開口が天板によって塞がれるとともに上記天板の内面に外周に沿って押圧リングが固定され、かつ上記天板の中央部に圧縮空気の供給ラインの接続部が設けられた上部枠体と、上面中央に上記接続部との接続管が一体に形成されるとともに外周面に全面にわたって多数の圧縮空気の噴出口が穿設され、かつ内部に上記接続管から導入される圧縮空気を上記噴出口へと導く流路が形成されて上記筒状部材の中央開口部内に挿入される柱状部材と、上記筒状部材と上記下部枠体の上記底板との間および上記筒状部材と上記上部枠体の上記押圧リングとの間に介装されて上記筒状部材の上記中央開口部と外周面との間を気密に封じるOリングとを備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、筒状部材の中央開口部に挿入した柱状部材の気体噴出口から上記筒状部材側に向けて圧縮気体を噴出させると、筒状部材にクラック部が有る場合には、上記圧縮気体が当該クラック部を流れて外周面へと排出されて行くために供給流量が大きい値に留まる。これに対して、クラック部が無い場合には筒状部材内を圧縮空気が流れないために供給流量が極めて小さくなる。
【0009】
この結果、上記圧縮気体を所定の圧力に保持しつつ供給流量を計測して、その値の大小によりクラック部の有無を判断することができる。
この際に、上記圧縮気体の圧力を適宜値に設定することにより、クラックに発展する可能性のある僅かな亀裂や傷等も、当該圧縮気体によって上記亀裂や傷等からクラックに進展させることにより、容易に発見することが可能になる。
【0010】
これにより、材質に拘わらず、また熟練を要することなく、筒状部材に発生したクラック部やクラックに発展する可能性がある小さな亀裂等を確実に発見することができる。
【0011】
なお、柱状部材の気体噴出口から圧縮気体を噴出させる際に、一般的には配管部分が上記所定圧に到達するまで印加圧力が低下すると共に供給流量が大きくなり、その後上記印加圧力が上記所定の圧力に到達して供給流量が低下する。
【0012】
このため、上記気体噴出口から圧縮気体を噴出させて、所定の圧力に一定時間保持した後に上記圧縮気体の流量を計測することにより、より正確にクラック部やクラックに発展する可能性がある小さな亀裂等を発見することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を説明するための図で、検査装置にマグネットを装着した状態を示す縦断面図である。
図2図1の上部枠体を閉じた状態を示す縦断面図である。
図3図2のマグネット内部に圧縮気体を供給した状態を示す縦断面図である。
図4】上記検査装置への圧縮空気の供給圧力と供給流量との変化を示すグラフである。
図5】一般的なマグネットの形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図5に基づいて、本発明に係る筒状部材のクラック発見用検査装置を円筒状のマグネット1のクラック発見に適用した一実施形態について説明する。
この検査装置は、図1図3に示すように、マグネット1が装着される下部枠体2と、この下部枠体2の上部開口を塞ぐ上部枠体3と、マグネット1内に挿入される円柱状部材4とから概略構成されたものである。
【0015】
下部枠体2は、底板5と側壁6とによって有底円筒状に形成されたもので、側壁6の内径寸法がマグネット1の外径寸法よりも僅かに大径に形成されている。他方、上部枠体3は、上記側壁6と同径の円筒状の側壁7と、この側壁7の上端部開口を塞ぐ天板8とから構成されたもので、天板8の内面には外周に沿って押圧リング9が固定されている。
【0016】
そして、天板8の中央部には、圧縮空気の供給ラインの接続部10が設けられている。
また、円柱状部材4は、外径寸法がマグネット1の中央開口部に密に挿入可能な寸法に形成されるとともに、上面中央には接続部10との接続管11が一体に形成されている。そして、この円柱状部材4は、外周面に全面にわたって多数の圧縮空気の噴出口が穿設されるとともに、内部には、接続管11から導入された圧縮空気を上記噴出口へと導く流路が形成されている。
【0017】
次に、上記検査装置を用いたマグネット1のクラック発見方法について説明する。
先ず、図1に示すように、下部枠体2の底板5上にOリング12を配置し、その上に中央開口部内に円柱状部材4を挿入したマグネット1を載置する。
【0018】
次いで、図2に示すように、マグネット1の上部に上部枠体2を被せる。この際に、マグネット1の上面と上部枠体2の押圧リング9との間にもOリング12を介装する。そして、上部枠体2を下方に押圧することにより、マグネット1の内周面側と外周面側との間を気密に封じるとともに、円柱状部材4の接続管11を上部枠体2の接続部10と接続する。
【0019】
次いで、図3に示すように、上部枠体2の接続管10に圧縮空気の供給ライン13を接続し、流量計14を介して円柱状部材4の内部に一定の圧力(本実施形態においては2Mpa)の圧縮空気を供給して、外周面の噴出口から噴出させるとともに、これと併行して流量計14により圧縮空気の供給流量を測定する。
【0020】
図4を用いて、この際の圧力および流量の測定方法をより詳細に説明すると、圧縮空気の供給ライン13から円柱状部材4内へと圧縮空気を供給する初期においては、圧縮空気が接続管11、接続部10および円柱状部材4内へと行き渡るまでの間、印加圧力が低下する。そのため、一定時間(本実施形態においては2.5秒)を測定待ち時間とする。
【0021】
次いで、これらの配管内に圧縮空気が充填されて印加圧力が所定の圧力(2Mpa)に戻るとともに、当該圧力に保持された状態で流量計14により供給流量を測定する。ちなみに、この測定時間は、本実施形態においては0.2秒である。
【0022】
そして、マグネット1にクラック部が存在する場合や、クラックに発展する可能性のある僅かな亀裂や傷等が上記圧縮空気の圧力(2Mpa)によってクラックに進展した場合には、圧縮空気が当該クラックを流れてマグネット1の外周面から側壁6、7間の隙間を通して外部へと排出されて行くために、流量計14で計測される供給流量は、依然として大きい値になる。
【0023】
これに対して、マグネット1にクラック部が無い場合には、マグネット1の内部から外周面側へと漏れる圧縮空気が無いために、供給流量が漸次小さくなる。
【0024】
したがって、予め流量計14に、判定流量を設定しておくことにより、上記供給流量が当該設定値を超えた場合にクラック部が有り、当該設定値以下に低下した場合にクラック部が存在しないと判断することができる。
【0025】
ちなみに、本発明者等による検証結果によれば、一般的な良品のマグネット1においては、供給流量が300〜450L/minであったのに対して、クラック部が存在するマグネット1においては、いずれも上限値である1144L/minであった。
この結果、予め流量計14に、圧縮空気の供給流量として500L/minを閾値に設定しておくことにより、容易かつ確実にクラックの有無を判断することが可能であった。
【0026】
以上説明したように、上記構成からなるマグネット1のクラック発見用検査装置によれば、マグネット1の中央開口部に挿入した円柱状部材4の気体噴出口からマグネット1の内周面側に向けて圧縮気体を噴出させ、マグネット1にクラック部が有る場合には、上記圧縮気体が当該クラック部を流れて外周面へと排出されて供給流量が大きい値になることを利用して、クラック部の有無を判断することができる。
【0027】
加えて、上記圧縮気体の圧力を適宜値に設定することにより、クラックに発展する可能性のある僅かな亀裂や傷等も、当該圧縮気体によってクラックに進展させることにより発見することが可能になる。この結果、材質に拘わらず、また熟練を要することなく、筒状部材に発生したクラックやクラックに発展する可能性がある小さな亀裂等を確実に発見することができる。
【0028】
この際に、円柱状部材4の気体噴出口から圧縮気体を噴出させて、所定の圧力に一定時間保持した後に上記圧縮気体の流量を計測しているために、より正確にクラックやクラックに発展する可能性がある小さな亀裂等を発見することが可能になる。
【0029】
なお、上記実施形態においては、本発明の筒状部材のクラック発見方法を円筒状のマグネット1のクラック発見方法に適用した場合についてのみ示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な筒状部材におけるクラックの発見に適用することができる。加えて、上記マグネット1のような円筒状に限らず、角筒状の部材におけるクラックの発見にも同様に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 マグネット(筒状部材)
12 Oリング
13 圧縮空気の供給ライン
14 流量計
図1
図2
図3
図4
図5