特許第6197949号(P6197949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197949
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】エンジンの排気装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20170911BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20170911BHJP
【FI】
   F01N5/02 B
   F01N13/08 E
【請求項の数】17
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-511587(P2016-511587)
(86)(22)【出願日】2015年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2015059197
(87)【国際公開番号】WO2015151969
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2016年9月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-78161(P2014-78161)
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-152261(P2014-152261)
(32)【優先日】2014年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100148231
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100185878
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】深見 徹
(72)【発明者】
【氏名】荻原 智
(72)【発明者】
【氏名】戸田 康公
(72)【発明者】
【氏名】永井 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】溝口 真一朗
【審査官】 菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−140927(JP,A)
【文献】 実開昭63−110615(JP,U)
【文献】 特開2009−013838(JP,A)
【文献】 特開2008−069750(JP,A)
【文献】 特開2013−083161(JP,A)
【文献】 特開2012−140926(JP,A)
【文献】 特開2008−057820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 5/02
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出された排気を外部へと導く排気通路を備えるエンジンの排気装置であって、
前記排気通路を流れる排気の熱を回収する排熱回収部、及び、冷却流体を介して前記排熱回収部を外周側から冷却する冷却部を有する排熱回収器と、
排気が流入する流入部、及び、該流入する排気を前記排熱回収部の上流側に排出する排出部を有する筒状の排気流制御部材と、を備え、
前記排気流制御部材の排出部の開口径は、前記排熱回収部の外径よりも小さくなるように構成され、
前記排気流制御部材は、前記排出部の開口端が前記排熱回収部の上流側の端面の中央部分と対向するとともに、前記排出部の開口端と前記排熱回収部の上流側の端面とが所定の距離で離間するように配置され、
前記排気流制御部材は、前記流入部の開口径よりも前記排出部の開口径が小さくなるように構成され、前記排気通路の内壁面と前記排出部の外周面とが離間するように配置され、
前記排気流制御部材は、前記排出部の開口端が前記排熱回収器の冷却部の上流側端部よりも下流側となるように配置される、
エンジンの排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの排気装置であって、
前記排熱回収器の上流端に接続する排気管をさらに備え、
前記流入部は、当該流入部の一部が前記排熱回収器内に突出するように前記排気管に固定される、
エンジンの排気装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエンジンの排気装置であって、
前記排熱回収器の上流端に接続する排気管をさらに備え、
前記流入部は、当該流入部の一部が前記排気管内に突出するように前記排熱回収器に固定される、
エンジンの排気装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のエンジンの排気装置であって、
前記排気流制御部材は、前記流入部の外周面が外部に露出するように配置される、
エンジンの排気装置。
【請求項5】
請求項1に記載のエンジンの排気装置であって、
前記流入部は、当該流入部の外周面が外部に露出するように、前記排熱回収器の端部から軸方向外側に突出する、
エンジンの排気装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のエンジンの排気装置であって、
排気を整流する整流部を有する整流器をさらに備え、
前記整流器は、前記排気流制御部材の上流側に設けられる、
エンジンの排気装置。
【請求項7】
請求項6に記載のエンジンの排気装置であって、
前記整流器は、前記排気を整流するとともに、前記排気を浄化する排気浄化部を備える触媒コンバータである、
エンジンの排気装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載のエンジンの排気装置であって、
排気通路の延在方向に沿う平面内において、前記排出部の開口端の外縁と前記排熱回収部の上流側端面の外縁とを結ぶ線と、前記排気通路の内壁面とのなす角度は、10°から45°の範囲内の値である、
エンジンの排気装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載のエンジンの排気装置であって、
前記排気流制御部材は、前記排気流制御部材の中心軸から偏心した位置に前記排気流制御部材の上流側と下流側とを貫通する貫通部が形成され、
前記貫通部の開口面積は、前記排出部の開口面積よりも小さい、
エンジンの排気装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一つに記載のエンジンの排気装置であって、
前記排熱回収部の下流側に、前記排熱回収部から排気が流入する流入口と、前記流入した排気を排出する排出口とを有する支持部材を備え、
前記支持部材の流入口の開口径は、前記排熱回収部の外径よりも小さくなるように構成され、
前記支持部材は、前記流入口の開口端が前記排熱回収部の下流側の端面の中央部分と対向するとともに、前記流入口の開口端と前記排熱回収部の下流側の端面とが所定の距離で離間する、
エンジンの排気装置。
【請求項11】
請求項10に記載のエンジンの排気装置であって、
前記支持部材は、前記支持部材の中心軸から偏心した位置に前記支持部材の上流側と下流側とを貫通する貫通部が形成され、
前記貫通部の開口面積は、前記流入部の開口面積よりも小さい、
エンジンの排気装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一つに記載のエンジンの排気装置であって、
前記貫通部は、前記排気流制御部材の円周方向に沿って複数形成される、
エンジンの排気装置。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一つに記載のエンジンの排気装置であって、
前記貫通部は、前記排気流制御部材の中心軸よりも鉛直方向の下部に形成される、
エンジンの排気装置。
【請求項14】
請求項13に記載のエンジンの排気装置であって、
前記貫通部は、前記排出部の開口の最下部よりも鉛直方向の下部に、当該貫通部の開口領域の一部が位置するように形成される、
エンジンの排気装置。
【請求項15】
請求項12に記載のエンジンの排気装置であって、
前記貫通部は、前記排気装置に前記排気流制御部材が設置されたときに、少なくとも一つの前記貫通部の開口領域の一部が前記排出部の開口の最下部よりも鉛直方向の下部に位置するよう、前記排気流制御部材の円周方向に等しい間隔で形成される、
エンジンの排気装置。
【請求項16】
エンジンから排出された排気を外部へと導く排気通路を備えるエンジンの排気装置であって、
前記排気通路を流れる排気の熱を回収する排熱回収部、及び、冷却流体を介して前記排熱回収部を外周側から冷却する冷却部を有する排熱回収器と、
排気が流入する流入部、及び、該流入する排気を前記排熱回収部の上流側に排出する排出部を有する筒状の排気流制御部材と、を備え、
前記排気流制御部材の排出部の開口径は、前記排熱回収部の外径よりも小さくなるように構成され、
前記排気流制御部材は、前記排出部の開口端が前記排熱回収部の上流側の端面の中央部分と対向するとともに、前記排出部の開口端と前記排熱回収部の上流側の端面とが所定の距離で離間するように配置され、
前記排熱回収器の上流端に接続する排気管をさらに備え、
前記流入部は、当該流入部の一部が前記排熱回収器内に突出するように前記排気管に固定される、
エンジンの排気装置。
【請求項17】
エンジンから排出された排気を外部へと導く排気通路を備えるエンジンの排気装置であって、
前記排気通路を流れる排気の熱を回収する排熱回収部、及び、冷却流体を介して前記排熱回収部を外周側から冷却する冷却部を有する排熱回収器と、
排気が流入する流入部、及び、該流入する排気を前記排熱回収部の上流側に排出する排出部を有する筒状の排気流制御部材と、を備え、
前記排気流制御部材の排出部の開口径は、前記排熱回収部の外径よりも小さくなるように構成され、
前記排気流制御部材は、前記排出部の開口端が前記排熱回収部の上流側の端面の中央部分と対向するとともに、前記排出部の開口端と前記排熱回収部の上流側の端面とが所定の距離で離間するように配置され、
前記排熱回収器の上流端に接続する排気管をさらに備え、
前記流入部は、当該流入部の一部が前記排気管内に突出するように前記排熱回収器に固定される、
エンジンの排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2011−169514Aには、エンジンから排出された排気を流す排気通路と、排気通路に設けられ、冷却水を用いて排気の熱を回収する排熱回収器と、を備える排気装置が開示されている。この排熱回収器で回収された熱は、エンジンの暖機や暖房等に利用される。
【発明の概要】
【0003】
上述の排気装置に設けられる排熱回収器は、冷却水を用いて、排熱回収部を通過する排気から熱を奪う装置である。そのため、エンジンの運転状態が高負荷及び高エンジン回転速度となり、エンジンからの排気流量が増加すると、排熱回収器による排熱の回収量は増加する。しかしながら、このような排気装置では、高負荷及び高エンジン回転速度のエンジンの運転状態がある程度継続すると、冷却水(冷却流体)の温度が高くなり過ぎて、オーバーヒートが発生してしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、排熱回収器で使用される冷却流体の温度が高くなり過ぎることを防止可能なエンジンの排気装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の一態様によれば、エンジンから排出された排気を外部へと導く排気通路を備えるエンジンの排気装置であって、排気通路を流れる排気の熱を回収する排熱回収部、及び、冷却流体を介して排熱回収部を外周側から冷却する冷却部を有する排熱回収器と、排気が流入する流入部、及び、流入する排気を排熱回収部の上流側に排出する排出部を有する筒状の排気流制御部材と、を備える。排気流制御部材の排出部の開口径は、排熱回収部の外径よりも小さくなるように構成される。そして、排気流制御部材は、排出部の開口端が排熱回収部の上流側の端面の中央部分と対向するとともに、排出部の開口端と排熱回収部の上流側の端面とが所定の距離で離間するように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態による排気装置を備えるエンジンの概略構成図である。
図2図2は、排気装置に設けられる床下触媒コンバータの排気浄化部の正面図である。
図3図3は、排気装置に設けられる排熱回収器の断面図である。
図4図4は、排熱回収器を含む排気装置の断面図である。
図5A図5Aは、排気流量が少ないエンジン運転状態での排気の流れを説明する図である。
図5B図5Bは、排気流量が多いエンジン運転状態での排気の流れを説明する図である。
図6図6は、エンジン運転状態と排熱回収器による排熱の回収効率との関係を示す図である。
図7図7は、第2実施形態によるエンジンの排気装置の断面図である。
図8図8は、第3実施形態によるエンジンの排気装置の断面図である。
図9図9は、第4実施形態によるエンジンの排気装置の断面図である。
図10A図10Aは、第5実施形態によるエンジンの排気装置の断面図である。
図10B図10Bは、図10AのXb−Xb線に沿う排気流制御部材の縦断面図である。
図11A図11Aは、第6実施形態によるエンジンの排気装置の断面図である。
図11B図11Bは、図11AのXIb−XIb線に沿う排気流制御部材の縦断面図である。
図12A図12Aは、第5実施形態の排気流制御部材に設ける貫通部の変形例である。
図12B図12Bは、第6実施形態の排気流制御部材に設ける貫通部の変形例である。
図13図13は、第7実施形態によるエンジンの排気装置の断面図である。
図14図14は、図13のXIIb−XIIb線に沿う排気流制御部材の縦断面図である。
図15図15は、第8実施形態によるエンジンの排気装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による排気装置60を備えるエンジン1の概略構成図である。
【0009】
図1に示すエンジン1は、例えば車両に搭載される直列4気筒内燃機関である。エンジン1は、シリンダブロック10と、シリンダブロック10の上部に固定されるシリンダヘッド20と、を備える。
【0010】
シリンダブロック10は、シリンダ部10Aと、当該シリンダ部10Aの下部に形成されるクランクケース10Bとから構成されている。
【0011】
シリンダ部10Aには、4つのシリンダ11が形成される。シリンダ11内には、ピストン12が摺動自在に配設される。ピストン12は、混合気燃焼時の燃焼圧力を受けて、シリンダ11に沿って往復運動する。
【0012】
クランクケース10Bは、1本のクランクシャフト13を回転自在に支持する。各ピストン12にはコンロッド14が連結される。これらコンロッド14の下端はクランクシャフト13に連結される。ピストン12の往復運動は、コンロッド14及びクランクシャフト13を介して回転運動に変換される。
【0013】
シリンダヘッド20は、シリンダブロック10の上部に取り付けられる。シリンダヘッド20の下面、シリンダ11の側面、及びピストン12の冠面により、燃焼室15が形成される。
【0014】
また、シリンダヘッド20には、燃焼室15と連通する吸気ポート30及び排気ポート40が形成されている。1つの燃焼室15に対して、2つの吸気ポート30と2つの排気ポート40が設けられる。
【0015】
吸気ポート30には、吸気弁31が設けられる。吸気弁31は、可変動弁機構32の揺動カムによって駆動され、ピストン12の上下動に応じて吸気ポート30を開閉する。可変動弁機構32は、吸気弁31のリフト量や作動角等のバルブ特性を変更可能に構成されている。
【0016】
排気ポート40には、排気弁41が設けられる。排気弁41は、可変動弁機構42の揺動カムによって駆動され、ピストン12の上下動に応じて排気ポート40を開閉する。可変動弁機構42は、排気弁41のリフト量や作動角等のバルブ特性を変更可能に構成されている。
【0017】
吸気ポート30と排気ポート40の間のシリンダヘッド20には、点火プラグ27が設けられている。点火プラグ27は、エンジン1の燃焼室15ごとに一つ設けられる。点火プラグ27は、所定のタイミングで燃焼室15内の混合気を着火する。
【0018】
シリンダブロック10のシリンダ部10A及びシリンダヘッド20には、ウォータジャケット16,22が設けられている。ウォータジャケット16,22は、シリンダ11及び燃焼室15の周りを冷却するための冷却水(冷却流体)が循環する通路となる。
【0019】
エンジン1は、吸気(新気)を当該エンジン1に導く吸気装置50と、当該エンジン1からの排気を外部へ導く排気装置60と、をさらに備えている。
【0020】
吸気装置50は、吸気管21と、吸気マニホールド22と、エアクリーナ23と、エアフローメータ24と、電子制御式のスロットルバルブ25と、燃料噴射弁26と、を備える。
【0021】
吸気管21は、吸気を流す通路である。吸気マニホールド22は、吸気管21と吸気ポート30とを連通する。吸気マニホールド22は、エンジン1の各気筒に吸気を分配する。これら吸気管21及び吸気マニホールド22は、エンジン1に吸気を導く吸気通路として機能する。
【0022】
吸気管21の上流端には、エアクリーナ23が設けられる。エアクリーナ23は、外部から取り込んだ吸気から塵や埃等の異物を除去する。
【0023】
エアクリーナ23よりも下流の吸気管21には、エアフローメータ24が設置される。エアフローメータ24は、吸気管21内の吸気流量を検出し、検出信号をコントローラ80に対して出力する。
【0024】
エアフローメータ24よりも下流の吸気管21には、スロットルバルブ25が設けられる。スロットルバルブ25は、吸気管21の通路断面積を連続的又は段階的に変化させることで、各燃焼室15に導入される吸気量を調整する。スロットルバルブ25はスロットルアクチュエータ25Aによって開閉駆動される。スロットルバルブ25の開度はスロットルセンサ25Bによって検出される。
【0025】
吸気マニホールド22には、エンジン1の気筒毎に燃料噴射弁26が設けられる。つまり、吸気マニホールド22の各ブランチ管に、燃料噴射弁26は一つずつ設けられる。燃料噴射弁26は、エンジンの運転状態に応じた量の燃料を所定のタイミングで吸気マニホールド22内に噴射する。燃料噴射弁26に供給される燃料は、図示しない燃料タンクに貯蔵されている。
【0026】
排気装置60は、当該エンジン1からの排気を浄化して外部へと導出する装置である。排気装置60は、排気管61と、排気マニホールド62と、マニホールド触媒コンバータ63と、床下触媒コンバータ64と、排熱回収器70と、を備える。
【0027】
排気マニホールド62の上流端はシリンダヘッド20に接続され、排気マニホールド62の下流端は排気管61に接続される。排気マニホールド62は、各排気ポート40からの排気を集合させ、排気管61へと導く。これら排気マニホールド62及び排気管61は、エンジン1からの排気を外部へ導く排気通路として機能する。
【0028】
排気マニホールド62の合流管62Aには、マニホールド触媒コンバータ63が設けられる。マニホールド触媒コンバータ63は、排気を浄化する排気浄化部63Aを備えている。
【0029】
排気浄化部63Aは、格子状の担体、つまり排気が通過可能な複数の貫通孔を有する円筒状部材として構成されている。貫通孔は、排気浄化部63Aの一方の端面から他方の端面まで軸方向に貫通している。排気浄化部63Aは、貫通孔の断面形状が六角形であるハニカム構造体として構成されてもよい。なお、排気浄化部63Aの貫通孔の断面形状は、四角形や六角形に限られず、円形や三角形等のその他の形状でもよい。
【0030】
排気浄化部63Aの表面には、排気を浄化する三元触媒が担持されている。排気浄化部63Aは、貫通孔を通過する排気に含まれる炭化水素や窒素酸化物、一酸化炭素等の有害物質を三元触媒によって浄化する。排気浄化部63Aの貫通孔は、排気の流れを一定方向(通路延在方向)に整える機能も有している。このように、マニホールド触媒コンバータ63は、排気の流れを整流する排気浄化部63A(整流部)を有する整流器として構成されている。
【0031】
排気マニホールド62の合流管62Aの下流端には、排気管61の上流端が接続される。排気管61は、排気マニホールド62を通過した排気を外部へと導く通路である。排気管61には、床下触媒コンバータ64と排熱回収器70とが上流側から順に配置される。
【0032】
床下触媒コンバータ64は、排気を浄化する排気浄化部64Aを備えている。
【0033】
図2に示すように、排気浄化部64Aは、格子状の担体、つまり排気が通過可能な複数の貫通孔64Bを有する円筒状部材として構成されている。貫通孔64Bは、排気浄化部64Aの一方の端面から他方の端面まで軸方向に貫通している。排気浄化部64Aは、貫通孔64Bの断面形状が六角形であるハニカム構造体として構成されてもよい。なお、貫通孔64Bの断面形状は、四角形や六角形に限られず、円形や三角形等のその他の形状でもよい。
【0034】
排気浄化部64Aの表面には、排気を浄化する三元触媒が担持されている。排気浄化部64Aは、貫通孔64Bを通過する排気に含まれる炭化水素や窒素酸化物、一酸化炭素等の有害物質を三元触媒によって浄化する。排気浄化部64Aの貫通孔64Bは、排気の流れを一定方向(通路延在方向)に整える機能も有している。このように、床下触媒コンバータ64は、排気の流れを整流する排気浄化部64A(整流部)を有する整流器として構成されている。
【0035】
図1に示すように、排熱回収器70は、床下触媒コンバータ64の下流側に設けられている。排熱回収器70は、床下触媒コンバータ64の排気浄化部64Aを通過した排気の熱を回収する装置である。排熱回収器70によって回収された熱は、エンジン1の暖機や暖房等に利用される。
【0036】
エンジン1から排気装置60に排出された排気は、マニホールド触媒コンバータ63及び床下触媒コンバータ64で浄化され、排熱回収器70で熱が回収された後に、排気管61を通じて外部へと導かれる。
【0037】
上記したエンジン1は、コントローラ80によって制御される。コントローラ80は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
【0038】
コントローラ80には、エアフローメータ24やスロットルセンサ25Bからの検出信号のほか、温度センサ81や、エンジン回転速度センサ82、アクセルペダルセンサ83等のエンジン運転状態を検出する各種センサからの検出信号が入力される。温度センサ81は、ウォータジャケット16を流れる冷却水の温度を検出する。エンジン回転速度センサ82は、クランク角に基づいてエンジン回転速度を検出する。アクセルペダルセンサ83は、アクセルペダルの踏み込み量を検出する。
【0039】
コントローラ80は、検出したエンジン1の運転状態に基づいて、スロットル開度や燃料噴射量、点火時期等を最適に制御する。
【0040】
次に、図3及び図4を参照して、排気装置60に設けられる排熱回収器70の構成について説明する。図3は排気通路の延在方向に対して直交する方向に沿う排熱回収器70の断面図である。図4は排気通路の延在方向に沿う排気装置60の断面図である。
【0041】
図3及び図4に示すように、排熱回収器70は、排気の熱を回収する排熱回収部71と、冷却水を介して排熱回収部71を冷却する冷却部72と、を備える。
【0042】
冷却部72は円筒部材であって、冷却部72の内部に円筒状の排熱回収部71が配置されている。冷却部72の内径は排熱回収部71の外径よりも僅かに大きく形成されており、排熱回収部71は冷却部72内に嵌め込まれている。冷却部72は、排熱回収部71を収容した状態で排気管61に設けられる。冷却部72の内部は、排気を流す排気通路の一部として構成されている。
【0043】
排熱回収部71は、排気管61や排気マニホールド62を形成する材料よりも高熱伝導率の材料、例えば炭化ケイ素(SiC)によって形成されている。排熱回収部71は、排気が通過可能な複数の貫通孔71Aを有する格子状の円筒部材である。貫通孔71Aは、排熱回収部71の一方の端面から他方の端面まで軸方向に貫通している。排熱回収部71は、貫通孔71Aの断面形状が六角形であるハニカム構造体として構成されてもよい。なお、貫通孔71Aの断面形状は、四角形や六角形に限られず、円形や三角形等のその他の形状でもよい。
【0044】
排熱回収部71は、貫通孔71Aを通過する排気により加熱される。したがって、排熱回収部71を通過後の排気の温度は、通過前の排気の温度よりも低くなる。
【0045】
冷却部72は、排熱回収部71の外周に沿って形成される環状流路72Aと、環状流路72Aに冷却水を導入する導入口72Bと、環状流路72Aから冷却水を排出する排出口72Cと、を備える。導入口72Bと排出口72Cとは、排熱回収部71の周方向に180度ずらして配置される。
【0046】
排熱回収器70の環状流路72Aには、エンジン1のウォータポンプ(不図示)により圧送された冷却水が導入口72Bを通じて流入する。冷却水は、環状流路72A内を流れ、排熱回収部71を外周側から冷却する。環状流路72Aを通過する冷却水は、排熱回収部71により暖められ、排出口72Cを通じて排熱回収器70から排出される。排出された冷却水は、シリンダブロック10及びシリンダヘッド20のウォータジャケット16,22や図示しない暖房装置に供給され、エンジン1の暖機や車室内の暖房に利用される。
【0047】
上記した排熱回収器70は、排気の熱を排熱回収部71により奪い、高温となった排熱回収部71を冷却水により冷却することで、排熱の一部を冷却水に伝達する構造となっている。そのため、エンジン1の運転状態が高負荷及び高エンジン回転速度となり、エンジン1からの排気流量が増加すると、排熱回収器70で回収される排熱の量も増加する。
【0048】
従来技術における排気装置では、高負荷及び高エンジン回転速度の運転状態がある程度継続すると、排熱回収器を通過する冷却水の温度が高くなり過ぎて、オーバーヒートが発生してしまう可能性があった。
【0049】
そこで、本実施形態によるエンジン1の排気装置60は、高負荷及び高エンジン回転速度の運転状態が継続する場合であっても冷却水の温度が高くなりすぎることを防止するために、排熱回収器70の上流側の排気の流れを制御する排気流制御部材90を備えている。
【0050】
図4を参照して、排気装置60に設けられる排気流制御部材90の構成について説明する。
【0051】
排気流制御部材90は、円筒状部材である。排気流制御部材90は、排気通路の一部を構成する冷却部72の内部に設けられる。排気流制御部材90は、排気管61を流れてきた排気が流入する流入部91と、排気を排出する排出部92と、流入部91と排出部92とをつなぐ中間部93と、を備える。
【0052】
流入部91は、排気流制御部材90の一方の開口端である流入口91Aを有する円筒体である。流入部91は、その外周面が排熱回収器70の冷却部72の内壁面に当接するように、冷却部72に固定されている。
【0053】
排出部92は、排気流制御部材90の他方の開口端である排出口92Aを有する円筒体である。排出部92の排出口92Aの開口径は、流入部91の流入口91Aの開口径よりも小さくなるように構成されている。これにより、排気通路の一部を構成する冷却部72の内壁面と、排出部92の外周面とは、隙間Bだけ離間する。
【0054】
中間部93は、流入部91と排出部92とをつなぐ円筒体である。中間部93は、当該中間部93の内径が流入部91から排出部92に向かって徐々に小さくなるように構成された縮径部である。流入部91、排出部92、及び中間部93はそれぞれの中心軸が同心となるように構成されている。
【0055】
排気流制御部材90と排熱回収器70の排熱回収部71とは、同軸上に配置されている。また、排気流制御部材90は、排出部92の排出口92Aと排熱回収部71の上流側端面とが隙間Aだけ離間するように配置されている。このように、排気流制御部材90は、排熱回収器70の排熱回収部71に対して排気通路の延在方向に所定の間隔をあけて配置される。
【0056】
排気流制御部材90と排熱回収部71との間隔は、図4に示す角度θで規定される。角度θは、排気通路の延在方向に沿う同一平面内において、排出部92の排出口92Aの外縁と排熱回収部71の上流側端面の外縁を結ぶ破線と、冷却部72の上流側の内壁面とのなす角度である。エンジン1の排気装置60では、排気流の制御性の観点から、角度θは10°から45°の範囲内の値であることが好ましい。
【0057】
また、排気流制御部材90における排出部92の排出口92Aの開口径は、排熱回収器70の排熱回収部71の外径よりも小さく構成されている。排出部92の排出口92Aは、排熱回収部71の上流側の端面の中央部分と対向する。排気流の制御性の観点から、排出部92の排出口92Aの開口径は、排熱回収部71の外径の80%から90%の範囲内の値であることが好ましい。
【0058】
次に、図5A図5B、及び図6を参照して、排気流制御部材90による排気流制御について説明する。
【0059】
図5Aは排気流量が少ないエンジンの運転状態での排気の流れを説明する図である。図5Bは排気流量が多いエンジンの運転状態での排気の流れを説明する図である。図6は、エンジンの運転状態と排熱回収器70による排熱の回収効率との関係を示す図である。
【0060】
図5Aに示すように、エンジン1からの排気は、排気管61を通じて排気流制御部材90に導かれる。このように導かれた排気は、排気流制御部材90の内部を通って、排出部92の排出口92Aから排熱回収部71の上流側に排出される。
【0061】
低負荷かつ低エンジン回転速度のような、エンジン1からの排気流量が少ない運転状態では、図5Aの矢印に示すように、排気は排気流制御部材90を通過することによって一旦通路内の中央寄りに集められる。そして、排出部92の排出口92Aから排出された後に冷却部72内で再び広がり、排熱回収部71の上流側に導かれる。このように、排気流量が少ない運転状態では、排気流制御部材90の排出部92からの排気は、排熱回収部71の上流側の端面の全体に比較的均一に供給される。
【0062】
排熱回収部71の上流側の端面の全体に排気が均一に供給される場合、排熱回収部71は、貫通孔71Aを通過する排気によって中央部分だけでなく外周部分も加熱される。排熱回収器70の冷却部72は排熱回収部71の外周側から熱を奪う構造であるため、上述のように排熱回収部71の外周部分の温度が高められることによって、排熱回収部71の熱を、冷却部72を流れる冷却水を介して効率的に回収することが可能となる。
【0063】
したがって、エンジン1からの排気流量が少ない運転状態、例えばエンジン運転状態が低負荷及び低エンジン回転速度である場合には、図6に示すように排熱回収器70での排熱回収効率が高くなる。
【0064】
一方、高負荷かつ高エンジン回転速度のような、エンジン1からの排気流量が多い運転状態では、図5Bの矢印に示すように、排気は排気流制御部材90を通過することによって一旦通路内の中央寄りに集められる。そして、排出部92の排出口92Aから排出された後に冷却部72内で広がることなく、排熱回収部71の上流側に導かれる。このように、排気流量が多い運転状態では、排出部92からの排気は、排熱回収部71の上流側の端面の中央部分に集中して供給される。
【0065】
排熱回収部71の上流側の端面の中央部分に排気が集中して供給される場合には、排熱回収部71は、貫通孔71Aを通過する排気によって中央部分だけが局所的に加熱されることとなる。このように加熱されることによって、排熱回収部71の外周部分の温度上昇が抑制される。排熱回収器70の冷却部72は排熱回収部71の外周側から熱を奪う構造であるため、上述のように排熱回収部71の外周部分の温度上昇が抑制されることによって、排熱回収部71から冷却部72を流れる冷却水に熱が伝達されにくくなる。
【0066】
したがって、エンジン1からの排気流量が多い運転状態、例えばエンジン運転状態が高負荷及び高エンジン回転速度である場合には、図6に示すように排熱回収器70での排熱回収効率が低くなる。
【0067】
上記したエンジン1の排気装置60によれば、以下の効果を得ることができる。
【0068】
エンジン1の排気装置60は、排熱回収部71の上流側に排気流制御部材90を備えている。排気流制御部材90の排出部92の開口径は、排熱回収器70の排熱回収部71の外径よりも小さくなるように構成されている。そして、排気流制御部材90は、排出部92の排出口92Aが排熱回収部71の中央部分と対向するとともに、排出部92の排出口92Aと排熱回収部71とが排気通路の延在方向の所定隙間だけ離間するように構成される。
【0069】
低負荷及び低エンジン回転速度のような排気流量が少ない運転状態では、排気流制御部材90の排出部92からの排気は、排熱回収部71の上流側の端面全体に対して比較的均一に供給される。そのため、排熱回収部71の中央部分だけでなく外周部分も加熱される。排熱回収器70の冷却部72は排熱回収部71の外周側から熱を奪う構造であるため、排気流量が少ない運転状態では、排熱回収器70による排熱回収効率を高めることができる。一方、高負荷及び高エンジン回転速度のような排気流量が多い運転状態では、排気流制御部材90の排出部92からの排気は、排熱回収部71の上流側の端面の中央部分に集中して供給される。そのため、排熱回収部71の外周部分の温度上昇が抑制される。その結果、排気流量が多い運転状態では、排熱回収器70による排熱回収効率を低下させることが可能となる。
【0070】
このように高負荷及び高エンジン回転速度の運転状態では、排熱回収器70による排熱回収効率を低下させることができる。そのため、高負荷及び高エンジン回転速度がある程度継続した場合であっても、冷却水の温度が高くなり過ぎることを防止できる。これにより、エンジン1におけるオーバーヒート等の発生を防止することができる。
【0071】
排気流制御部材90は、流入部91よりも排出部92の開口径が小さくなるように構成されている。排出部92の外周面と、排気通路の一部を構成する冷却部72の内壁面とは所定の隙間だけ離間する。これにより、排気流制御部材90から排熱回収器70に余計な熱が伝達することを抑制できる。
【0072】
なお、高負荷及び高エンジン回転速度時に排熱回収効率を効果的に低下させるためには、排気流制御部材90と排熱回収部71との間隔は、図4に示した角度θが10°から45°の範囲内の値となることが好ましい。
【0073】
また、高負荷及び高エンジン回転速度時に排熱回収効率を効果的に低下させるため、排気流制御部材90における排出部92の排出口92Aの開口径は、排熱回収部71の外径の80%から90%の範囲内の値となることが好ましい。
【0074】
(第2実施形態)
図7を参照して、本発明の第2実施形態によるエンジン1の排気装置60について説明する。
【0075】
第2実施形態による排気装置60は、排気流制御部材90の配置の仕方において、第1実施形態の排気装置と相違する。なお、以下では、第1実施形態と同じ機能を果たす構成等には同一の符号を用い、重複する説明を適宜省略する。
【0076】
図7に示すように、第2実施形態による排気流制御部材90は、排熱回収器70の上流端に接続される排気管61内に固定される。つまり、排気流制御部材90は、流入部91が排気管61の内周面に対して圧入又は溶接されることにより、排気管61に固定される。この時、排気流制御部材90は、流入部91の下流部分が排熱回収器70の冷却部72内に突出するように配置される。なお、排熱回収器70の冷却部72の内径は、排気流制御部材90の流入部91の外径よりも僅かに大きく構成されている。
【0077】
上記したエンジン1の排気装置60によれば、排気流制御部材90の流入部91は、当該流入部91の一部が排熱回収器70内に突出するように排気管61に固定される。このように流入部91が排気管61に固定されるため、排気流制御部材90から排熱回収器70に余計な熱が伝達することを抑制できる。
【0078】
また、排気装置60の組立時において、排気管61と排熱回収器70とを接続する際には、排気管61から突出する流入部91がインロー継手となり、排気管61と排熱回収器70との位置決め及び接続が容易になる。
【0079】
なお、第2実施形態では、排気流制御部材90は、流入部91の下流部分が排熱回収器70の冷却部72内に突出するように排気管61に固定されているがこれに限らない。排気流制御部材90は、流入部91の上流部分が排気管61内に突出するように排熱回収器70の冷却部72に固定されてもよい。この場合には、排気流制御部材90は、流入部91の下流部分が冷却部72の内壁面に対して圧入又は溶接されることにより、排熱回収器70に固定される。
【0080】
このように、排気流制御部材90を排熱回収器70に固定する場合には、排気流制御部材90と排熱回収器70の排熱回収部71との同心度合いを高めることができる。また、排気装置60の組立時において、排気管61と排熱回収器70とを接続する際には、排熱回収器70から突出する流入部91がインロー継手となり、排気管61と排熱回収器70との位置決め及び接続が容易になる。
【0081】
(第3実施形態)
図8を参照して、本発明の第3実施形態によるエンジン1の排気装置60について説明する。
【0082】
第3実施形態による排気装置60は、排気流制御部材90の配置の仕方において、第1及び第2実施形態の排気装置と相違する。
【0083】
図8に示すように、第3実施形態では、排熱回収器70の冷却部72は、上流部材と下流部材とからなる分割構造として構成されている。排気流制御部材90は、冷却部72の上流部材と下流部材の間に流入部91が位置するように設けられている。したがって、排気流制御部材90の流入部91の外周面は外部に露出している。
【0084】
なお、排気流制御部材90の流入部91の上流端と排熱回収器70の冷却部72の上流部材とは溶接ビードB1を介して連結されている。また、冷却部72の下流部材は、流入部91に外嵌されており、流入部91の外周面と冷却部72の下流部材とは溶接ビードB2を介して連結されている。このように溶接されることで、流入部91が外部に露出するように排気流制御部材90を配置しても、排気流制御部材90を通過する排気が外部に漏出することがない。
【0085】
第3実施形態による排気流制御部材90は、流入部91が外部に露出するように構成されているため、空気により流入部91が冷却される。そのため、高温の排気が排気流制御部材90を通過しても、排気流制御部材90の温度上昇を抑制できる。したがって、排気流制御部材90から排熱回収器70に余計な熱が伝達することを抑制できる。
【0086】
また、排気流制御部材90の流入部91は、当該流入部91の外周面が外部に露出するように排熱回収器70の下流部材の端部から軸方向外側に突出する。そのため、局所的に沸騰しやすい冷却部72の端部近傍の冷却水への熱入力を抑制することができる。
【0087】
なお、排熱回収器70の上流側の排気管61に開口部を形成し、排気流制御部材90の流入部91が当該開口部を通じて外部に露出してもよい。また、排気流制御部材90は、流入部91の外周面全体が外部に露出するように配置されるのではなく、流入部91の外周面の一部が外部に露出するように配置されてもよい。
【0088】
(第4実施形態)
図9を参照して、本発明の第4実施形態によるエンジン1の排気装置60について説明する。
【0089】
第4実施形態による排気装置60は、排気流制御部材90の配置の仕方において、第1から第3実施形態の排気装置と相違する。
【0090】
図9に示すように、第4実施形態では、床下触媒コンバータ64の下流側に隣接するように排気流制御部材90を配置する。そして、排気流制御部材90の下流側に隣接するように排熱回収器70を配置する。
【0091】
床下触媒コンバータ64は、第1実施形態において説明したように、複数の貫通孔64Bを有する排気浄化部64Aを備えている。排気浄化部64Aの貫通孔64Bは、排気の流れを一定方向(通路延在方向)に整える機能を有している。このように、床下触媒コンバータ64は、排気を整流する排気浄化部64A(整流部)を有する整流器として構成されている。
【0092】
排気浄化部64Aと排気流制御部材90との間の排気管61は、下流に向かって徐々に縮径する縮径路として構成されている。この縮径路の下流端に排気流制御部材90が連結されている。また、排気流制御部材90は、排出部92が排熱回収器70の冷却部72内に挿入されるように排熱回収器70に連結されている。
【0093】
排気流制御部材90の流入部91の上流端と排気管61(縮径路)の下流端とは溶接ビードB3を介して連結されている。また、冷却部72は、流入部91に外嵌されており、流入部91の外周面と冷却部72の上流端とは溶接ビードB4を介して連結されている。
【0094】
なお、排気流制御部材90における流入部91の流入口91Aの開口径は、床下触媒コンバータ64の排気浄化部64Aの外径よりも小さく構成されている。また、排気流制御部材90は流入部91の外周面が外部に露出するように設けられている。このような構成により、空気により流入部91が冷却される。
【0095】
第4実施形態では、排気の流れを整える排気浄化部64Aが排気流制御部材90の上流側に設けられるので、整流された排気を排気流制御部材90及び排熱回収部71に供給することができる。排気流制御部材90に導入する排気を予め整流しておくことで、排気流量が多くなる運転状態の時に、排出部92からの排気が排熱回収部71の上流側端面の中央部分に集まりやすくなる。その結果、排熱回収部71の外周部分の温度上昇をより抑制でき、排熱回収器70での排熱回収効率を確実に低下させることが可能となる。
【0096】
また、床下触媒コンバータ64の排気浄化部64Aを整流部として機能させるため、整流器を別途設ける必要がなく、排気装置60の構成を簡素化することができる。なお、排気装置60では、排気流制御部材90の上流側に、排気浄化機能がなく排気整流機能だけを有する整流部を配置してもよい。
【0097】
さらに、排気流制御部材90は流入部91が外部に露出するように配置されていることにより、空気により流入部91が冷却される。そのため、高温の排気が排気流制御部材90を通過する場合であっても、排気流制御部材90の温度上昇を抑制できる。したがって、排気流制御部材90から排熱回収器70に余計な熱が伝達することを抑制できる。
【0098】
また、排気流制御部材90の流入部91は当該流入部91の外周面が外部に露出するように排熱回収器70の端部から軸方向外側に突出する。そのため、局所的に沸騰しやすい冷却部72の端部近傍の冷却水への熱入力を抑制することができる。
【0099】
(第5実施形態)
図10A及び図10Bを参照して、本発明の第5実施形態によるエンジン1の排気装置60について説明する。図10Aは第5実施形態によるエンジン1の排気装置60の断面図である。図10B図10AのXb−Xb線に沿う排気流制御部材90の縦断面図である。
【0100】
図10Aに示すように、第5実施形態の排気流制御部材90は、第1実施形態と同様に、排出部92の排出口92Aと排熱回収部71の上流側端面とが隙間Aだけ離間するように配置されている。隙間Aの外周側には冷却部72の内壁面が存在しているので、隙間Aの外周側に存在する排気は、冷却部72によって熱を奪われやすい。このため、排気の一部が露点以下に冷やされることで、隙間Aにおいては、冷却部72の内壁面に沿って凝縮水が発生する。発生した凝縮水は、重力によって滴り、隙間Aの下部に溜まる。凝縮水が隙間Aの下部に溜まると排気流制御部材90や排気通路の腐食の要因になり得るので、凝縮水は隙間Aの下部に溜まらないことが望ましい。
【0101】
しかしながら、隙間Aの外周側は排気流制御部材90の下流側からの排気が吹き当たらず、排出部92の排出口92Aからの排気は隙間Aの外周側に回り込みにくい。このため、隙間Aの外周側に滞留した排気は、排出口92Aからの排気によって置換されにくく、冷却部72により熱を奪われて、凝縮しやすい。
【0102】
そこで、第5実施形態の排気装置60では、排気流制御部材90は、排出部92の排出口92Aに加え、排気を隙間Aの外周側に導入可能な貫通孔93Aを備える。
【0103】
第5実施形態の排気流制御部材90の構造は、第1から第4実施形態の排気装置と相違しており、図10Aに示すように、排気流制御部材90の中間部93及び排出部92には、貫通孔93Aが形成されている。貫通孔93Aは、丸孔の開口と通路からなる円筒状の形状であり、排気流制御部材90の上流側と下流側とを貫通するように形成される。また、貫通孔93Aは、図10Bに示すように排気装置60に排気流制御部材90が設置されたときに、排気流制御部材90の中心軸から偏心した、排気流制御部材90の鉛直方向下部に配置される。より具体的には、貫通孔93Aは、排出部92の排出口92Aの最下部よりも重力方向の下部に、貫通孔93Aの開口領域の一部が形成されるように構成される。なお、貫通孔93Aの開口面積は、排出口92Aの開口面積よりも小さい。また、貫通孔93Aは、排出口92Aの開口面積を超えない範囲で、径の大きさを適宜変更できる。
【0104】
排気流制御部材90の排出部92は、外径が流入部91と同径に形成されている。したがって、排出部92は、排気通路の一部を構成する冷却部72の内壁面と当接する。
【0105】
第5実施形態の排気装置60によれば、以下の効果が得られる。
【0106】
排気流制御部材90の貫通孔93Aは、排気流制御部材90の上流側と下流側とを貫通するように設けられているので、排気流制御部材90の上流側の排気の一部は、貫通孔93Aを通じて、排気流制御部材90の下流側に導かれる。また、貫通孔93Aは排気流制御部材90の中心軸から偏心した位置に形成されているので、貫通孔93Aを通じて下流側に導かれた排気は、隙間Aにおいて排出部92の外周部分に導かれる。このため、隙間Aの外周部分に排気が滞留することにより凝縮水が発生した場合でも、貫通孔93Aからの排気によって凝縮水を吹き飛ばすことができる。したがって、凝縮水が溜まることに起因する腐食を抑制できる。また、貫通孔93Aの開口面積は排出部92の排出口92Aの開口面積よりも小さいので、排熱回収部71の上流側の端面の中央部分に排気が集中する効果を妨げることなく、隙間Aの外周部分に排気を導くことができる。
【0107】
さらに、貫通孔93Aによって排気が順次導入されるため、隙間Aの外周部分に排気が滞留しにくくなる。このため、隙間Aの外周部分における排気は、露点以下に冷やされる前に貫通孔93Aを通過した排気に置換されるので、排気の冷却による凝縮水の発生を抑制することができる。また、排気流制御部材90の貫通孔93Aは円筒状であるため、複雑な追加工を要さずに、凝縮水が隙間Aの外周部分に溜まることを抑制することができる。
【0108】
第5実施形態の排気装置60では、排気流制御部材90の貫通孔93Aは、排気流制御部材90の中心軸よりも鉛直方向の下部に形成されるので、重力によって隙間Aの下部へと滴る凝縮水を効率的に吹き飛ばすことができる。
【0109】
第5実施形態の排気装置60では、排気流制御部材90の貫通孔93Aは、排出部92の排出口92Aの最下部よりも鉛直方向の下部に、貫通孔93Aの開口領域の一部が位置するように形成される。このため、隙間Aの下部、特に重力によって滴ることにより最下部にて溜まった凝縮水に対し、貫通孔93Aからの排気を直接吹き付けることができる。したがって、隙間Aの最下部に溜まった凝縮水を主に吹き飛ばすことができるので、排気装置60の最下部における腐食を抑制できる。
【0110】
(第6実施形態)
図11A及び図11Bを参照して、本発明の第6実施形態によるエンジン1の排気装置60について説明する。図11Aは第6実施形態によるエンジン1の排気装置60の断面図であり、図11B図11AのXIb−XIb線に沿う排気流制御部材90の縦断面図である。
【0111】
図11Aに示すように、第6実施形態の排気流制御部材90は、第1実施形態と同様に、排気通路の一部を構成する冷却部72の内壁面と排出部92の外周面とが隙間Bだけ離間している。隙間A及び隙間Bの外周側には冷却部72の内壁面が存在するので、隙間Aの外周側に存在する排気とともに隙間Bの外周側に存在する排気も、冷却部72によって熱を奪われやすい。このため、排気は露点以下に冷やされることで凝縮し、隙間Aや隙間Bの外周側に凝縮水を発生させる。
【0112】
さらに隙間Bは、排出部92の排出口92Aよりも上流側の外周部分に位置しており、排出口92Aを通過した排気は、隙間Bに非常に回り込みにくい。このため、隙間Bの外周側においては、隙間Aよりも排気が凝縮しやすく、凝縮水が溜まりやすい。
【0113】
第6実施形態による排気装置60は、排気流制御部材90の中間部93に形成される貫通孔93Aの構成が第5実施形態と相違しており、図11Bに示すように、中間部93には、排気流制御部材90の円周方向に沿って貫通孔93Aが複数設けられる。貫通孔93Aは、図11Aに示すように中間部93を貫通するように形成される。なお、複数の貫通孔93Aの開口面積の全てを足し合わせた総開口面積は、排出口92Aの開口面積よりも小さい。したがって、一つの貫通孔93Aの開口面積も、排出口92Aの開口面積より小さい。
【0114】
貫通孔93Aは、排気装置60に排気流制御部材90が設置された時に、少なくとも一つの貫通孔93Aの開口領域の一部が、排出部92の排出口92Aの最下部よりも鉛直方向の下部に位置するように配置される。このように貫通孔93Aを配置させるために、排出部92の中心点C1と、隣り合う貫通孔93Aの中心点C2A、C2Bのそれぞれとを結ぶ破線のなす角度Δθと、貫通孔93Aの数とは、例えば次のような方法により設定される。
【0115】
まず初めに、破線のなす角度Δθが設定される。具体的には、Δθは、隣り合う貫通孔93Aの開口領域それぞれの一部が、共に、排出口92Aの最下部を水平方向に通る破線αよりも下側に位置するよう、所定の角度以下に設定される。
【0116】
次に、設定された破線のなす角度Δθに基づいて、貫通孔93Aの数が設定される。具体的には、貫通孔93Aの数は、360°を破線のなす角度Δθで除算した結果より大きな整数に設定される。例えば、破線のなす角度Δθが50°である場合には、貫通孔93Aの数は、除算結果の7.2より大きな整数、すなわち8以上に設定される。なお、貫通孔93Aの数が多くなり過ぎると、排熱回収部71の上流側端面の中央部分に排気を集中させる効果が生じにくい。そのため、貫通孔93Aの数は、除算結果を繰り上がらせた整数に設定されることが好ましい。例えば、除算結果が7.2である場合には、貫通孔93Aの数は8個に設定されることが好ましい。この場合には、8個の貫通孔93Aが、排気流制御部材90の円周方向に沿って等しい間隔で形成される。
【0117】
なお、Δθは、隣り合う貫通孔93Aの全体が、排出部92の排出口92Aの最下部を水平方向に通る破線αよりも下側に位置するように設定してもよい。また、隣り合う貫通孔93Aの開口領域の少なくとも一部が、破線αよりも下側にあるように、Δθを設定してもよい。
【0118】
第6実施形態の排気装置60によれば、以下の効果が得られる。
【0119】
第6実施形態の排気装置60では、排気流制御部材90の円周方向に沿って複数設けられる貫通孔93Aからの排気が隙間Aや隙間Bの全体に流れるので、隙間Aや隙間Bにて発生した凝縮水をより効率的に吹き飛ばすことができる。また、複数の貫通孔93Aから排気が順次導入されて隙間Aや隙間Bの排気が置換されるので、排気が冷却されることにより凝縮水が発生することを抑制することができる。
【0120】
第6実施形態の排気装置60では、排気装置60に排気流制御部材90が設置された時に、貫通孔93Aは、少なくとも一つの貫通孔93Aの開口領域の一部が、排出部92の排出口92Aの最下位置よりも鉛直方向の下部に位置するよう、排気流制御部材90の円周方向に等しい間隔で形成される。したがって、複数設けられる貫通孔93Aの少なくとも一つが排出部92の開口端の最下部よりも鉛直方向の下部に配置されるので、隙間Aや隙間Bに凝縮水が発生した場合でも、凝縮水を吹き飛ばすことができる。さらに、排出部92の開口端の最下部よりも鉛直方向の下部に、複数の貫通孔93Aの一部が常に位置するので、排気通路の一部を構成する冷却部72の内部に排気流制御部材90を設置する時に位置合わせの必要がなく、排気装置60の組立工数を低減することができる。
【0121】
また、第4実施形態によるエンジン1の排気装置60では、床下触媒コンバータ64の下流側に、排気流制御部材90及び排熱回収器70を順次配置したがこれに限らない。マニホールド触媒コンバータ63の下流側に、排気流制御部材90及び排熱回収器70を順次配置してもよい。
【0122】
第5実施形態及び第6実施形態によるエンジン1の排気装置60では、排気流制御部材90は、丸孔の貫通孔93Aを備えたがこれに限らない。排気流制御部材90は、四角形状や、図12Aに示すようなスリット形状の貫通孔93Bを備えてもよい。例えば、スリット形状の貫通孔93Bを、中間部93と排出部92の最下部分の一部を矩形状に切り取ることで、切欠きを形成してもよい。また、図12Bに示すような円周方向に沿って帯状等の貫通部93Cを中間部93に形成し、隙間Aの外周部分に排気を流してもよい。特に、図12Aに示すように、排出部92を含むように中間部93をスリット加工する場合は、貫通部の加工が容易になるので排気流制御部材90の生産効率を高めることができる。なお、流入部91を含めて中間部93をスリット加工してもよい。
【0123】
なお、第5実施形態では、貫通孔93Aは、中間部93と排出部92を貫通するように形成したがこれに限らない。貫通孔93Aは、流入部91から排出部92までを貫通するように設けてもよい。また、第6実施形態において、貫通孔93Aは、流入部91及び中間部93、又は、流入部91から排出部92までを貫通するように設けてもよい。また、貫通孔93Aは、斜めに形成してもよいし、円筒状以外の形状、例えば通路を曲線状に形成してもよい。例えば、貫通孔93Aを排気の流れる方向に沿って排熱回収器70の内周面に向かって放射上に形成することにより、隙間Aの外周側のより近傍に貫通孔93Aを通過する排気を導入することができ、凝縮水を効率よく吹き飛ばすことができる。
【0124】
(第7実施形態)
図13及び図14を参照して、本発明の第7実施形態によるエンジン1の排気装置60について説明する。図13は第7実施形態によるエンジン1の排気装置60の断面図であり、図14図13のXIIb線に沿う排気流制御部材90の縦断面図である。
【0125】
第7実施形態による排気装置60は、第1実施形態の排気装置と比較すると、排気流制御部材90の配置の仕方は同じであり、排熱回収部71の直ぐ下流に支持部材101を備える点が異なる。
【0126】
ここで、支持部材101を備える理由を説明する。排熱回収部71は熱膨張率の相対的に小さな材料(例えばセラミック)で構成され、冷却部72は熱膨張率の相対的に大きな材料(例えば金属)で構成されることが多い。排熱回収部71と冷却部72で熱膨張率が異なるため、冷却部72と排熱回収部71との両者を高温にすると、冷却部72は、排熱回収部71より径方向外側に向かう膨張量が大きく、冷却部72の内径が排熱回収部71の外径より大きくなる。この結果、冷却部72の内周に排熱回収部71を挿入することができる。その後、冷却部72と排熱回収部71との両者が冷えれば、冷却部72は、排熱回収部71よりも径方向内側に向かう収縮量が大きく、冷却部72の内径が排熱回収部71の外径より僅かに小さくなり、冷却部72と排熱回収部71との両者が締結される。このように、圧入によって排熱回収部71が冷却部72の内周に保持される。このため、排熱回収部71と冷却部72が機械的に締結されていなくても、エンジンの運転中に冷却部72が予め定められた温度範囲で使用される限り、排熱回収部71と冷却部72との締結が緩くならない。
【0127】
しかしながら、エンジン1の運転中に不測の事態が発生したとき、例えば、エンジン1のウォータポンプ(図示省略)が故障して作動を停止したときには、環状流路72A内を冷却水が流れなくなる。また、例えば、導入口72Bに接続されるフレキシブルホース(図示省略)に穴が開いたりするときには、冷却部72内を冷却水が流れなくなる。こうして、環状流路72A内で冷却水が滞留すると、冷却部72が予め定められた温度範囲を超えて高温となることがある。
【0128】
すると、冷却部72が径方向外側に向かって熱膨張し、冷却部72の内径が排熱回収部71の外径より大きくなる。その結果、排熱回収部71と冷却部72との締結が緩くなる。エンジンの運転中は、排熱回収部71は、下流側に向けて排気による圧力を受け続けている。このため、排熱回収部71と冷却部72との締結が緩くなると、排熱回収部71が排気に押されて所定の位置からずれて冷却部72から外れてしまい、排熱回収器70の熱回収性能が低下するおそれがある。
【0129】
そこで、排熱回収部71が冷却部72から外れることにより排熱回収器70の熱回収性能の低下を抑制する必要である。このため、第7実施形態の排気装置60では、排熱回収部71のすぐ下流に支持部材101が設けられている。
【0130】
支持部材101は、円筒状部材である。支持部材101は、排気通路の一部を構成する冷却部72の内部に設けられる。支持部材101は、ベース部102と、先端部103と、連結部104と、を備える。
【0131】
ベース部102,先端部103,連結部104の3つの部位は、同じ材料からなり、一体となって構成される。このため、ベース部102、先端部103、及び、連結部104それぞれの厚さは、ほぼ同じである。支持部材101は、後述するように第2の熱源となり得るので、支持部材101が厚いほど、支持部材101が受け取る熱の量が多い。このため、支持部材101が受け取る熱が排熱回収器70の冷却性能に影響を与えることがないように、かつ、排熱回収部71が下流へと移動してきたときに支持部材101が潰れない適度な強度を保ち得るように、支持部材101の厚さを定める。
【0132】
ベース部102及び上流側に延び出す先端部103は円筒状に形成される。先端部103の外径は、ベース部102の外径より小さい。先端部103の上流端103Aはテーパー状に形成されている。なお、上流端103Aはテーパー状に形成されなくてもよい。たとえば、上流端103Aは、その端面が排気の流れる方向に直交するように形成されてもかまわない。連結部104は、径が徐々に大きくなるトランペットのような形状をしており、先端部103とベース部102とを接続する。これによって、排熱回収部71から流れ出す排気は、支持部材101の流入口101Aから流入する。そして、流入した排気は、支持部材101の排出口101Bから下流側へと排出される。
【0133】
例えば、支持部材101のベース部102を冷却部72の下流側に溶接することによって、支持部材101と冷却部72とを接合する。支持部材101は、溶接によって接合される冷却部72と同じ材質である。冷却部72の材料が金属であれば、支持部材101の材料は冷却部72と同じ金属であることが望ましい。なお、冷却部72及び支持部材101の材料は、金属に限られず、金属と同等の性質を有する金属以外の材料であってもかまわない。
【0134】
なお、ベース部102の溶接箇所は冷却部72の下流側に限定されない。例えば、ベース部102を冷却部72の下流端に接続する排気管61の内部に向けて突出させ、排気管61内に突出させたベース部102を排気管61に溶接してもよい。
【0135】
排熱回収部71の直ぐ下流に支持部材101を設けることで、エンジン1の運転中にウォータポンプの故障や停止等が発生しても、排熱回収部71が冷却部72から外れ排熱回収器70の熱回収性能の低下を抑制できる。
【0136】
一般に、排熱回収器70を設計する際には、排熱回収部71を唯一の熱源として考慮するが、排熱回収部71以外の熱源は考慮しない。しかしながら、排熱回収部71の直ぐ下流に支持部材101を設けることにより、支持部材101が排気の熱を受け取り、受け取った熱が支持部材101から冷却部72へと伝わり、さらに環状流路72A内の冷却水に伝達され得る(図13の右側矢印参照)。このような場合には、排熱回収部71を第1の熱源となり、支持部材101が第2の熱源となる。しかしながら、上述のように、排熱回収器70を設計する際には、支持部材101を第2の熱源とする熱回収は考慮されていない。このため、第2の熱源からの熱回収を考慮しなければ、ウォータポンプの故障や停止等が発生した時には、第2の熱源からの熱回収に起因する分だけ冷却部72の熱膨張量が大きくなる。これによって、冷却部72と排熱回収部71の締結が緩くなる時期、すなわち、排熱回収器70の熱回収性能が低下する時期が早くなる。
【0137】
このように、排熱回収部71のすぐ下流に支持部材101が設けられるときには、排気の流れを妨げず、かつ、第2の熱源からの熱回収を抑制する必要がある。このため、図13に示したように、支持部材101と排熱回収部71との間や、支持部材101と冷却部72との間などに、所定の隙間D、隙間C、及び、間隔Eを設けるものとしている。以下、隙間D、隙間E、及び、間隔Fについて個別に詳述する。
【0138】
まず、先端部103の上流端103Aと排熱回収部71の下流端71Bとの間に設けられる隙間Dについて説明する。以下では、隙間Dが設けられた理由を、比較例1を用いて説明する。比較例1では、先端部103の上流端103Aが排熱回収部71の下流端71Bに当接するように、支持部材101が設置されているものとする。比較例1では、エンジン運転中のウォータポンプの故障や停止が発生した時には、排熱回収部71が冷却部72に対して下流側に移動しようとしても、排熱回収部71の下流側には支持部材101が当接しているため、排熱回収部71の下流側への移動が阻止される。このため、排熱回収部71が冷却部72から外れてしまうことに起因する、排熱回収器70の熱回収性能の低下は生じない。
【0139】
ここで、排熱回収部71に設けられた多数の貫通孔71Aの入口や出口が封じられていなければ、多数の貫通孔71Aの入口から入った排気は、そのまま貫通孔71Aを流れて出口から排出される。しかしながら、先端部103の上流端103Aが排熱回収部71の下流端71Bと当接している場合には、当接部位より外周側に存在する貫通孔71Aの出口が封じられた場合と、排気の流れは同じである。したがって、比較例1では、エンジン運転中のウォータポンプの故障や停止等が生じていないときにおいても、排熱回収部71における当接部位より外周側の部分が閉塞されるのと同様の状態になるため、当接部位より外周側の部分では排気が流れない。言い換えると、比較例1では、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障や停止等が生じていない正常時であっても、当接部位より外周側の面積分だけ、排熱回収部71の端面のうちの排気がよどみなく流れる領域の面積(有効面積)が減少する。排熱回収部71の全ての貫通孔71Aを上流側から下流側に向けて排気がよどみなく流れる場合に、排熱回収部71は熱を効率よく回収できるため、有効面積が減少すると、排熱回収器70の熱回収性能が低下してしまう。
【0140】
また、比較例1では、材料がセラミックである排熱回収部71と、材料が金属である先端部103とが当接している状態で、エンジンや車体からの振動を受けることがある。このような場合には、セラミックである排熱回収部71の下流端71Bが金属である先端部103の上流端103Aによって削り取られる。削り取られた排熱回収部71の破片はコンタミとして排気通路の下流側に排出されてしまう。このように比較例1では、正常時であっても、排熱回収部71において排気がよどみなく流れる有効面積が減少するとともに、振動によりコンタミが発生する。
【0141】
一方、第7実施形態では、先端部103の上流端103Aと排熱回収部71の下流端71Bとの間に隙間Dを設けている。隙間Dが設けられることにより、正常時であっても比較例1にて生じる、排熱回収部71にて排気がよどみなく流れる有効面積の減少に起因する排熱回収器70の熱回収性能の低下を抑制できる上に、振動によるコンタミの発生を防止することができる。
【0142】
また、第7実施形態では、先端部103の上流端103Aの外径は排熱回収部71の外径より小さく、先端部103の外周103Bと、先端部103の外周103Bに対向する冷却部72の内周72Dとの間に隙間Cが設けられている。以下では、隙間Cが設けられた理由を、比較例2を用いて説明する。比較例2においては、第7実施形態と同様の内径を有するとともに、先端部103の外周103Bが冷却部72の内周72Dに当接するような、支持部材101が構成されているものとする。
【0143】
比較例2では、第7実施形態よりも、支持部材101の排気流れ方向に沿う断面積が大きいため、第2の熱源としての支持部材101が受け取る熱の量が多い。さらに、支持部材101の外周103Bが冷却部72の内周72Dと当接しているために、支持部材101から環状流路72A内の冷却水に熱が伝わるルートは、第7実施形態より短い。これらの理由から、 ウォータポンプの故障や停止等が発生する時には、第2の熱源からの熱回収の分だけ冷却部72の熱膨張量が大きくなり、冷却部72と排熱回収部71の締結が緩くなる時期は第7実施形態より早くなってしまう。
【0144】
一方、第7実施形態では、先端部103と、先端部103に対向する冷却部72との間に隙間Cを設けられている。これによって、先端部103の厚さが比較例2より薄くなり、第2の熱源となる支持部材101が受け取る熱量が減少する。また、支持部材101が受け取る熱は、ベース部102を介して冷却部72の下流側へと伝わる。言い換えると、熱が先端部103から直接冷却部72に伝わることがない。このように、ベース部102から冷却部72の下流側にしか熱が伝わらないために、支持部材101から環状流路72A内の冷却水に熱が伝わるルートは比較例2より長い(図13の右側矢印参照)。これらの理由から、エンジン運転中のウォータポンプの故障や停止等が発生した時には、第2の熱源としての支持部材101から環状流路72A内の冷却水への熱流入が、比較例2よりも、抑制される。
【0145】
次に、先端部103の上流端103Aは、環状流路72Aの排気流れ方向の下流端72E(図13で右端)より上流側に存在するものとする。ここで、環状流路72Aにおいて、支持部材101が設けられた側の端部を、排気流れ方向の下流端72Eと称し、排気流制御部材90が設けられた側の端部を、排気流れ方向の上流端と称するものとする。なお、図13では、冷却部72における導入口72B、及び、排出口72Cの開口方向に直交する断面を示している。また、環状流路72Aの排気通路の延存方向の断面は、排気流れ方向の下流側(図13で右側)、及び、上流側(図13で左側)ともに半円状であるが、このような形状に限られない。
【0146】
ここで、先端部103の上流端103Aと環状流路72Aの排気流れ方向の下流端72Eとの間に間隔Eを設けられている。ここで、間隔Eを設けた理由を、比較例3を用いて説明する。比較例3においては、先端部103の上流端103Aが環状流路72Aの排気流れ方向の下流端72Eより下流側に存在するものとする。そして、エンジン運転中のウォータポンプの故障や停止等の発生に伴い、排熱回収部71の下流端71Bが環状流路72Aの排気流れ方向の下流端72Eと排気流れ方向にて一致する位置を超えて移動し、排熱回収部71が支持部材101の近傍に位置することとする。
【0147】
このように、排熱回収部71の下流端71Bが環状流路72Aの排気流れ方向の下流端72Eと一致する位置を超えた場合でも、排熱回収部71が受け取った熱は排熱回収部71の外周71Cから冷却部72の内部に放射状に伝達される。このため、排熱回収部71が受け取る熱の一部は環状流路72A内の冷却水に伝わる。しかしながら、排熱回収部71が受け取る熱のうち環状流路72A内の冷却水に伝わらず、環状流路72A以外へと伝わるものもある。排熱回収部71が受け取る熱のうち環状流路72A以外へ伝わる熱は、環状流路72A内の冷却水に伝達されない。
【0148】
一方、第7実施形態では、先端部103の上流端103Aが環状流路72Aの排気流れ方向の下流端72Eより上流側に存在している。これによって、排熱回収部71が受け取った熱を漏れなく環状流路72A内の冷却水が受け取ることができる。
【0149】
第7実施形態では、先端部103の上流端103Aが環状流路72Aの排気流れ方向の下流端72Eより上流側に存在している構成であるが、このような構成に限られない。排熱回収部71の下流端71Bが環状流路72Aの排気流れ方向の下流端72Eと排気の流れ方向にて一致するように構成されてもかまわない。このような構成であれば、エンジン運転中のウォータポンプの故障や停止等の発生に伴い、排熱回収部71が下流側に移動しても、排熱回収部71は環状流路72Aと隣接する位置にとどまる。排熱回収部71が環状流路72Aに隣接する位置にとどまることで、排熱回収部71が受け取る熱は、比較例3よりも、環状流路72A内の冷却水に伝わることになる。なお、上記の間隔C、間隔D、及び、距離Eは、適合により定める。
【0150】
(第8実施形態)
図15を参照して、本発明の第8実施形態によるエンジン1の排気装置60について説明する。図15は第8実施形態によるエンジン1の排気装置60の断面図である。
【0151】
第8実施形態による排気装置60は、第7実施形態の排気装置と比較すると、排気流制御部材90に貫通孔93Aが形成されており、かつ、支持部材101に貫通孔104Aが形成されている点が異なる。
【0152】
貫通孔93Aは、図11Aに示された第6実施形態と同様に形成される。また、貫通孔104Aは、貫通孔93Aと同様に構成される。すなわち、連結部104には、図11Bに示した貫通孔93Aと同様に、支持部材101の円周方向に沿って貫通孔104Aが複数設けられる。貫通孔104Aは、図11Aに示した貫通孔93Aと同様に、連結部104を貫通するように形成される。なお、複数の貫通孔104Aの開口面積の全てを足し合わせた総開口面積は、流入口101Aの開口面積よりも小さい。したがって、一つの貫通孔104Aの開口面積も、流入口101Aの開口面積より小さい。
【0153】
このように構成された貫通孔104Aは、排気装置60に排気流制御部材90が設置された時に、少なくとも一つの貫通孔104Aの開口領域の一部が、先端部103の上流端103Aの最下部よりも鉛直方向の下部に位置するように配置されることになる。
【0154】
第8実施形態の排気装置60によれば、以下の効果が得られる。
【0155】
ここで、隙間Dの外周側は、排熱回収部71からの排気が吹き当たらず、排熱回収部71からの排気は隙間Cの外周側に回り込みにくい。このため、隙間Cの外周側に滞留した排気は、排熱回収部71からの排気によって置換されにくく、冷却部72により熱を奪われて、凝縮しやすい。
【0156】
さらに隙間Cは、支持部材101の流入口101Aよりも下流側の外周部分に位置しており、流入口101Aへと流れる排気は、隙間Cに非常に回り込みにくい。このため、隙間Cの外周側においては、隙間Dよりも排気が凝縮しやすく、凝縮水が溜まりやすい。
【0157】
第8実施形態の排気装置60では、隙間Cや隙間Dにおける排気は、貫通孔104Aから下流側に流れるので、隙間Cや隙間Dにて発生した凝縮水をより効率的に吹き飛ばすことができる。また、複数の貫通孔104Aから排気が順次排出されて隙間Cや隙間Dの排気が置換されるので、排気が冷却されることにより凝縮水が発生することを抑制することができる。
【0158】
第8実施形態の排気装置60では、排気装置60に排気流制御部材90が設置された時に、貫通孔104Aは、少なくとも一つの貫通孔104Aの開口領域の一部が、支持部材101の流入口101Aの最下位置よりも鉛直方向の下部に位置するよう、支持部材101の円周方向に等しい間隔で形成される。したがって、複数設けられる貫通孔104Aの少なくとも一つが先端部103の開口端の最下部よりも鉛直方向の下部に配置されるので、隙間Cや隙間Dに凝縮水が発生した場合でも、凝縮水を吹き飛ばすことができる。したがって、排気装置60の最下部における腐食を抑制できる。
【0159】
なお、図15には、貫通孔93A、及び、貫通孔104Aの両方が形成されている例を示したがこれに限らない。貫通孔93A、及び、貫通孔104Aのいずれか一方が形成されていてもよい。
【0160】
また、貫通孔104Aは、第5実施形態及び第6実施形態にて説明した貫通孔93Aの変形例と同様の変形例を有する。例えば、第5実施形態の図10A図10Bに示したように、等径に構成された支持部材101の先端部103及び連結部104に、排気流制御部材90の中心軸から偏心した、排気流制御部材90の鉛直方向下部に配置されるように貫通孔104Aを構成してもよい。また、第6実施形態の図12Aに示したようにスリット形状に構成してもよいし、図12Bに示したように帯状に構成してもよい。また、貫通孔104Aは、丸孔である必要はなく、四角形状であってもよい。
【0161】
貫通孔104Aは、連結部104を貫通するように形成したがこれに限らない。貫通孔104Aは、先端部103からベース部102までを貫通するように設けてもよい。また、貫通孔104Aは、先端部103及び連結部104を貫通するように設けてもよい。また、貫通孔104Aは、斜めに形成してもよいし、円筒状以外の形状、例えば通路を曲線状に形成してもよい。
【0162】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0163】
本願発明は2014年4月4日に日本国特許庁に出願された特願2014−78161、及び、2014年7月25日に日本国特許庁に出願された特願2014−152261に基づく優先権を主張し、これらの出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15