(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6197995
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】ワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20170911BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20170911BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652D
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 653C
H01L29/78 655A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-172979(P2013-172979)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-41719(P2015-41719A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直樹
【審査官】
棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/122670(WO,A1)
【文献】
特開2006−332401(JP,A)
【文献】
特開2004−022693(JP,A)
【文献】
特開2013−069940(JP,A)
【文献】
特開2012−109580(JP,A)
【文献】
特開平01−310576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンよりワイドバンドギャップからなる半導体基板を主要基板とし、該半導体基板が低不純物濃度の第1導電型ドリフト層と、該ドリフト層の表層に選択的に複数設けられる第2導電型チャネル領域と、前記チャネル領域内の表層にそれぞれ選択的に設けられる高不純物濃度第1導電型半導体領域とを備え、前記チャネル領域の下側に接する高不純物濃度第2導電型ベース領域と、前記複数のチャネル領域と前記ベース領域の側面で主面に沿う方向に挟まれる凸型ドリフト層部分の表面と該表面に並ぶ前記チャネル領域の表面とにゲート絶縁膜を介して形成されるゲート電極と、前記チャネル領域と前記半導体領域の表面に共通に接する第1主電極を備え、前記凸型ドリフト層部分内に、前記ベース領域の側面で主面に沿う方向に間隔を置いて同深さで平行に対向する側面を有する高不純物濃度の第2導電型フローティング領域を備え、該間隔が広い部分と狭い部分を有するように対向する側面に凸部が設けられていることを特徴とするワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項2】
前記高不純物濃度第2導電型ベース領域と前記高不純物濃度の第2導電型フローティング領域との間の、主面に沿う方向の広い部分と狭い部分の間隔が、前記第2導電型フローティング領域の側面で主面に沿う方向に部分的に伸びる凸部または前記第2導電型ベース領域の第2導電型フローティング領域に対向する側面で主面に沿う方向に部分的に伸びる凸部の少なくともいずれかの凸部を備えることにより形成されることを特徴とする請求項1記載のワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項3】
シリコンよりワイドバンドギャップからなる半導体基板を主要基板とし、該半導体基板が低不純物濃度の第1導電型ドリフト層と、該ドリフト層の表層に設けられる第2導電型チャネル領域と、前記チャネル領域内の表層に設けられる高不純物濃度第1導電型半導体領域とを備え、それぞれが前記半導体基板の主面から前記第1導電型ドリフト層に達する深さの第1トレンチと第2トレンチを有し、第1トレンチ内にはゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられてトレンチゲート構造とされ、さらに前記第1トレンチの下方に高不純物濃度の第2導電型フローティング領域を有し、該トレンチゲート構造の両側面に沿って配置される第2トレンチ内面には第1電極に接する第2導電型高濃度領域または第1電極が覆うことによりトレンチ第1電極構造にされ、前記第2トレンチの底部に高不純物濃度第2導電型ベース領域を備え、該ベース領域の側面で主面に沿う方向に間隔を置いて同深さで平行に対向する側面を有する前記第2導電型フローティング領域との前記間隔が、広い部分と狭い部分とを有する形状で配置される構成を有することを特徴とするワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項4】
前記第2導電型ベース領域が第2トレンチ底部に接し、前記第2導電型フローティング領域が第1トレンチにゲート絶縁膜を介して接することを特徴とする請求項3記載のワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項5】
前記第2導電型ベース領域が第2トレンチ底部に第2導電型チャネル領域を介して接し、前記第2導電型フローティング領域が第1トレンチにゲート絶縁膜とドリフト層を介して接することを特徴とする請求項3記載のワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項6】
絶縁ゲート型半導体装置がMOSFETであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項7】
絶縁ゲート型半導体装置がIGBTであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板が、炭化珪素半導体、窒化ガリウム半導体、ダイヤモンドのいずれかであることを特徴とする請求項1記載のワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ,スイッチング電源等に使用されるワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(以降SiCと略)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体はその高い絶縁破壊電界、高い熱伝導率などの優れた特性により、特に高耐圧でかつ低損失が求められるパワーデバイスへの応用が期待されている。
【0003】
図8は、そのような従来のプレナーゲート型SiC縦型パワーMOSFETの単位セルの断面図を示す。
図8では、高不純物濃度n型SiC半導体基板(n
+基板1)上に、SiCエピタキシャル成長により堆積された低不純物濃度n型ドリフト層が示されている。この低不純物濃度n型ドリフト層(n
-ドリフト層2)の表面の一部には複数のpチャネル領域3が形成される。このpチャネル領域3の下側には、pチャネル領域3が逆バイアス時のパンチスルーを防止するために空乏層の伸びを抑える高不純物濃度pベース領域(p
+ベース領域4)が挿入されている。前記複数のpチャネル領域3とその下層のp
+ベース領域4とに挟まれたn型領域(JFET領域2a)はn
-ドリフト層2に繋がっている。
【0004】
さらに、pチャネル領域3の表層の一部には、n
+ソース領域5とpチャネル領域3(p
+ベース領域4)をソース電極9に低抵抗に接続するためのp
+コンタクト領域6が形成されている。n
+ソース領域5の端部表面からpチャネル領域3およびJFET領域2aにかけての表面上にはゲート酸化膜7を介してPoly−Siゲート電極8が覆っている。なお、pチャネル領域3、p
+ベース領域4に挟まれたJFET領域2aには、オンバイアス時に伸びる空乏層により通路が狭められることにより生じるJFET抵抗を低減するため、n
-ドリフト層2より高い不純物濃度にされる場合が多い。また、n
+ソース領域5、p
+コンタクト領域6の表面にはソース電極9が、n
+基板1の反対側の裏面にはドレイン電極10がそれぞれ低抵抗接触している。
【0005】
ここで、前述のSiC−MOSFETの基本的な動作を説明する。ソース電極9に対しPoly−Siゲート電極8に閾値以上のゲート電圧を印加するとPoly−Siゲート電極8直下のpチャネル領域3表面層に反転層が形成される。その状態で、ソース電極9に対しドレイン電極10に正の電圧を印加すると、ソース電極9−n
+ソース領域5−pチャネル領域3表面反転層−JFET領域2a−n
-ドリフト層2−n
+基板1−ドレイン電極10というルートで電子の経路ができる。すなわち、ドレイン電極10からソース電極9へ電流が流れる。
【0006】
一方、ソース電極9に対しPoly−Siゲート電極8に閾値以下の電圧を印加した時は、pチャネル領域3表面の反転層が消滅するため電流は流れない。この基本的な動作はシリコン(Si)半導体を使用した通常のMOSFETと変わりはない。一般にワイドバンドギャップ半導体では絶縁破壊電界がSi半導体に比較して高い(4H−SiCで約10倍、GaNで約11倍、ダイヤモンドで約19倍)ため、n
-ドリフト層2の不純物濃度を高く、厚さを薄くすることが可能となるので、Si−MOSFETより高耐圧、低オン抵抗のデバイスを実現することが可能となる。
【0007】
図9のSiC−MOSFETの単位セルの断面図に示すように、それぞれ基板表面からn
-ドリフト層2に達するトレンチ深さを有し、トレンチゲート構造の第1トレンチ20両側を、第2トレンチ21内に埋設させたソース電極9からなるトレンチソース電極構造で挟む構造のMOSFETが公開されている。このトレンチソース電極構造では、オン時に、その第2トレンチ21下側のp
+ベース領域4から伸びる空乏層が、寄生トランジスタ(n
-ドリフト層2−pチャネル領域3−n
+ソース領域5)に流れる充電電流をピンチオフさせることができる。その結果、急峻な立ち上がりの電圧印加に対して強いデバイスとすることができる。その他の符号1はn
+基板、7はゲート絶縁膜、8はゲート電極、10はドレイン電極、13は層間絶縁膜である(特許文献1)。
【0008】
また、対峙する主端子(ソース・ドレイン)間に流れる電流を、ゲート電極に印加される電圧により形成される空乏層によって制御する高耐圧静電誘導型トランジスタ(パワーSIT)あるいは高耐圧接合型電界効果トランジスタ(パワーJFET)が知られている。これらのパワートランジスタでは、半導体層中に形成されたゲート領域と半導体層の1面に形成されたドレイン領域との間に位置する半導体層が空乏化する事により耐圧を保持している(特許文献2)。
【0009】
n
-ドリフト層に至る深さを有するトレンチゲートの底部に、n
-ドリフト層と異なる導電型領域を設けることにより、ゲート絶縁膜にかかる電界を緩和してブロッキング電圧を向上させることに関する記載がある(特許文献3)。
【0010】
プレナーゲート型SiC−MOSFETのMOSゲート構造に対向する基板表面層内でpベース領域の主面に沿う方向に挟まれたn
-ドリフト層(JFET領域)の表層にフローティングp
-領域を設ける構造とすることにより、JFET領域の間隔を広くしても、その表面に接するゲート絶縁膜にかかる電界を低く抑制することに関する開示がされている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献2】特許第4564362号(段落0002、段落0006)
【特許文献3】特許第5054255号(発明の概要、
図2)
【特許文献4】特開2011−60930号公報(
図1、段落0007〜0008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ワイドバンドギャップ半導体の利点の一つが、前述したように、シリコン(Si)半導体に比べて、絶縁破壊に至る電界強度が高いので、同じ耐圧でもドリフト層の不純物濃度を増加(抵抗を低下)させることができる。また、ワイドバンドギャップ半導体は空乏層の伸びが少なくなることにより必要なドリフト層の厚さを低減し抵抗をさらに低下させることが可能である。
【0013】
しかしながら、ワイドバンドギャップ半導体でMOSFETを構成する場合、ドリフト層の不純物濃度を増加させドリフト層の厚さを低減することにより、ゲート絶縁膜直下のワイドバンドギャップ半導体の電界がSi半導体より増加し、ゲート絶縁膜の電界も上昇するため、ゲート絶縁膜が破壊し易くなることが問題となる。
【0014】
さらに、特に、トレンチゲート型MOSFETではプレナーゲート型のようなJFET効果によるピンチオフが無いため、トレンチ底部のゲート絶縁膜に過大な電界が印加され易い。この問題を改善するために、前述の
図9に示すように、トレンチゲート構造のための第1トレンチ20に加えて、ソース電極9もトレンチゲート構造と同様の深さの第2トレンチを有するトレンチソース構造としたダブルトレンチ型MOSFETが公知になっている。このダブルトレンチ型MOSFETでは、オフ(主接合に逆バイアス)時第2トレンチの底部直下に接するp
+ベース領域4から空乏層を伸ばすことによってチャネル部分手前のn
-ドリフト層2部分をピンチオフさせ、ゲート絶縁膜にかかる電界を緩和させることができる。
【0015】
しかしながら、寄生トランジスタをピンチオフさせる際には、新たにJFET効果によりオン抵抗が増加するため、やはり、ゲート絶縁膜の電界緩和とオン抵抗の低減の間にはトレードオフの関係が見られる。
【0016】
このトレードオフの関係はプレナーゲート型においても同様である。
図8においてJFET領域2aの幅を大きくする構造またはその不純物濃度を高くすることによりJFET効果によるオン抵抗の増加をある程度は抑制することができるが、ゲート絶縁膜7にかかる電界の増大による破壊、JFET領域2a近傍の電界増大による耐圧の低下が発生するという問題は根本的には避けられない。
【0017】
本発明は、以上説明した課題を考慮してなされたものである。本発明の目的は、ゲート絶縁膜の電界緩和とオン抵抗の低減との間のトレードオフ関係を改善することができるワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の課題を解決し、発明の目的を達成するため、本発明は、例えば
図1で、シリコンよりワイドバンドギャップからなる半導体基板を主要基板とし、該半導体基板に最も低不純物濃度のn
-ドリフト層2と、該ドリフト層2の表層に選択的に複数設けられるpチャネル領域3と、該pチャネル領域3内の表層にそれぞれ選択的に設けられるn
+半導体領域5とを備え、前記pチャネル領域3の下側に接するp
+ベース領域4と、前記複数のpチャネル領域3と前記p
+ベース領域4の側面
で主面に沿う方向に挟まれる凸型n
-ドリフト層部分(JFET領域2a)の表面と該表面に並ぶ前記pチャネル領域3の表面とにゲート絶縁膜7を介して形成されるゲート電極8と、前記pチャネル領域3と前記n
+半導体領域5の表面に共通に接するソース電極9を備え、前記JFET領域2a内に、前記p
+ベース領域4の側面で主面に沿う方向に間隔を置いて
同深さで平行に対向する側面を有するp
+フローティング領域14を備え、p
+ベース領域4とp
+フローティング領域14の間隔が広い部分と狭い部分を有するように対向する前記側面に凸部が設けられているワイドバンドギャップMOSFETとする。
【0019】
前記p
+ベース領域4と前記p
+フローティング領域14との間の、主面に沿う方向の広い部分と狭い部分の間隔が、前記p
+フローティング領域14の側面で主面に沿う方向に部分的に伸びる凸部および前記p
+ベース領域4の前記p
+フローティング領域14に対向する側面で主面に沿う方向に部分的に伸びる凸部の少なくともいずれかの凸部を備えることにより形成されることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、前記目的を達成するために、
図5、
図6に示すように、
シリコンよりワイドバンドギャップからなる半導体基板を主要基板とし、該半導体基板に最も低不純物濃度のn-ドリフト層2と、該ドリフト層2の表層に設けられるpチャネル領域3と、該pチャネル領域3内の表層に設けられるn+半導体領域5とを備え、それぞれ
が、半導体基板の
主面からn
-ドリフト層2に達する深さの第1トレンチ20と第2トレンチ21を有し、第1トレンチ20内にはゲート絶縁膜7を介してゲート電極8が設けられてトレンチゲート構造とされ、さらに前記第1トレンチ20の下方にp
+フローティング領域14を有し、該トレンチゲート構造の両側面に沿って配置される第2トレンチ21内面にはソース電極9が埋設されるかソース電極9に接するp
+領域を埋設することによりトレンチソース構造にされ、前記第2トレンチ21の底部に接するp
+ベース領域4を備え、該p
+ベース領域4
の側面で主面に沿う方向に間隔を置いて同深さで平行に対向する側面を有する前記p
+フローティング領域14との
前記間隔が、広い部分と狭い部分とを有する形状で配置される構成を有するワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置とする。
【0021】
図5に示すように、前記p
+ベース領域4が第2トレンチ21底部に第2導電型チャネル領域3を介して接し、前記第2導電型フローティング領域14が第1トレンチ20にゲート絶縁膜とドリフト層2を介して接することが好ましい。
【0022】
図6に示すように、前
記p+ベース領域4が第2トレンチ21の底部に接し、前記p
+フローティング領域14が前記第1トレンチ20にゲート絶縁膜を介して接する構成を有することが好ましい。
【0023】
本発明は、
図1または
図4に示すように、絶縁ゲート型半導体装置がMOSFETまたはIGBTであることが好適である。さらに本発明は前記半導体基板として、炭化珪素半導体、窒化ガリウム半導体またはダイヤモンドのいずれかを用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ゲート絶縁膜の電界緩和とオン抵抗の低減との間のトレードオフ関係を改善するワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例1に係るプレナーゲート型SiC−MOSFETの要部断面図(a)と平面パターンがストライプ状であることを示すX1−X2線位置での要部横断面図(b)である。
【
図2】本発明の実施例1の変形例に係るプレナーゲート型SiC−MOSFETの要部断面図(a)と平面パターンがストライプ状であることを示すX3−X4線位置での要部横断面図(b)である。
【
図3】本発明の実施例1に係る、平面パターンが6角形型のセルに適用したプレナーゲート型SiC−MOSFETの
図1(b)に相当する位置での要部横断面図(a)と変形例の要部横断面図(b)である。
【
図4】本発明の実施例2に係るプレナーゲート型SiC−IGBTの要部断面図である。
【
図5】本発明の実施例3に係るトレンチゲート型SiC−MOSFETの要部断面図である。
【
図6】本発明の実施例4に係るトレンチゲート型SiC−MOSFETの要部断面図である。
【
図7】本発明の実施例4に係る、平面パターンがストライプ状のセルに適用したトレンチゲート型SiC−MOSFETの
図6のZ1−Z2線の位置での要部横断面図である。
【
図8】従来のプレナーゲート型SiC−MOSFETの要部断面図である。
【
図9】従来のトレンチゲート型SiC−MOSFETの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のワイドバンドギャップ絶縁ゲート型半導体装置の実施例として、SiC―MOSFETについて、図面を参照して詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれ相対的に不純物濃度が高いまたは低いことを意味する。なお、以下の実施例の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、実施例で説明される添付図面は、見易くまたは理解し易くするために正確なスケール、寸法比で描かれていない。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の実施例1に係るSiC−MOSFETの単位セル部分の半導体基板の縦断面図(a)(以降単に断面図)と(a)のX1−X2線の位置での横断面図(b)であり、(b)はその横断面の表面に表れるJFET領域2aの平面パターンがストライプ状の場合を示している。
図1(a)が前述の
図8に示す従来の単位セルの断面図と異なるところは、JFET領域2a内の一部に、p
+ベース領域4と同時に形成されるフローティングp
+領域14が設けられている点である。さらに
図1(b)に示すように、p
+ベース領域4の平面パターンの側面に対向するフローティングp
+領域14の側面の一部に凸部14aが設けられていることが本発明の特徴部分である。
【0028】
凸部14aについては、
図2に示すように、p
+ベース領域4の側面に凸部4aを設ける構成としてもよい。フローティングp
+領域14は、オフ時には印加電圧の上昇と共にp
+ベース領域4から伸びる空乏層が幅広の間隔(w1)と比較して、凸部14aまたは4aにより幅が狭くなった間隔(w2)部分において、低い電圧で到達してパンチスルーすることによりp
+ベース領域4に近い電位になる。このため、オフ時の印加電圧の上昇と共にpn接合に掛かる逆バイアス電圧が増加するとフローティングp
+領域14からも空乏層がのびるようになり、凸部14aまたは4aが形成されていない幅の広い部分も容易にピンチオフすることが可能になる。その結果、ゲート絶縁膜にかかる電界が緩和され高耐圧になる。
【0029】
一方、オン時にはpn接合に掛かる逆バイアスは主としてチャネル抵抗とJFET抵抗に流れる電流による電圧降下分であるためその値は小さい。従って、p
+ベース領域4から伸びる空乏層はフローティングp
+領域14に到達しない、もしくは到達してもフローティングp
+領域14から伸びる空乏層は僅かであるためJFET効果は大きくない。この結果、ゲート絶縁膜の電界緩和とオン抵抗の低減に対するトレードオフの関係を改善できる。
図1ではフローティングp
+領域14の一部(
図1(b))に、
図2ではp
+ベース領域4の一部(
図2(b))に、それぞれ凸部14a,4aが設けられているが、その両方にそれぞれ凸部を設けてフローティングp
+領域14とp
+ベース領域4の間隔を小さくする部分を設けてもよいことは言うまでもない。
【0030】
図3は、表面のセルパターンが6角状の場合SiC−MOSFETの
図1のX1−X2線の位置での横断面図である。
図3(a)、(b)に示す6角状の表面のセルパターン構造にして、フローティングp
+領域14とp
+ベース領域4の間隔が広い部分(w1)と狭い部分(w2)を作ることによっても、前述と同様のゲート絶縁膜の電界緩和とオン抵抗の低減に対するトレードオフの関係を改善する効果を得ることができる。6角状の表面セルでは、6角の各頂点部分で隣り合うp
+ベース領域4同士の間隔が広くなり、その部分でピンチオフの効果が低下しゲート絶縁膜に印加される電界が高くなる、耐圧が低下するなどの問題があるため、6角の各頂点部分にフローティングp
+領域14とp
+ベース領域4の間隔が狭い部分を作ることは特に有効である。また、6角状の表面セル以外でも、正方形の表面セル、長方形の表面セルに類似の構造を適用することも好ましい。なお、フローティングp
+領域14とp
+ベース領域4は同一のマスク工程とイオン注入工程で形成可能である。
【実施例2】
【0031】
図4は、本発明の実施例2に係るSiC−IGBT(Insulated GateB ipolar Transistor)の単位セル部分の半導体基板の縦断面図である 。
図1と異なる点はn
+基板1の代わりに高不純物濃度のp型半導体基板(p
+基板11)が設けられ、n
-ドリフト層2とp
+基板11の間にn型バッファー層12(またはフィールドストップ層)が設けられている点である。また、IGBTでは、MOSFETのソース、ドレインの代わりにエミッタ、コレクタの呼称が使用される点が異なる。この場合にも
図4のX5−X6線の位置での横断面図において、ストライプ型の表面セルパターンまたは、6角状の表面セルパターンのいずれの場合でも、それぞれ実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0032】
MOSFETの場合は、ユニポーラのため、原則、電導度変調が無いので、耐圧が低いデバイスに適用されることが多い。その結果、デバイスのオン抵抗は、チャネル抵抗成分(反転層の抵抗)が支配的となる。前記
図1に示すプレナーゲート型MOSFETではフローティングp
+領域14を設けることにより、セルピッチ幅が増加しオン抵抗がその分、大きくなる。
【0033】
一方、通常は高耐圧デバイスに適用される
図4の単位セル部分の縦断面図に示すIGBTでは、オン時、厚いドリフト層の抵抗成分比率が最も大きく、前述のようにチャネル抵抗が支配的ではない。そのため、IGBTではフローティングp
+領域14を設けるセルピッチ幅の増加によるデメリットが減少するので、より大きな効果を得ることができる。
図4では、空乏層が設計耐圧の電圧印加でドリフト層内を伸び切ってn
+層に到達するパンチスルー型IGBT(またはフィールドストップ型IGBT)の構造を示したが、n型バッファー層(またはフィールドストップ層)12を無くしたノンパンチスルー型IGBTにも適用可能である。
【実施例3】
【0034】
図5は、本発明の実施例3に係るトレンチゲート型SiC−MOSFETの単位セルの縦断面図である。
図5では、ゲート電極8がゲート絶縁膜を介して埋設される第1トレンチ20の下方に間隔を置いてフローティングp
+領域14が形成され、ソース電極9が埋設される第2トレンチ21底部直下にはp
+ベース領域4が、例えば埋め込みエピ法により形成されている。さらに、
図5ではフローティングp
+領域14は、ゲート絶縁膜7の膜質の低下を低減するため、前述したようにゲート絶縁膜7直下から離れた下方に形成されているが、接していてもよい。フローティングp
+領域14およびp
+ベース領域4の平面形状は、
図5におけるY1−Y2線の位置での横断面図に表れる平面パターンが、それぞれストライプ状の平面セルパターンまたは6角状の表面セルパターンとされる場合、具体的には、それぞれ
図1〜
図3に示される平面セルパターンとすることができる。このようなトレンチゲート型MOSFETではフローティングp
+領域14をトレンチゲート構造の第1トレンチ20直下に設けてもセルピッチ幅が増加しないことがメリットである。なお、この実施例3においても、
図4と同様に裏面側にp
+層(コレクタ層)を設ける構成にすることによりIGBTとしても、前述のMOSFETと同様の効果を得ることができる。この実施例では、第2トレンチ21にソース電極9を埋設しているが、第2トレンチ21内に高濃度p型のPolyーSiまたは高濃度p型のエピタキシャル成長膜で埋設してソース電極9に繋げてもよい。
【実施例4】
【0035】
図6は、本発明の実施例4に係るトレンチゲート型SiC−MOSFETの単位セルの縦断面図である。
図7は
図6のZ1−Z2線の位置での横断面図を示す。この実施例4ではフローティングp
+領域14およびp
+ベース領域4を、それぞれゲートトレンチゲート構造、トレンチソース構造の第1、第2トレンチ20、21にPolyーSiゲート電極、ソース電極を埋設する工程(埋戻し工程)前にイオン注入により形成する場合の例を示している。この実施例4では、トレンチへの埋戻し工程の際に、トレンチ幅を均一にすることが効率がよく、
図1〜
図3に示すように間隔を狭くするための凸部を形成することが好ましくない場合に適用することができる。
【0036】
すなわち、
図7に示すように、フローティングp
+領域14とp
+ベース領域4の幅広間隔幅(w1)に比較して狭い間隔(w2)を、第1トレンチ20に第2トレンチ21の平面パターンの端部を間隔w2に近づける構成にすることにより、前記
図1〜
図3に示す凸部を設けることなく、形成することが可能である。
【0037】
図6において、フローティングp
+領域14は第1トレンチ20底部にゲート絶縁膜7を介してその直下に形成されているが、イオン注入の加速電圧を高くすることによってゲート絶縁膜7から離れて形成してもよい。
【0038】
なお、実施例4においても、前記
図4と同様に裏面側にp
+層(コレクタ層)を設ける構成にすることによりIGBTとしても、前述のMOSFETと同様の効果を得ることができる。また、実施例4では、第2トレンチ21にPolyーSiを埋設しているが、第2トレンチ21内にソース電極9を埋設または高濃度p型のエピタキシャル成長膜で埋設してソース電極9に繋げてもよい。
【0039】
以上説明した本発明にかかる実施例1〜5に記載によれば、オフ状態においてp
+ベース領域4から伸びる空乏層がフローティングp
+領域14に到達し、フローティングp
+領域14がパンチスルーすると、さらなる電圧の上昇に伴いフローティングp
+領域14からも空乏層が伸びる。そのため、JFET領域を容易にピンチオフし、ゲート絶縁膜の電界を緩和し、その破壊を防止することができるとともに耐圧の低下を防止できる。
【0040】
また、オン状態ではp
+ベース領域4からの空乏層の伸びが少なくフローティングp
+領域14がパンチスルーすることが無くフローティング高不純物濃度p領域14からの空乏層の伸びがないため、JFET効果によるオン抵抗の増加を防止することができる。これにより、ゲート絶縁膜の電界緩和とオン抵抗の低減はトレードオフの関係を改善できる。
【符号の説明】
【0041】
1. n
+基板
2. n
-ドリフト層
2a. JFET領域
3. pチャネル領域
4. p
+ベース領域
5. n
+ソース領域
6. p
+コンタクト領域
7. ゲート絶縁膜
8. Poly−Siゲート電極
9. ソース電極
10. ドレイン電極
11. p
+基板、コレクタ層
12. n型バッファー層、フィールドストップ層
13. 層間絶縁膜
14. フローティングp
+領域
20、 第1トレンチ
21、 第2トレンチ
X1−X2 切断線
X3−X4 切断線
X5−X6 切断線
Z1−Z2 切断線
w1 p
+ベース領域とフローティングp
+領域の間隔
w2 p
+ベース領域とフローティングp
+領域の間隔