(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脱水処理部は、前記制御部による前記管路の開放がなされた後においても、前記亜臨界雰囲気における前記被処理物に遠心力を付与して液体成分の脱水分離を図る2次脱水を実行し、該2次脱水の後に、前記圧縮力を解放する請求項1に記載の水熱処理装置。
前記制御部は、前記貯留タンクへの前記液体成分の排出を行うに当たり、前記貯留タンクの内部を加圧して前記処理装置本体の前記亜臨界雰囲気と等圧化を図り、該等圧化の後に前記管路を開放する請求項1または請求項2に記載の水熱処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1で提案された手法では、被処理物の水熱処理とその後の脱水処理とを、共通する処理装置本体内での亜臨界雰囲気において順次実行して、装置の省スペース化や、水熱処理と脱水処理とを受けた被処理物(以下、脱水ケーキと称する)の含水率の低減をもたらしている。特許文献1では、処理装置本体内の減圧を起こし、この減圧による脱水ケーキからの水分蒸発を図っているが、脱水ケーキの含水率の低減は、脱水ケーキの取扱の簡便化や重量低減をもたらすので、含水率をより低減することが要請されるに到った。この他、脱水ケーキの含水率低減の簡略化や、被処理物の水熱処理と脱水処理のコスト低減を可能とすることも要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の形態として実施することができる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、水熱処理装置が提供される。この水熱処理装置は、亜臨界状態の水蒸気を用いた被処理物の水熱処理装置であって、中空の処理装置本体と、前記被処理物が投入された状態で前記処理装置本体に収納される中空の脱水管と、前記被処理物が投入済みの前記脱水管と前記処理装置本体とに前記亜臨界状態の水蒸気を導入して前記処理装置本体の内部を亜臨界雰囲気とし、該亜臨界雰囲気下で前記被処理物を水熱処理する水熱処理部と、前記脱水管に投入済みで前記亜臨界雰囲気下での前記水熱処理を受けた前記被処理物に圧縮力を付与して液体成分を脱水分離し、該分離した液体成分を前記処理装置本体の底部の側に導く脱水処理部と、
前記処理装置本体の下方側に配設された貯留タンクと前記処理装置本体の底部とを結ぶ管路の開閉を実行して、前記処理装置本体の底部から前記貯留タンクへの前記液体成分の排出を制御する制御部とを備える。そして、前記脱水処理部は、前記制御部による前記貯留タンクへの前記液体成分の排出がなされた後に、前記圧縮力を解放し、前記水熱処理部は、前記脱水処理部による前記圧縮力の解放がなされた後に、前記処理装置本体の内部を大気解放して前記亜臨界雰囲気を解消する。
【0007】
上記の形態の水熱処理装置は、亜臨界雰囲気において水熱処理を受けた被処理物に圧縮力を付与して液体成分を脱水分離し、この脱水分離した液体成分を処理装置本体下方の貯留タンクに排出する。これにより、上記の形態の水熱処理装置は、処理装置本体においては、脱水済みの被処理物を、亜臨界雰囲気においたまま、液体成分との接触を断つ。その上で、上記の形態の水熱処理装置は、被処理物を圧縮力から解放するので、被処理物は、亜臨界雰囲気におかれているとは言え、その固形成分が非圧縮となることにより、圧縮形状から崩れ、亜臨界雰囲気下で表面積が拡大する。上記の形態の水熱処理装置は、こうして表面積の拡大した被処理物が残った処理装置本体の内部を大気解放して亜臨界雰囲気を解消するので、被処理物に残存している液体成分の減圧による蒸発は、被処理物の表面積拡大により促進される。この結果、上記の形態の水熱処理装置によれば、水熱処理と脱水処理とを受けた被処理物たる脱水ケーキの含水率をより確実に低減できる。
【0008】
(2)上記形態の水熱処理装置において、前記脱水処理部は、前記制御部による前記管路の開放がなされた後においても、前記亜臨界雰囲気における前記被処理物に遠心力を付与して液体成分の脱水分離を図る2次脱水を実行し、該2次脱水の後に、前記圧縮力を解放するようにしてもよい。被処理物に圧縮力を付与して脱水を図る場合、圧縮の程度は、被処理物に含まれる固形分の割合や物性等により定まり、圧縮による脱水を経ても被処理物には液体成分が残り得る。上記形態の水熱処理装置によれば、圧縮脱水後の被処理物に残った液体成分を、被処理物に遠心力を付与して脱水分離するので、その分だけ、脱水ケーキの含水率をより一層低減できる。
【0009】
(3)上記のいずれかの形態の水熱処理装置において、前記制御部は、前記貯留タンクへの前記液体成分の排出を行うに当たり、前記貯留タンクの内部を加圧して前記処理装置本体の前記亜臨界雰囲気と等圧化を図り、該等圧化の後に前記管路を開放するようにしてもよい。こうすれば、液体成分の自重により、貯留タンクに液体成分を支障なく排出できると共に、この液体成分排出の際は元より、液体成分排出の後にあっても、処理装置本体の内部をより確実に亜臨界雰囲気のままとでき、処理装置本体の降圧を回避できる。よって、この形態の水熱処理装置によれば、被処理物に残存している液体成分を処理装置本体を減圧して脱水する場合、その減圧による蒸発の実効性を高めることができる。
【0010】
(4)上記の形態の水熱処理装置において、前記制御部は、前記貯留タンクに前記亜臨界状態の水蒸気を導入して、前記貯留タンクの前記加圧を図るようにしてもよい。こうすれば、貯留タンクの加圧を経た等圧化が簡便となる。
【0011】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、亜臨界状態の水蒸気を用いた被処理物の水熱処理方法等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
図1は本発明の実施形態としての水熱処理装置100の概略構成を示す説明図である。図示するように、本実施形態による水熱処理装置100は、中空の処理装置本体1と、貯留タンク2と、中空の脱水管11と、制御装置110と、水蒸気供給機器群200とを備える。処理装置本体1は、筒状の外筒3と、排気管4と、吸気管5と、排液管6と、蓋部7と、固定治具8と、回転スライド機構9と、シャフト10と、脱水管11とを有して構成されている。貯留タンク2は、処理装置本体1の下方側に配設され、処理装置本体1の底部から排出される液体、即ち被処理物から脱水分離した液体成分を貯留する。そして、この貯留タンク2は、給排気管21と給液管22とを備え、給液管22を開閉バルブ23を介して処理装置本体1の排液管6と連結させている。この他、貯留タンク2は、重力方向に沿った下部側に、ドレン管24を備え、管路途中の開閉バルブ24aの開弁を経て、タンク内の液体を外部に排出する。
【0014】
処理装置本体1の外筒3は円筒形状の部分を有し、その円筒形状の回転スライド機構9側の一端にフランジ部3aが設けられている。外筒3のフランジ部3aとは反対側の一端には、固定治具8によって、蓋部7が固定されている。そして、この固定治具8で蓋部7が固定された状態において、処理装置本体1は、外筒3の内部領域において中空となり、固定治具8にて、蓋部7を後述の脱水管蓋部11aと共に外筒3から取り外すことができる。
【0015】
脱水管11は、外筒3に沿った有底の円筒形状をなし、外筒3の内部に正逆回転自在に配設される。この脱水管11は、その円筒周壁に、複数の開口部11bを備え、固定治具8の側の解放端の側に脱水管蓋部11aを着脱自在に備える。脱水管蓋部11aは、外筒3の蓋部7に連結されており、蓋部7を外筒3から取り外すときに、併せて脱水管蓋部11aも脱水管11から取り外すことができる。よって、脱水管蓋部11aが固定治具8にて蓋部7と共に取り外された状態で、脱水管11には被処理物が投入可能となり、脱水管11は、被処理物が投入された状態で処理装置本体1に収納され、後述の水蒸気供給機器群200により、外筒3の内部において、被処理物と共に亜臨界雰囲気下に置かれる。脱水管11の内部には
、ピストン12が配設されており、このピストン12は、ピストン外周壁と脱水管内周壁のキーとキー溝等により脱水管11と係合された上、脱水管11の円筒の内面に沿って摺動(スライド)自在とされている。そして、シャフト10が、フランジ部3aおよび脱水管11の底部を貫通して、このピストン12に連結されている。外筒3および脱水管11は、その長手方向が水平であり、この長手方向に平行なシャフト10の長手方向が重力に対してほぼ垂直になる横型に設置されており、外筒3の内部においては、重力に従った下側の円筒部分が外筒3の底部となる。
【0016】
回転スライド機構9は、ピストン12から延びたシャフト10と係合し、内蔵する図示しないギヤ機構により、シャフト10の長手方向に沿った前後退のスライド運動とシャフト10の軸を中心とした正逆の回転運動とを、それぞれ単独で、或いは並行して実行可能に構成されている。ピストン12は、既述したように脱水管11と係合していることから、回転スライド機構9によるシャフト10の回転運動により、脱水管11は、ピストン12と共に回転する。ピストン12と脱水管11の係合は、
図1に示す脱水管11の底部の原位置の他、後述の圧縮終端位置、圧縮解放位置においても維持されるので、
図1の原位置での回転スライド機構9によるシャフト10の回転運動により、脱水管11は、ピストン12と共に回転し、投入済みの被処理物を攪拌する。後述の圧縮終端位置や圧縮解放位置においても、脱水管11は、ピストン12と共に、回転スライド機構9により回転運動する。この他、ピストン12は、回転スライド機構9によって、シャフト10の長手方向に沿って単独で、脱水管11の内部をスライド駆動する。なお、回転スライド機構9による上記したスライド運動や回転運動は、後述の制御装置110の制御下でなされる。
【0017】
排気管4は、外気側の一端に開閉バルブ4aを備え、当該バルブの開弁を経て、外筒3の内部を外気や外部装置に開放する。吸気管5は、水蒸気供給機器群200と接続されており、水蒸気供給機器群200が生成する高温・高圧の亜臨界状態の水蒸気を処理装置本体1の内部に導入する。この水蒸気導入のタイミングは、後述の制御装置110にて設定され、制御装置110の制御下で、処理装置本体1の内部は、亜臨界状態の水蒸気により亜臨界雰囲気となる。排液管6は、処理装置本体1の下方側に配設された貯留タンク2と処理装置本体1の底部とを結ぶ管路を給液管22と共に形成し、開閉バルブ23の開弁を経て、外筒3の内部の液体、即ち被処理物から脱水分離した液体成分を貯留タンク2に導く。また、貯留タンク2の給排気管21は、その一端に開閉バルブ21aを備え、当該バルブを介して水蒸気供給機器群200と接続されており、水蒸気供給機器群200が生成する高温・高圧の亜臨界状態の水蒸気を貯留タンク2の内部に導入する。この水蒸気導入のタイミングは、後述の制御装置110にて設定され、制御装置110の制御下で、貯留タンク2の内部は亜臨界状態の水蒸気により加圧され、貯留タンク2は、処理装置本体1の亜臨界雰囲気と等圧とされる。開閉バルブ21aは、いわゆる三方弁として構成されて給排気管21を水蒸気供給機器群200に繋ぐほか、給排気管21を大気解放管21bとも接続し、貯留タンク2の内部の水蒸気を給排気管21と大気解放管21bを経て大気放出する。上記した各種バルブは、制御装置110にて駆動制御される。
【0018】
制御装置110は、論理演算を実行するCPUや、ROM、RAMを有するコンピューターとして構成され、水熱処理装置100を統括制御する。つまり、この制御装置110は、図示しない各種スイッチやセンサーの入力を受けつつ、既述した各種バルブを開閉制御すると共に、水蒸気供給機器群200からの亜臨界状態の水蒸気の導入制御、回転スライド機構9の駆動制御を実行する。
【0019】
次に、以上のように構成された本実施形態の水熱処理装置100を用いた水熱処理方法について説明する。
図2は水熱処理方法の手順を示すフローチャートである。なお、
図2に示す水熱処理の実行に先立って、制御装置110は、開閉バルブ23等の各種バルブを閉弁制御し、図示しないスタートスイッチの操作を経て、
図2の水熱処理を実行する。
【0020】
図2に示すように、本実施形態による水熱処理方法においては、まず、亜臨界処理工程を行う(ステップST1)。
図3は亜臨界処理工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。なお、
図3では、理解の便を図るため、処理装置本体1については、透視して内部の様子を示している。
図4以降においても同様である。この亜臨界処理工程の開始前において、蓋部7および脱水管蓋部11aを取り外して、脱水管11の内部に被処理物としての有機性汚泥31を収納した後、
図3に示すように、蓋部7および脱水管蓋部11aを閉めて固定治具8により外筒3と蓋部7とを密着固定させて外筒3の内部を密閉する。これ以降において、亜臨界処理工程がなされる。
【0021】
制御装置110は、排気管4の開閉バルブ4a、排液管6の開閉バルブ23、給排気管21の開閉バルブ21a、およびドレン管24の開閉バルブ24aを閉状態に維持しつつ、水蒸気供給機器群200から吸気管5を通じて、高温・高圧の亜臨界状態の水蒸気を処理装置本体1の内部、詳しくは外筒3の内部に導入する。ここで、本実施形態においては、水蒸気供給機器群200から供給する水蒸気の温度を133℃以上212℃以下、具体的には例えば210℃とする。これによって、外筒3の内部が高温・高圧で亜臨界状態の水蒸気で満たされるとともに、脱水管11の内部にも円筒部分の開口部11bを通じて水蒸気が浸入して、高温高圧で亜臨界状態の水蒸気で満たされる。つまり、処理装置本体1は、導入された亜臨界状態の水蒸気により、その内部が亜臨界雰囲気とされ、脱水管11にあっては、有機性汚泥31が投入された状態で処理装置本体1に収納されて、有機性汚泥31と共に亜臨界雰囲気下に置かれることになる。本実施形態では、この亜臨界雰囲気を亜臨界処理工程に亘って維持しており、その圧力は、0.1MPa以上22.1MPa以下、好適には、0.2MPa以上1.6MPa以下、より好適には、0.7MPa以上1.1MPa以下、具体的には例えば0.9MPaとし、温度については、これを、120℃以上200℃以下、好適には、160℃以上180℃以下、具体的には例えば170℃とした。
【0022】
制御装置110は、この亜臨界雰囲気において、回転スライド機構9を駆動制御して、シャフト10をその軸中心に正逆回転させる。ピストン12は、図示する原位置に位置して脱水管11と既述したように係合していることから、シャフト10の正逆回転は、ピストン12を介して脱水管11に伝達される。これにより、脱水管11は、有機性汚泥31を収納したまま正逆回転、即ち揺動し、有機性汚泥31を攪拌するので、有機性汚泥31の全体に亜臨界状態の水蒸気が有機性汚泥31の各所に行き渡る。これによって、有機性汚泥31に対する亜臨界処理、即ち亜臨界雰囲気下での有機性汚泥31の水熱処理が行われる。よって、制御装置110とその制御下で駆動する回転スライド機構9により、本発明における「水熱処理部」が構築される。この亜臨界処理工程がなされている間において、外筒3の底部には、供給された水蒸気が凝集したり、有機性汚泥31から水分などの液体成分が漏出したりすることによって、処理水32が貯留する。
【0023】
次に、
図2に示すように、亜臨界中圧縮脱水工程を行う(ステップST2)。亜臨界処理工程から亜臨界中圧縮脱水工程への推移は、制御装置110の計測した経過時間等に応じてなされる。
図4は亜臨界中圧縮脱水工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この亜臨界中圧縮脱水工程においては、既述した亜臨界処理工程で発現させた亜臨界雰囲気を処理装置本体1にて維持したまま、制御装置110は、回転スライド機構9を駆動制御してシャフト10を外筒3の内部に向けて前進スライドさせる。この際、制御装置110は、回転スライド機構9によるシャフト10の回転を起こさない。これにより、ピストン12が脱水管蓋部11aに向かってスライド移動して、ピストン12と脱水管蓋部11aとの間で有機性汚泥31が圧縮され、脱水処理が行われる。この際のピストン12の位置が既述した圧縮終端位置となる。この圧縮終端位置まで前進スライドしたピストン12により有機性汚泥31が脱水管11の内部で圧縮されると、有機性汚泥31に含まれる水分などの液体成分(脱水ろ液)が脱水管11の開口部11bを通じて排出される。これにより、外筒3内にさらに処理水32が貯留される。この亜臨界雰囲気を維持したままの亜臨界中圧縮脱水工程では、亜臨界雰囲気においてステップST1の水熱処理(亜臨界処理)を受けた有機性汚泥31から液体成分が圧縮を経て脱水分離され、その分離した液体成分を処理水32として処理装置本体1の底部に導くことになる。よって、ステップST2の亜臨界中圧縮脱水工程に関与する制御装置110とその制御下で駆動する回転スライド機構9やピストン12、シャフト10等により、本発明における「脱水処理部」が構築される。
【0024】
このとき、亜臨界処理がされた有機性汚泥31の内部に含まれる液体状の水分の粘度は、処理装置本体1が亜臨界雰囲気下にあって高温高圧である故に、見かけ上、低下する。このため、亜臨界処理がされた有機性汚泥31を、亜臨界状態の高温高圧雰囲気において圧縮脱水することにより、圧縮による脱水性を向上させることができ、高温高圧の亜臨界状態を脱水処理に有効利用することができる。
【0025】
次に、貯留タンク昇圧工程を行う(ステップST3)。亜臨界中圧縮脱水工程から貯留タンク昇圧工程への推移は、制御装置110の計測した経過時間等に応じてなされる。
図5は貯留タンク昇圧工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この貯留タンク昇圧工程においては、処理装置本体1の内部にあっては既述した亜臨界雰囲気を維持したまま、制御装置110は、給排気管21の開閉バルブ21aを駆動制御して、水蒸気供給機器群200から給排気管21を通じて、高温・高圧の亜臨界状態の水蒸気を貯留タンク2の内部に導入する。これにより、貯留タンク2の内部は、加圧され、処理装置本体1における亜臨界雰囲気と等圧となる。
【0026】
次に、
図2に示すように、亜臨界中脱液工程を行う(ステップST4)。貯留タンク昇圧工程から亜臨界中脱液工程への推移は、制御装置110の計測した経過時間、或いは図示しないセンサーにて計測した処理装置本体1と貯留タンク2の内圧対比(等圧化)等に応じてなされる。
図6は亜臨界中脱液工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この亜臨界中脱液工程においては、制御装置110は、まず、開閉バルブ21aを閉弁制御して、貯留タンク2への水蒸気導入を停止し、その後、開閉バルブ23を開弁制御する。これにより、処理装置本体1にあっては既述した亜臨界雰囲気が維持されたまま、処理装置本体1と貯留タンク2とが等圧の状況下で、処理装置本体1の底部から、ここに貯まっていた処理水32が、自重により排液管6と給液管22を結ぶ流出経路32rに沿って貯留タンク2に排出される。よって、制御装置110とその制御下で駆動する開閉バルブ21aや開閉バルブ23、および排液管6等により、本発明における「制御部」が構築される。貯留タンク2では、処理装置本体1からの処理水32の排水に伴い、タンク内の処理水32の水位が上昇し、処理装置本体1の底部に貯まっていた処理水32は、全て貯留タンク2に排出される。
【0027】
次に、
図2に示すように、亜臨界環境下での再脱水工程を行う(ステップST5)。亜臨界中脱液工程から亜臨界環境下での再脱水工程への推移は、制御装置110の計測した経過時間、或いは図示しないセンサーにて計測した処理装置本体1と貯留タンク2の処理水32の水位変化等に応じてなされる。
図7は亜臨界環境下での再脱水工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この亜臨界環境下での再脱水工程においては、制御装置110は、開閉バルブ21aの閉弁制御と開閉バルブ23の開弁制御を継続して亜臨界雰囲気のまま、回転スライド機構9を駆動制御して、シャフト10をその軸中心に例えば正回転させる。ピストン12は、図示する圧縮終端位置に位置して脱水管11と既述したように係合していることから、シャフト10の回転は、ピストン12を介して脱水管11に伝達される。これにより、脱水管11は、有機性汚泥31をピストン12にて圧縮したまま回転する。制御装置110は、この亜臨界環境下での再脱水工程でシャフト10を高速回転させるので、ピストン12にて圧縮状態の有機性汚泥31には大きな遠心力が作用する。これにより、有機性汚泥31に残存していた液体成分は、有機性汚泥31から遠心脱水されて開口部11bを通過し、図示する内部流出流32ruのように処理装置本体1の底部に到って、既述した流出経路32rを経て貯留タンク2に流れ込む。この際、貯留タンク2は、処理装置本体1と等圧状況であることから、有機性汚泥31から遠心脱水された液体成分は、脱水管11の開口部11bおよび流出経路32rを経て円滑に貯留タンク2に流れ込む。また、処理装置本体1は、亜臨界雰囲気下にあり高圧であることから、有機性汚泥31に残存する液体成分には既述したように見かけ上の粘度低下が起きるので、このことからも、有機性汚泥31からの液体成分の遠心脱水は促進される。なお、制御装置110は、亜臨界環境下での再脱水工程の完了に合わせて、回転スライド機構9によるシャフト10の高速回転を停止制御する。
【0028】
次に、
図2に示すように、脱水に関与していた圧縮力を解除する解除工程を行う(ステップST6)。亜臨界環境下での再脱水工程から圧縮力の解除工程への推移は、制御装置110の計測した経過時間等に応じてなされる。
図8は圧縮力の解除工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この圧縮力の解除工程においては、制御装置110は、まず、開閉バルブ23を閉弁制御して処理装置本体1を亜臨界雰囲気に維持したまま、回転スライド機構9を駆動制御してシャフト10を既述した
図7の圧縮終端位置から後退スライドさせる。これにより、ピストン12は圧縮終端位置よりも脱水管蓋部11aから離れるので、ピストン12により有機性汚泥31に付与されていた圧縮力は解除される。こうして圧縮力が解除されたピストン12の位置は、圧縮解除位置となる。なお、シャフト10の高速回転に伴う遠心力は、亜臨界環境下での再脱水工程の完了時点で既に解除されている。そして、上記した圧縮力解除により、有機性汚泥31は、亜臨界雰囲気下におかれているとは言え、汚泥の固形成分が非圧縮となることにより、その自重により圧縮形状を崩して脱水管11の底部に広がり、その表面積は拡大する。
【0029】
次に、
図2に示すように、脱気工程を行う(ステップST7)。圧縮力の解除工程から脱気工程への推移は、制御装置110の計測した経過時間等に応じてなされる。
図9は脱気工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この脱気工程においては、制御装置110は、排気管4の開閉バルブ4aの開弁制御と、給排気管21の開閉バルブ21aの切換制御と、ドレン管24の開閉バルブ24aの開弁制御とを行う。開閉バルブ21aの切換制御は、給排気管21を大気解放管21bに連通する切換制御である。これらバルブ制御は、同時になされてもよく、時系列的になされてもよい。この場合、開閉バルブ21aの切換制御と開閉バルブ24aの開弁制御とをこの順で行えば、貯留タンク2における処理水32の液面より上に残る水蒸気が先に大気解放管21bを経て大気放出され、貯留タンク2の内圧が大気圧程度に低下してから、貯留タンク2の処理水32は、ドレン管24を経て排出されるので、排出時の処理水飛散を防止できる。その一方、開閉バルブ24aの開弁制御を開閉バルブ21aの切換制御より先に行えば、貯留タンク2の処理水32を、その液面より上に残る水蒸気の圧力により急速にドレン管24を経て排出できる。なお、ドレン管24を図示しない配管経路に接続しておけば、急速な処理水排出であっても、処理水飛散については問題とならない。上記したバルブ制御を伴う脱気工程では、外筒3の内部の水蒸気放出がなされ、外筒3の内部は、その内圧が亜臨界状態の高温高圧雰囲気による雰囲気圧未満の所定の圧力、具体的には例えば大気圧まで低下する。一方、貯留タンク2においては、既述したように水蒸気放出と処理水排出がなされる。
【0030】
次に、
図2に示すように、取り出し工程を行う(ステップS
T8)。脱気工程から取り出し工程への推移は、制御装置110の計測した経過時間、或いは図示しないセンサーにて計測した処理装置本体1の内圧(大気圧化)、図示しないセンサーにて計測した貯留タンク2の処理水水位(=ゼロ)等に応じてなされる。
図10は取り出し工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この取り出し工程においては、制御装置110は、固定治具8による蓋部7の固定解除制御と、回転スライド機構9の駆動制御によるシャフト10の後退スライドとを行う。この両制御は、同時並行的になされてもよく、順次実行されてもよい。固定治具8の固定解除制御により、外筒3からの蓋部7の取り外しと、脱水管11からの脱水管蓋部11aの取り外しがなされるので、圧縮脱水と遠心脱水を受けた有機性汚泥31の脱水ケーキが脱水管11から取り出される。この有機性汚泥31の脱水ケーキは、焼却処分又は埋め立て処理がされる。また、シャフト10の後退スライドにより、ピストン12は、図に示す原位置に復帰するので、次回の水熱処理に備え、脱水管11へは新たに処理される有機性汚泥31の投入が可能となる。上記した脱水管蓋部11aの取り外し後の脱水ケーキの取り出しの際、制御装置110の制御下で回転スライド機構9によりシャフト10を前進スライドさせ、ピストン12にて脱水ケーキを脱水管11の開口端側に押し出すことができる。こうすれば、脱水ケーキの取り出しが容易となる。そして、この押出のための前進スライドを行った後、後退スライドによりピストン12を原位置に復帰させればよい。なお、制御装置110は、開閉バルブ4a等の各種バルブを全て閉状態に駆動制御し、次回の亜臨界処理工程の開始に備える。
【0031】
以上説明した構成を備える本実施形態の水熱処理装置100は、水蒸気供給機器群200から高温・高圧の亜臨界状態の水蒸気を処理装置本体1に導入して、脱水管11に投入済みの有機性汚泥31を、亜臨界雰囲気において水熱処理する(ステップST1:
図3)。そして、こうして水熱処理を受けた有機性汚泥31にピストン12により圧縮力を付与して液体成分を脱水分離し(ステップST2:
図4)、この脱水分離した液体成分たる処理水32を処理装置本体1の下方の貯留タンク2に排出する(ステップST4:
図6)。これにより、本実施形態の水熱処理装置100は、処理装置本体1においては、圧縮脱水済みの有機性汚泥31を、亜臨界雰囲気においたまま、液体成分との接触を断つ。その上で、本実施形態の水熱処理装置100は、圧縮脱水済みの有機性汚泥31を圧縮力から解放するので(ステップST6:
図8)、有機性汚泥31を、亜臨界雰囲気におかれているとは言え、その固形成分が非圧縮となることにより、圧縮形状から崩し、亜臨界雰囲気下で有機性汚泥31の表面積を拡大させる。本実施形態の水熱処理装置100は、こうして形状が崩れて表面積の拡大した有機性汚泥31が残った処理装置本体1の内部を大気解放して亜臨界雰囲気を解消する(ステップST7:
図9)。
【0032】
有機性汚泥31が残った処理装置本体1の内部を大気解放して亜臨界雰囲気を解消する以前において、有機性汚泥31に残存している液体成分の多くは、亜臨界雰囲気下である故に100℃より高い温度となっている。そして、この状態から、亜臨界雰囲気が解消されて処理装置本体1、詳しくは外筒3の内圧が大気圧まで減圧されるので、圧縮された有機性汚泥31に含有された100℃以上の水分は水蒸気となって減圧蒸発し、外筒3の外部に放出される。これにより、亜臨界中圧縮脱水工程において脱水処理がされた有機性汚泥31からさらに水分が除去され、脱水効率は高まる。その上で、本実施形態の水熱処理装置100は、有機性汚泥31の表面積を拡大させているので、有機性汚泥31に残存している液体成分の減圧蒸発を、有機性汚泥31の表面積拡大により促進させる。この結果、本実施形態の水熱処理装置100によれば、水熱処理と脱水処理とを受けた有機性汚泥31の脱水ケーキの含水率を確実により一層低減できる。
【0033】
本実施形態の水熱処理装置100は、処理水32を処理装置本体1の下方の貯留タンク2に排出した(ステップST4:
図6)においても、圧縮脱水を受けた有機性汚泥31に回転遠心力を付与して、液体成分を脱水分離し(ステップST5:
図7)、その後に、圧縮力を解放する。有機性汚泥31にピストン12により圧縮力を付与して脱水を図る場合、圧縮の程度は、有機性汚泥31に含まれる固形分の割合や物性等により定まり、圧縮による脱水を経ても有機性汚泥31には液体成分が残り得る。しかしながら、本実施形態の水熱処理装置100によれば、圧縮脱水後の有機性汚泥31に残存していた液体成分を、有機性汚泥31に遠心力を付与して脱水分離するので、その分だけ、脱水ケーキの含水率をより一層低減できる。しかも、本実施形態の水熱処理装置100によれば、遠心力による液体成分(処理水32)の脱水分離についても、これを亜臨界雰囲気下の高圧環境にて実行するので、液体成分の見かけ上の粘度低下により、有機性汚泥31からの液体成分の遠心脱水を促進でき、更なる含水率の低減を図ることができる。
【0034】
本実施形態の水熱処理装置100は、処理水32を処理装置本体1の下方の貯留タンク2に排出するに当たり(ステップST4:
図6)、貯留タンク2の内部を加圧して処理装置本体1の亜臨界雰囲気と等圧化を図る。よって、本実施形態の水熱処理装置100によれば、処理装置本体1の底部に貯まった処理水32を、その自重により、支障なく貯留タンク2に排出できると共に、この有機性汚泥31の排出の際は元より、処理装置本体1からの処理水32の排出の後にあっても、処理装置本体1の内部をより確実に亜臨界雰囲気のままとでき、処理装置本体1の降圧を招かない。この結果、本実施形態の水熱処理装置100によれば、有機性汚泥31に残存している液体成分の遠心分離による脱水の実効性と、その後の減圧による蒸発脱水の実効性とを、共に高めることができる。
【0035】
本実施形態の水熱処理装置100は、貯留タンク2に水蒸気供給機器群200から亜臨界状態の水蒸気を導入してタンク加圧を図るので、貯留タンクを容易に処理装置本体1と等圧化できる。
【0036】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0037】
上記した実施形態の水熱処理装置100では、圧縮脱水を受けた有機性汚泥31に回転遠心力を付与して液体成分を脱水分離するが(再脱水工程:ステップST5:
図7)、この再脱水工程を省略して、ステップST4の亜臨界中脱液工程に続いてステップST6の圧縮力の解除工程を行うようにしてもよい。こうしても、圧縮脱水済みの有機性汚泥31を、その表面積の増大下で減圧蒸発に処すことができるので、含水率低減を図ることができる。
【0038】
上記した本実施形態の水熱処理装置100では、貯留タンク2の加圧を亜臨界状態の水蒸気導入により図るようにしたが、高圧空気を貯留タンク2に導入してタンク加圧を図るようにしてもよい。
【0039】
上記した本実施形態の水熱処理装置100では、圧縮力の解除工程(ステップST6)において、ピストン12の後退スライドを行ったが、この後退スライドに加え、脱水管11の揺動を起こすようにしてもよい。つまり、まずは既述したようにピストン12を圧縮解除位置まで後退スライドさせ、このピストン位置において、回転スライド機構9によりシャフト10を正逆回転させる。こうすると、ピストン12を圧縮解除位置に位置させたまま、脱水管11は、ピストン12と共に正逆回転して揺動するので、ピストン12の後退スライドにより圧縮形状を崩した有機性汚泥31は、脱水管11において攪拌されて形状がより崩れるので、表面積は更に拡大する。この際、処理装置本体1は、亜臨界雰囲気のままであるので、圧縮力の解除工程に続く脱気工程(ステップST7)での減圧脱水は、より一層促進される。よって、圧縮力の解除工程において、ピストン12の後退スライドに加え、脱水管11の揺動を起こす実施形態によれば、含水率をより一層、且つ確実に低減できる。
【0040】
上記した本実施形態の水熱処理装置100では、貯留タンク昇圧工程(ステップST3)において、貯留タンク2を加圧して処理装置本体1と等圧化を図ったが、亜臨界処理工程(ステップST1)の際に、貯留タンク2を処理装置本体1と等圧にしてもよい。つまり、亜臨界処理工程(ステップST1)の際に、排液管6の開閉バルブ23を開放し、ドレン管24の開閉バルブ24aと給排気管21の開閉バルブ21aとを閉鎖しておき、水蒸気供給機器群200から処理装置本体
1に導入される亜臨界状態の水蒸気の一部を予め貯留タンク2に導入する。その上で、処理装置本体1での水熱処理のための回転スライド機構9の駆動前に、開閉バルブ23を閉鎖する。こうすれば、水蒸気供給機器群200から給排気管21に到る管路を用いなくても、貯留タンク2を処理装置本体1と等圧化できる。