(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。なお、本発明の用語のうち「股間部」とは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、製品によって、図示形態のように物品の前後方向中央若しくはその近傍から前側の所定部位までの範囲であったり、物品の前後方向中央の所定範囲であったりするものである。物品の前後方向中間あるいは吸収体の前後方向中間に幅の狭い括れ部分を有する場合は、いずれか一方又は両方の括れ部分の最小幅部位を前後方向中央とする所定の前後方向範囲を意味する。また、「前側部分(腹側部分)」は股間部よりも前側の部分を意味し、「後側部分(背側部分)」は股間部よりも後側の部分を意味する。
【0017】
図1〜
図4は、本発明に係るパッドタイプ使い捨ておむつ例200を示している。このパッドタイプ使い捨ておむつ200は、股間部C2と、その前後両側に延在する前側部分F2及び後側部分B2とを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)Lは350〜700mm程度、全幅W1は130〜400mm程度(ただし、おむつの吸収面の幅より広い)とすることができ、この場合における股間部C2の前後方向長さは10〜150mm程度、前側部分F2の前後方向長さは50〜350mm程度、及び後側部分B2の前後方向長さは50〜350mm程度とすることができる。また、股間部C2の幅W3は、大人用の場合、150cm以上、特に200〜260cm程度とすることができる。
【0018】
パッドタイプ使い捨ておむつ200は、外面に外装シート27が積層された液不透過性シート21の内面と、透液性トップシート22との間に、吸収体23が介在された基本構造を有している。
【0019】
吸収体23の裏側には、液不透過性シート21が吸収体23の周縁より若干食み出すように設けられている。液不透過性シート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0020】
また、液不透過性シート21の外面は、不織布からなる外装シート27により覆われており、この外装シート27は、所定の食み出し幅をもって
液不透過性シート21の周縁より外側に食み出している。外装シート27としては各種の不織布を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0021】
吸収体23の表側は、透液性トップシート22により覆われている。図示形態ではトップシート22の側縁から吸収体23が一部食み出しているが、吸収体23の側縁が食み出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔または無孔の不織布が用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0022】
トップシート22と吸収体23との間には、中間シート25を介在させるのが望ましい。この中間シート25は、吸収体23により吸収した尿の逆戻りを防止するために設けられるものであり、保水性が低く、且つ透液性の高い素材、例えば各種の不織布を用いるのが望ましい。トップシート22の前端を0%としトップシート22の後端を100%としたとき、中間シート25の前端は0〜11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シート25の後端は92〜100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シート25の幅は後述する吸収体23の括れ部分23nの最小幅W5の50〜100%程度であるのが好ましい。
【0023】
パッドタイプ使い捨ておむつ200の前後方向両端部では、外装シート27および透液性トップシート22が吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。パッドタイプ使い捨ておむつ200の両側部では、外装シート27が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在され、この延在部からトップシート22の側部までの部分の内面には、立体ギャザー24を形成するギャザーシート24sの幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり貼り付けられ、吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFを構成している。これら貼り合わせ部分は、
図1では点模様で示されており、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成できる。外装シート27を設けない場合、外装シート27に代えて液不透過性シート21をサイドフラップ部SFまで延在させ、サイドフラップ部SFの外面側を形成することができる。
【0024】
ギャザーシート24sの素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコ
ーンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0025】
ギャザーシート24sの幅方向中央側の部分24cはトップシート22上にまで延在しており、その幅方向中央側の端部には、細長状弾性部材24Gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性部材24Gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコ
ーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0026】
また、両ギャザーシート24sは、幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり物品内面(図示形態ではトップシート22表面および外装シート27内面)に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向中央側の部分24cが、前後方向の両端部では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に貼り合わされて固定され、かつ前後方向の両端部間では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に固定されていない。この非固定部分は、
図1に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に対して弾力的に起立する漏れ防止壁となる部分であり、その起立基端24bはギャザーシート24sにおける幅方向外側の固定部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。
【0027】
吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、吸収体23はクレープ紙等の包装シート26により包むことができる。また、吸収体23の形状は、相対的に前側の部分が後側の部分よりも幅狭な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。
【0028】
吸収体23における繊維目付け及び高吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m
2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m
2程度とするのが好ましい。
【0029】
吸収体23は、前側部分F2から後側部分B2にかけて延在されており、図示形態では股間部C2を含む前後方向中間の所定部分が幅の狭い括れ部分23nとして形成されている。この括れ部分23nの最小幅W5は、括れ部分23nの前後に位置する非括れ部分の幅W2の50〜65%程度であるのが好ましい。また、物品前端を0%とし物品後端を100%としたとき、括れ部分23nの前端は10〜25%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの後端は40〜65%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの最小幅W5となる部位(最小幅部位)は25〜30%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0030】
特徴的には、
図1及び
図2に示すように、吸収体23における少なくとも股間部C2と対応する前後方向領域に、所定幅のスリット40が前後方向に延在されるとともに、
図4〜
図6に示すようにトップシート22は吸収体23のスリット40内に落ち込んだ落ち込み部分30を有しており、
図5及び
図6に示すようにこの落ち込み部分30の少なくとも一部に凸部31を有している。図示形態では、トップシート22と吸収体23との間に中間シート25と包装シート26の表側部分が存在するため、これら中間シート25及び包装シート26の表側部分もトップシート22とともに、スリット40内に落ち込むこととなる。トップシート22以外は省略することもできる。
【0031】
スリット40は股間部C2に設けられている限り、その前後方向の長さ40Lは特に限定されず、したがって吸収体23の前後方向全体にわたり設けることもできるが、図示形態のように前側部分F2の股間側端部から後側部分B2の股間側端部まで延在させることが望ましい。また、
図9(a)に示すように、スリット40の後側の部分を幅方向外側に向かうように曲げたり(前側も同様に曲げることができる)することもできる。より具体的には、使い捨ておむつ200の前端を0%とし、使い捨ておむつ200の後端を100%としたとき、スリット40の前端は15〜30%の範囲に位置しているのが好ましく、スリット40の後端は40〜70%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0032】
図示形態の吸収体23では、スリット40の前後端は吸収体23の周縁に突き抜けていないが、
図9(a)に示す例のように後端(前端又は両端でもよい)を周縁に達するようにしてもよい。なお、スリット40の前後両端が吸収体23の側縁に達する形態では、スリット40よりも側方の部分はスリット40間の部分とは別体となる。
【0033】
スリット40は左右両側に各1本設けるほか、
図9(b)に示すように幅方向中央に中央スリット41を追加することもできる。この場合、スリット40の幅方向位置は左右対称となることが好ましく、スリット40の間隔40Dは、通常の場合、吸収体23の括れ部分23nの最小幅W5の10〜30%程度であるのが好ましい。スリット40の数は限定されず、
図7及び
図8に示すように幅方向中央部に前後方向に沿って一本だけ設けることもできる。
【0034】
スリット40の幅40Wは、対向する側壁が離間している限り特に限定されないが、通常の場合、吸収体23の括れ部分23nの最小幅W5の10〜20%程度とすることが望ましく、具体的に大人用製品の場合5〜32mm程度とすることができる。
【0035】
以上のように構成されたパッドタイプ使い捨ておむつ200では、
図5(a)に示される展開状態と
図5(b)(c)に示される装着状態との対比、あるいは
図6(a)に示される展開状態と
図6(b)(c)に示される装着状態との対比からも明らかなように、装着状態で股間部C2が装着者の両脚の間に挟まれ、幅方向にある程度収縮し、スリット40の両側面が近づくと、凸部31が落ち込み部分30の底部に位置する場合には対向側面間に挟まることにより、凸部31上の対向側面間に空間が維持され、凸部31が対向側面の一方に位置する場合には他方に当接することにより、凸部31の周囲と対向側面との間に空間が確保される。よって、スリット40の潰れが抑制され、スリット40による拡散性向上効果が阻害されにくいものとなる。
【0036】
トップシート22における凸部31は落ち込み部分30にのみ、つまりスリット40内にのみ設けてもよく、スリット40の幅方向一方側にのみ設けてもよい。また凸部31の数は限定されず、少数でも良い。ただし、凸部31の位置を、吸収体23のスリット40の位置に正確に合わせて製造することは困難である。よって、
図2及び
図7に示すように、トップシート22における落ち込み部分30を含みかつこれよりも広い範囲11にわたり、
図5及び
図6に示すように、凸部31を幅方向及び前後方向にそれぞれ間隔を空けて多数配列することが望ましい。例えば、凸部31の配列領域11は、
図2に示すように前後方向においてはトップシート22の全体にわたるようにする他、
図7に示すように、スリット40の前後端を若干はみ出す程度とすることもできる。幅方向についても、トップシート22の全幅にわたり凸部31を配列する他、図示例のようにスリット40の幅方向両端を若干はみ出す程度とすることができる。幅方向に間隔を空けて複数のスリット40を設ける場合、図示しないが、凸部31の配列領域も幅方向に間隔を空けて複数設けることができる。
【0037】
トップシート22における落ち込み部分30を含みかつこれよりも広い範囲11にわたり、凸部31を幅方向及び前後方向にそれぞれ間隔を空けて多数配列する場合、凸部31の前後方向に並ぶ列が落ち込み部分30内に一列のみ配置される形態でも良いが、
図5及び
図6に示すように複数列形成されていると、吸収体23に対するトップシート22の幅方向位置が製造時又は使用時に多少ずれてもいずれかの凸部31の列がスリット40の空間をその延存方向に確保することができるため好ましい。
【0038】
また、後述する
図11及び
図12に示すように、凸部31を幅方向及び前後方向にそれぞれ間隔を空けて多数配列する場合、凸部31の前後方向寸法31mが、前後方向に並ぶ凸部31の間隔32mより大きい方が好ましい。同様に、凸部31の幅方向寸法31cが、幅方向に並ぶ凸部31の間隔32cより大きい方が好ましい。凸部31の寸法31m,31cが小さく、凸部31の間隔32m,32cが広過ぎたり、凸部31が隣接凸部間32に嵌合する寸法であると、前述の空間確保作用が局所的にしか発揮されなくなるおそれがあるのに対して、凸部31の寸法31m,31cが、凸部31の間隔32m,32cより大きいと、凸部31の専有面積が凸部31間に比して大きくなるため、どのような配列であっても、また落ち込み部分30がどのように変形しても、一方の対向側面の凸部31が他方の対向側面の凸部31間に入り込まず、対向する凸部31同士が接触するため、より好ましい空間確保状態となる。
【0039】
図5に示すように凸部31を行列状に配列する場合、幅方向に並ぶ凸部31の間隔32cが凸部31の幅方向寸法31cの0.1〜0.5倍であると好ましい。すなわち、
図11にも示すように、凸部31の配列が行列状配列の場合、幅方向に隣接する凸部31列の間32cで凸部31間の部分(低剛性の部分)が最も直線的に前後方向に連続するため、スリット40の幅が狭くなる際、この位置32cでトップシート22が折れ曲がる。このとき、上記寸法31c及び間隔32cで凸部31が配列されていると、一方の対向側面の凸部31が他方の対向側面の凸部31間に入り込まず、対向する凸部31同士が接触するため、より好ましい空間確保状態となる。
【0040】
また、
図6に示すように、凸部31を千鳥状に配列する場合、幅方向に並ぶ凸部31の間隔が凸部31の幅方向寸法の0.5〜0.9倍であると好ましい。
図12にも示すように、凸部31の配列が千鳥状配列の場合、前後方向にジグザグに並ぶ凸部31の幅方向中央で凸部31間の部分(低剛性の部分)が最も直線的に前後方向に連続するため、スリット40の幅が狭くなる際、この位置Qでトップシート22が折れ曲がる。ここで、上記寸法及び間隔で凸部31が配列されていると、一方の対向側面の凸部31が他方の対向側面の凸部31間に入り込みにくく、対向する凸部31同士が接触しやすくなるため、より好ましい空間確保状態となる。
【0041】
トップシート22における凸部31の具体的な寸法・形状・配列・構造は特に限定されず、適宜定めることができる。一例を示すと、以下のとおりである。
【0042】
すなわち、
図10〜
図13に示すように、エンボス加工を用いてトップシート22を裏側から表側に押し出すことにより、幅方向及び前後方向にそれぞれ間隔を空けて多数の凸部31を配列することができる。なお符号32は隣接する凸部31間の部分を示している。この配列様式は、
図11に示すように行列状とする他、
図10及び
図12に示すように千鳥状(隣接列で互い違いとなる配置)とする等、適宜変更することができる。また、図示形態では、トップシート22のほぼ全体にわたり凸部31を設ける形態を想定しているが、前述のように少なくとも第1部分11の両側部と対応する領域、並びにその幅方向外側に隣接する領域に設けられる限り、部分的に設けることも可能であり、例えばトップシート22と中間シート25とが重なる領域のほぼ全体にわたり設けることもできる。
【0043】
凸部31の寸法等は適宜定めることができるが、
図10〜
図12に示すように、凸部31のMD方向寸法31mは、凸部31のMD方向一方側に位置するトップシート接合部80(後述する)と他方側に位置するトップシート接合部80との中心間隔80y以下とされ、その下限は0.9倍程度であるのが好ましく、通常の場合2.7〜9mm程度とすることが好ましい。同様に、凸部31のCD方向寸法31cは、凸部31のCD方向一方側に位置するトップシート接合部80と他方側に位置するトップシート接合部80との中心間隔80x以下とされ、その下限は0.9倍程度であるのが好ましく、通常の場合2.7〜9mm程度とすることが好ましい。また、凸部31の高さ31zは、通常の場合0.8〜2mm程度とすることが好ましい。
【0044】
ここで、製品における「MD方向」及び「CD方向」とは、凸部31の加工設備の「MD方向」及び「CD方向」を意味し、いずれか一方が前後方向となるものであり、他方が幅方向となるものである。そして、製品におけるMD方向は、トップシート22の不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。図示形態は、殆ど多くの吸収性物品の製品と同様に、前後方向がMD方向となり、幅方向がCD方向となるものである。
【0045】
凸部31の配置間隔は適宜定めることができるが、
図11に示すような行列状配列の場合、CD方向に隣接する凸部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xは3〜10mm程度、MD方向に隣接する凸部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yは3〜10mm程度とするのが好ましい。また、
図10及び
図12に示すような千鳥状配列の場合、CD方向に隣接する凸部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xは3〜10mm程度、MD方向に隣接する凸部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yは3〜10mm程度とするのが好ましい。
【0046】
凸部31の形状は、円形ドーム状とするのが好ましいが、楕円ドーム状や、正多角形ドーム状とすることも可能である。なお、凸部31はトップシート22のエンボス加工により形成することができる。
【0047】
図10〜
図13にも示すように、トップシート22における、幅方向及び前後方向に隣接する凸部31の間の部分が加圧溶着により中間シート25と接合されることにより、幅方向及び前後方向に間欠的な接合パターンで多数のトップシート接合部80が形成されている。トップシート接合部80は、凹部の底部を形成する部分でもある。そして特徴的には、このトップシート22及び中間シート25の接合パターンでは、MD方向に隣接する凸部31の間の領域では、トップシート接合部80がCD方向に間隔を空けて複数並んでなる列が当該領域のCD方向中央位置を横切るように形成されるとともに、そのトップシート接合部80のCD方向の間隔部分ではトップシート22及び中間シート25が溶着されずにトップシート22がそのMD方向両側よりも圧縮された圧縮部81とされている。圧縮部81においてはトップシート22が圧縮される限り、中間シート25はトップシート22と一体的に圧縮されていても、圧縮されていなくても良い。また、トップシート接合部80及び圧縮部81以外の部分は、トップシート22及び中間シート25が溶着されずかつCD方向の間隔部分と同様に圧縮されていても良いが、トップシート22及び中間シート25が溶着されずかつCD方向の間隔部分よりもトップシート22が圧縮されていない(全く圧縮されない非圧縮も含む)ことが望ましい。つまり、トップシート22におけるトップシート接合部80の厚みをT1とし、圧縮部81の厚みをT2とし、トップシート接合部80及び圧縮部81以外の部分の厚みをT3としたとき、T1<T2=T3でも良いが、T1<T2<T3となるのが望ましい。さらに、図示形態では、トップシート22における凸部31を有する部分と中間シート25との間に空間が形成されている。
【0048】
図10及び
図12(b)に示されるパターンを採用したトップシート22及び中間シート25の組み立て体のサンプル写真が
図15に示されている。このように、MD方向に隣接する凸部31の間に特徴的な接合パターンを採用することにより、
図15に示すサンプルと
図16に示すサンプルとの対比からも明らかなように、凸部31の形成時に縦皺が形成されたとしても、中間シート25との接合の際にその縦皺を横切るように、加圧溶着によるトップシート接合部80及び溶着されずに圧縮された圧縮部81がCD方向に交互に連続するため、縦皺をより大きく伸ばした状態でトップシート接合部80を形成することができ、その状態又はそれに近い状態が製造後においても維持されるようになる。それでいて、結果的に接合される部分はCD方向に間欠的となるため、柔軟性の低下や外観の悪化は防止することができる。これに対して、上記条件を満たさないトップシート接合部80を有する比較サンプルでは、MD方向に沿う皺がCD方向に間隔を空けて多数形成されてしまい、見栄えが悪化する。
【0049】
接合パターンは、MD方向に隣接する凸部31の間の領域において、複数のトップシート接合部80がCD方向に間隔を空けて並び、そのCD方向間隔部分が圧縮部81により繋がる限り特に限定されず、
図11(b)及び
図12(a)に示すように、MD方向に隣接する凸部31のCD方向中央部と対応するCD方向中央位置にトップシート接合部80が形成されると皺防止の観点からは好ましいが、
図11(a)及び
図12(b)に示すように当該CD方向中央位置にトップシート接合部80が形成されないパターンとすると、より柔軟性に富むようになるため好ましい。また、前者の場合に、CD方向中央位置のトップシート接合部80の面積を他のトップシート接合部80の面積よりも小さくするのも、柔軟性の観点からは好ましい。
【0050】
図11に示すように、MD方向に隣接する凸部31の間の領域に、トップシート接合部80がCD方向に間隔を空けて複数並んでなる列を一列設ける他、
図10及び
図12に示すように、MD方向に間隔を空けて複数列設けることもできる。前者は、凸部31が行列状に配列されている
図11に示す形態のように凸部31のMD方向間隔が狭いパターンに適しており、後者は、凸部31が千鳥状に配列されている
図10及び
図12に示す形態のように凸部31のMD方向間隔が広いパターンに適している。なお、後者の形態において、トップシート接合部80のMD方向の間隔部分は、トップシート22及び中間シート25が溶着されずかつCD方向の間隔部分と同様に圧縮されていても良いが、トップシート22及び中間シート25が溶着されずかつCD方向の間隔部分よりもトップシート22が圧縮されていない(全く圧縮されない非圧縮も含む)と、より優れた柔軟性及び外観を得ることができる。
【0051】
個々のトップシート接合部の形状は特に限定されず、図示例のような円形の他、楕円形、多角形、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。
【0052】
トップシート接合部80の寸法は適宜定めることができるが、MD方向に隣接する凸部31の間における個々のトップシート接合部80は、MD方向長さ80mが、MD方向に隣接する凸部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yの0.1〜0.4倍(通常の場合例えば0.5〜3mm)程度、かつCD方向長さ80cが、CD方向に隣接する凸部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xの0.1〜0.4倍(通常の場合例えば0.5〜3mm)程度の、点状接合部であるのが好ましい。また、CD方向に隣接するトップシート接合部80のCD方向間隔80dは、トップシート接合部80のCD方向長さ80cの1〜5倍(通常の場合例えば0.5〜15mm)程度であるのが好ましく、CD方向列におけるトップシート接合部80の個数は2〜4個程度であるのが好ましい。
【0053】
他方、
図12に示すように、凸部31が千鳥状の場合には、CD方向に隣接する凸部31の間はMD方向に隣接する凸部31の間でもあるため、MD方向に隣接する凸部31の間と同様のトップシート接合部80が設けられるのに対して、
図11に示すように、凸部31が行列状配列の場合には、MD方向に隣接する凸部31の間のトップシート接合部80とは別に、CD方向に隣接する凸部31の間にも、トップシート接合部80がMD方向に間欠的に設けられる。CD方向に隣接する凸部31の間におけるトップシート接合部80のパターンは特に限定されないが、点状のトップシート接合部80をMD方向に間隔を空けて配列することが好ましく、
図11(b)に示すようにMD方向の間隔部分においても、CD方向の間隔部分と同様に圧縮部81を形成することができる。このトップシート接合部80のMD方向列は、図示例のようにCD方向に隣接する凸部31の中間位置に一列設ける他、CD方向に間隔を空けて複数列設けることもできる。また、この点状のトップシート接合部80の寸法は特に限定されないが、MD方向長さ80mが、MD方向に隣接する凸部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yの0.1〜0.4倍(通常の場合例えば0.5〜3mm)程度、かつCD方向長さ80cが、CD方向に隣接する凸部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xの0.1〜0.4倍(通常の場合例えば0.5〜3mm)程度であるのが好ましい。
【0054】
トップシート接合部80は、幅方向及び前後方向に間欠的な接合パターンで形成され、各方向の間隔は適宜定めることができるが、例えば、MD方向に隣接する凸部31の間における各トップシート接合部80によるCD方向接合範囲A3は、CD方向に隣接する凸部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xの0.3〜1倍(通常の場合例えば1〜10mm)程度であるのが好ましく、また、CD方向に隣接する凸部31の間における各トップシート接合部80によるMD方向接合範囲A4は、MD方向に隣接する凸部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yの0.3〜1倍(通常の場合例えば1〜10mm)程度であるのが好ましい。これらCD方向接合範囲A3及びMD方向接合範囲A4が広すぎると、トップシート接合部80がCD方向及びMD方向に連続するのと変わりなくなり、トップシート22の透過性や柔軟性が低下するおそれがある。
【0055】
図14は、上述の凸部を形成するための加工設備を示している。すなわち、この設備は、押し込みロール90と、この押し込みロール90に対向する凹ロール91と、この凹ロール91に対向する接合ロール92とを備えている。
【0056】
押し込みロール90は、
図17に示すように、周面に多数の押し込み凸部90aが前述の凸部31の配列パターンで形成されたものである。押し込みロール90の凸部の形状は適宜定めることができるが、形成する凸部31の形状に合わせた断面(例えば円形、楕円形、正多角形等)の裁頭円錐台状であるのが好ましい。
【0057】
凹ロール91は、
図18に示すように、周面に押し込みロール90の押し込み凸部90aに対応する押し込み凹部91aが設けられるとともに、これら押し込み凹部91a間に、接合凸部91b及び圧縮凸部91eが設けられたものである。接合凸部91bは前述の接合パターンにおけるトップシート接合部80を形成するための部分であり、圧縮凸部91eはトップシート接合部80のCD方向の間隔部分においてトップシート22及び中間シートの素材25Sを溶着せずにトップシート22となる不織布22Sを厚み方向に圧縮するための部分である。中間シートの素材25Sが不織布のように厚み方向に圧縮される素材である場合は、この圧縮凸部91eによって中間シート25も同時に圧縮されることはいうまでもない。より詳細には、この凹ロール91では、ロール周方向に隣接する押し込み凹部91aの間の領域では、接合凸部91bがロール軸方向に間隔を空けて複数並んでなる列が当該領域のロール軸方向中央位置を横切るように形成されるとともに、その接合凸部91bのロール軸方向の間隔部分が圧縮凸部91eとされている。接合凸部91b、圧縮凸部91e、及び押し込み凹部91a以外の部分は、素材を圧縮しない部分とされているが、圧縮凸部91eと同程度又はそれ以下の圧縮を行う部分とすることもできる。凹ロール91の押し込み凹部91aは、凸部が形成される限り、押し込み凸部が入り込む大きさの、底面がない「開孔」でもよく、「押し込み凹部91a」はかかる「開孔」も含む意味である。
【0058】
押し込みロール90における押し込み凸部90aの寸法・形状・配置は、形成される凸部31の内空寸法・形状・配置と対応するものとなり、凹ロール91における押し込み凹部91aの寸法・形状・配置は、形成される凸部31の外形寸法・形状・配置と対応するものとなる。また、凹ロール91における接合凸部91bの寸法・形状・配置は、形成されるトップシート接合部80の寸法・形状・配置と対応するものとなり、凹ロール91における圧縮凸部91eの寸法・形状・配置は、圧縮部81が形成される場合にはその寸法・形状・配置と対応するものとなる。よって、これらの寸法、形状、配置については、前述の使い捨ておむつの項で述べた凸部31、トップシート接合部、及び圧縮部の寸法・形状・配置をと同様に変更可能である。例えば、
図18(b)に示される形態における圧縮凸部91cのMD方向長さ91m、CD方向長さ91c及びCD方向間隔91dは、
図12(b)に示される形態におけるトップシート接合部80のMD方向長さ80m、CD方向長さ80c、CD方向間隔80dと同様の範囲内とすることができる。
【0059】
加工に際しては、トップシート22となる不織布22Sを製造ラインの下流側からの引張りにより移送しつつ、
図19に示すように押し込みロール90及び凹ロール91間に挟み、押し込みロール90の凸部を凹ロール91の押し込み凹部91a内に押し込むエンボス加工により、凸部31を形成する。
【0060】
しかる後、この凸部31を形成した不織布22Sをそのまま凹ロール91に巻き掛けて案内する過程で、トップシート22となる不織布の外側に、製造ラインの下流側からの引張りにより中間シートの素材25Sを送り込み、
図20に示すようにトップシート22となる不織布22S及び中間シートの素材25Sを凹ロール91及び接合ロール92間に挟み、凹ロール91の圧縮凸部91eと接合ロール92の周面との間で圧縮しつつ、凹ロール91の接合凸部91bと接合ロール92の周面との間で加圧溶着することにより、トップシート接合部80を形成し、トップシート22及び中間シート25の組立て体を製造する。これにより、凸部31の形成時に、トップシート22となる不織布22SにおけるMD方向に隣接する凸部31の間に縦皺が形成されたとしても、中間シートの素材25Sとの接合の際、その縦皺を横切るように、加圧溶着部分80及び溶着されずに圧縮される圧縮部81がCD方向に交互に連続するため、縦皺をより大きく伸ばした状態でトップシート接合部80を形成することができ、その状態又はそれに近い状態が製造後においても維持されるようになる。それでいて、結果的に接合される部分はCD方向に間欠的となるため、柔軟性の低下や外観の悪化は防止することができる。なお、この原理からも理解されるように、圧縮凸部91eにより圧縮した痕跡が前述の圧縮部81として残るものはもちろん、圧縮の痕跡が殆ど又は全く残らないものも縦皺の防止効果があるものである。
【0061】
加圧溶着手段としては素材を厚み方向に圧縮しつつ溶着するものであれば、ロールを加熱して素材を溶着するヒートシールの他、超音波シールを採用することもできる。加工したトップシート22及び中間シート25の組立て体は、公知の方法に従って吸収体等に対して組み付けることにより使い捨ておむつを製造することができる。
【0062】
図14に示す形態のように、凸部31の形成直後に、その皺が吸収される間があまり無い状態で中間シート25の素材と接合する加工法では、皺がより残りやすいため、前述の接合パターンを採用することが好ましい。もちろん、エンボス加工により凸部31を形成した後に、トップシート接合部80を形成するのであれば、上記3ロールの加工設備でなくても良い。また、図示例では、押し込みロール90と凹ロール91とが噛み合う位置に直接的にトップシート22となる不織布を送り込んでいるが、押し込みロール90の周面の接線方向から押し込みロール90にのみ巻き付けるようにトップシート22となる不織布を送り込み、そのまま凹ロール91との間に挟んだ後に、凹ロール91の周面に移すように案内しても良い。
【0063】
また、図示形態のような吸収体23を厚さ方向に貫通するスリット40に代えて、表側から裏側に窪む凹部を設ける形態としても、同様の利点を有するものとなる。このような凹部はエンボス加工のように吸収体を部分的に圧縮することにより形成する他、素材を部分的に低目付とすることにより形成することもできる。ただし、スリット40の方が幅方向に潰れやすいため、本発明を適用するのに適している。
【0064】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下
の意味を有するものである。
・「前後(縦)方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「
幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾
燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験
室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を
相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお
、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量に
なった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、2
00mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し
、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・
図10〜
図20に示されるトップシート22及び中間シート25の「厚み」は
見かけの厚みを意味し、特許第特許3611838号公報の段落[0017]記載
の方法により測定する。すなわち、測定に際しては、トップシート22及び中間シ
ート25を接合した状態で、縦30mm×横30mmの測定片を切り出す。そして
、縦方向〔トップシート22を構成する不織布(繊維集合体)の繊維配向方向(不
織布製造時の流れ方向)〕にほぼ平行でかつトップシート接合部80を通る線で切
断面を作る。この切断面の拡大写真をキーエンス社製のデジタルマイクロスコープ
VHX−1000等を用いて撮影し、この拡大写真に基づいてトップシート22の
見かけの最大厚みを求め、これをトップシート22の厚みとし、そのトップシート
22の最大厚みの測定部位において、中間シート25の見かけの厚みを測定し、こ
れを中間シート25の厚みとする。また、他の部位の厚み(トップシート接合部8
0の厚みや、圧縮部81の厚み等)、並びに凸部31の高さ31z等、断面方向の
寸法は、トップシート及び中間シートの「厚み」の測定と同様にして、凸部の底部
から頂部までの隆起高さを測定する。
・吸収体の「厚み」は、株式会社尾崎製作所の厚み測定器(ピーコック、ダイヤ
ルシックネスゲージ大型タイプ、型式J−B(測定範囲0〜35mm)又は型式K
−4(測定範囲0〜50mm))を用い、試料と厚み測定器を水平にして、測定す
る。
・上記以外の「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プ
ログラム)を用い、荷重:
0.098N/cm
2、及び加圧面積:2cm
2の条件
下で自動測定する。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、
標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置
内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸
法を意味する。