特許第6198102号(P6198102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198102
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20170911BHJP
   G10B 3/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   G10H1/32 Z
   G10B3/00 200
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-31613(P2013-31613)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-160219(P2014-160219A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】永妻 成之
【審査官】 菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−314434(JP,A)
【文献】 特開2010−266790(JP,A)
【文献】 特開2010−286633(JP,A)
【文献】 特開2008−185763(JP,A)
【文献】 特開2013−242369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10B 1/00− 3/22
G10C 1/00− 5/00
G10H 1/00− 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部側が上方に開放された楽器ケースと、
この楽器ケース内に配置されると共に、並列に配列された複数の鍵が前記楽器ケースの前部上側に露呈された鍵盤部と、
この鍵盤部の後部下側に位置する前記楽器ケースの底部に配置されたスピーカと、
複数の蓋部が折り曲げ可能に連結され、前記鍵盤部の上側に配置されて前記鍵盤部を覆い、かつ前記複数の蓋部が折り曲げられた状態で前記楽器ケース内の後部に収納される鍵盤蓋と、
この鍵盤蓋の前記複数の蓋部が互いに対向する端部の一方に設けられ、前記スピーカからの音を通過させるための放音切欠き部と、
前記複数の蓋部が互いに対向する前記端部の他方に設けられ、前記鍵盤蓋が前記鍵盤部の上側に配置された際に前記放音切欠き部を塞ぎ、かつ前記鍵盤蓋が折り曲げられて前記楽器ケース内に収納された際に前記放音切欠き部を開放する開閉部材と、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
請求項1に記載の鍵盤楽器において、前記スピーカで発生した音を、前記楽器ケースの外へ放音するための放音孔を前記楽器ケースの上部に位置する天板に設けたことを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項3】
求項2に記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋が前記鍵盤部の上側に配置された際に、前記複数の蓋部を平板状に配置し、前記鍵盤蓋が前記楽器ケース内に収納された際に、前記複数の蓋部を前記楽器ケースの上部に位置する前記天板と前記楽器ケースの後部に位置する背面板とに沿って折り曲げる蓋ガイド部を備えていることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記放音切欠き部は、前記複数の蓋部が互いに対向する前記端部における前記楽器ケースの前部側に位置する前記蓋部の端部に設けられており、前記開閉部材は、前記複数の蓋部が互いに対向する前記端部における前記楽器ケースの後部側に位置する前記蓋部の端部に、この端部が位置する前記蓋部の上面と同一平面上で、前記楽器ケースの前部側に位置する前記蓋部側に向けて突出して設けられていることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記スピーカは、前記楽器ケースの前記底部の下面に上向きに取り付けられ、前記底部に設けられたスピーカ孔から前記楽器ケース内に音を放音することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項6】
鍵盤部と、
前記鍵盤部の後部下側に配置されたスピーカと、
複数の蓋部が折り曲げ可能に連結され、前記鍵盤部の上側に配置された際に前記鍵盤部を覆い、かつ前記複数の蓋部が折り曲げられた状態で楽器ケース内の後部に収納される鍵盤蓋と、
を備え、
前記鍵盤蓋は、
前記複数の蓋部が互いに対向する端部の一方に設けられ、前記スピーカからの音を通過させるための放音切欠き部と、
前記複数の蓋部が互いに対向する前記端部の他方に設けられ、前記鍵盤部の上側に配置された際に前記放音切欠き部を塞ぎ、かつ折り曲げられて前記楽器ケース内に収納された際に前記放音切欠き部を開放する開閉部材と、
を含むことを特徴とする鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、前部側が上方に開放された楽器ケース内に鍵盤部を設けると共に、この鍵盤部を覆う鍵盤蓋を開閉可能に設け、この楽器ケースの下面にスピーカを上向きに取り付け、このスピーカで発生した音を楽器ケース内から楽器ケースの前側に向けて放音するように構成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−28034号公報
【0004】
このような電子鍵盤楽器における鍵盤部は、楽器ケース内に配置された鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に上下方向に回転可能な状態で並列に配列された複数の鍵とを備え、この複数の鍵の各隙間を通してスピーカの音が楽器ケースの前側に向けて放音されるように構成されている。
【0005】
また、鍵盤蓋は、前蓋と後蓋とが蝶番で折り曲げ可能に連結され、蓋ガイド部によってガイドされるように構成されている。この場合、蓋ガイド部は、鍵盤蓋が鍵盤部を上側に開放した際に、前蓋と後蓋とを蝶番で折り曲げて、後蓋を鍵盤部の後部に接近させた状態で配置させるように構成されている。
【0006】
これにより、この電子鍵盤楽器では、鍵盤蓋が鍵盤部を上側に開放した際に、前蓋が楽器ケースの上部に僅かな隙間をもって接近すると共に、後蓋が楽器ケースの後部に僅かな隙間をもって接近し、これらの隙間を通してスピーカの音が楽器ケースの前側に向けて放音されるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような電子鍵盤楽器では、スピーカで発生した音が楽器ケースの内部を通して楽器ケースの前側に向けて放音される際に、鍵盤部における複数の鍵の各隙間、および後蓋と楽器ケースの後部との僅かな隙間、並びに前蓋と楽器ケースの上部との僅かな隙間を通して、スピーカの音が楽器ケースの前側に向けて放音される構成であるから、スピーカの音を効率良く、かつ良好に放音させることができないという問題がある。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、スピーカの音を効率良く、かつ良好に放音させることができる鍵盤楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前部側が上方に開放された楽器ケースと、この楽器ケース内に配置されると共に、並列に配列された複数の鍵が前記楽器ケースの前部上側に露呈された鍵盤部と、この鍵盤部の後部下側に位置する前記楽器ケースの底部に配置されたスピーカと、複数の蓋部が折り曲げ可能に連結され、前記鍵盤部の上側に配置されて前記鍵盤部を覆い、かつ前記複数の蓋部が折り曲げられた状態で前記楽器ケース内の後部に収納される鍵盤蓋と、この鍵盤蓋の前記複数の蓋部が互いに対向する端部の一方に設けられ、前記スピーカからの音を通過させるための放音切欠き部と、前記複数の蓋部が互いに対向する前記端部の他方に設けられ、前記鍵盤蓋が前記鍵盤部の上側に配置された際に前記放音切欠き部を塞ぎ、かつ前記鍵盤蓋が折り曲げられて前記楽器ケース内に収納された際に前記放音切欠き部を開放する開閉部材と、を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、鍵盤蓋が鍵盤部を開放させて楽器ケース内の後部に収納された際に、複数の蓋部が折り曲げられて、開閉部材が放音切欠き部を開放させることができ、この状態でスピーカから音を発生させると、その音を開放された放音切欠き部から楽器ケースの外部に確実に導くことができ、これによりスピーカの音を良好に楽器ケースの外部に放音させることができるので、楽器ケースの奥行きが短くても、スピーカの音を効率良く、かつ良好に放音させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態において、鍵盤蓋を閉じた状態を示した断面図である。
図2図1に示された電子鍵盤楽器において、鍵盤蓋を開いて楽器ケース内の後部に折り曲げて収納した状態を示した断面図である。
図3図1に示された電子鍵盤楽器の鍵盤蓋において、前蓋と後蓋とを分解して示した要部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図3を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1および図2に示すように、楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、前側上部(図1では左側上部)が開放された横長のほぼ箱形状に形成されている。
【0013】
すなわち、この楽器ケース1は、図1および図2に示すように、底板2と、この底板2の前端部(図1では左端部)に起立して設けられた前板3と、底板2の後端部(図1では右端部)に起立して設けられた背面板4と、底板2の左右両側部(図1では紙面の表裏面の両側部)に起立して設けられた一対の側板5と、この一対の側板および背面板4の上部に配置された天板6とを備えている。
【0014】
この場合、前板3は、図1および図2に示すように、背面板4の高さのほぼ半分程度の高さで形成されている。また、一対の側板5は、楽器全体を支持する脚部を兼ねるものであり、底板2の下側に延設されている。この一対の側板5は、その前端部が前板3よりも少し高く形成され、前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部から後部側が背面板4と同じ高さで形成され、前端部から中間部に向けて後部上がりに傾斜する傾斜部に形成されている。
【0015】
天板6は、図1および図2に示すように、一対の側板5の後部側の上部と背面板4の上部とに配置されている。この天板6の中央部には、第1放音孔7が上下に貫通して設けられている。また、この天板6の上面には、第1放音孔7を塞ぐ閉塞蓋27が蝶番28によって開閉可能に設けられている。これにより、楽器ケース1は、一対の側板5の各傾斜部に対応する前部側が上方に開放された横長のほぼ箱形状に形成されている。
【0016】
この楽器ケース1内には、図1および図2に示すように、鍵盤部8が設けられている。この鍵盤部8は、楽器ケース1の底板2上に配置された鍵盤シャーシ10と、この鍵盤シャーシ10上に上下方向に回転可能な状態で並列に配列された複数の鍵11とを備えている。この鍵盤部8は、複数の鍵11が楽器ケース1の前部側から上方に露呈した状態で、押鍵操作されるように構成されている。この場合、楽器ケース1内には、コンソールパネル9が鍵盤部8の後部に位置する上側から後側上方に向けて傾斜して設けられている。
【0017】
また、この楽器ケース1の底板2の下面には、図1および図2に示すように、スピーカ12が鍵盤部8の後部側に位置した状態で、上向きに設けられている。この場合、スピーカ12に対応する箇所における楽器ケース1の底板2には、スピーカ12で発生した楽音を楽器ケース1内に取り込むための第2放音孔13が、上下に貫通して設けられている。また、この底板2には、スピーカ12を保護する保護カバー14が設けられている。
【0018】
一方、楽器ケース1内には、図1および図2に示すように、鍵盤部8の上側を覆う鍵盤蓋15が蓋ガイド部16によって開閉可能に設けられている。この鍵盤蓋15は、前蓋17と後蓋18とを有し、この前蓋17と後蓋18とが蝶番19によって折り曲げ可能に連結された構成になっている。
【0019】
この場合、前蓋17の前端部には、図1および図2に示すように、一対の側板5の各内面に向けて突出するガイド軸17aが支持脚17bを介して設けられている。また、後蓋18の前端部には、一対の側板5の各内面に向けて突出するガイド軸18aが支持脚18bを介して設けられている。この後蓋18の後端部には、軸取付部18cが取り付けられている。
【0020】
蓋ガイド部16は、図1および図2に示すように、鍵盤蓋15が鍵盤部8の上側を覆った際に前蓋17と後蓋18とをほぼ平板状に配置させ、かつ鍵盤蓋15が鍵盤部8を上側に開放して楽器ケース1内の後部側に収納された際に前蓋17と後蓋18とを蝶番19で折り曲げて、前蓋17を天板6の下面に接近させ、かつ後蓋18を背面板4に接近させた状態で配置させるように構成されている。
【0021】
すなわち、この蓋ガイド部16は、図1および図2に示すように、ガイドレール部20とガイド部材21とを有している。ガイドレール部20は、一対の側板5の内面に前板3の上側からコンソールパネル9の上側を経て背面板4に向けて斜め上方に傾斜して設けられている。このガイドレール部20は、鍵盤蓋15の前蓋17のガイド軸17aと後蓋18のガイド軸18aとをそれぞれガイドするように構成されている。
【0022】
これにより、ガイドレール部20は、図1に示すように、前蓋17と後蓋18とが鍵盤部8の上側を覆った際に、前蓋17のガイド軸17aをガイドレール部20の前端部で支持し、かつ後蓋18のガイド軸18aをガイドレール部20における鍵盤部8のほぼ中間部に対応する箇所で支持し、この状態で前蓋17と後蓋18とを前下りに傾斜させた状態で平板状に配置させるように構成されている。
【0023】
また、このガイドレール部20は、図2に示すように、鍵盤蓋15が鍵盤部8を上側に開放して楽器ケース1内の後部側に収納された際に、前蓋17のガイド軸17aをガイドレール部20における天板6の前端部の下側に対応する箇所で支持し、かつ後蓋18のガイド軸18aをガイドレール部20の後端部で支持し、この状態で前蓋17を天板7の下側に接近させて配置させ、かつ後蓋18を前蓋17に対して蝶番19で折り曲げて、背面板4に接近させて垂下させるように構成されている。
【0024】
一方、ガイド部材21は、図1および図2に示すように、鍵盤部8の後端部の上部付近に位置する箇所の側板5の内面に設けられた支持軸22と、この支持軸22に回転自在に取り付けられたアーム部23と、このアーム部23の先端と後蓋18の軸取付部18cとを回転可能に連結する連結軸24とを備えている。このガイド部材21は、支持軸22を中心にアーム部23が上下方向に回転して、連結軸24を上下方向に回転移動させることにより、後蓋18の後端部をガイドレール部20に対応する上部と鍵盤部8の後側下部との間で上下方向に移動させるように構成されている。
【0025】
これにより、蓋ガイド部16は、図1に示すように、鍵盤蓋15の前蓋17と後蓋18とが鍵盤部8の上側を覆って閉じた際に、前蓋17のガイド軸17aをガイドレール部20の前端部に位置させ、後蓋18のガイド軸18aをガイドレール部20における鍵盤部8のほぼ中間部に対応する箇所に位置させ、この状態でガイド部材21のアーム部23が支持軸22を中心に反時計回りに回転して起立することにより、後蓋18の後端部に位置する連結軸24をガイドレール部20に対応する位置に支持して、前蓋17と後蓋18とを前下がりに傾斜させた状態で平板状に配置するように構成されている。
【0026】
また、この蓋ガイド部16は、図2に示すように、鍵盤蓋15が開いて鍵盤部8を上側に開放して楽器ケース1内の後部側に収納された際に、前蓋17と後蓋18とを蝶番19で折り曲げ、前蓋17のガイド軸17aをガイドレール部20における天板6の前端部の下側に対応する箇所に位置させ、後蓋18のガイド軸18aをガイドレール部20の後端部に位置させ、この状態でガイド部材21のアーム部23が支持軸22を中心に時計回りに回転して垂下することにより、後蓋18の後端部に位置する連結軸24を鍵盤部8の下部後方に支持するように構成されている。
【0027】
ところで、鍵盤蓋15の前蓋17と後蓋18とが互いに対向する各端部15a、15bのうち、一方の端部15aには、図1図3に示すように、放音切欠き部25が設けられており、他方の端部15bには、これに対向する放音切欠き部25を開閉可能に塞ぐ開閉部材26が設けられている。すなわち、放音切欠き部25は、前蓋17と後蓋18とにおける互いに対向する各端部15a、15bのうち、楽器ケース1の前部側に位置する前蓋17の端部15aに設けられている。
【0028】
また、開閉部材26は、図1図3に示すように、前蓋17と後蓋18とにおける互いに対向する各端部15a、15bのうち、楽器ケース1の後部側に位置する後蓋18の端部15bに、この端部15bが位置する後蓋18の上面と同一平面上で、図1において楽器ケース1の前部側に位置する前蓋17に向けて突出して設けられている。この場合、開閉部材26は、ゴムシートなどの弾性シートで形成されていることが望ましいが、金属板で形成されていても良い。
【0029】
これにより、この開閉部材26は、図1および図3に示すように、鍵盤蓋15が鍵盤部8の上側に配置されて覆われた際に、前蓋17と後蓋18とが前下がりに傾斜した平板状に配置されると、互いに対向する端部15a、15bが蝶番19を中心に回転して互いに接近し、前蓋17の上面と後蓋18の上面とが同一平面になることにより、前蓋17の放音切欠き部25に上側から接近して放音切欠き部25を塞ぐように構成されている。
【0030】
また、この開閉部材26は、図2に示すように、鍵盤蓋15が折り曲げられて楽器ケース1内の後部側に収納された際に、前蓋17と後蓋18とが蝶番19で折り曲げられると、互いに対向する端部15a、15bが蝶番19を中心に回転して離れ、後蓋18の上面が前蓋17の上面に対してほぼ直角になることにより、前蓋17の放音切欠き部25から上方に離れて放音切欠き部25を開放するように構成されている。
【0031】
次に、このような電子鍵盤楽器の作用について説明する。
この電子鍵盤楽器で演奏をする場合には、まず、鍵盤蓋15を開いて鍵盤部8を上側に開放させる。このときには、前蓋17の前端部を持ち上げて後方に向けて移動させると、前蓋17のガイド軸17aと後蓋18のガイド軸18aとがガイドレール部20に沿って移動すると共に、ガイド部材21のアーム部23が支持軸22を中心に時計回りに回転して、前蓋17と後蓋18とが蝶番19で徐々に折れ曲がりながら、後蓋18の後部が鍵盤部8の下部後方に移動する。
【0032】
そして、前蓋17のガイド軸17aが天板6の前端部の下側に位置するガイドレール部20の箇所に位置し、後蓋18のガイド軸18aがガイドレール部20の後端部に位置し、この後蓋18の後端部に位置する軸取付部18cの連結軸24が鍵盤部8の下部後方に位置すると、前蓋17が天板7の下側に接近して配置され、かつ後蓋18が前蓋17に対して蝶番19で折り曲げられて、背面板4に接近して垂下される。
【0033】
このときには、前蓋17と後蓋18とが蝶番19を中心に回転して折れ曲がることにより、前蓋17と後蓋18との互いに対向する端部15a、15bが蝶番19を中心に回転して互いに離れるので、後蓋18の端部15bに設けられた開閉部材26が前蓋17の放音切欠き部25から離れて放音切欠き部25を開放する。
【0034】
この状態では、鍵盤部8が上方に開放されて複数の鍵11が上側に露呈するので、演奏が可能な状態になる。この状態で、演奏する前には、まず、天板6の閉塞蓋27を開いて第1放音孔7を開放する。そして、鍵盤部8の複数の鍵11を押鍵操作して演奏すると、その押鍵操作に応じた楽音をスピーカ12が発生する。
【0035】
すると、スピーカ12で発生した楽音のうち、高音側の音は、楽器ケース1の底板2に設けられた第2放音孔13から楽器ケース1内に向けて放音される。また、低音側の音は、楽器ケース1の下側に向けて放音される。この場合、楽器ケース1内に向けて放音された高音側の音は、図2に矢印Aで示すように、鍵盤蓋15の放音切欠き部25を通して天板6の第1放音孔7に導かれる。この導かれた高音側の音は、天板6の第1放音孔7から楽器ケース1の上側に放音され、この放音された音が閉塞蓋27によって楽器ケース1の前側に向けて放音される。
【0036】
また、このときには、図2に矢印Bで示すように、高音側の音が鍵盤蓋15の後部上から後右方に向けて傾斜して配置されたコンソールパネル9を通って楽器ケース1の前側に向けて放音される。さらに、このときには、図2に矢印Cで示すように、楽器ケース1内に向けて放音された高音側の音が鍵盤蓋15の後蓋18の下側から鍵盤シャーシ1内を通って複数の鍵11の各隙間から楽器ケース1の前側に向けて放音される。これらによって、スピーカ12で発生した楽音が効率良く良好に楽器ケース1から放音される。
【0037】
一方、演奏を行わないときには、鍵盤蓋15を閉じて鍵盤部8を覆うと共に、閉塞蓋30を閉じて天板6の第1放音孔7を塞ぐ。このときには、鍵盤蓋15の前蓋17の前端部を楽器ケース1の前側に向けて引き出すと、前蓋17のガイド軸17aと後蓋18のガイド軸18aがガイドレール部20に沿って移動すると共に、ガイド部材21のアーム部23が支持軸22を中心に反時計回りに回転し、前蓋17と後蓋18とが蝶番19で徐々に折れ曲がりながら、後蓋18の後端部がガイドレール部20に対応する箇所に移動する。
【0038】
そして、前蓋17のガイド軸17aが楽器ケース1の前板3上に位置するガイドレール部20の前端部に位置し、後蓋18のガイド軸18aがガイドレール部20の中間部に位置し、後蓋18の後端部に位置する軸取付部18cの連結軸24がガイドレール部20に対応する箇所に位置すると、前蓋17と後蓋18とが前下がりに傾斜した状態で平板状に配置される。
【0039】
これにより、鍵盤部8が前蓋17と後蓋18とによって覆われる。このときには、前蓋17と後蓋18とが蝶番19を中心に回転して各端部15a、15bが互いに接近するので、開閉部材26が前蓋17の放音切欠き部25上に接近して放音切欠き部25を塞ぐ。これにより、放音切欠き部25から楽器ケース1内への塵埃の侵入を防ぐ。そして、閉塞蓋30を閉じて天板6の第1放音孔7を塞ぐ。これによっても、第1放音孔7から楽器ケース1内への塵埃の侵入を防ぐ。
【0040】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、鍵盤部8が前部上側に露呈されて配置された楽器ケース1と、鍵盤部8の後部側に位置する楽器ケース1の底板2に配置されたスピーカ12と、楽器ケース1の上部に位置する天板6に設けられた第1放音孔7と、前蓋17および後蓋18が折り曲げ可能に連結されて、鍵盤部8の上側に配置され、かつ前蓋17および後蓋18が折り曲げられた状態で楽器ケース1内に収納される鍵盤蓋15と、この鍵盤蓋15の前蓋17および後蓋18が互いに対向する各端部15a、15bのうち、前蓋17の端部15aに設けられた放音切欠き部25と、後蓋18の端部15bに設けられ、鍵盤蓋15が鍵盤部8の上側に配置された際に放音切欠き部25を塞ぎ、かつ鍵盤蓋15が折り曲げられて楽器ケース1内に収納された際に放音切欠き部25を開放する開閉部材26と、を備えていることにより、スピーカ12の音を効率良く、かつ良好に放音させることができる。
【0041】
すなわち、この電子鍵盤楽器によれば、鍵盤蓋15が鍵盤部8を開放させて楽器ケース1内に収納された際に、前蓋17と後蓋18とが折り曲げられることにより、開閉部材26が放音切欠き部25から離れて放音切欠き部25を開放させることができる。このため、スピーカ12から音を発生させると、その音を開放された放音切欠き部25から楽器ケース1の天板6の第1放音孔7に確実に導くことがでる。これにより、スピーカ12の音を良好に楽器ケース1の外部に放音させることができるので、楽器ケース1の奥行きが短く、鍵盤部8の後端部から楽器ケース1の後端部との間が狭くても、スピーカ12の音を効率良く、かつ良好に放音させることができる。
【0042】
また、この電子鍵盤楽器では、鍵盤蓋15が鍵盤部8の上側に配置された際に、前蓋17と後蓋18とを平板状に配置し、鍵盤蓋15が楽器ケース1内に収納された際に、前蓋17と後蓋18とを楽器ケース1の上部に位置する天板6と楽器ケース1の後部に位置する背面板4とに沿って折り曲げる蓋ガイド部16を備えていることにより、鍵盤蓋15を閉じた際に、前蓋17と後蓋18とを鍵盤部8の上側に安定した状態で配置することができ、また鍵盤蓋15を楽器ケース1内に収納した際に、前蓋17と後蓋18とを確実にかつ良好に折り曲げて楽器ケース1内にコンパクトに配置することができる。
【0043】
この場合、放音切欠き部25は、前蓋17と後蓋18とが互いに対向する各端部15a、15bのうち、楽器ケース1の前部側に位置する前蓋17の端部15aに設けられており、開閉部材26は、放音切欠き部25に対向する後蓋18の端部15bに、後蓋18の上面と同一平面上で、前蓋17に向けて突出して設けられていることにより、鍵盤蓋15が閉じた際に、開閉部材26によって放音切欠き部25を確実にかつ良好に塞ぐことができ、また鍵盤蓋15が楽器ケース1内に収納された際に、開閉部材26が放音切欠き部25を確実にかつ良好に開放することができる。
【0044】
すなわち、この電子鍵盤楽器では、鍵盤蓋15が閉じて前蓋17と後蓋18とが鍵盤部8の上側に平面的に配置された際に、前蓋17と後蓋18との互いに対向する各端部15a、15bが接近して、前蓋17の上面と後蓋18の上面とが同一平面になるので、開閉部材26が前蓋17の上面に重なり、前蓋17の放音切欠き部25を確実に塞ぐことができる。これにより、放音切欠き部25から楽器ケース1内に塵埃が侵入するのを確実にかつ良好に防ぐことができる。
【0045】
また、この電子鍵盤楽器では、鍵盤蓋15が楽器ケース1内に収納されて、前蓋17と後蓋18とが折り曲げられた際に、前蓋17と後蓋18との互いに対向する各端部15a、15bが蝶番19を中心に回転して離れ、前蓋17の上面と後蓋18の上面とが回転方向に離れるので、開閉部材26が前蓋17の上面から離れ、前蓋17の放音切欠き部25を確実に開放することができる。これにより、スピーカ12の音を良好に通過させて天板6の第1放音孔7に導くことができる。
【0046】
この場合、開閉部材26は、ゴムシートなどの弾性シートで形成されていれば、前蓋17の放音切欠き部25を塞いだ際に、放音切欠き部25の周縁部に位置する前蓋17の上面に弾力的に密接させることができ、これにより、より一層、放音切欠き部25を確実にかつ良好に塞ぐことができると共に、前蓋17の上面を傷付けずに塞ぐことができる。
【0047】
また、この開閉部材26は、ゴムシートなどの弾性シートで形成されていることにより、鍵盤蓋15が蓋ガイド部16でガイドされる際に、開閉部材26の先端部が天板6の下面に接触しても、天板6の下面を傷付けることがなく、また鍵盤蓋15が楽器ケース1内に収納された際に、楽器ケース1の後の背面版4に当接しても、背面板4を傷付けることがなく、鍵盤蓋15を楽器ケース1内に良好に収納することができる。
【0048】
さらに、この電子鍵盤楽器では、スピーカ12が楽器ケース1の底板2の下面に上向きに取り付けられ、底板2に設けられた第2放音孔13から楽器ケース1内に音を放音することにより、スピーカ12で発生した楽音のうち、高音側の音を楽器ケース1の底板2に設けられた第2放音孔13から楽器ケース1内に向けて放音することができ、また低音側の音を楽器ケース1の下側に向けて放音することができるほか、鍵盤部8の後端部から楽器ケース1の後端部までの間を狭くして、楽器ケース1の奥行きを短くすることができ、これにより楽器ケース1全体をコンパクトに構成することができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、鍵盤蓋15が前蓋17と後蓋18との2つに分割されている場合について述べたが、これに限らず、鍵盤蓋15を3つ以上の蓋部に分割してそれぞれ折れ曲がり可能に連結した構成であっても良い。この場合には、分割された複数の蓋部の互いに対向する端部にそれぞれ放音切欠き部25および開閉部材26を設ければ良い。
【0050】
また、上述した実施形態では、スピーカ12を楽器ケース1の底板2の下面に上向きに設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば楽器ケース1の底板2の下面にスピーカ12を下向きに設けても良く、また楽器ケース1の内部にスピーカ12を上向きまたは下向きに設けても良い。
【0051】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0052】
(付記)
請求項1に記載の発明は、前部側が上方に開放された楽器ケースと、この楽器ケース内に配置されると共に、並列に配列された複数の鍵が前記楽器ケースの前部上側に露呈された鍵盤部と、この鍵盤部の後部下側に位置する前記楽器ケースの底部に配置されたスピーカと、複数の蓋部が折り曲げ可能に連結され、前記鍵盤部の上側に配置されて前記鍵盤部を覆い、かつ前記複数の蓋部が折り曲げられた状態で前記楽器ケース内の後部に収納される鍵盤蓋と、この鍵盤蓋の前記複数の蓋部が互いに対向する端部の一方に設けられ、前記スピーカからの音を通過させるための放音切欠き部と、前記複数の蓋部が互いに対向する前記端部の他方に設けられ、前記鍵盤蓋が前記鍵盤部の上側に配置された際に前記放音切欠き部を塞ぎ、かつ前記鍵盤蓋が折り曲げられて前記楽器ケース内に収納された際に前記放音切欠き部を開放する開閉部材と、を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0053】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器において、前記スピーカで発生した音を、前記楽器ケースの外へ放音するための放音孔を前記楽器ケースの上部に位置する天板に設けたことを特徴とする鍵盤楽器である。
【0054】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋が前記鍵盤部の上側に配置された際に、前記複数の蓋部を平板状に配置し、前記鍵盤蓋が前記楽器ケース内に収納された際に、前記複数の蓋部を前記楽器ケースの上部に位置する前記天板と前記楽器ケースの後部に位置する背面板とに沿って折り曲げる蓋ガイド部を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0055】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記放音切欠き部は、前記複数の蓋部が互いに対向する前記端部における前記楽器ケースの前部側に位置する前記蓋部の端部に設けられており、前記開閉部材は、前記複数の蓋部が互いに対向する前記端部における前記楽器ケースの後部側に位置する前記蓋部の端部に、この端部が位置する前記蓋部の上面と同一平面上で、前記楽器ケースの前部側に位置する前記蓋部側に向けて突出して設けられていることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0056】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記スピーカは、前記楽器ケースの前記底部の下面に上向きに取り付けられ、前記底部に設けられたスピーカ孔から前記楽器ケース内に音を放音することを特徴とする鍵盤楽器である。
【符号の説明】
【0057】
1 楽器ケース
2 底板
4 背面板
5 側板
6 天板
7 第1放音孔
8 鍵盤部
10 鍵盤シャーシ
11 鍵
12 スピーカ
13 第2放音孔
15 鍵盤蓋
15a、15b 端部
16 蓋ガイド部
17 前蓋
18 後蓋
19 蝶番
25 放音切欠き部
26 開閉部材

図1
図2
図3