【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決する手段に係る本発明のうち、加飾合成樹脂成形品の主たる構成は、成形品の表面にアンダーコート層を積層し、このアンダーコート層上に金属蒸着層を積層し、さらにトップクリアコート層を積層した加飾合成樹脂成形品において、
アンダーコート層は微粒子として
平均粒径が6〜50マイクロメートルの架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズを分散したアクリル系の紫外線硬化型のものとし、この微粒子によりアンダーコート層の上面に凹凸を形成し、この凹凸に沿って積層する金属蒸着層により成形品表面にシボ調の金属光沢が現出する、と云うものである。
【0009】
上記構成によれば、アンダーコート層に分散する微粒子
を平均粒径が6〜50マイクロメートルのものとし、微粒子の分散量を調整することによりアンダーコート層の上面にさまざまなバリエーションで、シボ加工状に凹凸を形成することができ、
そして、この凹凸に沿って他の層を介することなく、直接、薄膜である金属蒸着層が積層するため、アンダーコート層の上面に形成された凹凸形状が忠実に金属蒸着層の凹凸に引き継がれ、成形品の表面に、微細な凹凸も含めて、さまざまなバリエーションでシボ調の金属光沢を付与することが可能となる。
【0010】
また、上記構成では金型のキャビティ面を刻設加工することもないので、加飾目的に応じてシボの態様を容易に変更することが可能となる。
なお、上記構成、および以下の説明では、たとえば「アンダーコート層上」、「アンダーコート層の上面」と云うように「上」と云う用語を使用しているが、
これは加飾成形品を構成する各層の積層順を明確にするために、製品の外観を呈して、目に触れる側を「上側」と云う想定をして便宜上用いた用語である。
【0011】
アンダーコート層の上面の凹凸は、微粒子として
平均粒径が6〜50マイクロメートルの架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズを使用し、アンダーコート層をこの微粒子を分散したアクリル系の紫外線(UV)硬化型のコート液を成形品の表面に塗布した状態でUV硬化することで形成される。
【0012】
架橋ウレタンビーズ
又は架橋アクリルビーズは真球に近い球形で、平均粒径が6〜50マイクロメートルのものを市販品として利用することもでき、シボの態様を所望の凹凸深さで、高品位なものとすることができる。
なお、ウレタン系の微粒子は適宜の分散剤を使用することによりアクリル系のアンダーコート内に凝集することなく均一に分散することができる。
【0013】
本発明
の他の構成は、上記主たる構成において、トップクリアコート層にパール顔料
が分散
される、と云うものであり、
トップクリアコート層にパール顔料
が分散
されることにより、シボ調の金属光沢とパール調の色彩変化が相俟って今までにない加飾効果を付与することができる。
ここで、パール顔料には天然マイカの表面を酸化チタンや酸化鉄等の高屈折率金属酸化物で被覆した粉末状のもの(例えばMERCK社製の商品名「イリオジン」)を使用することができる。
またシリカフレークの表面を酸化チタンや酸化鉄等の高屈折率金属酸化物で被覆したもの(例えばMERCK社製の商品名「カラーストリーム」)は偏光パールとも称され、見る角度により色彩が変化する視覚効果が発揮される。
【0014】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、金属蒸着層とトップクリアコート層の間に透明性を有するミドルコート層を積層する、と云うものである。
【0015】
前述したようにトップクリアコート層にパール顔料を分散して、金属光沢にパール調の色彩変化を付与するような場合、パール顔料の種類によっては、トップクリアコート層中に分散するパール顔料が金属蒸着層に接触し、酸化等により金属蒸着層が部分的に変質して金属蒸着層に穴があく等の問題が生じる恐れがあるが、
上記構成にあるようにミドルコート層を積層することによりパール顔料と金属蒸着層の接触をなくしてこの種の金属蒸着層の腐食に係る問題を防止することが可能となる。
すなわち、ミドルコート層を積層することにより、トップクリアコート層には金属蒸着層の変質を考慮することなく上記したパール顔料も含めて、加飾目的に応じて高い自由度で顔料を適宜選択して分散することができる。
さらに、ミドルコート層に金属蒸着層の変質の恐れのない顔料を分散し、ミドルコート層とトップクリアコート層により、より変化に富んだ加飾態様とすることが可能となる。
【0016】
本発明のさらに他の構成は、上記構成において、ミドルコート層に偏光顔料
が分散
され、トップクリアコート層に
パール顔料を分散する、と云うものである。
【0017】
ミドルコート層に金属蒸着層を腐蝕する恐れのない偏光顔料を分散し、トップクリアコート層にはパール顔料を分散させて、偏光顔料とパール顔料による光学的な作用効果により、より高度な加飾性を付与することが可能となる。
ここで、偏光顔料は金属酸化物顔料の1種であり(例えば日本コレス社製の商品「ルミニスト」)黄色(ゴールド)調、あるいは青色調の偏光色が現出し、シボ調の金属光沢と上記偏光顔料による偏光色とパール調の色彩変化が相俟って今までにない加飾効果を付与することができる。
本発明のうち、加飾合成樹脂成形品の製造方法の主たる構成は、
成形品の表面にシボ調の金属光沢が現出する加飾合成樹脂成形品の製造方法であって、
成形品の表面に、微粒子として
平均粒径が6〜50マイクロメートルの架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズを分散したアクリル系の紫外線硬化型のコート液を塗布した状態で紫外線を照射し硬化させてアンダーコート層を積層すると共に、アンダーコート層の上面に微粒子による凹凸を形成し、
次いでアンダーコート層上に凹凸に沿って金属蒸着層を積層し、
さらにトップクリアコート層を積層する工程を有する、と云うものである。
上記構成によれば、アンダーコート層に分散する微粒子
を平均粒径が6〜50マイクロメートルのものとし、微粒子の分散量を調整することによりアンダーコート層の上面にさまざまなバリエーションで、シボ加工状に凹凸を形成することができ、そして、この凹凸に沿って他の層を介することなく、直接、薄膜である金属蒸着層を積層するため、アンダーコート層の上面に形成された凹凸形状が忠実に金属蒸着層の凹凸に引き継がれ、成形品の表面に、微細な凹凸も含めて、さまざまなバリエーションでシボ調の金属光沢を付与することが可能となる。
また、上記構成では金型のキャビティ面を刻設加工することもないので、加飾目的に応じてシボの態様を容易に変更することが可能となる。
そして、架橋ウレタンビーズや架橋アクリルビーズは真球に近い球形で、平均粒径が6〜50マイクロメートルのものを市販品として利用することもでき、シボの態様を所望の凹凸深さで、高品位なものとすることができる。なお、ウレタン系の微粒子は適宜の分散剤を使用することによりアクリル系のアンダーコート内に凝集することなく均一に分散することができる。