特許第6198112号(P6198112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198112
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】加飾合成樹脂成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20170911BHJP
   B44C 3/02 20060101ALI20170911BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20170911BHJP
   C23C 14/14 20060101ALN20170911BHJP
【FI】
   B32B15/08 H
   B44C3/02 Z
   B65D23/08 Z
   !C23C14/14 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-114826(P2013-114826)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-233850(P2014-233850A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 則明
(72)【発明者】
【氏名】立川 行雄
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−101124(JP,A)
【文献】 特開2007−136716(JP,A)
【文献】 特開平10−264284(JP,A)
【文献】 特開2009−241539(JP,A)
【文献】 特開2006−070255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品(1)の表面にアンダーコート層(2)を積層し、該アンダーコート層(2)上に金属蒸着層(3)を積層し、さらにトップクリアコート層(5)を積層した合成樹脂成形品において、アンダーコート層(2)は微粒子(2p)として平均粒径が6〜50マイクロメートルの架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズを分散したアクリル系の紫外線硬化型のものとし、該微粒子(2p)によりアンダーコート層(2)の上面に凹凸を形成し、該凹凸に沿って積層する金属蒸着層(3)により、成形品の表面にシボ調の金属光沢が現出することを特徴とする加飾合成樹脂成形品。
【請求項2】
トップクリアコート層(5)にパール顔料を分散した請求項1記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項3】
金属蒸着層(3)とトップクリアコート層(5)の間に透明性を有するミドルコート層(4)を積層した請求項1または2記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項4】
ミドルコート層(4)に偏光顔料を分散し、トップクリアコート層(5)にパール顔料を分散した請求項記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項5】
成形品の表面にシボ調の金属光沢が現出する加飾合成樹脂成形品の製造方法であって、
成形品(1)の表面に、微粒子(2p)として平均粒径が6〜50マイクロメートルの架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズを分散したアクリル系の紫外線硬化型のコート液を塗布した状態で紫外線を照射し硬化させてアンダーコート層(2)を積層すると共に、該アンダーコート層(2)の上面に前記微粒子(2p)による凹凸を形成し、
次いで前記アンダーコート層(2)上に前記凹凸に沿って金属蒸着層(3)を積層し、さらにトップクリアコート層(5)を積層する工程を有することを特徴とする加飾合成樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属蒸着層により表面に金属光沢を付与して加飾した合成樹脂成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージにおける装飾が商品力の大きな部分を占める化粧料用等の容器においては、塗装、印刷等によりさまざまな加飾性を発揮させて商品イメージを大きく向上させることが要望されている。
このような加飾性を付与する方法の一つとして、金属蒸着層を積層して成形品の表面を加飾する方法があり、金属光沢を付与することにより高級感を演出することができる。
【0003】
但し、鏡面状の表面性状を有する成形品の表面に金属蒸着層を積層すると、成形品の表面全域から鏡面状の金属光沢が現出されるが、加飾目的によって鏡面状だけではなく、シボ調の金属光沢を現出させること必要である。
特許文献1には成形品表面に、細かい凹凸を形成し、すなわち所謂、シボ加工を施してこの凹凸により、シボ調の金属光沢を付与する方法が記載されている。
図4は、この種の金属蒸着層を積層した加飾成形品の従来例についてその積層構造を示す断面図であり、図中、下から上に向かって、成形品101/アンダーコート層102/金属蒸着層103/トップクリアコート層105の順に積層したものである。
【0004】
ここで、成形品101表面に金属蒸着層103を積層する際には、成形品101の表面と金属蒸着層103との密着性を長期に亘って強固に保持するため、成形品101の表面に、アクリル系等の紫外線硬化型のコート液を塗布、乾燥、硬化して、アンダーコート層102を積層し、このアンダーコート層102上に金属蒸着層103を積層する必要がある。
そうすると、上記した特許文献1に記載される成形品表面をシボ加工する方法では、紫外線硬化前のコート液は比較的低粘度であることもあり、コート液の上面は平坦化し易く、成形品101の表面に形成した凹凸Paが、アンダーコート層102の上面では凹凸Pbのようになだらかになってしまい、金属蒸着層103に凹凸が十分に現出しない、また細かい凹凸を現出することが難しい等の問題がある。
【0005】
また、上記のような成形品の表面をシボ加工する方法では、成形品を使用する際に使用する金型のキャビティ面に凹凸を刻設加工する必要があり、異なる態様の凹凸形状を有するシボ加工をしたい場合には高価な金型を別途、準備する必要があり、現実的には凹凸の態様を加飾目的に応じて適宜に変更することは難しくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−12630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、金型のキャビティ面にシボ加工を施すことなく、成形品の表面に、金属蒸着によりさまざまなバリエーションでシボ調の金属光沢を付与することを技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決する手段に係る本発明のうち、加飾合成樹脂成形品の主たる構成は、成形品の表面にアンダーコート層を積層し、このアンダーコート層上に金属蒸着層を積層し、さらにトップクリアコート層を積層した加飾合成樹脂成形品において、
アンダーコート層は微粒子として平均粒径が6〜50マイクロメートルの架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズを分散したアクリル系の紫外線硬化型のものとし、この微粒子によりアンダーコート層の上面に凹凸を形成し、この凹凸に沿って積層する金属蒸着層により成形品表面にシボ調の金属光沢が現出する、と云うものである。
【0009】
上記構成によれば、アンダーコート層に分散する微粒子を平均粒径が6〜50マイクロメートルのものとし、微粒子の分散量を調整することによりアンダーコート層の上面にさまざまなバリエーションで、シボ加工状に凹凸を形成することができ、
そして、この凹凸に沿って他の層を介することなく、直接、薄膜である金属蒸着層が積層するため、アンダーコート層の上面に形成された凹凸形状が忠実に金属蒸着層の凹凸に引き継がれ、成形品の表面に、微細な凹凸も含めて、さまざまなバリエーションでシボ調の金属光沢を付与することが可能となる。
【0010】
また、上記構成では金型のキャビティ面を刻設加工することもないので、加飾目的に応じてシボの態様を容易に変更することが可能となる。
なお、上記構成、および以下の説明では、たとえば「アンダーコート層上」、「アンダーコート層の上面」と云うように「上」と云う用語を使用しているが、
これは加飾成形品を構成する各層の積層順を明確にするために、製品の外観を呈して、目に触れる側を「上側」と云う想定をして便宜上用いた用語である。
【0011】
アンダーコート層の上面の凹凸は、微粒子として平均粒径が6〜50マイクロメートルの架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズを使用し、アンダーコート層をこの微粒子を分散したアクリル系の紫外線(UV)硬化型のコート液を成形品の表面に塗布した状態でUV硬化することで形成される。
【0012】
架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズは真球に近い球形で、平均粒径が6〜50マイクロメートルのものを市販品として利用することもでき、シボの態様を所望の凹凸深さで、高品位なものとすることができる。
なお、ウレタン系の微粒子は適宜の分散剤を使用することによりアクリル系のアンダーコート内に凝集することなく均一に分散することができる。
【0013】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、トップクリアコート層にパール顔料分散される、と云うものであり、トップクリアコート層にパール顔料分散されることにより、シボ調の金属光沢とパール調の色彩変化が相俟って今までにない加飾効果を付与することができる。
ここで、パール顔料には天然マイカの表面を酸化チタンや酸化鉄等の高屈折率金属酸化物で被覆した粉末状のもの(例えばMERCK社製の商品名「イリオジン」)を使用することができる。
またシリカフレークの表面を酸化チタンや酸化鉄等の高屈折率金属酸化物で被覆したもの(例えばMERCK社製の商品名「カラーストリーム」)は偏光パールとも称され、見る角度により色彩が変化する視覚効果が発揮される。
【0014】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、金属蒸着層とトップクリアコート層の間に透明性を有するミドルコート層を積層する、と云うものである。
【0015】
前述したようにトップクリアコート層にパール顔料を分散して、金属光沢にパール調の色彩変化を付与するような場合、パール顔料の種類によっては、トップクリアコート層中に分散するパール顔料が金属蒸着層に接触し、酸化等により金属蒸着層が部分的に変質して金属蒸着層に穴があく等の問題が生じる恐れがあるが、
上記構成にあるようにミドルコート層を積層することによりパール顔料と金属蒸着層の接触をなくしてこの種の金属蒸着層の腐食に係る問題を防止することが可能となる。
すなわち、ミドルコート層を積層することにより、トップクリアコート層には金属蒸着層の変質を考慮することなく上記したパール顔料も含めて、加飾目的に応じて高い自由度で顔料を適宜選択して分散することができる。
さらに、ミドルコート層に金属蒸着層の変質の恐れのない顔料を分散し、ミドルコート層とトップクリアコート層により、より変化に富んだ加飾態様とすることが可能となる。
【0016】
本発明のさらに他の構成は、上記構成において、ミドルコート層に偏光顔料分散され、トップクリアコート層にパール顔料を分散する、と云うものである。
【0017】
ミドルコート層に金属蒸着層を腐蝕する恐れのない偏光顔料を分散し、トップクリアコート層にはパール顔料を分散させて、偏光顔料とパール顔料による光学的な作用効果により、より高度な加飾性を付与することが可能となる。
ここで、偏光顔料は金属酸化物顔料の1種であり(例えば日本コレス社製の商品「ルミニスト」)黄色(ゴールド)調、あるいは青色調の偏光色が現出し、シボ調の金属光沢と上記偏光顔料による偏光色とパール調の色彩変化が相俟って今までにない加飾効果を付与することができる。
本発明のうち、加飾合成樹脂成形品の製造方法の主たる構成は、
成形品の表面にシボ調の金属光沢が現出する加飾合成樹脂成形品の製造方法であって、
成形品の表面に、微粒子として平均粒径が6〜50マイクロメートルの架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズを分散したアクリル系の紫外線硬化型のコート液を塗布した状態で紫外線を照射し硬化させてアンダーコート層を積層すると共に、アンダーコート層の上面に微粒子による凹凸を形成し、
次いでアンダーコート層上に凹凸に沿って金属蒸着層を積層し、
さらにトップクリアコート層を積層する工程を有する、と云うものである。
上記構成によれば、アンダーコート層に分散する微粒子を平均粒径が6〜50マイクロメートルのものとし、微粒子の分散量を調整することによりアンダーコート層の上面にさまざまなバリエーションで、シボ加工状に凹凸を形成することができ、そして、この凹凸に沿って他の層を介することなく、直接、薄膜である金属蒸着層を積層するため、アンダーコート層の上面に形成された凹凸形状が忠実に金属蒸着層の凹凸に引き継がれ、成形品の表面に、微細な凹凸も含めて、さまざまなバリエーションでシボ調の金属光沢を付与することが可能となる。
また、上記構成では金型のキャビティ面を刻設加工することもないので、加飾目的に応じてシボの態様を容易に変更することが可能となる。
そして、架橋ウレタンビーズや架橋アクリルビーズは真球に近い球形で、平均粒径が6〜50マイクロメートルのものを市販品として利用することもでき、シボの態様を所望の凹凸深さで、高品位なものとすることができる。なお、ウレタン系の微粒子は適宜の分散剤を使用することによりアクリル系のアンダーコート内に凝集することなく均一に分散することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の加飾合成樹脂成形品及びその製造方法は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明の主たる構成を有するものにあっては、アクリル系の紫外線硬化型のアンダーコート層に分散する微粒子として、平均粒径が6〜50マイクロメートルの架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズを使用し、微粒子の分散量を調整することによりアンダーコート層の上面にさまざまなバリエーションで、シボ加工状に凹凸を形成することができ、この凹凸に沿って他の層を介することなく、直接、薄膜である金属蒸着層が積層するため、アンダーコート層の上面に形成された凹凸形状が忠実に金属蒸着層の凹凸に引き継がれ、成形品の表面に、微細な凹凸も含めて、さまざまなバリエーションでシボ調の金属光沢を付与することができる。
また、上記構成では金型のキャビティ面を刻設加工することもないので、加飾目的に応じてシボの態様を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の加飾成形品の一実施例についてその積層構造を示す断面図である。
図2図1の加飾成形品の表面の凹凸状態を観察した顕微鏡写真である。
図3】本発明の加飾成形品の他の実施例についてその積層構造を示す断面図である。
図4】金属蒸着層により加飾した成形品の従来例についてその積層構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の加飾合成樹脂成形品の一実施例についての積層構造を示す断面図であり、この層構成は図中、下から上に向かって、成形品1/アンダーコート層2/金属蒸着層3/トップクリアコート層5の順に積層したものである。
ここで、アンダーコート層2は成形品1の表面と金属蒸着層3の密着力を強固に保持するためのものであり、トップクリアコート層5は金属蒸着層3の傷付き、剥離、腐食等を防止する機能を発揮する。
【0021】
以下、上記層構成にについて、その形成工程も含めてその詳細を説明する。
アンダーコート層2は微粒子2pとして平均粒径が15マイクロメートルの架橋ウレタンビーズ(例えば、根上工業株式会社製ウレタンビーズC−400)分散させたアクリル系のUV硬化型のコート液を成形品1の表面に塗布してUV硬化したものである。
そして、UV硬化後では図1に示されるように、アンダーコート層2の上面に分散している微粒子2pにより凹凸Pが形成され、全体としてドット状のシボ模様が形成されている。
ここで図2図1の加飾成形品の表面の凹凸状態を観察した顕微鏡写真であるが、最大で直径が70マイクロメートル程度の凸状形状が観察される。
【0022】
次に、この凹凸Pが形成されているアンダーコート層2の上面に、金属としてアルミニウムを使用した蒸着法により金属蒸着層3を積層するが、この金属蒸着層3の層厚さは0.06〜0.1マイクロメートル程度であり、アンダーコート層2の上面に形成された凹凸Pの形状が忠実に金属蒸着層3の凹凸に引き継がれ、成形品1の表面にシボ調の金属光沢が現出する。
【0023】
そして、最後に金属蒸着層3の傷付き、剥離等を防止する機能を発揮するトップクリアコート層5を積層するが、このトップクリアコート層5はアクリル系の紫外線(UV)硬化型のコート液を成形品1の表面に塗布してUV硬化したもので、その層厚は5〜10マイクロメートル程度である。
ここで、本実施例ではトップクリアコート層5の上面にも、凹凸がなだらかになってはいるが、シボ模様状に凹凸を残しており、トップクリアコート層5表面での反光の反射を緩和するようにしている。
【0024】
ここで、図1に示す層構成は、本発明の加飾合成樹脂成形品の基本的な層構成を示すものであるが、この基本的な層構成をベースにして、さまざまなバリエーションの加飾態様とすることができる。
たとえば、トップクリアコート層5により次のようなバリエーションを付与することができる。
1)トップクリアコート層5を着色透明にし、着色した状態で金属光沢を現出する。
2)トップクリアコート層5にパール顔料を分散して、金属光沢にパール調の色彩変化を付与する。
3)トップクリアコート層5の上面に印刷層による、文字、模様を付加する。
4)トップクリアコート層5の上面にホットスタンプ法により表面が鏡面状の金属薄膜層を部分的に積層し、シボ調の金属光沢の背景の中でこの鏡面状の金属薄膜層が浮き上がるような視覚効果を発揮させることができる。
【0025】
図3は、本発明の加飾成形品の他の実施例についてその積層構造を示す断面図を示すもので、この例も、図1に示す基本的な層構成をベースとしたバリエーションの一つであり、図1の基本構成において、金属蒸着層3とトップクリアコート層5の間に透明なミドルコート層4を積層した例である。
例えば、上記したようにトップクリアコート層5にパール顔料を分散して、金属光沢にパール調の色彩変化を付与するような場合、顔料の種類によっては、トップクリアコート層5に分散するパール顔料が金属蒸着層3に接触し、酸化等により金属蒸着層3が部分的に変質して、金属蒸着層3に穴があく等の問題が生じる恐れがあるが、
このような場合には図3の層構成のようにミドルコート層4を積層することによりパール顔料と金属蒸着層3の接触をなくしてこの種の金属蒸着層3の変質に係る問題を防止することができる。
【0026】
また、ミドルコート層4に金属蒸着層3を腐蝕する恐れのない偏光顔料を分散し、トップクリアコート層5にはパール顔料を分散することにより、シボ調の金属蒸着層3と偏光顔料と偏光パールによる光学的な作用効果により、より高度な加飾性を付与することができる。
さらに詳述すると、シボ調の金属蒸着層3と偏光顔料とパール顔料を組み合わせることで、比較的大きな粒径の偏光性を有するパール顔料が金属蒸着層上に塗布してあるかのように擬似的に見せることができ、アンダーコート層2と金属蒸着層3でグリッター感(粗くキラキラした感じ)、ミドルコート層4の偏光顔料とトップクリアコート層5のパール顔料で、見るアングルに依存し色彩変化する色調を組み合わせ、微妙で複雑な色彩効果が現出する。
【0027】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果を説明したが、本発明の加飾合成樹脂成形品はこれら実施例に限定されるものではなく、使用目的や加飾目的に応じて図1に示した基本的な層構成をベースとして前述したように、様々なバリエーションとすることができる。
また、成形品の成形方法、形状、使用する合成樹脂については特に限定されるものではなく使用目的に応じて、適宜のものを選択することができる。
【0028】
使用する微粒子についてみると、上記実施例に使用した架橋ウレタンビーズや架橋アクリルビーズ等の架橋有機樹脂からなる微粒子は、真球に近い球形で、平均粒径が6〜50マイクロメートルの範囲で、比較的粒径の揃った製品を市販品として利用することができ、各種の表面処理をした製品も用意されており、コート液中での分散性も良好である。
なお、微粒子の粒径が小さすぎるとシボ調の金属光沢を十分に現出させることが難しく、一方で微粒子を分散させない通常のアンダーコート層では層厚を5〜10マイクロメートル程度とするのが適切で、粒径が大きすぎると成形品表面と金属蒸着膜の密着力を保持すると云うアンダーコート層としての機能が損なわれる恐れがあるため、これらを考慮して使用する微粒子の粒径は10〜15マイクロメートル程度の範囲とすることが好ましい。
また、架橋有機樹脂の他にもシリカ、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタンのような無機微粒子、アクリル樹脂やポリウレタン樹脂、界面活性剤などで表面処理された無機粒子等も架橋ウレタンビーズ又は架橋アクリルビーズと共に使用することができる。
また、アンダーコート層についてはアクリル系のUV硬化型のコート液を使用するが、ミドルコート層、トップクリアコート層についてはウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の硬化型コート液を適宜使用することができる。
【0029】
また、金属蒸着層3は必ずしも、成形品表面の全領域に積層する必要はなく、所定の領域に限定して積層することもでき、前述したような追加的な印刷層やホットスタンプ法による金属箔膜層を積層する領域を組合せてさらに多様な加飾性を発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように、本発明の加飾合成樹脂成形品は、金型のキャビティ面にシボ加工を施すことなく、成形品の表面に、金属蒸着によりさまざまなバリエーションでシボ調の金属光沢を付与して高度な加飾効果が現出されるものであり、化粧料容器分野等での幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0031】
1、101;基体(成形品)
2、102;アンダーコート層
2p;微粒子
3、103;金属蒸着層
4 ;ミドルコート層
5、105;トップクリアコート
、Pa、Pb;凹凸
図1
図2
図3
図4