(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0019】
[酸素吸収性樹脂組成物]
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、上記一般式(1)〜(4)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種のテトラリン環を有する構成単位を含有するポリエステル化合物(以下、単に「テトラリン環含有ポリエステル化合物」ともいう。)、遷移金属触媒およびエチレン−ビニルアルコール共重合体を少なくとも含有する。
【0020】
<テトラリン環含有ポリエステル化合物>
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物において用いられるテトラリン環含有ポリエステル化合物は、上記一般式(1)〜(4)で表される構成単位のうち、少なくとも1種を含有するものである。また、上記一般式(1)で表される構成単位は、上記式(5)〜(7)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。ここで、「構成単位を含有する」とは、化合物中に当該構成単位を1以上有することを意味する。かかる構成単位は、テトラリン環含有ポリエステル化合物中に繰り返し単位として含まれていることが好ましい。このようにテトラリン環含有ポリエステル化合物が重合体である場合、上記構成単位のホモポリマー、上記構成単位と他の構成単位とのランダムコポリマー、上記構成単位と他の構成単位とのブロックコポリマーのいずれであっても構わない。
【0021】
上記一般式(1)〜(4)で表される構成単位において、Rで示した一価の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数が1〜15、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状または環状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6の直鎖状、分岐状または環状アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数が6〜16、より好ましくは炭素数が6〜10のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の5員環或いは6員環の芳香族または非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる一価の基、例えば、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状または環状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基)、アシル基(ホルミル基を含む。好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキルカルボニル基、好ましくは炭素数が7〜12、より好ましくは炭素数が7〜9のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルアミノ基、好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアニリノ基、好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の複素環アミノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基)、チオール基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基)、複素環チオ基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基)、イミド基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が4〜8のイミド基、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)等が例示されるが、これらに特に限定されない。
【0022】
なお、上記の一価の置換基Rが水素原子を有する場合、その水素原子が置換基T(ここで、置換基Tは、上記の一価の置換基Rで説明したものと同義である。)でさらに置換されていてもよい。その具体例としては、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、第1級或いは第2級アミノ基で置換されたアルキル基(例えば、アミノエチル基)、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、上記の一価の置換基Rが一価の置換基Tを有する場合、上述した炭素数には、置換基Tの炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と看做し、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは看做さない。また、上記の一価の置換基Rが置換基Tを有する場合、その置換基Tは複数あってもよい。
【0023】
上記一般式(1)〜(4)で表される構成単位において、Xは、芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基および複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を示す。芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基および複素環基は、置換されていても無置換でもよい。また、Xは、ヘテロ原子を含有していてもよく、或いは、エーテル基、スルフィド基、カルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホキシド基、スルホン基等を含有していてもよい。ここで、芳香族炭化水素基としては、例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、メチルフェニレン基、o−キシリレン基、m−キシリレン基、p−キシリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントリレン基、ビフェニレン基、フルオニレン基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等のシクロアルキレン基や、シクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基が挙げられるが、これらに特に限定されない。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、テトラメチレン基、イソブチリデン基、sec‐ブチリデン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状または分枝鎖状アルキレン基や、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1,3−ブタジエニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、3−ヘキセニレン基等のアルケニレン基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、さらに置換基を有していてもよく、その具体例としては、ハロゲン、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボアルコキシ基、アミノ基、アシル基、チオ基(例えばアルキルチオ基、フェニルチオ基、トリルチオ基、ピリジルチオ基等)、アミノ基(例えば非置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0024】
上記一般式(1)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリエステル化合物は、例えば、テトラリン環を有するジカルボン酸またはその誘導体(I)と、ジオールまたはその誘導体(II)とを重縮合することによって得ることができる。
【0025】
テトラリン環を有するジカルボン酸またはその誘導体(I)としては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物が挙げられる。テトラリン環を有するジカルボン酸またはその誘導体(I)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化3】
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、0〜3の整数を示し、nは、0〜6の整数を示し、テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。Yは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を示す。)
【0026】
なお、上記一般式(8)で表される化合物は、例えば、下記一般式(9)で表されるナフタレン環を有するジカルボン酸またはその誘導体を水素と反応させることによって得ることができる。
【化4】
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。Yは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を示す。)
【0027】
ジオールまたはその誘導体(II)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−フェニルプロパンジオール、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアルコール、α,α−ジヒドロキシ−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ジヒドロキシ−1,4−ジイソプロピルベンゼン、o−キシレングリコール、m−キシレングリコール、p−キシレングリコール、ヒドロキノン、4,4−ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、またはこれらの誘導体等が挙げられる。ジオールまたはその誘導体(II)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、上記一般式(2)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリエステル化合物は、例えば、テトラリン環を有するジオールまたはその誘導体(III)と、ジカルボン酸またはその誘導体(IV)とを重縮合することによって得ることができる。
【0029】
テトラリン環を有するジオールまたはその誘導体(III)としては、例えば、下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。テトラリン環を有するジオールまたはその誘導体(III)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化5】
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、0〜3の整数を示し、nは、0〜6の整数を示し、テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。)
【0030】
上記一般式(10)で表される化合物は、例えば、下記一般式(11)で表されるナフタレン環を有するジオールまたはその誘導体を水素と反応させることによって得ることができる。
【化6】
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、それぞれ独立して0〜3の整数を示す。)
【0031】
ジカルボン酸またはその誘導体(IV)としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルペンタン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸類、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸類、アントラセンジカルボン酸、フェニルマロン酸、フェニレンジ酢酸、フェニレンジ酪酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、p−フェニレンジカルボン酸、またはこれらの誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸またはその誘導体(IV)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記一般式(3)または(4)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリエステル化合物は、例えば、テトラリン環を有するヒドロキシカルボン酸またはその誘導体(V)を重縮合することによって得ることができる。
【0033】
テトラリン環を有するヒドロキシカルボン酸またはその誘導体(V)としては、例えば、下記一般式(12)または(13)で表される化合物が挙げられる。テトラリン環を有するヒドロキシカルボン酸またはその誘導体(V)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化7】
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、0〜3の整数を示し、nは、0〜6の整数を示し、テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。Yは、水素原子またはアルキル基を示す。)
【0034】
上記一般式(1)または(2)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリエステル化合物は、例えば、下記一般式(14)または(15)で表される構成単位を含有するポリエステル化合物の水添反応によって得ることもできる。
【化8】
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。Xは、芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基および複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を示す。)
【化9】
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。Xは、芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基および複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を示す。)
【0035】
上記一般式(8)〜(15)で表される構成単位においてRで示した一価の置換基の具体例、Xで示した2価の基の具体例、およびYの一例として示したアルキル基の具体例は、上記一般式(1)〜(4)で表される構成単位において説明したものと同一である。そのため、ここでの重複した説明は省略する。
【0036】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物において用いられるテトラリン環含有ポリエステル化合物は、上記一般式(1)〜(4)で表される構成単位以外の、他のテトラリン環を有する構成単位、および/または、テトラリン環を有さない構成単位を共重合成分として含んでいてもよい。具体的には、前述したジオールまたはその誘導体(II)やジカルボン酸またはその誘導体(IV)において示した化合物を共重合成分として用いることができる。
【0037】
上記一般式(1)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリエステル化合物のなかで、より好ましいものとしては、上記式(5)〜(7)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリエステル化合物、および、下記式(16)〜(18)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリエステル化合物が挙げられる。
【化10】
【0038】
上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物の分子量は、所望する性能や取扱性などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。一般的には、重量平均分子量(Mw)が1.0×10
3〜8.0×10
6であることが好ましく、より好ましくは5.0×10
3〜5.0×10
6である。また同様に、数平均分子量(Mn)が1.0×10
3〜1.0×10
6であることが好ましく、より好ましくは5.0×10
3〜5.0×10
5である。なお、ここでいう分子量は、いずれもポリスチレン換算の値を意味する。なお、上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、0〜90℃であることが好ましく、より好ましくは10〜80℃である。なお、ここでいうガラス転移温度は、示差走査熱量測定により測定される値を意味する。
【0040】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物中の前記テトラリン環含有ポリエステル化合物の含有割合は、使用するテトラリン環含有ポリエステル化合物やエチレン−ビニルアルコール共重合体や遷移金属触媒の種類、および所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収量およびフィルム成形加工性の観点から、前記テトラリン環含有ポリエステル化合物の含有量は、前記テトラリン環含有ポリエステル化合物と前記エチレン−ビニルアルコール共重合体の合計100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜45質量部、さらに好ましくは10〜40質量部である。
【0041】
上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物の製造方法は、特に制限されず、従来公知のポリエステルの製造方法をいずれも適用することができる。ポリエステルの製造方法としては、例えば、エステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法、または溶液重合法等が挙げられる。これらの中でも、原料入手の容易さの点から、エステル交換法、または直接エステル化法が好適である。
【0042】
テトラリン環含有ポリエステル化合物の製造時には、エステル交換触媒、エステル化触媒、重縮合触媒等の各種触媒、エーテル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等の従来公知のものをいずれも用いることができる。これらの種類や使用量は、反応速度やテトラリン環含有ポリエステル化合物の分子量、ガラス転移温度、粘度、色調、安全性、熱安定性、耐候性、自身の溶出性などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば上記各種触媒としては、亜鉛、鉛、セリウム、カドミウム、マンガン、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、アルミニウム、チタン、アンチモン、スズ等の金属の化合物(例えば、脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物、アルコキシド)や金属マグネシウムなどが挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
なお、テトラリン環含有ポリエステル化合物の極限粘度(フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒を用いた25℃での測定値)は、特に限定されないが、テトラリン環含有ポリエステル化合物の成形性の観点から、0.1〜2.0dL/gであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5dL/gである。
【0044】
上述したテトラリン環含有ポリエステル化合物は、いずれも、テトラリン環のベンジル位に水素を有するものであり、上述した遷移金属触媒と併用することでベンジル位の水素が引き抜かれ、これにより優れた酸素吸収能を発現する。
【0045】
また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収後の臭気発生が無いものである。その理由は明らかではないが、例えば以下の酸化反応機構が推測される。すなわち、上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物においては、まずテトラリン環のベンジル位にある水素が引き抜かれてラジカルが生成し、その後、ラジカルと酸素との反応によりベンジル位の炭素が酸化され、ヒドロキシ基またはケトン基が生成すると考えられる。言い換えれば、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物においては、上記従来技術のような酸化反応による酸素吸収主剤の分子鎖の切断がなく、テトラリン環含有ポリエステル化合物の構造が維持され、臭気の原因となる低分子量の有機化合物が酸素吸収後に生成され難く、その結果、酸素吸収後の臭気発生が外部から検知できない程に抑制されていると推測される。
【0046】
<遷移金属触媒>
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物において用いられる遷移金属触媒としては、上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物の酸化反応の触媒として機能し得るものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
【0047】
かかる遷移金属触媒の具体例としては、遷移金属の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物等が挙げられる。ここで、遷移金属触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が好ましい。また、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタノイック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属触媒は、これらの遷移金属と有機酸とを組み合わせたものが好ましく、遷移金属がマンガン、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅であり、有機酸が酢酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸またはナフテン酸である組み合わせがより好ましい。なお、遷移金属触媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物におけるテトラリン環含有ポリエステル化合物および遷移金属触媒の含有割合は、使用するテトラリン環含有ポリエステル化合物や遷移金属触媒の種類および所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収量の観点から、遷移金属触媒の含有量は、テトラリン環含有ポリエステル化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.002〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1質量部である。
【0049】
<エチレン−ビニルアルコール共重合体>
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物で用いるエチレン−ビニルアルコール共重合体は、共重合成分としてエチレンとビニルアルコールとを少なくとも有する重合体である。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、例えば、エチレンと酢酸ビニルと必要に応じて他の共重合成分とを共重合させた後に、酢酸ビニルをけん化することにより、酢酸ビニル単位をビニルアルコール単位に変えることによって得ることができ、得ることができる。なお、エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレンとビニルアルコールと酢酸ビニル以外に、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、不飽和カルボン酸またはその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド、無水物、不飽和スルホン酸またはその塩等の少量のコモノマーをさらに含んでいてもよい。
【0050】
フィルム成形加工性及び酸素透過係数の観点から、上記のエチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン含量が15〜60モル%であるものが好ましく、より好ましくは20〜55モル%であり、さらに好ましくは25〜50モル%である。なお、かかるエチレン−ビニルアルコール共重合体としては、けん化度が97.0〜99.9モル%のものが、市販品として容易に入手することができる。
【0051】
上記のエチレン−ビニルアルコール共重合体のメルトインデックスは、所望する性能や取扱性などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。フィルム成形加工性及び酸素透過係数の観点から、エチレン−ビニルアルコール共重合体は、荷重2160g、210℃におけるメルトインデックスは0.1〜100g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50g/10分である。
【0052】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物中の前記エチレン−ビニルアルコール共重合体の含有割合は、使用するテトラリン環含有ポリエステル化合物やエチレン−ビニルアルコール共重合体や遷移金属触媒の種類、および所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収量およびフィルム成形加工性の観点から、前記エチレン−ビニルアルコール共重合体の含有量は、前記テトラリン環含有ポリエステル化合物と前記エチレン−ビニルアルコール共重合体の合計100質量部に対し、50〜99質量部であることが好ましく、より好ましくは55〜95質量部、さらに好ましくは60〜90質量部である。
【0053】
なお、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物を調製するにあたり、テトラリン環含有ポリエステル化合物、遷移金属触媒およびエチレン−ビニルアルコール共重合体は、公知の方法で混合することができる。好ましくは押出機を用いてこれらを混練することにより、より高い分散性を有する酸素吸収性樹脂組成物を得ることができる。
【0054】
<各種添加剤>
ここで、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、上述した各成分以外に、必要に応じて、当業界で公知の各種添加剤を含有していてもよい。かかる任意成分としては、例えば、乾燥剤、酸化チタン等の顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、可塑剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0055】
また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収反応を促進させるために、必要に応じて、さらにラジカル発生剤や光開始剤を含有していてもよい。ラジカル発生剤の具体例としては、各種のN−ヒドロキシイミド化合物が挙げられる。具体的には、N−ヒドロキシコハクイミド、N−ヒドロキシマレイミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、3−スルホニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メチル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−ヒドロキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ニトロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−メトキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ジメチルアミノ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−カルボキシ−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、4−メチル−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノンとその誘導体、チアジン染料、金属ポルフィリン誘導体、アントラキノン誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらのラジカル発生剤および光開始剤は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
<他の熱可塑性樹脂>
さらに、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、必要に応じて、上記テトラリン環含有ポリエステル化合物およびエチレン−ビニルアルコール共重合体以外の、熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」ともいう。)をさらに含有していてもよい。他の熱可塑性樹脂を併用することで、押出機で混練する際の成形性や取扱性をより高めることができる。
他の熱可塑性樹脂としては、公知のモノを適宜用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムまたはブロック共重合体等のポリオレフィン、無水マレイン酸グラフトポリエチレンや無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル等或いはこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの他の熱可塑性樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
本実施形態の酸素吸収性組成物が他の熱可塑性樹脂を含有する場合、当該他の熱可塑性樹脂の含有割合は、酸素吸収性能並びに成形性の観点から、前記テトラリン環含有ポリエステル化合物と前記エチレン−ビニルアルコール共重合体と他の熱可塑性樹脂の合計100質量部に対し、10〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜70質量部、さらに好ましくは20〜60質量部である。
【0058】
また、上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物とエチレン−ビニルアルコール共重合体の分散性をより高める観点から、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、接着性を有する熱可塑性樹脂(以下、単に「接着性樹脂」ともいう。)を含有することが好ましい。接着性樹脂としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂;ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルで変性した不飽和カルボン酸エステル変性ポリオレフィン樹脂;ポリエステル系ブロック共重合体を主成分としたポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのなかでも、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸コポリマーまたはエチレン−無水マレイン酸コポリマー等のポリオレフィン−不飽和カルボン酸コポリマーまたはポリオレフィン−不飽和カルボン酸エステル−不飽和カルボン酸コポリマーが好ましい。
【0059】
本実施形態の酸素吸収性組成物が接着性樹脂を含有する場合、接着性樹脂の含有割合は、特に限定されないが、フィルム成形加工性の観点から、前記テトラリン環含有ポリエステル化合物と前記エチレン−ビニルアルコール共重合体の合計100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0060】
<使用態様>
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、公知の造粒方法或いは押出成形などの公知の成形方法等を適用することができ、例えば粉体状、顆粒状、ペレット状、フィルム状或いはシート状またはその他の小片状に成形加工することができる。そして、このようにして得られた酸素吸収性樹脂成形体をそのまま酸素吸収剤として用いることができ、或いは、得られた酸素吸収性樹脂成形体を通気性包装材料に充填することで、小袋状の酸素吸収剤包装体として使用することもできる。また、フィルム状或いはシート状に成形された本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、ラベル、カード、パッキング等の形態で使用することもできる。なお、ここでは、厚みが0.1〜500μmのものをフィルム、厚みが500μmを超えるものシートと区分する。
【0061】
ここで、ペレット状の酸素吸収性樹脂成形体は、酸素との接触面積を高めて酸素吸収性能をより効果的に発現させる観点から、その使用時には、さらに粉砕して粉末状とすることが好ましい。
【0062】
なお、上記の通気性包装材料としては、通気性を有する公知の包装材料を適用することができ、特に限定されない。酸素吸収効果を十分に発現させる観点から、通気性包装材料は通気性の高いものが好ましい。通気性包装材料の具体例としては、各種用途で用いられている通気性の高い包装材料、例えば、和紙、洋紙、レーヨン紙等の紙類、パルプ、セルロース、合成樹脂から得られる各種繊維類を用いた不織布、プラスチックフィルムまたはその穿孔物等、或いは炭酸カルシウム等を添加した後に延伸したマイクロポーラスフィルム等、さらにはこれらから選ばれる2種以上を積層したもの等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、プラスチックフィルムとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のフィルムと、シール層としてポリエチレン、アイオノマー、ポリブタジエン、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマーまたはエチレン酢酸ビニルコポリマー等のフィルムとを積層接着した積層フィルム等も使用することができる。
【0063】
また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物をフィルム状或いはシート状に成形して用いる場合には、延伸する等して、フィルム或いはシート中に微小な空隙を設けることが好ましい。このようにすると、成形されるフィルム或いはシートの酸素透過性が高められて上述したテトラリン環含有ポリエステル化合物の酸素吸収性能が殊に効果的に発現される傾向にある。
【0064】
さらに、フィルム状或いはシート状に成形された本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、単層の形で包装材料または包装容器として使用できるのは勿論のこと、これを他の基材と重ね合わせた積層体の態様で使用することができる。かかる積層体の典型例としては、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物からなる少なくとも一層と、他の樹脂層、紙基材層および金属箔層等からなる群より選択される少なくとも一層とを重ね合わせたものであり、この積層体は酸素吸収性多層包装材料または酸素吸収性多層包装容器として使用することができる。なお、一般に、フィルム状或いはシート状に成形された酸素吸収性樹脂組成物の層は、容器等の外表面に露出しないように容器等の外表面よりも内側に設けることが好ましく、また、内容物との直接的な接触を避ける観点から、フィルム状或いはシート状に成形された酸素吸収性樹脂組成物の層は、容器等の内表面より外側に設けることが好ましい。このように、多層の積層体において使用する場合には、少なくとも1つの中間層として、フィルム状或いはシート状に成形された酸素吸収性樹脂組成物の層を配置することが好ましい。
【0065】
上記の積層体の好適な一態様としては、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂を含有するシーラント層、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物を含有する層(酸素吸収層)、およびガスバリア性物質を含有するガスバリア層の少なくとも3層をこの順に有する酸素吸収性多層体が挙げられる。さらに、この酸素吸収性多層体は、ガスバリア層の外層に紙基材をさらに積層して、酸素吸収性紙容器として用いることもできる。ここで、少なくとも3層をこの順に有するとは、シーラント層、酸素吸収層およびガスバリア層がこの順に配列していることを意味し、シーラント層と酸素吸収層とガスバリア層とが直接重ね合わせられた態様(以下、「シーラント層/酸素吸収層/ガスバリア層」と表記する。)のみならず、シーラント層と酸素吸収層との間に、または、酸素吸収層とガスバリア層との間に、樹脂層、金属箔層或いは接着剤層等の少なくとも1以上の他の層(以下、「中間層」ともいう。)が介在した態様(例えば、「シーラント層/樹脂層/酸素吸収層/接着剤層/ガスバリア層」、「シーラント層/樹脂層/接着剤層/酸素吸収層/接着剤層/樹脂層/接着剤層/ガスバリア層/接着剤層/支持体」等)を包含する概念である(以降においてもすべて同様である。)。
【0066】
シーラント層で用いる熱可塑性樹脂としては、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物において説明した他の熱可塑性樹脂で説明したものと同様のものを用いることができる。シーラント層で用いる熱可塑性樹脂は、これに隣接する他の層(酸素吸収層、ガスバリア層、樹脂層、接着剤層、支持体等)との相溶性を考慮して、適宜選択することが好ましい。
【0067】
また、ガスバリア層に用いるガスバリア性物質としては、ガスバリア性熱可塑性樹脂や、ガスバリア性熱硬化性樹脂、シリカ、アルミナ、アルミ等の各種蒸着フィルム、アルミ箔等の金属箔等を用いることができる。ガスバリア性熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、MXD6、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。また、ガスバリア性熱硬化性樹脂としては、ガスバリア性エポキシ樹脂、例えば、三菱ガス化学株式会社製「マクシーブ」等が挙げられる。
【0068】
なお、上記の酸素吸収性多層体を作製する際の加工性を考慮すると、ガスバリア性物質を含有するガスバリア層と本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物を含有する酸素吸収層との間に、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂を含有する中間層を介在させることが好ましい。この中間層の厚みは、加工性の観点から、シーラント層の厚みと略同一であることが好ましい。ここでは、加工によるバラツキを考慮して、略同一とは厚み比が±10%以内のものを意味する。
【0069】
上記の酸素吸収性多層体において、酸素吸収層の厚みは、特に限定されないが、5〜250μmであることが好ましく、より好ましくは10〜150μmである。酸素吸収層の厚みがこの好ましい範囲内にあることにより、そうでない場合に比べて、加工性や経済性を過度に損なうことなく、酸素吸収性能がより高められる傾向にある。
【0070】
一方、上記の酸素吸収性多層体において、シーラント層の厚みは、特に限定されないが、2〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜30μmである。シーラント層の厚みがこの好ましい範囲内にあることにより、そうでない場合に比べて、加工性や経済性を過度に損なうことなく、酸素吸収層の酸素吸収速度がより高められる傾向にある。なお、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物をフィルム状或いはシート状に加工する際の加工性を考慮すると、シーラント層と酸素吸収層の厚み比は、1:0.5〜1:3にあることが好ましく、より好ましくは1:1〜1:2.5である。
【0071】
上記の酸素吸収性多層体において、ガスバリア層の厚みは、使用するガスバリア性物質の種類や要求されるガスバリア性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。加工性や経済性の観点から、1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは2〜80μmである。
【0072】
なお、上記の酸素吸収性多層体は、ガスバリア層の外層に紙基材を積層することにより、酸素吸収性紙容器として用いることもできる。この場合、紙容器への成形性の観点から、ガスバリア層より内側の層の厚みは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下、例えば50μm以下である。
【0073】
上記の酸素吸収性多層体の製造方法としては、各種材料の性状、加工目的、加工工程等に応じて、共押出法、各種ラミネート法、各種コーティング法などの公知の方法を適用することができ、特に限定されない。例えば、フィルムやシートは、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して溶融させた樹脂組成物をこれらが付属した押出機から押し出して製造する方法や、酸素吸収性フィルムまたはシートに接着剤を塗布し、他のフィルムやシートと貼り合わせる方法で成形することができる。また、射出機を用い、溶融した樹脂を、多層多重ダイスを通して射出金型中に共射出または逐次射出することによって、所定の形状の多層容器または容器製造用のプリフォームを成形することができる。このプリフォームを、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸するとともに、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトルを得ることができる。
【0074】
さらに、例えばフィルム状の酸素吸収性多層体は、袋状或いは蓋材に加工することができる。また、例えばシート状の酸素吸収性多層体は、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等の成形方法により、トレー、カップ、ボトル、チューブ等の所定の形状の酸素吸収性多層容器に熱成形することができる。また、袋状容器は、食品等の内容物を充填した後、開封口を設けることで、電子レンジ加熱調理時にその開封口から蒸気を放出する、電子レンジ調理対応の易通蒸口付パウチとして好ましく用いることができる。
【0075】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物およびこれを用いた積層体等の各種成形品を使用するにあたり、エネルギー線を照射して、酸素吸収反応の開始を促進したり、酸素吸収速度を高めたりすることができる。エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線、γ線等を利用可能である。照射エネルギー量は、用いるエネルギー線の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0076】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物およびこれを用いた積層体や容器等の各種成形品は、酸素吸収に水分を必須としない、換言すれば被保存物の水分の有無によらず酸素吸収することができるため、被保存物の種類を問わず幅広い用途で使用することができる。とりわけ、酸素吸収後の臭気の発生がないので、例えば、食品、調理食品、飲料、健康食品、医薬品等において特に好適に用いることができる。すなわち、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物およびこれを用いた積層体等の各種成形品は、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下(相対湿度0%〜100%)での酸素吸収性能に優れ、かつ内容物の風味保持性に優れるため、種々の物品の包装に適している。しかも、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、従来の鉄粉を使用した酸素吸収性樹脂組成物とは異なり、鉄粉の含有を必須としない。そのため、鉄粉を含まない態様とした場合、金属探知機に感応しない酸素吸収性樹脂組成物となり、この鉄粉非含有酸素吸収性樹脂組成物は、鉄の存在のため保存できない被保存物(例えばアルコール飲料や炭酸飲料等)に好適に用いることができる。
【0077】
被保存物の具体例としては、牛乳、ジュース、コーヒー、茶類、アルコール飲料等の飲料;ソース、醤油、めんつゆ、ドレッシング等の液体調味料;スープ、シチュー、カレー等の調理食品;ジャム、マヨネーズ等のペースト状食品;ツナ、魚貝等の水産製品;チーズ、バター、卵等の乳加工品或いは卵加工品;肉、サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品;にんじん、じゃがいも、アスパラ、しいたけ等の野菜類;フルーツ類;卵;麺類;米、精米等の米類;豆等の穀物類;米飯、赤飯、もち、米粥等の米加工食品或いは穀物加工食品;羊羹、プリン、ケーキ、饅頭等の菓子類;粉末調味料、粉末コーヒー、コーヒー豆、茶、乳幼児用粉末ミルク、乳幼児用調理食品、粉末ダイエット食品、介護調理食品、乾燥野菜、おかき、せんべい等の乾燥食品(水分活性の低い食品);接着剤、粘着剤、農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品;ビタミン剤等の健康食品;ペットフード;化粧品、シャンプー、リンス、洗剤等の雑貨品;その他の種々の物品を挙げることができるが、これらに特に限定されない。特に、酸素存在下で劣化を起こしやすい被保存物、例えば、飲料ではビール、ワイン、果汁飲料、フルーツジュース、野菜ジュース、炭酸ソフトドリンク、茶類等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品類等、その他では医薬品、化粧品等の包装材に好適である。なお、水分活性とは、物品中の自由水含有量を示す尺度であって、0〜1の数字で示されるものであり、水分のない物品は0、純水は1となる。すなわち、ある物品の水分活性Awは、その物品を密封し平衡状態に到達した後の空間内の水蒸気圧をP、純水の水蒸気圧をP
0、同空間内の相対湿度をRH(%)、とした場合、
Aw=P/P
0=RH/100
と定義される。
【0078】
また、これらの被保存物の充填(包装)前後に、被保存物に適した形で、容器や被保存物の殺菌処理を施すことができる。殺菌方法としては、例えば、100℃以下でのボイル処理、100℃以上のセミレトルト処理、レトルト処理、130℃以上のハイレトルト処理等の加熱殺菌、紫外線、マイクロ波、ガンマ線等の電磁波殺菌、エチレンオキサイド等のガス処理、過酸化水素や次亜塩素酸等の薬剤殺菌等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。なお、特に記載が無い限り、NMR測定は室温で行った。また、本実施例および比較例において、各種物性値は以下の測定方法および測定装置により実施した。
【0080】
(ガラス転移温度の測定方法)
ガラス転移温度はJIS K7122に準拠して測定した。測定装置は株式会社島津製作所製「DSC−60」を使用した。
【0081】
(融点の測定方法)
融点は、ISO11357に準拠して、DSC融点ピーク温度を測定した。測定装置は株式会社島津製作所製「DSC−60」を使用した。
【0082】
(重量平均分子量および数平均分子量の測定方法)
重量平均分子量および数平均分子量は、GPC−LALLSにて測定した。測定装置は東ソー株式会社製「HLC−8320GPC」を使用した。
【0083】
[モノマー合成例]
内容積18Lのオートクレーブに、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル2.20kg、2−プロパノール11.0kg、5%パラジウムを活性炭に担持させた触媒350g(50wt%含水品)を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内の空気を窒素と置換し、さらに窒素を水素と置換した後、オートクレーブ内の圧力が0.8MPaとなるまで水素を供給した。次に、撹拌機を起動し、回転速度を500rpmに調整し、30分かけて内温を100℃まで上げた後、さらに水素を供給し圧力を1MPaとした。その後、反応の進行による圧力低下に応じ、1MPaを維持するよう水素の供給を続けた。7時間後に圧力低下が無くなったので、オートクレーブを冷却し、未反応の残存水素を放出した後、オートクレーブから反応液を取り出した。反応液を濾過し、触媒を除去した後、分離濾液から2−プロパノールをエバポレーターで蒸発させた。得られた粗生成物に、2−プロパノールを4.40kg加え、再結晶により精製し、テトラリン−2,6−ジカルボン酸ジメチルを80%の収率で得た。なお、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(400MHz CDCl
3)δ7.76-7.96(2H m)、7.15(1H d)、3.89(3H s)、3.70(3H s)、2.70-3.09(5H m)、1.80-1.95(1H m)。
【0084】
[ポリマー製造例]
(製造例1)
充填塔式精留等、分縮器、全縮器、コールドトラップ、撹拌機、加熱装置および窒素導入管を備えたポリエステル樹脂製造装置に、モノマー合成例で得たテトラリン−2,6−ジカルボン酸ジメチル543g、1,4−ブタンジオール315g、テトラブチルチタネート0.038gを仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温してエステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を85%以上とした後、テトラブチルチタネート0.019gを添加し、昇温と減圧を徐々に行い、250℃、133Pa以下で重縮合を行い、テトラリン環含有ポリエステル化合物(1)を得た。
【0085】
得られたポリエステル化合物(1)の重量平均分子量と数平均分子量をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行った結果、ポリスチレン換算の重量平均分子量は8.5×10
4、数平均分子量は3.6×10
4であった。ガラス転移温度と融点をDSCにより測定を行った結果、ガラス転移温度は36℃、融点は145℃であった。
【0086】
(製造例2)
1,4−ブタンジオールに代えてエチレングリコール217gを用いること以外は、製造例1と同様にしてテトラリン環含有ポリエステル化合物(2)を合成した。得られたポリエステル化合物(2)のポリスチレン換算の重量平均分子量は5.9×10
4、数平均分子量は2.9×10
4、ガラス転移温度は69℃、融点は非晶性のため認められなかった。
【0087】
(製造例3)
1,4−ブタンジオールに代えて1,6−ヘキサンジオール413gを用いること以外は、製造例1と同様にしてテトラリン環含有ポリエステル化合物(3)を合成した。得られたポリエステル化合物(3)のポリスチレン換算の重量平均分子量は8.9×10
4、数平均分子量は3.3×10
4、ガラス転移温度は16℃、融点は137℃であった。
【0088】
(製造例4)
1,4−ブタンジオールの配合量を93gとし、さらにエチレングリコール150gを配合すること以外は、製造例1と同様にして、エチレングリコールと1,4−ブタンジオールのモル比が60:40のテトラリン環含有ポリエステル化合物(4)を合成した。得られたポリエステル化合物(4)のポリスチレン換算の重量平均分子量は8.2×10
4、数平均分子量は3.3×10
4、ガラス転移温度は56℃、融点は非晶性のため認められなかった。
【0089】
(実施例1)
ポリエステル化合物(1)20質量部、ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量換算で0.02質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体(製品名;株式会社クラレ製「エバールF104B」、エチレン共重合比率32mol%、以下、「EVOH(1)」とも表記する。)80質量部をドライブレンドし、得られた酸素吸収性樹脂組成物を、直径20mmのスクリューを2本有する2軸押出機を用いて、押出温度240℃、スクリュー回転数60rpm、フィードスクリュー回転数16rpm、引き取り速度1.3m/minの条件下で製膜することにより、幅130mm、厚み95〜105μmの酸素吸収性フィルムを作製した。
【0090】
実施例1で得られた酸素吸収性フィルムを用いて、以下の通りに評価した。これらの結果を表1に示す。
(1)酸素吸収量
アルミ箔積層フィルムからなるガスバリア袋を2つ用意した。そして、得られた酸素吸収性フィルムの試験片(長さ100mm×幅100mm)2枚を、空気500ccとともに2つのガスバリア袋内にそれぞれ充填し、一方の袋内の相対湿度を100%に調整し、他方の袋内の相対湿度を30%に調整した後、それぞれ密封した。このようにして得られた密封体を40℃下で1ヶ月間保管して、その間に吸収した酸素の総量を測定した。
(2)酸素吸収後の臭気
上記酸素吸収量試験と同様に、40℃、相対湿度100%にて1ヶ月保管した後、密封袋を開封し、1ヶ月間保管後のフィルムの臭気を確認した。
(3)酸素透過率
得られた酸素吸収性フィルムの酸素透過率を、23℃、相対湿度60%および相対湿度90%の雰囲気下にて測定した。表1に示した酸素透過率は、測定開始から14日後の値である。なお、酸素透過率の測定は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名:OX−TRAN 2−61)を使用して行った。測定値が低いほど酸素バリア性が良好であることを示す。
(4)フィルム外観
得られた酸素吸収性フィルムの外観を目視で観察し、色ムラやスジ模様等が確認できないものを「良好」、色ムラやスジ模様等が若干観察されるが実用上問題ないものを「やや劣る」、色ムラやスジ模様等が顕著に観察され、実用的に使用できないものを「不良」と評価した。
また、酸素吸収性フィルムの厚みムラを評価した。厚みムラの評価は、[(フィルム厚みの最大値−フィルム厚みの最小値)/厚みの平均値]×100の計算値が、0以上〜5未満のときを◎、5以上〜10未満のときを○、10以上〜20以下のときを△、20を超過するときを×とした。
【0091】
(実施例2)
ポリエステル化合物(1)の配合量を40質量部に、EVOH(1)の配合量を60質量部にそれぞれ変更すること以外は、実施例1と同様に行って、酸素吸収性フィルムを製造した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0092】
(実施例3)
ポリエステル化合物(1)の配合量を10質量部に、EVOH(1)の配合量を90質量部にそれぞれ変更すること以外は、実施例1と同様に行って、酸素吸収性フィルムを製造した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0093】
(実施例4)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(2)を用いること以外は、実施例1と同様に行って、酸素吸収性フィルムを作製した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0094】
(実施例5)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(3)を用いること以外は、実施例1と同様に行って、酸素吸収性フィルムを作製した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0095】
(実施例6)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(4)を用いること以外は、実施例1と同様に行って、酸素吸収性フィルムを作製した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0096】
(実施例7)
接着性樹脂としてエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸コポリマー(アルケマ製、「ロタダーAX8390」)2質量部をさらに配合すること以外は、実施例1と同様に行って、酸素吸収性フィルムを作製した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0097】
(実施例8)
接着性樹脂としてエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸コポリマー(アルケマ製、「ロタダーAX8390」)4質量部をさらに配合すること以外は、実施例2と同様に行って、酸素吸収性フィルムを作製した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0098】
(実施例9)
接着性樹脂としてエチレン−無水マレイン酸コポリマー(三菱化学株式会社製、「モディックA545」)2質量部をさらに配合すること以外は、実施例1と同様に行って、酸素吸収性フィルムを作製した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0099】
(実施例10)
EVOH(1)に代えてEVOH(2)(製品名;株式会社クラレ製「エバールG156B」、エチレン共重合比率48mol%)を用いること以外は、実施例1と同様に行って、酸素吸収性フィルムを製造した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0100】
(実施例11)
EVOH(1)に代えてEVOH(3)(製品名;株式会社クラレ製「エバールSP521B」、エチレン共重合比率27mol%)を用いること以外は、実施例1と同様に行って、酸素吸収性フィルムを製造した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0101】
(比較例1)
ポリエステル化合物(1)の配合を省略すること以外は、実施例1と同様に行って、酸素吸収性フィルムを作製した。このようにして得られた酸素吸収性フィルムにつき、実施例1と同様の試験を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1から明らかなように、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、高湿度下、低湿度下のいずれにおいても良好な酸素吸収性能を示し、酸素透過係数が小さく、酸素バリア性に優れていることが確認された。さらに、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収後も臭気が無かった。本発明の酸素吸収性樹脂組成物を用いることで、フィルム外観が良好で、且つ、厚みムラの少ない酸素吸収性フィルムが得られることが確認された。
【0104】
上述したとおり、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。