特許第6198174号(P6198174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198174
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】単色光源装置及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20170911BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20170911BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20170911BHJP
   H04N 9/31 20060101ALI20170911BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20170911BHJP
【FI】
   G03B21/14 A
   G03B21/00 D
   F21S2/00 350
   F21S2/00 311
   H04N9/31 Z
   F21Y101:00
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-131279(P2013-131279)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-4902(P2015-4902A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109519
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昌士
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−258207(JP,A)
【文献】 特開2014−035376(JP,A)
【文献】 特開2007−173127(JP,A)
【文献】 特開2008−185924(JP,A)
【文献】 特開2006−065724(JP,A)
【文献】 特開2009−110715(JP,A)
【文献】 特表2009−519579(JP,A)
【文献】 特開2004−193029(JP,A)
【文献】 特開2006−269098(JP,A)
【文献】 特開2012−155268(JP,A)
【文献】 特開2008−192421(JP,A)
【文献】 特開2012−044189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00 − 21/10
G03B 21/12 − 21/13
G03B 21/134− 21/30
G03B 33/00 − 33/16
F21K 9/00 − 9/90
F21S 2/00 − 19/00
H04N 9/31
H05B 37/00 − 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個の原色を現すための光を出力する単色光源装置であって
複数の単色固体光源と、各単色固体光源に供給する電力を制御する制御部と、各単色固体光源の出力波長を検知する波長検知手段とを備えており、
複数の単色固体光源は、現すべき1個の原色の波長範囲に属し且つ互いに異なる波長の光を出力するものであり、
制御部は、波長検知手段が検知した波長に従って各単色固体光源への供給電力の比を制御するものであることを特徴とする単色光源装置。
【請求項2】
1個の原色を現すための光を出力する単色光源装置であって
複数の単色固体光源と、各単色固体光源に供給する電力を制御する制御部と、単色固体光源の温度を検知する温度検知手段と、各単色固体光源から出力された光の強度を検知する光強度検知手段とを備えており、
複数の単色固体光源は、現すべき1個の原色の波長範囲に属し且つ互いに異なる波長の光を出力するものであり、
制御部は、各単色固体光源からの光の強度が目標値になるように各単色固体光源への供給電力を光強度検知手段からの信号に従ってフィードバック制御するものであって、温度検知手段が検知した光源温度に従って目標値を設定するものであることを特徴とする単色光源装置。
【請求項3】
1個の原色を現すための光を出力する単色光源装置であって
複数の単色固体光源と、各単色固体光源に供給する電力を制御する制御部と、各単色固体光源の出力波長を検知する波長検知手段と、各単色光源から出力された光の強度を検知する光強度検知手段とを備えており、
複数の単色固体光源は、現すべき1個の原色の波長範囲に属し且つ互いに異なる波長の光を出力するものであり、
制御部は、波長検知手段が検知した波長に従って各単色固体光源への供給電力の比を選択して当該比で電力が供給されるよう制御するとともに、当該比を維持しつつ、光強度検知手段の検知結果に従って各単色固体光源による全体の光の強度が所定の強度になるよう供給電力を制御するものであることを特徴とする単色光源装置。
【請求項4】
前記温度検知手段は、前記各単色固体光源に対して熱伝導性良く設けた1個の伝熱体の温度を検知するものであり、伝熱体の温度を各単色固体光源の共通した温度として検知するものであることを特徴とする請求項2に記載の単色光源装置。
【請求項5】
前記波長検知手段は、前記各単色固体光源の変化し得る出力波長の範囲において互いに分光特性が異なるフィルタと受光素子からなる光センサで構成されたものであることを特徴とする請求項1又は3記載の単色光源装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の単色光源装置をいずれか1個の原色を表現するために備えていることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置におけるRGB3原色のような原色を現すために使用される単色光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタのような表示装置では、光源からの光を2次元光変調素子を介してスクリーンに投影することで映像が表示される。このような表示装置に使用される光源としては、以前は、キセノンランプやメタルハライドランプといった放電ランプが使用されていたが、LEDのような固体光源が使用されることが多くなってきている。LEDのような固体光源は、一般的にランプに比べて小型で高効率、長寿命といった特長を有しており、プロジェクタのような表示装置に適しているためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−152326号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201003/10-029/
【非特許文献2】http://www.sony.co.jp/Products/SC-HP/cxpal/ vol79/pdf/sideview79.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置における光源は、RGBの3原色で2次元光変調素子を照明することが必要で、従来の放電ランプ光源の場合、1個の光源から出力された光から3原色をそれぞれフィルタで取り出して使用していた。しかしながら、無駄になる光量が多くて効率が悪いこと、フィルタの透過帯域の問題から色域の広い光が得られないことといった問題がある。このため、3原色にそれぞれについて単色光源を使用することが好適である。
LEDは出力波長帯域が狭く、表示装置用の単色光源として使用可能である。また、LEDと同様に固体光源の一種である半導体レーザーも、周知にように発振波長が狭い帯域に限定されており、単色光源として好適に使用可能である。
【0006】
このような単色固体光源により原色を現すようにすると、色域の広い光を高効率で2次元光変調素子を照明することができるので、明るく鮮明な映像がスクリーン上で得られる。特に最近では、非特許文献1に示すように大出力の固体レーザーが開発されており、表示装置用の単色光源として使用し、より大きなスクリーン上に明るく鮮明な映像を表示することが検討されている。
【0007】
しかしながら、このような単色固体光源を使用する場合の特有の問題も存在する。その1個は、温度特性であり、固体基材の温度に出力波長が依存するものが多い。このため、温度が変化すると出力波長がシフトし、それがスクリーン上での色合いの変化として視認され得る。例えば、RGBの3原色を混ぜて白色を表現した場合、ある温度では正しい白色がスクリーン上に現れていたものが、温度が異なる条件下では、僅かに赤みがかったり、又は僅かに青みがかったりした色になることがあり得る。
この問題は、より大きなスクリーン上に映像を表示するために、より大出力の光源を使用した場合に顕著で、波長シフトによる僅かな色合いの変化が視認され易い。
【0008】
一方、特開2010−152326号公報(特許文献1)には、R,G,B各色のLED光源を色順次で発光させるプロジェクタにおいて、LEDへの供給電流が変化することに起因して、発光の色度も変化することに対応するため、例えばR色のフレームにおいても、G,B色の発光を混合し、色合成によってR色フレームのR色の色度を制御するものにおいて、今から生成しようとするR色フレームの色を、過去に生成したR色フレームの色度誤差が相殺補正されるような色度に設定することを毎回のフレーム生成の度毎に行うことにより、人間の視覚刺激における残像効果を利用して、常に正しい色再現ができるようにする技術が記載されている。しかし、この技術で相殺補正ができるためには、瞬間的には過剰補正を行う能力が必要になるため、各色の目標色度座標は、単色のものよりもかなり白側に設定する必要があり、色再現領域が狭くなってしまう欠点がある。さらに、R,G,B各色の照度センサを用いて、どのようにすれば色合成された光の色度を測定可能なのかが示されていない。なお、色順次方式でない、連続発光を必要とする場合に対し、この技術が応用可能であるか否かは記載されていない。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、前記した課題、即ち単色固体光源の温度が変化すると出力波長がシフトして色合いの変化として視認される課題を解決するためになされたものであり、単色固体光源を使用した単色光源装置において、温度変化にかかわらず安定した色の光を出力できるようにすることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、1個の原色を現すための光を出力する単色光源装置であって
複数の単色固体光源と、各単色固体光源に供給する電力を制御する制御部と、各単色固体光源の出力波長を検知する波長検知手段とを備えており、
複数の単色固体光源は、現すべき1個の原色の波長範囲に属し且つ互いに異なる波長の光を出力するものであり、
制御部は、波長検知手段が検知した波長に従って各単色固体光源への供給電力の比を制御するものであるという構成を有する。
【0012】
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、1個の原色を現すための光を出力する単色光源装置であって
複数の単色固体光源と、各単色固体光源に供給する電力を制御する制御部と、単色固体光源の温度を検知する温度検知手段と、各単色固体光源から出力された光の強度を検知する光強度検知手段とを備えており、
複数の単色固体光源は、現すべき1個の原色の波長範囲に属し且つ互いに異なる波長の光を出力するものであり、
制御部は、各単色固体光源からの光の強度が目標値になるように各単色固体光源への供給電力を光強度検知手段からの信号に従ってフィードバック制御するものであって、温度検知手段が検知した光源温度に従って目標値を設定するものであるという構成を有する。
【0013】
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、1個の原色を現すための光を出力する単色光源装置であって
複数の単色固体光源と、各単色固体光源に供給する電力を制御する制御部と、各単色固体光源の出力波長を検知する波長検知手段と、各単色光源から出力された光の強度を検知する光強度検知手段とを備えており、
複数の単色固体光源は、現すべき1個の原色の波長範囲に属し且つ互いに異なる波長の光を出力するものであり、
制御部は、波長検知手段が検知した波長に従って各単色固体光源への供給電力の比を選択して当該比で電力が供給されるよう制御するとともに、当該比を維持しつつ、光強度検知手段の検知結果に従って各単色固体光源による全体の光の強度が所定の強度になるよう供給電力を制御するものであるという構成を有する。
【0014】
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、前記請求項の構成において、前記温度検知手段は、前記各単色固体光源に対して熱伝導性良く設けた1個の伝熱体の温度を検知するものであり、伝熱体の温度を各単色固体光源の共通した温度として検知するものであるという構成を有する。
【0015】
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、前記請求項又はの構成において、前記波長検知手段は、前記各単色固体光源の変化し得る出力波長の範囲において互いに分光特性が異なるフィルタと受光素子からなる光センサで構成されたものであるという構成を有する。
【0016】
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、請求項1乃至いずれかに記載の単色光源装置をいずれか1個の原色を表現するために備えた表示装置である。

【発明の効果】
【0017】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、1個の原色を現すのに波長が異なる複数の単色固体光源を使用し、光源温度の変化に応じて供給電力比を制御するので、温度変化に拘わらず一定の色度を有する合成単色光を出力することができる。このため、他の原色と混色した際に温度変化によって色合いが変化してしまうことがなく、常に安定した色合いで色を表現することができる。
また、請求項2記載の発明によれば、1個の原色を現すのに波長が異なる複数の単色固体光源を使用し、出力波長に応じて供給電力比を制御するので、出力波長の変化に拘わらず一定の色度を有する合成単色光を出力することができる。このため、他の原色と混色した際に出力波長の変化によって色合いが変化してしまうことがなく、常に安定した色合いで色を表現することができる。
また、請求項3記載の発明によれば、1個の原色を現すのに波長が異なる複数の単色固体光源を使用し、光源温度の変化に応じて供給電力比を制御するので、温度変化に拘わらず一定の色度を有する合成単色光を出力することができる。このため、他の原色と混色した際に温度変化によって色合いが変化してしまうことがなく、常に安定した色合いで色を表現することができる。その上、光出力光強度のフィードバック制御の中に光源温度に応じた供給電力比の制御を組み込んでいるので、光源の劣化のような外因によらず常に色度を一定に保つことができる。
また、請求項4記載の発明によれば、1個の原色を現すのに波長が異なる複数の単色固体光源を使用し、出力波長の変化に応じて供給電力比を制御するので、出力波長の変化に拘わらず一定の色度を有する合成単色光を出力することができる。このため、他の原色と混色した際に出力波長の変化によって色合いが変化してしまうことがなく、常に安定した色合いで色を表現することができる。その上、供給電力の比を維持しつつ、光強度検知手段の検知結果に従って各単色固体光源による全体の光の強度が所定の強度になるよう供給電力を全体に増加又は減少させる制御を行うので、光強度も安定化させることができる。
また、請求項5記載の発明によれば、上記効果に加え、各単色固体光源を共通した伝熱体に対して設けて光源温度を共通にしているので、制御が簡略化される。
また、請求項6記載の発明によれば、上記効果に加え、各単色固体光源の変化し得る出力波長の範囲において互いに分光特性が異なるフィルタと受光素子からなる光センサで構成されたものであるので、構造が簡略化される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態の単色光源装置の概略図である。
図2】CIE1931による色度図と、色度x,yによる色の表現について示した図である。
図3】第1の実施形態の単色光源装置における各単色固体光源の色度補正の概念を示した図である。
図4】第1の実施形態において予め実験的に求めた結果に従って供給電力比を制御する例について示した図である。
図5】第2の実施形態の単色光源装置の概略図である。
図6図5に示す第1、第2の光センサ63,64の分光感度特性を示した図である。
図7】第2の実施形態の装置における制御例で使用されるデータの一例について示したものである。
図8】第3の実施形態の単色光源装置の概略図である。
図9】第3の実施形態における制御で使用される制御用データの一例を示した図である。
図10】第4の実施形態において波長検知手段の検知結果を利用して波長シフトと光強度とを求める点を示した図である。
図11】実施形態に係る表示装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の単色光源装置の概略図である。図1に示す単色光源装置は、1個の原色を現すための光を出力する単色光源装置である。この装置の大きな特徴点の一つは、1個の原色を現すのに複数種類(この実施形態では2種類)の光源11,12を用いている点である。
【0020】
2個の単色固体光源11,12は、現すべき1個の原色の波長範囲に属し且つ互いに異なる波長の光を放出するものである。例えば、装置が原色として赤色を現すものである場合、635〜660nm程度の範囲において互いに異なる波長の光を出力する2個の光源が使用される。緑であれば515〜535nm、青であれば440〜460nm程度である。例えば赤色であれば、発振波長635nmの半導体レーザーと、660nmの半導体レーザーとを使用することができる。各単色固体光源の出力は、偏光ビームスプリッタのような光束合成光学系2により重ね合わされ(即ち、加法混色し)、装置から出力される。但し、照射面上で直接重ね合わせる光束合成を行う場合もある。例えば、実施形態の装置がプロジェクタのような表示装置に使用される場合、被照明面である2次元光変調素子上で直接重ね合わせる場合がある。また、ロッドインテグレータやフライアイインテグレータ等のインテグレータの光入射面に重ねて入射させる構造が採用されることもあり得る。
【0021】
第1の実施形態の単色光源装置は、各単色固体光源11,12への供給電力を制御する制御部3を備えている。図1に示すように、各単色固体光源11,12には電源回路41,42が設けられている。各電源回路41,42は、DC電源によって給電される。制御部3は、各電源回路41,42に制御信号を送って各単色固体光源11,12への供給電力を変更することが可能なものである。
【0022】
第1の実施形態の装置は、各単色固体光源11,12の温度を検知する温度検知手段5を備えている。この実施形態では、2個の単色固体光源11,12は共通した伝熱体51に設けられており、温度検知手段5は伝熱体51の温度を検知するものである。各単色固体光源11,12は伝熱体51に対して熱伝導性良く取り付けられており、伝熱体51の温度と各単色固体光源11,12の温度は高い相関性で対応するようになっている。このため、伝熱体51の温度は各単色固体光源11,12の温度であるとして良い。以下、この温度を光源温度と呼ぶ。
【0023】
温度検知手段5は、伝熱体51の温度を検知して光源温度として出力する。伝熱体51の具体的な例としては、各単色固体光源11,12の空冷用に設けられる放熱板が考えられる。温度検知手段5としては、サーミスタのような接触式の温度センサを使用してもよく、赤外線温度計のような非接触の温度センサを使用しても良い。
【0024】
第1の実施形態の装置の別の大きな特徴点は、温度検知手段5が検知した光源温度に従い、装置から出力されるトータルの光の色合いが一定になるように各単色固体光源11,12への供給電力を制御する点である。以下、この点について図2を参照しながら説明する。
「トータルの光の色合いが一定になるように」とは、重ね合わされて装置から出力される光が色度図上で一定の座標(色度)になるように制御するということである。制御の具体的な説明の前に、色度図と、単色光源による色の表現について説明する。
【0025】
図2には、CIE1931による色度図と、色度x,yによる色の表現が示されている。人間が認識し得る色の表現には幾つかのものが周知であり、そのうちの代表的なものが図2に示すCIE1931(CIExy色度図)である。CIE1931では、波長毎に人間がどの程度感じるかの実験を通じて決めた曲線(等色関数x(λ),y(λ),z(λ))に基づいて色を表しており、色度座標xyは、以下の式1で与えられる。
【0026】
【数1】

【0027】
図2に示す色度図において、周知のように、境界線上の点は純色を意味し、境界線で囲まれた領域内の各座標が、人間が認識し得るすべての色である。従来のプロジェクタのような放電ランプを用いた表示装置の場合、フィルタを使ってRGBの原色を抽出している。フィルタは、ある幅の透過波長域を有しているから純色という訳にはいかず、RGBの各単色光源(各フィルタの透過光)は、境界線よりも少し内側に位置する。しかして、図2に示すRGBの各単色光源の色度座標が成す三角形で囲まれた領域が、当該三つの単色光源によって表示し得る色となる。この図2から解るように、より広範囲の色を表現したり、より原色に近い鮮明な色を現したりするには、色度図において境界線により近い座標(色度)の単色光源を使用する必要がある。
【0028】
図3は、第1の実施形態の単色光源装置における各単色固体光源の色補正の概念を示した図である。図3中の(1)は、2個の単色固体光源11,12の発光スペクトル分布を示した概略図、(2)は、温度変化により波長シフトが生じた際の発光スペクトル分布を示した概略図、(3)は、(2)の波長シフトが生じた際の合成単色光の色度制御について示した概略図である。
【0029】
図3では、一例として、単色光源装置が赤色を現すのに使用される場合を想定している。図3において、例えば、第1の単色固体光源11は波長640nmの半導体レーザー光源であり、第2の単色固体光源12は波長660nmの半導体レーザー光源である。640nm程度の発振波長の半導体レーザーは、例えばソニー株式会社から発表されている(非特許文献2)。また、660nmの固体光源は、DVDの記録、再生用のレーザーとして実用化されているものを使用することができる。
【0030】
このような2個の単色固体光源11,12を使用する場合、これら光の混合(重ね合わされた光)が出力光(以下、合成単色光と呼ぶ)になり、それがRGB3原色のうちのRの原色ということになる。
このような2個の単色固体光源11,12を使用する場合、これら光の混合(重ね合わされた光)が出力光(以下、合成単色光と呼ぶ)になり、それがRGB3原色のうちのRの原色ということになる。
例えば、図3(1)、(3)に示すように、第1の単色固体光源11のスペクトルSの色度座標がCであり、第2の単色固体光源12のスペクトルSの色度座標がCであるとする。この場合、合成単色光の色度座標はCのようになる。このとき、図3(3)に示すように、C、C、Cは、通常、色度座標上で同一直線上に位置する。
【0031】
上記単色光源装置を使用したプロジェクタのような表示装置の動作において、前述したように光源温度が変化すると、出力波長が変化する。この様子を図3(2)に示す。図3(2)に示すように、第1の単色固体光源のピーク波長がλ1’にシフトし、第2の単色固体光源のピーク波長がλ2’にシフトしたとする。
この場合、各単色光の色度座標も、図3(2)に示すように、C1’及びC2’にシフトする。これに伴い、合成単色光の色度も、C0’にシフトする。この場合、2次元光変調素子は、Rの単色光の色度がCであることを前提として光の透過又は反射を制御しているから、結果的に、スクリーン上での色合いが予定されていたものからずれてしまう。
【0032】
第1の実施形態の単色光源装置は、図3中に破線矢印31で示すように、C0’にシフトした色度座標をC0に戻す制御を行うものとなっている。具体的には、実施形態の装置は、各単色固体光源11,12への供給電力の比を変更することで色度をC0に戻すようになっている。例えば、各温度においてC0の色度が得られる供給電力比を予め実験的に求めて設定しておく。そして、温度検知手段5からの出力に従って供給電力比が変更されるように制御部3が構成される。図4には、この制御例が示されており、予め実験的に求めた結果に従って供給電力比を制御する例について示した図である。
【0033】
図4において、縦軸は第1の単色固体光源11への供給電力の比を百分率で示したものである。第1の単色固体光源11への供給電力をP1、第2の単色固体光源12への供給電力をP2としたとき、図4の縦軸は、P1/(P1+P2)×100(%)である。図4の横軸は、光源温度である。
図4に示すデータを得るには、特定の温度T1において、第1の単色固体光源11と第2の単色固体光源12とを動作させ、各々発光スペクトルS1,S2を分光器で測定して合成単色光の色度Cを計算する。そして、供給電力比を変化させながら合成単色光の色度が目的とする色度C0になった際の供給電力比をプロットする。次に、別の温度T2で同様に実験を行い、合成単色光の色度CがC0になった際の供給電力比をプロットする。これを繰り返し、光源装置の使用可能温度範囲で、例えば15℃から40℃の範囲の0.5℃の間隔で、C=C0となる供給電力比を求めれば良い。但し、図4は、20℃から5.5℃間隔でプロットした図となっている。図4に示すように、得られたデータについて最小二乗法を適用して近似直線を得るようにしても良い。
【0034】
実際の制御では、光源装置の動作が開始される際、装置が置かれた雰囲気の温度において2個の単色固体光源11,12が定格電力で動作した際に到達するであろう光源温度(以下、定格温度)Tsを予測し、定格温度TsにてC=C0となる電力比Prsで2個の単色固体光源11,12を動作させる。そして、温度検知手段5が、Tsから外れた温度T1を検知した場合、その温度においてC=C0となる電力比Pr1をを図4の直線から求め、その比で各単色固体光源11,12に電力を供給する。
【0035】
制御部3は、不図示の演算処理部や記憶部を備えている。記憶部には、図4に示すような制御用データが記憶され、制御用データに従って制御を行うシーケンス制御プログラムが実装されている。演算処理部は、シーケンス制御プログラムを実行し、制御用データと温度検知手段5からの信号に従って各単色固体光源への供給電力をシーケンス制御するようになっている。
【0036】
上記の例では、C=C0となる電力比のデータを実験的に求めて適用したが、その時々の温度変化に従って計算により求めて適用しても良い。例えば、図4に示す一次関数の直線において、傾きδを予め求めておく。そして、実際の制御では、温度変化ΔTにδを掛けて必要な電力比の変化ΔPrを求め、これを適用して制御するようにしても良い。
いずれにしても、実施形態の単色光源装置では、1個の原色を現すのに波長が異なる2個の単色固体光源11,12を使用し、光源温度の変化に応じて供給電力比を制御するので、温度変化に拘わらず一定の色度を有する合成単色光を出力することができる。このため、他の原色と混色した際に温度変化によって色合いが変化してしまうことがなく、常に安定した色合いで色を表現することができる。
【0037】
上記説明では、光源温度は、各単色固体光源11,12に熱伝導性良く設けられている1個の伝熱体51の温度(共通の温度)であったが、各単色固体光源11,12にそれぞれ設けられた冷却板のような伝熱体51の温度をそれぞれ測定して各単色固体光源11,12の温度としても良く、各単色固体光源11,12の温度を直接測定しても良い。
【0038】
尚、一方の単色固体光源について供給電力比を定めれば、他方の単色固体光源についての供給電力比も自動的に定まるので、光源温度の検知と電力供給比の決定は一方の単色固体光源について行えば足りる。但し、一方の単色固体光源についての温度変化と他方の単色固体光源の温度変化との間に大きな隔たりがある場合(即ち、使用条件に応じた温度変化の仕方が各単色固体光源において大きく異なる場合)、色度を一定に保つのが難しくなるので、個別に電力供給比を決定する必要がある。この場合、例えば、各単色固体光源について温度帯域を幾つか設定し、各単色固体光源の温度帯域の各組み合わせについて電力供給比を予め定めて表にしたデータにより制御を行うようにしてもよい。とはいえ、このような制御は複雑になる。各単色固体光源11,12を共通した伝熱体51に対して設け、光源温度を共通にしておくと、制御はシンプルになるので好適である。
【0039】
次に、第2の実施形態の単色光源装置について説明する。図5は、第2の実施形態の単色光源装置の概略図である。第2の実施形態の単色光源装置も、1個の原色を現すために使用される複数の単色固体光源11,12と、各単色固体光源11,12に供給する電力を制御する制御部3とを備えている。
第2の実施形態の装置が第1の実施形態の装置と異なるのは、各単色固体光源11,12の出力波長を検知する波長検知手段6を備えている点である。波長検知手段6の出力は制御部3に送られ、制御部3は、波長検知手段6が検知した各単色固体光源11,12の出力波長に従って各単色固体光源11,12への供給電力比を制御する。
【0040】
波長検知手段6としては、分光器を使用して構成することも原理的には可能であるが、コスト的な観点から、分光特性の異なる2個の光センサを使用した簡易的な構成が好適である。例えば、2個の単色固体光源の出力波長範囲において分光感度特性が異なる光センサを使用することができる。図5に示す実施形態は、この例の波長検知手段6を備えた実施形態となっている。
第1の単色固体光源11について設けられた波長検知手段6を例にして具体的に説明すると、波長検知手段6は、第1の単色固体光源11の出力光の一部を取り出す第1のビームスプリッタ61と、第1のビームスプリッタ61で取り出された光を2本に分ける第2のビームスプリッタ62と、第2のビームスプリッタ62で分けられた光が入射する第1、第2の2個の光センサ63,64とから主に構成されている。
【0041】
図6は、図5に示す第1、第2の光センサ63,64の分光感度特性を示した図である。図6に示すように、第1の光センサ63は、第1の単色固体光源11の出力波長を含む範囲(この例では600〜700nm)において、波長の変化に対して感度が一定の分光感度特性を有する。これに対し、第2の光センサ64は、当該波長範囲において一定の傾きを持った分光感度特性を有する。従って、2個の光センサ63,64からの出力の比を求めることで、基準波長からの波長シフトを推定することができるから、第1の単色固体光源11の出力波長を検知することができる。ここで基準波長とは、例えば、光センサ63,64において受光感度が一致する波長を指している。第2の単色固体光源12について設けられた波長検知手段6も同様の構成とすることができる。
【0042】
2個の単色固体光源11,12の出力波長に応じた適正な供給電力の比については、例えば、各単色固体光源11,12の出力波長の組合せに応じて合成単色光の色度が所定の色度Cになる供給電力比を予め実験的に求めてテーブルとして記憶部に記憶しておけば良い。そして、上記のような波長検知手段6の検知結果に基づき、テーブルから対応する供給電力比を選択し、選択された供給電力比になるように各電源回路41,42を制御すれば良い。図7は、この制御例で使用されるデータの一例について示したものである。
【0043】
図7に示すように、この制御例では、第1の単色固体光源11の出力波長と第2の単色固体光源12の出力波長の各組合せにおいて、設定すべき第1の単色固体光源11への供給電力比が示されている。この例では、先に図4について説明したものと同様に、各単色固体光源11,12は赤色の原色のための半導体レーザーであり、第1の単色固体光源11が640〜643nmの範囲の出力波長がシフトするもの、第2の単色固体光源12が660〜663nmの範囲で出力波長がシフトするものとなっている。
【0044】
図5に示す制御部3内の記憶部には、図7に示すテーブルのデータが記憶されている。実装されたシーケンス制御プログラムは、波長検知手段6が検知した各単色固体光源11,12の出力波長に従い、テーブルを参照して供給電力比を決定し、その供給電力比になるよう各電源回路41,42を制御するようプログラミングされている。
【0045】
上記制御例の他、例えば、検知された各単色固体光源11,12の出力波長に従い、供給電力比を計算により求めるようにすることも可能である。図2(1)に示すような発光スペクトルの形は、中心波長(又はピーク波長)がシフトしても変わりがないことが多い。従って、中心波長のシフトが波長検知手段6で検知された場合、そのときの色度は計算によって求めることができ、また合成単色光の色度も計算によって求めることができる。そして、シフトした色度を元の所定値C0に戻すのに必要な電力供給比の変化量を予め実験的に求めておき、それに従って各電源回路41,42を制御するようにしても良い。
【0046】
いずれにしても、第1の実施形態は、温度変化を捉えて波長シフトが生じている筈だとして供給電力比を変化させる制御を行うものであったが、第2の実施形態では、実際に生じる出力波長の変化を捉えて供給電力比を変化させる制御を行うので、より確実な制御となり、合成単色光の色度をより安定して保つことができる。
【0047】
尚、以上において述べた波長検知手段6に関し、前記した分光感度特性が異なる2個の光センサ63、64は、2個の、受光光量を検出するための受光素子の入射側に、分光透過率の異なるフィルタをそれぞれ配置することで容易に実現することができる。その際、当然ながら、フィルタと受光素子とから成る各光センサの分光特性は、フィルタの分光透過特性と受光素子の分光感度特性とを合成したものとなる。また以上においては、2個の光センサ63、64の分光感度特性は、一方が正、他方が負の傾きを有する場合や、傾きが両方とも正または負であるが、その絶対値が異なるようにしてもよい。
【0048】
さらに当然ながら、波長検知手段6において、各光センサ63,64又は各検出系の分光感度特性は、それぞれの波長検知対象である単色固体光源11,12それぞれのバラツキを含めた、対象温度変化範囲内の波長変化の上限と下限の間でのみ規定すればよい。即ち、波長変化の上限と下限の外においては、各光センサ63,64又は各検出系の分光感度特性はどのようであっても構わない。
【0049】
次に、第3の実施形態の単色光源装置について説明する。図8は、第3の実施形態の単色光源装置の概略図である。
第3の実施形態の単色光源装置も、各単色固体光源11,12への供給電力の制御を行う点で第1の実施形態と共通している。第3の実施形態の装置が第1の実施形態の装置と異なるのは、温度検知手段5に加えて光強度検知手段7を備えている点である。光強度検知手段7は、各単色固体光源11,12から出力される光の強度を検知するものである。
【0050】
光強度検知手段7としては、図8に示すように、各単色固体光源11,12の出力光路上にビームスプリッタ71を設けて出力光の一部を取り出し、取り出した出力光が入射する位置に光センサ72を設けた構成を採用することができる。各光センサ72からの出力は、温度検知手段5の出力とともに制御部3に送られて、各単色固体光源11,12への供給電力の制御に利用される。
【0051】
第3の実施形態における制御例について説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した温度検知手段5による色度安定化の制御を行うに際し、単色固体光源11,12の光強度のフィードバック制御を行うものである。図9は、第3の実施形態の単色光源装置で使用される制御用データの一例を示した図である。
【0052】
具体的に説明すると、第3の実施形態では、光強度のフィードバック制御の目標値(以下、光強度目標値と呼ぶ)が各光源温度について予め定められている。この関係を示したのが、図9である。図9の横軸は光源温度、縦軸は光強度目標値である。各光強度目標値は、第1の実施形態と同様、合成単色光の色度が所定のC0になる値として予め実験的に調べられて決定されたものである。図9に示す例では、温度が上昇するにつれて第1の単色固体光源11の光強度目標値は上昇し、第2の単色固体光源12の光強度目標値は下降する。この例では、両方の直線が交差する点(両方の光強度目標値が同じになる光源温度)があるが、これは必須ではなく、交差する点がない場合もある。
【0053】
制御部3は、設定されたある初期値で各単色固体光源11,12に電力供給を開始する。この初期値は、図9に示すように、電力供給開始時の光源温度(T0)における各光強度目標値(P01,P02)である。光源温度に変化がない限りは、そして、温度検知手段5からの信号により光源温度が変化したと判断した場合、光強度目標値を変更する。例えば、図9に示すようにT0からT1に変化した場合、T1における光強度目標値(P11,P12)に変更する。そして、光強度がP11,P12になるように制御部3が各電源回路41,42をフィードバック制御する。
【0054】
第3の実施形態では、各単色固体光源11,12の光強度をフィードバック制御することで合成単色光の色度を一定に保っているので、光源の劣化のような、各単色固体光源への供給電力と光強度との再現性が低下した状況の下でも、色度を一定に保つことができる。例えば光源の劣化と光源温度の変化とが同時に生じた場合、予め決められた電力供給比に変更するだけでは色度が一定に保てない場合がある。供給電力比を所望の値にしても劣化のために各単色固体光源11,12の出力比が所望のものにならないためである。第3の実施形態では、光強度のフィードバック制御の中に光源温度に応じた供給電力比の制御を組み込んでいるので、このような問題はなく、光源の劣化のような外因によらず常に色度を一定に保つことができる。
【0055】
尚、第3の実施形態において、光強度検知手段7を1個のみ用いて各単色固体光源11,12のフィードバック制御を行うこともできる。例えば、光束合成光学系2により重ね合わされた光の光路上に1個の光強度検知手段7を配置した上で、各々の単色固体光源11,12を交互に消灯する。そして、光センサ72の出力に基づいて、消灯していない方の単色固体光源について、上記光源温度に基づく光強度目標値を達成するよう、一定期間供給電力をフィードバック制御し、その後フィードバック制御を止めて、止める直前のフィードバック制御における最後の供給電力の値を保持する、いわゆる間欠フィードバックの技術によって制御すればよい。但し、実施形態の装置がプロジェクタのような表示装置に使用される場合は、画像を表示していない(例えば暗黒表示の)期間において、間欠フィードバックを回すようにする必要がある。このように1個の光強度検出手段7のみで各単色固体光源11,12からの光の強度を検知するようにすると、構造が簡素化でき、低コスト化できる。
【0056】
また、第1の実施形態の変形例として、各光強度検知手段7を設け、2個の単色固体光源11,12を総合した光の強度が目標値になるよう制御しても良い。即ち、温度検知手段5が検知した温度に従って各単色固体光源11,12への供給電力の比を規定するともに、各光強度検知手段7からの出力を制御部3において加算して全体の光強度を算出する。そして、全体の光強度の目標値を予め設定しておき、算出された光強度との差分を求める。そして、光源温度に従って規定された各供給電力の比を維持しつつ、全体の光強度の目標値からの差分が無くなるように全体に供給電力を増加又は減少させる。
【0057】
いま述べたように、この構成例の場合は、各単色固体光源11,12に対する光強度検知手段7のそれぞれの出力は、制御部3のなかで加算されるため、各単色固体光源11,12それぞれに対して、合わせて2個の光強度検知手段を設けるのではなく、光束合成光学系2により重ね合わされた光束に対し1個の光強度検知手段7を設けるようにしても構わない。このようにすることにより、構造が簡素化でき、低コスト化できる利点がある。但し、各単色固体光源11,12のアンバランスな劣化に対しては、色度の誤差が生じる可能性がある点に注意が必要である。しかし、定期的に更正を行うなどの使用上の工夫により、実用上の不都合を回避することができる。
【0058】
次に、第4の実施形態の単色光源装置について説明する。この実施形態は、第2の実施形態の変形例に相当するものであり、波長検知手段6の検知結果を利用した色度安定化の制御に加えて光強度の制御を行うものである。図10は、波長検知手段の検知結果を利用して波長シフトと光強度とを求める点を示した図である。
【0059】
第4の実施形態では、第2の実施形態で用いられた波長検知手段6と同じものを使用することが想定されており、従って図10では図6と同じ2個の光センサ63,64の受光感度特性が示されている。
例えば、第1の単色固体光源11について基準波長が640nmであったとする。この基準波長における各光センサ63,64の受光感度は予め求められており、各々g、gとする。図10は、一例として、2個の光センサ63,64の受光感度が同じになる波長を基準波長とする場合を表しており、g=g=gである。
【0060】
いま、第1の単色固体光源11から出力される光の強度をF、基準波長からの波長シフトをδλとし、このときに光センサ63,64から出力される電流値がそれぞれI,Iであったとする。この場合、第1の光センサ63の分光感度特性直線の傾きをkとし、第2の光センサ64の分光感度特性直線の傾きをkとすれば、この関係は次のように式2のように表せる。
【0061】
【数2】
式2において、{ } の中が、図6の縦軸の量である受光感度に等しい。
【0062】
式2は、FとF・δλを未知数とした2元連立1次方程式であるから、初等的に解くことができて、FとF・δλが、従ってFとδλが、それぞれ求められる。尚、図6に示す例ではkAが零であるが、これ以外にもk,k,g,gの値については、この式2の行列式が零にならない限り、様々な組合せを採用することができる。
【0063】
このように第4の実施形態の単色光源装置では、各単色固体光源11,12それぞれに設けた波長検知手段6の出力に基づいてそれぞれの波長と光強度Fが求められる。そして、第2の実施形態と同様、各単色固体光源11,12の出力波長に従って所定の色度Cを達成する供給電力の比を決定する。その上で、光強度Fに基づいて各単色固体光源11,12の光強度の制御が行われる。例えば、光強度Fがについて所定の基準値を予め定めておき、算出された光強度Fについて基準値からの差分を求め、この差分が無くなるように供給電力比を維持したまま全体に供給電力を増加又は減少させる。
【0064】
より具体的な一例を示すと、装置の動作モードとして通常モードと省電力モードが設定されており、省電力モードは通常より30%低い光出力のモードであり、それぞれについて定格の光強度が基準値として定められているとする。省電力モードで動作していた各単色光源11,12を通常モードに切り替えた際、制御部3は電力を30%上げるよう各電源回路41,42を制御する。そして、各波長検知手段6での検知結果に基づいて各単色固体光源11,12の波長と光強度Fを求め、各波長に基づいて供給電力比を選択し、現在の比率と異なるのであれば変更する。そして、各単色固体光源11,12の光強度Fが基準値からずれていれば、その差分が無くなるよう供給電力比を維持したまま電力を全体に増加又は減少させる。尚、供給電力を全体に増加又は減少させた際、光源温度が変化することがあり得る。この場合には、各波長検知手段6の出力に基づいてさらに供給電力比を変更する制御が行えばよく、通常はこのような波長と光強度の制御は、定期的に繰返し行われる。
【0065】
以上において述べた各実施形態において、各電源回路41,42を制御する制御部3は、例えばアナログ的なフィードバック制御用の専用のICを利用してハードウェア的に構成してもよいが、マイクロプロセッサを用いてプログラム処理により実現することもできる。また、例えば、アナログで入力される信号は、入力段でAD変換してディジタル信号に変換し、マイクロプロセッサ内のディジタル演算によって生成されたディジタルデータに基づき、また必要があればDA変換によりアナログ信号に変換して出力するなどして、所期の機能を発揮するものとして実現してもよい。このような処理機能を1個のICに集積した、一般にDSP(digital signal processor)と呼ばれる専用のICを使用して実現することは、本発明における制御部3の構成としてとりわけ好適である。
【0066】
また、各実施形態において、複数の単色固体光源11,12は、原色として赤色を表現するための半導体レーザーを例にして説明したが、緑や青についても同様に実施できる。例えば、緑色については、515〜535nm程度のレーザーを用いることができる。より具体的には、515nmのレーザーとして日亜化学工業(株)製の半導体レーザーNDG4216−Eが使用でき、535nmのレーザーとしてNecsel Intellectual Property,Inc.(本社:米国カリフォルニア州)製のものを使用することができる。
また、青色については、440〜460nm程度のレーザーを使用することができる。この場合、例えば440nmのレーザーとして日亜化学工業(株)製の半導体レーザーNDB4116−Eが使用でき、460nmのレーザーとして同社のDDB4216−Eを使用することができる。
また、本発明の単色光源装置においては、半導体レーザー以外の固体光源を単色固体光源として用いることができる。例えば、LED、SHG(Second Harmonic Generation)光源、有機EL光源、無機EL光源等である。
【0067】
尚、各実施形態の説明において、各単色固体光源11,12の供給電力を制御すると説明したが、半導体レーザーのように多くの固体光源は電流値が出力に依存する。従って、電流を制御するとして発明を捉えることも可能である。直接的な制御対象は電流であったとしても、結果的には電力を制御していることに変わりはない。この点は、電圧を制御する場合も同様である。
【0068】
次に、表示装置の発明の実施形態について説明する。図11は、本発明の実施形態に係る表示装置の概略図である。
実施形態の表示装置は、上述したいずれかの実施形態の単色光源装置を搭載したものである。図11では、表示装置の例として、プロジェクタやデジタルシネマ映写機が想定されている。表示装置は、RGBそれぞれの単色光源装置81と、単色光源装置81によって単色光が照射される2次元光変調素子82と、2次元光変調素子82で作られた映像をスクリーン83に投影するための投影レンズ84等を備えている。
【0069】
2次元光変調調素子や投影光学系の構成は、表示装置の方式により異なる。図11は、例えばLCD方式を想定して描かれている。2次元光変調素子82には、透過型液晶素子が使用されており、2次元光変調素子82には単色光源装置81からの光がフライアイインテグレータ85を介して照射されるようになっている。そして、2次元光変調素子82からの透過光をダイクロイックプリズム86を介して3色合成し、スクリーン83に投影する投影光学系84が搭載される。尚、各単色光源装置81は、単色固体光源からの光が広がった状態で出射するよう不図示のレンズを内蔵している。
この他、LCOS方式(LCoSは株式会社内田洋行の登録商標)の場合、反射型の液晶素子が2次元光変調光学系として使用され、液晶素子に光照射して反射光をスクリーンに投影する投影光学系が採用される。また、DLP方式(DLPはテキサスインスツルメンツ社の登録商標)の場合、2次元光変調素子82にはDMD(Digital Mirror Device)が使用される。
【0070】
単色光源装置は、RGBのそれぞれについて搭載される。従って、3機の単色光源装置が搭載される。前述したように、各単色光源装置81では、1個の原色を現すのに複数の単色固体光源が使用され、温度変化による波長シフトを補償するように電力供給比が変更されるので、各原色の色度が温度変化によらず一定に保たれる。従って、スクリーン83上に投影される映像の色合いも温度変化によらず常に安定したものになる。
【符号の説明】
【0071】
11 単色固体光源
12 単色固体光源
2 光束合成光学系
3 制御部
41 電源回路
42 電源回路
5 温度検知手段
6 波長検知手段
7 光強度検知手段
81 単色光源装置
82 2次元光変調素子
83 スクリーン
84 投影光学系
85 フライアイインテグレータ
86 ダイクロイックプリズム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11