(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198183
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】電線収容プロテクタ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20170911BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G3/04 018
B60R16/02 623T
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-516814(P2017-516814)
(86)(22)【出願日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2015073729
(87)【国際公開番号】WO2017033262
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】末永 亮
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−125037(JP,A)
【文献】
特開2000−134759(JP,A)
【文献】
特開2004−159442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樋状に延びるプロテクタ本体と、該プロテクタ本体の上方開口部を覆蓋する蓋体と、前記プロテクタ本体と前記蓋体を固定的に保持するロック機構を備え、
前記ロック機構が、前記蓋体に突設されて先端部の外面に係合突起が設けられた弾性突片と、前記プロテクタ本体の側壁の内部を挿通して前記側壁の上面に開口すると共に、前記係合突起と係合する係合部を有する弾性突片挿通孔とを含んでおり、前記弾性突片挿通孔に挿通された前記弾性突片の前記係合突起と前記係合部が係合して前記蓋体が前記プロテクタ本体に対して保持されるようになっている電線収容プロテクタにおいて、
前記プロテクタ本体の前記側壁の前記上面には、前記弾性突片挿通孔の近傍に前記蓋体側に向かって突出する嵌合突起が設けられている一方、
前記蓋体には、平面視で前記嵌合突起に対応する位置に嵌合突起収容孔が貫設されている
ことを特徴とする電線収容プロテクタ。
【請求項2】
前記ロック機構の前記係合突起と前記係合部が正規に係合した状態で、前記嵌合突起の先端面が、前記嵌合突起収容孔の上方開口部が開口する蓋体上面と面一となるように設定されている請求項1に記載の電線収容プロテクタ。
【請求項3】
前記嵌合突起が、前記弾性突片挿通孔の幅方向両側の近傍に一対設けられている一方、前記蓋体にも、平面視で前記一対の嵌合突起に対応する位置に前記嵌合突起収容孔が一対貫設されている請求項1または2に記載の電線収容プロテクタ。
【請求項4】
前記嵌合突起が、前記プロテクタ本体の前記側壁の外面から離隔した位置に設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の電線収容プロテクタ。
【請求項5】
前記嵌合突起が、前記プロテクタ本体の内側に凸となる半円断面形状で突出している請求項1〜4の何れか1項に記載の電線収容プロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に配索される多数の電線を挿通保持する電線収容プロテクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の電装系においては、配索される多数の電線を、電線収容プロテクタに挿通保持して適所に固定することにより、電線を外部の干渉部材から保護したり、電線の経路を規制することが行われている。
【0003】
ところで、このような電線収容プロテクタは、実開平6−70415号公報(特許文献1)等に記載されているとおり、樋状のプロテクタ本体と、プロテクタ本体の上方開口部を覆蓋する蓋体とを含んで構成されている。そして、多数の電線をプロテクタ本体に挿通した後、プロテクタ本体の側壁外方に突出して設けられたロック機構を介して、蓋体をプロテクタ本体に固定することにより、多数の電線を収容状態に保持できるようになっている。
【0004】
ところが、従来構造の電線収容プロテクタでは、ロック機構がプロテクタ本体の側壁の外方に突出して形成されていることから、ロック機構の形成スペースの分、プロテクタ本体の電線収容部の容積を小さくせざるを得ないという問題を内在していた。特に近年では、自動車のコンパクト化の要求に加えて、車載電装品も増加傾向にあり、プロテクタの配設許容スペースを大きくすることなく、プロテクタ本体の収容スペースを大きくする必要がある。従来構造の電線収容プロテクタでは、かかる要求に十分に対応しきれず、プロテクタの収容量に対して電線が多すぎてプロテクタ本体に蓋体をロック嵌合する作業が困難になる場合もあった。
【0005】
そこで、本出願人は、特開2014−82880号公報(特許文献2)において、蓋体の外周縁部からプロテクタ本体に向かって突出する弾性突片と、プロテクタ本体の側壁の内部を挿通して上面に開口する弾性突片挿入孔を含んで構成され、弾性突片挿通孔の内部に挿通された弾性突片の先端部に設けられた係合突起が、弾性突片挿入孔の内面に突設された係合部に係合することにより、蓋体のプロテクタ本体からの離脱を防止するロック機構を備えた電線収容プロテクタを提案した。かかる電線収容プロテクタによれば、ロック機構がプロテクタ本体の側壁の内部に設けられていることから、ロック機構がプロテクタ本体の側壁の外方に突出して設けられていた従来構造に比して、プロテクタ本体の側壁を、電線収容プロテクタの配設許容スペースの最大範囲にまで広げて形成することができる。それゆえ、側壁の外方に突出するロック機構により発生していた、プロテクタ本体周辺のデッドスペースを削減して、プロテクタ本体内の電線収容スペースを大きく確保することができる。
【0006】
しかしながら、このようにロック機構をプロテクタ本体の側壁の内部に設ける構造では、プロテクタ本体の側壁の上面に開口する弾性突片挿通孔の開口面積を小さくせざるを得ず、位置確認もし難いことから、弾性突片の弾性突片挿通孔への挿通作業が難しいという問題を内在していた。さらに、ロック機構が、弾性突片の先端部に形成された係合突起と弾性突片挿通孔の内部に形成された係合部によって構成されていることから、係合突起と係合部の係合状態を外部から目視確認することも困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−70415号公報
【特許文献2】特開2014−82880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ロック機構のコンパクト化による電線収容量の増大と、組付作業性の向上と、ロック機構の正規係合の確認性の向上とをいずれも達成することができる、新規な構造の電線収容プロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、樋状に延びるプロテクタ本体と、該プロテクタ本体の上方開口部を覆蓋する蓋体と、前記プロテクタ本体と前記蓋体を固定的に保持するロック機構を備え、前記ロック機構が、前記蓋体に突設されて先端部の外面に係合突起が設けられた弾性突片と、前記プロテクタ本体の側壁の内部を挿通して前記側壁の上面に開口すると共に、前記係合突起と係合する係合部を有する弾性突片挿通孔とを含んでおり、前記弾性突片挿通孔に挿通された前記弾性突片の前記係合突起と前記係合部が係合して前記蓋体が前記プロテクタ本体に対して保持されるようになっている電線収容プロテクタにおいて、前記プロテクタ本体の前記側壁の前記上面には、前記弾性突片挿通孔の近傍に前記蓋体側に向かって突出する嵌合突起が設けられている一方、前記蓋体には、平面視で前記嵌合突起に対応する位置に嵌合突起収容孔が貫設されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、ロック機構がプロテクタ本体の側壁の内部に設けられてコンパクトに設計されていることから、ロック機構がプロテクタ本体の側壁の外方に突出して設けられていた従来構造に比して、プロテクタ本体の側壁を、電線収容プロテクタの配設許容スペースの最大範囲にまで広げて形成することができ、プロテクタ本体内の電線収容スペースの増大を図ることができる。
【0011】
加えて、プロテクタ本体の側壁の上面において、弾性突片挿通孔の近傍に嵌合突起が設けられている。これにより、蓋体に設けられた弾性突片をプロテクタ本体に設けられた弾性突片挿通孔に対して上方から組み付ける際に、目視が容易なプロテクタ本体の上面に突出する嵌合突起を目印に弾性突片を弾性突片挿通孔に対して位置決めすることができ、組付作業性の向上を図ることができる。さらに、蓋体には、平面視で嵌合突起に対応する位置に嵌合突起収容孔が貫設されていることから、嵌合突起収容孔に対する嵌合突起の収容状態を上方から目視確認することで、ロック機構の係合状態を確認できる。例えば、嵌合突起収容孔の上方から嵌合突起の頂部が目視し難い場合は、ロック機構が半係合状態であることが確認できる。加えて、嵌合突起を嵌合突起収容孔に挿通配置することにより、プロテクタ本体に対する蓋体のガタツキを有利に防止することができる。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記ロック機構の前記係合突起と前記係合部が正規に係合した状態で、前記嵌合突起の先端面が、前記嵌合突起収容孔の上方開口部が開口する蓋体上面と面一となるように設定されているものである。
【0013】
本態様によれば、ロック機構の正規係合状態で、嵌合突起の先端面が嵌合突起収容孔の上方開口部が開口する蓋体上面と面一となるように設定されていることから、嵌合突起の先端面が嵌合突起収容孔の周囲の蓋体上面と面一となる位置にあるか否かを外部から目視や触感により一層確実に確認することができる。これにより、蓋体のプロテクタ本体に対する非正規組み付け状態を一層容易かつ確実に判別することが可能となる。しかも、嵌合突起が嵌合突起収容孔の上方開口部から突出しないことから、嵌合突起の先端部が他部材に干渉するなどの不具合も未然に防止されている。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第一または第二の態様に記載のものにおいて、前記嵌合突起が、前記弾性突片挿通孔の幅方向両側の近傍に一対設けられている一方、前記蓋体にも、平面視で前記一対の嵌合突起に対応する位置に前記嵌合突起収容孔が一対貫設されているものである。
【0015】
本態様によれば、弾性突片挿通孔の幅方向両側の近傍に一対の嵌合突起が設けられていることから、弾性突片挿通孔の位置確認が一層容易となり、組付作業性のさらなる向上が図られる。また、プロテクタ本体に対する蓋体のガタツキも一層確実に防止される。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記嵌合突起が、前記プロテクタ本体の前記側壁の外面から離隔した位置に設けられているものである。
【0017】
本態様によれば、嵌合突起が、プロテクタ本体の側壁の外面から離隔した位置に設けられていることから、蓋体の嵌合突起収容孔を画成する外周縁部側の壁部の厚さを十分に確保することが可能となる。これにより、蓋体の嵌合突起収容孔に挿通配置されたプロテクタ本体の嵌合突起を十分な強度をもって保持することができる。
【0018】
本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記嵌合突起が、前記プロテクタ本体の内側に凸となる半円断面形状で突出しているものである。
【0019】
本態様によれば、嵌合突起が、プロテクタ本体の内側に凸となる半円断面形状で突出し、目視確認が容易な嵌合突起の外面側が、プロテクタ本体の側壁と平行な平面で広がっている。それゆえ、嵌合突起の目印としての視認性やガイド性の向上を図ることができる。しかも、嵌合突起の内面側が円弧状であることから、外面側の広い平面で受ける応力を有利に分散でき、蓋体のプロテクタ本体に対する変位荷重を支持するに充分な剛性を備えた嵌合突起を狭いプロテクタ本体の側壁上面に有利に形成できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電線収容プロテクタによれば、ロック機構がプロテクタ本体の側壁の内部に設けられてコンパクトに設計されていることから、従来構造に比してプロテクタ本体の側壁を電線収容プロテクタの配設許容スペースの最大範囲にまで広げて形成でき、プロテクタ本体内の電線収容スペースの増大を図ることができる。加えて、プロテクタ本体の側壁上面の弾性突片挿通孔の近傍に嵌合突起が設けられている。これにより、蓋体の弾性突片をプロテクタ本体の弾性突片挿通孔に上方から組み付ける際に、目視が容易な嵌合突起を目印に弾性突片を弾性突片挿通孔に位置決めでき、組付作業性の向上を図ることができる。さらに、蓋体の嵌合突起に対応する位置に嵌合突起収容孔が貫設されていることから、嵌合突起収容孔に対する嵌合突起の収容状態を目視確認することで、ロック機構の係合状態を確認できる。例えば、嵌合突起収容孔の上方から嵌合突起の頂部が目視し難い場合は、ロック機構が半係合状態である。また、嵌合突起を嵌合突起収容孔に挿通配置することにより、プロテクタ本体に対する蓋体のガタツキを有利に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態としての電線収容プロテクタの全体斜視図。
【
図2】
図1に示す電線収容プロテクタの分解斜視図におけるロック機構の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
先ず、
図1〜5には、本発明の一実施形態としての電線収容プロテクタ10が、示されている。この電線収容プロテクタ10は、樋状に延びるプロテクタ本体12と、プロテクタ本体12の上方開口部14を覆蓋する蓋体16を含んで構成されている。かかる電線収容プロテクタ10は、プロテクタ本体12内に図示しないワイヤーハーネスを挿通状態で収容して用いられる。以下の説明において、上方とは、
図1中の上方、下方とは、
図1中の下方、また前方とは、
図1中の左方、後方とは、
図1中の右方を言うものとする。
【0024】
図1〜2に示されているように、プロテクタ本体12は、底壁18と底壁18の両側から立ち上がる一対の側壁20,20、を含んで樋状に延びる構成とされており、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている。また、プロテクタ本体12の側壁20には、側壁20の内部を高さ方向に挿通して側壁20の上面22に開口する弾性突片挿通孔24が形成されている。本実施形態では、弾性突片挿通孔24は、奥側と手前側の側壁20それぞれに2箇所形成されているが、長手方向(
図1中、左右方向)に離隔して、必要に応じて任意の数を設けてもよい。ここで、弾性突片挿通孔24の形成部位における側壁20の内面26が、僅かにプロテクタ本体12の内側に突出されて形成されている。さらに、
図5に示されているように、弾性突片挿通孔24には、弾性突片挿通孔24を画成する外周側内面28の下方側が切り欠かれることにより略凹所状の係合部30が設けられており、かかる係合部30の上端面32が、プロテクタ本体12の内方斜め下方に向かって傾斜する傾斜面とされている。加えて、
図2に示されているように、プロテクタ本体12の側壁20の上面22には、弾性突片挿通孔24の幅方向(
図2中、左右方向)両側の近傍において蓋体16側に向かって突出する一対の嵌合突起34,34が設けられている。より詳細には、一対の嵌合突起34,34は、プロテクタ本体12の側壁20の外面36から離隔した位置に設けられており、プロテクタ本体12の内側に向かって凸となる一定の半円断面形状で突出して形成されている。
【0025】
一方、
図1〜2に示されているように、蓋体16は、その外周縁部において、プロテクタ本体12側に向かって突出する略矩形状の複数の弾性突片40が板厚方向に撓み変形可能に突設されている。蓋体16は、プロテクタ本体12と同じく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている一方、プロテクタ本体12とは別体成形とされている。なお、本実施形態では、弾性突片40は、上述の弾性突片挿通孔24に対応して、4箇所に設けられている。また、弾性突片40の先端部の外面42には、板厚方向外方に突出する係合突起44が設けられている。より詳細には、
図5に示されているように、係合突起44の下端面46は、プロテクタ本体12と蓋体16の組付方向において、下端側から上端側に向かうに従って次第に外方に突出するテーパ面とされている一方、係合突起44の上端面48は、弾性突片挿通孔24の係合部30の上端面32と同じく、プロテクタ本体12の内方斜め下方に向かって傾斜する傾斜面とされている。
【0026】
加えて、
図2に示されているように、蓋体16には、平面視で一対の嵌合突起34,34に対応する位置すなわち弾性突片40が突設された部位の幅方向(
図2中、左右方向)両側の近傍において、一対の嵌合突起収容孔50,50が貫設されている。より詳細には、一対の嵌合突起収容孔50,50は、蓋体16の外周面52から離隔した位置に設けられており、蓋体16の内側に向かって凸となる一定の半円断面形状で貫通して形成されている。なお、嵌合突起収容孔50は、平面視で嵌合突起34のやや大きい相似形とされている。
【0027】
上述の如き構造とされた電線収容プロテクタ10のプロテクタ本体12に蓋体16を組み付ける際には、先ず、プロテクタ本体12の複数の弾性突片挿通孔24に対してそれぞれ対応する蓋体16の弾性突片40を挿入する。この際、目視が容易なプロテクタ本体12の側壁20の上面22に突設された一対の嵌合突起34,34を目印にして、一対の嵌合突起34,34が蓋体16に貫設された一対の嵌合突起収容孔50,50に嵌まるように蓋体16をプロテクタ本体12に対して上方から組み付ける。これにより、弾性突片40を弾性突片挿通孔24に対して位置決めした状態で容易に挿入することができる。より詳細には、弾性突片挿通孔24に挿入された弾性突片40は、弾性突片40の係合突起44の下端面46がテーパ状の傾斜面とされていることから、弾性突片40の先端部がプロテクタ本体12の内面側に向かって弾性変形されることにより、弾性突片挿通孔24への挿入が許容されるようになっているのである。そして、弾性突片40を弾性突片挿通孔24の奥方へとさらに押し込むことにより、弾性突片40の先端部に形成された係合突起44が係合部30の上端面32を越えると、弾性突片40の先端部が弾性復帰して係合突起44が弾性突片挿通孔24の係合部30に係合される。これにより、蓋体16がプロテクタ本体12に対して固定的に保持されるようになっているのである。以上のように、本実施形態では、弾性突片挿通孔24の係合部30と弾性突片40の係合突起44により、ロック機構が構成されているのである。
【0028】
このように、ロック機構を構成する弾性突片挿通孔24の係合部30と弾性突片40の係合突起44が正規に係合した状態において、本実施形態では、
図4に示されているように、嵌合突起34の先端面54が、嵌合突起収容孔50の上方開口部56が開口する蓋体上面58と面一となるように設定されている。また、嵌合突起収容孔50が平面視で嵌合突起34のやや大きい相似形とされていることから、かかる正規係合状態においては、嵌合突起34は嵌合突起収容孔50に対して僅かな隙間60を隔てて遊嵌されている。
【0029】
このような構造とされた電線収容プロテクタ10によれば、ロック機構を構成する係合部30と係合突起44がプロテクタ本体12の側壁20の内部に設けられてコンパクトに設計されていることから、従来構造に比してプロテクタ本体12の側壁20を電線収容プロテクタ10の配設許容スペースの最大範囲にまで広げて形成することができ、プロテクタ本体12内の電線収容スペースの増大を図ることができる。
【0030】
また、電線収容プロテクタ10のプロテクタ本体12に蓋体16を組み付ける際には、先ず、目視が容易なプロテクタ本体12の側壁20の上面22に突設された一対の嵌合突起34,34を目印にして、一対の嵌合突起34,34が蓋体16に貫設された一対の嵌合突起収容孔50,50に嵌まるように蓋体16をプロテクタ本体12に対して上方から組み付ける。これにより、弾性突片40を弾性突片挿通孔24に対して位置決めした状態で容易に挿入することができるようになっていることから、組付作業性の向上を図ることができるのである。
【0031】
さらに、正規係合状態で、嵌合突起34の先端面54が、嵌合突起収容孔50の上方開口部56が開口する蓋体上面58と面一となるように設定されていることから、面一となる位置にあるか否かを外部から目視や触感により確認することにより、蓋体16のプロテクタ本体12に対する非正規組み付け状態を容易かつ確実に判別することが可能となる。しかも、嵌合突起34が嵌合突起収容孔50の上方開口部56から突出しないように構成されていることから、嵌合突起34の先端部が近傍の図示しない他部材に干渉するなどの不具合も未然に防止されている。加えて、嵌合突起34が嵌合突起収容孔50に挿通配置されていることにより、プロテクタ本体12に対する蓋体16のガタツキを有利に防止することができるようになっている。
【0032】
また、弾性突片挿通孔24の近傍に設けられた嵌合突起34とそれに対応する嵌合突起収容孔50が一対設けられていることから、嵌合突起34を目印にした弾性突片40の弾性突片挿通孔24に対する位置決めが一層容易に行いことができ、組付作業性のさらなる向上が図られると共に、プロテクタ本体12に対する蓋体16のガタツキも一層確実に防止できるようになっている。
【0033】
さらに、嵌合突起34が、プロテクタ本体12の内側に向かって凸となる一定の半円断面形状で突出して形成されていることから、目視確認が容易な嵌合突起34の外面側が、プロテクタ本体12の側壁20と平行な平面で広がっている。それゆえ、嵌合突起34の目印としての視認性やガイド性の向上を図ることができる。しかも、嵌合突起34の内面側が円弧状であることから、外面側の広い平面で受ける応力を有利に分散でき、蓋体16のプロテクタ本体12に対する変位荷重を支持するに充分な剛性を備えた嵌合突起34を狭いプロテクタ本体12の側壁20の上面22に有利に形成することができる。加えて、嵌合突起34が、プロテクタ本体12の側壁20の外面36から離隔した位置に設けられていることから、蓋体16の嵌合突起収容孔50を画成する外周縁部側の壁部62の厚さ:T(
図4参照)を十分に確保することが可能となる。それゆえ、蓋体16の嵌合突起収容孔50に挿通配置されたプロテクタ本体12の嵌合突起34を十分な強度をもって保持することができる。
【0034】
以上、本発明の複数の実施形態について詳述したが、本発明はこれらの具体的な記載によって限定されない。例えば、上記実施形態では、嵌合突起34とそれに対応する嵌合突起収容孔50が一対設けられていたが、1個でもよいし3個以上設けられていてもよい。また、嵌合突起34とそれに対応する嵌合突起収容孔50は、必ずしも全てのロック機構に対して設けられていなくてもよい。加えて、上記実施形態では、嵌合突起34とそれに対応する嵌合突起収容孔50は半円断面形状とされていたが、矩形状や星形状など任意の形状のものが採用可能である。また、嵌合突起34の先端面54は必ずしも蓋体上面58と面一である必要はなく、正規嵌合を確認できる程度であれば、蓋体上面58よりもわずかに低い位置や高い位置に設定してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10:電線収容プロテクタ、12:プロテクタ本体、14:上方開口部、16:蓋体、20:側壁、22:上面、24:弾性突片挿通孔(ロック機構)、30:係合部、34:嵌合突起、36:外面、40:弾性突片(ロック機構)、42:外面、44:係合突起、50:嵌合突起収容孔、54:先端面、56:上方開口部、58:蓋体上面