特許第6198212号(P6198212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6198212
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】漏れ止め機能に優れる注出ノズル
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/36 20060101AFI20170911BHJP
   B65D 75/62 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B65D33/36
   B65D75/62 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-207761(P2016-207761)
(22)【出願日】2016年10月24日
【審査請求日】2017年2月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【審査官】 田口 傑
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5975452(JP,B2)
【文献】 特開2015−003751(JP,A)
【文献】 特開2008−273632(JP,A)
【文献】 特開2011−006102(JP,A)
【文献】 特開2011−148538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/36
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム層と、このベースフィルム層を挟んでそれぞれに積層したシーラント層とを具える三層以上の積層構造の積層フィルムからなり、該積層フィルムを表裏に重ね合わせた状態で、基端部分を除いて周縁部で熱融着させて中央部に注出通路を区画形成してなる、包装袋本体の側部または頂部に突設されるフィルム状の注出ノズルであって、
この注出ノズルは、前記注出通路を遮断するための、前記注出通路を横切って形成される先端開口の、その開口予定位置から基端部側に1〜4mm離れた位置に、該注出通路内の先端開口予定位置と平行となるように形成されたものであって、前記表裏の積層フィルムが互いに、被包装物の吐出方向に0.5〜5.0mmの幅で密着している押圧加工部を有し、
該押圧加工部は、包装袋本体側から流入した液状の被包装物の液圧に応じて前記表裏の積層フィルムを相互に離反させて、注出通路を開通させるシール弁であることを特徴とする漏れ止め機能に優れる注出ノズル。
【請求項2】
前記注出ノズルは、包装袋本体内の液状の被包装物の注出を、該包装袋本体の傾動または前記包装袋本体胴部への押圧によって外気を吸い込むことなく行うと共に、包装袋本体の起立復帰または前記包装袋本体胴部への押圧の解除に基づく注出の停止に当っては、注出ノズルの注出通路内面を、液状の被包装物の薄膜の介在下で直ちに密閉することにより、包装袋本体への外気の侵入を阻止するセルフシール機能を有することを特徴とする請求項1に記載の漏れ止め機能に優れる注出ノズル。
【請求項3】
前記押圧加工部は、前記包装袋本体から注出通路内に流入した液状の被包装物の液圧が、該押圧加工部における表裏の積層フィルムの密着力よりも高くなった場合に、該表裏の積層フィルムを離反させることを特徴とする請求項1または2に記載の漏れ止め機能に優れる注出ノズル。
【請求項4】
前記押圧加工部は、前記包装袋本体を、前記注出ノズルの先端開口が下向きになる方向に75度以上傾動させた場合に、該包装袋本体内から流入した液状の被包装物の水頭圧によって相互に離反することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の漏れ止め機能に優れる注出ノズル。
【請求項5】
前記押圧加工部は、前記表裏の積層フィルムの一方を、他方に向かって押圧するか、前記表裏の積層フィルムを同一方向に押圧するか、前記表裏の積層フィルムを対向する向きに押圧することによって形成されたものであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の漏れ止め機能に優れる注出ノズル。
【請求項6】
前記押圧加工部は、断面山形状または断面台形状の屈曲部または変曲部であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の漏れ止め機能に優れる注出ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋本体内の液状の被包装物の注出に当り、該被包装物の注出口からのポタ落ちの問題を解消すると共に、包装袋本体の転倒時の液状の被包装物の不測の漏れ出しを有効に防止することのできる漏れ止め機能に優れる注出ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層フィルムからなる注出ノズルについては、例えば、特許文献1〜3に、包装袋本体内の液状の被包装物の注出中はもちろん、注出前および注出後における包装袋本体内への外気の侵入を阻止する、セルフシール機能を有するフィルム状の注出ノズル(以下、単に「注出ノズル」と言う。)およびこれを具える包装袋について開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4392198号公報
【特許文献2】特許第4996815号公報
【特許文献3】特許第5975452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの特許文献1〜3に記載された注出ノズルを具える包装袋では、包装袋本体を傾動させることによって袋内の液状の被包装物を吐出させることができる一方、被包装物の吐出の停止にあたって、包装袋本体を起立姿勢に復帰させると、被包装物に濡れた注出通路の内表面どうしが、その被包装物の毛細管現象による薄膜(液膜)の介在下で相互に密着し、注出ノズルの先端開口部を密閉し、外気の袋内への進入を阻止することができる。
【0005】
しかしながら、このような注出ノズルにおいては、前記のように被包装物の吐出の停止にあたって注出通路の内表面どうしが密着する際に、注出ノズルの先端開口付近に残留する被包装物が、該先端開口から押し出され、床面やテーブル面等にポタ落ちし、周囲を汚損することがあった。
【0006】
また、従来の注出ノズルは、包装袋本体の傾動によって簡単に液状の被包装物を吐出することができるように構成されているため、包装袋本体が意図せず転倒等した場合には、液状の被包装物の漏れ出しを防止することができなかった。
【0007】
そこで、この発明は、液状の被包装物の吐出の停止時における、注出ノズルの先端開口からの被包装物のポタ落ちのおそれを十分に取り除き、また、包装袋本体が転倒等することがあっても、液状の被包装物の不測の漏れ出しを有効に防止することのできる、漏れ止め機能に優れる注出ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ベースフィルム層と、このベースフィルム層を挟んでそれぞれに積層したシーラント層とを具える三層以上の積層構造の積層フィルムからなり、該積層フィルムを表裏に重ね合わせた状態で、基端部分を除いて周縁部で熱融着させて中央部に注出通路を区画形成してなる、包装袋本体の側部または頂部に突設されるフィルム状の注出ノズルであって、
この注出ノズルは、前記注出通路を遮断するための、前記注出通路を横切って形成される先端開口の、その開口予定位置から基端部側に1〜4mm離れた位置に、該注出通路内の先端開口予定位置と平行となるように形成されたものであって、前記表裏の積層フィルムが互いに、被包装物の吐出方向に0.5〜5.0mmの幅で密着している押圧加工部を有し、
該押圧加工部は、包装袋本体側から流入した液状の被包装物の液圧に応じて前記表裏の積層フィルムを相互に離反させて、注出通路を開通させるシール弁であることを特徴とする漏れ止め機能に優れる注出ノズルを提案する。
【0009】
なお、本発明の上記包装袋については、さらに下記のような構成にすることがより好ましい解決手段を提供できると考えられる。即ち、
(1)前記注出ノズルは、包装袋本体内の液状の被包装物の注出を、該包装袋本体の傾動または前記包装袋本体胴部への押圧によって外気を吸い込むことなく行うと共に、包装袋本体の起立復帰または前記包装袋本体胴部への押圧の解除に基づく注出の停止に当っては、注出ノズルの注出通路内面を、液状の被包装物の薄膜の介在下で直ちに密閉することにより、包装袋本体への外気の侵入を阻止するセルフシール機能を有すること、
)前記押圧加工部は、前記包装袋本体から注出通路内に流入した液状の被包装物の液圧が、該押圧加工部における表裏の積層フィルムの密着力よりも高くなった場合に、該表裏の積層フィルムを離反させること、
)前記押圧加工部は、前記包装袋本体を、前記注出ノズルの先端開口が下向きになる方向に75度以上傾動させた場合に、該包装袋本体内から流入した液状の被包装物の水頭圧によって相互に離反すること、
)前記押圧加工部は、前記表裏の積層フィルムの一方を、他方に向かって押圧するか、前記表裏の積層フィルムを同一方向に押圧するか、前記表裏の積層フィルムを対向する向きに押圧することによって形成されたものであること、
)前記押圧加工部は、断面山形状または断面台形状の屈曲部または変曲部であること、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、表裏の積層フィルムからなる注出ノズルに関し、その先端を注出通路を横切る方向に切り取って形成される先端開口の予定位置から注出ノズルの基端部側に4mm以内の位置に、注出通路を横切って延在する押圧加工部を設けた点に特徴がある。
この押圧加工部は、表裏の積層フィルムの相互の密着によって注出通路を遮断する一方、包装袋本体側から流入した液状の被包装物の液圧に応じて該表裏の積層フィルムを相互に離反させて、前記注出通路を開通させるシール弁の機能を有しているため、被包装物の注出の停止に伴って該押圧加工部が迅速に注出通路を遮断し、注出通路内に残留する被包装物の包装袋本体内への液引きを誘導して、液切れ性を向上させることができると共に、包装袋本体が不測に転倒時等した場合にも、押圧加工部における表裏の積層フィルム同士の強い密着力により、注出通路内に流入した被包装物を堰き止めて、注出ノズルからの被包装物の漏れ出しを有効に防止することができる。
【0011】
しかも、前記押圧加工部は、注出ノズルの先端開口から4mm以内の位置に設けられているため、液状の被包装物の吐出の停止に伴う該押圧加工部(表裏の積層フィルム)の密着時に先端開口近傍に残留する液状の被包装物が少なく、液状の被包装物のポタ落ちのおそれを十分に取り除くことができる。
【0012】
なお、前記押圧加工部は、表裏の積層フィルムの一方を、他方に向けて押圧するか、表裏の積層フィルムを同一方向に押圧するか、表裏の積層フィルムを相互に対向する向きに押圧することで形成することができ、例えば断面山形状または断面台形状の屈曲部または変曲部とすることができる。
この押圧加工部は、被包装物の吐出の際には、前記屈曲部または変曲部を構成する表裏の積層フィルムが、液圧によって相互に離反すると共に伸びた状態となるが、被包装物の吐出の停止(未加圧)に伴って、該表裏の積層フィルムが、弾性復元力によって原形状へと戻り、相互に線状または面状に密着して注出ノズルの注出通路を自動的に遮断する。
【0013】
また、前記したように押圧加工部は、被包装物の吐出を停止すると、注出通路内の液状の被包装物の液圧の低下に伴って表裏の積層フィルムどうしが弾性復元力によって迅速に密着するため、注出ノズルがセルフシール機能(逆止機能)を有する場合には、注出ノズルの注出通路内表面どうしの密着がより迅速かつ確実になり、該セルフシール機能を向上させることができる。したがって、この場合には、注出ノズルは、前記セルフシール機能とシール弁である前記押圧加工部による2段のシール機能を発揮することができる。
【0014】
また、本発明の注出ノズルにおいては、前記押圧加工部は、包装袋本体の起立姿勢下において表裏の積層フィルムが相互に密着し、注出通路を遮断する一方、前記包装袋本体を、前記注出ノズルの先端開口が下向きになる方向に75度以上傾動させた場合には、包装袋本体内の液状の被包装物の水頭圧が押圧加工部における表裏の積層フィルムの密着力よりも高くなって、該表裏の積層フィルムが相互に離反し、注出通路を開通させて被包装物の注出を可能にする。
これにより、包装袋本体の傾動角度が75度未満の場合には、被包装物が、包装袋本体の傾動のみによって吐出されることがなく、一方、包装袋本体を75°以上に傾動させた場合には、従来と同様に、傾動のみによって簡単に被包装物を吐出させることができるため、使用者の好みや用途等に合わせて吐出方法を選択することができる。
なお、包装袋本体の傾動角度が75度未満の場合には、包装袋本体の胴部を手指等によって直接的に、もしくは間接的に押圧することで、被包装物を使用者の好み等に合わせて所要に応じた注出を行うことができる。
この包装袋本体の傾動角度による注出機能は、包装袋本体内に、例えば1/5以上の被包装物が残っている場合にとくに有効に発揮される。
【0015】
ところで、前記押圧加工部が、相互に入り込む複数の屈曲部または変曲部からなる場合には、先端開口近傍の剛性が高くなりすぎて、包装袋本体内の被包装物の体積が大きくても(水圧が高くても)該被包装物の注出に当って、包装袋本体を傾動させるだけでは注出させることができず、包装袋本体を直接的もしくは間接的に押圧することが必要になり、しかもその押圧力の調整が非常に難しい。そのため、本発明では、押圧加工部が、注出通路を横切って延びる1〜3条の屈曲部または変曲部からなることが好ましい。
【0016】
ここで、押圧加工部が、断面台形状からなる場合には、台形の2条の稜線の間隔を0.5mm以下とすることが、所要の剛性を確保する上で好適である。
【0017】
また、前記押圧加工部における表裏の積層フィルムの、被包装物の吐出方向における密着長さを0.5〜5.0mmとした場合には、相互の密着による注出通路の遮断効果が確実なものとなり、包装袋本体の転倒時等における漏れ止めの効果をさらに有効に発揮することができる。
なお、前記表裏の積層フィルムの吐出方向における密着長さは、押圧加工部の断面形状や、屈曲部あるいは変曲部の数等を適宜選択することによってコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の注出ノズルの一実施形態を示す部分平面図である。
図2図1のA−A線に沿う押圧加工部の断面を示す図であり、(a)は山形状の変曲部からなり、(b)は、台形状の屈曲部からなる。
図3】包装袋本体の傾動角度θを説明する図である。
図4】押圧加工部の密着長さ(Z)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1では、この発明の注出ノズル1を、包装袋本体2の上側横融着部3に、包装袋本体2の上方へ突出する姿勢で取り付けた場合を示す。なお、注出ノズル1は、基端部分1aの外表面で、包装袋本体2の内表面のシーラント層に熱融着され、図に斜線を施して示す周縁部の熱融着4によって中央部に注出通路5が区画される。
【0020】
この注出ノズル1では、周縁部の熱融着部4の先端部に形成した、例えばV字状のノッチ6から注出通路5の先端部分を、これも例えば手指によって切除することで先端開口7が形成され、この先端開口7の形成位置から4mm以内の位置に、押圧加工部8が設けられている。
【0021】
この押圧加工部8は、例えば、所要の形状に応じた横断面形状を有する押込刃によって、表裏の積層フィルム10、11を、同一方向または相互に対向する方向に所要の温度および圧力で加熱加圧して、屈曲または変曲させることにより、図2に一実施形態を示すように、断面山形状(図2(a)))の変曲部や断面台形状(図2(b))の屈曲部等から構成することができる。
その他、押圧加工部8を、表裏の積層フィルム10、11のうちの、例えば一方の積層フィルム10を、他方の積層フィルム11に向かって加熱加圧して屈曲または変曲させることにより形成してもよい。
【0022】
このように形成した屈曲部または変曲部からなる押圧加工部8は、被包装物の注出に際しては、表裏の積層フィルム10、11が、該被包装物の液圧によって相互に離反すると共に伸びた状態となるが、被包装物の注出の停止(未加圧)に伴って、弾性復元力によって原形状へと戻り、相互に線状または面状に密着し、注出ノズル1の注出通路5を自動的に遮断することができる。
【0023】
ここで押圧加工部8は、前記したように先端開口7からの距離(X)が4mm以内となるように設ける。このように距離(X)を4mm以内とすることで、先端開口7近傍に位置において、表裏の積層フィルム10、11が密着してシール弁としての機能を発揮し、包装袋本体2の転倒時等における被包装物の不測の漏れ出しを抑制することができると共に、液状の被包装物の吐出の停止に伴う押圧加工部8の密着時に先端開口7付近に残留する液状の被包装物が少なく、被包装物のポタ落ちのおそれを十分に取り除くことができる。
【0024】
しかも、注出ノズル1がセルフシール機能を有する場合には、被包装物の吐出の停止に伴って包装袋本体2を起立復帰させると、押圧加工部8位置の表裏の積層フィルム10、11が、前記したように弾性復元力によって相互に迅速に密着するため、注出ノズル1の注出通路5の内表面どうしの密着がより迅速かつ確実になり、該セルフシール機能を向上させることができる。
【0025】
なお、押圧加工部8と、先端開口7との距離(X)が4mm超の場合には、被包装物の吐出を停止した際に、先端開口7およびその近傍に残留する被包装物が多くなり、該被包装物を包装袋本体2内に液引きすることができず、ポタ落ちが発生し易くなる。
一方、押圧加工部8から先端開口7までの距離(X)が短すぎると、先端開口7近傍に所要の剛性を付与することができず、注出通路5を遮断できない場合があり、包装袋本体2の転倒時等において被包装物の漏れ出しを確実に阻止できないおそれがあることや、先端開口7付近にある被包装物が注出通路5内に吸い込まれる前に押圧加工部8が遮断してしまい、該被包装物が先端加工7に付着したりポタ落ちするおそれがあるため、距離(X)は1mm以上4mm以内とする。
【0026】
なお、注出ノズル1は、ベースフィルム層と、このベースフィルム層を挟む表裏にそれぞれ積層した無延伸シーラント層とを具える三層以上の積層構造の平坦な積層フィルムから構成される。このベースフィルム層は、既知の、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムまたはエチレンビニル共重合体フィルムにて構成することができ、また無延伸シーラント層は、これも既知のポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマーまたはエチレン酢酸ビニル共重合体にて構成することができ、これらのいずれによっても、先端開口7から4mm以内に、押圧加工部8によって所要の剛性を付与することができる。
【0027】
また、注出ノズル1の周縁部に設けられる熱融着部4は、これも既知のヒートシール、インパルスシール、高周波ウェルダーシールまたは超音波シールのいずれかによって行うことができ、これらのいずれによっても所期した通りの熱融着部4を形成することができる。
【0028】
なお、押圧加工部8は、注出通路5を横切って延びる1〜3条の、断面山形状や断面台形状の屈曲部または変曲部からなることが好ましい。これは、半円形をも含めて、屈曲部または変曲部を3条以上形成すると、先端開口7近傍の積層フィルム10、11の密着力が高くなりすぎて、包装袋本体2側から流入した液状の被包装物の液圧(自重)によって、前記表裏の積層フィルム10、11を相互に離反させることができず、注出通路5の自由な開通および被包装物の自由な注出が困難になるからである。
ここで、押圧加工部8が図2(b)に示すような断面台形状からなる場合には、2本の稜線9の相互の隣接間隔(Y)を、剛性の確保のために0.5mm以下とすることが好ましい。これを言い換えれば、稜線相互の隣接間隔(Y)が大きくなりすぎると、押圧加圧部8の弾性復元力が不足して、漏れ止め機能等が十分に発揮されなくなる。
【0029】
このような注出ノズル1では、包装袋本体2を、そこに例えば1/5以上の液状の被包装物が残留していることを条件に、起立姿勢から図3に示す角度θを75度を超えて傾動させた際に、被包装物の液圧が、押圧加工部8の密着力よりも高くなって、下方を向く注出通路5から自然に注出させることができる一方、角度θが75度以下となるように傾動復帰させることで、その注出を停止させることができる。
【0030】
なおここで、包装袋本体2の起立姿勢からの傾動角度θが75度以下の場合には、包装袋本体2を直接的もしくは間接的に押圧することで、袋内の液状の被包装物を所要に応じて注出することができる。同様に、包装袋本体2内の、醤油等の液状の被包装物の体積が、たとえば1/5未満に著しく減少して、包装袋本体2を75度を超える角度θで傾動させても、被包装物を円滑にして十分に注出することができない場合には、包装袋本体2を直接的もしくは間接的に押圧して、前記被包装物の所要に応じた注出を行う。なお、この押圧による場合も、包装袋本体2は、傾動姿勢とすることが注出位置を特定する上で好ましい。
【0031】
包装袋本体2の傾動角度と、被包装物の注出状態は、押圧加工部8の吐出方向における密着長さ(図4の積層フィルム10と積層フィルム11との接触長さ(Z))を調節することで調整可能であり、密着長さは0.5〜5.0mmである。
これは、密着長さが0.5mm未満では、押圧加工部8位置における表裏の積層フィルム10、11の相互の密着が少なすぎて、密着力が不足し、包装袋本体2が転倒等した際に両者が簡単に離反してしまい、漏れ止め機能を発揮することができず、一方、5.0mm超の場合には、表裏の積層フィルム10、11の密着力が強くなりすぎて、液状の被包装物の吐出に際し、包装袋本体2の胴部を強く押圧する必要がある等、自由な注出が困難になるからである。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
本実施例では、押圧加工部8の形成位置と、包装袋の転倒時の液漏れ、被包装物の注出の停止時における注出ノズル1の先端開口7からの被包装物のポタ落ちの有無および液切れ性との関係を調べた。その結果を表1に示す。
なお、押圧加工部8を、断面山形状の変曲部(図2(a)に示す押圧加工部)とし、注出ノズル1の先端開口7から0.5mm、1.0mm、2.0mm、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm離した位置に設けて、各注出ノズル1について評価を行った。なお、比較例として押圧加工部8を設けない注出ノズル1についても同様の評価を行った。
いずれのサンプルについても、被包装物(醤油)は、包装袋本体胴部への手指による押圧により注出ノズル1の先端開口7より注出させた。
【0033】
<評価基準>
(I)転倒時の液漏れ
〇:転倒時の被包装物の流出なし。
△:転倒時の被包装物の流出はないが、転倒状態で保持すると徐々に流出。
×:連続的に被包装物の液漏れが続く状態。
(II)ポタ落ち
○:先端開口に一時付着した液滴が注出通路内に吸い込まれてポタ落ちしない。
△:小さな液滴が先端開口に付着して溜まる。
×:先端開口に付着した液滴が、1〜数滴落ちる。
(III)液切れ性
〇:包装袋本体胴部への押圧をやめると直ちに止まる。
△:包装袋本体胴部への押圧をやめると直ちに止まるが、先端開口から1〜数滴落ちる。
×:包装袋本体胴部への押圧をやめても直ちに止らない。
【0034】
【表1】
【0035】
(実施例2)
本実施例では、押圧加工部8の被包装物の吐出方向における表裏の積層フィルム10、11の相互の密着長さと、包装袋の転倒時の液漏れの有無および吐出性能(吐出角度、吐出方法、液切れ性)との関係を調べた。その結果を表2に示す。
なお、押圧加工部8としては、注出ノズル1の先端開口7から基端部1a側に4mmの位置に、断面山形状の変曲部(図2(a)に示す押圧加工部)を設け、該押圧加工部8における積層フィルム10、11の密着長さ(図4のZ)が0.3mm、0.5mm、1.0mm、3.0mm、5.0mm、8.0mm、10.0mm、11.0mmとなるようにそれぞれ注出ノズルを製造した。
【0036】
<評価基準>
(I)転倒時の液漏れ
〇:転倒時の被包装物の流出なし。
△:転倒時の被包装物の流出はないが、転倒状態で保持すると徐々に流出。
×:連続的に被包装物の液漏れが続く状態。
(II)ポタ落ち
○:先端開口に一時付着した液滴が注出通路内に吸い込まれてポタ落ちしない。
△:小さな液滴が先端開口に付着して溜まる。
×:先端開口に付着した液滴が、1〜数滴落ちる。
(III)吐出角度
A:包装袋本体の75度未満の傾動で被包装物が吐出する。
B:包装袋本体の75度以上の傾動で被包装物が吐出する。
C:包装袋本体の傾動のみでは被包装物は吐出しない。
(IV)吐出方法
○:包装袋本体胴部への手指による軽い押圧で注ぎ出せる。
△:包装袋本体胴部への手指による強い押圧で注ぎ出せる。
×:包装袋本体胴部への手指による押圧では注出が困難。
(V)液切れ性
○:包装袋本体の起立復帰または胴部への押圧をやめると直ちに注ぎ出しが止まる。
△:包装袋本体の起立復帰または胴部への押圧をやめると直ちに注ぎ出しが止まるが、液滴が1〜数滴落ちる。
×:包装袋本体の起立復帰または胴部への押圧をやめても直ちに止まらない。
【0037】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上この発明の漏れ止め機能に優れる注出ノズルを、ベースフィルム層と、このベースフィルム層を挟む表面側および裏面側の両面に積層したシーラント層との三層の積層構造になるフィルム状の積層フィルムを用いて形成した場合を一実施形態として説明したが、この発明は、注出ノズルの外表面に撥水コート層を設けたり、一層または複数の中間層、蒸着層、接着剤層を設ける場合にもまた適用可能である。また、注出ノズルは、包装袋本体から側方へ突出させて設けることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 注出ノズル
1a 基端部分
2 包装袋本体
3 上側横融着部
4 熱融着部
5 注出通路
6 ノッチ
7 先端開口
8 押圧加工部
9 稜線
X 先端開口からの距離
Y 隣接間隔
Z 密着長さ
θ 角度
【要約】
【課題】液状の被包装物の吐出の停止時における、注出ノズルの先端開口からの被包装物のポタ落ちのおそれを十分に取り除き、また、包装袋本体が転倒等することがあっても、液状の被包装物の不測の漏れ出しを有効に防止すること。
【解決手段】積層フィルム10、11を表裏に重ね合わせた状態で、基端部分を除いて周縁部で熱融着させて中央部に注出通路5を具え、包装袋本体2の側部または頂部に突設されるフィルム状の注出ノズル1であって、注出通路5を横切って形成される先端開口7の予定位置から基端部側に4mm以内の位置に、注出通路5を横切って延在し、表裏の積層フィルム10、11の相互の密着によって該注出通路5を遮断する押圧加工部8を有し、該押圧加工部8は、包装袋本体2側から流入した液状の被包装物の液圧に応じて表裏の積層フィルム10、11を相互に離反させて、前記注出通路5を開通させるシール弁であること。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4