【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例を示す鉄道運行に伴う津波の避難対策
方法の模式図である。
【0017】
この図において、1は海岸線、2は海底水位計、3は海岸地震計、4は沿岸の鉄道線路、5は鉄道線路4を走行する列車、6は第1の避難場所、7は第2の避難場所、8は第3の避難場所、9は地震の震源位置である。
【0018】
本発明の鉄道運行に伴う津波の避難対策
方法は、海底水位計2と、海岸地震計3と、沿岸を走行する列車5と、後述するが、この列車5に搭載される地震情報収集・処理システム10とを備えている。
【0019】
図2は津波に対する避難余裕時間を示す概略特性図であり、縦軸は距離、横軸は時間を示している。
【0020】
この図において、aはP波、bはS波、cは津波を示す。なお、津波の伝播速度は概ね(gD)
0.5 〔gは重力加速度で9.8m/s
2 ,Dは水深(m)〕で表される(上記非特許文献1参照)。
【0021】
そして、第1の警報Aは海岸地震計3によるP波警報出力、第2の警報Bは海底水位計2による警報出力である。
【0022】
第1の警報Aと第2の警報Bによる津波に対する避難余裕時間は以下のように決定される。
【0023】
第1の警報Aによる津波に対する避難余裕時間(
図2の丸付数字1):
Tl
1 =(R
train /V
tsunami )−〔(R
kaigan/Vp)+Tt+Tc〕−T
hinan
第2の警報Bによる津波に対する避難余裕時間(
図2の丸つき数字2):
Tl
2 =(R
train /V
tsunami )−〔(R
kaitei/V
tsunami )+Tt+Tc〕−T
hinan
ここで、Tl
1 は第1の警報Aに対する避難余裕時間(s)、Tl
2 は第2の警報Bに対する避難余裕時間(s)である。また、R
train は列車位置までの震源距離(km)、R
kaiganは海岸地震計までの震源距離(km)、R
kaiteiは海底水位計までの震源距離(km)を表す。さらに、V
tsunami は津波の伝播速度(km/s)、VpはP波の伝播速度(km/s)、VsはS波の伝播速度(km/s)であり、Ttは情報電送時間(s)、Tcは警報出力に対する処理時間(早期地震諸元演算時間)(s)を表す。最後に、T
hinan は、鉄道線路上の任意の地点(路線のキロ程で表現される)における最短避難時間(s)である。
【0024】
なお、ここで示すT
hinan は、鉄道線路上の任意の地点(路線のキロ程で表現される)に対して、事前にデータベース化しておく必要がある。
【0025】
仮想的な地震について津波に対する避難余裕時間を算定すると、避難余裕時間がない場合が想定される。その場合、津波対策として避難経路の整理、避難場所の増設、避難塔の建設などを行うことが挙げられる。
【0026】
図3は本発明の実施例を示す列車の位置と避難余裕時間との関係を示す図であり、
図3(a)は列車の位置と避難余裕時間との関係を示す図、
図3(b)は避難余裕時間がない箇所を有する図、
図3(c)は避難場所Dを増設して避難余裕時間がない箇所を解消した例を示す図である。
【0027】
図4は本発明の実施例を示す列車に搭載される地震情報収集・処理システムのブロック図である。
【0028】
この図において、10は地震情報収集・処理システム、11は受信装置、12は受信情報処理装置(CPU)、13は列車の位置情報表示装置、14は避難場所と避難経路と必要とする避難時間に関するデータ記憶装置、15は避難
場所のための列車の運行表示装置、16は列車から避難場所への案内表示装置、17はプリンターである。
【0029】
なお、事前に鉄道のキロ程に対して避難場所と避難経路と必要とする避難時間に関するデータをデータ記憶装置14にデータベース化しておく。
【0030】
地震発生時には、後述する避難に対する余裕時間の算定を行う。この余裕時間に基づいて、その場で列車を降りて避難場所へ移動した方がよいか、または列車で移動した後に列車を降りて避難場所へ移動した方がよいか算出する。つまり、安全に確実に避難する方法を地震情報収集・処理システム10により抽出することで避難場所・避難経路の選定を行う。
【0031】
図5は本発明の津波に対する避難例のフローチャートである。
【0032】
まず、列車は地震情報収集・処理システム10を搭載しており、受信装置11を介して、地震・津波に関する情報を受信する(ステップS1)。次に、受信情報処理装置(CPU)12の演算・制御により、地震・津波に関する情報を位置情報表示装置13に表示する(ステップS2)。そこで、避難場所と避難経路、避難時間に関するデータをデータ記憶装置14から抽出する(ステップS3)。その際に、津波に対する避難余裕時間を算出する。避難余裕時間に対応して、列車は現在の停車位置で乗客・乗員を降ろして避難場所Aへと避難させた方が良いか、あるいは列車の現在の停車位置からは避難場所Aへのアクセスが困難(例えば、徒歩での避難に時間がかかる)な場合には避難余裕時間に対応して列車を現在の停車位置から避難場所B又はAへのアクセスが容易な箇所まで運行する方が良いかをチェックする。つまり、列車を移動させるか否か(ステップS4)をチェックする。その結果、列車を移動させる方が良い場合には、避難のための列車の運行表示装置に表示して移動させる(ステップS5)。次いで、列車から避難場所への案内表示を案内表示装置16に表示する(ステップS6)。最後に、列車から避難場所への案内表示をプリントアウトして乗客へ配付する(ステップS7)。ステップS4にて列車を移動させない場合は、そのままステップS7へ進む。実際の避難場所への避難にあたっては、幼児や高齢者などの乗客も存在するので、リーダーを決めてグループ編成を行って、リーダーによりプリントアウトされた案内表示媒体を点検しながら避難を実施することも考えられる。
【0033】
このように、避難余裕時間に対応して、列車の乗客・乗員を安全に避難場所へと導くようにすることができる。
【0034】
本発明によれば、列車内の乗客・乗員は、列車の地震情報収集・処理システムにより、確実に津波に対する避難を行い、乗客・乗員の人命の確保に資することができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。