特許第6198239号(P6198239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6198239金属微粒子の製造装置および金属微粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198239
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】金属微粒子の製造装置および金属微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20170911BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20170911BHJP
   B23K 35/40 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B22F9/00 A
   B22F9/08 C
   B23K35/40 340F
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-100441(P2013-100441)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-218724(P2014-218724A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101710
【氏名又は名称】アルバック成膜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】小島 智明
(72)【発明者】
【氏名】仲川 幸一
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−329805(JP,A)
【文献】 特開2003−193119(JP,A)
【文献】 特開2001−329307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00〜9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一微細流路、第二微細流路、合流部および第三微細流路を内在する基体を含む金属微粒子の製造装置であって、
前記第一微細流路は、油が導入される第一導入口を一端部に有する部位、
前記第二微細流路は、溶融金属が導入される第二導入口を一端部に有し、前記合流部において前記金属微粒子の断面積と同等の断面積を有する部位、
前記合流部は、前記第一微細流路の他端部と、前記第二微細流路の他端部とが合流する部位、
前記第三微細流路は、一端部が前記合流部に接続され、前記合流部で合流した、前記油と前記溶融金属との合流体が通過する部位、を備え、
前記第一導入口から導入された前記油と、前記第二導入口から導入された前記溶融金属とが、第一微細流路および第二微細流路を介して前記合流部で合流させて合流体とされ、該合流体を前記第三の微細流路を通過させることにより、前記溶融金属を前記油中に分散させた金属微粒子を得ること、を特徴とする金属微粒子の製造装置。
【請求項2】
少なくとも前記油と前記溶融金属とを、該溶融金属の融点以上に加熱するヒーターを、さらに備えること、を特徴とする請求項1に記載の金属微粒子の製造装置。
【請求項3】
前記油は、鉱物油又はシリコンオイルであること、を特徴とする請求項1又は2に記載の金属微粒子の製造装置。
【請求項4】
前記溶融金属は、溶融はんだであること、を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の金属微粒子の製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の金属微粒子の製造装置を用い、
前記第一導入口から油を導入し、前記第二導入口から溶融金属を導入し、前記油と前記溶融金属とを、第一微細流路および第二微細流路を介して前記合流部で合流させて合流体とし、該合流体を前記第三の微細流路を通過させることにより、前記溶融金属を前記油中に分散させた金属微粒子を得ること、を特徴とする金属微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子の製造装置および金属微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微小ハンダボールのような金属微粒子の製造方法としては、油中造球法、気中造球法、粉末溶融法等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
油中造球法とは、上部が高温、下部が低温となった油中に一定寸法のはんだチップを上部から投入して製造する。油中に投入されたはんだチップは、上部の高温域で溶融して自らの表面張力により球状化し、さらに該球状化した溶融はんだは油中を落下していくうちに、下部の低温域で冷却されて固化し、はんだボールとなるものである。
この油中造球法は、はんだチップを得るために先ず細径の線状はんだを作らなければならない。細径の線状はんだの製造は、はんだで太いビレットを作り、該ビレットを押出機で中間径の線状はんだにする。そして中間径の線状はんだを多数のダイスが設置された伸線機で所定の細径まで伸線する。
【0004】
このように油中造球法では、細径の線状はんだを作るのに多大な手間がかかるばかりでなく、細径の線状はんだを一定寸法に切断してはんだチップにするにも、1個のチップの長さが短いため大量のチップを作るには時間のかかるものである。つまり油中造球法は、はんだボールを製造する前に細径はんだの製造、およびはんだチップの製造を行わなければならず、これらの製造に多大な手間がかかっていたものである。しかも油中造球法では、伸線機での伸線に限度があるため、0.3mm以下のはんだボールを得るための細径の線状はんだを作ることが困難であった。
【0005】
気中造球法とは、坩堝内の溶融はんだに圧力と振動を付与し、坩堝下部のオリフィスから滴下した球状の溶融はんだをチャンバー内のガス雰囲気中で冷却固化してはんだボールを得る方法である。この気中造球法は、前述の油中造球法に比べて工程数が少ないため、生産性に優れているものである。
【0006】
しかしながら、気中造球法は、イニシャルコストとランニングコストが高価になるという経済性の面で問題のあるものである。つまり気中造球法は、坩堝のオリフィスから滴下された球状の溶融はんだをチャンバー内のガス雰囲気中で冷却固化しなければならないが、ガス雰囲気は油中造球法における液体の油よりも熱伝導性が悪いため、溶融はんだを完全に固化させるには長い落下距離が必要である。そのため溶融はんだを落下冷却させるチャンバーは、高さを充分に高くしなけらばならず、大きなチャンバーの製造と設置に莫大な費用がかかっていた。しかも気中造球法は、チャンバー内を常に高価な不活性ガスの窒素ガス、又は窒素ガスと水素ガスの混合ガス等を充満させていなければならないため、ランニングコストも高価となるものであった。
【0007】
粉末溶融法とは、多数の凹部が形成されたカーボン又はセラミックの治具を用い、該凹部に金属粉末(はんだ粉末)を充填してから、該治具を非酸化雰囲気中で加熱して金属粉末を溶融させることにより球状化する方法である。この粉末溶融法は、設備としてはカーボンやセラミックの治具と電気炉が必要であるが、治具自体は安価であり、また電気炉は既存の電気炉を使用できるため油中造球法や気中造球法に比べて経済的な面では、はるかに優れている。
このように、従来、金属微粒子を製造するには、大掛かりな装置と、複雑な工程とが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−120695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、特に半導体装置などにおけるマイクロはんだボールのような、比較的軟質で傷や変形を起こしやすい金属微粒子で、粒度分布が狭く真球度の高い金属微粒子を、簡便な構造で容易に製造することができる、金属微粒子の製造装置を提供することを第一の目的とする。
また、本発明は、特に半導体装置などにおけるマイクロはんだボールのような、比較的軟質で傷や変形を起こしやすい金属微粒子で、粒度分布が狭く真球度の高い金属微粒子を、容易に製造することができる、金属微粒子の製造方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の金属微粒子の製造装置は、第一微細流路、第二微細流路、合流部および第三微細流路を内在する基体を含む金属微粒子の製造装置であって、前記第一微細流路は、油が導入される第一導入口を一端部に有する部位、前記第二微細流路は、溶融金属が導入される第二導入口を一端部に有し、前記合流部において前記金属微粒子の断面積と同等の断面積を有する部位、前記合流部は、前記第一微細流路の他端部と、前記第二微細流路の他端部とが合流する部位、前記第三微細流路は、一端部が前記合流部に接続され、前記合流部で合流した、前記油と前記溶融金属との合流体が通過する部位、を備え、前記第一導入口から導入された前記油と、前記第二導入口から導入された前記溶融金属とが、第一微細流路および第二微細流路を介して前記合流部で合流させて合流体とされ、該合流体を前記第三の微細流路を通過させることにより、前記溶融金属を前記油中に分散させた金属微粒子を得ること、を特徴とする。
本発明の請求項2に記載の金属微粒子の製造装置は、請求項1において、少なくとも前記油と前記溶融金属とを、該溶融金属の融点以上に加熱するヒーターを、さらに備えること、を特徴とする。
本発明の請求項3に記載の金属微粒子の製造装置は、請求項1又は2において、前記油は、鉱物油又はシリコンオイルであること、を特徴とする。
本発明の請求項4に記載の金属微粒子の製造装置は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記溶融金属は、溶融はんだであること、を特徴とする。


【0011】
本発明の請求項5に記載の金属微粒子の製造方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の金属微粒子の製造装置を用い、前記第一導入口から油を導入し、前記第二導入口から溶融金属を導入し、前記油と前記溶融金属とを、第一微細流路および第二微細流路を介して前記合流部で合流させて合流体とし、該合流体を前記第三の微細流路を通過させることにより、前記溶融金属を前記油中に分散させた金属微粒子を得ること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属微粒子の製造装置では、前記第一導入口から導入された前記油と、前記第二導入口から導入された前記溶融金属とが、第一微細流路および第二微細流路を介して前記合流部で合流させて合流体とされ、該合流体を前記第三の微細流路を通過させることにより、前記溶融金属を前記油中に分散させた金属微粒子を得ている。
これにより、本発明では、マイクロはんだボールのような、比較的軟質で傷や変形を起こしやすい金属微粒子で、粒度分布が狭く真球度の高い金属微粒子を、簡便な構造で容易に製造することができる、金属微粒子の製造装置を提供できる。
【0013】
また、本発明の金属微粒子の製造方法では、前記第一導入口から導入された前記油と、前記第二導入口から導入された前記溶融金属とが、第一微細流路および第二微細流路を介して前記合流部で合流させて合流体とされ、該合流体を前記第三の微細流路を通過させることにより、前記溶融金属を前記油中に分散させた金属微粒子を得ている。
これにより、本発明では、マイクロはんだボールのような、比較的軟質で傷や変形を起こしやすい金属微粒子で、粒度分布が狭く真球度の高い金属微粒子を、容易に製造することができる、金属微粒子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】微細流路を内在する基体の一構成例を示す図。
図2】金属微粒子の製造装置の一構成例を示す図。
図3】基体2の製造工程を示す図。
図4】実施例で作製されたはんだ粒子の粒径の分散度を示す図。
図5】微細流路の他の形態を示す平面図。
図6】微細流路の他の形態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明に係る金属微粒子の製造装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1および図2は、本発明に係る金属微粒子の製造装置1の一構成例を示す図である。図1は、微細流路を内在する基体2の一構成例を示す図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は断面図である。微細流路を内在する基体2は、たとえば図2に示すような金属微粒子の製造装置1の一部を構成する。
図1に示すように、本発明の金属微粒子の製造装置1は、第一微細流路3、第二微細流路5、合流部7および第三微細流路8を内在する基体2を含み構成される。
第一微細流路3は、油10が導入される第一導入口4を一端部に有する部位、第二微細流路5は、溶融金属20が導入される第二導入口6を一端部に有する部位、合流部7は、第一微細流路3の他端部と、第二微細流路5の他端部とが合流する部位、第三微細流路8は、一端部が合流部7に接続され、合流部7で合流した、油10と溶融金属20との合流体30が通過する部位、を備える。
【0017】
この金属微粒子の製造装置1では、第一導入口4から導入された油10と、第二導入口6から導入された溶融金属20とが、第一微細流路3および第二微細流路5を介して合流部7で合流させて合流体30とされ、該合流体30を第三微細流路8を通過させることにより、溶融金属20を油10中に分散させた金属微粒子31を得る。
【0018】
基体2の材料としては、硼珪酸ガラス、石英、青板、白板、無アルカリガラスなどのガラスが用いられる。ガラスを用いることで、フォトリソグラフィーとエッチングにより微細加工が可能である。
本実施形態では、基体2の材料として硼珪酸ガラス(テンパックス:軟化点820℃)を使用しているが、溶融金属20としてはんだよりも融点の高い金属を用いるのであれば、石英(軟化点1720℃)を用いることも可能である。
【0019】
また、熱伝導の観点より、基体2の材料として、ステンレス、チタンなどの金属を用いてもよい。ガラスと同様にフォトリソグラフィーとエッチングにより同様の加工が可能である。加工方法も、加工する流路のサイズを考慮して、例えば機械加工(ミーリング)などフォトリソグラフィー以外の加工方法を用いることができる。
しかし、金属を用いる場合、流路に流す溶融金属20と、流路及び装置1全体の材質の組み合わせについては注意する必要がある。例えば、溶融金属20として鉛フリーはんだを用いる場合には、SUS304はエロ-ジョンを発生して穴が空いてしまうために使用することができない。この場合には、チタンやSUS316、SUS316Lなどを使用する。
【0020】
また、基体2の材質として、アルミナ(融点2072℃)、ジルコニア、窒化アルミニウムのような、セラミックスも使用可能であるが、エッチングできない材質が多く、加工性に問題がある。機械加工でできる範囲までのサイズ(20μmの工具まである)であれば十分使用可能であり、さらに融点が高い金属にまで適用可能である。
このように、基体2の材質を、作製する金属微粒子材料の融点及び耐蝕性などを考慮して選択することで、はんだより融点の高い金属微粒子の作製にも利用可能である。
【0021】
このような基体2は、第一微細流路3、第二微細流路5、合流部7および第三微細流路8を内在する。
第一微細流路3は、油10が導入される第一導入口4を一端部に有する部位であり。第二微細流路5は、溶融金属20が導入される第二導入口6を一端部に有する部位であり、合流部7は、第一微細流路3の他端部と、第二微細流路5の他端部とが合流する部位である。第三微細流路8は、一端部が合流部7に接続され、合流部7で合流した、油10と溶融金属20との合流体30が通過する部位である。
【0022】
微細流路5は、合流部7において、目的とする金属微粒子31の断面積と同等程度の断面積を有する。微細流路3,5,8の幅や形状、溶融金属と油の流量、温度など条件を調整することで、目的とする粒径で粒度分布が狭く真球度の高い金属微粒子31を得ることができる。
また、微細流路3,5,8の形成には、半導体など分野で用いられるフォトリソグラフィーの技術を利用できるため、容易に微細化と集積化を行うことができる。このため従来の方法では難しかった直径数十ミクロン以下の金属微粒子にも対応でき、かつ、装置1を小型化できる。
【0023】
図2は、微細流路を内在する基体2を備えた金属微粒子の製造装置1の全体構成例を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は断面図である。
第一導入口4には、油10が貯留される油リザーバー11が接続されている。この油リザーバー11には、不活性ガスをリザーバー内に送り込んで、油に圧力を印加することにより、油を第一導入口4に供給するための、ガスポンプ(図示略)が接続されている。印加圧を調整することで、供給する油の流量を変更できる。
【0024】
連続相となる油10には、使用したはんだ融点以上の温度で変質しにくい、シリコンオイル又は鉱物油を用いることが好ましい。
【0025】
また、第二導入口6には、溶融金属20が貯留される溶融金属リザーバー21が接続されている。この金属リザーバーに21は、不活性ガスをリザーバー内に送り込んで、溶融金属20に圧力を印加することにより、溶融金属20を第二導入口6に供給するための、ガスポンプ(図示略)が接続されている。溶融金属側では、不活性ガスのほか、還元性ガスとの混合ガスを用いることもできる。印加圧を調整することで、供給する溶融金属の流量を変更できる。
【0026】
分散相となる溶融金属20には、低融点はんだ(錫、鉛、ビスマスの共晶はんだ)を用いた。この低融点はんだの融点は95℃である。溶融金属には、有鉛はんだ、鉛フリーはんだなど、はんだの種類(組成)に関係なく用いることができる。また、はんだ以外の金属も用いることができる。
【0027】
また、第三微細流路8の他端部には、金属微粒子31が排出される排出口9が設けられており、この排出口9に、得られた金属微粒子31を捕集するための、捕集容器40が接続されている。この捕集容器40は、溶融金属の融点以下の温度に保たれている。
【0028】
さらに、少なくとも油10と溶融金属20とを、溶融金属20の融点以上に加熱するヒーター50を備える。このヒーター50は、例えば捕集容器40を除く、装置全体を加熱することが好ましい。
図2に示す例では、基体2、油リザーバー11、溶融金属リザーバー21、第一微細流路3及び第二微細流路5には、溶融金属20の融点以上まで加熱できるように、ヒーター50が設置されている。また、合流部7以降の第三微細流路8及び捕集容器40内では、徐々に融点以下に冷却する構造としている。
【0029】
このような金属微粒子の製造装置1を用いた、金属微粒子の製造方法では、第一導入口4から油10を導入し、第二導入口6から溶融金属20を導入する。
このとき、ガスポンプによって窒素ガスなどを油リザーバー11内に送り込んで、油10に圧力を印加することにより、油10を第一導入口4に供給し、導入する。このときの圧力としては、特に限定されるものではないが、例えば0.15〜0.35MPa程度とする。
また、油10の流量としては、特に限定されるものではないが、例えば0.05〜0.15mL/h程度とする。
【0030】
一方、ガスポンプによって窒素ガスなどを溶融金属リザーバー21内に送り込んで、溶融金属20に圧力を印加することにより、溶融金属20を第二導入口6に供給し、導入する。このときの圧力としては、特に限定されるものではないが、例えば0.05〜0.3MPa程度とする。
また、溶融金属20の流量としては、特に限定されるものではないが、例えば0.001〜0.016mL/h程度とする。
【0031】
油10と溶融金属20とを、第一微細流路3および第二微細流路5を介して合流部7で合流させて合流体30とする。この合流部7で溶融金属液滴を発生させる。
そして、合流体30を第三微細流路8を通過させる。第三微細流路8、油10、溶融金属20のそれぞれの温度を調整することで、金属液滴発生と同時又は金属液滴が油に運ばれていく過程で冷却を行い溶融金属を固化させる。このようにして、溶融金属20を油10中に分散させた金属微粒子31が得られる。
【0032】
このように、本発明では、マイクロはんだボールのような、比較的軟質で傷や変形を起こしやすい金属微粒子で、粒度分布が狭く真球度の高い金属微粒子31を、容易に製造することができる。
また、第二微細流路5の合流部7における断面積を変更することで、さまざまなサイズの金属微粒子を容易に製造することが可能である。第二微細流路5の合流部7における断面積を大きくすることで、より大きな粒子を得ることができ、第二微細流路5の合流部7における断面積を小さくすることで、より小さな粒子を得ることができる。
実際には流路の断面積、形状に合わせて溶融金属と油の流量、温度を調整することで目的とする粒径で粒度分布が狭く、真球度の高い金属微粒子31を得ることができる。また、分球するための流路を付加することで別に装置を追加する必要なく、さらに粒度分布を狭めることが可能である。
さらに、本発明では、従来の油中造球法のように、金属を予め線材に加工するなどの前工程が不要になる。
【0033】
つぎに、このような、微細流路3,5,8を内在する基体2の製造方法について、説明する。
図3は、基体2の製造工程を示す図である。
まず、硼珪酸ガラスからなる基体2aを洗剤、純水で洗浄する。本実施形態では、硼珪酸ガラスとして、Schott製テンパックスを用いた。基体サイズは、例えば30mm×70mm×0.7mmである。
【0034】
次に、図3(a)に示すように、エッチングマスク膜60としてCr膜をスパッタリングにより成膜する。Cr膜上にAu膜を成膜してもよい。エッチングマスク膜60の厚みは、例えば1000〜1500Åとする。
エッチングマスク膜60を成膜した後にスピンコートを用いてレジスト61を塗布する。レジスト61の厚みは、例えば1〜2μmとする。
【0035】
図3(b)に示すように、フォトリソグラフィーを用いて、Y字形の流路パターンを露光・現像・エッチングを行い、エッチングマスクパターンを形成する。本実施形態では、マスクパターンの幅は20μmとした。
フッ酸系エッチャント(希釈フッ酸、BHF、他の酸とフッ酸の混合液など)を用いて流路パターンにガラスをエッチングする。本実施形態のY字パターンの場合は、深さ40μmエッチングして、幅100μm(左右40μm×2+マスク開口20μm)の溝形状とした。
【0036】
図3(c)に示すように、エッチングマスクパターンを形成した基体2aを、フッ酸系エッチャントに浸漬し、深さ40umをエッチングして、深さ40μm、幅100μmの半円形の断面を持つ微細流路3,5,8を形成する。フッ酸系エッチャントには、例えば希釈フッ酸、BHF、他の酸とフッ酸の混合液などが用いられる。
図3(d)に示すように、基体2aから、レジスト61及びエッチングマスク膜60をリムーブして除去する。
【0037】
基体2aに、ドライフィルムを貼り、供給用と排出用の貫通穴パターンを露光・現像して形成し、サンドブラストを用いて貫通穴(導入口4,6、排出口9)を開口する。この手法に代えて、ドリルなどの機械加工により貫通穴を形成してもよい。本実施形態では、φ0.7mmの穴をサンドブラストで加工した。
【0038】
同一サイズの硼珪酸ガラスからなる基体2bを、微細流路と貫通穴を形成した基体2aと位置合わせをして、貼り合わせる。本実施形態では、基体2bは溝、貫通穴などが形成されていない素ガラスであるため、基体2aと基体2bの貼り合わせにはアライメントマークによる位置合わせは不要である。ただし、基体2aに溝、基体2bに貫通穴の組み合わせの場合には、アライメントマークによる位置合わせが行われる。
そして貼り合わせた基体2a,2bを高温(約400℃〜軟化点以下)でベークし、2枚のガラス基体2a,2bを完全に接合させる。
【0039】
これにより、半円形の断面形状でパイプ状の、Y字形状に交差する微細流路3,5,8を内在する基体2が作製される。
この基体2からなる金属微粒子の製造装置1を用いて製造される、金属微粒子31の粒径は、第二微細流路5の断面積を大きく(幅を広く)することで大きくでき、第二微細流路5の断面積を小さく(幅を狭く)することで小さくできる。このように、装置1の流路設計を変更することで、作製する金属微粒子のサイズを変更可能である。
【実施例】
【0040】
図1及び図2に示したような、Y字形状の微細流路を有する金属微粒子の製造装置1を作製し、その装置1を用いて、はんだ微粒子を作製した。
分散相の溶融金属には、低融点はんだ(錫、鉛、ビスマスの共晶はんだ(融点95℃))を用いた。また、連続相の油には、シリコンオイルを用いた。
なお、微細流路は、半円形の断面を有し、深さを40μm、幅を100μmとした。
まず、捕集容器を除く、流路基体2、リザーバーを含む装置全体を、使用した低融点はんだの融点以上である120〜190℃に加熱し、低融点はんだを溶解した。
続いて、それぞれ溶融金属リザーバーを0.05〜0.3MPa、油リザーバーを0.15〜0.35MPaまで窒素ガスで加圧した。
【0041】
印加圧力に応じて、シリコンオイルは、流量0.05〜0.15mL/minで、第一微細流路3を流れ、低融点はんだは、流量0.001〜0.016mL/minで第二微細流路5を流れた。
第一微細流路3と第二微細流路5の合流部7で、分散相の低融点はんだは、連続層のオイルにより分断され、一定サイズのはんだ微粒子を形成した。
排出口よりオイルと共に排出された低融点はんだ粒子は、融点以下の温度に保たれた捕集容器に集められた。
捕集容器もオイルで満たされており、はんだ粒子が大気に触れて酸化する事を防止する構造となっている。
【0042】
得られたはんだ粒子より100個を抽出し、顕微鏡で観察したところ、平均粒径が64.4μmであり、分散度(CV値)が、1.1%で、真球度が0.95以上の良好なはんだ微粒子であった。その際に、第二微細流路5の断面積は約3300μmであり、得られたはんだ粒子の断面積は約3300μmであった。はんだ粒子の粒径の分散度を図4に示す。
流量と粒径より計算される、単位時間当たりに作製される粒子数は約150〜2000個/秒であったが、流路又は交差部分を増やすことで、生産数量を簡単に増やすことが可能である。
【0043】
このように、本発明によれば、マイクロはんだボールのような、比較的軟質で傷や変形を起こしやすい金属微粒子で、粒度分布が狭く真球度の高い金属微粒子を、簡便な構造で容易に製造することができることが確認された。
【0044】
以上、本発明の金属微粒子の製造装置1および金属微粒子の製造方法について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、微細流路がY字形状を有する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図5に示すように、微細流路がT字に交わる形態としてもよいし、また例えば図6に示すように、微細流路が櫛形形状を有する形態としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、金属微粒子の製造装置および金属微粒子の製造方法に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 金属微粒子の製造装置、2基体、3 第一微細流路、4 第一導入口、5 第二微細流路、6 第二導入口、7 合流部、8 第三微細流路、9 排出口、10 油、20 溶融金属、30 合流体、31 金属微粒子、50 ヒーター。
図1
図2
図3
図4
図5
図6