(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
人手による把持部を有するカッターホルダーと、前記カッターホルダーに設けられたガイド部に沿って摺動可能に保持されたカッター刃とを備えたカッターナイフにおいて、
前記カッターホルダーの前端側に備えたホルダーヘッドと、
前記カッターホルダーの前記把持部と前記ホルダーヘッドとの間に形成され、前記カッター刃の切刃を開口側に臨ませる被切断物導入口と、
前記ホルダーヘッドに取付けられ、前記被切断物導入口内に位置し、前記被切断物導入口に導入される被切断物を、前記カッターホルダーの前記把持部側に押圧する板バネと、
前記ホルダーヘッドに設けられ、前記カッター刃が摺動可能に貫通して、前記カッター刃をホルダーヘッドより前方に突出可能とする貫通溝とを備えたことを特徴とするカッターナイフ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図14に示した従来のカッターナイフを用いて段ボール等の被切断物の切断を行なう場合には、カッターホルダー50を被切断物に対して斜めに引いて切断を行なうため、カッター刃53上の切断箇所がホルダーヘッド51側の端部に寄り、カッター刃53の切刃における端部の一定箇所で被切断物を切断することになるため、カッター刃53の寿命が短くなり、カッター刃53の交換頻度が大になるという問題点がある。
【0008】
また、特許文献1に記載のカッターナイフを用いて収容物を収容した段ボールのコーナー部等を切断して段ボール箱を開梱(分解)する場合、作業の安全性を考慮して、カッター刃がなるべく突出しない状態で、被切断物導入口から被切断物をローラに当接させて導入しながら切断作業を行なうと、カッター刃上の切断箇所がカッター刃の先端側に集中し、カッター刃の寿命が短くなり、カッター刃の交換頻度が大になるという問題点がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、カッター刃の延命化が可能になるカッターナイフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項
1のカッターナイフは、人手による把持部を有するカッターホルダーと、前記カッターホルダーに設けられたガイド部に沿って摺動可能に保持されたカッター刃とを備えたカッターナイフにおいて、
前記カッターホルダーの前端側に備えたホルダーヘッドと、
前記カッターホルダーの前記把持部と前記ホルダーヘッドとの間に形成され、前記カッター刃の切刃を開口側に臨ませる被切断物導入口と、
前記ホルダーヘッドに取付けられ、前記被切断物導入口内に位置し、前記被切断物導入口に導入される被切断物を、前記カッターホルダーの前記把持部側に押圧する板バネと、
前記ホルダーヘッドに設けられ、前記カッター刃が摺動可能に貫通して前記カッター刃をホルダーヘッドより前方に突没可能とする貫通溝とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項
2のカッターナイフは、請求項
1に記載のカッターナイフにおいて、
前記カッターホルダーは、ホルダー本体と、カッター支持板とを備え、
前記カッター支持板は前記カッター刃を摺動可能に保持する摺動溝を有し、
前記ホルダーヘッドは、前記カッター支持板の前端部に、前記ホルダー本体と間隔を有して取付けられることにより、前記ホルダー本体と前記ホルダーヘッドとの間に、前記被切断物導入口が形成され、
前記カッター支持板の前記被切断物導入口に位置する部分のカッター刃装着側は、カッター刃装着側が狭幅となるテーパー状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項
3のカッターナイフは、請求項
1または
2に記載のカッターナイフにおいて、
前記ホルダーヘッドは、前記カッターホルダーの前端部に位置して外面が弧状をなす基部と、その基部から連続して、先端部が前記把持部側寄りとなるように前記把持部に対して傾斜させて延出され、前記基部の弧状の外面に連続した傾斜面を有する延出部とを有し、
前記カッター刃の刃先は鋭角状をなし、
前記カッター刃の前端辺における前記刃先の反対側のコーナー部が、前記貫通溝を通して前記基部の弧状をなす外面から前方に突出可能な構造を有することを特徴とする。
【0013】
請求項
4のカッターナイフは、請求項1から
3までのいずれか1項に記載のカッターナイフにおいて、
前記板バネに、前記カッター刃を通す切込み状の溝が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、段ボール等の被切断物をカッターナイフを引きながら切断する際に、板バネが被切断物をカッターホルダー側に押し戻すように作用し、被切断物が板バネを押す力が変化することにより、板バネが弾性により撓んだり元の姿勢側へ動いたりしながら被切断物が切断されるため、カッター刃の切刃上の切断を担う箇所が変更されて切断を担う箇所が1箇所に集中しないため、カッター刃が長寿命化される。
【0015】
また、
請求項1の発明によれば、カッター刃をホルダーヘッドから前方へ突出させることが可能であるため、カッター刃をホルダーヘッドから突出させた状態として、紙、シート、段ボール等を通常のナイフと同様の態様で切断することができる。また、カッター刃のホルダーヘッドからの突出幅を調整することにより、段ボール等の被切断物の切断のみならず、梱包作業の際の折り目付けのための切れ目を入れる作業にも用いることができる。
【0016】
請求項
2の発明によれば、被切断物導入口の被切断物を通す部分は、金属製のカッター支持板により構成され、樹脂製または木製のホルダー本体とホルダーヘッドに比較して薄く形成されるので、被切断物導入口にあるカッター刃の支持部のテーパー部のテーパー角を小さく設定することができ、切断後の被切断物の通過抵抗が小さくなり、さらに切れ味の良いカッターナイフを提供することができる。
【0017】
請求項
3の発明によれば、鋭角状をなすカッター刃は、カッター刃の前端辺における刃先の反対側のコーナー部が、前記貫通溝を通して前記基部の弧状をなす外面から前方に突出可能な構造としたので、ホルダーヘッドを被切断物の表面に当てて被切断物を切断する際に、カッターホルダーの被切断物の表面に対する傾斜角度の如何にかかわらず、カッター刃の被切断物表面から切込み深さをほぼ一定として作業を行なうことができる。
【0018】
請求項
4の発明によれば、板バネがカッター刃に対して相対的に移動可能となるように、板バネにカッター刃を通す切込み溝を設けたので、切断時に、被切断物が板バネを押す力が変化することによって、板バネがカッター刃に対してカッター刃の長手方向に自由に変形、移動して、被切断物に弾性力を有効に伝達可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明のカッターナイフの一実施の形態を示し、
図2はその分解斜視図である。
図1、
図2に示すように、カッターナイフは、人手による把持部1aを有するカッターホルダー1と、カッター刃3と、カッターホルダー1に設けられてカッター刃3のガイド部を構成するガイドフレーム2とを備える。
【0021】
本実施の形態のカッターホルダー1は、樹脂製のホルダー本体4と、ホルダー本体4に結合される例えばアルミニウム合金等の金属製のカッター支持板5とからなる。また、本実施の形態においては、ガイドフレーム2は、ホルダー本体4に設けた取付け溝4aにガイドフレーム2に嵌着、接着あるいは一体成形による固定により固定される。このガイドフレーム2のホルダー本体4に対する固定は、例えばガイドフレーム2に設けた係止部をホルダー本体4に設けた係止受け部に固定するか、カッター支持板5と共にホルダー本体4に固定する等機械的固定手段により行なってもよい。
【0022】
カッター支持板5のホルダー本体4への固定は、ホルダー本体4に設けた貫通孔4bに固定ねじ7を通してカッター支持板5に設けたねじ孔5aに螺合し、締結することにより行なう。
【0023】
8はカッター支持板5の前端部に取付けられた樹脂製のホルダーヘッドである。ホルダーヘッド8をカッター支持板5に取付けた状態において、ホルダーヘッド8とホルダー本体4の前端の対向面4cとの間に、被切断物を導入するための被切断物導入口9が形成される。ホルダーヘッド8は、カッター支持板5の前端部に固定される基部8aと、その基部8aから延出させて先細り状に形成された延出部8bとからなる。
【0024】
図3(A)に示すように、カッター支持板5の前端部には、ホルダーヘッド8の取付け孔5bを有し、一方、
図4(A)、(C)に示すように、ホルダーヘッド8の基部8aにはカッター支持板5の前端部を嵌め込む取付け溝8cと、カッター支持板5にホルダーヘッド8を取付けるための取付け孔8dを有する。カッター支持板5へのホルダーヘッド8の取付けは、カッター支持板5の前端部を、ホルダーヘッド8の取付け溝8cに嵌め、取付けボルト10をホルダーヘッド8とカッター支持板5にそれぞれ設けた取付け孔8d,5bに取付けボルト10を挿通してナット11に螺合し、締結することにより行なう。
【0025】
ホルダーヘッド8の基部8aの外面8a1と、カッター支持板5の前端部の外面5cとは円弧状をなし、カッター支持板5にホルダーヘッド8を取付けた状態においては、ホルダーヘッド8の基部8aの外面8a1と、カッター支持板5の前端部の外面5cは合致した外面を構成する。
【0026】
ホルダーヘッド8の基部8aの外面8a1と、延出部8bの前面8b1は連続する。ホルダー本体4の前端のホルダーヘッド8との対向面4cは、ホルダー本体4に対して被切断物導入口9が斜めに形成されるように、傾斜して形成されている。すなわち、被切断物導入口9を構成するホルダー本体4の前端の対向面4cとホルダー本体4側の対向面8b2とはホルダー本体4の長手方向に対して傾斜して互いにほぼ平行をなす。また、延出部8bの先端は、ホルダー本体4における被切断物導入口9の開口側の辺4dよりもカッター刃3の切刃3cから離れる方向に突出している。
【0027】
図3(A),(C)に示すように、カッター支持板5には、カッター刃3を摺動可能に嵌めるための摺動溝5dが形成されている。また、カッター支持板5におけるホルダー本体4とホルダーヘッド8との間に位置する部分の両面には、摺動溝5d側、すなわちカッター刃3装着側が狭幅となるようにテーパー状に形成されている。すなわちカッター支持板5における被切断物導入口9の奥部に位置する部分のカッター刃3装着側の両面は、テーパー面5e,5eに形成されている。
図1に示すように、このテーパー面5e,5eは、被切断物導入口9の傾斜の同方向に傾斜して形成されている。
【0028】
カッター刃3は、ガイドフレーム2内に摺動可能に取付けられ、カッター刃3の後端部には、ガイドフレーム2に摺動可能なスライダ14が結合される。その結合は、カッター刃3の後端部に設けた孔3aに、スライダ14に設けた結合用凸部14aを嵌着して行なっている。15はカッター刃3をガイドフレーム2に対して固定あるいは摺動可能にするための摘みであり、この摘み15はねじロッド15aを有し、そのねじロッド15aを、スライダ14に設けたねじ孔14bに螺合させている。そして、摘み15を一方向に回すことによってカッター刃3がガイドフレーム2の開口側壁面に締め付けられてカッター刃3が固定され、摘み15を反対方向に回すことにより、カッター刃3はガイドフレーム2に対して摺動可能となる。
【0029】
図4(A),(C)に示すように、ホルダーヘッド8には、カッター刃3を摺動可能に貫通させるための貫通溝8eを有する。また、カッター刃3の鋭角状をなす刃先3b(
図3(B)参照)を案内するため、貫通溝8eのホルダー本体4側端部には、開口部が貫通溝8eの幅より広幅をなす円錐状の孔8fが形成されている。
【0030】
図4(A),(B),(C)において、16はホルダーヘッド8に取付けられる板バネであり、この板バネ16は、取付け部16aと、この取付け部16aから折曲げられた弧状をなす弾性部16bとからなる。この板バネ16としては弾性体であればよく、金属の弾性体のみならず、樹脂製弾性板や竹材を用いることができる。弾性部16bにはカッター刃3を摺動可能に通すための切込み溝16cを有し、この切込み溝16cの奥部に、カッター刃3の刃先3bを案内するための長孔16dを有する。この長孔16dは、切込み溝16cより広幅で、切込み溝16cの長手方向に長い形状を有する。取付け部16aには取付け孔16eを有し、この取付け孔16eに取付けねじ17を挿通し、ホルダーヘッド8に設けた孔8gに螺入し締結することにより、板バネ16がホルダーヘッド8に取付けられる。板バネ16は、導入口9から導入される被切断物12を、カッターホルダー1の把持部1a側に押圧するものであり、被切断物12により板バネ16に加わる押す力の大小に応じて、カッター刃3の長手方向に移動するものである。
【0031】
この板バネ16をホルダーヘッド8に取付けた状態においては、板バネ16の湾曲した弾性部16bが被切断物導入口9内に位置し、弾性部16bの膨出部分がホルダー本体4側に近接または当接した位置にある。このカッターナイフを使用する際には、摘み15を緩めてカッター刃3を若干前方に押し出すことにより、カッター刃3は刃先3bが板バネ16の長孔16dから挿入される。そして、刃先3bがホルダーヘッド8の貫通溝8e内にある状態において、カッター刃3の前部の切刃3cが被切断物導入口9の開口側に臨ませた姿勢で被切断物導入口9内に位置する。
【0032】
段ボール箱を開梱する場合等の切断作業に当たり、摘み15を緩める方向に回動させてカッター刃3をガイドフレーム2に沿って移動可能とし、
図5(A),(B)に示すように、カッター刃3の刃先3bがホルダーヘッド8の貫通溝8e内にあるように、カッター刃3を元の位置から若干押し出し、その後、摘み15を締める方向に回すことにより、カッター刃3をガイドフレーム2に固定しておく。なお、カッター刃3の刃先3bが原位置となるように設定してもよい。切断作業時には、段ボール、エアキャップ、締結バンド等の被切断物12に対し、カッターホルダー1の把持部1aに対して斜めに形成されている被切断物導入口9に被切断物12の縁が入るように被切断物導入口9をあてがい、被切断物導入口9の向きとなる矢印Jの方向、すなわち被切断物12の表面に沿ってカッターナイフを引きながら切断を行なう。
【0033】
この切断作業の際、被切断物12が板バネ16を押す力が変化することにより、板バネ16が、矢印Kに示すように、弾性により撓んだり元の姿勢側へと復帰したりして往復動しながら被切断物12が切断されるため、カッター刃3の切刃3c上の切断を担う箇所が変更されて切断を担う箇所が1箇所に集中しないため、カッター刃3が長寿命化される。このため、大量の段ボール箱の開梱を行なう場合のように、従来はカッター刃3の頻繁な交換が必要であった作用場においても、カッター刃の交換頻度を少なくすることができ、作業性が向上する。
【0034】
特にカッター刃3として、所定の間隔で折り溝を設けた折刃式のカッター刃を用いれば、カッター刃3の前端側の切れ味が悪くなった際には、カッター刃3の最先端の折り溝の部分からカッター刃3の先端部を折って除去し、新たな前端部分を切断に使用することにより、カッター刃3を付け替えることなく切れ味を回復することができる。このため、さらにカッター刃3の寿命を延ばすことができる。
【0035】
また、板バネ16に切込み溝16cを設けたので、この切断作業の際に、被切断物12が板バネ16を押す力が変化することにより、板バネ16がカッター刃3に対してカッター刃3の長手方向に自由に変形、移動して、被切断物12に弾性力を有効に伝達可能となる。
【0036】
また、被切断物12がカッター刃3の切刃3c上を動きながら切断が行なわれるため、切れ味の良いカッターナイフが提供できる。
【0037】
また、板バネ16は作業者が不意に被切断物導入口9内に指を入れた場合に、カッター刃3に指が触れることを防止するため、安全性が高まる。
【0038】
また、カッター刃3がホルダーヘッド8から突出しない状態で切断作業を行なえば、カッター刃3で段ボール箱内の収容物を損傷するおそれがない。
【0039】
また、本実施の形態のカッターナイフは、カッター刃3をホルダーヘッド8から前方へ突出させることが可能であるため、
図14に示したラップカッターとしての使用のみでなく、通常のカッターナイフのように、カッター刃3をホルダーヘッド8から突出させた状態として、紙、シート、段ボール、エアキャップ、結合バンド、巻き段ボール等を切断したり切込みを入れたりすることができる。
【0040】
このため、段ボール箱の開梱を行なう場合、まず結合バンドを切断するために、このカッターナイフを、
図14に示したラップカッターと称されるカッターナイフとして使用し、被切断物導入口9内に切断すべき結合バンドを入れて切断し、その後、段ボール箱を包んでいるラップ(エアキャップ等の包装体)の切断のため、カッター刃3をホルダーヘッド8から突出させてカッター刃3のホルダーヘッド8から突出した部分で切断し、さらにその突出部分で
図6、
図7について後述するように、段ボールのコーナー部等を切断することにより開梱することができる。
【0041】
このため、従来のように、
図14に示したラップカッターと称されるカッターナイフと、カッター刃をカッターホルダーから突没可能なカッターナイフとの2本のカッターナイフを準備し、これらのカッターナイフを持ち替えて開梱作業を行なう必要がなく、作業性が向上する上、経済的となる。
【0042】
図6(A),(B)はこの実施の形態のカッターナイフにより段ボール箱18の開梱を行なうため、段ボール箱18のコーナー部の段ボール18aを、段ボール18aの表面にホルダーヘッド8の前面を当てて移動しながら切断している状態を示している。
【0043】
図6(A),(B)に示すように、この実施の形態においては、ホルダーヘッド8からカッター刃3を突出させ、ホルダーヘッド8の外周が円弧状の面8a1をなす基部8aを、被切断物の表面に当接させた状態でカッターナイフを手前に引きながら被切断物を切断したり切込みを入れることができるので、被切断物の切込み深さが意図した深さより過度に大きくなりすぎて段ボール箱等の収容物を損傷するおそれがなく、カッターナイフを円滑に移動させながら作業を行なうことができる。
【0044】
さらにこの実施の形態による場合、
図7により以下に説明するように、カッターホルダー1の被切断物(段ボール18a)の表面に対するカッター刃3による切込み深さをほぼ一定にして段ボールの切断を行なうことができる。すなわち、カッターホルダー1の段ボール18aの表面の角度α1が小さい(例えば20度〜40度)にしたとき、カッター刃3の前端辺3dの段ボール18aの表面に対しする角度は、垂直または垂直に近くなる。このとき、ホルダーヘッド8の延出部8bはカッターホルダー1に対して鋭角をなすように、すなわち延出部8bはその先端が把持部1a寄りとなるように把持部1aに対して傾斜しているので、延出部8bの前面8b1も把持部1aに対して傾斜面となり、段ボール18aの表面に対して鋭角をなす。そして、ホルダーヘッド8の段ボール18aに対する接触面は、基部8aの外面8a1の位置8x(または、この傾斜した前面8b1と基部8aの外面8a1との間の境界面の位置8x)となる。
【0045】
反対に、
図7(B)に示すように、カッターホルダー1の段ボール18aの表面に対する角度がα2(例えば50度〜70度)に示すように大きくなった姿勢の場合には、ホルダーヘッド8の段ボール18aに対する接触面は、基部8aの外面8a1の接触位置8xから接触位置8yとなり、カッター刃3の前端辺3dにおける刃先3bの反対側のコーナー部3eは、段ボール18aの表面に近接する。一方、カッター刃3の前端辺3dの段ボール18aの表面の法線に対する傾斜角度βは大きくなり、前端辺3dの段ボール18aに対する垂直方向の長さは
cosβであるから、角度βが大きくなるとcosβの値は小さくなり、切込み深さは浅い方に変化する。
【0046】
すなわち、カッターホルダー1の段ボール18aの表面に対する傾斜角度がα2に示すように増大するに伴い、カッター刃3の前端辺3dのコーナー部3eは段ボール18a側に近接するので、カッター刃3の切込み深さは大きくなる方向に変化する。反対に、カッター刃3の前端辺3dは段ボール18aの表面に対して傾斜するので、刃先3bは切込み深さが小さくなる方向に変化する。言い換えれば、
図7(A)のように角度βが小さいときの、コーナー部3eの段ボール18aの表面からの距離をMとし、
図7(B)のように、角度β=0度と仮定したときの前端辺3dのコーナー部3eから刃先3bまでの距離から、角度βの増大による減少分をNとすると、距離Mと減少分Nが相殺する。すなわち、傾斜角度α2の変化に伴う、これらの2つの相反する変化により、カッターホルダー1の段ボール18aの表面に対する傾斜角度の如何にかかわらず、カッター刃3の切込み深さが大幅に変わることを抑制する。このため、作業者は、カッター刃3のホルダーヘッド8からの突出幅を好適な幅に設定すれば、カッターホルダー1の段ボール18aの表面に対する傾斜角度に注意することなく、ほぼ一定の切込み深さで、段ボール箱18内の収容物の破損を心配することなく、容易に切断作業を行なうことができる。
【0047】
また、梱包作業の際に、段ボール箱を作るための折り目付け用の切込みの深さをほぼ一定にすることが可能となるので、過度に深い切込みの発生や、単に切り目を着けるべき箇所を誤って切断してしまう事態の発生を防止することができる。
【0048】
図8(A)は
図14に示した従来のカッターナイフにおける被切断物の切断部により被切断物12を切断している状態を示す図、
図8(B)は本発明の上記実施の形態における切断部を示す。
図8(A)に示す従来品においては、カッター刃53の保持部54は、樹脂製のカッターホルダー50と一体をなし、カッターホルダー50の強度確保のため、保持部54の厚みも大きく確保する必要から、テーパー面54a,54aどうしのなす角度は大きくなり、切刃の先端と、保持部54の最大厚み部分の両面とを結ぶ線がなす角θ2は30度前後に設定される。一方、この実施の形態においては、切断部は、樹脂製または木製のホルダー本体4よりも薄くても強度を確保しやすい金属製のカッター支持板5のみでなるため、テーパー面5e,5eどうしのなすテーパー角を小さくすることができ、切刃3cの先端と、保持部54の最大厚み部分の両面とを結ぶ線がなす角θ1は0.8度〜20度程度と小さく設定することができる。このため、被切断物12の切断後の部分を、テーパー面5e,5eの部分において円滑に通過させることができ、切断抵抗の小さいカッターナイフを提供することが可能となる。
【0049】
なお、この実施の形態においては、ガイドフレーム2とカッター支持板5とを別体に構成したが、これらを一体に構成してもよい。また、ホルダー本体4とカッター支持板5を一体に成形してもよい。また、ホルダー本体4とカッター支持板5とホルダーヘッド8とを一体に成形してもよい。
【0050】
図9〜
図11は本発明のカッターナイフの他の実施の形態であり、この実施の形態は、カッターホルダー1Rが、把持部1bを構成するホルダー本体4Xと、カッター支持板5Xとからなる。ホルダー本体4Xは、樹脂製の裏板40と表板41とにより構成されている。裏板40と表板41とによりカッター支持板5Xが両側から挟持され固定される。
図10に示すように、表板41には、スライダ14Xを摺動可能とするスペースを確保するための溝41eを有する。また、
図11に示すように、この例では、スライダ14Xおよびカッター刃3を摺動可能にガイドするガイド部45が、裏板40に設けた溝40aと、表板41において、溝40aに臨むように突出させた突出したスライダ14Xとの対向部41dと、カッター支持板5Xにおいて、溝40aに臨むように形成された段差部5hとの間で形成されたものを示す。
【0051】
スライダ14Xはカッター刃3の結合孔3aに嵌着されてカッター刃3をスライダ14Xに結合する凸部14aを有する。裏板40と表板41には、ホルダーヘッド8の傾斜した対向面8b2に対向して被切断物の導入口9を形成する傾斜した対向面40c,41cが形成されている。裏板40の溝40aの前端部には、カッター刃3の前端部をカッター支持板5Xのガイド溝5dにガイドするガイド面40bが、その前部程、溝40aの底部から離れるように傾斜した傾斜面に形成されている。
【0052】
表板41とカッター支持板5Xと裏板40との固定は、固定ねじ7Xを、表板41に設けた貫通孔41aと、カッター支持板5Xに設けた貫通孔5gとに挿通して裏板40に設けたねじ孔40dに螺合して締結することにより行なう。
【0053】
42はスライダ14Xをガイド部45に固定するためロックレバーである。ロックレバー42は、結合ピン43によりスライダ14Xに回動可能に取付けられるものであり、ロックレバー42は、結合ピン43によるスライダ14Xへの結合部にカム部42a,42bを有する。
図9(B)において、ロックレバー42が実線で示すように倒された状態では、
図11に示すように、カム部42a,42bの突出した外周面が、それぞれ表板41の対向部41dと、カッター支持板5Xの対向部5iに圧接する。このため、これらの対向部41d,5iが、それぞれ、スライダ14Xの対向面14cとカム部42aとの間、スライダ14Xの対向面14dとカム部42bとの間で挟持され、これによりスライダ14Xが拘束され、カッター刃3の移動が防止される。反対に、ロックレバー42を9(B)に矢印44で示すように回動させることにより、二点鎖線で示すようにロックレバー42を表板41に対して起立させると、スライダ14Xの拘束が解かれ、カッター刃3が移動可能となる。
【0054】
図9、
図10の実施の形態においては、カッター支持板5のカッター刃3装着側が狭幅となるテーパー面5eは、カッター支持板5Xの片面にのみ形成している。
図9〜
図11に示した実施の形態において、
図1〜
図8と同じ符号は同じ構成部品または部分を示している。また、
図9〜
図11に示した実施の形態において、ホルダー本体4Xとホルダーヘッド8との間に被切断物導入口9が形成され、その被切断物導入口9内に臨むように板バネ16Xが形成されていること、ホルダーヘッド8の構造、およびホルダーヘッド8とカッター刃3の組み合わせ構造は、
図1〜
図8に示したものと同じである。
【0055】
図12は本発明のカッターナイフの
参考例を示しており、
本参考例のカッターナイフは、把持部1cを有するカッターホルダー1Xと一体にホルダーヘッド8Fを構成し、カッターホルダー1Xとホルダーヘッド8Fとの間に被切断物導入口9Aを形成している。この被切断物導入口9Aは、カッターホルダー1Xの長手方向に対して傾斜させて形成し、被切断物導入口9A内に、カッター刃3Xと、このカッター刃3Xを保持する保持部20を設け、ホルダーヘッド8Fに、板バネ16Fを、その弾性部が被切断物導入口9A内に位置するように取付けている。板バネ16Fには、カッター刃3Xに対して板バネ16Fを移動可能とするため、カッター刃3Xに対して摺動可能に嵌めた切込み溝16cを有する。カッター刃3Xの保持部20の両面は、カッター刃3X側が狭幅となるテーパー面20a,20aに形成されている。
【0056】
この
参考例においても、被切断物導入口9A内に導入される被切断物を切断する際に、被切断物が板バネ16Fを押す力が変化することにより、板バネ16Fが弾性により撓んだり元の姿勢へと復帰したりしながら被切断物が切断されるため、カッター刃3Xの切断を担う箇所が変更されて切断を担う箇所が1箇所に集中しないため、カッター刃3Xが長寿命化される。また、被切断物がカッター刃3Xの切刃上を動きながら切断が行なわれるため、切れ味の良いカッターナイフが提供できる。
【0057】
図13は本発明の
カッターナイフのさらに他の
参考例を示しており、把持部1dを有するカッターホルダー1Yに、カッターホルダー1Yの長手方向に設けられた連結部21を介してホルダーヘッド8Hを、カッターホルダー1Y側に向けて形成し、カッターホルダー1Yとホルダーヘッド8Hとの間に被切断物導入口9Bを形成したものである。ホルダーヘッド8Hと連結部21との間には、カッター刃3Yと、これを保持する保持部22を設け、ホルダーヘッド8Hに、被切断物導入口9B内に弾性部を収容した板バネ16Gを取付けている。板バネ16Gには、カッター刃3Yに対して板バネ16Gを移動可能とするため、カッター刃3Yに対して摺動可能な切込み溝16cを設けている。カッター刃3Yの保持部22の両面は、カッター刃3Y側が狭幅となるテーパー面22a,22aに形成されている。
【0058】
この
参考例においても、被切断物導入口9B内に導入される被切断物12を切断する際に、被切断物12が板バネ16Gを押す力が変化することにより、板バネ16Gが弾性により撓んだり元の姿勢へと復帰したりしながら被切断物12が切断されるため、カッター刃3Yの切断を担う箇所が変更されて切断を担う箇所が1箇所に集中しないため、カッター刃3Yが長寿命化される。また、被切断物12がカッター刃3Yの切刃上を動きながら切断が行なわれるため、切れ味の良いカッターナイフが提供できる。
【0059】
以上本発明を実施形態により説明したが、本発明を実施する場合、具体的な構成や部品構成については、上記実施の形態に示されたものに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
カッターホルダー1の把持部1aとの間に、カッター刃3の切刃3cを開口側に臨ませた被切断物導入口9を設ける。ホルダーヘッド8に板バネ16を取付ける。板バネ16は、被切断物導入口9内に弾性部16bが位置し、被切断物導入口9に導入された被切断物を、カッターホルダー1の把持部1a側に押圧する。