特許第6198267号(P6198267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198267
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】風車
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20170911BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   F03D80/00
   F03D1/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-125857(P2013-125857)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2014-37824(P2014-37824A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-158985(P2012-158985)
(32)【優先日】2012年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000198318
【氏名又は名称】株式会社IHI検査計測
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敦司
(72)【発明者】
【氏名】木澤 啓
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 英敏
(72)【発明者】
【氏名】丸 博史
(72)【発明者】
【氏名】清原 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】関谷 達夫
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−127505(JP,A)
【文献】 特表2004−523692(JP,A)
【文献】 特開2012−037453(JP,A)
【文献】 特開2006−046107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードを有するハブ部と、前記ブレードに連結する主軸及び前記主軸に接続する発電機を有するナセル部と、を備えた風力発電に用いられる風車であって、
前記ハブ部又は前記ナセル部の内部に、光ファイバからなる検出素子を有する光学式液体検知器が配置され
前記ハブ部は、前記ブレードを伸び出させるブレード用開口部を有し、
前記ブレードは、油圧装置によってピッチ角度が可変であり、
前記検出素子は、前記ブレード用開口部の周縁部に配置され、
前記ブレード用開口部の周縁部には、その周方向に沿って液体吸着パッドが設けられ、
前記検出素子は、前記液体吸着パッドに添って設けられる風車。
【請求項2】
ブレードを有するハブ部と、前記ブレードに連結する主軸及び前記主軸に接続する発電機を有するナセル部と、を備えた風力発電に用いられる風車であって、
前記ハブ部又は前記ナセル部の内部に、光ファイバからなる検出素子を有する光学式液体検知器が配置され、
前記ハブ部にノーズキャップが着脱可能に取り付けられ、
前記ハブ部は、前記ノーズキャップの取り付けるノーズキャップ用開口部を有し、
前記検出素子は、前記ノーズキャップ用開口部の周縁部に配置され、
前記ノーズキャップ用開口部の周縁部には、その周方向に沿って液体吸着パッドが設けられ、
前記検出素子は、前記液体吸着パッドに添って設けられる風車。
【請求項3】
ブレードを有するハブ部と、前記ブレードに連結する主軸及び前記主軸に接続する発電機を有するナセル部と、を備えた風力発電に用いられる風車であって、
前記ハブ部又は前記ナセル部の内部に、光ファイバからなる検出素子を有する光学式液体検知器が配置され、
前記検出素子は、液体吸着シートが巻き付けられる風車。
【請求項4】
前記ハブ部は、前記ブレードを伸び出させるブレード用開口部を有し、
前記ブレードは、油圧装置によってピッチ角度が可変であり、
前記検出素子は、前記ブレード用開口部の周縁部に配置される請求項3に記載の風車。
【請求項5】
前記ハブ部にノーズキャップが着脱可能に取り付けられ、
前記ハブ部は、前記ノーズキャップの取り付けるノーズキャップ用開口部を有し、
前記検出素子は、前記ノーズキャップ用開口部の周縁部に配置される請求項3又は4に記載の風車。
【請求項6】
前記光学式液体検知器は、前記検出素子に付着した液体の反射率を検出して前記液体の種類を特定する請求項1から5のうちいずれか一項に記載の風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電に用いられる風車に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境への負荷を軽減するため、化石燃料に依存しない、クリーンエネルギーを利用した発電装置が注目されている。発電装置の一つとして、風力発電装置が知られている。
風力発電装置は、ブレード(回転翼)が風力を受けてハブ部を回転させる。そして、ハブ部の回転エネルギーをナセル部に収容された発電機で電気エネルギーに変換(発電)する。
【0003】
ブレードは、主軸を介してギアボックスに連結される。ギアボックスでブレード(主軸)の回転力が増速された後、発電機に伝えられて、電気エネルギーに変換される。
ギアボックスには潤滑油が供給される。この潤滑油の漏れを検知するために、油検知器が設置される。油検知器には、光ファイバを検出素子とする光学式油検知器が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4008910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
風力発電装置における風車では、一般にプロペラ型の回転翼(ブレード)が用いられる。プロペラ型の回転翼は、通常は3枚ブレードからなる。3枚ブレードは、風の状況に応じて、所定の回転速度と出力とが得られるように、ピッチ角度が可変である。
ブレードのピッチ角度を制御する駆動部は、例えば油圧シリンダ等の油圧装置を備える。したがって、ブレードを有するハブ部の内部でも油漏れの懸念がある。ハブ部の内部で油漏れが発生すると、外部に油が漏れ出て、風力発電設備周辺の環境を損なうおそれがある。
【0006】
風車は、野外に設置されるため、ハブ部やナセル部の内部に雨水等が浸入する場合がある。ナセル部の内部において不凍液等の液体が漏洩する場合もある。こられの液体がハブ部やナセル部の内部に存在すると、風車に損傷を与えるおそれがある。
【0007】
本発明は、ハブ部やナセル部の内部での液体漏れや液体浸入等を検知することにより、風車の損傷や風力発電設備周辺の環境汚染を防止できる風車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る風車の第一実施態様は、ブレードを有するハブ部と、前記ブレードに連結する主軸及び前記主軸に接続する発電機を有するナセル部と、を備えた風力発電に用いられる風車であって、前記ハブ部又は前記ナセル部の内部に、光ファイバからなる検出素子を有する光学式液体検知器が配置される。
【0009】
本発明に係る風車の第二実施態様は、第一実施態様において、前記光学式液体検知器は、前記検出素子に付着した液体の反射率を検出して前記液体の種類を特定する。
【0010】
本発明に係る風車の第三実施態様は、第一又は第二実施態様において、前記ハブ部は、前記ブレードを伸び出させるブレード用開口部を有し、前記ブレードは、油圧装置によってピッチ角度が可変であり、前記検出素子は、前記ブレード用開口部の周縁部に配置される。
【0011】
本発明に係る風車の第四実施態様は、第一から第三実施態様のいずれかにおいて、前記ハブ部にノーズキャップが着脱可能に取り付けられ、前記ハブ部は、前記ノーズキャップの取り付けるノーズキャップ用開口部を有し、前記検出素子は、前記ノーズキャップ用開口部の周縁部に配置される。
【0012】
本発明に係る風車の第五実施態様は、第三又は第四実施態様において、前記ブレード用開口部の周縁部及び前記ノーズキャップ用開口部の周縁部には、その周方向に沿って液体吸着パッドが設けられ、前記検出素子は、前記液体吸着パッドに添って設けられる。
【0013】
本発明に係る風車の第六実施態様は、第一から第四実施態様のいずれかにおいて、前記検出素子は、液体吸着シートが巻き付けられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の風車によれば、ハブ部やナセル部の内部での液体漏れや液体浸入等を検知することができるので、風車の損傷や風力発電設備周辺の環境汚染を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る風車を模式的に示す部分断面図である。
図2】風車の要部を模式的に示す部分断面図である。
図3】光学式液体検知器の概略構成を示す斜視図である。
図4】光学式液体検知器の概略構成を示す側断面図である。
図5】ブレード用開口部に配置された光ファイバを示す図である。
図6】ノーズキャップ用開口部に配置された光ファイバを示す図である。
図7】光学式液体検知器の他の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の風車を、図面を参照しつつ詳しく説明する。各図面においては、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る風車1を模式的に示す部分断面図である。図2は、風車1の要部を模式的に示す部分断面図である。
風車1は、風力発電装置に用いられる。風車1は、ハブ部2と、このハブ部2を回転可能に保持するナセル部3と、このナセル部3を頂部にて支持するタワー4と、を備える。
【0018】
ハブ部2は、3枚のブレード5を備える。図2に示すように、ハブ部2の側周部に、三つのブレード用開口部6が形成される。三つのブレード用開口部6から、それぞれブレード5が外に延出する。
ブレード5は、風の状況に応じて所定の回転速度と出力とが得られるように、そのピッチ角度が可変である。ハブ部2の内部に配置された油圧装置(図示せず)により、ブレード5のピッチ角度が調節される。油圧装置は、油圧シリンダ等を用いた公知の油圧装置である。
【0019】
ハブ部2の先端部には、ノーズキャップ7が着脱可能に取り付けられる。ノーズキャップ7は、例えばハブ部2の先端部内のメンテナンスなどの際に開けられる。
ハブ部2の先端部には、ノーズキャップ用開口部8が形成される。各種器具や作業員は、ノーズキャップ用開口部8からハブ部2に出入りできる。
ノーズキャップ用開口部8やブレード用開口部6の周縁部には、後述する光学式液体検知器20が有する光ファイバ21が配置される。
【0020】
ナセル部3は、ブレード5に連結する主軸9を内部に収容する。ナセル部3は、主軸9を介してハブ部2を回転可能に保持する。
主軸9には、増速機10が接続される。増速機10には、動力伝達軸(図示せず)を介してブレーキ装置11、発電機12が接続される。
ナセル部3の底部にも、後述する光学式液体検知器20が有する光ファイバ21が配置される。
【0021】
風車1は、ブレード5が風を受けるとハブ部2が回転する。ハブ部2の回転が主軸9を介して増速機10に伝わって高速回転に変換される。この高速回転力が動力伝達軸を介して発電機12に伝達される。発電機12は、この高速回転力を電気エネルギーに変換して発電を行なう。
【0022】
タワー4は、その内部に、制御装置(図示せず)や変圧器(図示せず)などを有する。タワー4は、その周辺に設けられた風力発電設備13にケーブル(図示せず)を介して電気的に接続される。風力発電設備13は、各種監視装置や保護装置、制御装置を備える。
【0023】
ハブ部2の内部には、ブレード5のピッチ角度を調節する油圧装置が設けられる。このため、ハブ部2の内部では、油圧装置からの油漏れのおそれがある。また、ノーズキャップ用開口部8やブレード用開口部6から、雨水等がハブ部2の内部に浸入するおそれがある。
このため、ハブ部2の内部に光学式液体検知器20が設置される。
【0024】
ナセル部3の内部には、増速機10、ブレーキ装置11、発電機12等が設けられる。このため、ナセル部3の内部では、増速機10等からの油漏れのおそれがある。また、不凍液等の液体漏れのおそれもある。さらに、雨水等がナセル部32の内部に浸入するおそれがある。
このため、ナセル部3の内部に光学式液体検知器20が設置される。
【0025】
ハブ部2の内部には、光学式液体検知器20が複数台(例えば4台)設けられる。ナセル部3の内部には、光学式液体検知器20が複数台設けられる。これら光学式液体検知器20は同一構成である。
【0026】
図3は、光学式液体検知器20の概略構成を示す斜視図である。図4は、光学式液体検知器20の概略構成を示す側断面図である。
光学式液体検知器20は、高感度型無水防爆センサであり、検出素子である光ファイバ21を有する。光ファイバ21は、ハブ部2やナセル部3の壁面や底面に対して、接着テープや保持バンド、保持金具等によって固定される。
光学式液体検知器20は、ハブ部2やナセル部3の壁面や底面に対して、ボルト等によって固定される。
【0027】
光学式液体検知器20は、光ファイバ21と、この光ファイバ21の一端側に設けられた発光素子22、及び他端側に設けられた受光素子23とを有する。光学式液体検知器20は、さらにケーシング31、蓋体32、ファイバコネクタ33、34、ケーブルコネクタ35、信号ケーブル36、回路基板37及び保護カバー38を有する。
【0028】
ケーシング31は、上端にフランジ31aを有し、下端に底部31bを有する有底円筒形状の樹脂製筐体である。ケーシング31は、その内部に発光素子22、受光素子23及び回路基板37を収容する。
蓋体32は、ケーシング31のフランジ31aと同一の径を有する円板形状部材である。
蓋体32は、Oリング(図示せず)を挟んだ状態で、フランジ31aにボルト締めされる。
【0029】
ファイバコネクタ33は、光ファイバ21の一端を蓋体32の上面に機械的に接続する。また、ファイバコネクタ33は、ケーシング31の内部に収容された発光素子22から出射される光を光ファイバ21の一端に導入する。
ファイバコネクタ34は、光ファイバ21の他端を蓋体32の上面に機械的に接続する。また、ファイバコネクタ34は、光ファイバ21の他端から出射された光をケーシング31内に収容された受光素子23に導入する。
【0030】
ケーブルコネクタ35は、信号ケーブル36の一端を蓋体32の上面に機械的に接続する。また、ケーブルコネクタ35は、ケーシング31に収容された回路基板37と信号ケーブル36とを電気的に接続する。
信号ケーブル36は、一端がケーブルコネクタ35を介して回路基板37に接続され、他端がナセル部3を通ってタワー4に設けられた制御装置あるいは風力発電設備13に設けられた制御装置に接続される。信号ケーブル36は、これら制御装置から出力される電気信号を回路基板37へ伝達する。また、信号ケーブル36は、回路基板37から出力される電気信号を制御装置へ伝達する。
【0031】
回路基板37は、信号ケーブル36を介して制御装置に接続される。回路基板37の上面には発光素子22及び受光素子23が配置される。回路基板37は、発光素子22に電力を供給する電源回路や、受光素子23の出力を増幅する増幅回路などを有する。
発光素子22は、回路基板37を介して制御装置から入力される電気信号に応じた光を発生する。受光素子23は、光ファイバ21の他端から出射される光に応じた電気信号を、回路基板37を介して制御装置に出力する。
保護カバー38は、ファイバコネクタ33、34及びケーブルコネクタ35を覆うように蓋体32の上面に設置されて、各コネクタ類を保護する。
【0032】
光ファイバ21は、一端がファイバコネクタ33に接続され、他端がファイバコネクタ34に接続される。
光ファイバ21は、石英ガラスからなるコアとフッ化アクリレートUV樹脂からなるクラッドとを有するファイバ素線を複数本(例えば7本)備える。複数本のファイバ素線は、抗張力線の周囲に配して、スリット入りの樹脂チューブの内部に収容される。
光ファイバ21は、ケーシング31の外側の所定位置に配置される。
【0033】
図5は、ブレード用開口部6に配置された光ファイバ21を示す図である。
ハブ部2の内部に配置された4台の光学式液体検知器20のうちの3台は、それぞれの光ファイバ21がブレード用開口部6に配置される。
ハブ部2のブレード用開口部6の周縁部には、その周方向に沿って液体吸着パッド14が周回して配置される。
この液体吸着パッド14に添って光ファイバ21が配置される。光ファイバ21は、例えば液体吸着パッド14の上面又は外周側に添わされる。光ファイバ21は、液体吸着パッド14に対して接着テープや保持バンド、保持金具等によって固定される。
液体吸着パッドは、例えばポリプロピレン不織布などによって形成される。
【0034】
図6は、ノーズキャップ用開口部8に配置された光ファイバ21を示す図である。
ハブ部2の内部に配置された4台の光学式液体検知器20のうちの残りの1台は、光ファイバ21がノーズキャップ用開口部8に配置される。
ハブ部2のノーズキャップ用開口部8の周縁部には、その周方向に沿って液体吸着パッド14が周回して配置される。
この液体吸着パッド14に添って光ファイバ21が配置される。光ファイバ21は、例えば液体吸着パッド14の上面又は外周側に添わされる。光ファイバ21は、液体吸着パッド14に対して接着テープや保持バンド、保持金具等によって固定される。
液体吸着パッドは、例えばポリプロピレン不織布などによって形成される。
【0035】
ナセル部3の内部に配置された複数の光学式液体検知器20は、それぞれの光ファイバ21がナセル部3の底面等に配置される。ナセル部3の底面等には、液体吸着パッド14が配置される。光ファイバ21は、液体吸着パッド14に対して接着テープや保持バンド、保持金具等によって固定される。液体吸着パッドは、例えばポリプロピレン不織布などによって形成される。
【0036】
光学式液体検知器20では、検出素子である光ファイバ21の表面に油や雨水、不凍液などの液体が付着すると光漏洩量が増大して、光ファイバ21の光伝送損失が増大する。光学式液体検知器20は、このような性質を利用することにより、液体漏れや雨水等浸入を検知できる。
【0037】
ハブ部2の内部において、ブレード5のピッチ角度を可変にする油圧装置から油漏れが発生したり、ピッチ角度を変化させる可動部の潤滑油が流れ出た場合には、これら油の一部は、ハブ部2の回転に伴う遠心力などによってブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8に流れていく。ブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8に流れた油は、これらブレード用開口部6、ノーズキャップ用開口部8の周縁部に設けられた液体吸着パッド14に吸着される。
【0038】
液体吸着パッド14には、光ファイバ21が配置されているので、ブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8に流れた油は光ファイバ21に直接付着する。または、油は、一旦液体吸着パッド14に吸着した後、その一部が光ファイバ21に付着する。
これにより、光学式液体検知器20では、光ファイバ21の表面に油が付着することで光漏洩量が増大する。光学式液体検知器20は、その光伝送損失が増大することにより油漏れを検知する。
【0039】
このようにして油漏れを検知すると、光学式液体検知器20は、信号ケーブルを介して制御装置に油漏れの発生を出力する。したがって、この制御装置から油漏れの発生を受信したオペレーターは、例えば風車の駆動を停止するなどの処置を行う。
あるいは、制御装置は油漏れの発生を受信すると、予め設定されたプログラムに従い、自動的に風車の駆動を停止するとともに、風力発電設備13の監視装置に油漏れの発生を出力する。
【0040】
油や雨水等の液体の屈折率はそれぞれ異なる。例えば、不凍液は、その濃度によっても屈折率が異なる。このため、光ファイバ21に付着した液体の種類や濃度に応じて、光ファイバ21からの光漏洩量が変化する。
したがって、光学式液体検知器20は、光ファイバ21の光伝送損失に基づいて、光ファイバ21に付着した液体の種類や濃度を検出(液体識別)できる。
光学式液体検知器20による液体識別には、特開2012−37453号公報に記載された技術が用いられる。
【0041】
光学式液体検知器20は、光ファイバ21に付着した液体の種類や濃度の情報を制御装置に出力する。制御装置は、光ファイバ21に付着した液体の種類や濃度に応じて、各種アラーム等を出したり、自動的に風車の駆動を停止したりする。
【0042】
ナセル部3の内部において、油や不凍液等の液体漏れが発生したり、雨水等の浸入が発生したりした場合には、これら液体の一部は、ナセル部3の底面等に流れていく。ナセル部3の底面等に流れた液体は、液体吸着パッド14に吸着される。液体吸着パッド14には、光ファイバ21が配置されているので、光学式液体検知器20は、光ファイバ21に付着した液体を識別する。
したがって、制御装置は、ハブ部2の内部において油漏れ等が発生した場合と同様に、各種アラームを出したり、風車の駆動を停止したりするなどの処置を行う。
【0043】
風車1は、ハブ部2又はナセル部3の内部に、光ファイバ21からなる検出素子を有する光学式液体検知器20を配置したので、油や不凍液等の液体漏れや、雨水等の浸入を検出することができる。
【0044】
光学式液体検知器20は、光ファイバ21に付着した液体を識別できるので、検出した液体の種類や状態に応じて、適切な対応をとることが可能となる。
【0045】
光学式液体検知器20の光ファイバ21を、ブレード用開口部6及びノーズキャップ用開口部8の周縁部に配置したので、ハブ部2の内部における油漏れを検出できる。油が外部に漏れ出るのを事前に検知することができるので、風力発電設備周辺の環境が汚染されるのを防止することができる。
【0046】
ブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8の周縁部に液体吸着パッド14を設け、この液体吸着パッド14に添って光ファイバ21を設けた。このため、ハブ部2の内部に漏れ出た油を液体吸着パッド14で吸着して外部への漏出を防止できる。また、光学式液体検知器20の光ファイバ21により油漏れを確実に検出できる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
図7は、光学式液体検知器の他の形態(光学式液体検知器40)を示す斜視図である。
光学式液体検知器40は、高感度型無水防爆センサである光学式液体検知器20よりも小型軽量のセンサである。光学式液体検知器40は、検出素子である光ファイバ21を有する。光ファイバ21は、光学式液体検知器40の本体変換器41の底部に配置したり、本体変換器41から引き出したりできる。
上述した実施形態において、光学式液体検知器20に代えて光学式液体検知器40を用いてもよい。
光学式液体検知器40は、小型軽量であるため、ハブ部2又はナセル部3の内部の任意の場所に設置できる。光学式液体検知器40は、ハブ部2やナセル部3の壁面や底面に対して、接着テープや保持バンド、保持金具等によって固定される。また、光学式液体検知器40の内部に磁石を配置することにより、ハブ部2やナセル部3に存在する鉄鋼等に固定することができる。
【0049】
上述した実施形態では、光ファイバ21を単にスリット入りの樹脂チューブ内に収容した状態で用いているが、これに限らない。光ファイバ21に液体吸着シートを巻き付けて用いるようにしてもよい。液体吸着シートは、例えばポリプロピレン不織布などによって形成される。
これにより、ハブ部2の内部において油漏れが起こり、漏れた油がブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8に流れた場合に、この油を油吸収シートで吸着してブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8から漏れ出るのを防止できる。また、光学式液体検知器20の光ファイバ21で油を確実に検知することができる。
【0050】
上述した実施形態では、ハブ部2に4台の光学式液体検知器20を設置し、それぞれの光ファイバ21を三つのブレード用開口部6とノーズキャップ用開口部8のそれぞれに対応させて配置したが、これに限らない。
光学式液体検知器20を1台のみ設置し、その光ファイバ21を三つのブレード用開口部6とノーズキャップ用開口部8のそれぞれの周縁部に這わせて配置することにようにしてもよい。
ノーズキャップ用開口部8に対して光学式液体検知器20を1台設置し、三つのブレード用開口部6に対しては1台の光学式液体検知器20を設置してその光ファイバ21を三つのブレード用開口部6にそれぞれに配置してもよい。
【0051】
光学式液体検知器20,40が識別できる液体は、油、不凍液、雨水に限らない。様々な液体を検出できる。例えば、海水、エタノール、シリコーン油、ガソリン、軽油、灯油、重油、アスファルト等が含まれる。各種混合液体も含まれる。
【0052】
光ファイバ21は、アクリル樹脂(PMMA)により形成されたファイバ素線を備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 風車 2 ハブ部 3 ナセル部 5 ブレード 6 ブレード用開口部 7 ノーズキャップ 8 ノーズキャップ用開口部 9 主軸 12 発電機 14 液体吸着パッド 20 光学式液体検知器 21 光ファイバ(検出素子) 40 光学式液体検知器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7