(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の風車を、図面を参照しつつ詳しく説明する。各図面においては、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る風車1を模式的に示す部分断面図である。
図2は、風車1の要部を模式的に示す部分断面図である。
風車1は、風力発電装置に用いられる。風車1は、ハブ部2と、このハブ部2を回転可能に保持するナセル部3と、このナセル部3を頂部にて支持するタワー4と、を備える。
【0018】
ハブ部2は、3枚のブレード5を備える。
図2に示すように、ハブ部2の側周部に、三つのブレード用開口部6が形成される。三つのブレード用開口部6から、それぞれブレード5が外に延出する。
ブレード5は、風の状況に応じて所定の回転速度と出力とが得られるように、そのピッチ角度が可変である。ハブ部2の内部に配置された油圧装置(図示せず)により、ブレード5のピッチ角度が調節される。油圧装置は、油圧シリンダ等を用いた公知の油圧装置である。
【0019】
ハブ部2の先端部には、ノーズキャップ7が着脱可能に取り付けられる。ノーズキャップ7は、例えばハブ部2の先端部内のメンテナンスなどの際に開けられる。
ハブ部2の先端部には、ノーズキャップ用開口部8が形成される。各種器具や作業員は、ノーズキャップ用開口部8からハブ部2に出入りできる。
ノーズキャップ用開口部8やブレード用開口部6の周縁部には、後述する光学式液体検知器20が有する光ファイバ21が配置される。
【0020】
ナセル部3は、ブレード5に連結する主軸9を内部に収容する。ナセル部3は、主軸9を介してハブ部2を回転可能に保持する。
主軸9には、増速機10が接続される。増速機10には、動力伝達軸(図示せず)を介してブレーキ装置11、発電機12が接続される。
ナセル部3の底部にも、後述する光学式液体検知器20が有する光ファイバ21が配置される。
【0021】
風車1は、ブレード5が風を受けるとハブ部2が回転する。ハブ部2の回転が主軸9を介して増速機10に伝わって高速回転に変換される。この高速回転力が動力伝達軸を介して発電機12に伝達される。発電機12は、この高速回転力を電気エネルギーに変換して発電を行なう。
【0022】
タワー4は、その内部に、制御装置(図示せず)や変圧器(図示せず)などを有する。タワー4は、その周辺に設けられた風力発電設備13にケーブル(図示せず)を介して電気的に接続される。風力発電設備13は、各種監視装置や保護装置、制御装置を備える。
【0023】
ハブ部2の内部には、ブレード5のピッチ角度を調節する油圧装置が設けられる。このため、ハブ部2の内部では、油圧装置からの油漏れのおそれがある。また、ノーズキャップ用開口部8やブレード用開口部6から、雨水等がハブ部2の内部に浸入するおそれがある。
このため、ハブ部2の内部に光学式液体検知器20が設置される。
【0024】
ナセル部3の内部には、増速機10、ブレーキ装置11、発電機12等が設けられる。このため、ナセル部3の内部では、増速機10等からの油漏れのおそれがある。また、不凍液等の液体漏れのおそれもある。さらに、雨水等がナセル部32の内部に浸入するおそれがある。
このため、ナセル部3の内部に光学式液体検知器20が設置される。
【0025】
ハブ部2の内部には、光学式液体検知器20が複数台(例えば4台)設けられる。ナセル部3の内部には、光学式液体検知器20が複数台設けられる。これら光学式液体検知器20は同一構成である。
【0026】
図3は、光学式液体検知器20の概略構成を示す斜視図である。
図4は、光学式液体検知器20の概略構成を示す側断面図である。
光学式液体検知器20は、高感度型無水防爆センサであり、検出素子である光ファイバ21を有する。光ファイバ21は、ハブ部2やナセル部3の壁面や底面に対して、接着テープや保持バンド、保持金具等によって固定される。
光学式液体検知器20は、ハブ部2やナセル部3の壁面や底面に対して、ボルト等によって固定される。
【0027】
光学式液体検知器20は、光ファイバ21と、この光ファイバ21の一端側に設けられた発光素子22、及び他端側に設けられた受光素子23とを有する。光学式液体検知器20は、さらにケーシング31、蓋体32、ファイバコネクタ33、34、ケーブルコネクタ35、信号ケーブル36、回路基板37及び保護カバー38を有する。
【0028】
ケーシング31は、上端にフランジ31aを有し、下端に底部31bを有する有底円筒形状の樹脂製筐体である。ケーシング31は、その内部に発光素子22、受光素子23及び回路基板37を収容する。
蓋体32は、ケーシング31のフランジ31aと同一の径を有する円板形状部材である。
蓋体32は、Oリング(図示せず)を挟んだ状態で、フランジ31aにボルト締めされる。
【0029】
ファイバコネクタ33は、光ファイバ21の一端を蓋体32の上面に機械的に接続する。また、ファイバコネクタ33は、ケーシング31の内部に収容された発光素子22から出射される光を光ファイバ21の一端に導入する。
ファイバコネクタ34は、光ファイバ21の他端を蓋体32の上面に機械的に接続する。また、ファイバコネクタ34は、光ファイバ21の他端から出射された光をケーシング31内に収容された受光素子23に導入する。
【0030】
ケーブルコネクタ35は、信号ケーブル36の一端を蓋体32の上面に機械的に接続する。また、ケーブルコネクタ35は、ケーシング31に収容された回路基板37と信号ケーブル36とを電気的に接続する。
信号ケーブル36は、一端がケーブルコネクタ35を介して回路基板37に接続され、他端がナセル部3を通ってタワー4に設けられた制御装置あるいは風力発電設備13に設けられた制御装置に接続される。信号ケーブル36は、これら制御装置から出力される電気信号を回路基板37へ伝達する。また、信号ケーブル36は、回路基板37から出力される電気信号を制御装置へ伝達する。
【0031】
回路基板37は、信号ケーブル36を介して制御装置に接続される。回路基板37の上面には発光素子22及び受光素子23が配置される。回路基板37は、発光素子22に電力を供給する電源回路や、受光素子23の出力を増幅する増幅回路などを有する。
発光素子22は、回路基板37を介して制御装置から入力される電気信号に応じた光を発生する。受光素子23は、光ファイバ21の他端から出射される光に応じた電気信号を、回路基板37を介して制御装置に出力する。
保護カバー38は、ファイバコネクタ33、34及びケーブルコネクタ35を覆うように蓋体32の上面に設置されて、各コネクタ類を保護する。
【0032】
光ファイバ21は、一端がファイバコネクタ33に接続され、他端がファイバコネクタ34に接続される。
光ファイバ21は、石英ガラスからなるコアとフッ化アクリレートUV樹脂からなるクラッドとを有するファイバ素線を複数本(例えば7本)備える。複数本のファイバ素線は、抗張力線の周囲に配して、スリット入りの樹脂チューブの内部に収容される。
光ファイバ21は、ケーシング31の外側の所定位置に配置される。
【0033】
図5は、ブレード用開口部6に配置された光ファイバ21を示す図である。
ハブ部2の内部に配置された4台の光学式液体検知器20のうちの3台は、それぞれの光ファイバ21がブレード用開口部6に配置される。
ハブ部2のブレード用開口部6の周縁部には、その周方向に沿って液体吸着パッド14が周回して配置される。
この液体吸着パッド14に添って光ファイバ21が配置される。光ファイバ21は、例えば液体吸着パッド14の上面又は外周側に添わされる。光ファイバ21は、液体吸着パッド14に対して接着テープや保持バンド、保持金具等によって固定される。
液体吸着パッドは、例えばポリプロピレン不織布などによって形成される。
【0034】
図6は、ノーズキャップ用開口部8に配置された光ファイバ21を示す図である。
ハブ部2の内部に配置された4台の光学式液体検知器20のうちの残りの1台は、光ファイバ21がノーズキャップ用開口部8に配置される。
ハブ部2のノーズキャップ用開口部8の周縁部には、その周方向に沿って液体吸着パッド14が周回して配置される。
この液体吸着パッド14に添って光ファイバ21が配置される。光ファイバ21は、例えば液体吸着パッド14の上面又は外周側に添わされる。光ファイバ21は、液体吸着パッド14に対して接着テープや保持バンド、保持金具等によって固定される。
液体吸着パッドは、例えばポリプロピレン不織布などによって形成される。
【0035】
ナセル部3の内部に配置された複数の光学式液体検知器20は、それぞれの光ファイバ21がナセル部3の底面等に配置される。ナセル部3の底面等には、液体吸着パッド14が配置される。光ファイバ21は、液体吸着パッド14に対して接着テープや保持バンド、保持金具等によって固定される。液体吸着パッドは、例えばポリプロピレン不織布などによって形成される。
【0036】
光学式液体検知器20では、検出素子である光ファイバ21の表面に油や雨水、不凍液などの液体が付着すると光漏洩量が増大して、光ファイバ21の光伝送損失が増大する。光学式液体検知器20は、このような性質を利用することにより、液体漏れや雨水等浸入を検知できる。
【0037】
ハブ部2の内部において、ブレード5のピッチ角度を可変にする油圧装置から油漏れが発生したり、ピッチ角度を変化させる可動部の潤滑油が流れ出た場合には、これら油の一部は、ハブ部2の回転に伴う遠心力などによってブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8に流れていく。ブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8に流れた油は、これらブレード用開口部6、ノーズキャップ用開口部8の周縁部に設けられた液体吸着パッド14に吸着される。
【0038】
液体吸着パッド14には、光ファイバ21が配置されているので、ブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8に流れた油は光ファイバ21に直接付着する。または、油は、一旦液体吸着パッド14に吸着した後、その一部が光ファイバ21に付着する。
これにより、光学式液体検知器20では、光ファイバ21の表面に油が付着することで光漏洩量が増大する。光学式液体検知器20は、その光伝送損失が増大することにより油漏れを検知する。
【0039】
このようにして油漏れを検知すると、光学式液体検知器20は、信号ケーブルを介して制御装置に油漏れの発生を出力する。したがって、この制御装置から油漏れの発生を受信したオペレーターは、例えば風車の駆動を停止するなどの処置を行う。
あるいは、制御装置は油漏れの発生を受信すると、予め設定されたプログラムに従い、自動的に風車の駆動を停止するとともに、風力発電設備13の監視装置に油漏れの発生を出力する。
【0040】
油や雨水等の液体の屈折率はそれぞれ異なる。例えば、不凍液は、その濃度によっても屈折率が異なる。このため、光ファイバ21に付着した液体の種類や濃度に応じて、光ファイバ21からの光漏洩量が変化する。
したがって、光学式液体検知器20は、光ファイバ21の光伝送損失に基づいて、光ファイバ21に付着した液体の種類や濃度を検出(液体識別)できる。
光学式液体検知器20による液体識別には、特開2012−37453号公報に記載された技術が用いられる。
【0041】
光学式液体検知器20は、光ファイバ21に付着した液体の種類や濃度の情報を制御装置に出力する。制御装置は、光ファイバ21に付着した液体の種類や濃度に応じて、各種アラーム等を出したり、自動的に風車の駆動を停止したりする。
【0042】
ナセル部3の内部において、油や不凍液等の液体漏れが発生したり、雨水等の浸入が発生したりした場合には、これら液体の一部は、ナセル部3の底面等に流れていく。ナセル部3の底面等に流れた液体は、液体吸着パッド14に吸着される。液体吸着パッド14には、光ファイバ21が配置されているので、光学式液体検知器20は、光ファイバ21に付着した液体を識別する。
したがって、制御装置は、ハブ部2の内部において油漏れ等が発生した場合と同様に、各種アラームを出したり、風車の駆動を停止したりするなどの処置を行う。
【0043】
風車1は、ハブ部2又はナセル部3の内部に、光ファイバ21からなる検出素子を有する光学式液体検知器20を配置したので、油や不凍液等の液体漏れや、雨水等の浸入を検出することができる。
【0044】
光学式液体検知器20は、光ファイバ21に付着した液体を識別できるので、検出した液体の種類や状態に応じて、適切な対応をとることが可能となる。
【0045】
光学式液体検知器20の光ファイバ21を、ブレード用開口部6及びノーズキャップ用開口部8の周縁部に配置したので、ハブ部2の内部における油漏れを検出できる。油が外部に漏れ出るのを事前に検知することができるので、風力発電設備周辺の環境が汚染されるのを防止することができる。
【0046】
ブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8の周縁部に液体吸着パッド14を設け、この液体吸着パッド14に添って光ファイバ21を設けた。このため、ハブ部2の内部に漏れ出た油を液体吸着パッド14で吸着して外部への漏出を防止できる。また、光学式液体検知器20の光ファイバ21により油漏れを確実に検出できる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
図7は、光学式液体検知器の他の形態(光学式液体検知器40)を示す斜視図である。
光学式液体検知器40は、高感度型無水防爆センサである光学式液体検知器20よりも小型軽量のセンサである。光学式液体検知器40は、検出素子である光ファイバ21を有する。光ファイバ21は、光学式液体検知器40の本体変換器41の底部に配置したり、本体変換器41から引き出したりできる。
上述した実施形態において、光学式液体検知器20に代えて光学式液体検知器40を用いてもよい。
光学式液体検知器40は、小型軽量であるため、ハブ部2又はナセル部3の内部の任意の場所に設置できる。光学式液体検知器40は、ハブ部2やナセル部3の壁面や底面に対して、接着テープや保持バンド、保持金具等によって固定される。また、光学式液体検知器40の内部に磁石を配置することにより、ハブ部2やナセル部3に存在する鉄鋼等に固定することができる。
【0049】
上述した実施形態では、光ファイバ21を単にスリット入りの樹脂チューブ内に収容した状態で用いているが、これに限らない。光ファイバ21に液体吸着シートを巻き付けて用いるようにしてもよい。液体吸着シートは、例えばポリプロピレン不織布などによって形成される。
これにより、ハブ部2の内部において油漏れが起こり、漏れた油がブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8に流れた場合に、この油を油吸収シートで吸着してブレード用開口部6やノーズキャップ用開口部8から漏れ出るのを防止できる。また、光学式液体検知器20の光ファイバ21で油を確実に検知することができる。
【0050】
上述した実施形態では、ハブ部2に4台の光学式液体検知器20を設置し、それぞれの光ファイバ21を三つのブレード用開口部6とノーズキャップ用開口部8のそれぞれに対応させて配置したが、これに限らない。
光学式液体検知器20を1台のみ設置し、その光ファイバ21を三つのブレード用開口部6とノーズキャップ用開口部8のそれぞれの周縁部に這わせて配置することにようにしてもよい。
ノーズキャップ用開口部8に対して光学式液体検知器20を1台設置し、三つのブレード用開口部6に対しては1台の光学式液体検知器20を設置してその光ファイバ21を三つのブレード用開口部6にそれぞれに配置してもよい。
【0051】
光学式液体検知器20,40が識別できる液体は、油、不凍液、雨水に限らない。様々な液体を検出できる。例えば、海水、エタノール、シリコーン油、ガソリン、軽油、灯油、重油、アスファルト等が含まれる。各種混合液体も含まれる。
【0052】
光ファイバ21は、アクリル樹脂(PMMA)により形成されたファイバ素線を備えるものであってもよい。